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明細書 :ユニバーサル塩基含有ポリマー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5251125号 (P5251125)
登録日 平成25年4月26日(2013.4.26)
発行日 平成25年7月31日(2013.7.31)
発明の名称または考案の名称 ユニバーサル塩基含有ポリマー
国際特許分類 C07D 487/04        (2006.01)
C07D 519/00        (2006.01)
C08G  69/08        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C07D 487/04 148
C07D 487/04 CSP
C07D 519/00 311
C08G 69/08
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 2
全頁数 16
出願番号 特願2007-533201 (P2007-533201)
出願日 平成18年8月24日(2006.8.24)
国際出願番号 PCT/JP2006/316585
国際公開番号 WO2007/026595
国際公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
優先権出願番号 2005248586
優先日 平成17年8月30日(2005.8.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年7月27日(2009.7.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
発明者または考案者 【氏名】片岡 正典
【氏名】早川 芳宏
【氏名】平野 泰亮
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
審査官 【審査官】安藤 倫世
参考文献・文献 国際公開第2007/026485(WO,A1)
特表2003-528883(JP,A)
NIELSEN,P.E. et al,Sequence-selective recognition of DNA by strand displacement with a thymine-substituted polyamide,Science(Washington, DC, United States),1991年,Vol.254, No.5037,p.1497-500
Science of Synthesis,2004年,16,pp.1337-1397
Journal of Heterocyclic Chemistry,1970年,7,pp.243-244
Helvetica Chimica Acta,2002年,85(5),pp.1340-1354
Helvetica Chimica Acta,2003年,86(4),pp.1193-1204
調査した分野 C07D 487/04
C07D 519/00
C08G 69/08
C12N 15/09
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下式
【化1】
JP0005251125B2_000015t.gif
この一般式は単に組成を示す。式中、R及びRは、それぞれ同じであっても異なってもよく、鎖の途中にカルボニル基を有していてもよい炭素数が1~18の炭化水素鎖を表し、Rは天然核酸又は非天然核酸を表し、X及びX、--を表し、Xはアミノ酸残基若しくはオリゴペプチド残基を表し、Y、X、X、X及びZは共にポリペプチド残基又はオリゴペプチド残基を構成し、mは1以上nは0以上でm+nが2~50の整数を表し、lは0以上の整数を表す。)で表されるユニバーサル塩基含有ポリマー。

【請求項2】
DNA又は天然核酸塩基から成るオリゴヌクレオチドを含む溶液に請求項1に記載のユニバーサル塩基含有ポリマーを混合することによりこれらの塩基対を形成させる方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、DNA又は天然核酸塩基から成るオリゴヌクレオチドと塩基対を形成することのできる新規なユニバーサル塩基含有ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
天然核酸塩基と非特異的に擬似塩基対を形成する人工核酸塩基、即ちユニバーサル塩基を得る試みは多く成されている。しかし、一般にユニバーサル塩基と呼ばれているものはインターカレーターの類であり、これは天然核酸塩基と疑似塩基対を形成することはない。一方、疑似塩基対を形成するユニバーサル塩基としてイノシンをベースとした誘導体が知られているが(特許文献1、2等)、グアニンとしてのみふるまうことが最近の研究で明らかとなっている(非特許文献1)。
本発明において、発明者がユニバーサル塩基のベースとして利用したピリミド[4,5-d]ピリミジン-2,4,5,7-テトラオン及びその誘導体は、天然核酸塩基と疑似塩基対を形成するとは考えられていなかった(非特許文献2)。
【0003】

【特許文献1】特表2005-511096
【特許文献2】特表2003-528883
【非特許文献1】Ohtsuka, E. et al., J. Biol. Chem., 260, 2605-2608(1985)
【非特許文献2】Niess, R., Robins, R. K. J.Heterocyclic. Chem.,7, 243-244(1970)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の核酸塩基と塩基対を形成可能なユニバーサル塩基から成るオリゴヌクレオチドは、ユニバーサル核酸としての機能の実現には至っていなかった。
本発明は、DNA又は天然核酸塩基から成るオリゴヌクレオチドと非特異的に塩基対を形成するポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、既にピリミド[4,5-d]ピリミジン-2,4,5,7-テトラオンに基づいて、4種のいずれの天然核酸塩基と非特異的に塩基対を形成することが確認された下式
【化2】
JP0005251125B2_000002t.gif
(式中、Rは、水素原子を除く、一価の基を表す。)で表されるユニバーサル塩基を用いて、これをPNA(1991年にNielsenらにより開発された人工核酸で、N-2-アミノエチルグリシンを骨格単位とし、これにメチレンカルボニル基を介して核酸塩基を結合させた構造を持つ。)に結合させ単量体とし、これを重合してポリマーを合成することに成功した。
【0006】
即ち、本発明は、下式
【化1】
JP0005251125B2_000003t.gif
この一般式は単に組成を示す。式中、R及びRは、それぞれ同じであっても異なってもよく、鎖の途中にカルボニル基を有していてもよい炭素数が1~18の炭化水素鎖を表し、Rは天然核酸又は非天然核酸を表し、X及びX、--を表し、Xはアミノ酸残基若しくはオリゴペプチド残基を表し、、X、X、Y及びZは共にポリペプチド残基又はオリゴペプチド残基を構成し、mは1以上nは0以上でm+nが2~50の整数を表し、lは0以上の整数を表す。)で表されるユニバーサル塩基含有ポリマーである。
更に、本発明は、DNA又は天然核酸塩基から成るオリゴヌクレオチドを含む溶液にこのユニバーサル塩基含有ポリマーを混合することによりこれらの塩基対を形成させる方法である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のユニバーサル塩基含有ポリマーは下式で表される。但し、この一般式は単に組成を示し、構造を示すものではない。即ち、各単位はランダムに結合していてもよい。
【化1】
JP0005251125B2_000004t.gif
及びRは、ポリマーの主鎖にユニバーサル塩基、天然塩基又はその他の基を結合させるための2価の鎖であり、その機能を果たせば構造に特に制限はない。即ち、R及びRは、それぞれ同じであっても異なってもよく、置換基を有していてもよい炭素数が1~18の炭化水素鎖を表す。置換基としては、水酸基、アミノ基、チオール基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルバモイル基、エステル基、ヘテロ原子(S,O,Nなど)を含んでもよい炭化水素基、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基などなどが挙げられ、また、鎖の途中にカルボニル、イミド、カーボナート、エステル、ウレタン、アミド、アミン、エーテル、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン等を有していてもよい。
【0008】
このポリマーは塩基対を形成するためにユニバーサル塩基のみを有していてもよいが、天然核酸や本発明のユニバーサル塩基以外の非天然核酸を有していてもよい。
は天然核酸又は非天然核酸を表す。天然核酸としては、下式
【化3】
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(式中、*は結合手を表す。)に示すようなアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)又はチミン(T)に適当な結合手を設けたものでもよい。また、非天然核酸としてイノシンをベースとしたユニバーサル塩基(特表2005-511096、特表2003-528883等)を用いてもよい。
【0009】
及びXは、上記のユニバーサル塩基や、天然核酸又は非天然核酸をポリマー主鎖に結合させるものであり、--を表す。

【0010】
、アミノ酸残基若しくはオリゴペプチド残基である

【0011】
Y及びZは、ポリマーの末端であり、特に制限はない。即ち、Y及びZは、それぞれ同じであっても異なってもよく、一価の残基を表す
Y、X、X、X及びZは共にポリペプチド残基又はオリゴペプチド残基を構成する。



【0012】
本発明のユニバーサル塩基含有ポリマーに含まれるユニバーサル塩基は、その結合を軸とした回転により、プリン型、ピリミジン型の両塩基になりうる。即ち、下式に示すように、相対する塩基がアミジン型の塩基であるアデニン(A)又はシトシン(C)の場合はアミド型の配置、アミド型塩基であるグアニン(G)又はチミン(T)の場合はアミジン型配置をとり、すべての天然核酸塩基と塩基対を形成することができる。
【化4】
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(式中、Rは、上記と同様を表す。)
従って、本発明のユニバーサル塩基含有ポリマーはDNA又は天然核酸塩基から成るオリゴヌクレオチドと非特異的に塩基対を形成することができる。
本発明のユニバーサル塩基含有ポリマーをDNA等と塩基対を形成させる場合に用いる溶媒は、一般的には非プロトン性有機溶媒が好ましいが、生体内で使うことを想定した場合には緩衝液、オリゴヌクレオチドの合成や利用を考えた場合は水やアルコール、ヌクレオシドの吸着を考えた場合にはDMSOやDMFが好ましい。この塩基対形成においてはユニバーサル塩基含有ポリマーやDNA等の濃度は通常1mM程度である。
【実施例】
【0013】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
ユニバーサル塩基含有オリゴマーを合成するため、ユニバーサル塩基(化2)をPNAに結合させて単量体とした。即ち、下式(化5)で表されるユニバーサル塩基含有モノマー(以下「PPT」という。)を用いた。このモノマーの合成法は後記の合成例1に記す。
【化5】
JP0005251125B2_000007t.gif

【0014】
次に天然塩基として下式のPNA-A~T(アプライドバイオシステムズジャパン社製、PNA-A:GEN063014, PNA-G:GEN063016, PNA-C:GEN063015, PNA-T:GEN063017)(以下「PNAモノマー」という。)を用いた。
【化6】
JP0005251125B2_000008t.gif
* Fmoc: fluorenylmethyloxycarbonyl, Bhoc: benzylhydroxycarbonyl
【0015】
実施例1
ユニバーサル塩基含有オリゴマーを、マニュアル固相合成法にて合成し、固相担体は TENTA GEL S RAM(渡辺化学社製A00213、0.27 mmol/g)を用いた。合成オリゴマーの溶解性の向上と自己会合の抑制を図るためにリシンを導入した。固相担体を30% piperidine/DMF 処理後、Fmoc-Lys(Boc)-OH(渡辺化学社製、K00443)(10 equiv)、PyBOP((benzotriazol-1-yloxy)tripyrrolidino-phosphonium hexafluorophosphate、Novabiochem社製 01-62-0016)(10 equiv)、HOBt(1-hydroxybenzotriazole、Nacalai tesque社製 18513-24)(10 equiv)、Nメチルモルホリン(NMM,20 equiv)をあらかじめジメチルアセトアミド(DMA、和光純薬工業社製)中で反応させておいたものを用いてカップリングさせることによりリシンを導入した。反応の進行はKaiser test により確認した。(Kaiser test: negative)
【0016】
続く固相合成は表1に従って行った。反応は全て室温(25℃)で行った。
【表1】
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step 1~6を繰り返すことにより鎖長反応を行った。この鎖長反応において、PNAモノマー(PNA monomer)として、1-3サイクルは上記PNA-T、4サイクルは上記ユニバーサル塩基含有モノマー、5-7サイクルはPNA-Tを使用した。
【0017】
各反応の進行は、kaiser test により確認した。最後のモノマーを導入・Fmoc 基の脱保護後、N 末端アミノ基のアシル転位からの環状アミド生成による自己崩壊を防ぐために、Fmoc-Gly-OH(NovaBiochem社製、04-12-1001)(10 equiv)、PyBOP(10 equiv)、HOBt(10 equiv)、NMM(20 equiv)を用いてグリシンを導入した。固相担体から切り出した後の合成オリゴマーの精製を容易にするために、グリシンの Fmoc 基はそのままにしておいた。
固相担体からの切り出しにはトリフルオロ酢酸を用いた(2 h)。これによりC末端のリシンのアミノ基を保護しているBoc 基も除去できた。得られたオリゴマーを、逆相分取カラム COSMOSIL 5C18-AR-300を用いることにより精製し、下式で表されるH2N-Lys-TTT(PPT)TTT-Gly-NHFmoc(m/z 1179.66; Calcd for(C101H124N34O34)(M + 2H+): m/z 1179.45)を得た。
【化7】
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【0018】
さらに得られたオリゴマーを 20% piperidine/water で処理し Fmoc基を脱保護した後に、上記同様の逆相分取カラムを用いて精製することにより、目的とする PNA オリゴマー H2N-Lys-TTT(PPT)TTT- Gly-NH2(m/z 1068.63; Calcd for(C86H114N34O32)(M + 2H+): m/z 1068.42)を 47%の収率で得ることができた。
精製後のこのオリゴマーの高速液体クロマトグラフ(HPLC)を下記条件で測定した。
HPLC装置:日本分光社製Gulliver高圧グラジエントシステム
カラム:COSMOSIL 5C18-MS column
溶出液:溶出液A 0.1% TFA/water; 溶出液 B 0.1 %
trifluoroacetic acid/acetonitrile を用い、A液をB液に対して0-100% まで35分かけて直線勾配した。
溶出速度 1 mL/分
分析温度:55℃
UV検出波長UV: 260 nm
そのHPLCチャートを図1に示す。図中の大きなピークが目的のオリゴマーを示すものであり、他のピークはほとんど検出されないことから、得られたオリゴマーの純度が高いことが分かる。
【0019】
実施例2
本実施例では、実施例1と同様に、下式(H2N-Lys-CCT(PPT)TCC-Gly-NH2)で表されるユニバーサル塩基含有オリゴマーを合成した。
【化8】
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【0020】
モノマーとしては、上記PPT(ユニバーサル塩基含有モノマー)とPNAモノマーを用い、固相合成を表2に従って行った。
【表2】
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1,2,6,7サイクルはPNA-C、3,5サイクルはPNA-T、4サイクルはユニバーサル塩基含有モノマーを使用した。
質量分析の結果はm/z 1038.5; Calcd for (C82H110N38O28) (M+2): m/z 1038.4であった。
このオリゴマーのHPLCを実施例1と同様に測定した。そのHPLCチャートを図2に示す。図中の大きなピークが目的のオリゴマーを示すものであり、他のピークはほとんど検出されないことから、得られたオリゴマーの純度が高いことが分かる。
【0021】
実施例3
本実施例では、実施例2と同様に、下式(H2N-Lys-TGCA(PPT)(PPT)(PPT)ACGT-Gly-NH2)で表されるユニバーサル塩基含有オリゴマーを合成した。
【化9】
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【0022】
モノマーとしては、上記PPT(ユニバーサル塩基含有モノマー)と上記PNAモノマーを用い、固相合成を表2に従って行った。1, 11サイクルはPNA-T、2,10サイクルはPNA-G、3,9サイクルはPNA-C、4,8サイクルはPNA-C、5,6,7サイクルはユニバーサル塩基含有モノマーを使用した。
質量分析の結果はm/z 1126.74; Calcd for (C130H160N68O44) (M+3): m/z 1126.76であった。
このオリゴマーのHPLCを実施例1と同様に測定した。そのHPLCチャートを図3に示す。図中の大きなピークが目的のオリゴマーを示すものであり、他のピークはほとんど検出されないことから、得られたオリゴマーの純度が高いことが分かる。
【0023】
実施例4
本実施例では、実施例2で作製したユニバーサル塩基含有オリゴマー(H2N-Lys-CCT(PPT)TCC-Gly-NH2)と天然型オリゴヌクレオチドとの複合体形成実験を行った。
天然型オリゴヌクレオチドとして、デオキシリボオリゴヌクレオチドd(GGAxAGG) (x = A, G, C or T)(ODN、ジーンデザイン社より購入)を用いた。
これらを用いて、複合体形成と複合体の安定性について温度勾配UVスペクトル測定による融解曲線と変曲点の温度(融解温度、Tm)を指標として調査した。
温度勾配UVスペクトル測定はペルチェ式温度コントローラーETC-505Tを装備した日本分光社製V-550 スペクトロメータを用いて、10 mMリン酸緩衝液(pH 7.0) に4.0μMのPNA-ODN混合物(1:1)を溶解した溶液を95℃で5分間インキュベーション、8時間以上かけて室温まで戻した後に5℃に冷却、1℃/minで70℃まで昇温させて、その過程を1℃毎にサンプリングし、紫外領域の吸光度変化を下記の条件で測定した。
-測定装置 JASCO V-550 SERIAL NO. C02951260
-温度コントローラー JASCO ETC-505T
-セル GL Science Type : M25-B(光路長 10mm)
-測定波長 : 260nm
溶液温度に対して吸光度をプロットして得られるグラフを解析した。
吸光度変化を図5に示す。いずれのPNA-ODN混合溶液においても融解曲線が得られ、融解温度は32.4-20.8℃まで様々であるがPNA-ODN複合体の形成が示唆され、ユニバーサル塩基として機能していることが明らかとなった。この結果はユニバーサル塩基含有PNAが配列未特定部を含む遺伝子に対するプローブとして有効であることを示している。
【0024】
比較例1
本比較例では、PPT(ユニバーサル塩基含有モノマー)を用いずに、実施例2と同様に、下式(H2N-Lys-CCTTTCC-Gly-NH2)で表される天然型オリゴヌクレオチドを合成した。
【化10】
JP0005251125B2_000014t.gif
モノマーとしては、上記PNAモノマーを用い、固相合成を表2に従って行った。1,2,6,7サイクルはPNA-C、3,5サイクルはPNA-Tを用いた。
質量分析の結果はm/z 1003.45; Calcd for (C82H110N38O28)(M+2): m/z 1003.43であった。
このオリゴマーのHPLCを実施例1と同様に測定した。そのHPLCチャートを図4に示す。図中の大きなピークが目的のオリゴマーを示すものであり、他のピークはほとんど検出されないことから、得られたオリゴマーの純度が高いことが分かる。
【0025】
比較例2
更に、比較例1で得た天然型オリゴヌクレオチドを用いて、実施例4と同様に複合体形成実験を行った。
天然塩基のみで構成されたPNAと配列中1カ所のみ塩基を入れ換えた4種のODNの温度勾配UVスペクトル解析において、図6に示す通り相補的な組み合わせ(マッチ)においては融解曲線が得られ、Tmが29.1℃を示すのに対して、相補的でない組み合わせ(ミスマッチ)のいずれの場合においても融解曲線は得られないことから、ミスマッチではPNA-ODN複合体が形成していないことが示唆される。
【0026】
合成例1
この合成例では、ユニバーサル塩基含有モノマーを合成した。この反応スキームを図7と図8に示す。
【0027】
1-ヒドロキシエチル-6-アミノウラシル(化合物1)の合成
フッ素樹コートした撹拌子を備えた200mLナス型フラスコに、無水エタノール90mLを加え氷浴中撹拌しながら金属ナトリウム2.8g(120mmol)を注意深く加え、完全に溶解するまで撹拌した。その後、2-ヒドロキシエチルウレア6.3g(60mmol)とシアノ酢酸エチル6.4mL(60mmol)を加え、7時間還流させた。得られた反応溶液をろ過した後、エタノールで洗い、水に溶解させて1.0M希塩酸で中和した後にろ過をし、得られる白色固体を水で再結晶させることにより、白色結晶として化合物1を得た(6.1g, 35.6mmo1、収率59.4%);1H NMR(DMSO-d6, 400 MHz): δ 3.54(t, 2H, NCH2CH2, 9.6 Hz), 3.83(t, 2H, CH20H, 9.6 Hz), 4.57(br, 1H, CHCNH2), 5.09(br, 1H, OH), 6,61(br, 2H, NH2), lO.32(br, 1H, NH); 13C NMR(DMSO-d6, 100MHz): δ 44.13(NaC2CH2), 59.28(CH20H), 76.52(CHCNH2), 151.87, 157.04, 162.89。
【0028】
1-(2-t-ブチルジフェニルシラニロキシ)エチル-6-アミノウラシル(化合物2)の合成
フッ素樹脂コートした撹拌子を備えた50 mLナス型フラスコに、上記で得た化合物1を1.0 g(5.8 mmol), t-ブチルジフェニリルクロロシラン(東京化成製、1.7 mL, 6.4 mmol), イミダゾール(ナカライ製、875 mg, 12.8 mmol),ジメチルホルムアミド(キシダ製)6 mL を加え、60℃で1.5時間反応させた後、撹拌している水1L中に、パスツールピペットを用いてゆっくり滴下した。しばらく撹拌した後、ろ過し、乾燥させることにより、白色固体として化合物2を得た(2.2 g, 5.4 mmol,収率92.0%)。
1H NMR(DMSO-d6, 400 MHz): δ 0.96(s, 9H, C(CH3)3), 3.76(br, 2H, NCH2), 4.04(br, 2H, CH2OH), 4.60(br, 1H, CHCNH2), 6.70(br, 2H, NH2), 7.41(m, 6H), 7.58(m, 4H), 10.32(br, 1H, NH); 13C NMR(DMSO-d6, 100 MHz): δ 19.11(SiC(CH3)3), 26.92(SiC(CH3)3), 42.06(NCH2CH2), 61.55(NCH2CH2), 76.15(CHCNH2), 127.96, 128.33, 130.33, 130.08, 134.94, 135.48, 151.85, 158.75, 162.94
【0029】
(6-アミノ-1-[2-(t-ブチルジフェニルシラニロキシ)-エチル]-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボニル)カルバミン酸エチルエステル(化合物3)の合成
フッ素樹脂コートした撹拌子を備えた 100 mL ナス型フラスコに、上記で得た化合物2を13.7 g(33.3 mmol)とジメチルホルムアミド(40 mL)を加え、室温下で撹拌しながら滴下漏斗でイソシアナトギ酸エチル3.9 g(東京化成製、33.9 mmol)を30分かけて滴下した。その後、室温で24時間撹拌し、減圧濃縮し、減圧乾燥させ、酢酸エチルで洗浄することにより白色固体として化合物3を得た(7.0 g, 13.3 mmol,収率40.1%)。
1H NMR(DMSO-d6, 400 MHz): δ 0.94(s, 9H, Si(CH3)3), 1.22(t, 3H, OCH2CH3, 7.2 Hz), 3.81(br, 2H, NCH2, 4.8 Hz), 4.12(q, 2H, OCH2CH3, 4.8 Hz), 4.18(t, 2H, NCH2CH2, 4.8 Hz), 7.42(m, 6H), 7.53(M, 4H), 8.36(br, 1H), 10.85(br, 1H), 11.35(br, 1H), 12.39(br, 1H); 13C NMR(DMSO-d6, 100 MHz): δ 14.68(OCH2CH3), 19.05(SiC(CH3)3), 26.89(SiC(CH3)3), 43.12(NCH2), 60.61(OCH2CH3), 61.12(NCH2CH2), 81.06(COCCO), 128.30, 130.39, 132.94, 135.42, 148.77, 150.77, 159.94, 164.45, 166.23
【0030】
1-[2-(t-ブチルジフェニルシラニロキシ)-エチル]-1H,8H-ピリミド[4,5-d]ピリミジン-2,4,5,7-テトラオン(化合物4)の合成
フッ素樹脂コートした撹拌子を備えた50 mLナス型フラスコに、無水エタノール(ナカライ製)20 mLを加え氷浴中撹拌しながら金属ナトリウム60 mg(ナカライ製、2.6 mmol)を注意深く加え、完全に溶解するまで撹拌した。その後、上記で得た化合物3を600 mg(1.1 mmol)を加え、17時間還流させた。得られた反応溶液をろ過することにより得られる固体を1.0 M希塩酸で洗い、減圧乾燥させることにより、白色固体として化合物4(PPT)を得た(500 mg, 1.0 mmol,収率91.6%)。
1H NMR(DMSO-d6, 400 MHz): δ 0.94(s, 9H, SiC(CH3)3), 3.83(t, 2H, NCH2CH2), 4.23(t, 2H, NCH2CH2), 7.38(m, 6H), 7.57(m, 4H), 9.79(br, 1H), 10.53(br, 1H); 13C NMR(DMSO-d6, 100 MHz): δ 19.16(SiC(CH3)3), 27.03(SiC(CH3)3), 42.27(NCH2), 61.12(NCH2CH2), 86.04(COCCO), 128.26, 130.14, 133.56, 135.43, 151.56, 157.86, 161.62, 162.60, 164.78; MS(ESI+)479.21(M +H+ calcd 479.17)
【0031】
1-ヒドロキシエチル-1H,8H- ピリミド [4,5-d] ピリミジン -2,4,5,7- テトラオン(化合物5)の合成
フッ素樹脂コートした撹拌子を備えた 10 mL ふた付きプラスチック容器に、上記で得た化合物4(1.7 g, 3.6 mmol)とトリエチルアミン三フッ化水素酸 5 mL(30.7 mmol)を加え、室温下で 24時間撹拌させた。得られた反応溶液を、2M KOH水溶液の中に、酸性にならないように注意深く加え、最終的に2M HCl水溶液で中和した後にろ過、ジエチルエーテルで洗浄することにより、 白色固体として化合物5(700 mg, 2.9 mmol, 収率 82.1%)を得た; 1H NMR(DMSO-d6, 400 MHz): δ 3.49(br, 2H, NCH2), 4.02(br, 2H, CH2OH), 4.88(br, 1H, OH), 9.44(br, 1H), 10.20(br, 1H); 13C NMR(DMSO-d6, 100 MHz): ? 40.04(NCH2), 58.84(CH2OH), 86.05(COCCO), 151.47, 157.87, 161.30, 162.69, 164.45; MS(ESI+)241.06(M +H+ calcd 241.05)。
【0032】
2,4,5,7-テトラオキソ-3,4,5,6,7,8- ヘキサヒドロ-2H-ピリミド [4,5-d] ピリミジ -1- ニル酢酸(化合物6)の合成
フッ素樹脂コートした撹拌子を備えた 300 mL ナス型フラスコに、上記で得た化合物5
(1.0 g, 4.2 mmol)、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニロキシ、フリーラジカル(TEMPO)698 mg(4.2 mmol)と臭化ナトリウム 922 mg(8.4 mmol)を入れた後に 0.4 M 水酸化ナトリウム水溶液を加え pH を 11 に調整し、完全に TEMPO が溶解するまで室温で撹拌した後、反応溶液に次亜塩素酸ナトリウム 11% 水溶液 5.4 mL(8.4 mmol)を加え室温で 1.5 時間撹拌した。pH を 11 に維持するために時折 0.4 M 水酸化ナトリウム水溶液を加えた。反応終了後、エタノールを加えろ過することにより得られる固体を水に溶かして氷浴にうつし、 pH が 1 になるまで 2 M 塩酸を加えて 1 時間そのまま放置した。析出した固体をろ過することにより、白色固体として化合物6(530.3 mg, 2.1 mmol, 収率 50.0%)を得た; 1H NMR(DMSO-d6, 400 MHz): δ 4.71(s, 2H, CH2CO), 11.05(br, 1H, NH), 11.24(br, 1H, NH), 11.45(br, 1H, NH), 13.25(br, 1H, COOH); 13C NMR(DMSO-d6, 100 MHz): δ 44.59(NCH2), 87.45(COCCO), 149.61, 150.33, 155.40, 158.51, 159.70, 169.14(COOH); MS(ESI+)255.04(M +H+ calcd 255.03)。
【0033】
tert-ブチル N-[2-(N-9-フルオレニルメトキシカルボニル)アミノエチル]-N-[(2,4,5,7-テトラオキソ-3,4,5,6,7,8- ヘキサヒドロ-2H-ピリミド [4,5-d] ピリミジ -1- ニル酢酸(化合物9)の合成
フッ素樹脂コートした撹拌子を備えた 50 mL ナス型フラスコに、上記で得た化合物6(723 mg, 2.8 mmol)、tert-ブチル N-[2-(N-9-フルオレニルメトキシカルボニル)アミノエチル] グリシネート(化合物7)1.1 g(2.8 mmol)と 1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(化合物8)1.1 g(5.6 mmol)を加え、DMF(ナカライ製)中室温で 24 時間撹拌した。得られた反応溶液を減圧濃縮した後、水を加えろ過することにより得られる白色固体をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、白色固体としてブチルエステル体(化合物9)(1.3 g, 2.1 mmol, 収率 73.5%)を得た; 1H NMR(DMSO-d6, 500 MHz): δ 1.37-1.45(m, 9H, C(CH3)3), 3.09-3.42(m, 4H, NHCH2CH2N), 3.89-3.92(br, 1H, Fmoc-H9), 4.14-4.33(m, 4H, NCH2COO and Fmoc-CH2O), 4.73-4.94(m, 2H, NCH2CON), 7.30-7.41(m, 5H, NHCOO and Fmoc-H3, H4, H5, H6), 7.66-7.68(m, 2H, Fmoc-H2, H7), 7.86-7.88(m, 2H, Fmoc-1H, 8H), 10.11-10.95(br, 2H, NH); MS(ESI+)633.29(M +H+ calcd 633.23)。
【0034】
N-[2-(N-9-フルオレニルメトキシカルボニル)アミノエチル]-N-[(2,4,5,7-テトラオキソ-3,4,5,6,7,8- ヘキサヒドロ-2H-ピリミド [4,5-d] ピリミジ -1- ニル酢酸(化合物10)の合成
フッ素樹脂コートした撹拌子を備えた 100 mL ナス型フラスコに、上記で得た化合物9(1.9 g, 3.0 mmol)とジクロロメタン 10 mL を入れ撹拌しながらトリフルオロ酢酸 20 mL(250 mmol)を加え室温で 24 時間撹拌した。得られた反応溶液を減圧濃縮した粗生成物をメタノール-ジエチルエーテルで再沈澱させることにより、白色固体として化合物10(1.5 g, 2.6 mmol, 収率 86.7%)を得た; 1H NMR(DMSO-d6, 400 MHz): δ 3.10-3.64(m, 4H, NHCH2CH2N), 3.99(br, 1H, Fmoc-H9), 4.23-4.37(m, 4H, NCH2COO and Fmoc-CH2O), 4.79-4.97(m, 2H, NCH2CON), 7.28-7.46(m, 5H, NHCOO and Fmoc-H3, H4, H5, H6), 7.65-7.69(m, 2H, Fmoc-H2, H7), 7.87-7.91(m, 2H, Fmoc-1H, 8H), 10.68(br, 1H, NH), 11.16(br, 1H, NH), 12.66(br, 1H, COOH); MS(ESI+)577.19(M +H+ calcd 577.17)。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のユニバーサル塩基含有ポリマーは、配列未特定遺伝子や不特定遺伝子のプローブ、一塩基多型(SNPs)の検出、アンチジーン法による不特定遺伝子の発現抑制、核酸成分の高選択的抽出・除去、核酸成分の精製(アフィニティーカラム)などに応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1で合成したPNAオリゴマーのHPLCチャートを示す。縦軸は吸光度(Abs260, 260nmにおける吸光度)、横軸は時間(分)を表す。
【図2】実施例2で合成したPNAオリゴマーのHPLCチャートを示す。
【図3】実施例3で合成したPNAオリゴマーのHPLCチャートを示す。
【図4】比較例1で合成したPNAオリゴマーのHPLCチャートを示す。
【図5】実施例2のPNAオリゴマーを用いた複合体形成実験結果を示す図である。PNAオリゴマーと天然型オリゴヌクレオチドの混合溶液における吸光度を混合比に対してプロットした。
【図6】比較例1の天然型オリゴヌクレオチドを用いた複合体形成実験結果を示す図である。図1の吸光度を混合比に対してプロットした図である。
【図7】ユニバーサル塩基含有モノマー合成の反応スキームを示す図である。
【図8】ユニバーサル塩基含有モノマー合成の反応スキームを示す図である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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