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明細書 :伝送線路共振器、帯域通過フィルタ及び分波器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5920868号 (P5920868)
公開番号 特開2013-085076 (P2013-085076A)
登録日 平成28年4月22日(2016.4.22)
発行日 平成28年5月18日(2016.5.18)
公開日 平成25年5月9日(2013.5.9)
発明の名称または考案の名称 伝送線路共振器、帯域通過フィルタ及び分波器
国際特許分類 H01P   7/08        (2006.01)
H01P   1/203       (2006.01)
H01P   1/213       (2006.01)
FI H01P 7/08
H01P 1/203
H01P 1/213 N
請求項の数または発明の数 11
全頁数 21
出願番号 特願2011-222918 (P2011-222918)
出願日 平成23年10月7日(2011.10.7)
審査請求日 平成26年10月3日(2014.10.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
発明者または考案者 【氏名】和田 光司
【氏名】佐川 守一
【氏名】牧本 三夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100067736、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 晃
【識別番号】100096677、【弁理士】、【氏名又は名称】伊賀 誠司
【識別番号】100106781、【弁理士】、【氏名又は名称】藤井 稔也
【識別番号】100113424、【弁理士】、【氏名又は名称】野口 信博
審査官 【審査官】米倉 秀明
参考文献・文献 特開平02-246601(JP,A)
特開平04-175001(JP,A)
特開平08-056106(JP,A)
特開2000-183603(JP,A)
調査した分野 H01P 7/08
H01P 1/203
H01P 1/213
特許請求の範囲 【請求項1】
一端を短絡接地部に接続した第1の分布定数線路と、該第1の分布定数線路から所定距離だけ離間して平行に配置され、該第1の分布定数線路の短絡接地された該一端に対向する一端を短絡接地部に接続した第2の分布定数線路とからなる分布結合線路と、
上記分布結合線路のそれぞれ他方の端に両端が接続された単一伝送線路とを備え、
上記分布結合線路は、偶モードインピーダンス及び/又は奇モードインピーダンスを有しており、以下の条件を満たす式で表わされる上記分布結合線路の結合度の増大に応じて共振周波数が低下することを特徴とする伝送線路共振器。
k=(Zce-Zco)/(Zce+Zco),0≦k≦1
(ただし、kは上記結合度であり、Zceは、上記偶モードインピーダンスであり、Zcoは、上記奇モードインピーダンスである。)
【請求項2】
上記単一伝送線路は、
第1の線路インピーダンス及び第1の線路長を有する第1の伝送線路、又は、
第2の線路インピーダンス及び第2の線路長を有する第2の伝送線路と、該第2の伝送線路の一端に一方の端が接続された、第3の線路インピーダンス及び第3の線路長を有する第3の伝送線路と、該第2の伝送線路の他端に一方の端が接続された、該第3の線路インピーダンス及び第3の線路長を有する第4の伝送線路とからなるステップインピーダンス伝送線路であることを特徴とする請求項1記載の伝送線路共振器。
【請求項3】
上記分布結合線路は、
一端を短絡接地部に接続した第1の分布定数線路と、該第1の分布定数線路から所定距離だけ離間して平行に配置され、該第1の分布定数線路の短絡接地された該一端に対向する一端を短絡接地部に接続した第2の分布定数線路とからなる第1の分布結合線路と、
上記第1及び第2の分布定数線路とは異なる第3の分布定数線路と、該第3の分布定数線路から離間して平行に配置された第4の分布定数線路とからなり、それぞれ一方の端が上記第1の分布結合線路のそれぞれ他端に接続された第2の分布結合線路とを備え、
上記単一伝送線路の両端は、上記第2の分布結合線路のそれぞれ他方の端に接続され、
上記第1の分布結合線路は、第1の偶モードインピーダンス及び/又は第1の奇モードインピーダンスを有しており、
上記第2の分布結合線路は、第2の偶モードインピーダンス及び/又は第2の奇モードインピーダンスを有しており、
以下の条件を満たす式で表わされる、上記第1及び第2の分布結合線路の結合度の増大に応じて共振周波数が低下することを特徴とする請求項1又は2記載の伝送線路共振器。
k1=(Zce1-Zco1)/(Zce1+Zco1),0≦k1≦1
k2=(Zce2-Zco2)/(Zce2+Zco2),0≦k2≦1
(ただし、k1,k2は上記第1及び第2の結合度であり、Zce1,Zce2は、上記第1及び第2の偶モードインピーダンスであり、Zco1,Zco2は、上記第1及び第2の奇モードインピーダンスである。)
【請求項4】
上記単一伝送線路の中央部に一端が接続され他端が短絡接地された容量性素子をさらに備えることを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載の伝送線路共振器。
【請求項5】
上記容量性素子は、集中定数素子、可変容量素子又は分布定数素子のうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項4記載の伝送線路共振器。
【請求項6】
上記分布定数素子は、インタデジタルキャパシタ、長方形状のスタブ、インピーダンスステップを有するスタブ、T型スタブ又は折り返し線路構造のスタブのうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項5記載の伝送線路共振器。
【請求項7】
上記単一伝送線路は、ループ状に配置されていることを特徴とする請求項1~6いずれか1項記載の伝送線路共振器。
【請求項8】
上記分布結合線路又は上記第1の分布結合線路の短絡接地部に接続された端は、ループ状に配置された上記単一伝送線路のループの内部に配置されることを特徴とする請求項7記載の伝送線路共振器。
【請求項9】
一端を短絡接地部に接続した第1の分布定数線路と、該第1の分布定数線路から所定距離だけ離間して平行に配置され、該第1の分布定数線路の短絡接地された該一端に対向する一端を短絡接地部に接続した第2の分布定数線路とからなる分布結合線路と、該分布結合線路のそれぞれ他方の端に両端が接続された単一伝送線路とを備え、該単一伝送線路は、第1の線路インピーダンス及び第1の線路長を有しており、ループ状に配置され、該分布結合線路は、偶モードインピーダンス及び/又は奇モードインピーダンスを有しており、以下の共振条件を満たす式で表わされる該分布結合線路の結合度の増大に応じて共振周波数が低下する、同一の共振周波数を有する2個以上の伝送線路共振器を含み、
k=(Zce-Zco)/(Zce+Zco),0≦k≦1
(ただし、kは上記結合度であり、Zceは、上記偶モードインピーダンスであり、Zcoは、上記奇モードインピーダンスである。)
上記2個以上の伝送線路共振器のうちの1つの伝送線路共振器に結合させた入力端子と、
上記2個以上の伝送線路共振器の残りのうちの1つの他の伝送線路共振器に結合させた出力端子とを備え、
上記2個以上の伝送線路共振器をそれぞれ相互に隣接するように所定の距離だけ離間して配置して結合させてなる帯域通過フィルタ。
【請求項10】
上記2個以上の伝送線路共振器は、3個以上の伝送線路共振器であり、
上記3個以上の伝送線路共振器のうちの任意の1つの伝送線路共振器と任意の他の1つの伝送線路共振器とを互いに結合させた請求項9記載の帯域通過フィルタ。
【請求項11】
一端を短絡接地部に接続した第1の分布定数線路と、該第1の分布定数線路から所定距離だけ離間して平行に配置され、該第1の分布定数線路の短絡接地された該一端に対向する一端を短絡接地部に接続した第2の分布定数線路とからなる分布結合線路と、該分布結合線路のそれぞれ他方の端に両端が接続された単一伝送線路とを備え、該単一伝送線路は、第1のインピーダンス及び第1の線路長を有しており、ループ状に配置され、該分布結合線路は、偶モードインピーダンス及び/又は奇モードインピーダンスを有しており、以下の条件を満たす式で表わされる上記分布結合線路の結合度の増大に応じて共振周波数が低下する、同一の共振周波数を有する2個以上の伝送線路共振器をそれぞれ相互に隣接するように所定の距離だけ離間して配置して結合させてなる2個以上の帯域通過フィルタを含み、
k=(Zce-Zco)/(Zce+Zco),0≦k≦1
(ただし、kは上記結合度であり、Zceは、上記偶モードインピーダンスであり、Zcoは、上記奇モードインピーダンスである。)
上記2個以上の帯域通過フィルタのそれぞれの入力に結合させた入力端子と、
上記2個以上の帯域通過フィルタのそれぞれの上記入力端子を有する伝送線路共振器以外の伝送線路共振器に結合させた出力端子とを備え、
上記2個以上の帯域通過フィルタは、それぞれ異なる通過帯域を有する分波器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波回路で用いられる伝送線路共振器に関し、特に、分布結合線路を用いた伝送線路共振器並びにその伝送線路共振器を用いた帯域通過フィルタ及び分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波帯、マイクロ波帯で用いられる共振器は、1/4波長型又は1/2波長型の一様線路共振器が主流である。最近では、非特許文献1に示すように、線路インピーダンスの異なる複数の伝送線路から構成されるステップインピーダンス共振器(以下、SIRともいう。)が、小型化、スプリアス抑圧あるいは多様な結合方式の実現を目的として用いられるようになってきている。
【0003】
SIRには、多様な構造のものがある。代表的なものとして、1/4波長型における一端開放他端短絡型SIRと、1/2波長型の両端開放型SIRがある。非特許文献2及び3に示すように、1/4波長型SIRは、もっとも小型化することができることから、従来から積極的に開発実用化が行われてきた。そして、近年においては、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics、低温同時焼成セラミクス)プロセス技術の確立により、1/4波長型SIRは、特許文献1に示すようにマイクロ波帯無線システム用フィルタに多く用いられるようになった。
【0004】
1/2波長型の両端開放型SIRは、ストリップ線路又はマイクロストリップ線路を利用することによって、実現が容易であり、実用的には、U字状や矩形ループ状に構成した小型ヘアピン共振器やスプリットリング共振器として広く応用に供されている。
【0005】
しかしながら、1/2波長型の両端開放型SIRにおいては、小型化と低損失化(あるいは共振器の高Q化)とが両立しないことが指摘されている。これを解決するために、両端短絡型SIRが考えられるが、共振器が大型化してしまうという欠点がある。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2010-87830号公報
【0007】

【非特許文献1】Sagawa, Makimoto and Yamashita.,「Geometrical Structures and Fundamental Characteristics of Microwave Stepped Impedance Resonators」, IEEE Trans. MTT, vol.45, No.7, pp.1078-1085, July 1997
【非特許文献2】牧本、「マイクロ波SIRの構造とその特性」、電気情報通信学会、電子情報通信学会技術研究報告 MW2003-221、p83-90、2003年12月
【非特許文献3】Makimoto and Yamashita, 「Microwave Resonators and Filters for Wireless Communication」, Springer, Heiderberg, Germany, Dec. 2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した通り、LTCC技術等を用いることによって、低インピーダンスの短絡接地を実現することが容易になったので、両端短絡型の共振器を構成することが可能となった。ここで、一様線路を用いて共振器を構成しようとすると、1/2波長に大きさが制約されるという問題がある。そこで、特願2011-016812号のように、両端短絡型SIRの中央部に容量を装荷して、共振器を小型化する技術が提案されている。
しかしながら、小型化するために、一様線路をSIRに変更したり、容量を装荷したりしても小型化には限界がある。また、両端短絡型SIRの場合には、小型化するために短絡接地部を有する伝送線路の線路幅を狭くする必要があり、これによって線路インピーダンスが高くなるため、さらなる低損失化、高Q化が困難であるとの問題もある。
【0009】
そこで、本発明は、1/2波長型の共振器において、更なる小型化及び低損失化又は高Q化の両立を図った共振器を提供することを目的とする。また、この共振器を用いた高周波回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、単一伝送線路の両端を、平行に配置した分布結合線路を介して短絡接地する構成とした場合に、分布結合線路の結合度に応じて共振周波数が変化することを見出した。
【0011】
具体的には、本発明の分布結合線路を有する伝送線路共振器は、一端を短絡接地部に接続した第1の分布定数線路と、第1の分布定数線路から所定距離だけ離間して平行に配置され、第1の分布定数線路の短絡接地された一端に対向する一端を短絡接地部に接続した第2の分布定数線路とからなる分布結合線路と、分布結合線路のそれぞれ他方の端に両端が接続された単一伝送線路とを備える。分布結合線路は、偶モードインピーダンス及び/又は奇モードインピーダンスを有しており、以下の条件を満たす式で表わされる分布結合線路の結合度の増大に応じて、伝送線路共振器の共振周波数が低下する。
【0012】
k=(Zce-Zco)/(Zce+Zco),0≦k≦1
(ただし、kは上記結合度であり、Zceは、上記偶モードインピーダンスであり、Zcoは、上記奇モードインピーダンスである。)
【0013】
また、本発明の帯域通過フィルタは、一端を短絡接地部に接続した第1の分布定数線路と、第1の分布定数線路から所定距離だけ離間して平行に配置され、第1の分布定数線路の短絡接地された一端に対向する一端を短絡接地部に接続した第2の分布定数線路とからなる分布結合線路と、分布結合線路のそれぞれ他方の端に両端が接続された単一伝送線路とを備える。単一伝送線路は、第1の線路インピーダンス及び第1の線路長を有しており、ループ状に配置される。分布結合線路は、偶モードインピーダンス及び/又は奇モードインピーダンスを有しており、以下の条件を満たす式で表わされる分布結合線路の結合度に応じて共振周波数が低下する、同一の共振周波数を有する2個以上の伝送線路共振器を含み、2個以上の伝送線路共振器のうちの1つの伝送線路共振器に結合させた入力端子と、2個以上の伝送線路共振器の残りのうちの1つの他の伝送線路共振器に結合させた出力端子とを備える。2個以上の伝送線路共振器をそれぞれ相互に隣接するように所定の距離だけ離間して配置して結合させてなる。
【0014】
k=(Zce-Zco)/(Zce+Zco),0≦k≦1
(ただし、kは上記結合度であり、Zceは、上記偶モードインピーダンスであり、Zcoは、上記奇モードインピーダンスである。)
【0015】
本発明の分波器は、一端を短絡接地部に接続した第1の分布定数線路と、第1の分布定数線路から所定距離だけ離間して平行に配置され、第1の分布定数線路の短絡接地された一端に対向する一端を短絡接地部に接続した第2の分布定数線路とからなる分布結合線路と、分布結合線路のそれぞれ他方の端に両端が接続された単一伝送線路とを備える。単一伝送線路は、第1のインピーダンス及び第1の線路長を有しており、ループ状に配置され、分布結合線路は、偶モードインピーダンス及び/又は奇モードインピーダンスを有しており、以下の条件を満たす式で表わされる分布結合線路の結合度に応じて共振周波数が低下する、同一の共振周波数を有する2個以上の伝送線路共振器をそれぞれ相互に隣接するように所定の距離だけ離間して配置して結合させてなる2個以上の帯域通過フィルタを含み、2個以上の帯域通過フィルタのそれぞれの入力に結合させた入力端子と、2個以上の帯域通過フィルタのそれぞれの入力端子を有する伝送線路共振器以外の伝送線路共振器に結合させた出力端子とを備える。2個以上の帯域通過フィルタは、それぞれ異なる通過帯域を有する。
【0016】
k=(Zce-Zco)/(Zce+Zco),0≦k≦1
(ただし、kは上記結合度であり、Zceは、上記偶モードインピーダンスであり、Zcoは、上記奇モードインピーダンスである。)
【発明の効果】
【0017】
本発明の分布結合線路を有する伝送線路共振器によれば、1/2波長型の単一伝送線路共振器の両端に分布結合線路をそれぞれ接続し、分布結合線路を介して短絡接地されているので、短絡接地部の線路インピーダンスを低くすることができ、低損失化、高Q化が可能になる。また、分布結合線路の偶モードインピーダンス及び奇モードインピーダンスによって表わされる結合度を大きくすることによって、共振周波数が低下するので、共振周波数を一定とすれば、共振器の大きさを小さくすることができる。
【0018】
本発明の分布結合線路を有する伝送線路共振器を用いて、多段の帯域通過フィルタ、有極フィルタ、電子同調型フィルタ、分波器等多くの小型かつ低損失の高周波回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(A)は、本発明の分布結合線路を有する伝送線路共振器の構成を示す図であり、短絡接地部が分布結合線路を構成するそれぞれの分布定数線路の対向する一端にある。(B)は、短絡接地部が、分布結合線路を構成する分布定数線路の対向する一端のそれぞれ反対の端にある場合を示す図である。
【図2】(A)は、図1(A)に示す本発明の分布結合線路を有する伝送線路共振器の回路トポロジを示す図である。(B)は、図1(B)に示す伝送線路共振器の回路トポロジを示す図である。
【図3】(A)は、一様線路による両端短絡型の伝送線路共振器を示す図である。(B)は、両端短絡型ステップインピーダンス共振器の回路トポロジを示す図である。
【図4】図2(A)の回路トポロジ(平行配置)の分布結合線路を有する伝送線路共振器と、図2(B)の回路トポロジ(逆平行配置)の伝送線路共振器の分布結合線路の結合度に対する共振周波数の変化をプロットした図である。
【図5】ステップインピーダンス伝送線路共振器の両端に、平行配置された分布定数線路からなる分布結合線路を接続した本発明の分布結合線路を有する伝送線路共振器の回路トポロジを示す図である。
【図6】図5の共振器のステップインピーダンス伝送線路共振器の中央部に容量性のスタブを接続した本発明の分布結合線路を有する伝送線路共振器の回路トポロジを示す図である。
【図7】図6の分布結合線路に代えて、直列に接続された、幅の異なる第1及び第2の分布結合線路を用いた本発明の分布結合線路を有する伝送線路共振器の回路トポロジを示す図である。
【図8】(A)は、本発明の分布結合線路を有する伝送線路共振器の設計例を示す図であり、(B)は、(A)に示す共振器と同一の共振周波数を有する両端短絡型のステップインピーダンス伝送線路共振器の設計例を示す図である。
【図9】(A)~(E)は、分布結合線路を有する伝送線路共振器のさまざまな変形例を示す図である。
【図10】本発明の分布結合線路を有する伝送線路共振器の変形例を用いて、2段帯域通過フィルタを構成した応用例を示す図である。
【図11】本発明の分布結合線路を有する伝送線路共振器の他の変形例を用いて、2段帯域通過フィルタを構成した応用例を示す図である。
【図12】本発明の分布結合線路を有する伝送線路共振器の他の変形例を用いて、3段帯域通過フィルタを構成した応用例を示す図である。
【図13】本発明の分布結合線路を有する伝送線路共振器の他の変形例を用いて、入出力の共振器間を弱く結合させることによって、阻止域の減衰極の位置を調整した、有極フィルタの一種であるクロスカップルフィルタの例を示す図である。
【図14】単一伝送線路の中央部に装荷された容量素子として、可変容量ダイオードを用いることによって、電子同調型とした本発明の分布結合線路を有する伝送線路共振器を2個用いて、電子同調型帯域通過フィルタを構成した例を示す図である。
【図15】本発明の分布結合線路を有する伝送線路共振器のバリエーションを用いて通過帯域の異なる帯域通過フィルタを構成し、これら2個の帯域通過フィルタを用いて分波器を構成した例を示す図である。入力に共用アンテナ、一方の出力を送信出力、他方の出力を受信入力とすればアンテナ共用器として利用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明が適用された分布結合線路を有する伝送線路共振器(以下、単に伝送線路共振器又は共振器ともいう。)並びにその伝送線路共振器を用いた帯域通過フィルタ、クロスカップルフィルタ、電子同調型フィルタ及び分波器について、図面を参照して以下の順序で説明する。

【0021】
1.伝送線路共振器
1-1.伝送線路共振器の構成
1-2.伝送線路共振器の動作原理
1-3.伝送線路共振器の設計例
1-4.伝送線路共振器の変形例
2.伝送線路共振器の応用回路
2-1.帯域通過フィルタ
2-2.クロスカップルフィルタ
2-3.電子同調型フィルタ
2-4.分波器
3.まとめ

【0022】
1.伝送線路共振器
1-1.伝送線路共振器の構成
図1(A)に示すように、本発明の伝送線路共振器は、分布定数線路の対向する一端において短絡接地部13に接続され、所定の距離だけ離間して平行に配置された分布定数線路からなる分布結合線路12a,12bを備える。そして、分布結合線路12a,12bの他方のそれぞれの端には、矩形ループ状に形成された一様線路11の両端が接続されている。対向する一端において短絡接地部13に接続されている分布結合線路12a,12bを、以降平行配置された分布結合線路ということにする。本発明の伝送線路共振器は、誘電率が一様な誘電体基板上に形成される。誘電体基板は、裏面一面を導体パターンとして形成される。短絡接地部13は、ビアを介して裏面導体パターンに接続される。なお、誘電体基板は、両面基板に限らず、例えば内層に短絡接地のための導体パターンを有する多層基板を用いることができるのは言うまでもない。ここで、分布結合線路を構成する分布定数線路とは、分布結合線路と組み合わされる単一伝送線路を構成する伝送線路と区別するための名称であり、以下同様に区別して記載するが、機能上は伝送線路である。

【0023】
図1(B)は、図1(A)に示す伝送線路共振器と対比して説明するための共振器の構成を示す図である。図1(B)に示す共振器は、平行に配置された分布定数線路の対向する一端のそれぞれ反対側の端に、短絡接地部13が接続された分布結合線路12a,12bを備えており、分布結合線路12a,12bのそれぞれの他方の端には、一様線路11の両端が接続される。対向する一端の反対側の端が短絡接地部13に接続されている分布結合線路12a,12bを、以降逆平行配置された分布結合線路ということにする。

【0024】
1-2.伝送線路共振器の動作原理
本発明の伝送線路共振器の動作原理を図2及び図3を参照して説明する。

【0025】
図2は、本発明の伝送線路共振器の動作原理を説明するために、図1に示すような構成の共振器を回路トポロジとして表現した図である。図2(A)には、図1(A)と同様に、所定の距離だけ離間して平行配置された分布結合線路12a,12bに単一伝送線路として一様線路11の両端が接続された伝送線路共振器の回路トポロジを示す。図2(B)は、図1(B)と同様に、所定の距離だけ離間して逆平行配置された分布結合線路12a,12bの短絡接地部13に接続された端とは反対側の端に一様線路11の両端が接続された回路トポロジを表した図である。

【0026】
図3(A)は、両端が短絡接地部13に接続された一様線路21からなる1/2波長型伝送線路共振器の構成を示す。一様線路21の線路長は、θであり、この伝送線路共振器の共振条件においては、θは180度となる。

【0027】
一方、図3(B)は、両端短絡型のステップインピーダンス伝送線路共振器(以下、SIRともいう。)の構成を示す図である。この両端短絡型SIRは、線路長2θS1及び線路インピーダンスZS1を有する第1の伝送線路22の両端に、線路長θS2及び線路インピーダンスZS2を有する第2及び第3の伝送線路23,24が接続され、第2及び第3の伝送線路23,24の他の端が短絡接地部13に接続される。両端短絡型SIRの共振条件は、以下の式(1)で与えられる。

【0028】
tanθS1・tanθS2=ZS1/ZS2=R (1)

【0029】
両端短絡型SIRの長さは、R<1のときに、図3(A)に示す一様線路共振器よりも短くなり、R>1のときに、図3(A)のような一様線路共振器よりも長くなる。したがって、R<1となるように線路インピーダンスを設定すれば、同一の共振周波数において、一様線路共振器よりも小型にできることとなる。なお、R=1の場合には、両端短絡型SIRは、一様線路共振器となる。

【0030】
一方、図2(A),(B)のような平行配置又は逆平行配置された分布結合線路を有する伝送線路共振器の場合には、分布結合線路の有する偶モードインピーダンス及び奇モードインピーダンスに基づく、線路の結合度kを考慮する必要がある。偶モードインピーダンスをZce、奇モードインピーダンスをZcoとすると、分布結合線路の結合度kは以下のように表わされる。

【0031】
k=(Zce-Zco)/(Zce+Zco),0≦k≦1 (2)

【0032】
ここで、相乗平均インピーダンスをZcとすると、

【0033】
=(Zce・Zco)1/2 (3)

【0034】
となる。数式を簡略化して表現するために、結合の補助パラメータKを以下のように定義する。

【0035】
=(1+k)/(1-k)=Zce/Zco≧1 (4)

【0036】
このときに、図2(A)に示すような平行配置された分布結合線路の場合には、短絡接地部13が対向する一端にあるので、共振時には奇偶どちらかのモードになる。最も低い共振周波数においては偶モードとなるため、平行配置された分布結合線路の線路インピーダンスは、以下の式で表わされる。

【0037】
(Z/Z)/K=R =tanθ・tanθ (5)

【0038】
一方、図2(B)に示すような逆平行配置された分布結合線路の場合には、共振条件は、以下の式で表わされる。

【0039】
(Z/Z)/K=R
=2・tanθ・tanθ/{1+K+(K-1)secθ} (6)

【0040】
図4には、図2(A)、(B)のそれぞれの回路トポロジにおいて、一様線路11の線路長θと分布結合線路12a,12bの線路長θとを一定にして、結合度kを変化させた場合の共振周波数fの変化をシミュレーションによってプロットした。平行配置としてプロットされているのが、図2(A)の平行配置された分布結合線路を含む場合であり、逆平行配置としてプロットされているのが、図2(B)の逆平行配置された分布結合線路を含む場合であることを示す。なお、図4においては、θ=θ=45度、Z=Zとし、結合度k=0(K=1)のときの共振周波数fに対して規格化したf/fを示している。

【0041】
図4より、平行配置された分布結合線路の場合には、結合度kを大きくすることによって、共振周波数f/fが低下することがわかる。別の見方をすれば、結合度kを大きくすることによって、同一の共振周波数であれば、より短い線路長で共振器を実現することができることを意味するので、共振器の小型化が可能となる。一方、逆平行配置された分布結合線路の場合には、結合度kを大きくすると、共振周波数f/fは上昇してしまうことがわかる。したがって、逆平行配置された分布結合線路を用いた伝送線路共振器の場合には、結合度kによる小型化の効果を生じない。すなわち、共振器の小型化の目的のためには、平行配置された分布結合線路を単一伝送線路に接続する必要がある。

【0042】
なお、図2(A)に示すように、分布結合線路12a,12bを構成する2つの分布定数線路は、回路の対称性や設計の容易性といった観点からは、同一形状であって同一の特性であることが好ましいが、必ずしも同一形状、同一特性である必要はない。形状、特性の異なる2つの分布定数線路からなる分布結合線路であっても、偶奇インピーダンスによって決定される結合度kに応じて共振周波数を変化させることができる。

【0043】
図5に示すように、図2(A)における一様線路11を、第1の伝送線路22と、第1の伝送線路22の両端に接続された第2及び第3の伝送線路23,24とからなるSIRに置き換えることができる。上述したようにR<1となるよう線路インピーダンスを設定すれば、一様線路の場合に比べて更なる小型化を図ることができる。

【0044】
また、図6に示すように、図5のSIRの中央部に容量性のスタブ31を接続することによって、更なる小型化を図ることができる。線路インピーダンスZS1及び線路長θS1を有する第1の伝送線路22の中央部に装荷する容量性のスタブ31のサセプタンスをBとし、第2及び第3の伝送線路23,24の線路インピーダンスをZS2,θS2とすると、以下の式(7)に示す条件を満たすようにBを選ぶことによって、同一の共振周波数に対して、スタブ31を装荷しない場合に比べて、SIRの長さを短くすることができる。

【0045】
【数1】
JP0005920868B2_000002t.gif

【0046】
なお、スタブ31を装荷する位置は、通常、SIRの物理的形状における中央部であるが、SIRにおける電界強度の分布上の中央、すなわち電界強度最大の位置とすることが好ましい。

【0047】
別の見方をすれば、SIRの中央部に容量性素子を装荷することによって、SIRの形状を変えることなく、共振周波数を変えることも可能である。例えば、容量性のスタブ31の線路長を変更することによって、容量値を変えて共振周波数を調整することができる。共振周波数を精密に調整する必要がある場合や、共振周波数のバラツキを抑える必要がある場合等にトリミング技術等と組み合わせて共振周波数の微調整を行うこともできる。なお、図6においては、第1の伝送線路22の中央部に装荷する容量には、容量性のスタブを用いたが、集中定数コンデンサであってももちろんよく、可変容量ダイオードを用いれば、後述する電子同調型共振器を構成することも可能である。容量性スタブを用いる場合にも、方形状のスタブに限らず、インタデジタル型のスタブ、T型スタブ、ステップインピーダンス型のスタブや折り返し構造を有するスタブを用いてももちろんよい。また、容量を装荷する対象となるのは、SIRに限らず、一様線路を含む任意の伝送線路であってもよく、共振器の小型化の恩恵を受けることができ、共振周波数の調整が可能となる。

【0048】
図7に示すように、図6における平行配置された分布結合線路12a,12bに代えて、一方が短絡接地部に接続された、偶モードインピーダンスZce、奇モードインピーダンスZco及び線路長θC1を有する、同一形状、同一特性の第1及び第2の分布定数線路からなる第1の分布結合線路12a,12bと、第1の分布結合線路12a,12bに直列接続された、偶モードインピーダンスZce、奇モードインピーダンスZco及び線路長θC2を有する同一形状、同一特性の第3及び第4の分布定数線路からなる第2の分布結合線路12c,12dとを有してもよい。第1の分布結合線路12a,12bの結合度kは以下のように表わされる。

【0049】
=(Zce-Zco)/(Zce+Zco),0≦k≦1 (8)

【0050】
また、第2の分布結合線路12c,12dの結合度kは以下のように表わされる。

【0051】
=(Zce-Zco)/(Zce+Zco),0≦k≦1 (9)

【0052】
結合度k,kに応じて共振周波数が変化するのは、上述したのと同様である。

【0053】
第1及び第2の分布結合線路の相乗平均インピーダンスをZC1、ZC2とすると、以下のように表わされる。

【0054】
c1=(Zce・Zco1/2
c2=(Zce・Zco1/2 (10)

【0055】
ここで、ZC1≦ZC2となるように選ぶと、短絡接地部13に接続される第1の分布結合線路12a,12bの線路幅を広く設計することができるので、導体損失を低減することができ、共振器の低損失化とともに、無負荷時のQを向上させることができる。

【0056】
なお、図7においては、単一伝送線路としてSIRを用いているが、SIRに代えて一様線路を含む任意の伝送線路を用いてもよく、単一伝送線路の中央部のスタブについては、方形状のスタブに限らず、インタデジタル型のスタブ、T型スタブ、ステップインピーダンス型のスタブや折り返し構造を有するスタブを用いてもよいのは上述と同様である。また、これらの分布定数素子に代えて、集中定数素子や可変容量素子を用いてももちろんよく、容量性素子を接続しなくてももちろんよい。また、平行配置された分布結合線路を構成する分布定数線路は、必ずしも方形状である必要はなく、例えばトリミング技術等を用いて分布結合線路を構成する分布定数線路の一部を除去して、結合度kを調整してもよい。また、第1及び第2の分布定数線路の形状、特性並びに第3及び第4の分布定数線路の形状、特性は、回路の対称性の観点からそれぞれ同一であることが好ましいが、必ずしも同一である必要がないのは上述した通りである。

【0057】
1-3.伝送線路共振器の設計例
次に本発明の分布結合線路を有する伝送線路共振器の実際の設計例について説明する。図8(A)に示すように、本発明の共振器は、U字状ループに形成された一様線路11と、一様線路11の両端に接続された平行配置された分布結合線路12a,12bとを備え、分布結合線路12a,12bの一方の端は、短絡接地部13に接続される。一様線路11は、幅0.57mmの伝送線路であり、U字状ループの幅が1.7mm、長さが2.0mmである。分布結合線路12a,12bは、それぞれ0.30mm幅の分布定数線路を0.10mmの距離だけ離間して配置することによって構成される。短絡接地部13は、ビアを介して裏面設置パターン(図示せず)に接続される。このようなパターンを、誘電率10.2、誘電正接(tanδ)0.0023の誘電体基板を用いて、マイクロストリップ線路として形成した。ここで、共振周波数を5GHzに設定した。共振器の大きさを決定するインピーダンス比Rを、0.53とした。このような本発明の共振器の無負荷Qをシミュレーションによって求めたところ、225であった。一方、図8(B)は、図8(A)と同じ条件、すなわち、共振周波数5GHz、インピーダンス比Rを0.53とした場合の、同一誘電体基板上に構成したU字状ループ両端接地型SIRのパターン例である。第1の伝送線路22の線路幅を、図8(A)の場合と同じ0.57mmとし、ループ幅を1.7mm、ループ長さを2.0mmとした。また、第2及び第3の伝送線路23,24の線路長を、図8(A)の場合の分布結合線路12a,12bの線路長と同じにしたところ、線路幅が0.085mmとなった。短絡接地部13に接続される第2及び第3の伝送線路23,24の線路幅が狭くなったことによって、図8(B)に示す両端短絡型SIRの無負荷Qは、本発明の共振器の無負荷Qよりも低い165とのシミュレーション結果となった。

【0058】
したがって、本発明の共振器によれば、同じ共振周波数で同じ共振器のサイズであれば、短絡接地部に接続される線路幅を広くすることができ、低損失化、高Q化が可能となる。

【0059】
1-4.伝送線路共振器の変形例
図9(A)~(E)に示すように、本発明の共振器は、上述した回路トポロジに基づいて様々な形状とすることができる。

【0060】
図9(A)に示す構成は、回路トポロジとしては、上述した図5の回路に相当する。第1の伝送線路22の両端に、第2及び第3の伝送線路23,24が接続され、これらが矩形ループ状に配置されたSIRを構成する。SIRの両端に、分布結合線路12a,12bが接続される。そして、分布結合線路12a,12bは、矩形ループ状に形成されたSIRの矩形ループ内に配置され、SIRの矩形ループ内で短絡接地部13に接続される。このような構成とすることによって、共振器のサイズをコンパクトにすることを可能にするとともに、同様の構成の共振器と、互いに離間させて配置することによって、共振器間の結合をはかることができ、後述するフィルタ回路を容易に構成することができる。

【0061】
図9(B)に示す構成は、回路トポロジとしては、上述した図6の回路に相当する。ただし、単一伝送線路は、図6に示すようなSIRではなく、一様線路11である。一様線路11は、円形ループ状に配置され、一様線路11の両端に平行配置された分布結合線路12a,12bが接続され、分布結合線路12a,12bの他方の端が短絡接地部13に接続される。また、方形状のスタブ31が一様線路11の中央部に接続される。図9(B)においては、方形状のスタブ31が一様線路11の円形ループ内に配置されることによって、共振器のサイズを小型化している。

【0062】
図9(C)に示す構成は、図9(B)と同様の構成であり、回路トポロジとしては同一の共振器である。図9(B)が円形ループ状に配置された一様線路11によって構成されているのに対して、図9(C)の構成では、細長い矩形ループ状に配置された一様線路11が用いられる。このように、本発明の共振器においては、共振器の特性や設置スペース等の制約に応じて、高い自由度をもって共振器の形状を設計することができる。

【0063】
図9(D)に示す構成は、回路トポロジとしては、図7に示す回路に相当するが、図7に示すような容量性のスタブを除去したものである。短絡接地部13に一方が接続された第1の分布結合線路12a,12bの他方の端が第2の分布結合線路12c,12dの一方の端に接続され、第2の分布結合線路12c,12dの他方の端がU字ループ状に配置された一様線路11の両端に接続される。上述したように、第1の分布結合線路の幅を広くとることによって、低損失化、高Q化を実現することができる。

【0064】
図9(E)に示す構成は、外部電圧によって共振周波数を変化させることができる電子同調型共振器である。電子同調型共振器を用いて、電圧制御発振器や、後述する電子同調型フィルタを構成することができる。図9(E)に示すような電子同調型共振器の回路トポロジとしては、図6の回路に相当し、単一伝送線路は、SIRではなく、一様線路11である。電子同調型共振器には、一様線路11の中央部に装荷される容量性素子として、直流阻止コンデンサ32と可変容量ダイオード33との直列接続したものを用い、直流阻止コンデンサ32と可変容量ダイオード33との接続位置に高周波チョークコイル34を介して外部電圧端子35が接続される。なお、可変容量ダイオード33は、一般的に損失が大きいので、共振周波数を離散的に設定できる場合においては、可変容量ダイオードに代えて、積層セラミックコンデンサ等の低損失な集中定数容量素子を複数種類用いて、スイッチにより切り替えるようにしてもよい。

【0065】
上述したのは、一例であって、これらに限定されるものではないことは言うまでもない。例えば、伝送線路の中央部に装荷する容量性素子は、図示した方形状スタブに限らず、インタデジタル、T型、ステップインピーダンス型、折り返し構造等の様々な形状のスタブを用いることができ、集中定数容量素子を用いることももちろん可能である。単一伝送線路のループ形状については、矩形でも円形でもU字状でもコの字状でもよく、任意の形状が許容される。容量性素子の配置は、ループ内でもループ外でもよいのはもちろんであり、容量性素子を接続するかしないかも任意に決定することができる。単一伝送線路については、一様線路でもSIRでも相互に置き換えることが可能である。また、分布結合線路も、第1及び第2の分布結合線路が直列に接続されたものを、図3(A)に示すような一様線路と組み合わせて用いることもでき、さらに容量性素子を装荷することももちろん可能である。

【0066】
2.伝送線路共振器の応用回路
以下に、上述した本発明の分布結合線路を有する伝送線路共振器を用いた応用回路について説明する。

【0067】
2-1.帯域通過フィルタ
帯域通過フィルタは、周波数の混在した信号を入力して、特定の周波数の信号を取り出す回路である。

【0068】
図10は、本発明の共振器を2個用いて2段帯域通過フィルタを構成した応用例を示す図である。帯域通過フィルタ100は、同一形状及び同一の共振周波数を有する第1の共振器100aと第2の共振器100bとを備える。第1及び第2の共振器100a,100bは、図9(D)に示した共振器とほぼ同じ構成である。すなわち、第1及び第2の共振器100a,100bは、それぞれ短絡接地部13に一方の端が接続された、平行配置された第1の分布結合線路12a,12bと、第1の分布結合線路12a,12bの他方の端に一端が接続された、平行配置された第2の分布結合線路12c,12dとを備える。第2の分布結合線路12c,12dの他端には、U字ループ状に配置された一様線路11が接続されている。第1の共振器100aの第1の分布結合線路12a,12bのうちの一方の分布定数線路12aには、外部回路との接続をするための入力端子36aがタッピング接続される。また第2の共振器100bの第1の分布結合線路12a,12bのうちの一方の分布定数線路12aには、外部回路との接続をするための出力端子36bがタッピング接続される。第1及び第2の共振器100a,100bのU字ループ状の一様線路11の直線部分同士を、所定の距離41だけ離間させて配置することによって、第1及び第2の共振器100a,100bを結合させる。第1及び第2の共振器100a,100bを配置する場合には、図10に示すように、一方を他方に対して180度転回した位置にして結合させることもできるし、両方を同一方向に向けた位置に配置して結合させることもできる。離間させる距離41や、それぞれの共振器の位置を調整することによって共振器同士の結合度を調整することができ、フィルタの特性を設計、調整することができる。

【0069】
図10においては、2段の帯域通過フィルタの構成を示したが、3個以上を離間して平行に配置することによって、3段以上の帯域通過フィルタを構成することも可能である。

【0070】
図11には、図9(B)に示すような共振器の構成において、容量性のスタブ31を、一様線路11の円形ループの外側に配置した共振器を2個配置して帯域通過フィルタを構成した例を示す。帯域通過フィルタ101は、同一形状及び同一の共振周波数を有する第1の共振器101aと第2の共振器101bとを備える。第1及び第2の共振器101a,101bは、それぞれ短絡接地部13に一方の端が接続された、平行配置された分布結合線路12a,12bと、分布結合線路12a,12bの他端には、円形ループ状に配置された一様線路11が接続される。一様線路11の中央部には、方形状のスタブ31が接続される。第1の共振器101aの分布結合線路12a,12bのうちの一方の分布定数線路12aには、外部回路との接続をするための入力端子36aがタッピング接続される。また、第2の共振器101bの分布結合線路12a,12bのうちの一方の分布定数線路12aには、外部回路との接続をするための出力端子36bがタッピング接続される。第1及び第2の共振器101a,101bを配置する場合に、図11に示すように、一方を他方に対して180度転回した位置に配置すればスタブ31同士を接近させることができる。このように配置すれば、第1及び第2の共振器101a,101bのスタブ31同士を、所定の距離41だけ離間させて配置することによって、第1及び第2の共振器101a,101bを結合させることができる。図10の場合と同様にして、離間させる距離41や、それぞれの共振器の位置を調整することによって共振器同士の結合度を調整することができ、フィルタの特性を設計、調整することができる。

【0071】
図12に示すように、3段帯域通過フィルタ102は、図9(C)に示すような共振器を3個用いて構成される。すなわち、同一形状及び同一の共振周波数を有する第1、第2及び第3の共振器102a,102b,102cは、それぞれ短絡接地部13に一方の端が接続され、平行配置された分布結合線路12a,12bを備え、分布結合線路12a,12bの他端には、コの字ループ状に配置された一様線路11が接続されている。コの字ループ状の一様線路11の中央部からコの字ループの内側に向かって容量性のスタブ31が接続される。第1の共振器102aの一様線路の中央部には、外部回路との接続をするための入力端子36aが結合コンデンサ38を介して容量結合される。また第3の共振器102cの分布結合線路12a,12bのうちの一方の分布定数線路12bには、外部回路との接続をするための出力端子36bがタッピング接続される。第1及び第2の共振器102a,102bは、一方に対して他方が180度転回した向きで、それぞれの短絡接地部13を共通にするように接続される。第1及び第2の共振器102a,102b間の結合は、磁気的結合ループ37を用いることによって達成される。第2及び第3の共振器102b,102cは、一方に対して他方が180度転回した向きで、一様線路11の中央部同士を所定の距離41だけ離間することによって、主として電界結合によって結合される。

【0072】
図12においては、3段構成の帯域通過フィルタを示したが、4段以上とすることももちろん可能である。細長い共振器を長手方向に配列することによって、帯域通過フィルタの形状としても細長くすることができる。細長い帯域通過フィルタを構成できるということは、入出力端子が最も外側の共振器に設けられるので、入出力端子を空間的に離して構成することとなり、入出力間の結合を弱めることができる。したがって、入出力間信号の分離や信号の回り込みを低減したフィルタ回路を構成できるという特長がある。なお、共振器間の結合の強さについては、磁気的結合ループ37のループ面積の調整、共振器間の離間した距離41により調整可能である。離間した距離41によって電界結合度を調整することができるし、さらに結合度を上げようとする場合には、インタデジタルキャパシタを介して結合させてもよい。

【0073】
以上説明した帯域通過フィルタの構成は、一例であって、様々な形状をとることが可能であり、また、一様線路かSIRか、容量装荷の有無、分布結合線路を1つにするか、2つ直列にするかについて任意に組み合わせることもできる。入出力端子の接続に関しても、接続の位置については、電界や磁界の分布に応じて任意に決定することができ、容量接続やタッピング接続を組み合わせて用いることもできる。容量接続する場合には、集中定数容量素子に限らず、各種形状のスタブ等分布定数容量素子を用いることができる。

【0074】
2-2.クロスカップルフィルタ
クロスカップルフィルタとは、有極フィルタの一種であり、急峻な減衰特性が要求される場合に用いられる。図13は、3個の共振器を備えるクロスカップルフィルタの応用例を示す図である。クロスカップルフィルタ103は、同一形状及び同一の共振周波数を有する3個の共振器103a,103b,103cを備える。第1、第2及び第3の共振器103a,103b,103cは、それぞれ短絡接地部13に一方の端が接続され、平行配置された分布結合線路12a,12bを備え、分布結合線路12a,12bの他端には、矩形ループ状に配置された一様線路11が接続されている。第1の共振器103aの一様線路11のうちの1つの辺には、外部回路との接続をするための入力端子36aが結合コンデンサ38を介して容量結合される。また第3の共振器103cの一様線路11のうちの1つの辺には、外部回路との接続をするための出力端子36bが結合コンデンサ38bを介して容量結合される。第1及び第2の共振器103a,103bは、最も接近する一様線路11同士が第1の距離41aだけ離間して平行に配置される。第2及び第3の共振器103b,103cも、最も接近する一様線路11同士が第2の距離41bだけ離間して平行に配置される。ここで、入出力端子を有する第1及び第3の共振器103a,103cを第3の距離41cだけ離間するように配置すると、離間距離に応じた結合度で入出力が結合し、帯域通過フィルタの阻止域における減衰極の位置を調整することが可能となる。

【0075】
図13においては、3段構成のクロスカップルフィルタを示したが、4段以上のクロスカップルフィルタも入出力を結合させることによって実現することができる。また、図13においては、第2の共振器103bを第1及び第3の共振器103a,103cに対して180度転回した向きに配置したが、すべての共振器103a,103b,103cすべてを同一の向きに配置してもよく、90度転回して配置する等結合度と配置スペースに応じて様々な配置が可能である。入出力端子の位置や結合方法も任意に設定することができる。共振器の形状も様々とることができ、また、一様線路かSIRか、容量装荷の有無、分布結合線路を1つにするか、2つ直列にするかについて任意に組み合わせることができるのも上述と同様である。なお、入出力の共振器に限らず、任意の共振器同士を結合させることによっても、極の位置を設定することができ、有極フィルタを構成することができる。

【0076】
2-3.電子同調型フィルタ
図14は、図9(E)に示すような電子同調型共振器を2個結合させた電子同調型フィルタである。

【0077】
電子同調型フィルタ104は、同一形状の第1及び第2の電子同調型共振器104a,104bを備える。第1及び第2の電子同調型共振器104a,104bは、それぞれ短絡接地部13に一方の端が接続され、平行配置された分布結合線路12a,12bを備え、分布結合線路12a,12bの他端には、矩形ループ状に配置された一様線路11が接続されている。第1の電子同調型共振器104aの一様線路11のうちの1辺には、外部回路との接続をするための入力端子36aがタッピング接続される。また第2の電子同調型共振器104bの一様線路11のうちの1辺には、外部回路との接続をするための出力端子36bがタッピング接続される。一様線路11の中央部に装荷される容量性素子として、直流阻止コンデンサ32と可変容量ダイオード33との直列接続されたものを用いて、直流阻止コンデンサ32と可変容量ダイオード33との接続位置に高周波チョークコイル34を介して外部電圧端子35が接続される。第1及び第2の電子同調型共振器104a,104bの一様線路11の直線部分同士を、所定の距離41だけ離間させて平行に配置することによって、第1及び第2の電子同調型共振器104a,104bを結合させる。離間させる距離41や、それぞれの共振器の位置を調整することによって共振器同士の結合度を調整することができ、フィルタの特性を設計、調整することができる。なお、可変容量ダイオード33は、一般的に損失が大きいので、フィルタによって取り出すべき中心周波数が離散的である場合においては、可変容量ダイオードに代えて、積層セラミックコンデンサ等の低損失な集中定数容量素子を複数種類用いて、スイッチにより切り替えるようにしてもよい。図14のような2段構成に限らず、3段以上の構成も可能であり、形状についても上述した通り任意に設定することができる。入出力端子の接続位置、接続方法も任意に設定できるのは上述と同様である。

【0078】
2-4.分波器
分波器とは、複数の周波数成分を有する入力信号を通過帯域の異なるフィルタを通過させることによって、入力信号に含まれる異なる周波数成分の出力信号をそれぞれ出力するための回路である。なお、入出力される信号の方向を、一部逆にすることによって、同一の回路構成において、アンテナ共用器として用いることもできる。アンテナ共用器は、無線機器等において異なる周波数を有する送信信号と受信信号とを1つのアンテナで送受信する回路であり、機器内で生成した送信信号を通過させてアンテナへ送信するフィルタと、アンテナから受信信号を通過させて受信して機器内の受信回路へ送るフィルタとからなる。

【0079】
図15に示すように、分波器105は、本発明の共振器106a、106b、106cを3段構成した、第1の中心周波数fを有する第1の帯域通過フィルタ106と、本発明の共振器107a,107bを2段構成した、第2の中心周波数fを有する第2の帯域通過フィルタ107とを備えている。共振器106a,106b,106cは、同一の形状及び同一の共振周波数を有しており、共振器107a,107bは、共振器106a,106b,106cとは異なる、同一の形状及び同一の共振周波数を有している。図10等において説明したように、それぞれの共振器を、それぞれ所定の距離41a,41b,41cだけ離間して配置することによって、結合させて帯域通過フィルタ回路を構成する。入力端子51は、入力端子51に接続される外部回路と各回路間のインピーダンス整合をする合成器52を介して、第1の帯域通過フィルタ106と第2の帯域通過フィルタ107とに接続される。合成器52と第1及び第2の帯域通過フィルタ106,107との接続には、結合コンデンサ53,56を介した容量結合が用いられる。第1の中心周波数fに対応する出力信号を得るために、第1の帯域通過フィルタ106に結合コンデンサ54を介して容量結合させた第1の出力端子55と、第2の中心周波数fに対応する出力信号を得るために、第2の帯域通過フィルタ107に結合コンデンサ57を介して容量結合させた第2の出力端子58とを備える。

【0080】
第1及び第2の中心周波数f,fを含む入力信号が入力端子51から入力されると、第1の帯域通過フィルタ106を通り、第1の中心周波数fの出力信号が出力端子55から得られる。また、入力信号は、第2の帯域通過フィルタ107を通り、第2の中心周波数fの出力信号が出力端子58から得られる。

【0081】
以上の動作は、分波器としての動作であるが、アンテナ共用器の場合は、次のような動作となる。

【0082】
送受信アンテナ(図示せず)を入力端子51に接続する。そして、第1の出力端子55を送信信号入力として、第1の中心周波数fの信号を第1の帯域通過フィルタ106を通過させて送受信アンテナに送信する。一方、送受信アンテナで受信した受信信号は、第2の帯域通過フィルタ107を経由し第2の出力端子58から第2の中心周波数fの受信信号として出力される。

【0083】
図15においては、2個の帯域通過フィルタの場合について述べたが、2個に限らず任意の数の帯域通過フィルタにより、対応する任意の周波数出力を得る分波器を構成することができる。また、分波器を構成する帯域通過フィルタも、上述したように、所定の設計条件に応じて、任意の個数、任意の形状の本発明の共振器を組み合わせることにより構成することが可能である。

【0084】
3.まとめ
このようにして、本発明の分布結合線路を有する伝送線路共振器によって、小型、低損失、高Qで設計の自由度の高い共振器を実現でき、また上述のような帯域通過フィルタ、有極フィルタ、電子同調型フィルタ及び分波器等各種高周波応用回路を実現できる。

【0085】
設計の自由度が高いということは、多様な周波数帯域での応用設計が可能であり、近年の無線装置で要求されているマルチバンド化への対応も容易である。

【0086】
RF、マイクロ波、ミリ波帯で用いられるフィルタ、発振器の構成エレメントとして適用することによって、その小型化、高機能化に寄与することができる。また可変容量性素子を適用すると電子的に制御可能な共振器特性を実現できる特徴もある。これはコグニティブ無線システムなど今後の無線機に必須となるリコンフィギュアラブル(再構成)特性の実現に寄与するものである。また伝送線路は、ストリップ線路、マイクロストリップ線路を用いるので、LTCC技術や、RF・CMOS技術といった製造プロセスの適用によって、更なる回路の小型化が期待できる。

【0087】
本発明の共振器を構成するSIRは、すでにマイクロ波帯のデバイスにおいて、実用化されているので、本発明の技術を適用することによって更なる小型化、高性能化、高機能化がはかられる。したがって、本発明の共振器を用いた多段フィルタ、電子同調型フィルタなどのフィルタリングデバイスや電圧制御発振器に適用する可変同調回路など無線通信装置、計測装置用のデバイスの小型化、低損失化、高機能化に寄与できる。

【0088】
近年、マイクロ波、ミリ波帯のICはRF・CMOSプロセス技術は、めざましく進展している。これによって、これまで外付けの多かったパッシブデバイスもIPD(Integrated Passive Devices)という観点からICチップの中にすべて集積化されて、1チップ無線ICとして具現化していく技術的動向が顕在化してきている。低損失高Q共振器、広帯域同調機能を有する共振器として、本発明の共振器はこの技術動向のなかでその特性、機能が生かされていくものと期待できる。

【0089】
以上述べたように本発明の共振器は、RF、マイクロ波帯の基本的な素子として幅広い応用が期待できるものであり、その工業的価値はきわめて高いものである。

【0090】
以上説明した伝送線路共振器、帯域通過フィルタ、有極フィルタ、電子同調型フィルタ及び分波器は、具体例を説明するためのものであって、上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0091】
11 一様線路、12a,12b,12c,12d 分布結合線路、13 短絡接地部、21 一様線路、22 第1の伝送線路、23 第2の伝送線路、24 第3の伝送線路、31 スタブ、32 直流阻止コンデンサ、33 可変容量ダイオード、34 高周波チョークコイル、35 外部電圧端子、36a 入力端子、36b 出力端子、37 磁気的結合ループ、38,38a,38b 結合コンデンサ、41,41a,41b,41c 距離、51 入力端子、52 合成器、53,54 結合コンデンサ、55 第1の出力端子、56,57 結合コンデンサ、58 第2の出力端子、100 帯域通過フィルタ、100a 第1の共振器、100b 第2の共振器、101 帯域通過フィルタ、101a 第1の共振器、101b 第2の共振器、102 帯域通過フィルタ、102a 第1の共振器、102b 第2の共振器、102c 第3の共振器、103 クロスカップルフィルタ、103a 第1の共振器、103b 第2の共振器、103c 第3の共振器、104 電子同調フィルタ、104a 第1の共振器、104b 第2の共振器、105 分波器、106 第1の帯域通過フィルタ、106a,106b,106c,107a,107b 共振器、107 第2の帯域通過フィルタ
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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