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明細書 :体内情報伝送装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5867848号 (P5867848)
公開番号 特開2013-055423 (P2013-055423A)
登録日 平成28年1月15日(2016.1.15)
発行日 平成28年2月24日(2016.2.24)
公開日 平成25年3月21日(2013.3.21)
発明の名称または考案の名称 体内情報伝送装置
国際特許分類 H04B  13/00        (2006.01)
H04B   5/02        (2006.01)
FI H04B 13/00
H04B 5/02
請求項の数または発明の数 3
全頁数 30
出願番号 特願2011-190992 (P2011-190992)
出願日 平成23年9月1日(2011.9.1)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成23年3月5日 第20回ライフサポート学会フロンティア講演会事務局発行の「第20回ライフサポート学会フロンティア講演会予稿集」に発表 平成23年5月18日 日本AEM学会主催の「第23回「電磁力関連のダイナミクス」シンポジウム」にて発表 平成23年8月26日 社団法人 日本機械学会関東支部発行の「第19回茨城講演会 講演論文集」に発表
審査請求日 平成26年8月8日(2014.8.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
発明者または考案者 【氏名】柴 建次
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】佐藤 敬介
参考文献・文献 特開2007-184848(JP,A)
特開2005-277718(JP,A)
調査した分野 H04B 13/00
H04B 5/02
特許請求の範囲 【請求項1】
送信電源、及び該送信電源と電気的に接続されて該送信電源を挟むように配置され、かつ各々の全体または一部が絶縁体で覆われた複数の送信電極を含み、体内に配置された状態で電界を発生させる送信手段と、
体表面に配置される一対の受信電極、前記一対の受信電極間を電気的に接続するワイヤ、及び前記送信手段から発生された電界により前記一対の受信電極間に生じる電位差を検出する検出部を含む受信手段と、を含み、
前記送信手段が配置された体内の生体組織の種類、及び人体のサイズの少なくとも一方に応じて、前記電位差、及び前記送信電源の電力に対する前記電位差で表される伝送効率の少なくとも一方が最大となるように、前記ワイヤの長さ、前記絶縁体の種類、前記絶縁体の厚さ、前記検出部の抵抗値、前記受信電極の平面視面積、及び前記送信電極の平面視面積の各々を定めた
内情報伝送装置。
【請求項2】
前記送信手段は、前記複数の送信電極として、3つ以上の送信電極を含み、前記3つ以上の送信電極の中から2つの送信電極を時分割で順次選択しながら電界を発生させる請求項1記載の体内情報伝送装置。
【請求項3】
送信電源、及び該送信電源と電気的に接続されて該送信電源を挟むように配置され、かつ各々の全体または一部が絶縁体で覆われた3つ以上の送信電極を含み、体内に配置された状態で、前記3つ以上の送信電極の中から2つの送信電極を時分割で順次選択しながら電界を発生させる送信手段と、
体表面に配置される一対の受信電極、及び前記送信手段から発生された電界により前記一対の受信電極間に生じる電位差を検出する検出部を含む受信手段と、
を含む体内情報伝送装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、体内情報伝送装置に係り、特に、体内で取得された情報を体外に送信するための体内情報伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療機器の発展に伴いカプセル内視鏡や人工心臓、ペースメーカー、神経刺激装置など数多くの体内に埋め込む医療デバイスの研究及び開発が進められている。これらの体内埋め込み機器は、体内で得た情報を体外に送る必要がある。カプセル内視鏡などによって撮影された写真などの情報は機器本体から無線で体外の受信機に送られるが、通信の際の消費電力が大きいと大容量のバッテリーが必要となり、その結果、機器の大型化につながる。そのため、できる限り小さな消費電力で通信を行うことが望まれる。
【0003】
従来、人体を伝送媒体として利用した人体通信の技術が提案されている。例えば、体内の脂肪の部分に螺旋状の送信用ダイポールアンテナを埋め込み、体外にある受信電極に対して情報等を送る技術や、マグネチックループアンテナを体内深部の膵臓付近に埋め込むことで通信する技術などが提案されている(例えば、非特許文献1及び2参照)。
【0004】
また、体内で使用される電子機器等に非接触で電力を供給する非接触電力伝送システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の技術では、カプセルの外面に一対の体内電極を配置し、カプセル内に電子機器を封入し、体内に配置する。そして、体表面に体内電極と誘電結合する一対の体外電極を装着し、体外電極に交流電圧を印加することにより、体内電極に交流電圧を誘起させている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2010-115025号公報
【0006】

【非特許文献1】H. Mizuno, M. Takahashi and K. Saito, "A Helical Folded Antenna for Implantable Communication Device", Proc.40th Antennas and Propagation Society International Symposium, pp.1-4, 2010.
【非特許文献2】小林健太、利根川恵一、柴建次、越地耕二、島田光功、直野義昭、妙中義之、「体内埋込型インスリン注入システム経皮通信システム」、平成15年電気学会全国大会、237-A3, 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記非特許文献1及び2のような技術では、送信アンテナを体内に収める必要があるため、大型の送信アンテナを用いることはできない。このため、必然的にアンテナの長さが短い高周波用のアンテナを用いるが、反面、高周波になるほど人体による電界減衰率が増大するため、アンテナの小型化と高効率化との両立は困難である、という問題がある。
【0008】
また、特許文献1の技術は、体内で使用される電子機器に非接触で電力を供給する技術であるが、電子機器を体内で使用する場合における、人体への影響が考慮されていない。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、人体への影響を考慮しつつ、かつ装置を大型化することなく、体内で取得した情報を体外へ高効率で伝送することができる体内情報伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の体内情報伝送装置は、送信電源、及び該送信電源と電気的に接続されて該送信電源を挟むように配置され、かつ各々の全体または一部が絶縁体で覆われた複数の送信電極を含み、体内に配置された状態で電界を発生させる送信手段と、体表面に配置される一対の受信電極、及び前記送信手段から発生された電界により前記一対の受信電極間に生じる電位差を検出する検出部を含む受信手段と、を含んで構成されている。
【0011】
本発明の体内情報伝送装置によれば、送信手段は、送信電源、及び送信電源と電気的に接続されて送信電源を挟むように配置され、かつ各々の全体または一部が絶縁体で覆われた複数の送信電極を含んで構成されている。この送信手段が、体内に配置された状態で電界を発生させる。この送信手段は、結果的に、送信手段周辺の体組織と協働して電界を発生させるものである。すなわち、送信手段が体組織と協働してダイポールアンテナのような振る舞いをする。送信手段は、体内で取得した情報を発生した電界にのせて体外へ送信する。また、受信手段は、体表面に配置される一対の受信電極、及び送信手段から発生された電界により一対の受信電極間に生じる電位差を検出する検出部を含んで構成されている。検出部で検出された電位差に基づいて、送信手段により電界にのせて送信された体内の情報を受信することができる。
【0012】
このように、全部または一部が絶縁体で覆われた送信電極で送信電源を挟んで構成した送信手段により、送信手段周辺の体組織が結果として利用されて電界を発生させ、体外に配置された受信手段でこの電界を検出するため、人体への影響を考慮しつつ、かつ装置を大型化することなく、体内で取得した情報を体外へ高効率で伝送することができる。
【0013】
また、前記受信手段は、前記一対の受信電極間を電気的に接続するワイヤを含み、前記送信手段から発生された電界を受信することができる。これにより、受信手段は、体組織と協働してループアンテナのような振る舞いをするため、効率良く送信手段により発生した電界を検出することができる。
【0014】
また、前記電位差、及び前記送信電源の電力に対する前記電位差で表される伝送効率の少なくとも一方が最大となる前記電界の周波数に応じて前記ワイヤの長さを設定することができる。最も効率良く情報を伝送することができる周波数は、ワイヤの長さで変化するため、このワイヤの長さを適切に設定することにより、より高効率に情報を伝送することができる。また、ワイヤの長さを長くするために、模擬的に一カ所にスパイラル形状を形成してワイヤの長さを長くしたり、ドーナツ状や棒状の小型のフェライトにワイヤを巻き付けることでインダクタンスをしたりすることによっても、周波数を調整することができる。
【0015】
また、前記電位差、及び前記送信電源の電力に対する前記電位差で表される伝送効率の少なくとも一方が最大となる前記電界の周波数に応じて前記検出部の抵抗値を設定することができる。最も効率良く情報を伝送することができる周波数は、検出部の抵抗値で変化するため、この検出部の抵抗値を適切に設定することにより、より高効率に情報を伝送することができる。
【0016】
また、前記受信電極の平面視面積を、前記電位差、及び前記送信電源の電力に対する前記電位差で表される伝送効率の少なくとも一方が最大となるように設定することができる。受信電極の平面視面積を適切な値とすることにより、より高効率に情報を伝送することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の体内情報伝送装置によれば、全部または一部が絶縁体で覆われた送信電極で送信電源を挟んで構成した送信手段により、送信手段周辺の体組織が結果として利用されて電界を発生させ、体外に配置された受信手段でこの電界を検出するため、人体への影響を考慮しつつ、かつ装置を大型化することなく、体内で取得した情報を体外へ高効率で伝送することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)本実施の形態の体内情報伝送装置を人体に装着した場合の概略側面図、及び(b)概略正面図である。
【図2】本実施の形態の体内情報伝送装置の概略を示す構成図である。
【図3】送信電源周辺の等価回路を示す図である。
【図4】体内情報伝送装置全体の等価回路を示す図である。
【図5】第1の実施の形態の体内情報伝送装置の送信部を示す概略図である。
【図6】第1の実施の形態の体内情報伝送装置の送信電極の例を示す斜視図である。
【図7】第1の実施の形態の体内情報伝送装置の受信部を示す概略図である。
【図8】第1の実施の形態の体内情報伝送装置の受信電極の例を示す斜視図である。
【図9】各実施の形態の解析で用いた人体モデルを示す図である。
【図10】(a)解析で用いた送信部の概略図、及び(b)受信電極の概略図である。
【図11】解析で用いた電気定数を示すグラフである。
【図12】(a)第1の実施の形態における解析で用いた絶縁フィルム付き受信電極を含む受信部、(b)絶縁フィルムなし受信電極を含む受信部、(c)受信電極なし受信部を示す概略図である。
【図13】第2の実施の形態における解析結果を示すグラフである。
【図14】第4の実施の形態における解析で用いた受信電極を示す概略図である。
【図15】生体組織が異なる解析を説明するためのグラフである。
【図16】送信電極の面積を変えた場合のS21の解析結果を示すグラフである。
【図17】受信電極の面積を変えた場合のS21の解析結果を示すグラフである。
【図18】絶縁フィルムの厚さを変えた場合のS21の解析結果を示すグラフである。
【図19】絶縁フィルムの材料を変えた場合のS21の解析結果を示すグラフである。
【図20】人体の体型によるS21を解析するためのモデルを示す図である。
【図21】人体の体型を変えた場合のS21の解析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。

【0020】
[本実施の形態の概略及び原理]
まず、本実施の形態の概略について説明する。

【0021】
本実施の形態の体内情報伝送装置10を人体50に装着した場合の概略側面図を図1(a)に、概略正面図を同図(b)に示す。また、図2に、図1(a)のAA’線断面における体内情報伝送装置10の概略構成を示す。図1及び図2に示すように、体内情報伝送装置10は、体内に埋め込むことにより、または飲み込まれることにより人体50内部に配置される送信部20と、人体50表面に配置される受信部40とを含んで構成されている。

【0022】
送信部20は、高周波電流を放出する送信電源21と、送信電源21と電気的に接続され、かつ送信電源21を挟んで対向する位置に配置された一対の送信電極22a、22bとを含んで構成されている。なお、送信電源21の電圧をV1aとする。送信部20は、送信電源21から高周波電流を放出することにより、送信電極22a、22b周辺の体組織を利用して電界を発生する。発生した電界に、体内で取得されたデータをのせて体外へ送信する。

【0023】
受信部40は、人体50表面の腹部及び背中に各々配置される受信電極41a、41bと、受信電極41a、41b間を接続する導電性のワイヤ42と、受信電極41a、41b間の電圧を検出するための受信回路43とを含んで構成されている。受信回路43の負荷抵抗はRとする。受信回路43において、送信部20から発生した電界により受信電極41a、41b間に生じた端子間電圧(受信信号電圧に相当)Vを検出する。

【0024】
次に、本実施の形態の体内情報伝送装置10の原理について説明する。

【0025】
まず、体内に配置された送信電源21周辺(図3中破線内)の等価回路は、体組織が結果的に利用されて、図3に示すようになると思われる。Lは送信電源21(E)と送信電極22a、22bとを接続するワイヤのインダクタンスを表している。このインダクタンスLと、生体組織のキャパシタンスC及び抵抗Rとがそれぞれ直列につながる。ここで、キャパシタンスCとインダクタンスLとの直列共振が生じることがわかる。直列共振時に送信電源21から大きな電流が周辺の体組織に向かって流れ、電界が放射されると考えられる。すなわち、送信部20は、送信電極22a、22b周辺の体組織を利用して、体内において効率の良いダイポールアンテナのように振る舞う。

【0026】
次に、装置全体の等価回路を図4に示す。ここで、L及びrはそれぞれ受信電極41a、41bと接続されるワイヤ42によるインダクタンス及び抵抗であり、Rは受信回路43の抵抗成分である。また、C及びRは受信電極41a、41b間に挟まれている生体組織によるキャパシタンス及び抵抗である。電源E’は、送信部20及びその周辺において結果的に生体組織を利用して発生された電界によって、受信電極41a、41bに誘導された電圧を示している。ここでは、インダクタンスLとキャパシタンスCで並列共振が起こる。すなわち、受信部40は、受信電極41a、41b間の体組織を利用して、ループアンテナのように振る舞う。

【0027】
このように、人体の一部をアンテナとして利用することで、装置を大型化することなく、体内から体外へ高効率に情報を伝送することができる。

【0028】
[第1の実施の形態]
次に、第1の実施の形態に係る体内情報伝送装置11について説明する。なお、上記概略で説明した構成(図1及び図2)と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。

【0029】
第1の実施の形態の体内情報伝送装置11は、送信部20と、受信部40とを含んで構成されている。図5に示すように、送信部20は、送信電源21と、送信電極22a、22bと、送信電極22a、22b各々の全体を被覆する絶縁フィルム23と、送信部20が埋め込まれた体内の情報を取得するセンサ24、センサ24で取得した情報を送信部20が発生する電界に乗せて送信するように制御する制御部25とを含んで構成されている。

【0030】
送信電極22a、22bには、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス銅、チタン、白金、銀等の導電性物質を用いることができる。送信電極22a、22bのサイズは、厚さ1mm前後×横5~15mm×縦15~25mm程度(図5の例では、1mm×10mm×20mm)とすることができる。また、送信電極22a、22b間の間隔は、8mm程度とすることができる。なお、送信電極22a、22bのサイズはこれに限定されず、送信部20全体のサイズが体内への埋め込み、または飲み込み可能となるサイズであって、送信電極22a、22b間に送信電源21、センサ24及び制御部25を配置可能なサイズであればよい。送信電極22a、22bの平面視形状は、図6に示すように、長方形、正方形、円形、楕円形等とすることができる。

【0031】
絶縁フィルム23は、厚さ0.1~2mm程度(図5の例では、1mm)の絶縁性物質を用いることができる。第1の実施の形態では、絶縁フィルム23は、送信電極22a、22b各々の全面を覆うように貼付される。なお、絶縁フィルム23による送信電極22a、22b各々の被覆範囲は全面に限定されず、例えば、送信電極22a、22b各々の外側の面(送信電源21が配置される側と反対側の面)のみを被覆するなど、送信電極22a、22b各々の一部であってもよい。

【0032】
センサ24は、例えば、撮像装置及び撮像された画像を記憶するメモリを備えたカメラ装置や血糖値センサなど、体内情報伝送装置11が取得対象とする体内情報を取得可能なセンサで構成されている。

【0033】
制御部25は、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータで構成することができる。例えば、予め定めた時間、または体外から情報取得の指示が送信されたときに、センサ24により体内情報を取得して送信するようなプログラムをROMに記憶しておき、このプログラムをCPUにより実行するようにするとよい。

【0034】
受信部40は、受信電極41a、41bと、ワイヤ42と、受信回路43とを含んで構成されている。受信電極41a、41bは、上記原理で述べたように、ワイヤ42及び受信電極41a、41b間の体組織と協働してループアンテナのように振る舞う。そのため、図7に示すように、受信電極41aと受信電極41bとは、人体50を挟んで対向する位置に配置する。人体表面へは粘着シート等により貼付される。また、受信電極41a、41bは、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス、チタン、白金、銀等の導電性物質を用いることができる。また、導電性のゲルシートや導電性のプラスチックを用いてもよい。受信電極41a、41bのサイズは、厚さ1mm前後×横100~140mm×縦140~180mm程度(図7の例では、1mm×120mm×160mm)とすることができる。なお、受信電極41a、41bのサイズはこれに限定されず、体内に配置された送信部20が受信電極41a、41b間に概ね位置することを保証できるサイズであればよい。受信電極41a、41bの平面視形状は、図8に示すように、長方形、正方形、円形、楕円形、ドーナツ形状、またはこれらの形状に複数の穴を開けた穴開き形状とすることができる。ドーナツ形状や穴開き形状とすることで軽量化が図れ、人体への負担を軽減することができる。

【0035】
次に、第1の実施の形態の体内情報伝送装置11の作用について説明する。

【0036】
まず、送信部20は、体内の所定位置に配置されるように、体内に埋め込まれるか、または飲み込まれる。そして、受信電極41a,41bを腹部及び背中の体表面に貼付することにより、受信部40を人体50に装着する。この状態で、制御部25は、予め定めた時間になったか否か、または体外から送信された情報取得の指示を受信したか否かを監視する。予め定めた時間になった場合、または情報取得の指示を受信した場合には、制御部25が、体内の情報を取得するようにセンサ24を制御する。そして、センサ24により取得された情報は一旦メモリに記憶される。

【0037】
次に、制御部25が、送信電源21から高周波電流を放出するように制御する。これにより、送信電源21と送信電極22a、22bとを接続するワイヤのインダクタンスと、送信部20周辺の生体組織のキャパシタンスとの直列共振が生じ、電界が発生する。制御部25は、送信部20から発生した電界に、メモリに記憶しておいた情報をのせて送信するように制御する。

【0038】
一方、受信部40では、送信部20が発生した電界により変化する受信信号電圧を、受信回路43により検出する。また、図示しない制御回路により、受信回路43で検出された受信信号電圧の変化に基づいて、電界にのせて送信された体内情報を抽出する。

【0039】
次に、第1の実施の形態の体内情報伝送装置11の有用性について、以下の解析を参照しながら説明する。まず、後述する第2~第4の実施の形態も含めた本解析の共通事項について説明する。

【0040】
ここでは、電磁界解析ソフト(SemCad X, Var.14.4,Schmid & partner Engineering AG,PTT Inc.)を用い、FDTD法による電磁界解析を行った。使用した人体モデルを図9に示す。本解析で使用した人体モデルはNICTモデルの全身モデルから、頭や手及び足の部分を除いた高さ390mmの胴体部分のみのモデルである。筋組織のみで構成した均一組織の人体モデルを用いた。R=1MΩとし、他の部分のワイヤの抵抗は0.1Ωとした。また、図10(a)に送信部20を示す。本解析では、センサ24及び制御部25を除いた構成としている。また、同図(b)に受信電極41a、41bを示す。受信電極41a、41bを階段状にしている理由は、受信電極41a、41bを人の腹や背中の斜面につけるためであり、また、FDTD法で用いる格子に沿った形状にしているためである。また、周波数によって筋の導電率及び比誘電率の値が変わるので、図11に示す電気定数を用いて解析した。

【0041】
解析によって測定したパラメータは、送信電源21の電源出力電力P1a、送信電源21の入力インピーダンスIm(Z1a)、及び受信信号電圧Vである。また、本発明の目的は高効率に情報伝送することであるため、より小さい電源出力電力P1aで大きな受信信号電圧Vを得ることが望ましい。これを評価するための指標としてV/P1a(伝送効率:電源出力電力P1aに対する受信信号電圧V)も求めている。V/P1aは値が大きいほど小さなエネルギーで大きな出力電力が得られ、効率よく体内から体外へ信号電圧を誘導できることを示している。

【0042】
また、生体安全性を示す指標SAR(Specific Absorption Rate、比吸収率)も求めた。電磁界による生体への作用として、刺激作用及び熱的作用がある。特に100kHz以上の高周波電磁界においては熱的な作用を考える必要がある。熱作用を示す物理的な量としてSARがあり、体重1kgあたりに吸収されるエネルギーで定義できる。人体の生体組織の密度をρ、導電率をσとすると、SARは下記(1)式で定義できる。

【0043】
SAR=σE/ρ (1)

【0044】
SARは国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)によって規格化されている。本解析では局所SARの基本制限を採用している。使用した周波数帯においては10g平均あたり職業的暴露では10W/kg、公衆の暴露では2W/kgである。

【0045】
また、解析条件である最大・最小格子サイズ、計算領域、吸収境界条件を表1に示す。

【0046】
【表1】
JP0005867848B2_000002t.gif

【0047】
次に、第1の実施の形態の体内情報伝送装置11に関する解析として、送信電極22a、22bに絶縁フィルム23を付けた場合の効果に関する解析結果について説明する。

【0048】
本解析では、図12(a)に示すように、送信電極22a、22bに厚さ1mmの絶縁フィルム(比誘電率:3、導電率:10-17)をつけたモデル(Insulation model、第1の実施の形態の体内情報伝送装置11に相当)、同図(b)に示すように、送信電極に絶縁フィルムをつけていないモデル(Original model)、及び同図(c)に示すように、送信電極を外したモデル(Deletion model)について解析した。Original model 及びDeletion modelは、第1の実施の形態に相当するInsulation modelに対する比較例である。ワイヤ42の長さはy=895mm、生体組織は筋、R=1MΩとした。解析結果を表2に示す。表2において、中央の列は、各パラメータ毎に最大値が得られた周波数を示し、右側の列は、V及びV/P1aの最大値を示す。

【0049】
【表2】
JP0005867848B2_000003t.gif

【0050】
表2に示すように、Insulation modelにおいて、Vは120MHz、P1aは周波数1GHzで最大となった。また、Im(Z1a)は周波数800M~1GHzで0になり、SARは1GHzで最大になった。V/P1aは120MHzのとき最大値1648を得た。また、Deletion modelにおいて、Vは150MHz、P1aは周波数1GHzで最大となった。また、Im(Z1a)は0になることはなく、SARは1GHzで最大になった。V/P1aは150MHzのとき最大値1810を得た。なお、本解析では、図11に示す電気定数を用いているため、表2中の「1000 and over」は、周波数が1GHzより小さい範囲では、Im(Z1a)=0とならないことを表している。

【0051】
以上より、P1a及びSARが最大をとる周波数とIm(Z1a)=0になる周波数は、Insulation model及びDeletion modelのいずれのモデルもOriginal modelと比べ大きく変化した。V及びV/P1aが最大となる周波数は、Insulation modelとDeletion modelとで30MHz程度変化した。

【0052】
このように、P1a及びSARが最大をとる周波数とIm(Z1a)=0になる周波数は、生体組織と電源とのインピーダンス整合によって変化した。これは、絶縁フィルムを付けたり、送信電極をはずしたりすることで電源のリアクタンスが変化し、そのためインピーダンス整合を起こす周波数が変化し、表2に示すような結果になったと思われる。

【0053】
表2より、V及びV/P1aが最大になった周波数は、Insulation modelのみにおいて、30MHz程度の小さい変化が見られた。これは、送信電極22あ、22bで挟まれた部分が絶縁物として見なされ、Cに変化が生じたためと考えられる。Deletion modelは、Insulation modelやOriginal modelよりも、V/P1aの値が大きいので効率が高いように思える。しかし、Vの値を見ると、Deletion modelはOriginal modelよりも3桁小さい値であり、実際には、非常に大きい電圧が信号源として必要になることがわかる。つまり、送信電極を外したモデルは、電源の消費電力が小さいため、V/P1aが大きくなっただけであり、実使用には困難があると考えられる。一方、Insulation modelにおいては、Vの値はOriginal modelよりも1桁下がるものの、信号源の電圧もそれほど大きくする必要もない上、V/P1aは1648と大きな値を得ることができた。体内に配置される送信電極22a、22bに絶縁フィルム23を付けることで、電極の金属が直接生体組織に触れないため、人体への影響も考慮することができる。

【0054】
従って、第1の実施の形態の体内情報伝送装置によれば、送信電極を絶縁フィルムで被覆することにより、人体への影響を考慮しつつ、体内から体外への情報の伝送効率を向上させることができる。

【0055】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。

【0056】
第2の実施の形態の体内情報伝送装置12の基本的な構成は、第1の実施の形態の体内情報伝送装置11と同様である。第2の実施の形態の体内情報伝送装置12では、体内から体外への情報の伝送が高効率に行えるように、受信部40のワイヤ42の長さが適切に設定されている。

【0057】
ここで、第2の実施の形態の体内情報伝送装置12に関する解析として、ワイヤ42の長さの違いによる解析結果について説明する。本解析では、ワイヤ42の長さについて特に着目するため、第1の実施の形態の解析におけるOriginal model(送信電極に絶縁フィルムをつけていないモデル)を用いて解析を行っているが、本解析結果は送信電極に絶縁フィルムをつけたモデル(Insulation model)にも適用できる。解析に関する共通事項は、第1の実施の形態で述べたとおりである。

【0058】
本解析では、受信電極41a、41b間をつなぐワイヤ42の長さyを、y=895mm、及びy=1135mmとした場合について解析を行った。解析結果を図13に示す。

【0059】
図13(a)及び(b)に示すように、ワイヤの長さが短いとき(y=895mm)には、Vは150MHz、P1aは周波数350MHzで最大となった。また、同図(c)及び(d)に示すように、Im(Z1a)は周波数300~330MHzで0になり、SARは350MHzで最大になった。そして、同図(e)に示すように、V/P1aは150MHzのとき最大値118を得た。

【0060】
また、同図(a)及び(b)に示すように、ワイヤの長さが長いとき(y=1135mm)にはVは100MHz、P1aは周波数350MHzで最大となった。また、同図(c)及び(d)に示すように、Im(Z1a)は周波数300~330MHzで0になり、SARは350MHzで最大になった。そして、同図(e)に示すように、V/P1aは100MHzのとき最大値142を得た。

【0061】
以上より、電源出力電力P1a及びSARが最大をとる周波数とIm(Z1a)=0になる周波数は、ワイヤの長さを変えても変化しなかった。しかし、V及びV/P1aはワイヤの長さを変えると最大となる周波数は変化した。

【0062】
これは、図4に示すように、生体組織のキャパシタンスCとワイヤ42によるインダクタンスLとの並列共振により、回路のインピーダンスは最大となるため、Vは最大となる。ワイヤ42の距離が長い方が、インダクタンスが大きくなると考えられるため、Vの最大値を得ることができる周波数が低下したと思われる。そして、情報伝送するための最適周波数は、V/P1aが最大になった周波数(並列共振が起きた周波数)と考えられる。y=895mmでは150MHz、y=1135mmでは100MHzとなった。

【0063】
従って、第2の実施の形態の体内情報伝送装置によれば、受信部のワイヤの長さを適切に設定することにより、体内から体外へより高効率に情報を伝送することができる。

【0064】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について説明する。

【0065】
第3の実施の形態の体内情報伝送装置13の基本的な構成は、第1の実施の形態の体内情報伝送装置11と同様である。第3の実施の形態の体内情報伝送装置13では、体内から体外への情報の伝送が高効率に行えるように、受信部40の受信回路43の抵抗値Rが適切に設定されている。

【0066】
ここで、第3の実施の形態の体内情報伝送装置13に関する解析として、受信回路43の抵抗値Rの違いによる解析結果について説明する。本解析では、受信回路43の抵抗値Rについて特に着目するため、第1の実施の形態の解析におけるOriginal model(送信電極に絶縁フィルムをつけていないモデル)を用いて解析を行っているが、本解析結果は送信電極に絶縁フィルムをつけたモデル(Insulation model)にも適用できる。解析に関する共通事項は、第1の実施の形態で述べたとおりである。

【0067】
本解析では、第2の実施の形態での解析で用いたワイヤ42の長さが短い(y=895mm)場合のモデルにおいて、体内から送られた情報などを受け取ると仮定した部分(受信回路43)の抵抗Rの抵抗値を50Ωに変えたモデルを用いて解析した。本解析では、生体組織は筋とした。解析結果を表3に示す。

【0068】
【表3】
JP0005867848B2_000004t.gif

【0069】
表3に示すように、R=50ΩにするとVは10MHz、P1aは周波数350MHzで最大となった。また、Im(Z1a)は周波数300~330MHzで0になり、SARは350MHzで最大になった。V/P1aは10MHzのとき最大値5.74を得た。

【0070】
以上より、電源出力電力P1a及びSARが最大をとる周波数とIm(Z1a)=0になる周波数はRの抵抗値を変えても変化しなかった。しかし、V及びV/P1aが最大となる周波数は、Rの大きさを変えるとそれぞれ大きく変化した。

【0071】
これは、図4の抵抗Rが変化したことによって、並列共振する周波数が変化したためであると思われる。図4の回路全体のアドミタンスの虚部は、下記(2)式で表される。(2)式より、Rによって並列共振周波数が変わることがわかる。ここで、ωは周波数を表している。

【0072】
【数1】
JP0005867848B2_000005t.gif

【0073】
従って、第3の実施の形態の体内情報伝送装置によれば、受信回路の抵抗値を適切に設定することにより、体内から体外へより高効率に情報を伝送することができる。

【0074】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態について説明する。

【0075】
第4の実施の形態の体内情報伝送装置14の基本的な構成は、第1の実施の形態の体内情報伝送装置11と同様である。第4の実施の形態の体内情報伝送装置14では、体内から体外への情報の伝送が高効率に行えるように、受信電極41a、41bの面積を適切なサイズに設定している。

【0076】
ここで、第4の実施の形態の体内情報伝送装置14に関する解析として、受信電極41a、41bの面積の違いによる解析結果について説明する。本解析では、受信電極41a、41bの面積について特に着目するため、第1の実施の形態の解析におけるOriginal model(送信電極に絶縁フィルムをつけていないモデル)を用いて解析を行った。また、ワイヤ42の長さは短い(y=895mm)場合のモデルを用いた。解析に関する共通事項は、第1の実施の形態で述べたとおりである。

【0077】
本解析では、図14に示すように、受信電極41a、41bの面積を変えた場合について検討した。図14(a)に示す受信電極41a、41bは、縦及び横のサイズを共に図10(b)に示した受信電極41a、41bの面積を半分にしたモデル(1/4modelである。また、図14(b)に示す受信電極41a、41bは、面積を1/10にしたモデル(1/100model)である。本解析では、生体組織は筋とした。解析結果を表4に示す。

【0078】
【表4】
JP0005867848B2_000006t.gif

【0079】
表4に示すように、1/4model及び1/100model共に、Vは150MHz、P1aは周波数350MHzで最大となった。また、Im(Z1a)は周波数300~330MHzで0になり、SARは350MHzで最大になった。V/P1aは150MHzのとき最大となり、1/4modelでは最大値177、1/100modelでは最大値122を得た。

【0080】
以上より、受信電極41a、41bの面積を変えてもV/P1aの最大値を得る周波数は変わらなかったが、V/P1aの最大値は変化した。

【0081】
これは、図4に示すように、受信電極41a、41bの面積は並列共振の周波数に関係しないと考えられるためである。しかし、受信電極41a、41bの面積によってV/P1aの最大値は変化した。受信電極41a、41bを1/4modelとした場合が最も効率よく情報伝送できる結果が得られたが、この理由として、2点が考えられる。まず、面積を変えていないOriginal modelよりも、受信電極41a、41bの面積が小さい1/4model及び1/100modelの場合に、V/P1aの最大値が大きくなった理由としては、図4に示す受信電極41a、41b間に、キャパシタンスCと抵抗Rとを介した短絡電流が流れるが、受信電極41a、41bの面積が小さくなることによりこの短絡電流が小さくなり(C//Rが小さくなり)、R側に流れる電流が増加することで、V/P1aの最大値が大きくなったと考えられる。次に、1/4modelよりも1/100modelの方がV/P1aの最大値が小さくなった理由としては、1/100modelは受信電極41a、41bの面積が小さすぎるために、単に受信電極41a、41bに誘導される電圧が小さくなったためと考えられる。

【0082】
従って、第4の実施の形態の体内情報伝送装置によれば、受信電極の面積を適切に形成することにより、体内から体外へより高効率に情報を伝送することができる。

【0083】
[その他の実施の形態]
上記各実施の形態における解析では、生体組織を筋とする場合について説明したが、生体素性の種類が異なると、解析対象の各パラメータは異なる値を示す。以下に解析結果を用いて具体的に説明する。

【0084】
本解析では、図15に示すように、生体組織を筋(Muscle model)から脂肪(Fat model)または脳脊髄液(CSF model)に変えて解析した。本解析では、ワイヤ42の長さは短い(y=895mm)場合のモデルを用い、R=1MΩとした。解析に関する共通事項は、第1の実施の形態で述べたとおりである。解析結果を表5に示す。

【0085】
【表5】
JP0005867848B2_000007t.gif

【0086】
表5に示すように、Fat modelでは、Vは160MHz、P1aは周波数1GHzで最大となった。また、Im(Z1a)は0になることはなく(1GHz以上のため)、SARは1GHzで最大になった。V/P1aは160MHzのとき最大値1588を得た。また、CSF modelでは、Vは150MHz、P1aは周波数95MHzで最大となった。また、Im(Z1a)は0になることはなく(10MHz以下のため)、SARは95MHzで最大になった。また、V/P1aの最大値は、筋、脂肪、脳脊髄液の順にそれぞれ118、1588、14.7であり、この分母に相当するP1aの値は、筋、脂肪、脳脊髄液の順に、それぞれ2.22E-4、9.14E-6、4.79E-4であった。なお、本解析では、図11に示す電気定数を用いているため、表5中の「1000 and over」は、周波数が1GHzより小さい範囲では、Im(Z1a)=0とならないことを表している。同様に、表5中の「10 and less」は、周波数が10MHzより大きい範囲では、Im(Z1a)=0とならないことを表している。

【0087】
以上より、P1a及びSARが最大をとる周波数とIm(Z1a)=0になる周波数は、生体組織が変わると変化した。一方、V及びV/P1aが最大となる周波数は、生体組織が変わることにより10MHz程度変化した。また、このときのV/P1aの値も、生体組織が変わると大きく変化した。

【0088】
これは、図3のように、送信電源21のLと生体組織のCとの直列共振がおき、この周波数においてIm(Z1a)=0が生じたと考えられる。また、同時に、送信電源21から見ると、インピーダンス整合がとれた状態になり、この付近の周波数で、P1a及びSARが最大になったと考えられる。また、この周波数は生体組織によって変化し、周波数の高い順に、脂肪、筋、脳脊髄液であった。脂肪は筋より比誘電率が小さいので、Cは小さくなり、筋より大きな周波数で最大となり、一方、脳脊髄液は筋より比誘電率が大きいのでCは大きくなり、筋より小さな周波数で最大となったと考えられる。

【0089】
及びV/P1aにおいて最大値が得られる周波数も、生体組織によって10MHz程度変化した。これも、図4に示すCが変化したためと考えられる。

【0090】
次に、V/P1aの最大値に関して考察する。脂肪の場合は筋より導電率が小さいので、生体組織でジュール熱になる分がほとんどなくP1aが小さい。脳脊髄液の場合は、筋より導電率がさらに小さいので、P1aは筋や脂肪よりも大きくなる。このため、V/P1aの最大値においては、P1aの値が支配的になり、脂肪において最大値1588を得、脳脊髄液において最低値14.7を得られたと考えられる。

【0091】
本解析により、情報伝送するための最適周波数(V/P1aが最大になった周波数)は、生体組織の種類によって少ししか変わらないが、受信する信号電圧の大きさは生体組織によって大きく変化することが確認できた。

【0092】
従って、上記各実施の形態において、対象とする人体の生体組織(送信部が配置される体内の生体組織、受信電極間の生体組織)の種類によって、ワイヤの長さ、受信回路の抵抗値、受信電極の面積を適切な値とすることにより、体内から体外へより高効率に情報を伝送することができる。

【0093】
なお、上記各実施の形態では、送信電極が2つの場合ついて説明したが、3つ以上の送信電極を用いてもよい。この場合、3つ以上の送信電極の中から2つの送信電極を時分割で順次選択しながら、電界を発生させるようにするとよい。受信部40では、最も効率よく伝送された情報を抽出するようにするとよい。これにより、電界が生じる向きを変化させることができるため、例えば、カプセル内視鏡のような体内で送信部の向きが不定となるような場合でも、体内から体外へ安定して情報を伝送することができる。

【0094】
また、上記のワイヤの長さ、受信回路の抵抗値、受信電極の面積以外にも、絶縁フィルムの種類、厚さ、送信電極の面積等を適切に設定することによっても、体内から体外へより高効率に情報を伝送することができる。以下、解析結果を用いて、これらの絶縁フィルムの種類、厚さ、送信電極の面積等の値を変えることで、S21(V/P1a(電源出力電力P1aに対する受信信号電圧V)に相当するパラメータ、詳細は後述)が変化することを示す。

【0095】
ここでは、電磁界解析ソフト(CST Microstripes)を用いて、TLM法によりSパラメータを求めた例を示す。解析モデルは、図5に示した送信部20、及び図7に示した受信部40を含んで構成されたモデルとし、送信電極22及び受信電極41はいずれも銅とした。受信回路43の負荷抵抗R=500Ωとし、人体部分は筋組織のみで構成された均一組織を用いた。周波数によって筋の導電率及び比誘電率は変わらず一定とし、導電率:0.72、比誘電率:62とした(人の150MHzの筋に値に相当)。また、絶縁フィルム23の導電率及び比誘電率も、周波数によって変わらず一定とし、導電率:1E-17、比誘電率:3とした。

【0096】
本解析では、パラメータとしてS21を測定した。S21は、入力から出力への電力の利得の平方根(P2a/P1a1/2に対応するパラメータであり、V/P1a1/2の比例に相当する値である。V/P1a(電源出力電力P1aに対する受信信号電圧V)とは値が異なるが、傾向は同じものを示す。

【0097】
上記の条件において、送信電極22の面積を変えた場合のS21の結果を図16に、受信電極41の面積を変えた場合のS21の結果を図17に、送信電極22につけた絶縁フィルム23の厚さを変えた場合のS21の結果を図18に示す。

【0098】
また、絶縁フィルム23には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル(アクリル)、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)、シリコーン、ポリ塩化ビニルポリウレタン系などが考えられるが、ポリウレタン系においては比誘電率が高く、導電率が大きくなる傾向にあるため、導電率:5E-15(S/m)、比誘電率:7.5とした場合についても解析した。その結果を図19に示す。

【0099】
さらに、人体の体型が変わった場合についても解析した。図20(a)に示すように、腹部の奥行きを1800mmのモデル(標準モデル)、及び同図(b)に示すように、腹部の奥行きを2倍(3600mm)に変更したモデル(肥満モデル)について、送信電極22の面積を変えた場合におけるS21の比較結果を図21に示す。S21が最大になる電極面積の値は、モデルによって異なることがわかる。つまり、人体のサイズの違いによっても、効率が最大になる送電電極面積の値は変化することがわかる。
【符号の説明】
【0100】
10、11、12、13、14 体内情報伝送装置
20 送信部
21 送信電源
22a、22b 送信電極
23 絶縁フィルム
24 センサ
25 制御部
40 受信部
41a、41b 受信電極
42 ワイヤ
43 受信回路
50 人体
図面
【図1】
0
【図7】
1
【図8】
2
【図2】
3
【図3】
4
【図4】
5
【図5】
6
【図6】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20