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明細書 :Bi2Te3結晶と3d遷移金属とを含む結晶組成物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-161989 (P2013-161989A)
公開日 平成25年8月19日(2013.8.19)
発明の名称または考案の名称 Bi2Te3結晶と3d遷移金属とを含む結晶組成物の製造方法
国際特許分類 H01L  35/34        (2006.01)
H01L  35/16        (2006.01)
C22C  29/00        (2006.01)
FI H01L 35/34
H01L 35/16
C22C 29/00 Z
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 29
出願番号 特願2012-023502 (P2012-023502)
出願日 平成24年2月6日(2012.2.6)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年8月29日 公益社団法人応用物理学会主催の「第72回応用物理学会学術講演会」においてポスターをもって発表 平成23年11月2日 国立大学法人山形大学のプレス発表資料に発表 平成24年1月31日 国立大学法人山形大学広報誌みどり樹編集委員会発行の「山形大学広報誌 みどり樹2~5頁 vol.50 Winter 2011」に発表
発明者または考案者 【氏名】佐々木 実
出願人 【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001508、【氏名又は名称】特許業務法人 津国
【識別番号】100078662、【弁理士】、【氏名又は名称】津国 肇
【識別番号】100131808、【弁理士】、【氏名又は名称】柳橋 泰雄
【識別番号】100119079、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 佐保子
【識別番号】100116528、【弁理士】、【氏名又は名称】三宅 俊男
【識別番号】100146031、【弁理士】、【氏名又は名称】柴田 明夫
【識別番号】100151367、【弁理士】、【氏名又は名称】柴 大介
審査請求 未請求
要約 【課題】BiTe系結晶をベースとして、表面電子を有する結晶(TI結晶)を製造でき、熱電変換特性の向上したBiTe系結晶(TEC結晶)の製造方法を提供する。
【解決手段】BiTe結晶(成分A)と3d遷移金属元素(成分B)とを混合して得た結晶組成物の部分の電気抵抗率を調整する工程を有し、BiTe単結晶の温度T(K)における電気抵抗率をρ(mΩcm)、前記部分の電気抵抗率をρ(mΩcm)としたとき、前記工程が、80≦T≦300でρが極小値を有し、かつ、T=80においてρ<ρとなるような前記部分が、結晶組成物中に10%以上あるように成分Bを選択しその含有量を調整する工程1、又は、T=300でρ<0.6ρとなるような前記部分が、結晶組成物中に20%以上あるように、成分Bを選択しその含有量を調整する工程2を有する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
BiTe結晶(成分A)と、3d遷移金属から選ばれる少なくとも1種の金属元素(成分B)とを含む結晶組成物の製造方法であって、
前記製造方法が、前記成分Aと前記成分Bとを混合して、
前記結晶組成物の部分の電気抵抗率を調整する工程を有し、
BiTe単結晶の温度T(K)における電気抵抗率をρ(T)(mΩcm)とし、前記部分の温度T(K)における電気抵抗率をρ(T)(mΩcm)としたとき、
前記工程が、
80≦T≦300において、ρ(T)が極小値を有し、かつ、
T=80において、ρ(T)<ρ(T)となるような前記部分が、前記結晶組成物中に10%以上あるように、前記成分Bを選択し、前記成分Bの含有量を調整する工程1、又は、
T=300において、ρ(T)<0.6ρ(T)
となるような前記部分が、前記結晶組成物中に20%以上あるように、前記成分Bを選択し、前記成分Bの含有量を調整する工程2を有する結晶組成物の製造方法。
【請求項2】
前記工程1において、ρ(T)の80≦T≦300における最も低温側の極小値ρに対して、ρ≦ρ(80)である請求項1記載の結晶組成物の製造方法。
【請求項3】
前記工程1において、T=80において、2≦ρ(T)である請求項1又は2記載の結晶組成物の製造方法。
【請求項4】
前記工程2において、T=300において、ρ(T)≦0.55ρ(T)である請求項1記載の結晶組成物の製造方法。
【請求項5】
前記3d遷移金属が、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni及びCuからなる群である請求項1~4のいずれか記載の結晶組成物の製造方法。
【請求項6】
前記3d遷移金属が、Mn、Fe、Co及びNiからなる群である請求項5記載の結晶組成物の製造方法。
【請求項7】
前記工程において、前記成分Aと前記成分Bとを溶融混合する請求項1~6のいずれか記載の結晶組成物の製造方法。
【請求項8】
前記請求項1~7のいずれか1項記載の製造方法で得られうるBiTeと3d遷移金属から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む結晶組成物。
【請求項9】
BiTe結晶とFeとを含む結晶組成物であって、
BiTe単結晶の温度T(K)における電気抵抗率をρ’(T)(mΩcm)とし、
前記結晶組成物の部分の温度T(K)における電気抵抗率をρ’(T)(mΩcm)としたとき、
80≦T≦300において、ρ’(T)が極小値を有し、かつ、T=80において、ρ’(T)<ρ’(T)となるような前記部分が、前記結晶組成物中に10%以上ある結晶組成物。
【請求項10】
BiTe結晶とCo及び/又はNiとの結晶組成物であって、
BiTe単結晶の温度T(K)における電気抵抗率をρ”(T)(mΩcm)とし、
前記結晶組成物の部分の温度T(K)における電気抵抗率をρ”(T)(mΩcm)としたとき、
T=300において、ρ’(T)<ρ”(T)
となるような前記部分が、前記結晶組成物中に20%以上ある結晶組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、BiTe結晶と3d遷移金属とを含む結晶組成物の製造方法、及び、その製造方法によって得られうるBiTe結晶と3d遷移金属とを含む結晶組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の固体物性理論の進展によって、特定のトポロジーの分類に属する状態を有し、バルク部分が絶縁体又は半導体であっても、表面が導電性を有する物質(以下、トポロジカル絶縁体という)が存在することが理論的に予想されていたところ、2000年代後半から、トポロジカル絶縁体性状を有すると考えられる具体的な結晶が見出されてきた(非特許文献1)。
例えば、BiTe系結晶については、BiTe単結晶に過剰にTeを混合することで、トポロジカル絶縁体の性状を有すると考えられているBiTe系結晶(以下、TI結晶ともいう)が得られており、表面の導電性を担うと考えられている電子(以下、表面電子ともいう)の存在について詳細に調査されている(非特許文献2)。
【0003】
トポロジカル絶縁体における表面電子の移動度は、表面に不純物、フォノン等の散乱因子が存在しても、その影響を受け難いことが予想されており、トポロジカル絶縁体の性状を有すると考えられているTI結晶系において、表面に存在する電子の移動度自体が極めて高く、その温度依存性が極めて小さいと考えられている。
【0004】
このように移動度が極めて高く温度に対して安定な電子は、コンピュータ等の電子機器中の各種素子の時間応答性を大幅に短縮することが期待されている。
【0005】
一方、BiTe系結晶は、低温度領域の熱エネルギーの回収を目的に、低温度領域の排熱を利用して発電が可能な熱電変換モジュールとして注目されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】パリティ 第25巻 第11号 4~13頁
【非特許文献2】PHYSICAL REVIEW B 84、125144-1~9(2011)
【非特許文献3】東芝レビュー Vol.63 No.2 (2008)
【非特許文献4】Challenge of Intelligence for Future BREAK THROUGH 2001年7月号 9~13頁
【非特許文献5】V.A.Kulbachinskii,M.Inoue,M.Sasaki,H.Negishi,W.X.Gao,Y.Giman,P.Lostak,and J.Horak, Phys.Rev.B 50 (1994)
【非特許文献6】J.G.Checkelsky et al.,Physical Review Letters,Vo.103,24661(2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、例えば、非特許文献2のように、BiTe結晶に過剰にTeを混合してTI結晶を得る方法では、同一の製造条件下でTI結晶を得ることができる確率が小さく、仮に、TI結晶が得られても、その特性の経時安定性が極めて低いことが確認された。また、BiTe系結晶の熱電変換特性をさらに向上するための方法も、十分に開発されているとはいえない。
【0008】
本発明は、BiTe系結晶をベースとして、経時的に安定なTI結晶を製造でき、熱電変換特性のさらに向上したBiTe系結晶(以下、TEC結晶ともいう)を製造できる方法と、その方法によって得られうるTI結晶及びTEC結晶を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下を内容とする。
(1)BiTe結晶(成分A)と、3d遷移金属から選ばれる少なくとも1種の金属元素(成分B)とを含む結晶組成物の製造方法であって、
前記製造方法が、前記成分Aと前記成分Bとを混合して、
前記結晶組成物の部分の電気抵抗率を調整する工程を有し、
BiTe単結晶の温度T(K)における電気抵抗率をρ(T)(mΩcm)とし、前記部分の温度T(K)における電気抵抗率をρ(T)(mΩcm)としたとき、
前記工程が、
80≦T≦300において、ρ(T)が極小値を有し、かつ、
T=80において、ρ(T)<ρ(T)となるような前記部分が、前記結晶組成物中に10%以上あるように、前記成分Bを選択し、前記成分Bの含有量を調整する工程1、又は、
T=300において、ρ(T)<0.6ρ(T)
となるような前記部分が、前記結晶組成物中に20%以上あるように、前記成分Bを選択し、前記成分Bの含有量を調整する工程2を有する結晶組成物の製造方法、
(2)前項(1)記載の製造方法で得られうるBiTeと3d遷移金属から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む結晶組成物、
(3)BiTe結晶とFeとを含む結晶組成物であって、
BiTe単結晶の温度T(K)における電気抵抗率をρ’(T)(mΩcm)とし、
前記結晶組成物の部分の温度T(K)における電気抵抗率をρ’(T)(mΩcm)としたとき、
80≦T≦300において、ρ’(T)が極小値を有し、かつ、
T=80において、ρ’(T)<ρ’(T)となるような前記部分が、前記結晶組成物中に10%以上ある結晶組成物、及び、
(4)BiTe結晶とCo及び/又はNiとの結晶組成物であって、
BiTe単結晶の温度T(K)における電気抵抗率をρ”(T)(mΩcm)とし、
前記結晶組成物の部分の温度T(K)における電気抵抗率をρ”(T)(mΩcm)としたとき、
T=300において、ρ’(T)<0.6ρ”(T)
となるような前記部分が、前記結晶組成物中に20%以上ある結晶組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、BiTe系結晶をベースとして、経時的に安定なTI結晶を製造でき、熱電変換特性のさらに向上したTEC結晶を製造できる方法と、その方法によって得られうるTI結晶及びTEC結晶を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
非特許文献2によればBiTe単結晶にTeを溶融混合することによってTI結晶(以下、このTI結晶をTI結晶1という)を得る。
温度T(K)における、BiTe単結晶の電気抵抗率をρ(T)(mΩcm)と表記すると、ρ(T)は、温度Tに対して、縮退半導体に特徴的な挙動を示す(例えば、表19)。
なお、BiTe単結晶がp型縮退半導体であるか、n型縮退半導体であるかは、ホール効果又はゼーペック効果を利用して確認することができ、BiTe単結晶はp型縮退半導体であることが確認されている(例えば、非特許文献5)。
一方、TI結晶1の温度T(K)における電気抵抗率をρ(T)(mΩcm)とすると、
TI結晶1の製造直後には、
ρ(T)は、80≦T≦300の範囲で極小値を有し、T=80において、ρ(T)<ρ(T)となるTI結晶に特徴的な挙動を示す(例えば、非特許文献6)。

【0012】
しかし、このTI結晶1を室内環境(温度約5~約30℃、湿度約30~約60%)で、3月静置すると、各温度Tにおけるρ(T)の値が急激に低減し、9月静置すると、ρ(T)の温度Tに対する挙動はBiTe単結晶の挙動に戻ってしまう(例えば、表21)。
即ち、BiTe単結晶にTeを溶融混合する方法によって得られたTI結晶1の性状は極めて不安定であることが確認された。
さらに、TI結晶1は、同一の製造条件で得られる確率が極めて低い(例えば、表20)。

【0013】
以上の知見に基づいて、以下の考察を行った。
理想的な化学量論比のBiTe単結晶は、バルク部分は価電子帯が電子で充満された真性半導体であり、表面にエネルギー・ギャップレスの伝導帯が存在するトポロジカル絶縁体であると考えられている(例えば、非特許文献1で引用されているH.Zhang et al,:Nat.Phys.5,438(2009))。
しかし、BiTe結晶の融点である570℃付近ではTeはBiに比べて蒸気圧が高いため、BiTe結晶中にTe欠陥が出来やすい。従って、BiとTeを化学量論比で混合して得たBiTe単結晶を製造しても、Teが単結晶中に安定して存在できないため、通常は、価電子帯に正孔が生じてp型縮退半導体になっていると考えられる(例えば、表19)。
そこで、p型縮退半導体であるBiTe単結晶に、さらに過剰のTeを混合して溶融混合すると、Teのある特定含有量において、バルク部分のTe欠陥(価電子帯の正孔)が解消して真性半導体になると同時に、表面がエネルギー・ギャップレスの伝導帯を有する、トポロジカル絶縁体と考えられている状態であるTI結晶1を得ることができる、と考えられる(例えば、表21)。
しかし、Teが結晶中に安定して存在できないため、TI結晶1を得られる確率が低く、仮にTI結晶1を得ても、その状態を安定して保持できないと考えられる(例えば、表20及び21)。

【0014】
本発明においては、TI結晶1の状態の上記の不安定さを表現するために、後述する結晶組成物の部分の電気抵抗率に着目し、結晶組成物の部分の電気抵抗率が特定の要件を満たすように結晶組成物を設計した点に特徴がある。
なお、本発明において結晶組成物の部分とは、結晶組成物(例えば、実施例におけるようなインゴット状結晶組成物)から切り出される、電気抵抗率を測定することができる後述する程度のサイズの矩形サンプル(結晶組成物)を4から10個程度切り出すことができるプレート状結晶組成物である。

【0015】
具体的には、本発明の製造方法は、TI結晶1を製造する際のBiTe単結晶に混合したTeを、3d遷移金属に置換えて結晶組成物の部分の電気抵抗率を所定の態様に設計する点に特徴がある、BiTe結晶(成分A)と、3d遷移金属から選ばれる少なくとも1種の金属(成分B)とを含む結晶組成物の製造方法である。

【0016】
本発明の製造方法は、以下を内容とする。
即ち、結晶組成物の製造方法は、成分Aと成分Bとを混合して、結晶組成物の部分の電気抵抗率を調整する工程を有し、
BiTe単結晶の温度T(K)における電気抵抗率をρ(T)(mΩcm)とし、結晶組成物の部分の温度T(K)における電気抵抗率をρ(T)(mΩcm)としたとき、
この工程が、
80≦T≦300において、ρ(T)が極小値を有し、
かつ、T=80において、ρ(T)<ρ(T)(以下、第1の抵抗率要件ともいう)
となるような部分が、結晶組成物中に10%以上あるように、成分Bを選択し、成分Bの含有量を調整する工程1を有する態様(以下、工程1を有する本発明の態様を、第1の製造方法ともいう)、又は、
T=300において、ρ(T)<0.6ρ(T)(以下、第2の抵抗率要件ともいう)
となるような前記部分が、前記結晶組成物中に20%以上あるように、成分Bを選択し、成分Bの含有量を調整する工程2を有する態様(以下、工程2を有する本発明の態様を、第2の製造方法ともいう)である。

【0017】
本発明の製造方法で得られたTI結晶の経時的安定性を向上する観点から、
工程1において、第1の抵抗率要件は、さらに、
ρ(T)の80≦T≦300における最も低温側の極小値ρに対して、ρ≦ρ(80)であることが好ましく、さらに、
T=80において、2≦ρ(T)であることがより好ましく、3≦ρ(T)であることが更に好ましく、4≦ρ(T)であることが更に好ましい。

【0018】
本発明の製造方法で得られたTEC結晶の低抵抗率性を安定に確保する観点から、
工程2において、第2の抵抗率要件は、さらに、
T=300Kにおいて、ρ(T)≦0.55ρ(T)であることが好ましく、ρ(T)≦0.5ρ(T)であることがより好ましい。

【0019】
〔成分A〕
本発明の製造方法における成分Aは、第1又は第2の抵抗率要件を容易に見出せるという観点から、好ましくはBiTe単結晶である。
成分Aは、Bi-Te系熱電材料として使用されてきた周知のものを使用でき、例えば、市販されているもの(例えば、BII15PB(株式会社高純度化学研究所製)、BIC-17209A(フルウチ化学社製))を、必要に応じて精製して使用することができる。
成分Aは、好ましくは溶製法又は焼成法によって製造できるが(非特許文献4)、不純物や欠陥が特性を低下させるという観点から、より好ましくは溶製法であり、更に好ましくはブリッジマン法によって製造する。

【0020】
BiTe単結晶の精製は、好ましくは、以下のように行う。
成分Aの原料粉末を、型枠(好ましくは石英管)に好ましくは、ロータリーポンプを用いて10-3~10-1トール、より好ましくは2×10-3~0.5×10-1トールの真空度にして真空封入した後、電気炉内で、
昇温速度を、好ましくは300~800℃/時間、より好ましくは400~700℃/時間、更に好ましくは550~700℃/時間、
到達温度を、好ましくは500~1200℃、より好ましくは700~1100℃、更に好ましくは800~1000℃に設定し、
到達温度での加熱時間を、好ましくは1~24時間、より好ましくは2~12時間、更に好ましくは4~8時間に設定して加熱し、原料粉末を溶融する。

【0021】
上記加熱終了後、電気炉内の温度を、
冷却速度を、好ましくは50~200℃/時間、より好ましくは100~200℃/時間に設定して、
好ましくは600~800℃、より好ましくは700~800℃まで冷却し、その後、
冷却速度を、好ましくは2~20℃/時間、より好ましくは5~15℃/時間に設定して、
室温になるまで徐冷して冷却インゴットを得る。

【0022】
実態顕微鏡観察によって、冷却インゴットの表面に付着した不純物を、例えば、市販の新品のオルファカッター(オルファ社製)の替刃を使い捨てながら、好ましくは精密加工用カッター(例えば、精密細工用オルファカッター(オルファ社製、品番AR1KNIII))により除去する。
この冷却インゴットを粉砕して、上記の操作を、不純物が観察されなくなるまで繰り返して精製作業を行う。
粉砕は、ラボスケールでは乳鉢で粉砕してもよく、工業生産スケールでは、少なくとも乳鉢と同程度の粉砕効果を有する粉砕機で行うことが好ましい。
このようにして精製されたBiTe単結晶を、成分Aとして、また、電気抵抗率ρ(T)を測定するためのBiTe単結晶として使用することが好ましい。

【0023】
〔成分B〕
成分Bは、3d遷移金属から選ばれる少なくとも1種の金属であり、好ましくは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni及びCuからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であることが好ましく、より好ましくは、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であることが好ましく、第1の製造方法においては、第1の抵抗率要件を満たすように調整することが容易である観点から、Feであることが更に好ましく、第2の製造方法においては、第2の抵抗率要件を満たすように調整することが容易である観点から、Co及び/又はNiであることが更に好ましい。

【0024】
成分Bは、市販の試薬を使用できるが、第1の抵抗率要件もしくは第2の抵抗率要件を満たすという観点から、純度99%以上であることが好ましく、純度99.9%以上であることがより好ましく、純度99.99%以上であることが更に好ましい。

【0025】
〔BiTe単結晶〕
成分AがBiTe単結晶であれば、これをBiTe単結晶として、ρ(T)を測定してよい。
また、成分Aとは別に、BiTe単結晶を製造するか、BiTe単結晶の市販品を使用してρ(T)を測定してもよい。
BiTe単結晶を製造する場合は、成分Aと同じ製法で製造し、BiTe単結晶の市販品を購入する場合は、成分Aと同じ製法で製造及び精製されたものを使用することが好ましい。

【0026】
〔成分Aと成分Bとを混合する条件〕
成分Aに成分Bを混合する方法としては、
成分Aと成分Bの混合物を溶融させた後に徐冷する混合溶融法、
成分Aに、イオン化させた成分Bを注入するイオン注入法、
高温下で、成分Aに、成分Bを表面から拡散させる拡散法等が使用できるが、
成分Bが、成分A中に均一に混合し、ρ(T)の温度に対する挙動(第1又は第2の抵抗率要件)を、工程1又は工程2の中で安定に制御する観点から、混合溶融法が好ましい。
以下では、混合溶融法について詳細に説明する。

【0027】
〔混合溶融法の好適な条件〕
混合溶融法においては、後述する冷却インゴット内の成分Bの分布が均一になるような条件を選択することが好ましい。以下では、ラボスケールで冷却インゴットを製造するための好適条件を説明するが、工業生産スケールで製造する場合は、それぞれの条件をスケールアップされた要素に応じて調整することが好ましい。

【0028】
(1)成分Aと成分Bの混合条件
成分Aと成分Bとは、加熱する前に、予め混合して、成分Aと成分Bの混合物にしておくことが好ましい。
成分A及び成分Bの原料が、粉末状であれば、成分Aと成分Bとを攪拌混合すればよく、
成分A及び/又は成分Bの原料が塊状であれば、塊状の原料を乳鉢で粉砕して両者を混合するか、原料のまま両者を混合して粉砕する。
なお、成分A及び成分Bの原料は、混合溶融工程で不純物が混入しないように取り扱い、混入した場合は、取り除いて混合溶融工程に付することが好ましい。

【0029】
(2)型枠への充填条件
成分Aと成分Bの混合物を、
室温(好ましくは5~35℃、より好ましくは10~30℃、更に好ましくは15~25℃)において、型枠(好ましくは石英製の型枠)に真空充填する。

【0030】
(3)溶融混合条件
成分Aと成分Bの混合物を溶融混合する方法としては、
成分Bが、成分A中に均一に混合し、ρ(T)の温度に対する挙動(第1又は第2の抵抗率要件)を、工程1又は工程2の中で安定に制御する観点から、
成分Aを融点以上の溶融温度で溶融させて、又は、溶融させつつ、成分Bを添加して溶融混合することが好ましく、
成分Aと成分Bの混合物を、成分Aの融点以上の溶融温度で溶融させることがより好ましい。
溶融混合の際の加熱及び冷却は、加熱速度、冷却速度、到達温度及び加熱時間等をプログラムできるような電気炉として、例えば、光洋リンドバーグ社のKBF748を、温度制御器はシマデン社製のDSM温度制御器を組み合わせて使用することが好ましく、炉内で温度分布を制御できる電気炉内で行われることがより好ましい。

【0031】
(4)溶融温度を制御するための加熱条件
昇温速度は、
成分Bが、成分A中に均一に混合し、ρ(T)の温度に対する挙動(第1又は第2の抵抗率要件)を、工程1又は工程2の中で安定に制御する観点から、
好ましくは300~800℃/時間、より好ましくは400~700℃/時間、更に好ましくは550~700℃/時間である。

【0032】
到達温度は、
成分Bが、成分A中に均一に混合し、ρ(T)の温度に対する挙動(第1又は第2の抵抗率要件)を、工程1又は工程2の中で安定に制御する観点から、
BiTeの融点(570℃)より充分高温であればよく、
好ましくは600~1200℃、より好ましくは700~1100℃、更に好ましくは800~1000℃に設定する。

【0033】
到達温度後の加熱時間は、
成分Bが、成分A中に均一に混合し、ρ(T)の温度に対する挙動(第1又は第2の抵抗率要件)を、工程1又は工程2の中で効率よく安定に制御する観点から、
好ましくは2~48時間、より好ましくは4~24時間、更に好ましくは8~16時間、更に好ましくは10~14時間に設定する。

【0034】
(5)冷却条件
電気炉内で混合溶融した試料は、加熱終了後、電気炉内の温度を、
冷却速度を、好ましくは60~300℃/時間、より好ましくは120~200℃/時間に設定して、
好ましくは600~800℃、より好ましくは700~800℃まで冷却し、その後、
冷却速度を、好ましくは2~10℃/時間、より好ましくは2~5℃/時間に設定して、
室温になるまで徐冷して、冷却されたインゴット(以下、冷却インゴットともいう)を得る。

【0035】
なお、到達温度での加熱後に、型枠を、他の電気炉に移して、移した先の電気炉において冷却工程を実施してもよい。
その場合、到達温度での加熱後、加熱を停止して室温まで自然冷却して、型枠を取り出し、他の電気炉に移した後、再度、上記の好適昇温速度で加熱して上記の好適到達温度になった後、上記の好適冷却条件で冷却を行うことが好ましい。

【0036】
〔電気抵抗率の測定条件〕
冷却インゴットが、断面が10~5mm、長さが2~10cm程度の場合を例にして電気抵抗率の測定条件を説明する。
冷却インゴットの長さ方向を、好ましくは3~10mm、より好ましくは3~8mm、更に好ましくは3~7mmごとに、前記数値範囲の厚さを有する部分に分割する。
各部分から、厚さ50~300μm、縦長さ2~4mm、横長さ1~2mmの矩形サンプルを少なくとも1個、好ましくは2~10個、より好ましくは4~10個切り出す。
冷却インゴットから得られる各部分と、各部分から得られる各矩形サンプルは、例えば、市販の新品のオルファカッター(オルファ社製)の替刃を使い捨てながら、好ましくは精密加工用カッター(例えば、精密細工用オルファカッター(オルファ社製、品番AR1KNIII))で切り出す。

【0037】
各矩形サンプルについて、温度t=77~300(K)の範囲の所定の各温度tにおける抵抗R(t)を電流一定(好ましくは0.002~0.1A、より好ましくは0.002~0.05A、更に好ましくは0.002~0.01Aの下で測定する。
温度t(K)における電気抵抗率ρ(t)(mΩcm)は、下記式(1):
ρ(t)=R(t)dy/x (1)
(dは矩形サンプルの厚さ、xは矩形サンプルの縦長さ、yは矩形サンプルの横長さを表す)。
測定温度は、好ましくは80Kから、1~5Kきざみで設定する。

【0038】
測定されたtにおけるρ(t)に対して、データ処理ソフトORIGIN(ORIGIN社製)の内挿法を利用する補完解析を適用して、80Kから1K間隔の温度Tにおける電気抵抗率ρDC(T)を算出する。

【0039】
1つの部分について、各矩形サンプルの所定温度Tにおける電気抵抗率の算術平均値ρ(T)を、その部分のその所定温度における電気抵抗率とする。
なお、1つの部分から1つの矩形サンプルを採取している場合は、ρ(T)=ρDC(T)である。
T-ρ(T)プロットに基づいて、例えば、データ処理ソフトORIGIN(ORIGIN社製)の微分解析を適用して、各温度Tにおける微分係数を算出する。

【0040】
なお、BiTe単結晶について、必要であれば、精製を行った上で得られる冷却インゴットについても、同様にして矩形サンプルを採取してρ(T)を求め、これをρ(T)と表記する。

【0041】
〔工程1〕
冷却インゴットから得られる全部分の、10%以上の部分の電気抵抗率、好ましくは20%以上の部分の電気抵抗率、より好ましくは30%以上の部分の電気抵抗率、更に好ましくは40%以上の部分の電気抵抗率、更に好ましくは50%以上の部分の電気抵抗率、更に好ましくは60%以上の部分の電気抵抗率、更に好ましくは70%以上の部分の電気抵抗率、更に好ましくは90%以上の部分の電気抵抗率が、第1の抵抗率要件を満たすように、成分Bを、3d遷移金属から、好ましくは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni及びCuからなる群から、より好ましくは、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選び、成分Bの含有量を調整する。

【0042】
〔工程2〕
冷却インゴットから得られる全部分の、20%以上の部分の電気抵抗率、好ましくは30%以上の部分の電気抵抗率、より好ましくは40%以上の部分の電気抵抗率、更に好ましくは50%以上の部分の電気抵抗率、更に好ましくは60%以上の部分の電気抵抗率、更に好ましくは70%以上の部分の電気抵抗率、更に好ましくは80%以上の部分の電気抵抗率、更に好ましくは90%以上の部分の電気抵抗率が、第2の抵抗率要件を満たすように、成分Bを、3d遷移金属から、好ましくは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni及びCuからなる群から、より好ましくは、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選び、成分Bの含有量を調整する。

【0043】
本発明の製造方法は、以上のように、成分Aに対して、結晶組成物の部分の電気抵抗率の温度依存性を指標として、成分Bの種類と含有量を調整する点に特徴があり、
結晶組成物の部分の電気抵抗率の温度依存性を特定して指標とすることによって、新規な結晶組成物(例えば、上記の冷却インゴット及びその部分)を製造できるものである(実施例1及び2)。

【0044】
〔第1の製造方法により得られうる結晶組成物〕
本発明の第1の製造方法によって、BiTe結晶とFeとを含む結晶組成物であって、
BiTe単結晶の温度T(K)における電気抵抗率をρ’(T)(mΩcm)とし、
結晶組成物の部分の温度T(K)における電気抵抗率をρ’(T)(mΩcm)としたとき、
80≦T≦300において、ρ’(T)が極小値を有し、
かつ、T=80において、ρ’(T)<ρ’(T)となるような部分が、前記結晶組成物中に10%以上ある結晶組成物(例えば、上記の冷却インゴット及びそれを分割した部分)を得ることができる。

【0045】
この結晶組成物において第1の抵抗率要件を満たす部分は、非特許文献2で得られたTI結晶と同様の挙動を、長期間にわたり安定して示す(例えば、表22)。
即ち、本発明の第1の製造方法は、成分Aに対して、所定の結晶組成物の部分の電気抵抗率の特定の温度依存性(第1の抵抗率要件)を指標として、Teと同様のドナー挙動を示すと考えられる3d遷移金属から選ばれる成分Bの種類と含有量を調整することで、非特許文献2で得られたTI結晶と同様の挙動を、長期間にわたり安定して示すTI結晶を得ることを可能とする。

【0046】
〔第2の製造方法により得られうる結晶組成物〕
本発明の第2の製造方法によって、BiTe結晶とCo及び/又はNiとの結晶組成物であって、
温度Tにおける、BiTe単結晶の電気抵抗率をρ”(T)(mΩcm)、
結晶組成物の部分の温度T(K)における電気抵抗率をρ”(T)(mΩcm)としたとき、
T=300において、ρ”(T)<0.6ρ”(T)
となるような前記部分が、前記結晶組成物中に20%以上ある結晶組成物(例えば、上記の冷却インゴット及びそれを分割した部分)を得ることができる(例えば、表13、14、16~18)。

【0047】
非特許文献4によれば、熱電変換材料の熱電変換効率は、無次元性能指数(ZT≡Sσ/κ)(Sはゼーベック係数、σは電気伝導率、κは熱伝導率)が大きいほどよいとされる。
第2の製造方法により得られうる結晶組成物は、従来のBiTe結晶に、Co及び/又はNiを特定量混合して、電気抵抗率を低減し、その結果、電気抵抗率の逆数である電気伝導率を向上しており、ZTの増大に寄与するものである。

【0048】
元々、BiTe単結晶はp型縮退半導体であり、そこに、Teと同様のドナー挙動を示すと考えられる3d遷移金属を混合すれば、正孔が低減して、結晶組成物の電気抵抗率は増大(電気伝導率は減少)することが予想され、実際、ほとんどの3d遷移金属の含有量範囲では、結晶組成物の電気抵抗率は増大(電気伝導は減少)するが、第2の製造方法によれば、特定の含有量において、その逆の傾向を示すという、予想されない効果を伴う結晶組成物が得られたことになる(例えば、表13、14、16~18)。

【0049】
即ち、第2の製造方法及びその方法で得られた結晶組成物は、従来のBiTe結晶の熱電変換効率を向上するための新規な方法と、従来のBiTe結晶の熱電変換効率を向上した新規な結晶組成物を提供することができるものである。
【実施例】
【0050】
(1)原料
(1-1)成分A(BiTe結晶、粉末)
テルル化ビスマス(株式会社高純度化学研究所製、品番BII15PB、純度99.9%)
【実施例】
【0051】
(1-2)成分B(いずれも粉末)
Fe:株式会社高純度化学研究所製、品番FEE03PB、純度99.9%
Co:株式会社高純度化学研究所製、品番COE03PB、純度99%
Ni:株式会社高純度化学研究所製、品番NIOE08PB、純度99.9%
【実施例】
【0052】
(1-3)Te
株式会社高純度化学研究所製、品番TEE10PB、純度99.98%
【実施例】
【0053】
(2)BiTe単結晶
成分Aの粉末原料25gを、石英管(容量:約10cc(長さ10cm))にロータリーポンプを用いて10-2トール程度の真空度で真空封入した後、
電気炉内で、昇温速度1.67℃/分、到達温度900℃に設定された条件で加熱し、
到達温度900℃で6時間攪拌せずに加熱して溶解した後、加熱を停止し、
電気炉内で1時間かけて750℃とした後、
冷却速度10℃/時間で25時間冷却して冷却インゴットを得る。
光学顕微鏡観察によって、冷却インゴットの表面に付着した不純物をオルファカッターで切削して除去して精製した。
この冷却インゴットを乳鉢で粉砕して、上記の操作を、不純物が観察されなくなるまで繰り返して精製作業を行い、不純物が観察されなくなった冷却インゴットをBiTe結晶の比較冷却インゴット1(長さ10cm、断面積20mm)とした。
【実施例】
【0054】
(3)TI結晶1
上記の精製されたBiTe単結晶を成分Aとして使用した。
成分Aの5gとTeの0.376gとを、乳鉢内で粉砕混合した。
混合物の全量を、石英管(容量:約10cc(長さ10cm))に投入して、
昇温速度300℃/分、到達温度950℃に設定された条件で加熱し、
950℃で12時間、加熱して溶解した後、
電気炉内で冷却速度480℃/時間で室温まで冷却して、その後、
別の電気炉に入れ直して、
昇温速度100℃/時間、到達温度900℃に設定された条件で加熱した後、冷却速度600℃/時間で室温まで冷却して、TI結晶1の比較冷却インゴット2(長さ8cm、断面積24mm)を得た。
比較冷却インゴット2は、成分AとTeの合計量に対するTeの組成比が7重量%である。
【実施例】
【0055】
(4)本発明の結晶組成物
TI結晶1の製造条件において、Teを、Fe、Co及びNiにそれぞれ置き換えて、同様にして実施例結晶組成物の冷却インゴットを得た。
なお、冷却インゴット中における、成分Aと混合した金属元素の合計量に対する、混合した金属元素の組成比(重量%)(以下、金属含有量ともいう)を表1に示すように変えて実施例結晶組成物の冷却インゴットを製造した。
Teを、Feに置き換えて得た冷却インゴットを冷却インゴット(Fex)、
Teを、Coに置き換えて得た冷却インゴットを冷却インゴット(Cox)、
Teを、Niに置き換えて得た冷却インゴットを冷却インゴット(Nix)、
Teを、Mnに置き換えて得た冷却インゴットを冷却インゴット(Mnx)(xは各金属含有量を表す)と表記する。
【実施例】
【0056】
(5)矩形サンプルの採取
部分の分割及び矩形サンプルの切り出しはオルファカッター(オルファ社製)を使用した。
【実施例】
【0057】
(5-1)比較冷却インゴット1
比較冷却インゴット1を長さ方向に5mm間隔で切断し、厚さ5mmの部分に6分割(部分の数6個)した。
各部分から、厚さd=50~300μm、縦長さx=2~4mm、横長さy=1~2mmの矩形サンプルを1個切り出した。この切り出し条件を表1にまとめた。
【実施例】
【0058】
(5-2)比較冷却インゴット2
比較冷却インゴット1を長さ方向に5mm間隔で切断し、厚さ6mmの部分に6分割した。
各部分から、厚さ50~300μm、縦長さ2~4mm、横長さが1~2mmの矩形サンプルを1個切り出した。この切り出し条件を表1にまとめた。
【実施例】
【0059】
(5-3)冷却インゴット(Fex)、(Mnx)、(Cox)及び(Nix)
冷却インゴット(Fe1.25)(長さ3cm)は、長さ方向に6mm間隔で切断し、厚さ6mmの部分に5分割し(部分の数が5)、各部分から、厚さd=50~300μm、縦長さx=2~4mm、横長さが1~2mmの矩形サンプルを1個切り出した。この切り出し条件を表1にまとめた。
他の冷却インゴットの切り出し条件も表1にまとめた。
【実施例】
【0060】
【表1】
JP2013161989A_000002t.gif
【実施例】
【0061】
(6)矩形サンプルの電気抵抗率の測定
(6-1)冷却インゴット(Fe1.25)
冷却インゴット(Fe1.25)から採取した各矩形サンプルについて、温度t=77~300(K)の範囲で1~4K刻みの各温度tにおける抵抗R(t)を電流0.1Aの下で測定し、式(1)により各温度tにおける電気抵抗率ρ(t)を算出した。
【実施例】
【0062】
温度80Kから1K毎の各温度Tにおける各矩形サンプルの電気抵抗率ρ(T)を算出し、各矩形サンプルの温度Tにおける電気抵抗率とする。
なお、1つの部分から1つの矩形サンプルを採取しているので、ρDC(T)がその1つの部分の温度Tにおける電気抵抗率ρ(T)である。
各部分の温度Tにおける電気抵抗率ρ(T)の値と微分係数の値を表2にまとめた。
なお、ρ(T)は80Kから10℃毎の値を示した。
【実施例】
【0063】
(6-2)その他の冷却インゴット
その他の冷却インゴット(Fex)、(Mnx)、(Cox)及び(Nix)並びに比較冷却インゴット1及び2についても、冷却インゴット(Fe10.00)と同様に各部分の温度Tにおける電気抵抗率ρ(T)の値と微分係数の値を求めた。その結果を表3~20にまとめた。
なお、比較冷却インゴット1の6個の部分についての温度Tにおけるρ(T)の算術平均をρ(T)とする。
【実施例】
【0064】
【表2】
JP2013161989A_000003t.gif
【実施例】
【0065】
【表3】
JP2013161989A_000004t.gif
【実施例】
【0066】
【表4】
JP2013161989A_000005t.gif
【実施例】
【0067】
【表5】
JP2013161989A_000006t.gif
【実施例】
【0068】
【表6】
JP2013161989A_000007t.gif
【実施例】
【0069】
【表7】
JP2013161989A_000008t.gif
【実施例】
【0070】
【表8】
JP2013161989A_000009t.gif
【実施例】
【0071】
【表9】
JP2013161989A_000010t.gif
【実施例】
【0072】
【表10】
JP2013161989A_000011t.gif
【実施例】
【0073】
【表11】
JP2013161989A_000012t.gif
【実施例】
【0074】
【表12】
JP2013161989A_000013t.gif
【実施例】
【0075】
【表13】
JP2013161989A_000014t.gif
【実施例】
【0076】
【表14】
JP2013161989A_000015t.gif
【実施例】
【0077】
【表15】
JP2013161989A_000016t.gif
【実施例】
【0078】
【表16】
JP2013161989A_000017t.gif
【実施例】
【0079】
【表17】
JP2013161989A_000018t.gif
【実施例】
【0080】
【表18】
JP2013161989A_000019t.gif
【実施例】
【0081】
【表19】
JP2013161989A_000020t.gif
【実施例】
【0082】
【表20】
JP2013161989A_000021t.gif
【実施例】
【0083】
(4)工程1及び第1の製造方法により得られた結晶組成物
(4-1)Feの含有量を変えて冷却インゴット(Fe)の温度-電気抵抗率曲線を求めると、
冷却インゴット(Fe)については、結晶組成物中のFeの含有量が10重量%の場合に、冷却インゴット(Fe)の全部分中、第1の抵抗率要件を満たす部分の数が57%となった。
Teの含有量を変えて比較冷却インゴット1の温度-電気抵抗率曲線を求めると、
比較冷却インゴット1については、第1の抵抗率要件を満たす部分が存在するTeの含有量を見出すことができなかった(表20)。
即ち、結晶組成物中のFeの含有量を10重量%にした冷却インゴット(Fe)中の第1の抵抗率要件を満たす部分を見出すために、3d遷移金属からFeを選択し、Feの含有量を調整する工程が工程1であり(実施例1)、
結晶組成物中のFeの含有量を10重量%にした冷却インゴット(Fe)、その中の第1の低効率要件を満たす部分及びTI結晶性を示す矩形サンプルが、第1の製造方法で得られた本発明の結晶組成物であり、本発明の結晶組成物である(実施例2)。
【実施例】
【0084】
これに対して、比較冷却インゴット2の製造方法(比較例1)及び比較例1により得られた比較冷却インゴット2(比較例2)では、
第1の抵抗率要件を満たす部分が存在するようにTeの含有量を調整することができず、第1の抵抗率要件を満たす結晶組成物を提供できない。
なお、比較冷却インゴット2については、先に切り出した6個の矩形サンプルに加え、さらに、各部分から4~10個、比較冷却インゴット2全体では92個の矩形サンプルを切り出して電気抵抗率を測定したところ、3個だけ第1の低効率要件を満たす物があった。しかし、これらの矩形サンプルは、温度5~35℃、湿度30~90%の室内環境下で9月保存する間に、電気抵抗率曲線が低下し、最終的に、p型縮退半導体特有の温度-電気抵抗率曲線の傾向になるに至った(表21)。
【実施例】
【0085】
【表21】
JP2013161989A_000022t.gif
【実施例】
【0086】
(4-2)結晶組成物中のFeの含有量を10重量%にした第1の抵抗率要件を満たす冷却インゴット(Fe)中の矩形サンプルは、
温度5~35℃、湿度30~90%の室内環境下で9月保存しても、温度-電気抵抗率曲線の傾向がほとんど変化しなかった(表22)。
【実施例】
【0087】
【表22】
JP2013161989A_000023t.gif
【実施例】
【0088】
(5)工程2及び第2の製造方法により得られた結晶組成物
Fe、Mn、Co及びNiの含有量をそれぞれ変えて冷却インゴット(Fe)、(Mn)、(Co)及び(Ni)の温度-電気抵抗率曲線を求めると、
冷却インゴット(Co)については、結晶組成物中の含有量が7.50及び10.00重量%の場合に、
冷却インゴット(Ni)については、結晶組成物中の含有量が5.00、7.50及び10.00重量%の場合に、第2の抵抗率要件を満たした。
即ち、結晶組成物中のCoの含有量を10重量%にした冷却インゴット(Co)中の第2の抵抗率要件を満たす部分と、
結晶組成物中のNiの含有量を10重量%にした冷却インゴット(Ni)中の第2の抵抗率要件を満たす部分を見出すために、
3d遷移金属からCo及びNiを選択し、これらの含有量を調整する工程が工程2であり(実施例3)、第2の製造方法により得られた、
結晶組成物中のCoの含有量を10重量%にした冷却インゴット(Co)、その中の第2の抵抗率要件を満たす部分及びTEC結晶性を示す矩形サンプルと、
結晶組成物中のNiの含有量を10重量%にした冷却インゴット(Ni)、その中の第2の抵抗率要件を満たす部分及びTEC結晶性を示す矩形サンプルが、第2の製造方法で得られた本発明の結晶組成物であり、かつ、本発明の結晶組成物である(実施例4)。