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明細書 :レーザドップラー血流測定方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5234470号 (P5234470)
登録日 平成25年4月5日(2013.4.5)
発行日 平成25年7月10日(2013.7.10)
発明の名称または考案の名称 レーザドップラー血流測定方法及び装置
国際特許分類 A61B   5/0285      (2006.01)
A61B   5/026       (2006.01)
FI A61B 5/02 340H
A61B 5/02 340D
請求項の数または発明の数 10
全頁数 20
出願番号 特願2009-547086 (P2009-547086)
出願日 平成20年12月19日(2008.12.19)
国際出願番号 PCT/JP2008/073245
国際公開番号 WO2009/081883
国際公開日 平成21年7月2日(2009.7.2)
優先権出願番号 2007330112
優先日 平成19年12月21日(2007.12.21)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年12月19日(2011.12.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】八賀 正司
【氏名】石田 弘樹
【氏名】秋口 俊輔
【氏名】白川 博樹
【氏名】安東 嗣修
【氏名】倉石 泰
個別代理人の代理人 【識別番号】100095430、【弁理士】、【氏名又は名称】廣澤 勲
審査官 【審査官】伊藤 幸仙
参考文献・文献 特開平10-85195(JP,A)
特開平7-100119(JP,A)
古市紀之、八賀正司、菱田公一、熊田雅弥,「多点同時測定LDVとCCDエリアイメージセンサを併用した2成分流速分布同時測定法の開発」, 計測自動制御学会論文集,日本,社団法人計測自動制御学会,2003年 3月31日,第39巻第3号,p218-p224
調査した分野 A61B 5/02 - 5/03
特許請求の範囲 【請求項1】
レーザ光源からのレーザ光を分岐して、分岐された各レーザ光を面状の薄いシート光にして生体内の所定位置で互いに交差させ、
前記シート光が交差した線状照射部位での散乱光を線状に結像させて、
その結像位置で線状に配置された複数の受光素子に入射した前記各散乱光のうちの、前記生体内の血管の血流によりドップラー周波数シフトした散乱光を、複数の光電変素子により電気信号に変換し、
前記複数の受光素子のうちの、前記レーザ光がドップラー周波数シフトして入射した前記受光素子の位置により、前記生体内の血管の位置情報を検知するとともに、
前記血流による前記レーザ光のドップラー周波数シフトにより、前記血管内の血流速を前記光電変換素子毎に演算することを特徴とするレーザドップラー血流測定方法。
【請求項2】
前記シート状のレーザ光の交差位置を、前記線状の散乱光の長手方向と交差する方向に走査して、走査された前記線状の散乱光から、前記光電変換素子毎に前記血管内の血流を求め、前記生体内の所定領域での血管の太さと配置を算出することを特徴とする請求項1記載のレーザドップラー血流測定方法。
【請求項3】
前記シート状のレーザ光の交差位置を前記線状の散乱光の長手方向と交差する方向に走査して、走査された前記線状の散乱光から、前記光電変換素子毎に前記血管内の血流速を求め、求めた個々の前記線状照射部位での前記血流速を基にして、前記生体内の所定領域での血管毎の血流速または血流量を算出することを特徴とする請求項2記載のレーザドップラー血流測定方法。
【請求項4】
前記走査は、前記線状照射部位の長手方向と直交する2方向に行い、前記線状照射部位を順次前記長手方向と平行な方向にずらして、前記生体内の所定領域での3次元的血管配置を求め、前記血管配置を表示可能にすることを特徴とする請求項3記載のレーザドップラー血流測定方法。
【請求項5】
前記走査により、前記生体組織内の血管の3次元的血流状態を演算し、表示可能にすることを特徴とする請求項4記載のレーザドップラー血流測定方法。
【請求項6】
レーザ光源と、前記レーザ光源からのレーザ光を分岐するビーム分割装置と、前記ビーム分割装置により分岐されたレーザ光を面状の薄いシート光にする円筒光学系と、分岐した前記各シート光を生体内の所定位置で互いに交差させる集光光学系と、前記シート光が交差した線状照射部位での散乱光を直線状に結像させる結像光学系と、前記結像光学系の結像位置に配置された複数の受光素子と、前記受光素子に入射した前記散乱光を電気信号に変換する光電変換素子と、前記生体組織内の血流により前記レーザ光がドップラー周波数シフトした前記線状照射部位での血流速を、前記電気信号を基にして前記光電変換素子毎に演算する血流演算手段と、前記シート状のレーザ光の交差位置を前記線状照射部位の長手方向と交差する方向に走査するレーザ光走査手段とを備え、前記レーザ光走査手段により走査された領域の前記生体内の血管配置を、前記血流演算手段による演算を基に算出することを特徴とするレーザドップラー血流測定装置。
【請求項7】
前記レーザ光走査手段により走査された所定の各位置での散乱光について、前記血流演算手段により求めた前記光電変換素子毎の各血流速と前記血管配置から、前記生体内の各血管の血流量を算出する血流量演算手段を設けたことを特徴とする請求項6記載のレーザドップラー血流測定装置。
【請求項8】
前記結像光学系は、測定対象の生体組織に対して前記集光光学系と同じ側に位置し、分岐した前記各シート光の間に前記集光光学系が位置したことを特徴とする請求項6記載のレーザドップラー血流測定装置。
【請求項9】
前記結像光学系は、測定対象の生体組織を挟んで前記集光光学系とは反対側に位置したことを特徴とする請求項6記載のレーザドップラー血流測定装置。
【請求項10】
前記受光素子は、平面上に光電変換素子が一体的に配置された固体撮像素子から成ることを特徴とする請求項6記載のレーザドップラー血流測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、生体の血流状態をレーザドップラー方式によって測定する血流測定方法及びその測定に使用する血流測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚の血流に関するデータは、皮膚組織の代謝活性の状態、新陳代謝の状態、老化度、皮膚ガン、その他種々の皮膚の状態に関係するものであり、皮膚の血流の測定は、皮膚の状態を判断する上で重要である。
【0003】
また、日本人の死亡原因第1位は悪性新生物、第2位は心疾患、第3位は脳血管疾患であり、血管系病変による死亡は悪性新生物とほぼ同じ割合である。しかも悪性新生物の発生や進行を認識するには、周囲の新生血管の3次元マッピング情報や、新生血管内の血流情報が重要である。さらに、血管病変には好発部位があり、血管内の血流速分布などの時空間情報が不可欠である。
【0004】
近年の血流測定方法には、レーザドップラー流速測定法、粒子画像流速測定法(PIV),マイクロPIV法、超音波血流計法、MRIやCT法、及び数値シミュレーションとの融合による方法などがある。生体に関する実験は体内(In vivo)での実験、あるいは体外(In vitro)での実験がある。一般に二次元流れの情報が得られるPIV計測はインビトロ計測である。また、現在のMRIやCTの性能では空間および時間分解能が十分でないため、インビボ計測により詳細な血行動態の情報を得るのは困難である。
【0005】
そこで、レーザドップラー方式による測定方法は、血流測定方法として皮膚に侵襲を与えず、血流速及び/または血流量の瞬間値を連続的に測定できることから広く利用されている。レーザドップラー方式による血流測定方法は、レーザ光の単色性、可干渉性を利用したもので、レーザ光が皮膚組織内の血管に照射されると、血管内で動いている血球で散乱した光がドップラー効果により周波数シフトを生じるので、この周波数シフト量を基にして血流速を求めるものである。
【0006】
レーザドップラー方式の血流測定装置としては、光源から皮膚表面にレーザ光を入射させる送光用光ファイバと、皮膚からの散乱光を受光する受光用光ファイバとが一対になったセンサ素子を設け、これらを皮膚に対面するプローブ支持部材に埋め込んだものがある。このレーザドップラー法のレーザ照射方式としては、1本のビームを被検体内に入射する1光束方式と、1本のビームを2本の平行光に分け、レンズ等で交差させて、交差点(測定点)を被検体内に入射させる2光束式とがある。
【0007】
さらに、2光束式の測定方法には差動型法と参照光法がある。参照光法は、1本のレーザビームを強弱の2本のビームに分割し、ドップラー効果により周波数シフトした光と、静止した組織により散乱した光との干渉を利用している。この両者の散乱光には数百Hz~数十Hz程度の周波数の差が生じているので、両者の光の干渉をフォトダイオード等の受光素子により電気的なビート信号として検出し、検出した周波数と強度が、血球の速度及び個数に対応した値の信号となる。さらに、これらの信号の値を積分して、その血管の血流の流速と流量に関する信号に変換し、血管の血流量を求めるものである。
【0008】
また、差動型法では、1本のレーザビームを2本のビームに分割し、この2本のビームを集光して交差させ、その交差位置でレーザ光照射方向により散乱光の干渉が生じる。この干渉縞の間隔は、観測粒子である血球による散乱光のドップラー周波数シフト量により差が生じるので、これを観測して血流速を求めるものである。差動型法は、広い受光開口で散乱光を集光することができ、比較的強い信号強度が得られる利点がある。
【0009】
また、特許文献1に開示されているように、被検体の表面血流を検出して出力信号を発する複数のセンサ素子を備え被検体に当接するセンサ部と、センサ素子からの出力信号を所定の測定信号に変換する信号変換部と、測定信号を測定値として表示する表示部とを備えた表面血流測定装置も提案されている。この表面血流測定装置は、センサ部を被検体に当てると、被検体の表面血流に応じて各センサ素子から出力信号が発せられ、出力信号変換部にて所定の測定信号に変換される。センサ部には、センサ素子が複数設けられているので、一つの測定部位で、同時に又は選択的に複数の箇所を測定できる。さらに、各測定値の変動を平均化することにより、キャリブレーションが可能となり、定量的に測定することができるものである。
【0010】
また、特許文献2に開示されているように、レーザドップラー方式の血流測定方法において、被検体にレーザ光を入射させる少なくとも一つの送光部に対し、該送光部からの距離が異なる複数の位置を受光部とし、各受光部で被検体からの散乱光を受光してそれぞれの受光部における血流量を測定し、それにより測定深度の異なる血流量を同時に記録する方法も提案されている。この場合、受光部は、送光部からの距離ごとにそれぞれ複数設けることが好ましい。また、被検体に入射させるレーザ光のパワーを変化させることが好ましい。これにより、皮膚組織における血流量の変化を解析でき、皮膚表層の浅い部位から深い部位に至る広い深度範囲の血流量をそれぞれの深度ごとに同時に記録することができる。
【0011】
さらに、特許文献3に開示されているように、レーザ光をシリンドリカルレンズによりシート光に変換し、レンズを介してレンズの焦点位置に配置されたミラーに入射され、ミラーの偏向方向に反射させて照射し、血流量を2次元測定する血流分布測定装置もある。
【0012】
その他、非特許文献1~5に開示されているように、生体ではない管路等において、流体の流速を測定する装置として、レーザ光のシート光を用いた多点同時測定が可能なレーザドップラー流速計が提案されていた。

【特許文献1】特開平5-15501号公報
【特許文献2】特開平8-182658号公報
【特許文献3】特開平7-100119号公報
【非特許文献1】計測自動制御学会論文集Voi.39,No.3(2003)218-224
【非特許文献2】日本機械学会論文集(B編),69巻677号(2003-1)25-30
【非特許文献3】Experiments in Fluids24(1998)70-76
【非特許文献4】Experiments in Fluids 36(2004)274-281
【非特許文献5】SICE 2002 Aug. 5-7, 2002, Osaka, 2199-2204
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の1光束方式の血流計は、入射レーザ光に1本のビーム(直径1mm程度)を用い、散乱光を1組のセンサで検出している。また、一部の血流計は、散乱光を複数の光ファイバ等で検出するものや、入射レーザ光用と光信号検出用の光ファイバをそれぞれ複数備えたものもあるが、これらは1点計測の組み合わせによる多点計測と言える。従って、広い領域の血流量を効率的に求めることができず、しかも分解能が低く、限られた部位の血流量しか得られないものである。
【0014】
一方、2光束式の場合は2本のレーザビームの交差点が測定点になるので、1光束式の場合より、測定体積が小さく取れ、空間分解能(数百μm程度)が高くなる。また、血流画像化装置は、レーザビームをスキャンすることにより、血流分布を測定する。2光束式の血流計による血流画像化装置は、2光束で1点の計測を行い、そのレーザ光をスキャンすることにより血流分布を得ている。しかし、2光束方式での装置は、高時空間分解能で点計測を行うことができるが、多点を同時に計測することは困難であり、血管の位置ずれが生じると、計測される平均血流速度の誤差は大きくなるものであり、この場合も広い範囲の血流量を測定できるものではない。
【0015】
また、2光束方式の場合、光ファイバを分岐させて複数のセンサ素子を設けると、個々のセンサ素子におけるレーザパワーが低くなるので、皮膚表面の比較的浅い部分の血流量しか測定できない。さらに、多点を同時に計測することは困難であり、血管の位置ずれが生じると、計測される平均血流速度の誤差は大きくなる。また、レーザ光の出力や、センサ素子の皮膚接触面における送光用光ファイバと受光用光ファイバとの間隔、即ち送光部と受光部の間隔を変えることにより、測定深度を個別的に調整することはできても、種々の測定深度の血流量を同時に測定することはしていない。そのため、深さ方向の血流量分布を知ることができず、皮膚組織の状態分析を正確に行うことができないという問題がある。
【0016】
また、特許文献1,2に開示された血流測定装置も光ファイバを用いたもので、1点計測を基にした測定法であり、上記と同様の問題がある。特許文献3に開示された血流測定装置も、立体的な血管の配置を検知することが出来るものではない。
【0017】
その他、非特許文献1~5は、予め管路の位置や流体の流れの方向が分かっているものであり、目に見えない箇所の毛細血管の配置を検知することが出来るものではない。
【0018】
この発明は、上記従来の背景技術に鑑みて成されたもので、簡単な光学系及び装置により、測定精度が高く、広い範囲を効率的に多次元計測が可能なレーザドップラー血流測定方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明は、レーザ光源からのレーザ光を分岐して、分岐された各レーザ光を面状の薄いシート光にして生体内の所定位置で互いに交差させ、前記シート光が交差した線状照射部位での散乱光を線状に結像させて、その結像位置で線状に配置された複数の受光素子に入射した前記各散乱光のうちの、前記生体内の血管の血流によりドップラー周波数シフトした散乱光を、前記光電変換素子毎に電気信号に変換し、前記複数の受光素子のうちの前記レーザ光がドップラー周波数シフトして入射した前記受光素子の位置により、前記生体内の血管の位置情報を検知するとともに、前記血流による前記レーザ光のドップラー周波数シフトにより、前記血管内の血流速を前記光電変換素子毎に演算するレーザドップラー血流測定方法である。
【0020】
さらに、前記シート状のレーザ光の交差位置を、前記線状の散乱光の長手方向と交差する方向に走査して、走査された前記線状の散乱光から、前記光電変換素子毎に前記血管内の血流を求め、前記生体内の所定領域での血管の太さと配置を算出するものである。
【0021】
さらに、前記シート状のレーザ光の交差位置を前記線状の散乱光の長手方向と交差する方向に走査して、走査された前記線状の散乱光から、前記光電変換素子毎に前記血管内の血流速を求め、求めた個々の前記線状照射部位での前記血流速を基にして、前記生体内の所定領域での各血管内の血流速または血流量を算出するものである。
【0022】
前記走査は、前記線状照射部位の長手方向と直交する2方向に行い、前記線状照射部位を順次前記長手方向と平行な方向にずらして、前記生体内の所定領域での3次元的血管配置を求め、表示可能にするものである。また、前記走査により、前記生体組織の3次元的血流状態を演算し、表示可能にするものである。
【0023】
またこの発明は、レーザ光源と、前記レーザ光源からのレーザ光を分岐するビーム分割装置と、前記ビーム分割装置により分岐されたレーザ光を面状の薄いシート光にする円筒光学系と、分岐した前記各シート光を生体内の所定位置で互いに交差させる集光光学系と、前記シート光が交差した線状照射部位での散乱光を直線状に結像させる結像光学系と、前記結像光学系の結像位置に配置された複数の受光素子と、前記受光素子に入射した前記散乱光を前記光電変換素子毎に電気信号に変換する光電変換素子と、前記生体組織内の血流により前記レーザ光がドップラー周波数シフトした前記線状照射部位での血流速を、前記電気信号を基にして前記光電変換素子毎に演算する血流演算手段と、前記シート状のレーザ光の交差位置を前記線状照射部位の長手方向と交差する方向に走査するレーザ光走査手段とを備え、前記レーザ光走査手段により走査された領域の前記生体内の血管配置を、前記血流演算手段による演算を基に算出するレーザドップラー血流測定装置である。
【0024】
さらに、前記レーザ光走査手段により走査された所定の各位置での散乱光について、前記血流演算手段により求めた前記光電変換素子毎の各血流速と前記血管配置から、前記生体内の各血管の血流量を算出する血流量演算手段を設けたものである。
【0025】
また、前記結像光学系は、測定対象の生体組織に対して前記集光光学系と同じ側に位置し、分岐した前記各シート光の間に前記集光光学系が位置したものである。または、前記結像光学系は、測定対象の生体組織を挟んで前記集光光学系とは反対側に位置したものでも良い。
【0026】
また、前記受光素子は、平面上に受光素子が一体的に配置された固体撮像素子から成るものである。
【発明の効果】
【0027】
この発明のレーザドップラー血流測定方法及び装置によれば、ヒト体内での血流速の高次空間分解能での直接測定が可能となる。さらに、比較的太い血管では血流速分布とその時間変動の計測及び毛細血管の血流速の測定が可能である。そして、レーザ光を走査することにより、所定の測定範囲での、太い血管での有効内径、血流速分布とその時間変動、及び毛細血管の平均血流速の測定が可能であり、それらの測定結果を所定の測定範囲で3次元マッピングすることが可能となる。また、接触による血流への影響がなく、炎症部位、耳の毛細血管、皮膚に近い大動脈、静脈の血流と血管内の血流分布の測定に適しており、再現性の高い測定結果が得られる。
【0028】
また、予防医療にも効果があり、皮膚ガンなどの新生血管の血流速分布計測とその時空間情報、脳血管疾患と密接に関係する頸動脈血流速分布の時空間情報の計測、その他、基礎的な応用としてアレルギー性皮膚炎症の発生機序の解明にも極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の第一実施形態のレーザドップラー血流測定装置の送光部の光学系を示す概略図である。
【図2】この発明の第一実施形態のレーザドップラー血流測定装置の受光部の結像光学系を示す概略図である。
【図3】この発明の第一実施形態のレーザドップラー血流測定装置のファイバアレイと光ファイバの配置等を示す概略図である。
【図4】この発明の第一実施形態のレーザドップラー血流測定装置の光電変換素子からコンピュータまでの機能を示すブロック図である。
【図5】この発明の第一実施形態のレーザドップラー血流測定方法を示す概念図である。
【図6】この発明の第一実施形態のレーザドップラー血流測定方法の光学系の配置等を示す概略図である。
【図7】この発明の第一実施形態のレーザドップラー血流測定方法によるレーザ光の干渉を示す写真である。
【図8】この発明の第一実施形態のレーザドップラー血流測定方法の処理を示すフローチャートである。
【図9】この発明の第一実施形態のレーザドップラー血流測定方法によるレーザ光の交差部の走査を示す概念図である。
【図10】この発明の第二実施形態のレーザドップラー血流測定装置の光学系の配置を示す概略図である。
【図11】この発明の第三実施形態のレーザドップラー血流測定装置の光学系の配置を示す概略図である。
【図12】この発明の第四実施形態のレーザドップラー血流測定装置の光学系の配置を示す概略図である。
【図13】この発明の実施例のレーザドップラー血流測定方法による血流を測定したマウスの耳を表側から見た部位の写真(a)と、レーザ光を所定深さで走査して、その測定結果のマッピングを行った図(b)である。
【図14】この発明の実施例のレーザドップラー血流測定方法による血流を測定したマウスの耳を裏側から見た部位の写真(a)と、レーザ光を所定深さで走査して、その測定結果のマッピングを行った図(b)である。
【図15】この発明の実施例のレーザドップラー血流測定方法による血流を測定したマウスの耳の血管配置を示すマッピング図である。
【図16】この発明の実施例のレーザドップラー血流測定方法による血流を測定したマウスの耳の3次元マッピング図である。
【図17】この発明の実施例のレーザドップラー血流測定方法による反射型の装置で血流を測定した写真(a)マッピングを行った図(b)(c)である。
【符号の説明】
【0030】
10 レーザドップラー血流測定装置
12 半導体レーザ
14,15 音響光学素子
16 反射プリズム
18,19 反射鏡
20,21 ロッドレンズ
22,24 シリンドリカルレンズ
30 レンズ系
32 ファイバアレイ
34 光ファイバ
42 アバランシェフォトダイオード
Ls シート光
Lx 線状照射部位
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1~図9は、この発明の第一実施形態のレーザドップラー血流測定装置を示すもので、この実施形態のレーザドップラー血流測定装置10は、図1に示すように、レーザ光源であるレーザダイオード等の半導体レーザ12と、この半導体レーザ12からの連続発振レーザ光を周波数の若干異なる2本のビームに分岐させる音響光学素子14,15を備えている。レーザ光の波長は、波長750~1500nm程度が好ましく、例えば近赤外の波長785nmのレーザを用いる。これは、近赤外光は生体組織内への透過率が高いからである。
【0032】
さらに、音響光学素子15の光出射側には、分岐されたレーザ光を2方向に反射する反射プリズム16と、反射プリズム16により反射されたレーザ光を直角に反射する反射鏡18,19を備えている。さらに、反射鏡18,19により反射した2本のレーザ光が入射する互いに平行な位置に設けられたロッドレンズ20,21が配置されている。各ロッドレンズ20,21は、入射したレーザ光を広げて第一のシリンドリカルレンズ22の平面部22aに入射させる。
【0033】
第一のシリンドリカルレンズ22は、平面部22aがロッドレンズ20,21側に面して位置し、入射した2本のレーザ光は、第一のシリンドリカルレンズ22の円筒面状の曲面部22bから出射し、第一のシリンドリカルレンズ22の円筒の中心軸と平行であって平面部22aと直交するシート状の2本のシート光Lsに形成される。このシート光Lsは、さらに、集光光学系を形成した第二のシリンドリカルレンズ24の平面部24aに入射する。
【0034】
第二のシリンドリカルレンズ24の平面部24aは第一のシリンドリカルレンズ22の平面部22aと同じ側を向いて平行に位置し、第二のシリンドリカルレンズ24の他方の面である円筒面状の曲面部24bは、第一のシリンドリカルレンズ22に対して、円筒の中心軸が互いにねじれの位置関係で直交するように配置されている。なお、シリンドリカルレンズ22,24は、平面部22a,24aと曲面部22b,24bのいずれの面が入射面となっても、出射光は同様の光路へ進む。
【0035】
この実施形態に用いた光学系部品の表面には、用いたレーザ光の波長の減衰を抑えるために、この波長に対する反射防止膜がコーティングされている。
【0036】
第二のシリンドリカルレンズ24に入射した2本のシート光Lsは、曲面部24bで屈折して互いに交差するように偏向する。シート光Lsの交差部は、1本の線状に光強度の高い部分として形成され、生体組織の線状照射部位Lxとなる。
【0037】
線状照射部位Lxでの散乱光は、図2に示すような結像光学系を形成したレンズ系30により収束される。レンズ系30は、線状照射部位Lxの散乱光を、受光素子である光ファイバアレイ32の端面部32aに線状照射部位Lxに沿って線状に結像させるものである。
【0038】
光ファイバレイ32は、図3に示すように、ライトガイド束36に束ねられた光ファイバ34を経て、他方の端部に導かれ、光ファイバ34毎に光プラグ38に繋がっている。光プラグ38は、各々光レセプタクル40に接続可能に設けられている。各光レセプタクル40には、図4に示すように、光電変換素子であるアバランシェフォトダイオード42が光ファイバ34の数だけ設けられ、光ファイバ34により導かれた光を各々電気信号に変換する。各アバランシェフォトダイオード42の出力は、光ファイバ34の本数だけ設けられた各アンプ44を介して各々周波数フィルタ46に入力し、所定の周波数の信号がA/D変換されて、光ファイバ34の数だけ設けられたデータレコーダ48に各々記録される。各データレコーダ48に記録されたデジタル信号は、USBコネクタを介してコンピュータ50に入力され、所定の演算解析処理が行われる。
【0039】
次に、この実施形態のレーザドップラー血流測定方法について以下に説明する。このレーザドップラー血流測定方法は、半導体レーザ12から出射されたレーザ光を、音響光学素子14,15により変調して分岐させ、図5、図6に示すように、シリンドリカルレンズ22により面状の薄いシート光Lsにするとともに、シリンドリカルレンズ24により互いに交差させ、血管52のある生体B内の所定位置に線状照射部位Lxを形成する。この状態で、血管52内の血流速及びその血流速から必要に応じて血流量を、光ファイバ34を単位として結像光学系であるレンズ系30の倍率により決まる空間分解能で求めることができる。ここでは、250μmの径の光ファイバ34を用いて光学系の倍率を1とすると、空間分解能は250μmとなる。
【0040】
シート光Lsの交差部は、1本の線状に光強度の高い部分として形成され、生体組織の線状照射部位Lxとなる。この線状部位Lxは、レーザ光の入射波面の位相差によって干渉縞ができており、図7に示すような干渉縞となって現れる。この線状の領域を赤血球がある速度で通過すると、散乱光のドップラー周波数が変化する。この線状照射部位Lxでは、シート光Lsが照射された血流中の血球により散乱したレーザ光が、血流の流速によるドップラー効果により、散乱光のドップラー周波数が変化する。なお、静止した組織では散乱光のドップラー周波数の変化はない。線状照射部位Lxでの各散乱光は、それぞれレンズ系30により光ファイバレイ32上のそれぞれに対応する点に結像される。
【0041】
この周波数変化した散乱光を、光ファイバ34を介してアバランシェフォトダイオード42に入力し、電気的なビート信号として検出し、検出した周波数変化と強度が、血球の速度及び個数に対応した値である。これを各受光部である光ファイバ34毎に求めて、対応する部位の血流の流速を算出し、その算出結果を線状照射部位Lx上で積分し、その線上の血流量を求める。ここでの処理は、図8に示すように、アバランシェフォトダイオード42により得られた入力信号は、例えば図8のグラフ(a)のようなデータであり、このデータがA/D変換されてコンピュータ入力され、そのデジタル信号を高速フーリエ変換し、さらにノイズ除去処理等を施して、ドップラー周波数を算出する。ドップラー周波数は、図8(b)に示すように、検出した信号の周波数スペクトルにおいて、ドップラー周波数でのピークが表れることにより求まる。ドップラー周波数が求まると、その周波数から血球の速度が算出され、血球の速度は血流の流速であることから血流速が算出される。
【0042】
また、この実施形態では、音響光学素子14により変調をかけているので、血液の流れの方向も識別することができる。ただし、流れの方向を識別する必要がない場合は、音響光学素子14による周波数変調をしなくても計測が可能である。
【0043】
さらに、この線状照射部位Lxをその長手方向に対して直交する方向に走査して、所定のサンプリング周期で各光ファイバ34毎に流量を求め、所定面内での血流量のマッピングが形成される。またこれを、線状照射部位Lxの長手方向に対して直交する他の方向に走査して、3次元的な血流速または血流量のマッピングが可能となる。
【0044】
ここで、線状照射部位Lxの走査は、測定対象の生体が小さい場合は、生体自体を互いに直交するXYZ軸方向に移動可能な台に載せて、この3軸方向に移動させることにより走査可能である。また、ヒト等の大きな生体の場合は、シリンドリカルレンズ22,24等の光学系を駆動して走査することができる。この時のシート光Lsの交差位置とその走査方向は、直線の交点を求める演算により容易に求めることができる。
【0045】
この走査は、X軸方向の流速を求める場合、図9(a)に示す通り、生体Bの組織内に線状照射部位Lxを形成し、その線状照射部位Lxを、その長手方向と直交するX軸方向に相対的に所定距離移動させる。この後、さらにY軸方向に線状照射部位Lxを、その照射長さ分だけ平行移動させ、同様に走査を繰り返す。次に、図9(b)に示す通り、直交するZ軸方向に微小距離移動してさらに上記と同様に走査し、所定範囲でこの移動と走査を繰り返す。これにより、生体Bの所定範囲の3次元的血管配置とその血管の血流速または血流量を求めることが出来る。また、Y軸方向の流速を求める場合は、線状照射部位LxをX軸方向と平行にして、図9(c)に示す通り、Y軸方向に走査するとともにX軸方向にシフトして走査し、さらにZ軸方向に移動し、走査を繰り返す。
【0046】
この実施形態のレーザドップラー血流測定方法及び装置によれば、血管52の内径や毛細血管の血流状態を計測し、三次元マッピングすることができる。この場合の空間分解能は、数百ミクロン程度にすることができる。即ち、シート光Lsの交差線の線状照射部位Lxでの散乱光を受光する光ファイバレイ32の光ファイバ34の内径が、空間分解能になるので、光ファイバ34の径を0.1mmに選べば、分解能は0.1mm、光ファイバ34の径を0.25mmに選べば、分解能は0.25mmになる。さらに、光学系の倍率に比例して、より高い分解能とすることができる。
【0047】
以上の走査を繰り返すことにより、毛細血管の血流の3次元マッピングの立体像が得られる。これにより、任意の血管内(例えば頸動脈)の血流速分布及びその時間変化を測定することができる。また、血流速分布の時空間情報が得られる。さらに、立体的に配置している毛細血管、新生血管のマッピング情報と血流速度情報が得られ、ガンの進行状態や抗ガン剤の効き目に関する情報を得ることも可能となる。また、太い血管での有効内径を見積もることも出来る。
【0048】
次に、この発明のレーザドップラー血流測定方法及び装置の第二実施形態について、図10を基にして説明する。ここで、上述の実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態のレーザドップラー血流測定方装置は、ビームスプリッタ54によりレーザ光を分岐してシート光Lsを形成したものである。
【0049】
この実施形態のレーザドップラー血流測定装置は、シート光Lsを薄い生体Bに透過させて、その線状照射部位Lxで透過した散乱光の像を、レンズ系30を介して光ファイバレイ32に入射させたものである。この場合、光学系の配置の自由度が高く、像を得やすい。
【0050】
次に、この発明のレーザドップラー血流測定方法及び装置の第三実施形態について、図11を基にして説明する。ここで、上述の実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態のレーザドップラー血流測定装置は、シート光を形成するシリンドリカルレンズ22を、ビームスプリッタ54に対して半導体レーザ12側に配置したものである。さらに、結像光学系にシリンドリカルレンズ56を配置するとともに、光ファイバレイ32をシート光Lsの間に配置したものである。
【0051】
この場合、線状照射部位Lxで反射した散乱光を、光ファイバレイ32に導くもので、結像光学系がシート光Lsの間に位置して、光学系の配置がコンパクトになり、装置を小型化することができる。
【0052】
次に、この発明のレーザドップラー血流測定方法及び装置の第四実施形態について、図12を基にして説明する。ここで、上述の実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態のレーザドップラー血流測定方装置は、図11に示すものと同様の光学系であって、シート光を形成するシリンドリカルレンズ22を、ビームスプリッタ54に対して測定対象の生体B側に配置したものである。さらに、レーザ光を拡張する凹レンズ58をシリンドリカルレンズ22の前に配置し、結増光学系のレンズ系30を凸レンズの枚数を増やして収差を抑えたものである。
【0053】
この実施形態の場合、上述の実施形態と同様の効果に加えて、シート光Lsの幅が数mmの場合に有効であり、収差が少ないものである。
【0054】
尚、この発明のレーザドップラー血流測定方法及び装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、受光素子及び光電変換素子は、CCD等の固体撮像素子でも良く、固体撮像素子はラインセンサ又はイメージセンサを用いることができる。また、光ファイバは、ガラスファイバやプラスチックファイバ等、適宜選択可能である。
【実施例】
【0055】
次に、この発明のレーザドップラー血流測定方法と装置を用いた血流測定の実施例を示す。この実施例では、図9に示すように、レーザ光によるシート光Lsを走査し、シート光Lsの線状照射部位Lxを、薄い生体Bを透過させて、その像を検出し、生体内組織の血流速を算出してマッピングした。生体Bの深さ方向であるZ軸方向について、表面側からZ=0.25mmとZ=0.50mmの異なる深さでXY軸方向の走査を行った。そのマッピング結果を図13(b),図14(b)に示す。図13、図14の各写真(a)に表れた血管の血流について、各々マッピング領域の血管の位置と、血流速を各図(b)に示す。
【0056】
この実施例によれば、シート光Lsにより、薄い生体組織を透過して血流の速度を測定することができ、血管の配置も確認することができた。
【0057】
図15、図16は、上記実施例により、さらに深さ方向にシート光Lsによる走査を行い、Z=0.75mm、Z=1.00mmの深さでの血管の配置を計測し、それを立体的に表示したものである。
【0058】
この発明のレーザドップラー血流測定方法と装置によれば、図16に示すように、血管の配置を立体的に視認することが出来、ガン細胞組織の血管成長等を確実に把握することが出来る。
【0059】
また、図17に示す実施例は、反射型の血流測定装置による測定例を示すもので、図17(a)に示す写真の破線で囲んだ領域について、表面側からZ=0.25mmとZ=0.75mmの異なる深さで、XY軸方向の走査を行った。各々マッピング領域の血管の位置と、血流速を図(b)(c)に示す。反射型によっても、確実に立体的な血管配置を把握することが出来たことを示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図10】
8
【図11】
9
【図12】
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【図7】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
15
【図17】
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