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明細書 :治療活性物質の作用を増強するための高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物の使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5843086号 (P5843086)
公開番号 特開2012-067025 (P2012-067025A)
登録日 平成27年11月27日(2015.11.27)
発行日 平成28年1月13日(2016.1.13)
公開日 平成24年4月5日(2012.4.5)
発明の名称または考案の名称 治療活性物質の作用を増強するための高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物の使用
国際特許分類 A61K  31/765       (2006.01)
A61K  31/785       (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61K  31/704       (2006.01)
A61K  31/7048      (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI A61K 31/765
A61K 31/785
A61P 43/00 121
A61K 31/704
A61K 31/7048
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 14
出願番号 特願2010-211826 (P2010-211826)
出願日 平成22年9月22日(2010.9.22)
審査請求日 平成25年9月20日(2013.9.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
発明者または考案者 【氏名】長崎 幸夫
【氏名】吉冨 徹
【氏名】尾崎 佑樹
【氏名】藤 加珠子
【氏名】池田 豊
個別代理人の代理人 【識別番号】110000741、【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
審査官 【審査官】長岡 真
参考文献・文献 国際公開第2009/133647(WO,A1)
米国特許出願公開第2008/0318907(US,A1)
長崎幸夫,Drug Delivery System,2010年 5月28日,vol.25, No.3,p.268,"WS5-2"欄
調査した分野 A61K 31/765
A61K 31/704
A61K 31/7048
A61K 31/785
A61P 35/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
生体内標的組織または細胞への治療活性物質の有する活性を増強するための製薬学的製剤であって、有効成分として、
一般式(II)
【化1】
JP0005843086B2_000005t.gif
式中、Aは、非置換または置換C1-C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基または式R12CH-の基を表し、ここで、R1及びR2は独立して、C1-C4アルコキシまたはR1とR2は一緒になって-OCH2CH2O-、-O(CH23O-もしくは-O(CH24O-を表し、
1は、原子化結合、-(CH2cS-、-CO(CH2cS-からなる群より選ばれる連結基を表し、ここでcは1ないし5の整数であり、
2は、メチルイミノ、メチルイミノメチル、メチルオキシ、メチルオキシメチル、メチルエステル及びメチルエステルメチルからなる群より選ばれる連結基を表し、
Rは、Rの総数nの少なくとも50%が2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル-4-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル-3-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリン-1-オキシル-3-イル及び2,4,4-トリメチル-1,3-オキサゾリジン-3-オキシル-2-イル、2,4,4-トリメチル-1,3-チアゾリジン-3-オキシル-2-イル及び2,4,4-トリメチル-イミダゾリンジン-3-オキシル-2-イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
mは、20~5,000の整数を表し、そして
nは、3~1,000の整数を表す、
で表される高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物を含んでなり、
該治療活性物質がドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシンおよびピラルビシンからなる群より選ばれる抗腫瘍剤であり、かつ、
高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物が投与された後に、抗腫瘍剤が投与されるものである、製薬学的製剤。
【請求項2】
高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物と抗腫瘍剤とを組み合わせたことを特徴とする癌を予防または治療するための製薬学的製剤であって、
高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物が、一般式(II)
【化1】
JP0005843086B2_000006t.gif
式中、Aは、非置換または置換C1-C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基または式R12CH-の基を表し、ここで、R1及びR2は独立して、C1-C4アルコキシまたはR1とR2は一緒になって-OCH2CH2O-、-O(CH23O-もしくは-O(CH24O-を表し、
1は、原子化結合、-(CH2cS-、-CO(CH2cS-からなる群より選ばれる連結基を表し、ここでcは1ないし5の整数であり、
2は、メチルイミノ、メチルイミノメチル、メチルオキシ、メチルオキシメチル、メチルエステル及びメチルエステルメチルからなる群より選ばれる連結基を表し、
Rは、Rの総数nの少なくとも50%が2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル-4-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル-3-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリン-1-オキシル-3-イル及び2,4,4-トリメチル-1,3-オキサゾリジン-3-オキシル-2-イル、2,4,4-トリメチル-1,3-チアゾリジン-3-オキシル-2-イル及び2,4,4-トリメチル-イミダゾリンジン-3-オキシル-2-イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
mは、20~5,000の整数を表し、そして
nは、3~1,000の整数を表す、
で表され、
抗腫瘍剤が、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシンおよびピラルビシンからなる群より選ばれ、かつ、
高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物が投与された後に、抗腫瘍剤が投与されるものである、製薬学的製剤。
【請求項3】
1が原子化結合または-CH2CH2S-であり、L2がメチルイミノ、メチルイミノメチル、メチルオキシ、メチルオキシメチルからなる群よりえらばれ、そして
Rが、次式
【化2】
JP0005843086B2_000007t.gif
式中、R’はメチル基である,
のいずれかで表される、請求項1または2記載の製薬学的製剤。
【請求項4】
2がメチルイミノまたはメチルオキシである、請求項3記載の製薬学的製剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物を有効成分として含有する治療活性物質の作用を増強するための製薬学的製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抗がん剤をナノカプセルで内包することで副作用を無くすかもしくは低減し、また治療効率を上げられるドラックデリバリーシステムの研究・開発に注目が集まっている。実際に、高分子ミセルを用いた薬剤は、臨床試験まで進んでいる例がある。
【0003】
一方、抗がん剤の効能を向上せしめる別の方策として、例えば、抗炎症作用、抗アレルギー作用、糖・たんぱく質・資質等の代謝、生体の免疫反応等に影響を及ぼすことの知られているデキサメタゾンを腫瘍に皮下投与することにより、カルボプラチン、ゲムシタビン、アドリアマイシンなどの抗がん剤の効果を向上させ得ることが報告されている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。しかしながら、デキサメタゾンのような低分子化合物は腫瘍近傍への集積効率が悪いことが問題となっている。
【0004】
このような背景の下、上記のような薬剤に限らず、抗がん剤それら自体を初めとする多種多様な治療活性物質の生体内標的へのデリバリー効率または該標的における所期の活性を増強するための手段の開発ができれば当該技術分野にとって極めて重要な意義を有するであろう。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Leggas M.Cancer Chemother Pharmacol.2009;63(4):731-743
【非特許文献2】Wang H.Clin Cancer Res.2004;10(5):1633-16445
【非特許文献3】Wang H.Int J Oncol.2007;30(4):947-953
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、多種多様な治療活性物質の生体内標的へのデリバリー効率または該標的において該活性物質が本来有している活性を増強するための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題を解決するための手段として、本発明者等が先に提案した、高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物が効果的に利用できることを、ここに見出し本願発明を完成した。具体的には、該高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物は、低分子の、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)を特定のブロック共重合体に共有結合せしめて高分子化した化合物であり、水性媒体中でnmオーダーの径をもつ高分子ミセルを形成できる化合物である。かようなナノ粒子中に内包されたTEMPOは、低分子のTEMPOの血中半減期が約2分であるのに対し、数時間以上と圧倒的な安定性を示した(Yoshitomi,et al.Biomacromolecules:10(3),596(2009))。そして、該化合物それ自体が、活
性酸素またはフリーラジカルが関与する疾患または症状、例えば、脳梗塞、心筋梗塞、脳浮腫、神経脱落症状、炎症、高血圧、高脂血症、肥満、脳血管損傷および神経細胞損傷等に有効であることが確認乃至推測されている(WO2009/133647 A1参照)。
【0008】
これらの環状ニトロキシドラジカル化合物含有ナノ粒子(以下、“RNP”と略記する場合あり)は、疎水性コア層に水難溶性薬物を内包できるだけでなく、静電相互作用を利用して遺伝子との複合体を形成することができる。また、このようなRNPは、それらの奏するEnhanced permeability and retention(EPR)効果により腫瘍近傍、または炎症組織へ集積することも明らかとなった。このようなRNPを用いて、抗がん剤との相互作用について調べてみたところ、動物実験で抗がん剤の抗腫瘍活性を向上させることが確認された。さらに、該RNPは、遺伝子デリバリーの増強効果があることも明らかとなってきた。
【0009】
したがって、本発明によれば、主たる態様の発明として以下のものが提供される。
【0010】
生体内標的組織または細胞への治療活性物質のデリバリー効率を高めるかまたは該標的における該治療活性物質の有する活性を増強するための製薬学的製剤であって、有効成分として、高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物を含んでなる、該製薬学的製剤。
【0011】
具体的な態様としては、該治療活性物質が抗腫瘍剤または核酸分子である、前記製薬学的製剤。
【0012】
高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物と抗腫瘍剤または核酸分子とを組み合わせたことを特徴とする抗腫瘍剤または核酸分子で処置することの必要な疾患を予防または治療するための製薬学的製剤。
【0013】
抗腫瘍剤または核酸分子で治療することの必要な哺乳動物の治療方法であって、該哺乳動物に高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物および抗腫瘍剤または核酸分子を、それぞれ前後して、または同時に投与するステップを含んでなる、該治療方法。
【0014】
前記高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物としては、限定されるものでないが、好ましくは、一般式(II)
【0015】
【化1】
JP0005843086B2_000002t.gif

【0016】
式中、Aは、非置換または置換C-C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基または式RCH-の基を表し、ここで、R及びRは独立して、C-CアルコキシまたはRとRは一緒になって-OCHCHO-、-O(CHO-もしくは-O(CHO-を表し、
は、原子化結合、-(CHS-、-CO(CHS-、からなる群より
選ばれる連結基を表し、ここでcは1ないし5、好ましくは2の整数であり、
は、メチルイミノ、メチルイミノメチル、メチルオキシ、メチルオキシメチル、メチルエステル及びメチルエステルメチルからなる群より選ばれる連結基を表し、
Rは、Rの総数nの少なくとも50%が2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル-4-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル-3-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリン-1-オキシル-3-イル及び2,4,4-トリメチル-1,3-オキサゾリジン-3-オキシル-2-イル、2,4,4-トリメチル-1,3-チアゾリジン-3-オキシル-2-イル及び2,4,4-トリメチル-イミダゾリンジン-3-オキシル-2-イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
mは、20~5,000の整数を表し、そして
nは、3~1,000の整数を表す、
で表される化合物を挙げることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に従うRNPは、上述したとおり、Enhanced permeability and retention(EPR)効果により腫瘍近傍へ集積し、細胞の炎症反応を抑制することにより、標的組織または細胞において治療活性物質本来の活性を効率よく発揮できるので、当該活性を増強できる。なお、治療活性物質が核酸分子である場合には、腫瘍、または炎症組織近傍において、その発現効率を高めることもできる。
【発明の詳細な説明】
【0018】
本発明を規定する用語等について以下、より詳細に説明する。
【発明の詳細な説明】
【0019】
生体内標的組織または細胞は、治療活性物質をデリバリーするための哺乳動物、好ましくはヒト、の生体の器官もしくは組織、またはそれらの細胞を意味し、前者としては、脳、血液、肺、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、消化管、皮膚、膀胱やその他器官の腫瘍、炎症組織を挙げることができる。
【発明の詳細な説明】
【0020】
高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物は、WO2009/133647 A1に記載された環状ニトロキシドラジカル化合物の安定化方法にしたがって安定化された化合物であって、本発明の目的に沿うもののすべてをいう(WO2009/133647 A1はここに引用することにより、その内容のすべてが本明細書に組み込まれる)。簡潔に説明すれば、該安定化方法は、環状ニトロキシドラジカル化合物をポリ(エチレングリコール)鎖セグメントと反応性基を担持する疎水性鎖セグメントを含むブロック共重合体に、該化合物のラジカル以外の官能基(例えば、アミノ基、アミノメチル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、カルボキシル基またはカルボメチル基であり、該反応性基がハロゲン原子、カルボキシル基、イソシアナート残基、イソチオシアナート残基、エステル残基、酸無水物残基、ボロン酸残基、マレイミド残基またはエポキシ基)を介して該共重合体の反応性基と共有結合せしめる工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【0021】
このような安定化方法により得ることのできる高分子化ニトロキシドラジカル化合物は、例えば、好ましくは、エチレングリコールの反復単位が15~10,000のポリ(エチレングリコール)鎖セグメントとスチレンの反復単位が3~3,000のポリ(スチレン)鎖セグメントを含んでなり、かつ、該ポリ(スチレン)鎖セグメントにおけるスチレンの反復単位の少なくとも10%、好ましくは30%、より好ましくは50%、さらにより好ましくは80%、特に好ましくは100%がフェニル基の4位において-CHNH-、-CHNHCH-、-CHO-、-CHOCH-、-CHOCO-及び-CHOCOCH-からなる群より選ばれる連結基を介して環状ニトロキシドラジカ
ル化合物の残基が共有結合しており、存在するばあいには、該4位の残りがハロゲン原子、水素原子またはヒドロキシル基であり、そして該環状ニトロキシドラジカル化合物の残基が2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル-4-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル-3-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリン-1-オキシル-3-イル及び2,4,4-トリメチル-1,3-オキサゾリジン-3-オキシル-2-イル、2,4,4-トリメチル-1,3-チアゾリジン-3-オキシル-2-イル及び2,4,4-トリメチル-イミダゾリンジン-3-オキシル-2-イルからなる群より選ばれる、化合物を挙げることができる。より具体的には、一般式(II)
【発明の詳細な説明】
【0022】
【化2】
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【発明の詳細な説明】
【0023】
式中、Aは、非置換または置換C-C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基または式RCH-の基を表し、ここで、R及びRは独立して、C-CアルコキシまたはRとRは一緒になって-OCHCHO-、-O(CHO-もしくは-O(CHO-を表し、
は、原子化結合、-(CHS-、-CO(CHS-、からなる群より選ばれる連結基を表し、ここでcは1ないし5、好ましくは2の整数であり、
は、メチルイミノ、メチルイミノメチル、メチルオキシ、メチルオキシメチル、メチルエステル及びメチルエステルメチルからなる群より選ばれる連結基を表し、
Rは、Rの総数nの少なくとも50%が2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル-4-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル-3-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリン-1-オキシル-3-イル及び2,4,4-トリメチル-1,3-オキサゾリジン-3-オキシル-2-イル、2,4,4-トリメチル-1,3-チアゾリジン-3-オキシル-2-イル及び2,4,4-トリメチル-イミダゾリンジン-3-オキシル-2-イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
mは、20~5,000の整数を表し、そして
nは、3~1,000の整数を表す、
で表される、該高分子化ニトロキシドラジカル化合物を挙げることができる。該化合物の好ましいものとしては、一般式(II)における、Lが原子化結合または-CHCHS-であり、Lがメチルイミノまたはメチルイミノメチルであり、そして
Rの全てが、次式
【発明の詳細な説明】
【0024】
【化3】
JP0005843086B2_000004t.gif

【発明の詳細な説明】
【0025】
式中、R’はメチル基である,
のいずれかで表される化合物を挙げることができる。
【発明の詳細な説明】
【0026】
治療活性物質は、主として化学療法上使用されているいずれかの活性物質であり、本発明の目的に沿うものであれば如何なる活性を有する、如何なる分子種の化合物であってもよい。しかし、限定されるものでないが、上記高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物がEPR効果により腫瘍近傍へ集積しやすい傾向を有することや、核酸分子の発現効率を高めることを考慮すれば、抗腫瘍剤および核酸分子を好ましい治療活性物質の具体例として挙げることができる。
【発明の詳細な説明】
【0027】
抗腫瘍剤としては、限定されるものでないが、例えば、
・抗悪性腫瘍薬(アルキル化薬):
イホスファミド(ifosfamide)、
シクロホスファミド水和物(cyclophosphamide hydrate)、
ブスルファン(busulfan)、
メルファラン(melphalan)、
ニムスチン塩酸塩(nimustine hydrochloride)、
ラニムスチン(ranimustine)、
ダカルバジン(dacarbazine)、
テモゾロミド(temozolomide)、および
プロカルバジン塩酸塩(procarbazine hydrochloride)、
・代謝拮抗薬:
ペメトレキセドナトリウム水和物(pemetrexed sodium hydrate)、
メトトレキサート(methotrexate)、
エノシタビン(enocitabine)、
カペシタビン(capecitabine)、
ゲムシタビン塩酸塩(gemcitabine hydrochloride)、
シタラビン(cytarabine)、
シタラビン オクホスファード水和物(cytarabine ocfosphate hydrate)、
テガフール(tegafur)、
テガフール・ウラシル(tegafur・uracil)、
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム
(tegafur・gimeracil oteracil potassium)、
ドキシフルリジン(doxifluridine)、
フルオロウラシル(fluorouracil)、
クラドリビン(cladribine)、
ネララビン(nelarabine)、
フルダラビンリン酸エステル(fludarabine phosphate)、
メルカプトプリン水和物(mercaptopurine hydrate)、および
ヒドロキシカルバミド(hydroxycarbamide)、
・抗癌性抗生物質:
アクラルビシン塩酸塩(aclarubicin hydrochloride)、
アムルビシン塩酸塩(amrubicin hydrochloride)、
イダルビシン塩酸塩(idarubicin hydrochloride)、
エピルビシン塩酸塩(epirubicin hydrochloride)、
ダウノルビシン塩酸塩(daunorubicin hydrochloride)、
ドキソルビシン塩酸塩(doxorubicin hydrochloride)、
ピラルビシン塩酸塩(pirarubicin hydrochloride)、
ミトキサントロン塩酸塩(mitoxantrone hydrochloride)、
ブレオマイシン塩酸塩(bleomycin hydrochloride)、
ペプロマイシン硫酸塩(peplomycine sulfate)、
アクチノマイシンD(actinomycine D)、
ジノスタチンスチマラマー(zinostatin stimalamer)、および
マイトマイシンC(mitomycin C)、
・DNAトポイソメラーゼ阻害薬:
イリノテカン塩酸塩水和物(irinotecan hydrochloride hydrate)、
エトポシド(etoposide)、
ソブゾキサン(sobuzoxane)および
ノギテカン塩酸塩(nogitecan hydrochloride)、
・白金製剤:
オキサリプラチン(oxaliplatin)、
カルボプラチン(carboplatin)、
シスプラチン(cisplatin)、
ネダプラチン(nedaplatin)、および
ジアミノシクロヘキサン白金(II)(diaminocyclohexane platinum (II))、
・タキソ環類:
ドセタキセル水和物(docetaxel hydrate)、および
パクリタキセル(paclitaxel)、
・ビンカ・アルカロイド:
ビノレルビン酒石酸塩(vinorelbine ditartrate)、
ビンクリスチン硫酸塩(vincristine sufate)、
ビンデシン硫酸塩(vindesine sulfate)、および
ビンブラスチン硫酸塩(vinblastine sulfate)、
・多発性骨髄腫治療薬:
サリドマイド(thalidomide)、
・分子標的治療薬:
ゲムツズマブオゾガマイシン(gemtuzumab ozogamicin)、
セツキシマブ(cetuximab)、
トラスツズマブ(trastuzumab)、
リツキシマブ(rituximab)、
イマチニブメシル酸塩(imatinib mesilate)、
エルロチニブ塩酸塩(erlotinib hydrochloride)、
ゲフィチニブ(gefitinib)、
ダサチニブ水和物(dasatinib hydrate)、
ニロチニブ塩酸塩水和物(nilotinib hydrochloride hydrate)、
スニチニブリンゴ酸塩(sunitinib malate)、
ソラフェニブトシル酸塩(sorafenib tosirate)、
ラパチニブトシル酸塩水和物(lapatinib tosilate hydrate)、
ベバシズマブ(bevacizumab)および
ボルテゾミブ(bortezomib)、
・急性前骨髄球性白血病治療薬:
タミバロテン(tamibarotene)、
トレチノイン(tretinoin)、および
三酸化ヒ素(arsenic trioxide)、
・アロマターゼ阻害薬:
アナストロゾール(anastrozole)、
エキセメスタン(exemestane)、および
レトロゾール(letrozole)、
・抗エストロゲン剤:
タモキシフェンクエン酸塩(tamoxifen citrate)、および
トレミフェンクエン酸塩(toremifene citrate)、
・抗アンドロゲン剤:
ビカルタルド(bicalutamide)、および
フルタミド(flutamide)、
・エストロゲン剤:
エストラムスチンリン酸エステルナトリウム水和物
(estramustine phosphate sodium hydrate)、
・黄体ホルモン:
メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(medroxyprogesterone acetate)
・LH-RHアゴニスト:
ゴセレリン酢酸塩(goserelin acetate)および
リュープロレリン酢酸塩(leuprorelin acetate)、
・抗乳腺腫瘍薬:
メピチオスタン(mepitiostane)
・インターフェロンγ製剤:
インターフェロンガンマ-1a(innterferon gamma-1a)、
・インターロイキン‐2製剤:
セルモロイキン(celmoleukin)、および
テセロイキン(teceleukin)、
・抗悪性腫瘍功酵素剤:
L-アスパラギナーゼ(L-asparaginase)、
・その他の腫瘍用薬:
アセグラトン(aceglatone)、
ウベニメクス(ubenimex)、
塩化ストロンチウム(strontium(89Sr) chloride)、
かわらたけ多糖体製剤(obtained from coriolus versicolor)、
シゾフィラン(sizofiran)、
ペントスタチン(pentostatin)、および
ホリナートカルシウム(calcium folinate)、ならびに
・溶連菌抽出物:
レボホリナートカルシウム(levofolinate calcium)、
レンチナン(lentinan)、
タラポルフィンナトリウム(talaporfin sodium)、および
ポルフィマーナトリウム(porfimer sodium)
を挙げることができる。これらのうち、好ましいものとしてドキソルビシン塩酸塩、イダルビシン塩酸塩)、エピルビシン塩酸塩、ピラルビシン塩酸塩、イリノテカン塩酸塩水和物、エトポシド、ソブゾキサン、ノギテカン塩酸塩、カルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチン、ジアミノシクロヘキサン白金(II)、ドセタキセル水和物、およびパクリタキセル等を挙げることができる。また、これらの抗腫瘍剤は、リポソームに内包されていても、ブロック共重合体とのコンジュゲート等であることもできる。例えば、ドキソルビシンのブロック共重合体コンジュゲートとの例は、EP0 397 307 B1に、
ジアミノシクロヘキサン白金(II)とブロック共重合体コンジュゲートの例は、EP1
695 991B1を挙げることができ、これら内容は、これらの特許文献をここで引用することにより本明細書に組み込まれる。
【発明の詳細な説明】
【0028】
一方、核酸分子としては、所謂、遺伝子療法に使用できる核酸分子、DNAおよびRNAであって、デリバリー部位のイメージングならびに治療に有効な機能を有するたんぱくを発現もしくは亢進する遺伝子たんぱく質をコードするか、またはアンチセンス鎖、siRNAによって症状を引き起こしている遺伝子の発現を抑制する制御因子であることができ、これらの核酸分子は、核酸塩基が8~10万程度であることができ、かつ、ウイルスベクター:レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス、バキュロウイルス、ヒト単純ヘルペスウイルス、レンチウイルス(レトロウイルス科)、バルボウイルス、泡沫状ウイルス、シンSドピスウイルスもしくはアルファウイルスとのコンジュゲートであるか、または非ウイルスベクター:ポリプレックス(カチオン性ポリマー:ポリエチレンイミン、キトサンなど)リポプレックス(カチオン性脂質:リポソーム、リポフェクトアミンなど)カチオン性ペプチド、イムノポーター、リン酸カルシウム、赤血球ゴースト等とのコンプレックスであることができる。
【発明の詳細な説明】
【0029】
高分子化ニトロキシドラジカル化合物と治療活性物質は、患者に対し、同時にか、またはいずれか一方を投与した後に他方を投与する投与様式で用いることができるが、好ましくは、高分子化ニトロキシドラジカル化合物を投与した後に治療活性物質を投与するのが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【0030】
投与経路は、それぞれ、同一であるか異なっていてよく、経口もしくは非経口であることができる。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、直腸内への注入であることでき、または病巣内へ埋め込んでもよい。したがって、これらの成分は、それぞれ、化合物それ自体または存在する場合には、それらの生理学的に許容される塩であることができ、さらには、散剤、錠剤、カプセル剤、ゲル剤、点滴剤、坐剤、懸濁剤、溶液剤、等の剤型であることができる。このような剤形を調製する際に、担体、賦形剤、または他の不活性成分を含めることができる。担体または賦形剤は、製薬学的に許容される溶媒、懸濁媒体もしくはいずれかの他の製薬学的に不活性のベヒクルであることができる。賦形剤は液体もしくは固体であってよく、計画された投与様式を念頭におきつつ、高分子化ニトロキシドラジカル化合物または治療活性物質と組み合わせる場合に、所望の嵩、一貫性などを提供するように選択される。典型的な製薬学的担体は、限定されるものでないが、当該技術分野で常用されている、結合剤(例えば、糊化澱粉、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、)増量剤(例えば、乳糖および他の糖、結晶セルロース、ゼラチン、エチルセルロース)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、トウモロコシ澱粉)等であることができる。
【発明の詳細な説明】
【0031】
高分子化ニトロキシドラジカル化合物と治療活性物質の処方、または用量は、当業者の経験に基づいて決定でき、それぞれ、処置される患者の状態の重傷度および応答性に応じて変動する。一般には、イン・ビトロおよびイン・ビボ動物モデルで有効であることが確認されたEC50に基づき推定しうる。一般に、それぞれ、体重1kg当り、0.0μgから100gまで、好ましくは、0.1μgから1gまで、より好ましくは、10μgから100mgまでであることができる。投与スケジュールは、典型的には、高分子化ニトロキシドラジカル化合物を投与した後、数分から数日(例えば、4~8日)目に治療活性物質を投与することができる。両者を同時に投与するときには、水難溶性の薬剤であって高分子化合物でない治療活性物質は水性溶媒(例えば、純水、または緩衝化された生理食塩水)中で高分子化ニトロキシドラジカル化合物の高分子ミセルを形成する際に、該高分子ミセルのコア領域に内包せしめ、それらが一体となった組成物として投与してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1における細胞実験の結果のグラフ表示である。
【図2】実施例1における動物実験の結果のグラフ表示である。
【図3】実施例2の発現効率のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の具体例を挙げてさらに本発明を具体的に説明するが、本発明をこれらの具体例に限定することを意図するものでない。

【0034】
製造例:
<N-RNPの作製>
チオール末端ポリエチレングリコール(PEG)をテローゲンとして用い、クロロメチルスチレン(CMS)のラジカルテロメリゼーションによりPEG-b-PCMSを製造した。(PEGは、分子量5,000のものを使用した。)この側鎖クロロメチル基に4-アミノ-TEMPOを導入した。このようにして得られたTEMPOを側鎖に有するブロック共重合体(PEG-b-PCTEMPO(N),PCTEMPO(N)の分子量5,000)は水中で自己会合し、平均直径約40nm程度の粒子を形成する。

【0035】
<O-RNPの作製>
チオール末端ポリエチレングリコール(PEG)をテローゲンとして用い、クロロメチルスチレン(CMS)のラジカルテロメリゼーションによりPEG-b-PCMSを製造した。(PEGは、分子量5,000のものを使用した。)この側鎖クロロメチル基に4-ヒドロキシ-TEMPOを導入した。このようにして得られたTEMPOを側鎖に有するブロック共重合体(PEG-b-PCTEMPO(O),PCTEMPO(O)の分子量5,000)は水中で自己会合し、平均直径約40nm程度の粒子を形成する。

【0036】
実施例1:ドキソルビシン(DOX)とO-RNPの相互作用
<細胞実験>
96wellプレートにcolon26細胞を1×10個播種した。48時間後にDOX(2μg/ml)を添加し、24、12、6、0時間前に濃度を振りO-RNPを添加した。ドキソルビシンを添加して24時間後に細胞生存率をWST-assayを用いて測定した。コントロールとして、48時間単独でO-RNPを添加した時の細胞生存率を測定した。

【0037】
<実験結果>
結果を図1に示す。O-RNPを単独で48時間暴露した場合、どの濃度においても毒性は確認されなかった。またDOXを添加する前に、O-RNPを前投与すると、O-RNP内のTEMPO濃度依存的に細胞生存率が増加することが明らかとなった。

【0038】
<実験動物>
6週齢、体重30±2gのBALB/cマウスを購入し、2-3日間の馴化飼育の後に実験に用いた。BALB/cマウスに結腸癌由来Colon-26(1×10cells/100L)を皮下投与することで担がんマウスを作製した。はじめに、上記製造例で得られるO-RNP(30mg/ml,TEMPO濃度40mM,50μL)を担がんマウスに4日間局所投与し、4日目の段階DOX(10mg/kg)を尾静脈投与し、その後の腫瘍の大きさを測定した。

【0039】
<実験結果>
結果を図2に示す。

【0040】
細胞実験では、O-RNPをDOX添加前に投与しておくとDOXの細胞毒性を低減させるという結果であったものの、O-RNPを事前にがん組織に局所投与するとDOX投与後の腫瘍の成長を抑制することが明らかとなった。
なお、図中の各表示は以下の実験系に相当する。
・RNP群:O-RNPのみを投与した。
・DOX+O-RNP群:O-RNPのみを投与し(4日間)、DOXを投与した。
・DOX群:PBSを4日間投与し、DOXを投与した
・N.S.群:PBSの4日間投与のみ。

【0041】
実施例2:ポリエチレンイミンを用いた遺伝子デリバリーとRNPの相互作用
この実験は、N-RNPを用いた遺伝子デリバリーにおける発現効率の向上を確認するためのものである。

【0042】
pDNAとしてpGL3(ルシフェラーゼ遺伝子)、ベクターとしてポリエチレンイミン(PEI:branched,Mw=25000)を用いた。pDNAとPEIは(PEI中のアミノ基)/(pDNA中のリン酸基)=N/P=10となるように混合して複合体(pDNA/PEI)を作成した。

【0043】
HeLa細胞を5×10cells/wellで24wellプレートに播種し、24時間後、pDNA/PEIおよびN-RNPを添加した。pDNAは0.2μg/wellを添加した。24時間後に培地交換を行い、さらに24時間後にルシフェラーゼアッセイ(発光量の測定)とBCAアッセイ(たんぱく質の定量)を行った。

【0044】
結果を図3に示す。

【0045】
図3の縦軸は発光量をたんぱく量で割った値をpDNA/PEIのみの値を1として規格化したものである。N-RNPの添加量はR1=3.3×10-5mM
N-RNP,R2=3.3×10-4mM N-RNP,R3=3.3×10-3mM
N-RNP,R4=3.3×10-2mM RNPである。上図よりN-RNPの添加量が増加するにつれルシフェラーゼの発現量が増加していることが分かった。

【0046】
以上の結果からN-RNPは遺伝子デリバリーにおいてpDNA/PEIのみで用いるよりも遺伝子の発現効率を上げることが示された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2