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明細書 :植物栽培システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5700748号 (P5700748)
公開番号 特開2011-120555 (P2011-120555A)
登録日 平成27年2月27日(2015.2.27)
発行日 平成27年4月15日(2015.4.15)
公開日 平成23年6月23日(2011.6.23)
発明の名称または考案の名称 植物栽培システム
国際特許分類 A01G   1/00        (2006.01)
A01G   7/00        (2006.01)
A01G   9/00        (2006.01)
FI A01G 1/00 301Z
A01G 7/00 603
A01G 7/00 601Z
A01G 9/00 C
請求項の数または発明の数 12
全頁数 15
出願番号 特願2009-283306 (P2009-283306)
出願日 平成21年12月14日(2009.12.14)
審査請求日 平成24年11月19日(2012.11.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
発明者または考案者 【氏名】荻原 勲
【氏名】有江 力
【氏名】澁澤 栄
【氏名】牛木 秀治
【氏名】東城 清秀
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
審査官 【審査官】有家 秀郎
参考文献・文献 特開2000-253749(JP,A)
特開2005-229818(JP,A)
特開昭50-011827(JP,A)
特開平05-176634(JP,A)
特開平04-335831(JP,A)
実開昭51-161345(JP,U)
特開昭63-245622(JP,A)
特開平03-210129(JP,A)
特開平09-023747(JP,A)
特開2004-147539(JP,A)
特開平01-235524(JP,A)
調査した分野 A01G 1/00-31/06
特許請求の範囲 【請求項1】
環境条件をコントロールすることができ、栽培対象の永年性植物を育成するための、受粉用区画、成熟用区画及び休眠用区画を含む複数の区画と、
前記永年性植物を観測するモニタリング装置と、
前記永年性植物を載置する載置部と、制御手段からの制御により少なくとも上記複数の区画間を自在に移動する移動手段とを備える移送装置と、
を備え、前記制御手段は、前記永年性植物の種類に応じて予め設定された生育サイクルに併せて、上記移送装置、上記モニタリング装置にて観測した前記永年性植物の状態に基づいて前記複数の区画に順次移動させることを特徴とする植物栽培システム。
【請求項2】
前記制御手段は、上記モニタリング装置で観測した前記永年性植物の成熟度を判定し、成熟したと判断した場合に前記複数の区画のうち所定の区画にある収穫場所に移動させることを特徴とする請求項1記載の植物栽培システム。
【請求項3】
前記制御手段は、上記モニタリング装置で観測した前記永年性植物の生育不良、障害及び病害虫の発生のいずれかを判定し、生育不良、障害及び病害虫の発生のいずれかであると判断した場合に前記複数の区画のうち隔離するための区画に移動させることを特徴とする請求項1記載の植物栽培システム。
【請求項4】
前記モニタリング装置は、前記永年性植物を画像解析する画像解析手段、前記永年性植物の成熟度を解析する成熟度解析手段及び前記永年性植物の病害を解析する病害解析手段からなる群から選ばれる少なくとも1以上の手段を備えることを特徴とする請求項1記載の植物栽培システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記移送装置に内蔵されていることを特徴とする請求項1記載の植物栽培システム。
【請求項6】
前記制御手段は、複数の前記移送装置における移動手段を個別に遠隔操作する情報処理装置であることを特徴とする請求項1記載の植物栽培システム。
【請求項7】
前記複数の区画は、地上部の区画と地下部の区画を含むことを特徴とする請求項1記載の植物栽培システム。
【請求項8】
前記地上部の区画は、太陽光を取り入れる窓を備えることを特徴とする請求項記載の植物栽培システム。
【請求項9】
前記地上部の区画と前記地下部の区画を連結する昇降機を有することを特徴とする請求項記載の植物栽培システム。
【請求項10】
前記環境条件は、光量条件、温度条件、湿度条件及び炭酸ガス量条件からなる群から選ばれる少なくとも1以上の条件であることを特徴とする請求項1記載の植物栽培システム。
【請求項11】
前記複数の区画は、前記永年性植物が自生可能な自然環境における気候区分に併せて前記環境条件が制御されていることを特徴とする請求項1記載の植物栽培システム。
【請求項12】
前記気候区分は、温帯気候であることを特徴とする請求項11記載の植物栽培システム。
発明の詳細な説明 【背景技術】
【0001】
自然環境下における植物栽培は、気候や栽培環境等の影響をうけるため、安定的な生産は非常に困難である。そこで、現在、サラダナやレタスなどの葉菜類の栽培に、いわゆる「植物工場」を利用する試みがなされている。植物工場とは、閉鎖的又は半閉鎖的な空間内において植物を計画的に生産するシステムである。植物工場には、閉鎖環境で太陽光を使わずに環境を制御して、周年・計画生産を行う「完全人工光型」の施設と、温室等の半閉鎖環境で太陽光の利用を基本として、雨天・曇天時の補光や夏季の高温抑制技術等により、周年・計画生産を行う「太陽光利用型」の施設がある。
【0002】
現在の植物工場は、基本的に閉鎖的又は半閉鎖的な空間内における光量や室温、湿度を一括して制御することで植物の成長をコントロールし、その空間内において収穫可能な程度に植物を成長させる。特許文献1には、透光断熱層を天井面に有する地下空間において、温度や湿度、炭酸ガス濃度を調節しながら植物を栽培するシステムが開示されている。また、特許文献1には、植物を育成するための容器が自己走行することで空間内部を移動するといった構成のみが開示されている。
【0003】
また、ベルトコンベアーといった移動路を用いて、栽培した植物を個体単位或いはコンテナ単位で移動させ、当該移動路上に配設された観察装置で成長度を観察し、観察結果に基づいて植物を収穫用区画や栽培区画へと移動させる植物工場が知られている。この移動路を用いた植物工場によれば、個々の植物或いはコンテナ単位の植物群における成長に応じた収穫時期の管理が可能となる。
【0004】
一方、特許文献2には、ハウス内の植物栽培において、少数の植物個体群をまとめて生育するための自転可能な栽培容器が開示されている。但し、特許文献2に開示された栽培容器は、自転動作を駆動する駆動装置や駆動制御装置を有するものではなく、栽培管理者等による操作で自転動作するものと理解できる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開平05-211822号公報
【特許文献2】特許第4022219号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、現在、植物工場と呼ばれる植物栽培システムを適用して、葉菜類に代表される各種植物の高収量化を目指して実用化している段階ではあるものの、当該植物栽培システムは未だあらゆる植物に適用可能な技術ではなく、また収穫量も十分なものとは言えない。そこで、本発明は、このような実情に鑑み、様々な植物に適用することができ、且つ従来よりも著しく高い収穫量を達成することができる植物栽培システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成した本発明に係る植物栽培システムは、以下を包含する。
(1)環境条件をコントロールすることができ、栽培対象の植物を育成するための複数の区画と、前記植物を観測するモニタリング装置と、前記植物を載置する載置部と、制御手段からの制御により少なくとも上記複数の区画間及び/又は上記区間内を自在に移動する移動手段とを備える移送装置とを備え、上記移送装置は、上記モニタリング装置にて観測した前記植物の状態に基づいて自在に移動できることを特徴とする植物栽培システム。
【0008】
(2)前記制御手段は、上記モニタリング装置で観測した前記植物の成熟度を判定し、成熟したと判断した場合に前記複数の区画のうち所定の区画にある収穫場所に移動させることを特徴とする(1)の植物栽培システム。
【0009】
(3)前記制御手段は、上記モニタリング装置で観測した前記植物の生育不良、障害及び病害虫の発生のいずれかを判定し、生育不良、障害及び病害虫の発生のいずれかであると判断した場合に前記複数の区画のうち隔離するための区画に移動させることを特徴とする(1)記載の植物栽培システム。
【0010】
(4)前記制御手段は、前記植物の種類に応じて予め設定された生育サイクルに併せて前記複数の区画を順次移動させることを特徴とする(1)記載の植物栽培システム。
【0011】
(5)前記生育サイクルとして永年性植物の生育サイクルを設定した場合、前記複数の区画は、受粉用区画、成熟用区画及び休眠用区画を含むことを特徴とする(4)記載の植物栽培システム。
【0012】
(6)前記モニタリング装置は、前記植物を画像解析する画像解析手段、前記植物の成熟度を解析する成熟度解析手段及び前記植物の病害を解析する病害解析手段からなる群から選ばれる少なくとも1以上の手段を備えることを特徴とする(1)記載の植物栽培システム。
【0013】
(7)前記制御手段は、前記移送装置に内蔵されていることを特徴とする(1)記載の植物栽培システム。
【0014】
(8)前記制御手段は、複数の前記移送手段における移動手段を個別に遠隔操作する情報処理装置であることを特徴とする(1)記載の植物栽培システム。
【0015】
(9)前記複数の区画は、地上部の区画と地下部の区画を含むことを特徴とする(1)記載の植物栽培システム。
【0016】
(10)前記地上部の区画は、太陽光を取り入れる窓を備えることを特徴とする(9)記載の植物栽培システム。
【0017】
(11)前記地上部の区画と前記地下部の区画を連結する昇降機を有することを特徴とする(9)記載の植物栽培システム。
【0018】
(12)前記植物は永年性植物であることを特徴とする(1)記載の植物栽培システム。
【0019】
(13)前記環境条件は、光量条件、温度条件、湿度条件及び炭酸ガス量条件からなる群から選ばれる少なくとも1以上の条件であることを特徴とする(1)記載の植物栽培システム。
【0020】
(14)前記複数の区画は、前記植物が自生可能な自然環境における気候区分に併せて前記環境条件が制御されていることを特徴とする(1)記載の植物栽培システム。
【0021】
(15)前記気候区分は、温帯気候であることを特徴とする(14)記載の植物栽培システム。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、様々な植物に適用することができ、且つ従来よりも著しく高い収穫量を達成する植物栽培システムを提供できる。本発明に係る植物栽培システムによれば、植物を観測することで植物の状態に応じて移送装置単位で植物を所望の区画に移動させることができる。このため、本発明に係る植物栽培システムによれば、植物移動のためのベルトコンベアーといった大掛かりな設備を必要とせず、且つ、植物の個別管理が可能となるため、低コストに高い収穫量を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の植物の育成管理システムの一実施の形態を示した図である。
【図2】図1の育成管理システムを構成する植物育成プラントの1階平面図を示した図である。
【図3】図1の植物育成プラントの地下平面図を示した図である。
【図4】図1の育成管理システムを構成する移送装置の一実施の形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、図示する植物育成プラントは、地上1階、地下1階から構成されているが、その地上や地下の階数は、図示例に限定されるものではないことは言うまでも無く、各々の階層を構成する処置ブースの配列や、各ブースの装置の配置も、図示例に限定されるものではない。また、移送装置や植物を載置するパレットは、その横断面が円形であるが、その形状は図示例に限定されるものではない。

【0025】
以下、育成管理システムは、栽培対象の植物としてブルーベリーを一例として説明する。育成管理システムにおいて、栽培対象はブルーベリーに限定されるものではなく、如何なる植物を栽培対象としてもよい。栽培対象の植物としては、一年性植物若しくは二年性植物でもよいし、永年性植物でも良い。育成管理システムは、詳細を後述するように、生育サイクルにおける各段階を複数の区画で実現でき、且つ、移送装置に載置された植物を個別に所望の区画に移送することができる。このため、育成管理システムは、複数の生育サイクルを経ることができる永年性植物を栽培対象とすることが好ましい。

【0026】
永年性植物とは、複数の生育サイクルを繰り返す植物を意味し、一年又は二年に亘って一回の生育サイクルで枯死する植物(一年性植物又は二年生植物)を除く植物を意味する。永年性植物としては、代表的には果樹を挙げることができる。育成管理システムでは、特に限定されないが、ブルーベリー、ラズベリー、ストロベリー、ミカンやレモン等の柑橘類、桜桃、リンゴ、梨、ビワ、ブドウ、マンゴー、パパイヤ、ドラゴンフルーツ、バナナ等を栽培対象とすることができる。特に、育成管理システムでは、地上(受粉用区画、成熟用区画)と地下(休眠用区画)の両構造を利用して休眠を持つ温帯性作物を、一方地上のみの構造を利用して休眠しない亜熱帯および熱帯性作物を栽培対象とすることが好ましい。

【0027】
図1は、植物の育成管理システムの一実施の形態を示すものであり、図2及び図3の平面図は、図1に示す植物育成プラントの1階及び地下にある処置ブースの一実施の形態を示すものである。また、図4は、図1の育成管理システムを構成する移送装置の一実施の形態を示すものである。

【0028】
育成管理システム1000は、地上階200と地下階300を有する植物育成プラント400と、植物20が載置されている移送装置100とを備えている。

【0029】
育成管理システム1000の概要を図1から図3を参照して説明すると、図1には、地上1階、地下1階の植物育成プラント400が示されており、その内部を、植物20が載置された移送装置100が自走するものである。地上階200には、上方から太陽光を取り入れることができる窓208が、少なくとも天井部に設置されている。また、窓208には、必要に応じて太陽光を遮るためのサンシェード(不図示)が設けられており、植物の育成状況に応じて、後述する情報処理装置からの指示を受けて、太陽光が遮断されるようになっている。さらに、植物育成プラント400には、太陽光を利用して発電し、それを植物育成プラントの電力として使用するための太陽電池パネル(不図示)が設置されている。

【0030】
ここで、地上階200は、主に、受粉ブース201、果実成熟(収穫)ブース202、養分蓄積ブース203からなる複数の区画、さらに、植物を一旦隔離して植物の育成診断を実行する診断ブース204と、その診断ブース204で育成状態に問題があると診断された際に、その植物を隔離して診断された問題を処理する隔離ブース205からなる複数の区画を備えている(図2参照)。また、地下階300は、休眠導入ブース301、休眠管理ブース302、萌芽促進ブース303からなる複数の区画を備えている。なお、栽培対象の植物の種類によっては、生育サイクルに休眠期を有しないものもある。この場合、休眠導入ブース301及び休眠管理ブース302といった区画は不要となる。

【0031】
これら各区画は、図示しないが、上述したサンシェードを含む光量調節装置、温度調節装置、湿度調節装置、排気装置、炭酸ガス供給装置等をそれぞれ備えている。これら各装置により、各区画内の光量、温度、湿度、炭酸ガス濃度といった各種環境条件が調整される。

【0032】
また、栽培対象の植物の種類によっては、環境条件の異なる複数の果実成熟(収穫)ブース202を備えることもできる。すなわち、育成管理システム1000において、上述した複数の区分は、栽培対象の植物が自生可能な自然環境における気候区分に併せて、各区画における環境条件がそれぞれ制御される。例えば、複数の季節から構成される気候区分、一例として春夏秋冬といった4つの季節から構成される温帯気候については、これら季節のうち少なくとも1つの季節を1つの区分に実現することができる。また、例えば、栽培対象の植物が雨期及び乾期を有する気候区分において熟成する果実を付けるものである場合、雨期の環境条件を実現した果実成熟(収穫)ブースと乾期の環境条件を実現した果実成熟(収穫)ブースを備えることが好ましい。

【0033】
また、地上階200に設置された受粉ブース201には、地下階300の萌芽促進ブース303と連絡するリフト401が設置されている。同様に、養分蓄積ブース203には、地下の休眠導入ブース301と連絡するリフト402が設置されている。

【0034】
また、育成管理システム1000は、果実成熟(収穫)ブース202にモニタリング装置210を備えている。モニタリング装置210は、栽培対象のブルーベリーを観測するものであれば、特に限定されるものではない。ここで観測とは、植物自体の生育状況、植物の果実の成熟度、病害に起因する生育不良、生育障害、病害虫の発生の有無等を測定することを意味する。したがって、モニタリング装置210としては、植物自体の生育状況を測定するための撮像装置や重量測定装置、植物の果実の成熟度を測定するための撮像装置や糖度測定計、病害に起因する生育不良、生育障害、病害虫の発生の有無等を測定するための撮像装置等を挙げることができる。育成管理システム1000は、これら具体的な装置から選ばれる1又は複数種類のモニタリング装置210を備えることができる。

【0035】
一例として、モニタリング装置210は、複数のカメラ202bと、複数の重量計測器202cと備えている。複数のカメラ202bとしては、可視光画像を撮像するカメラと、近赤外分光を測定できる近赤外分光装置とを含むことが好ましい。なお、図示しないが、これらカメラ202bや重量測定器202cにて測定した画像データや重量データを解析する解析装置を備えていても良いし、これら画像データや重量データを情報処理装置207aに入力して解析しても良い。

【0036】
なお、図2には、撮影のための複数台のカメラ202bが示されているが、一台のカメラ202bを使用して、カメラ202bが情報処理装置207a等からの信号に従って撮影方向を変更し、移動する植物を撮影する形態でもよい。また、移送装置100に計量器が搭載されてその上に植物を載置し、計量器が移送装置100と共に移動する形態であれば、果実成熟(収穫)ブース202に重量測定器202cを設置する必要はない。この場合、果実成熟(収穫)ブース202に重量測定器202cを設置するためのスペースが不要となり、果実成熟(収穫)ブース202のみではなく常に植物の重量を計測することができる。

【0037】
モニタリング装置210は、果実成熟(収穫)ブース202に配設されている構成に限定されず、受粉ブース201や養分蓄積ブース203、休眠導入ブース301、休眠管理ブース302、萌芽促進ブース303といった他の区画に配設されていても良い。また、育成管理システム1000は、上述したような各種の観測を実施するための区画を別途備えるものであっても良い。

【0038】
また、育成管理システム1000は、植物育成プラント400の地上階200に、情報処理装置207aを備える総合管理ブース207を備えている。情報処理装置207aは、移送装置100の動作、及び植物育成プラント400の運転を総括的に制御することができる(図2参照)。

【0039】
例えば、情報処理装置207aは、上述した各区画における環境条件をコントロールすることができる。ここで、環境条件とは、植物の生育に対して影響を与えうる条件であれば特に限定されず、例えば、光量条件、温度条件、湿度条件、炭酸ガス濃度条件、個葉の蒸散量、土壌水分条件、養水分吸収量条件、植物体重等を挙げることができる。管理者が上述した各区画における所望の環境条件を情報処理装置207aに入力することで、情報処理装置207aは、各区画の環境条件を適宜コントロールすることができる。なお、情報処理装置207aは、栽培対象の植物の種類毎と各区分の具体的な環境条件とを対応させたデータベースを有していてもよい。このデータベースを有する場合、管理者が栽培対象の植物の種類を入力することで、情報処理装置207aが各区分の環境条件をデータベースから検索して適宜コントロールを行うことができる。

【0040】
また、例えば、情報処理装置207aは、栽培対象の植物の生育サイクルに応じて、上述した各区画に植物を留置するタイミングや期間を制御することができる。管理者が栽培対象のブルーベリーに生育サイクルに併せて、受粉ブース201へ留置するタイミング及び期間、果実成熟(収穫)ブース202へ移動するタイミング及び期間等を情報処理装置207aに入力することで、情報処理装置207aは、詳細を後述する、移送装置100の自走動作を適宜コントロールすることができる。なお、情報処理装置207aは、栽培対象の植物の種類とその生育サイクルとを対応させたデータベースを有していてもよい。このデータベースを有する場合、管理者が栽培対象の植物の種類を入力することで、情報処理装置207aが栽培対象の生育サイクルをデータベースから検索し、各区画に植物を留置するタイミングや期間を制御することができる。

【0041】
さらに、例えば、情報処理装置207aは、栽培対象のブルーベリーに供給する肥料の種類、肥料供給時期、供給量、水分供給時期及び水分供給量等を制御することができる。なお、情報処理装置207aは、栽培対象の植物の種類とその植物に関する施肥方法及び給水方法とを対応させたデータベースを有していてもよい。このデータベースを有する場合、管理者が栽培対象の植物の種類を入力することで、情報処理装置207aが栽培対象の植物に関する施肥方法及び給水方法をデータベースから検索し、肥料の種類、肥料供給時期、供給量、水分供給時期及び水分供給量等を制御することができる。

【0042】
さらにまた、情報処理装置207aは、上述したモニタリング装置210と有線又は無線で接続されており、モニタリング装置210にて観測した植物に関する情報を入力することができる。

【0043】
ここで、図4を参照して、上記の植物育成プラントを自走する移送装置100を具体的に説明すると、移送装置100は、4つの車輪1を備えた底部2を有して、その横断面が円形を呈している。その車輪1には不図示の駆動装置が備えられており、これが外部からの信号、もしくは、後述するICタグからの信号を受けて作動して、移送装置100の自走を可能とする。また、その移送装置100には、植物20を収容するパレット21を移送装置100に載置するための円錐台形のカップ4が備えられており、カップ4は、移送装置100の側面3に備えられた縦断面コの字形の把持手段5に把持されている廃液フィルター6に載置されている。さらに、廃液フィルター6には、略中央部で、かつ、その下方に、別途の廃液フィルター7が備えられている。また、移送装置100には、その底部2に、廃液を集液するための廃液タンク8が設けられおり、植物に与えられた養分や水分、または農薬等の廃液は、上記2つの廃液フィルター6,7で濾過されて廃液タンク8に集液されるようになっている。そして、集液された廃液は、不図示の再利用装置においてその成分を調整されて、再利用される。

【0044】
また、移送装置100に備えられた廃液タンク8には、その上部に回転駆動手段9が設けられている。この回転駆動手段9は別途の廃液フィルター7に接合されている回転用冶具11と勘合しているので、回転駆動手段9が作動すると、回転用冶具11が回転し、その上部に配されている、廃液フィルター6、カップ4、及びパレット21に収容された植物20が回転することができる。

【0045】
また、移送装置100には、その表面にICタグ12が備えられている。このICタグ12は、様々な情報を記憶することができ、また、外部からの信号を受信することができる。具体的には、ICタグ12は、他の移送装置100との識別を可能とする管理番号情報、モニタリング装置210による観測の結果に関する情報、情報処理装置207aで入力された各種条件等に関する情報、施肥や給水処理の実績に関する情報等を記憶することができる。また、ICタグ12は、モニタリング装置210による観測の結果に関する情報や施肥や給水処理の実績に関する情報等を情報処理装置207aに対して出力することができる。

【0046】
さらに、ICタグ12は、記憶した情報に基づいて、車輪1の駆動を制御することができ、上述した各区画への移送を制御できる。なお、上述した情報処理装置207aが直接的に車輪1の駆動を制御する信号を出力する場合には、ICタグ12は、上述した車輪1の駆動制御機能を有しなくてよい。

【0047】
さらに、移送装置100の大きさは、植物20の幹や果実、葉、根等の大きさに応じて、個別に選択することができるので、移送装置100の大きさを植物20ごとに最適化して、移送装置100が各ブース内で自走できる間隔を十分に保つことができる。

【0048】
また、移送装置100の側面3の上端には、載置された植物20に対して平面的に見て対角線上に二つの給液装置13が備えられている。ここで、上記する回転駆動手段9が作動すると、移送装置100に対して、内部のパレット21に載置された植物20がパレット21と共に相対的に回転するので、給液装置13から給液される水分や養分は、パレット21内の育成土に円を描くように給液され、植物20に対して均一に水分や養分を提供することができる。

【0049】
また、その給液装置13に近接した箇所には、葉や果実表面からの水分の蒸発を抑制し、葉周辺の湿度を保持して光合成を促進するための、ドライミスト14を配することもできる。給液装置13の場合と同様に、植物20が移送装置100に対して回転することで、噴霧状態の水分を植物の葉や果実表面に均一に提供することができる。

【0050】
なお、上記する実施例では、給液装置13やドライミスト14を植物20に対して対角線上に配しているが、植物20を少なくとも1回転以上回転制御することを前提として、移送装置100の任意の箇所に少なくとも一つの給液装置13やドライミスト14が設置されるシステム形態を適用してもよい。

【0051】
また、植物20が自ら回転し、植物20の葉の表面の空気を自ら換気することができるため、外部に設置された換気扇等による換気よりも効率的な換気が実現され、植物20の光合成の促進に繋がる。

【0052】
以上のように構成された育成管理システム1000を利用した植物の育成サイクルを具体的に説明すると、植物20が載置された移送装置100が予め準備され、その移送装置100は植物育成プラント400の地下階300にある萌芽促進ブース303に配置される。なお、以下の説明は、移送装置100を萌芽促進ブース303に配置した状態から開始するものであるが、移送装置100に載置される植物20の状況に応じて、その開始状態を自由に変更することができる。また、育成管理システム1000では、複数の移送装置100を使用して、複数の植物個体を個別に管理することができる。このとき、個々の移送装置100は、ICタグ12に記憶された管理番号情報により識別される。

【0053】
萌芽促進ブース303に配置された移送装置100は、開花に適した育成状況になると、移送装置100に配されたICタグ12からの情報や情報処理装置207aからの指示を受けて自走し、萌芽促進ブース303にあるリフト401へ移動し、地下階300から地上階200の受粉ブース201へ移動する。ここで、開花に適した育成状況になったか否かの判断は、情報処理装置207aに予め入力された萌芽促進期間に基づいて行うことができる。或いは、萌芽促進ブース303に配設されたモニタリング装置(不図示)により植物を撮像し、画像解析によって花芽の個数や大きさを測定し、測定された花芽が所定の個数や所定の大さに達した時に開花に適した育成状況と判断することもできる。

【0054】
ここで、受粉ブース201は、たとえば、一年のうちの春季に対応する環境を実現するものであるが、既述のように、季節及び昼夜ごとに、植物の育成状況に応じて、植物に対して提供される、光や養分、水分等が調整されるようになっている。また、受粉ブース201は、内部に照明装置を有しつつ、太陽光が必要な場合は上部から太陽光を取り入れることができる窓208を有しているので、植物の育成状況に応じて、照明装置からの人工光と太陽光を併用できるようになっている。

【0055】
受粉ブース201へ移動した植物20は、ブース201内で人工光や太陽光、水や養分等を受けて、萌芽状態から開花し、昆虫を媒体として受粉する。なお、昆虫を媒体とする虫媒花以外にも、風媒花、鳥媒花、または、水媒花でも実施可能であることは言うまでもない。そして、受粉が完了すると、移送装置100は果実成熟ブース202へ自走する。ここで、受粉の完了は、情報処理装置207aに予め入力された受粉期間に基づいて行うことができる。

【0056】
果実成熟ブース202は、一年のうちの初夏に対応する環境を実現するものであるが、受粉ブース201と同様に、植物の育成状況に応じたブース内環境の調整が可能である。

【0057】
果実成熟ブース202へ移動した植物20は、果実成熟ブース202内で光や水、養分等を受け、受粉した植物20の子房が果実となり、それが収穫に適した状態まで成熟する。この段階では、果実成熟ブース202内に設置されたモニタリング装置210によって果実の成熟状況をモニタリングすることができる。具体的には、モニタリング装置210のカメラ202bにて植物20を撮像し、得られた画像データに基づいて植物20の成熟度を判定することができる。具体的には、植物20を撮像した画像データから、果実の大きさ及び色調、葉の色調、果実表面温度分布などを測定する。そして、所定の大きさを超える果実における色調が、予め定められた色調に達している場合には完熟状態であると判定する。この判定処理は、上述した情報処理装置207a又はモニタリング装置210に備わった解析装置で行うことができる。判定結果は、植物20の熟成度を示す情報としてICタグ12へ出力され、ICタグ12内に記憶される。

【0058】
また、カメラ202bとして可視光画像を撮像するカメラと近赤外分光を測定できる近赤外分光装置の両者を備える場合、これらカメラによって果実の可視光画像(カラー画像)及び近赤外分光を測定する撮像する。そして、カラー画像に基づいて果実表皮の外観、着色の均一さ、大きさを判断し、近赤外分光分析により果実内部の糖度を測定し、また、その分光画像で成熟度を判断することができる。したがって、カメラ202bとして可視光画像を撮像するカメラと近赤外分光を測定できる近赤外分光装置の両者を備える場合、カラー画像解析結果及び近赤外分光分析結果の2つの判断基準に基づいて、成熟度を判断することができる。なお、近赤外分光分析により果実の糖度を測定する際には、予め糖度と近赤外光の波長(670nm程度)との相関を算出しておき、この相関関係に基づいて近赤外光の波長の反射量から糖度を測定することができる。また、近赤外分光分析は近赤外光の吸収量及び反射量のいずれを測定しても良い。

【0059】
なお、カメラ202bとしては、上述した可視光画像を撮像するカメラや近赤外分光装置に限定されず、例えば、果実表面の温度を測定する装置であっても良い。果実の表面温度を測定し、表面温度が上昇して所定の値を超えたところで果実が完熟していると判断することもできる。

【0060】
植物20の果実が完熟しているといった情報がICタグ12に記録されると、ICタグ12は、車輪1の駆動を制御して収穫するための場所へと移送装置100を自走させる。また、植物20の果実が完熟しておらず、成熟段階を示す情報がICタグ12に記録されると、成熟段階に応じて、各々の植物ごとに与える光や水、養分等が適宜調整されて、植物20が育成管理される。

【0061】
そして、果実成熟ブース202内の収穫場所において、管理者は果実を収穫することができる。植物20の果実が収穫された移送装置100は、次いで、養分蓄積ブース203へ自走する。

【0062】
養分蓄積ブース203は、花芽の形成と養分の蓄積を目的としたブースであり、休眠への前段階として使用されるものである。このブース203も、受粉ブース201や果実育成ブース202と同様に、ブース内の植物の大きさや種類に応じたブース内環境を調整することができる。

【0063】
そして、情報処理装置207aに蓄積されたデータや、移送装置100が有するICタグ12に記憶されている情報から植物の育成状況を確認しつつ、養分の蓄積が完了した植物を載置した移送装置100は、養分蓄積ブース203にあるリフト402へ自走し、地上階200から地下階300の休眠導入ブース301へ搬送される。ここで、養分の蓄積が完了したか否かの判断は、情報処理装置207aに予め入力された養分蓄積期間に基づいて行うことができる。或いは、養分蓄積ブース203に配設されたモニタリング装置(不図示)により植物を撮像し、画像解析によって花芽の個数や大きさを測定し、測定された花芽が所定の個数や所定の大さに達した時に養分の蓄積が完了したと判断することもできる。また、養分蓄積ブース203において画像解析を行い、花芽の個数や大きさを測定し、この情報と収穫量、伸長した枝の総量を使って、次年度の最適着果量を推察することにより剪定を行うことができる。

【0064】
図1で示す地下の休眠導入ブース301は、直接太陽光が入射しない構造であるが、人工光を用いたり、太陽光を間接的に取り込むことによって、植物に光を提供する構成となっている。すなわち、地上階と比較して相対的に、低温で、かつ安定した温度を維持することが可能であるため、たとえば、一年のうちの秋季に対応する環境を容易に実現することができる。ここで、休眠導入ブース301へ移動した植物20は、このブース内301で、光や水、養分等を提供されて、植物の最適な育成状態が管理され、休眠に最適な状況になる。そして、それらの情報を情報処理装置207aと送受信しつつ、移送装置100は、休眠管理ブース302へ自走する。ここで、休眠に最適な状況か否かの判断は、情報処理装置207aに予め入力された休眠導入期間に基づいて行うことができる。或いは、休眠導入ブース301に配設されたモニタリング装置(不図示)により植物を撮像し、画像解析によって休眠に最適な状況を判断することもできる。

【0065】
休眠管理ブース302は、たとえば、一年のうちの冬季に対応する環境を実現するものであり、休眠導入ブース301と同様に、地上階と比較して相対的に、低温で、かつ安定した温度を維持することが可能である。さらに、ブース302内の植物20の大きさや種類に応じたブース内環境を調整したり、各々の植物に応じた光や水、養分等の最適な管理をおこないながら、休眠管理ブース302へ自走してきた植物は、萌芽に備えた休眠状態を維持することになる。

【0066】
上記のような一年に相当するサイクルを完了し、休眠状態を打破した植物20は、萌芽促進ブース303へ自走し、次の植物育成のサイクルを開始する。なお、休眠期間についても、情報処理装置207aに予め入力された期間に基づいて管理することができる。或いは、休眠管理ブース302に配設されたモニタリング装置(不図示)により植物を撮像し、画像解析によって休眠の終了時期を判断することもできる。

【0067】
ここで、例えば、ブルーベリーのような永年性の植物を栽培対象とすれば、休眠状態を含む生育サイクルを繰り返すことができる。また、これらのサイクルの際に得られた植物ごとの情報は、移送装置100に配されたICタグに記憶され、それらが順次更新されて、新たなサイクルの際の植物の育成環境の最適化に使用することができる。さらに、通常の露地栽培においては約1年を周期として生育サイクルを営む植物であっても、休眠導入、休眠期間、萌芽促進期間などを適宜、調節することによって生育サイクルを早く周回させることができる。たとえば、ブルーベリー等の永年性果樹については、1年に2回の生育サイクルを周回させ、1年に2回の収穫を達成することができる。

【0068】
また、育成管理システム1000においては、上述した生育サイクルにおけるいかなる段階においても、栽培対象の植物について各種の診断、診断に基づく各種処置を行うことができる。例えば、図示する総合管理ブース207に隣接して、情報処理装置207aに蓄積されたデータから植物の育成診断を実行する必要があると指示された際に、又は予め設定されたタイミングで、その診断すべき植物が載置された移送装置100が診断ブース204へと自走する。あるいは、上記の生育サイクルにおいて、たとえば、果実成熟ブース202のモニタリングの結果から、生育不良、生育障害、病害虫の発生の有無といった植物に関する育成の問題が懸念される場合には、移送装置100は診断ブース204へ自走して植物を一旦隔離する。診断ブース204では、植物の育成診断が実行され、適切な処置内容が検討される。この処置内容としては、例えば、農薬等の投与が必要な場合にそれらを投与すること、病害虫を駆除すること、などを挙げることができる。一方、問題がないと診断され、もしくは、それ以上の処置の必要性がないと診断されると、植物育成のサイクルへ戻される。ここで、移送装置はICタグ12を備えているので、その処置の内容、例えば農薬の種類や投与回数をICタグ12に記憶しておくことができる。

【0069】
しかし、上記の診断において問題が解消せず、例えば、病害虫の発生等のため、他の植物に対して隔離して処置することが必要であると診断される場合がある。その場合、診断ブース204と隣接して、診断ブース204と連絡可能に接続されている隔離ブース205へと移送装置100が自走する。具体的には、他の植物に対して隔離して処置することが必要であると診断された場合、その植物が載置された移送装置100は自走して、診断ブース204から隔離ブース205へ移動して収容され、他の植物と隔離されながら、適切な処置がなされるようになっている。そして、それらの問題が解消した後に、植物が最適なサイクル段階へ戻されるようになっている。なお、処置の内容がICタグ12に記憶されて、以後の管理が実行される。このように、本システム1000によれば、生育不良、障害、病害虫といった問題が他の個体へ伝搬・拡大することを防止することができ、また、問題の植物を隔離ブース205等で適切に処置することにより健全に復帰させることができる。本システム1000では、生育不良、障害、病害虫といった問題を有する植物を載置した移送装置100が隔離ブース205等に自走するため、各種処理を効率良く行うことができる。

【0070】
さらに、育成管理システム1000においては、当該システムを管理する管理者は、図示する総合管理ブース207で各ブースのブース内環境を適宜調整したり、情報処理装置207aに蓄積されたデータを確認して、各々の植物ごとにICタグ12を介して指示を送信することもできる。また、それらのデータをさらに遠隔に送信して、植物育成プラント400とは別途の場所で、植物の育成状況を計測管理することも可能である。

【0071】
なお、上記の移送装置100は、予め設定された時間が経過すると各々のブースへ自走するように初期設定されてもよいが、その設定は、各々の植物の育成状況に応じて、情報処理装置207aからの信号を受けて更新され、その更新された設定に基づいて自走するようになっているのが好ましい。さらに、ICタグ12でそれらの植物の育成状況を記憶できるため、そのデータを使用し、自らの移送装置100の移動を最適化して自走できるようになっているのが好ましい。

【0072】
特に、育成管理システム1000において、複数の移送装置100を使用する場合、各移送装置100に載置している植物の育成サイクルに応じて、或いは植物の状態に応じて、上述したように個別に各区画(ブース)間或いは所定の区画(ブース)内を自在に移動することができる。したがって、育成管理システム1000は、特定の植物に適用範囲が限定されず様々な植物に適用することができ、且つ著しく高い収穫量を達成することができる。

【0073】
自在に移動することができる移送装置は、植物を載置した移送装置ごとにモータ等の駆動装置を自載し、外部の駆動力を使用することなく自走できるものが好ましい。また、レールや移送路といった案内手段に制限されず、縦横に自在に移動できるものが好ましい。このような自在に移動できる移送装置を用いることによって、従来の植物工場のように、コンベアなどの大型の設備を固定することなく、フラットな空間で植物を栽培することが可能となる。また、従来の固定された設備を持つ植物工場のように、植物を載置するポットやパレットの大きさを揃える必要もない。このため、いろいろな大きさ植物積載ポットを同時に移動させることができ、単年作物だけでなく、樹齢や大きさが個々に異なる果樹のような多年作物も、スペースを無駄にすることなく栽培することが可能となる。このように、自在に移動することができる移送装置を用いることによって、従来の植物工場のように、ポットやパレットのサイズの制限、ポットやパレットの順番による制限、工場のレイアウトの制限といった問題がなく、作物の個別管理の自由度が大幅に向上するものである。

【0074】
また、上記のシステムは、果実種であるブルーベリーを用いた実施例に関し説明したが、植物によってその育成サイクルは異なるものである。より具体的には、植物の種類によって、開花の時期や収穫の時期が異なるものであり、たとえば、りんごは5月頃に開花して冬季に収穫されるものである。また、一年のうちの上記の各ブースの滞在時間は、植物によって異なるものである。

【0075】
しかし、本発明のシステムを使用すれば、各々の植物が独立して自走することができるため、1種類の植物に対して植物ごとに個別管理が可能であり、かつ、複数種類の植物に対しても、各々の種類の植物に対してブースごとの滞在時間や滞在時期を変更して、個別に育成管理を実行できるものである。また、同種の植物或いは異種の植物を育成した場合のいずれにおいても、個体毎に生産履歴をICタグ12に記憶することができるため、無農薬果実、低農薬果実、通常栽培果実などに分類した果実の出荷が可能となる。

【0076】
さらに、情報処理装置207aに蓄積されたデータや、ICタグ12に記憶されたデータを使用して、プラント全体や各ブース内の環境を調整したり、各々の植物に与える光や水や養分等を調整することで、植物の開花速度や果実の成熟速度、休眠時間等をある程度調整することができるので、植物の育成周期を早めることが可能となる。また、プラント内の環境をその育成周期に合わせて調整することができるため、たとえば、上記のサイクルを複数回、一年のうちに実施することが可能であり、収穫量の増加を図ることができる。

【0077】
また、植物は一つの植物育成プラントに収容されて育成管理されているため、病害虫の発生を抑制することができ、安全性が高く、高品質な果実の生産に繋がる。

【0078】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0079】
1…車輪、2…移送装置の底部、3…移送装置の側面、4…カップ、5…把持手段、6,7…廃液フィルター、8…廃液タンク、9…回転駆動手段、11…回転用冶具、12…ICタグ、13…給液装置、14…ドライミスト、20…植物、21…パレット、100…移送装置、200…植物育成プラントの地上階、201…受粉ブース、202…果実成熟ブース、202b…カメラ、202c…計量器、203…養分蓄積ブース、204…診断ブース、205…隔離ブース、206…作業用通路、207…総合管理ブース、207a…情報処理装置、208…窓、210…モニタリング装置、300…植物育成プラントの地下階、301…休眠導入ブース、302…休眠管理ブース、303…萌芽促進ブース、400…植物育成プラント、401,402…リフト、1000…育成管理システム
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3