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明細書 :ユニバーサル塩基

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5137118号 (P5137118)
登録日 平成24年11月22日(2012.11.22)
発行日 平成25年2月6日(2013.2.6)
発明の名称または考案の名称 ユニバーサル塩基
国際特許分類 C07F   7/18        (2006.01)
C07D 487/04        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C07H  21/00        (2006.01)
FI C07F 7/18 CSPV
C07D 487/04 148
C12N 15/00 A
C07H 21/00
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願2007-533136 (P2007-533136)
出願日 平成18年7月27日(2006.7.27)
国際出願番号 PCT/JP2006/314834
国際公開番号 WO2007/026485
国際公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
優先権出願番号 2005248585
優先日 平成17年8月30日(2005.8.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年4月23日(2009.4.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
発明者または考案者 【氏名】片岡 正典
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
審査官 【審査官】井上 千弥子
参考文献・文献 国際公開第2007/026595(WO,A1)
特表2003-528883(JP,A)
Helvetica Chimica Acta,2003年,86(4),pp.1193-1204
Helvetica Chimica Acta,2002年,85(5),pp.1340-1354
Journal of Heterocyclic Chemistry,1970年,7,pp.243-244
Science of Synthesis,2004年,16,pp.1337-1397
調査した分野 C07F 7/18
C07H 21/00
C12N 15/09
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下式
【化1】
JP0005137118B2_000010t.gif
(式中、Rは、炭化水素基、タンパク質又はペプチド断片、核酸、又は合成ポリマーである。)で表され、4種の天然核酸塩基と非特異的に塩基対を形成することのできるユニバーサル塩基。
【請求項2】
Rが、オリゴヌクレオチド鎖である請求項1に記載のユニバーサル塩基。
【請求項3】
Rが、水溶性官能基である請求項1に記載のユニバーサル塩基。
【請求項4】
水溶性官能基が、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミド基又はアミジン基を有するアルキル基である請求項に記載のユニバーサル塩基。
【請求項5】
Rが、脂溶性官能基である請求項1に記載のユニバーサル塩基。
【請求項6】
脂溶性官能基が、炭素数が5以上のアルキル基又はシロキシ基、エステル基、アリール基を含むアルキル基である請求項に記載のユニバーサル塩基。
【請求項7】
天然核酸塩基又は天然核酸塩基から成るオリゴヌクレオチドを含む溶液に請求項1~のいずれか一項に記載のユニバーサル塩基を混合することによりこれらの塩基対を形成させる方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、非特異的に4種の天然核酸塩基と塩基対を形成することのできる新規なユニバーサル塩基に関する。
【背景技術】
【0002】
天然核酸塩基と非特異的に擬似塩基対を形成する人工核酸塩基、即ちユニバーサル塩基を得る試みは多く成されている。しかし、一般にユニバーサル塩基と呼ばれているものはインターカレーターの類であり、これは天然核酸塩基と疑似塩基対を形成することはない。一方、疑似塩基対を形成するユニバーサル塩基としてイノシンをベースとした誘導体が知られているが(特許文献1、2等)、グアニンとしてのみふるまうことが最近の研究で明らかとなっている(非特許文献1)。
本発明において、発明者がユニバーサル塩基のベースとして利用したピリミド[4,5-d]ピリミジン-2,4,5,7-テトラオン及びその誘導体は、天然核酸塩基と疑似塩基対を形成するとは考えられていなかった(非特許文献2)。
【0003】

【特許文献1】特表2005-511096
【特許文献2】特表2003-528883
【非特許文献1】Ohtsuka, E. et al., J. Biol. Chem., 260, 2605-2608(1985)
【非特許文献2】Niess, R., Robins, R. K. J.Heterocyclic. Chem.,7, 243-244(1970)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、相対する天然核酸塩基(A、T、C、G)を特異的に認識し塩基対を形成するという機能を全く持たず、4種のいずれの天然核酸塩基とも非特異的に塩基対を形成する人工核酸塩基を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ピリミド[4,5-d]ピリミジン-2,4,5,7-テトラオン(下式)
【化2】
JP0005137118B2_000002t.gif
に注目した。この無置換のピリミド[4,5-d]ピリミジン-2,4,5,7-テトラオンは水や有機溶媒に対する溶解度が極めて低く、通常天然核酸塩基と塩基対を形成する場は溶液状態であるため、目的とする塩基対形成機能を実現することができない。そこで、発明者らは、この1位に水素原子以外のアルキル基等を導入したところ、水や有機溶媒に対する溶解度が上がり、実際に天然核酸塩基と塩基対を形成するための溶液中の濃度程度に溶解することを見出し、更に、4種の天然核酸塩基との塩基対形成試験を行ったところ、当該化合物が4種のいずれの天然核酸塩基とも非特異的に塩基対を形成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、下式
【化1】
JP0005137118B2_000003t.gif
(式中、Rは、水素原子を除く、一価の基を表す。)で表され、4種の天然核酸塩基と非特異的に塩基対を形成することのできるユニバーサル塩基である。
また本発明は、天然核酸塩基又は天然核酸塩基から成るオリゴヌクレオチドを含む溶液に上記ユニバーサル塩基を混合することによりこれらの塩基対を形成させる方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のユニバーサル塩基は、従来ユニバーサル塩基と称されてきた化合物とは構造が全く異なる新規な化合物である。このユニバーサル塩基は、相対する塩基に呼応して動的に構造を変化させることにより疑似塩基対を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のユニバーサル塩基は、ピリミド[4,5-d]ピリミジン-2,4,5,7-テトラオン(化1)の1位の窒素原子に置換基を有する構造を持ち、下式で表される。
【化1】
JP0005137118B2_000004t.gif
式中、Rは、水素原子を除く一価の基であれば如何なるものでもよい。塩基対を形成しようとする天然核酸塩基又は天然核酸塩基から成るオリゴヌクレオチドを含む溶液に塩基対を形成するに必要な濃度で溶解し、塩基対形成に支障のないことが好ましい。
【0009】
このようなRとして、例えば、ヘテロ原子(S,O,Nなど)を含んでもよい炭化水素基、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基などであってもよいし、タンパク質やペプチド断片、天然核酸や他の人工核酸、スチレンビーズ等の合成ポリマー等であってもよい。また、これらに反応基や発色団などの各種マーカーを付してもよい。
また、例えば、PCR法における配列未特定遺伝子や不特定遺伝子のクローニングを行う場合、ヒトゲノム中の一塩基多型の検出を行う場合には、又はアンチジーン法による不特定遺伝子の発現抑制を行う場合には、Rは天然又は非天然のオリゴヌクレオチド鎖が好ましい。核酸成分の高選択的抽出や除去をなどを行う場合には、Rは水溶性官能基、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミド基又はアミジン基等を有するアルキル基などが好ましい。ヌクレオチド成分の選択的除去や抽出を行う場合には、Rは脂溶性官能基、例えば、炭素数が5以上のアルキル基又はシロキシ基、エステル基、アリール基などを含むアルキル基などが好ましい。
【0010】
本発明のユニバーサル塩基は、その結合を軸とした回転により、プリン型、ピリミジン型の両塩基になりうる。即ち、本発明のユニバーサル塩基は、下式に示すように、相対する塩基がアミジン型の塩基であるアデニン(A)又はシトシン(C)の場合はアミド型の配置、アミド型塩基であるグアニン(G)又はチミン(T)の場合はアミジン型配置をとり、すべての天然核酸塩基と塩基対を形成することができる。
【化3】
JP0005137118B2_000005t.gif
本発明のユニバーサル塩基を天然核酸塩基と塩基対を形成させる場合に用いる溶媒は、一般的には非プロトン性有機溶媒が好ましいが、DNAの溶解度や、生体内で使うことを想定した場合には緩衝液、オリゴヌクレオチドの合成や利用を考えた場合は水やアルコール、ヌクレオシドの吸着を考えた場合にはDMSOやDMFが好ましい。この塩基対形成においてはユニバーサル塩基や天然核酸塩基の濃度は通常1mM程度である。

以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0011】
本実施例では、下式
【化1】
JP0005137118B2_000006t.gif
(式中、Rは、-CHCHOTBDPSを表す。)で表されるピリミド[4,5-d]ピリミジン-2,4,5,7-テトラオン誘導体(以下「PPT」という。)を合成した。
【0012】
反応スキームを下式に示す。
【化4】
JP0005137118B2_000007t.gif

【0013】
1-ヒドロキシエチル-6-アミノウラシル(化合物1)の合成
フッ素樹コートした撹拌子を備えた200mLナス型フラスコに、無水エタノール90mLを加え氷浴中撹拌しながら金属ナトリウム2.8g(120mmol)を注意深く加え、完全に溶解するまで撹拌した。その後、2-ヒドロキシエチル尿素6.3g(60mmol)とシアノ酢酸エチル6.4mL(60mmol)を加え、7時間還流させた。得られた反応溶液をろ過した後、エタノールで洗い、水に溶解させて1.0M希塩酸で中和した後にろ過をし、得られる白色固体を水で再結晶させることにより、白色結晶として化合物1を得た(6.1g, 35.6mmo1、収率59.4%);1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) : δ 3.54 (t, 2H, NCH2CH2, 9.6 Hz), 3.83 (t, 2H, CH20H, 9.6 Hz), 4.57(br, 1H, CHCNH2), 5.09 (br, 1H, OH), 6,61 (br, 2H, NH2), lO.32 (br, 1H, NH); 13C NMR (DMSO-d6, 100MHz) : δ 44.13 (NaC2CH2), 59.28 (CH20H), 76.52 (CHCNH2), 151.87, 157.04, 162.89。
【0014】
1-(2-t-ブチルジフェニルシラニロキシ)エチル-6-アミノウラシル(化合物2)の合成
フッ素樹脂コートした撹拌子を備えた50 mLナス型フラスコに、上記で得た化合物1を1.0 g(5.8 mmol), t-ブチルジフェニリルクロロシラン(東京化成製、1.7 mL, 6.4 mmol), イミダゾール(ナカライ製、875 mg, 12.8 mmol),ジメチルホルムアミド(キシダ製)6 mL を加え、60℃で1.5時間反応させた後、撹拌している水1L中に、パスツールピペットを用いてゆっくり滴下した。しばらく撹拌した後、ろ過し、乾燥させることにより、白色固体として化合物2を得た(2.2 g, 5.4 mmol,収率92.0%)。
1H NMR(DMSO-d6, 400 MHz): δ 0.96(s, 9H, C(CH3)3), 3.76(br, 2H, NCH2), 4.04(br, 2H, CH2OH), 4.60(br, 1H, CHCNH2), 6.70(br, 2H, NH2), 7.41(m, 6H), 7.58(m, 4H), 10.32(br, 1H, NH); 13C NMR(DMSO-d6, 100 MHz): δ 19.11(SiC(CH3)3), 26.92(SiC(CH3)3), 42.06(NCH2CH2), 61.55(NCH2CH2), 76.15(CHCNH2), 127.96, 128.33, 130.33, 130.08, 134.94, 135.48, 151.85, 158.75, 162.94
【0015】
(6-アミノ-1-[2-(t-ブチルジフェニルシラニロキシ)-エチル]-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボニル)カルバミン酸エチルエステル(化合物3)の合成
フッ素樹脂コートした撹拌子を備えた 100 mL ナス型フラスコに、上記で得た化合物2を13.7 g(33.3 mmol)とジメチルホルムアミド(40 mL)を加え、室温下で撹拌しながら滴下漏斗でイソシアナトギ酸エチル3.9 g(東京化成製、33.9 mmol)を30分かけて滴下した。その後、室温で24時間撹拌し、減圧濃縮し、減圧乾燥させ、酢酸エチルで洗浄することにより白色固体として化合物3を得た(7.0 g, 13.3 mmol,収率40.1%)。
1H NMR(DMSO-d6, 400 MHz): δ 0.94(s, 9H, Si(CH3)3), 1.22(t, 3H, OCH2CH3, 7.2 Hz), 3.81(br, 2H, NCH2, 4.8 Hz), 4.12(q, 2H, OCH2CH3, 4.8 Hz), 4.18(t, 2H, NCH2CH2, 4.8 Hz), 7.42(m, 6H), 7.53(M, 4H), 8.36(br, 1H), 10.85(br, 1H), 11.35(br, 1H), 12.39(br, 1H); 13C NMR(DMSO-d6, 100 MHz): δ 14.68(OCH2CH3), 19.05(SiC(CH3)3), 26.89(SiC(CH3)3), 43.12(NCH2), 60.61(OCH2CH3), 61.12(NCH2CH2), 81.06(COCCO), 128.30, 130.39, 132.94, 135.42, 148.77, 150.77, 159.94, 164.45, 166.23
【0016】
1-[2-(t-ブチルジフェニルシラニロキシ)-エチル]-1H,8H-ピリミド[4,5-d]ピリミジン-2,4,5,7-テトラオン(化合物4)の合成
フッ素樹脂コートした撹拌子を備えた50 mLナス型フラスコに、無水エタノール(ナカライ製)20 mLを加え氷浴中撹拌しながら金属ナトリウム60 mg(ナカライ製、2.6 mmol)を注意深く加え、完全に溶解するまで撹拌した。その後、上記で得た化合物3を600 mg(1.1 mmol)を加え、17時間還流させた。得られた反応溶液をろ過することにより得られる固体を1.0 M希塩酸で洗い、減圧乾燥させることにより、白色固体として化合物4(PPT)を得た(500 mg, 1.0 mmol,収率91.6%)。
1H NMR(DMSO-d6, 400 MHz): δ 0.94(s, 9H, SiC(CH3)3), 3.83(t, 2H, NCH2CH2), 4.23(t, 2H, NCH2CH2), 7.38(m, 6H), 7.57(m, 4H), 9.79(br, 1H), 10.53(br, 1H); 13C NMR(DMSO-d6, 100 MHz): δ 19.16(SiC(CH3)3), 27.03(SiC(CH3)3), 42.27(NCH2), 61.12(NCH2CH2), 86.04(COCCO), 128.26, 130.14, 133.56, 135.43, 151.56, 157.86, 161.62, 162.60, 164.78; MS(ESI+)479.21(M +H+ calcd 479.17)
【実施例2】
【0017】
本実施例では、実施例1で得たPPTの溶解度を調べた。比較のため、R=Hのもの(以下「PPT(H)」という。)に溶解度を調べた。
溶解試験は、表1に示す各溶媒を用い、溶質の濃度を1~100mMとし、該当濃度において、一度50℃まで昇温した後、27℃まで冷却し、不溶物が残った場合「不溶」とし、残らない場合「可溶」とした。緩衝液の濃度は100mM、pHは7.0とした。
結果を下表に示す。
【表1】
JP0005137118B2_000008t.gif
PPT(H)は水及び各種有機溶媒に対して全く溶解しない。しかし、1-アルキル置換体は単純なメチル、エチル、アリルであっても100μM以上の溶解性を示す。水溶液に対する溶解度の向上は複素官能基化された炭素数1以上のアルキル置換基の導入で顕著となり、有機溶媒に対する溶解度の向上は1位窒素原子への炭素数3以上のアルキル基の導入あるいはトリアルキルシロキシ基の導入で顕著となる。
【実施例3】
【0018】
本実施例では、PPTと4種の天然核酸塩基との間の疑似塩基対形成を調べた。
この試験のために下式
【化5】
JP0005137118B2_000009t.gif
の天然核酸塩基を用いた。これらの合成法は後述の合成例1に示す。それぞれ1位又は9位で塩基対形成をしないように、Nメチル化を行った。
【0019】
塩基対形成試験は以下の通りおこなった。
PPTと各N-メチル化天然核酸塩基(1-メチルシトシン(以下「C」という。)、1-メチルチミン(以下「T」という。)、9-メチルアデニン(以下「A」という。)、9-メチルグアニン(以下「G」という。))との混合物の濃度を一定(7.5mmol/l)に保ちつつ、混合比(モル比)を0:10~10:0に変化させて、25℃において無水ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させた。このDMSOは凍結脱気法によって酸素が除去されアルゴンが溶解している無水ジメチルスルホキシドであって、あらかじめ作成しておいた基質のDMSO溶液を混合して一晩(12時間)放置したものを用いた。
その後、紫外領域の吸光度変化を下記の条件で測定した。
-測定装置 JASCO V-550 SERIAL NO. C02951260
-温度コントローラー JASCO PSC-498T
-セル GL Science Type : AB20-SQ-0.1(光路長 0.1mm)
-セルアダプター CAS-10-1
-測定波長 : 200~350nm
【0020】
吸光度変化を図1に示す。吸光度は混合比に比例して変化することがわかる。
この吸光度が変化した波長における吸光度を混合比に対してプロットしたものを図2に示す。
基質同士の相互作用が無い場合に基質の吸収スペクトルの吸光度が混合比に比例する(Beer's則)が、Beer's則の定める直線から逸脱した場合には、基質同士の相互作用の存在が示唆される。
図2に示すように、PPTと4種の天然核酸塩基とのいずれの混合溶液においても大きな逸脱が観測され、PPTと各天然核酸塩基が塩基対を形成し、Beer's則の定める直線から逸脱したものと考えられる。
【0021】
比較例1
比較のため、A-T及びG-Tについて、実施例3と同様に塩基対形成試験をおこなった。結果を図3と4に示す。A-Tの場合には、塩基対形成によるBeer's則の直線からの逸脱が観察されたが、G-Tの場合には、塩基対が形成されずBeer's則の直線から逸脱していないことが観察された。
【0022】
合成例1
(1)1-メチルシトシンの合成
磁気撹拌子を備えた 100mL ナスフラスコに、シトシン(3.0g, 27mmol)、ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(40mL)を加え、撹拌しながら120℃に加熱した。その後、トリフルオロ酢酸(0.2mL)を加え18時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷ました後、氷浴で冷却した。析出した白色沈殿をろ取し、ジクロロメタン、エタノールに溶解させヘキサンより粉体化を行った。個体を集め真空乾燥を行うことで4-N-(N,N-ジメチルアミノメチレン)-1-メチルシトシンを3.6g収率 74%の白色個体として得た。1H NMR(400 MHz, DMSO-d6)
磁気撹拌子を備えた 100mL ナスフラスコに4-N-(N,N-ジメチルアミノメチレン)-1-メチルシトシン(1.0g, 5.5mmol)、メチルアミン30% エタノール溶液(50mL)を加え12時間撹拌した。析出した白色個体を集めエタノール-水より再結晶化を行うことで、目的物を 0.61g 収率 88% の白色個体として得た。1H NMR(400 MHz, DMSO-d6):3.31(s, 3H), 5.59(d, 1H), 6.91(br, 2H), 7.54(d, 1H)13C NMR(100MHz, DMSO-d6):36.6, 92.9, 146.6, 156.3, 166.1 ; MS(ESI+)calcd for C5H7N3O+(M+H+)126.0662, found 126.0804.
【0023】
(2)1-メチルチミンの合成
磁気撹拌子を備えた 100mL ナスフラスコに、チミン(2.0g, 16mmol)、ヘキサメチルジシラザン(32mL)、トリメチルシリルクロリド(4.1mL)を加え 140℃で反応液が透明になるまで17 時間撹拌した。反応溶液を 60℃まで冷ました後、ヨウ化メチル(10mL)を加え、60℃で 29 時間撹拌した。反応溶液に 6N 酢酸水溶液(6mL×10)を加え、反応溶液を減圧下留去し、残渣に 2-プロパノールを加え不溶物をろ取した。これをエタノール?水より再結晶化を行い、目的物を 1.6g 収率 72 %の白色固体として得た。
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6):δ1.73(d, 3H), 3.18(d, 3H), 7.49(t, 1H), 11.19(br, 1H) 13C NMR(100 MHz, DMSO-d6):δ11.9, 34.9, 108.1, 142.3, 151.2, 164.4;MS(ESI+)calcd for C6H8N2O2+(M+H+)141.0608,found 141.0669.
【0024】
(3)9-メチルアデニンの合成
磁気撹拌子を備えた 300mL ナスフラスコに、アデニン(2.0g, 14.8mmol),テトラヒドロフラン(100mL),テトラブチルアンモニウムフルオリド 1.0M テトラヒドロフラン溶液(37mL, 37mmol)を加え撹拌中、ヨウ化メチル(2.72mL)を10分かけて滴下し2.5時間撹拌した。反応溶液を減圧下留去し、残渣にメタノールを加え不溶物をろ取した。これをエタノールー水より再結晶化を行い、目的物を 1.0g 収率 45% の白色個体として得た。1H NMR(400 MHz, DMSO-d6):δ 3.70(s, 3H), 7.15(br, 2H), 8.07(s, 1H), 8.13(s, 1H)13C NMR(100 MHz, DMSO-d6):δ29.3, 118.6, 141.3, 149.8, 152.4, 155.9; MS(ESI+)calcd for C6H7N5+(M+H+)150.0774, found 150.0914
【0025】
(4)9-メチルグアニンの合成
2-アミノ-6-クロロ-9-メチルプリンを出発物質とし、メチル基を文献に従って導入した。その際、文献記載のカラムによる精製は行わず次の段階へ進行した。
磁気撹拌子を用いた 100mL ナスフラスコにベンジルアルコール(40mL)、金属ナトリウム(760mg, 23.5mmol)を加え1時間室温で撹拌した。そこへ、2-アミノ-6-クロロ-9-メチルプリン(1.98g, 7.8mmol)を加え 70℃で 48 時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチルー水で分液し、水槽を酢酸エチルで 2 回抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウム乾燥を行い、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1、酢酸エチル:メタノール=9:1)で精製を行うことにより6-O-ベンジル-9-メチルグアニンを 1.2g 合計収率 26 %の白色個体として得た。1H NMR(400 MHz, DMSO-d6):δ3.58(s, 3H), 5.48(s, 2H), 6.44(br, 2H), 7.33ミ7.49(m, 5H), 7.81(s, 1H)
磁気撹拌子を備えた 100mL ナスフラスコに、6-O-ベンジル-9-メチルグアニン(1.48g, mmol)、ジクロロメタン(20mL)、トリフルオロ作酸(10mL)を加え室温で 12 時間撹拌した。反応溶液を留去し、残渣をメタノールで共沸した。残渣をエタノールに溶解させたのち、ヘキサンで粉体化を行い固体を集め、エタノール-水より再結晶化を行い、目的物を 0.7g 収率 75 %の白色固体として得た。
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6):δ3.51(s, 1H), 6.40(br, 2H), 7.61(s, 1H), 10.49(br, 1H) 13C NMR(100 MHz, DMSO-d6):δ29.2, 116.5, 138.0, 151.5, 153.5, 156.8;MS(ESI+)calcd for C6H7N5O+(M+H+)166.0723, found 166.0860.
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のユニバーサル塩基は、PCR法における配列未特定遺伝子や不特定遺伝子のクローニング、ヒトゲノム中の一塩基多型の検出、アンチジーン法による不特定遺伝子の発現抑制、核酸成分の高選択的抽出・除去などに応用できる。これらの場合、用途に応じて、このユニバーサル塩基を他の人工核酸へ導入することや、その他の生体様物質への導入、ポリスチレンビーズへの担持などをおこなってもよい。また、このユニバーサル塩基単体をヌクレオチド成分の選択的除去や抽出に利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のユニバーサル塩基(PPT)と4種の天然核酸塩基との混合物の吸光度変化を示す図である。
【図2】図1の吸光度を混合比に対してプロットした図である。
【図3】A-T及びG-Tの混合物の吸光度変化を示す図である。
【図4】図3の吸光度を混合比に対してプロットした図である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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