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明細書 :がん抑制miRNA

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5781732号 (P5781732)
公開番号 特開2011-142833 (P2011-142833A)
登録日 平成27年7月24日(2015.7.24)
発行日 平成27年9月24日(2015.9.24)
公開日 平成23年7月28日(2011.7.28)
発明の名称または考案の名称 がん抑制miRNA
国際特許分類 C12N  15/113       (2010.01)
C12N  15/09        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61K  31/7105      (2006.01)
A61K  31/713       (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAG
C12N 15/00 A
A61P 35/00
A61K 31/7105
A61K 31/713
請求項の数または発明の数 8
全頁数 16
出願番号 特願2010-004618 (P2010-004618)
出願日 平成22年1月13日(2010.1.13)
審査請求日 平成24年10月1日(2012.10.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
発明者または考案者 【氏名】三浦 典正
個別代理人の代理人 【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100067035、【弁理士】、【氏名又は名称】岩崎 光隆
【識別番号】100122301、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 憲史
【識別番号】100144923、【弁理士】、【氏名又は名称】中川 将之
審査官 【審査官】白井 美香保
参考文献・文献 国際公開第2006/112239(WO,A1)
BMC Molecular Biology,2009年,vol.10 no.5 doi: 10.1186/1471-2199-10-5,pp.1-16
Database GenBank,2009年 3月17日,EF433558,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/EF433558
臨床薬理,2009年11月18日,Vol.40, No.Supplement,p.S190
臨床薬理,2007年11月15日,Vol.38, No.Supplement,p.S295
第65回 日本癌学会学術総会記事,2006年,p.438 O-673
調査した分野 C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
REGISTRY(STN)
CA/MEDLINE/BIOSIS(STN)
PubMed
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号1~3の何れかで示される塩基配列から成る単離核酸分子。
【請求項2】
配列番号4、6、8の何れかで示される塩基配列と、それら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る2本鎖単離核酸分子。
【請求項3】
(a)配列番号1で示される塩基配列からなる単離核酸分子、(b)配列番号2で示される塩基配列からなる単離核酸分子および(c) 配列番号3で示される塩基配列からなる単離核酸分子を含む、増殖性疾患の処置および/または予防のための医薬組成物。
【請求項4】
(a) 配列番号4からなる単離核酸分子、(b) 配列番号6からなる単離核酸分子および(c) 配列番号8からなる単離核酸分子を含む、増殖性疾患の処置および/または予防のための医薬組成物。
【請求項5】
(a) 配列番号4からなる塩基配列と、それと相補的な配列とを含む2本鎖単離核酸分子、(b) 配列番号6からなる塩基配列と、それと相補的な配列とを含む2本鎖単離核酸分子および(c) 配列番号8からなる塩基配列と、それと相補的な配列とを含む2本鎖単離核酸分子を含む、増殖性疾患の処置および/または予防のための医薬組成物。
【請求項6】
増殖性疾患が黒色腫または膠芽腫である、請求項の何れかの医薬組成物。
【請求項7】
さらに薬学的に許容される担体を含む、請求項の何れかの医薬組成物。
【請求項8】
対象から取得された細胞に(a)配列番号1で示される塩基配列からなる単離核酸分子、(b)配列番号2で示される塩基配列からなる単離核酸分子および(c) 配列番号3で示される塩基配列からなる単離核酸分子を導入することを特徴とする、細胞のがん化を予防し、あるいは当該細胞の過剰な増殖を抑制、停止、遅延および/または退縮するための細胞製剤の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞増殖を予防、阻害、停止、遅延および/または退縮する新規物質を提供する。特に本発明は、がんに関連する遺伝子RGM249の発現を調節することができる単離核酸分子、特に以下に詳述するmiRNA-47、miRNA-101、miRNA-197と命名した小RNA分子群(マイクロRNA)およびそれらから合成したsiRNA群を提供する。さらに本発明は、これら3種の単離核酸分子を同時的に細胞に接触させることにより、当該細胞のがん化を予防し、あるいは当該細胞の過剰な増殖を抑制、停止、遅延および/または退縮する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
がん細胞ではヒトテロメア逆転写酵素(hTERT)が再活性化され、細胞が著しく増殖することから、hTERTの発現を抑制する因子を発見し、これを利用することによりがんの治療を行おうとする研究が行われている。既に本発明者は、hTERT発現関連遺伝子の探索を行い、ヒト染色体にマッピングする方法により、hTERT発現関連遺伝子としてRGM249を同定した。この遺伝子はRNA遺伝子であり、この遺伝子または転写産物をがん細胞に導入するとがん抑制効果を示す結果を得ている(特許文献1および非特許文献1、これらの内容を、参照により本明細書に引用する)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】WO 2006/112239号公報
【0004】

【非特許文献1】Miura N, et al., BMC Mol Biol. 2009 Feb 2;10:5.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの文献はhTERT発現調節RNAの一部に相当する15~30塩基から成るsiRNAやマイクロRNAについて一般的に示唆しているに過ぎず、具体的にどのような塩基配列を有するsiRNAやマイクロRNAががん細胞増殖を抑制することができるのかについての記載がない。したがって、より具体的かつ効果的にがん細胞増殖を抑制し得る方法がなおも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明において、RGM249の転写産物であるmRNAをDicerで消化して得られるmiRNAの塩基配列を決定し、これらmiRNAがmiRNA-47、miRNA-101、miRNA-197(それぞれ配列番号1~3で示されるRNA分子)であることを同定した。これらmiRNAは実際、多形性膠芽腫細胞株T98G、悪性黒色種細胞株HMV-I、線維肉腫細胞株HT1080、膵癌細胞株PK-45pで発現していることを確認した。このことにより、RGM249の遺伝子産物にmiRNA-47、miRNA-101、miRNA-197が含まれることを示した。さらに、これら3分子から合成したsiRNAを同時にがん細胞(悪性黒色種細胞株HMV-I)に導入したとき、多能性マーカー(Oct3/4、Sox2)および癌抑制遺伝子(p53)の発現が増強され、発癌関連遺伝子(Klf4、c-Myc)の発現抑制がみられた。癌幹細胞マーカー(PROM1)は変化しなかった。さらにまた、腫瘍を移植した免疫不全マウスにmiRNA-47、miRNA-101およびmiRNA-197に対するsiRNAを投与すると、腫瘍の転移が抑制された。以上より、これらの単離核酸分子ががん抑制効果を有することを見出した。
【0007】
したがって本発明は、第一の態様において、配列番号1で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子を提供する。
別の本発明の態様において、配列番号2で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子を提供する。
別の本発明の態様において、配列番号3で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子を提供する。
【0008】
さらなる態様において、本発明は、配列番号1で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る単離核酸分子を提供する。
別の本発明の態様において、配列番号2で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る単離核酸分子を提供する。
別の本発明の態様において、配列番号3で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る単離核酸分子を提供する。
【0009】
また別の態様において、本発明は、配列番号4または5で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子を提供する。
別の本発明の態様において、配列番号6または7で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子を提供する。
別の本発明の態様において、配列番号8または9で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子を提供する。
【0010】
さらに別の態様において、本発明は、配列番号4または5で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る単離核酸分子を提供する。
別の本発明の態様において、配列番号6または7で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る単離核酸分子を提供する。
別の本発明の態様において、配列番号8または9で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る単離核酸分子を提供する。
【0011】
また別の態様において、本発明は、配列番号4または5で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列とを含む2本鎖単離核酸分子を提供する。
別の本発明の態様において、配列番号6または7で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列とを含む2本鎖単離核酸分子を提供する。
別の本発明の態様において、配列番号8または9で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列とを含む2本鎖単離核酸分子を提供する。
【0012】
さらに別の態様において、本発明は、配列番号4または5で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列から成る2本鎖単離核酸分子を提供する。
別の本発明の態様において、配列番号6または7で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列から成る2本鎖単離核酸分子を提供する。
別の本発明の態様において、配列番号8または9で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列から成る2本鎖単離核酸分子を提供する。
【0013】
また、本発明は、(a)配列番号1で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子、(b)配列番号2で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子および(c) 配列番号3で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子を含む、増殖性疾患の処置および/または予防のための医薬組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、(a)配列番号1で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る単離核酸分子、(b)配列番号2で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る単離核酸分子および(c) 配列番号3で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る単離核酸分子を含む、増殖性疾患の処置および/または予防のための医薬組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、(a) 配列番号4または5で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子、(b) 配列番号6または7で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子および(c) 配列番号8または9で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子を含む、増殖性疾患の処置および/または予防のための医薬組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、(a) 配列番号4または5で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る単離核酸分子、(b) 配列番号6または7で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る単離核酸分子および(c) 配列番号8または9で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る単離核酸分子を含む、増殖性疾患の処置および/または予防のための医薬組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、(a) 配列番号4または5で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列とを含む2本鎖単離核酸分子、(b) 配列番号6または7で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列とを含む2本鎖単離核酸分子および(c) 配列番号8または9で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列とを含む2本鎖単離核酸分子を含む、増殖性疾患の処置および/または予防のための医薬組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、(a) 配列番号4または5で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列から成る2本鎖単離核酸分子、(b) 配列番号6または7で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列から成る2本鎖単離核酸分子および(c) 配列番号8または9で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列から成る2本鎖単離核酸分子を含む、増殖性疾患の処置および/または予防のための医薬組成物を提供する。
【0019】
別の態様において、本発明は、細胞のがん化を予防し、あるいは細胞の過剰な増殖を抑制、停止、遅延および/または退縮する方法であって、(a) 配列番号1で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子、(b) 配列番号2で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子および(c) 配列番号3で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子と前記細胞を同時的に接触させることを含む方法を提供する。
【0020】
別の態様において、本発明は、細胞のがん化を予防し、あるいは細胞の過剰な増殖を抑制、停止、遅延および/または退縮する方法であって、(a) 配列番号1で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る単離核酸分子、(b) 配列番号2で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る単離核酸分子および(c) 配列番号3で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る単離核酸分子と前記細胞を同時的に接触させることを含む方法を提供する。
【0021】
別の態様において、本発明は、細胞のがん化を予防し、あるいは細胞の過剰な増殖を抑制、停止、遅延および/または退縮する方法であって、(a) 配列番号4または5で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子、(b) 配列番号6または7で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子および(c) 配列番号8または9で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子と前記細胞を同時的に接触させることを含む方法を提供する。
【0022】
別の態様において、本発明は、細胞のがん化を予防し、あるいは細胞の過剰な増殖を抑制、停止、遅延および/または退縮する方法であって、(a) 配列番号4または5で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る単離核酸分子、(b) 配列番号6または7で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る単離核酸分子および(c) 配列番号8または9で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列から成る単離核酸分子と前記細胞を同時的に接触させることを含む方法を提供する。
【0023】
別の態様において、本発明は、細胞のがん化を予防し、あるいは細胞の過剰な増殖を抑制、停止、遅延および/または退縮する方法であって、(a) 配列番号4または5で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列とを含む2本鎖単離核酸分子、(b) 配列番号6または7で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列とを含む2本鎖単離核酸分子および(c) 配列番号8または9で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列とを含む2本鎖単離核酸分子と前記細胞を同時的に接触させることを含む方法を提供する。
【0024】
さらなる態様において、本発明は、細胞のがん化を予防し、あるいは細胞の過剰な増殖を抑制、停止、遅延および/または退縮する方法であって、(a) 配列番号4または5で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列から成る2本鎖単離核酸分子、(b) 配列番号6または7で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列から成る2本鎖単離核酸分子および(c) 配列番号8または9で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列から成る2本鎖単離核酸分子と前記細胞を同時的に接触させることを含む方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のmiRNAおよびsiRNAは、腫瘍細胞の分化状態を劇的に変動させ得ることから、未分化または低分化で、治療抵抗性の悪性腫瘍を抑制することができると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】RGM249の転写産物の塩基配列、その二次構造およびそれをDicerで消化して得られた産物のPAGE電気泳動の結果を示す。
【図2】多形性膠芽腫細胞株T98GにおけるmiRNA-47、miRNA-101およびmiRNA-197の発現量を示す。
【図3】T98Gから抽出したmiRNAを鋳型として、miRNA特異的塩基配列を用いてmiRNA定量検出を行った結果を示す。
【図4】悪性黒色腫細胞株HMV-Iに対するmiRNA-47、miRNA-101およびmiRNA-197個々および組み合わせの増殖抑制機能を、siRNA法を用いて検討した結果を示す。
【図5】悪性黒色腫細胞株HMV-Iに対するmiRNA-47、miRNA-101およびmiRNA-197に対するsiRNAの組合せ剤投与によるRNA発現の調節を示す。
【図6】腫瘍を移植した免疫不全マウスにおける、3種のmiRNAのインビボでの増殖抑制機能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書において使用されている用語は、医学、薬学、分子生物学、微生物学等の分野で一般に使用されているとおりの意味を有するが、特に次に記載する意味を有する。

【0028】
「マイクロRNA」、「miRNA」または「miR」は相互に交換可能なように使用され、RNAの翻訳をサイレンシングすることによって遺伝子発現を制御し得る、長さ約15~30塩基の一本鎖RNAを意味する。
「miRNA-47」は配列番号1で示される配列5'-CUCAC CCGGU GAUGA GAGUU UGAUU (25mer)を有し、hTERT発現関連遺伝子の1つであるRGM249由来のマイクロRNA分子である。
「miRNA-101」は配列番号2で示される配列5'-AACAU GACCA AAGCC AUGUG (20mer)を有し、hTERT発現関連遺伝子の1つであるRGM249由来のマイクロRNA分子である。
「miRNA-197」は配列番号3で示される配列5'-GUACU UCACG AGGAU GUG (18mer)を有し、hTERT発現関連遺伝子の1つであるRGM249由来のマイクロRNA分子である。

【0029】
「siRNA」は、配列特異的に遺伝子の発現を抑制することができる、長さ約15~30塩基の低分子2本鎖RNAを意味する。上記マイクロRNAからそれぞれ、siRNAを当業者に周知の方法、例えば実施例に記載の方法によって製造することができる。
miRNA-47由来のsiRNAは、配列番号4で示される配列5'-CUCACCCGGUGAUGAGAGUUUGA(センス)と配列番号5で示される配列5'-AAUCAAACUCUCAUCACCGGGUG(アンチセンス)を有し、hTERT発現関連遺伝子の1つであるRGM249の発現を調節し得る。
miRNA-101由来のsiRNAは、配列番号6で示される配列5'-AACAUGACCAAAGCCAUGUGUU(センス)と配列番号7で示される配列5'-CACAUGGCUUUGGUCAUGUU(アンチセンス)を有し、hTERT発現関連遺伝子の1つであるRGM249の発現を調節し得る。
miRNA-197由来のsiRNAは、配列番号8で示される配列5'-GUACUUCACGAGGAUGUGUU(センス)と配列番号9で示される配列5'-CACAUCCUCGUGAAGUAC(アンチセンス)を有し、hTERT発現関連遺伝子の1つであるRGM249の発現を調節し得る。

【0030】
RGM249の転写産物であるRNAは、
5’-GGAAAACUAAAAUGAGAGAAUGGGUGUCCAAGAGGACAAGUUCAUGCUCACCCGGUGAUGAGAGUUUGAUUGCAGAAUAAGGCUAGACAAAGGGAAGCUGAACAUGACCAAAGCCAUGUGACAUCGUAUGAUCCUCGAAUCUCACAGUAUCUAUGUAUCUAUAAUCAGAUACAUCCCUAGACUUUCCAGGAAUUCUGGUACUUCACGAGGAUGUGAGAAGACUCUGAACAAAAUAAUACACUGCUCGUG-3’
の塩基配列(配列番号10)を有する。

【0031】
塩基の「置換、欠失または付加」は、元の塩基配列から記載の数の塩基が任意の位置で、天然塩基および化学修飾塩基を含む他の塩基と入れ換わっている(置換)、脱落している(欠失)、あるいは挿入されている(付加)ことを意味する。当該置換、欠失または付加された配列を有する核酸分子は元の配列を有する核酸分子と実質的に同等の性質を有し、例えば元の配列と相補的な配列を有する核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。ここでストリンジェントな条件は、ある核酸分子が標的配列に結合するが、他の配列にはほとんど結合しない条件を意味する。ストリンジェントな条件は配列に依存し、例えばより長い配列はより高温でその適切な相補鎖に特異的にハイブリダイズする。一般に、ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度およびpHで、特定の配列の熱融点(Tm)よりも約5℃低く選択する。Tmは、所定のイオン強度、pHおよび核酸濃度下で標的配列に相補的な塩基配列の50%が標的配列と平衡状態でハイブリダイズする温度である。標的配列は一般に過剰に存在するため、Tmで50%の塩基配列が、平衡状態でその相補鎖にハイブリダイズする。典型的に、ストリンジェントな条件は、塩濃度がナトリウムイオン約1.0M未満、典型的にはナトリウムイオンまたは他の塩約0.01~1.0M、pH7.0~8.3であり、温度が、短い塩基配列、例えば10~50塩基の配列について少なくとも約30℃、長い塩基配列について少なくとも約60℃であるものである。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような脱安定化剤を加えて得ることもできる。

【0032】
「化学修飾」塩基は、メチル化、リン酸化、脱アミノ化等の塩基において一般に生じ得ると当業者に理解されている修飾が施された塩基を意味する。

【0033】
「単離」された核酸分子とは、核酸分子がそれらの天然に生じる環境とは別の環境に存在していることを意味するが、一旦核酸分子を単離した後、再度元の環境に戻した場合であっても、それらの核酸分子は単離されている。核酸分子を単離する方法は当業者に周知である。単離された核酸分子は、一般に、実質的に精製されている。ここで、実質的に精製とは、天然環境から採取された化合物(例えばポリヌクレオチドまたはポリペプチドまたは抗体)を意味し、本来の天然環境には存在している他の成分を少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも90%含まない。

【0034】
「接触」は、本発明の単離核酸分子が細胞に、直接または間接的に近づくことを意味し、典型的には細胞中に本発明の単離核酸分子が存在することを意味する。接触は生体内の細胞、生体から単離した細胞、体液、バッファー、塩、溶液等の何れかの中に存在している細胞に対して行ってもよい。「接触」は、例えば単離した細胞を含むビーカー、マイクロタイタープレート、細胞培養フラスコまたはマイクロアレイ等に本発明の単離核酸分子を入れることを含む。接触は、インビボ、エクスビボまたはインビトロで実施してよい。

【0035】
「同時的」は、本発明の3種の単離核酸分子が同時に細胞に接触している状態を意味し、本発明の単離核酸分子それぞれが全く同時に、同一の経路で、例えば一体とした組成物として標的細胞を含む環境中に導入されることを必要としない。したがって、3種の単離核酸分子が同時に標的細胞に接触しさえすれば、本発明の単離核酸分子を1種ずつ、あるいは2種と1種を、それぞれ別個に標的細胞を含む環境中に導入しても差し支えない。

【0036】
本発明の範囲は理論および仕組みに縛られることはないが、標的細胞と接触させた本発明のsiRNAは当該細胞内、例えば核内でRGM249mRNAとハイブリダイズしてその翻訳を抑制することによって、RGM249の発現を阻害することができる。あるいは、本発明のmiRNAは当該細胞内でRGM249のセンス鎖として機能して、強制的にRGM249を発現状態にすることができる。RGM249はhTERTの関連遺伝子であり、当該遺伝子の発現を(オン、オフいずれであれ)制御することによって細胞のがん化または過増殖を抑制、停止、遅延または退縮することができる。

【0037】
驚くべきことに、実施例に示すとおり、本発明の3種の単離核酸分子を同時的に悪性黒色腫細胞株に接触させたときにのみ、腫瘍細胞の増殖が抑制乃至退縮されたが、いずれか1種または2種のこれらの単離核酸分子では、腫瘍細胞の増殖は抑制されなかった。したがって本発明は、細胞のがん化を予防し、あるいは細胞の過剰な増殖を抑制、停止、遅延および/または退縮する方法であって、本発明の3種の単離核酸分子を同時的に前記細胞に接触させることを含む方法を提供する。

【0038】
さらに本発明は、本発明の3種の単離核酸分子を含む、組成物を提供する。当該組成物は例えば増殖性疾患の処置および/または予防のための医薬組成物であってよい。また、本発明の3種の単離核酸分子が1個の組成物に含まれる固定された組成物であっても、あるいは1種ずつまたは2種と1種とが別々に含まれる複数の組成物であって、これらの組成物が一体的に使用されるためのものである、組合せ組成物であってもよい。

【0039】
本発明の単離核酸分子は、コレステロールなどの脂質や細胞内への取り込み促進(誘導)物質と結合していてもよい。かかる複合化核酸分子は、細胞内で長時間持続的にRGM249の発現を調節し得る。

【0040】
本発明の組成物は、本発明の3種の単離核酸分子と、薬学的に許容される担体を含んでいてもよい。「薬学的に許容される担体」は、核酸分子および他の治療剤のような治療剤を投与するための担体を意味する。該用語は、それ自体が組成物を投与された個体に有害な抗体の生産を誘導することなく、過度の毒性なく投与することができる何れかの医薬担体を意味する。好適な担体は、大きく、ゆっくりと代謝される巨大分子、例えばタンパク質、多糖、ポリ乳糖、ポリグリコール酸、ポリマー状アミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集体、ハイドロジェルおよび不活性ウイルス粒子、特にアテロコラーゲンであり得る。かかる担体は当業者に周知である。治療用組成物の薬学的に許容される担体は、水、食塩水、グリセロールおよびエタノールのような液体を含んでいてもよい。湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化物質等の補助物質も、かかる担体中に存在していてよい。

【0041】
本発明の核酸は、例えば1種以上の選択された宿主細胞中で該核酸の複製を行うことができる組換えベクター中で提供されてもよい。1個の組換えベクター中に本発明の3種の核酸を発現する遺伝子が含まれていても、あるいは2個または3個の組換えベクター中に本発明の2種または1種の核酸を発現する遺伝子が含まれていてもよい。たとえば、様々なウイルス性種(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV)が、哺乳類細胞におけるクローニングベクターとして有用である。該ベクターはたとえば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、ファージ、あるいは細胞によって取り込まれ、本発明の核酸配列あるいは他の遺伝子を発現するために使用される、任意の他の好適なベクターまたは構築物の形態であり得る。ベクターに本発明の核酸を発現する遺伝子を導入する方法は、当該技術分野において周知である。

【0042】
本発明の単離核酸分子によって処置または予防され得る増殖性疾患は、例えば良性もしくはとりわけ悪性腫瘍、特に分化度の低い腫瘍、例えば腎臓、脳、肝臓、副腎、膀胱、胸部、胃、卵巣、結腸、直腸、前立腺、膵臓、肺、膣または甲状腺の癌腫、肉腫、黒色腫、膠芽腫、例えば多形性膠芽腫、多発性骨髄腫ならびに頭頸部がん、ならびに白血病、特に結腸癌腫または結直腸腺腫、または上皮過増殖、とりわけ乾癬、前立腺過形成、とりわけ上皮形質の新生物、特に乳房癌腫、または白血病、中でもとりわけ黒色腫または膠芽腫、特に他の治療に抵抗性の悪性腫瘍、特に黒色腫または多形性膠芽腫を意味するが、これらに限定されない。「細胞のがん化」とは、細胞がこれらの疾患において見出されるような過増殖性状態となることを意味する。「細胞の過剰な増殖」も同様に、これらの疾患において見出されるような細胞の過増殖性状態を意味する。

【0043】
細胞は生体内の細胞であっても生体から単離した細胞であってもよい。細胞は、あらゆる生物起源の細胞であり得るが、典型的には動物、特にヒトを含む哺乳類、例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、サル、マウス、ラット、マウス等に由来する。細胞は特に、過増殖状態の細胞であるか、またはそのような状態になり得る可能性があると判断される細胞であり得る。したがって本発明は、上記動物から選択される対象の増殖性疾患を処置または予防する方法であって、かかる処置または予防を必要とする前記対象に治療上有効量の本発明の単離核酸分子またはそれを含む医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。

【0044】
「治療上有効量」は、治療上有効量の医薬を対象に投与したとき、該対象の1種以上のがん細胞の増殖および/または生存またはがん細胞の転移の減少または逆転として観察される薬効が生じる本発明の単離核酸分子の量を意味する。治療上有効量は、典型的には、有効成分を含まない組成物を同じ状況の対象に投与したとき観察される効果と比較した効果によって決定される。ある対象についての正確な有効量は、対象のサイズ、健康、状態の性質および程度、ならびに投与に選択した治療剤または治療剤の組合せに依存し、医師、臨床医または獣医が通常の実験によって決定することができる。

【0045】
本発明の医薬組成物は、例えば吸入もしくは座薬によって、または粘膜組織に、例えば膣、直腸、尿道、頬側および舌下組織に、経口的に、局所的に、鼻腔内に、腹腔内に、非経腸的に、静脈内に、リンパ管内に、腫瘍内に、筋肉内に、傷口内に、動脈内に、皮下に、眼内に、滑液内に、経上皮的に、および経皮的に投与する。他の好適な導入方法には、再充填可能または生分解性デバイス、および遅延もしくは徐放ポリマーデバイスも含まれ得る。本発明の医薬組成物はまた、他の既知の抗がん剤または他の既知のがん処置レジメン、例えば外科手術または放射線療法との組合せ治療の一部として投与することができる。

【0046】
本発明の核酸は、細胞中に直接導入してもよい。限定するものではないが一般的に(とりわけインビトロ導入について)形質転換と呼ばれ得る導入のために、あらゆる利用可能な技術を使用することができる。真核細胞への導入のための好適な技術には、カルシウムリン酸トランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム介在トランスフェクション、およびレトロウイルスまたは当業者に既知の他のウイルス、たとえば痘疹を使用した形質導入が含まれ得る。

【0047】
したがってさらなる態様において本発明は、対象から取得された細胞、例えば腫瘍細胞に(a)配列番号1で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子、(b)配列番号2で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子および(c) 配列番号3で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子を導入することを特徴とする、細胞のがん化を予防し、あるいは当該細胞の過剰な増殖を抑制、停止、遅延および/または退縮するための細胞製剤の製造方法を提供する。

【0048】
さらなる態様において本発明は、対象から取得された細胞、例えば腫瘍細胞に(a)配列番号4または5で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子、(b)配列番号6または7で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子および(c) 配列番号8または9で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列またはそれら塩基配列の何れかと相補的な配列を含む単離核酸分子を導入することを特徴とする、細胞のがん化を予防し、あるいは当該細胞の過剰な増殖を抑制、停止、遅延および/または退縮するための細胞製剤の製造方法を提供する。

【0049】
さらなる態様において本発明は、対象から取得された細胞、例えば腫瘍細胞に(a) 配列番号4または5で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列とを含む2本鎖単離核酸分子、(b) 配列番号6または7で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列とを含む2本鎖単離核酸分子および(c) 配列番号8または9で示される塩基配列、当該塩基配列の1~3塩基、例えば1~2塩基、典型的には1塩基置換、欠失もしくは付加配列と、それらの何れかと相補的な配列とを含む2本鎖単離核酸分子を導入することを特徴とする、細胞のがん化を予防し、あるいは当該細胞の過剰な増殖を抑制、停止、遅延および/または退縮するための細胞製剤の製造方法を提供する。

【0050】
本明細書に記載の特許、特許出願、受託番号および公報の各々は、その全体について、ここに参照により本明細書に引用する。

【0051】
本明細書に記載のものに加えて、上記記載の点から本発明の多様な修飾が当業者に明らかであろう。かかる修飾も本発明の技術的範囲に含まれることが意図される。本発明はさらに、下記実施例において詳述されるが、これは説明の目的のためであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例1】
【0052】
miRNA-47、miRNA-101、miRNA-197の製造
RGM249をRNA発現ベクター(U6 promoterによる)にサブクローニングし、T7 RNAポリメラーゼでRGM249の全長RNA(1)を発現させた。これをmiRNAプロセッシング酵素 Dicerで消化し、消化された産物(2)をAmbion社のFlashPAGEで精製した。(1)と(2)を電気泳動法(PAGE)により25mAで約1時間泳動した(結果を図1に示す)。泳動の結果、3種類の区別可能な消化産物を認めたため、3種類のmiRNAが存在すると予想し、Takara社のmiRNA定量キットにより詳細に検討した。キットに附属しているシークエンス用プライマーで定量PCRをかけ、更に電気泳動して、産物を切りだして精製・抽出した後、附属のシークエンスプライマーでキットの指示書に従って塩基配列の解析を行ったところ、RGM249の3か所の塩基配列、47、10および197であることが明らかとなった。そこで、今度はそのmiRNAの塩基配列で、
【表1】
JP0005781732B2_000002t.gif
上記表に記載のセンスプライマー以外で同じキットを用い、RGM249RNAをDicerで消化し、抽出したものを用い、PCRをかけ、同手法でシークエンスし、その3つのmiRNAであることが再確認した。
さらに(2)を、上記プライマーを用いたPCRによって増幅して、miRNA-47、miRNA-101およびmiRNA-197をそれぞれ得た。
【実施例1】
【0053】
多形性膠芽腫細胞株T98GにおけるmiRNA-47、miRNA-101およびmiRNA-197の発現量の測定
多形性膠芽腫細胞株T98G(東北大学加齢医学研究所から譲渡)におけるmiRNA-47、miRNA-101およびmiRNA-197のコピー数を、Takara社のmiRNA定量キットにより、添付の指示書のとおりに検討した。結果を図2に示す。3種のmiRNAはいずれも腫瘍細胞において実際に発現しているRNA分子であることが明らかとなった。
【実施例1】
【0054】
T98Gから抽出したmiRNAを、Takara社のmiRNA定量キットにより検討した。上記miRNA特異的塩基配列センス鎖をforwardプライマーとして定量PCRをかけたところ、図3のように反応し、単一増幅物であることが確認できた。
【実施例1】
【0055】
悪性黒色種細胞株HMV-I(東北大学加齢医学研究所から譲渡)におけるmiRNA-47、miRNA-101およびmiRNA-197個々及び組み合わせの増殖抑制機能
miRNA-47、miRNA-101およびmiRNA-197個々及び組み合わせの増殖抑制機能に関して、siRNA法を用いて悪性黒色種細胞株HMV-Iで検討した。
miRNA-47、101および197の塩基配列から北海道システムサイエンス社のsiRNA合成キットを用い、キットに添付のマニュアルに準じてsiRNAを合成した。遺伝子導入担体FuGene(Roche社)を用いて、マニュアルに準じてsiRNAをHMV-Iに導入した。導入48時間後にMTT細胞数側的キット(nakarai社)で、増殖している細胞数の評価を行った。
結果を図4に示す。miRNA-47、miRNA-101およびmiRNA-197の3種をsiRNAの形で共導入したときの増殖抑制効果が最も優れている。T98Gにおいても3種混合での効果が最も抑制効果が高かった(データは示さず)。
【実施例1】
【0056】
悪性黒色種細胞株HMV-I(東北大学加齢医学研究所から譲渡)におけるmiRNA-47、miRNA-101およびmiRNA-197組み合わせの増殖抑制機能
miRNA-47ならびにmiRNA-47、miRNA-101とmiRNA-197の3種のsiRNAを上記と同様に、同時に悪性黒色種細胞株HMV-Iにそれぞれ導入した。導入48時間後にmiRNAと全RNAをmiRVANA miRNA isolation kit(Ambion社)で抽出した。そのRNAを注目する遺伝子のプライマーを用いて我々が開発したRealtime OneStep RT-PCR法(Miura N et al. Clinical Cancer Research, 1; 11(9): 3205-3209, 2005)で定量測定した。βアクチンの発現を1として、各RNAの発現を図5として示す。miRNA-47、miRNA-101およびmiRNA-197の3種のsiRNA多能性や正常細胞に関連する遺伝子、分化に関わる遺伝子発現を変動させた。
【実施例1】
【0057】
インビボ試験
免疫不全マウス(KSN/SLC:チャールスリバー社)10匹に腫瘍細胞(HMV-I)5x10個を各マウスの背部に移植した。該マウスをアテロコラーゲン(Atello Collagen)(高研社)のみを投与するコントロール群(5匹)と、miRNA-47、miRNA-101およびmiRNA-197に対するsiRNAの組合せ剤(各100μM)投与群(DDS製剤としてアテロコラーゲンを用いる)(5匹)に分け、製造業者のマニュアルに準じて1週間おきに投与し、投与前には腫瘍のサイズを測定した。これを28日間継続した。結果を図6に示す。miRNA-47、miRNA-101およびmiRNA-197に対するsiRNAの組合せはインビボでも増殖抑制機能を発揮する。
28日目にマウスを解剖して、転移の有無を検索した。結果は次の表のとおりである。
【表2】
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組合せ剤投与群では、一部に肺転移があったものの、コントロール群と比較して有意に腫瘍の転移が抑制されていることを確認した。
【実施例1】
【0058】
免疫不全マウス(KSN/SLC:チャールスリバー社)10匹に腫瘍細胞(HMV-I)5x10個を各マウスの尾静脈から注射した。該マウスをアテロコラーゲン(Atello Collagen)(高研社)のみを投与するコントロール群(5匹)と、miRNA-47、miRNA-101およびmiRNA-197に対するsiRNAの組合せ剤(各400μM)投与群(DDS製剤としてアテロコラーゲンを用いる)(5匹)に分け、それぞれに薬剤を腫瘍細胞注射の1週間後から1カ月間、1週おきに静脈内投与した。投与サイクルの終了後にマウスを解剖して、転移の有無を検索した。結果は次の表のとおりである。
【表3】
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コントロール群では肺転移、肝転移、腹腔内転移が多数認められたのに対し、組合せ剤投与群は腹腔内転移巣を1つ認めたのみであった。これは組合せ剤の投与によって悪性腫瘍細胞が転移能を失ったことすなわち、良性腫瘍様に分化をスイッチオフできることを示唆している。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5