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明細書 :磁性沈殿の磁気分離装置及び磁気分離方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5846536号 (P5846536)
公開番号 特開2012-200699 (P2012-200699A)
登録日 平成27年12月4日(2015.12.4)
発行日 平成28年1月20日(2016.1.20)
公開日 平成24年10月22日(2012.10.22)
発明の名称または考案の名称 磁性沈殿の磁気分離装置及び磁気分離方法
国際特許分類 B03C   1/027       (2006.01)
B03C   1/029       (2006.01)
B03C   1/03        (2006.01)
B03C   1/032       (2006.01)
FI B01D 35/06 K
B01D 35/06 M
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2011-069314 (P2011-069314)
出願日 平成23年3月28日(2011.3.28)
審査請求日 平成26年2月20日(2014.2.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
発明者または考案者 【氏名】岡 徹雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100161665、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 知之
審査官 【審査官】岩下 直人
参考文献・文献 特開2007-160169(JP,A)
特開2005-342551(JP,A)
特開2002-102745(JP,A)
特開2002-119888(JP,A)
特開2000-005525(JP,A)
調査した分野 B03C 1/00-30
B01D 35/06
B22C 5/06
特許請求の範囲 【請求項1】
超伝導状態で励磁されるバルク磁石と、このバルク磁石の2つの磁極の近傍に配置された帯状の磁性フィルタと、この磁性フィルタに接触して前記磁性フィルタの一部と磁気回路を形成する磁性ヨークとを備え、前記磁性フィルタは環状に連続して閉じた構成となっており、前記磁性フィルタの内側に前記バルク磁石と前記磁性ヨークが配置され、前記磁性フィルタは前記磁極の面内方向に移動可能に構成され、前記磁性ヨークと、前記磁性フィルタと前記磁性ヨークが接する短絡部を被処理水の液面より上方に、2つの前記磁極を被処理水中に位置させたことを特徴とする磁性沈殿の磁気分離装置。
【請求項2】
前記バルク磁石は、並列配置された複数のバルク磁石からなることを特徴とする請求項1記載の磁性沈殿の磁気分離装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の磁性沈殿の磁気分離装置を用いて、前記磁極の近傍において前記磁性フィルタに磁性沈殿を吸着させてスラッジとし、前記磁性フィルタを移動させて前記磁性ヨークとの接触点を通過した後に前記磁性フィルタからスラッジを離脱させることを特徴とする磁性沈殿の磁気分離方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水中或いは液体中の磁性沈殿を吸着分離する磁性沈殿の磁気分離装置及び磁気分離方法に関し、例えば、無電解めっき液中のニッケル系化合物による磁性沈殿、地下水に含まれる磁性沈殿、磁性粉を添加することによって磁性を持たせた水溶性切削油分を薄く含む工業廃水中の磁性沈殿などを分離する磁性沈殿の磁気分離装置及び磁気分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、被処理水中或いは液体中の磁性沈殿を分離するために、硫酸第2鉄溶液などの鉄系の沈殿形成剤を加え、その後、沈殿をフィルタや重力沈降により分離することが行われている。また、微細な沈殿を除去する場合には、膜分離フィルタが使用されている。しかし、膜分離フィルタ用いた場合、高い処理コストがかかるという問題があった。そこで、微細な沈殿を分離する方法として、種々の磁気分離方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、強磁場発生装置からの両極を利用した磁気分離において、ソレノイド型超伝導コイルを備えたマグネット(以下、超伝導ソレノイドと略す。)を使用することが開示されている。しかし、超伝導ソレノイドから発生する磁場は非常に強力であって磁気分離に適するが、超伝導ソレノイドを備えた装置は大型になってしまうという問題があった。また、多数のフィルタを備えた構成により装置が高コストとなるという問題もあった。さらに、磁極中央部に挿入される磁性フィルタがボアの磁場内外で連結して磁気回路を形成し、ボアの外部に移動した磁性フィルタにも磁性が残り、磁性フィルタからの分離物の離脱が不十分となるという問題もあった。
【0004】
また、特許文献2には、バルク磁石を利用して水中の磁性沈殿を吸着して除去する際に、並列配置したバルク磁石により形成した広い磁極平面を利用することが開示されている。しかし、バルク磁石の一方の面(片極)のみを用いて磁場空間を形成する構成となっているため、分離効率が低いという問題があった。
【0005】
また、特許文献3には、バルク磁石から磁性物質に磁気力を及ぼして、流体内部の磁性物質の軌跡を変えて磁性物質を分離する方法が開示されている。しかし、磁気力を受けた磁性物質は水中で濃縮されるものの、水中から磁性物質を引き上げる構成とはなっていないため、分離物に含まれる水分が多いという問題があった。
【0006】
また、特許文献4には、超伝導ソレノイドの片極を利用して、磁性フィルタを磁極の前面において移動させる高勾配磁気分離法が開示されている。しかし、超伝導ソレノイドを備えていることと、漏れ磁場が大きく磁気を遮蔽する必要があることにより、装置が大型になってしまうという問題があった。また、磁場によって磁化される磁性フィルタはベルト状に連続して移動する構造になっているため、磁性フィルタに磁気回路が形成され、磁性フィルタからの分離物の離脱が不十分となるという問題もあった。さらに、磁極の片方のみを用いる構造となっているため、分離効率が低いという問題もあった。
【0007】
また、特許文献5には、水槽の内面に配置した永久磁石の磁場をバルク磁石の反磁性を利用して集中させて強化することによって、磁気分離性能を高めることが開示されている。しかし、永久磁石の磁場を利用するものであるため、磁場が弱く、磁気分離性能が劣るという問題があった。
【0008】
また、特許文献6には、対向して配置した1対のバルク磁石の磁極間に磁性誘導片を複合した移動可能な導管を近接させて磁気分離を行う方法が開示されている。しかし、磁極の片面のみが使われるため、分離効率が低いという問題があった。
【0009】
さらに、非特許文献1には、冷凍機で冷却したバルク磁石を5個並列に真空容器内に配置して励磁したのち、バルク磁石の両面を磁極とし、強磁性マグネタイト粉を含む水を10極の磁極表面に流し、高勾配磁気分離法によらずにバルク磁石の開放勾配磁場を用いて磁気分離することが可能であることを開示している。しかし、磁性フィルタを用いたマグネタイト粉の回収方法については開示されていない。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開2000-5525号公報
【特許文献2】特開2002-119888号公報
【特許文献3】特開2002-153770号公報
【特許文献4】特開2007-160169号公報
【特許文献5】特開2002-102745号公報
【特許文献6】特開2003-320272号公報
【0011】

【非特許文献1】第80回2009年度春季低温工学・超電導学会講演概要集 169ページ講演番号2P-p22、講演題目;5連型超伝導バルク磁石を用いた高精度磁気分離実験
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、装置を低コストで構成でき、かつ、磁性沈殿の分離効率が高い、磁性フィルタを用いた磁性沈殿の磁気分離装置及び磁気分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1記載の磁性沈殿の磁気分離装置は、超伝導状態で励磁されるバルク磁石と、このバルク磁石の2つの磁極の近傍に配置された帯状の磁性フィルタと、この磁性フィルタに接触して前記磁性フィルタの一部と磁気回路を形成する磁性ヨークとを備え、前記磁性フィルタは環状に連続して閉じた構成となっており、前記磁性フィルタの内側に前記バルク磁石と前記磁性ヨークが配置され、前記磁性フィルタは前記磁極の面内方向に移動可能に構成され、前記磁性ヨークと、前記磁性フィルタと前記磁性ヨークが接する前記短絡部を被処理水の液面より上方に、2つの前記磁極を被処理水中に位置させたことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項2記載の磁性沈殿の磁気分離装置は、請求項1において、前記バルク磁石は、並列配置された複数のバルク磁石からなることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項3記載の磁性沈殿の磁気分離方法は、請求項1又は2記載の磁性沈殿の磁気分離装置を用いて、前記磁極の近傍において前記磁性フィルタに磁性沈殿を吸着させてスラッジとし、前記磁性フィルタを移動させて前記磁性ヨークとの接触点を通過した後に前記磁性フィルタからスラッジを離脱させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1記載の磁性沈殿の磁気分離装置によれば、超伝導状態で励磁されたバルク磁石から発生する強力な磁場を利用して、バルク磁石の磁極の近傍において磁性フィルタに磁性沈殿を吸着させてスラッジとし、磁性フィルタを移動させて、磁性ヨークとの接触点を通過した後に磁性フィルタから発生する磁場が弱くなることを利用して、磁性ヨークとの接触点を通過した後に磁性フィルタからスラッジを離脱させることにより、効率よく磁性沈殿を分離することができる。
【0017】
本発明の請求項2記載の磁性沈殿の磁気分離装置によれば、並列配置された複数のバルク磁石を用いることにより、さらに効率よく磁性沈殿を分離することができる。
【0018】
本発明の請求項3記載の磁性沈殿の磁気分離方法によれば、超伝導状態で励磁されたバルク磁石から発生する強力な磁場を利用して、バルク磁石の磁極の近傍において磁性フィルタに磁性沈殿を吸着させてスラッジとし、磁性フィルタを移動させて、磁性ヨークとの接触点を通過した後に磁性フィルタから発生する磁場が弱くなることを利用して、磁性ヨークとの接触点を通過した後に磁性フィルタからスラッジを離脱させることにより、効率よく磁性沈殿を分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の磁気分離装置の一実施形態の基本構造を示す模式図である。
【図2】本発明の磁気分離装置の一実施形態の詳細構造を示す模式図である。
【図3】本発明の磁気分離装置の別の実施形態を示す模式図である。
【図4】本発明の磁気分離装置のさらに別の実施形態における磁場分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の技術的背景には、バルク磁石による磁場発生技術と磁気分離技術がある。高温超伝導バルク体を超伝導状態で励磁して磁石にすれば、従来の永久磁石の20倍以上の強磁場を発生させることができる。この磁場の強度は大型の超伝導ソレノイド磁石の発生する磁場の強度に迫るものである(特許第3598237号公報)。また、このバルク磁石を用いることで、磁性の弱い常磁性物質を磁気分離することができ、磁性が弱く通常は磁気分離できないとされるアルファ・ヘマタイト(赤錆の成分)であっても、これを分散した水中からその90%以上を分離できるという結果が得られている(特開2003-334564号公報)。

【0021】
本発明は、このバルク磁石を用いるものであり、以下、添付した図面を参照しながら、本発明について具体的に説明する。
【実施例1】
【0022】
本実施例の磁気分離装置の基本構造を図1に示す。10は、希土類系123相と呼ばれる高温超伝導物質を主な組成とし、溶融法による粗大結晶成長によって形成された円柱状、円板状又は角柱状のバルク磁石であり、このバルク磁石10は、ステンレス製の真空容器11の中に真空断熱状態で保持され、無酸素銅製の伝熱体12によって図示しない冷凍機の冷凍部に熱的に接続されている。なお、バルク磁石10は、冷凍機によって極低温域に冷却されて超伝導状態にあるとともに、外部からのパルス磁場或いは静磁場によって励磁されている。バルク磁石10がその周囲に形成する磁場空間13a、13bにおいて、磁力線14がバルク磁石10のN極15aから反対面のS極15bに向かって流れている。そして、磁極N16aと磁極S16bが真空容器11の表面に形成されている。
【実施例1】
【0023】
また、真空容器11の内部は、真空容器11に取り付けられた図示しない真空ポンプにより減圧され、バルク磁石10の超伝導遷移温度より低い温度域、例えば30K程度の温度までバルク磁石10を冷却することができるようになっている。真空ポンプとしては、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ、ダイアフラムポンプ、メカニカルブースタポンプなどを用いることができる。
【実施例1】
【0024】
ここで、一般に、高温酸化物超伝導体は結晶方位によってその物性に異方性があり、粗大結晶成長させて得られたバルク磁石10のab面内では、c軸方向より熱が早く伝わる。したがって、バルク磁石10を用いた磁場発生機では、バルク磁石10のc軸方向の両面を磁極に、その側面を冷却部材との接合面とするのが有利である。このため、本実施例においては、バルク磁石10のc軸方向の両面をN極15a、S極15bとし、その側面であるc軸に垂直な面に伝熱体12が固着されている。なお、バルク磁石10と伝熱体12の間には、柔らかく熱伝導性が高いインジウム箔などの材料が介在するとともに、バルク磁石10と伝熱体12の間に圧縮応力がかかるように構成されている。そして、この構成により、バルク磁石10と伝熱体12の間の熱伝導が良好に保たれるようになっている。バルク磁石10と伝熱体12の固着には、ネジ、溶接、低温用接着剤などを用いることができる。
【実施例1】
【0025】
磁極N16aと磁極S16bの近傍には、帯状の磁性フィルタ20が配置されている。磁性フィルタ20は、環状に連続して閉じた構成となっており、磁性フィルタ20の内側に磁極N16aと磁極S16bが配置されている。また、磁性フィルタ20は、磁極N16aと磁極S16bの面内方向に移動可能に構成されており、磁性フィルタ20の各部分は、磁性フィルタ20の移動に伴い磁極N16aが発生する磁場空間13aと磁極S16bの発生する磁場空間13bに交互に暴露されるようになっている。21a、21bの矢印は、磁性フィルタ20の移動方向を示している。なお、本実施例では、磁性フィルタ20は環状に連続して閉じた構成となっているが、これに限らず、磁性フィルタ20は環状に連続していない開いた構成としてもよい。
【実施例1】
【0026】
ここで、磁極N16a、磁極S16bと磁性フィルタ20は、僅かな距離を置いて近接配置されており、磁極N16a、磁極S16bと磁性フィルタ20が接触することに起因する磁極N16a、磁極S16bの摩耗が防止されるようになっている。なお、磁極N16a、磁極S16bの表面にテフロン(登録商標)シート、セラミックス板などの耐摩耗性の部材を配置することによって、磁極N16a、磁極S16bの摩耗が防止されるように構成してもよい。
【実施例1】
【0027】
また、磁性フィルタ20は、磁性金属製の細線を撚り込んだフェルト状の部材、又は磁性金属製の細かい網目状(メッシュ状)の部材で構成されており、低い見かけ密度と低い充填率を有している。なお、磁性フィルタ20は、上記のほか、ゴムや樹脂などの軟質材料中に磁性金属製の細線やファイバーなどを複合させてなる材料により構成されてもよい。
【実施例1】
【0028】
そして、磁性フィルタ20は、磁場空間13a、13bの中で磁化され、磁性フィルタ20の内部又は磁性フィルタ20の表面近傍には、磁性フィルタ20の表面に沿った方向の磁場22a、22bが形成され、磁性フィルタ20により磁気回路が形成されるようになっている。
【実施例1】
【0029】
また、磁場空間13a、13bにより実質的に影響を受けない空間において、磁性フィルタ20の磁場22a、22bによる磁気回路を短絡させるように、磁性フィルタ20の内側に磁性ヨーク23が配置されている。そして、磁性フィルタ20と磁性ヨーク23が接する短絡部24a、24bにおいて、磁性フィルタ20内を通る磁場22a、22bの大部分は磁性ヨーク23に侵入し、バルク磁石10を基準として短絡部24a、24bよりも遠方に位置する磁性フィルタ20は脱磁されるように構成されている。すなわち、短絡部24a、24bよりもバルク磁石10側の磁性フィルタ20と磁性ヨーク23により磁気回路が形成されるようになっている。なお、磁性ヨーク23は、短絡部24a、24bにおいて、磁性フィルタ20に直接接触していてもよく、又は、耐摩耗性部材を介して磁性フィルタ20に間接的に接触していてもよい。
【実施例1】
【0030】
本実施例の磁気分離装置の詳細構造を図2に示す。31は、被分離物となる磁性沈殿32が分散する被処理水30が収容される水槽である。また、磁性フィルタ20は、回転装置33a、33bにより保持され、回転装置33a、33bの回転により移動するように構成されている。磁性ヨーク23と短絡部24a、24bは、被処理水30の液面34より上方に位置し、磁極N16a、磁極S16bは、被処理水30中に位置している。
【実施例1】
【0031】
磁性ヨーク23の上方には、供給配管42からの圧縮空気、水、有機溶媒などを磁性フィルタ20に吹き付けるノズル41が設けられており、磁性フィルタ41を挟んでノズル41と対向する位置の下方には、回収容器43aが設けられている。また、磁性フィルタ20の表面に近接して掻き取り板44が設けられており、掻き取り板44の下方には、回収容器43bが設けられている。
【実施例1】
【0032】
つぎに、本実施例の磁気分離装置の動作を説明する。磁性フィルタ20は、磁場空間13a、13bに暴露されて磁化し、強い磁気吸着力を発揮する。磁性沈殿32は、磁性フィルタ20に吸着して、磁極N16a、磁極S16bにおいてスラッジ40a、40bとなる。回転装置33a、33bにより磁性フィルタ20が移動することで、磁性フィルタ20が磁場に連続して暴露され、スラッジ40a、40bが効率よく磁性フィルタ20の表面に吸着される。また、ここで、磁性フィルタ20は磁極N16a、磁極S16bに引き付けられているので、磁性フィルタ20が移動することによって、磁極N16a、磁極S16bに吸着された磁性沈殿が拭い取られる。
【実施例1】
【0033】
磁極N16aの近傍で吸着されたスラッジ40aは、磁性フィルタ20の移動に伴って液面34から引き上げられる。また、磁極S16bの近傍で吸着されたスラッジ40bは磁極S16bに向かって移動する。ここで、移動搬送されるスラッジ40c、40dは、磁性フィルタ20内の磁場によって、磁極N16a、磁極S16bから遠ざかっても磁性フィルタ20から脱落することがない。
【実施例1】
【0034】
短絡部24aにおいて磁場が磁性ヨーク23に吸い取られて磁性フィルタ20は脱磁されるため、磁性フィルタ20の移動に伴って短絡部24aを通過した後のスラッジ40eは脱離しやすい状態になる。この状態でノズル41により圧縮空気等を吹き付けて、スラッジ40eを磁性フィルタ20から離脱させて回収容器43aに回収する。或いは、掻き取り板44により、スラッジ40fを掻き取って回収容器43bに回収する。
【実施例1】
【0035】
以上のように、本実施例の磁性沈殿の磁気分離装置は、超伝導状態で励磁されるバルク磁石10と、このバルク磁石10の磁極であるN極15a、S極15bの近傍に配置された帯状の磁性フィルタ20と、この磁性フィルタ20に接触して前記磁性フィルタ20の一部と磁気回路を形成する磁性ヨーク23とを備え、前記磁性フィルタ20は環状に連続して閉じた構成となっており、前記磁性フィルタ20の内側に前記バルク磁石11と前記磁性ヨーク23が配置され、前記磁性フィルタ20は前記磁極であるN極15a、S極15bの面内方向に移動可能に構成され、前記磁性ヨーク23は前記バルク磁石11が形成する磁場空間13a、13bにより実質的に影響を受けない空間に配置されたものである。
【実施例1】
【0036】
また、本実施例の磁性沈殿の磁気分離方法は、上記の磁性沈殿の磁気分離装置を用いて、前記磁極であるN極15a、S極15bの近傍において前記磁性フィルタ20に磁性沈殿32を吸着させてスラッジ40a、40bとし、前記磁性フィルタ20を移動させて前記磁性ヨーク23との接触点である短絡部24aを通過した後に前記磁性フィルタ20からスラッジ40e、40fを離脱させるものである。
【実施例1】
【0037】
したがって、本実施例の磁性沈殿の磁気分離方法及びその装置によれば、超伝導状態で励磁されたバルク磁石10から発生する強力な磁場を利用して、バルク磁石10の磁極であるN極15a、S極15bの近傍において磁性フィルタ20に磁性沈殿32を吸着させてスラッジ40a、40bとし、磁性フィルタ20を移動させて、磁性ヨーク23との接触点である短絡部24aを通過した後に磁性フィルタ20から発生する磁場が弱くなることを利用して、磁性ヨーク23との接触点である短絡部24aを通過した後に磁性フィルタ20からスラッジ40e、40fを離脱させることにより、効率よく磁性沈殿を分離することができる。
【実施例1】
【0038】
また、被処理水30に分散する磁性沈殿32を連続で効率よく分離回収することができるので、被処理水30の浄化や磁性沈殿32の資源回収に利用できる。
【実施例2】
【0039】
本実施例の磁気分離装置を図3に示す。なお、実施例1の図1、2は正面図を示しているのに対し、本実施例の図3は側面図を示している。また、図3においては、内部の構成が分かるように一部の外形線を削除してある。実施例1と同じ部分には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【実施例2】
【0040】
本実施例においては、並列に配置された3個の角柱形状のバルク磁石10a、10b、10cが伝熱体12に固着され、伝熱体12は、GM冷凍機50の冷凍部51と熱的に接触している。また、伝熱体12は、バルク磁石の結晶のc軸に垂直な方向からバルク磁石10a、10b、10cを冷却するように配置されている。
【実施例2】
【0041】
冷凍機50には、2本の配管52a、52bを介して、圧縮機53からヘリウムガスが供給され、超伝導遷移温度以下にバルク磁石10a、10b、10cを冷却するようになっている。なお、本実施例の磁気分離装置は、真空断熱を得るために真空容器11に接続された真空ポンプとそのバルブ、真空配管を備えているが、これらの図示は省略する。
【実施例2】
【0042】
また、3列の環状の磁性フィルタ20a、20b、20cが真空容器11の周囲に並列に配置され、回転装置33a、33bにより保持されて磁極表面に沿って鉛直方向に円滑に移動するようになっている。回転装置33a、33bは、モータ63で回転力が与えられるプーリ61、62によって同期回転するようになっている。なお、回転装置33a、33bを連結するベルトやチェーンの図示は省略する。
【実施例2】
【0043】
水槽31には、被処理水30を導入するための導入管65と、被処理水30を導出するための導出管66が設けられている。
【実施例2】
【0044】
つぎに、本実施例の磁気分離装置の動作を説明する。バルク磁石10a、10b、10cの磁気力により吸着されたスラッジ70aは、磁気フィルタ20a、20b、20cの移動に伴い下方に移動するが、バルク磁石10a、10b、10cにより形成される磁場空間から実質上隔離されても磁性フィルタ20a、20b、20cがバルク磁石10a、10b、10cによって磁化されているため、その磁場によって吸着され脱離することがない。その後、スラッジ70aは、回転装置33aの近傍を通過して向きを変え、バルク磁石10a、10b、10cの他方の磁極の近傍を上方に移動し、液面34を超えて磁性フィルタ20a、20b、20cが磁性ヨーク23と接触する短絡部を通過する。短絡部を通過した磁性フィルタ20a、20b、20cは、磁性ヨーク23により脱磁されているため、スラッジ70aを吸着する力が低下している。この状態で供給配管42から供給される圧縮空気等をノズル41により吹き付けて、スラッジ70aを磁性フィルタ20a、20b、20cから脱離させて回収する。或いは、掻き取り板44により、スラッジ70bを掻き取って回収する。
【実施例2】
【0045】
したがって、本実施例の磁気分離装置によれば、3個の並列配置したバルク磁石10a、10b、10cを用い、その両面で6か所の磁場空間が利用できるため、効率のよい磁気分離が可能である。
【実施例2】
【0046】
なお、本実施例では、3列の磁性フィルタ20a、20b、20cを備えた例を説明したが、3個のバルク磁石10a、10b、10cの6か所の磁場空間を、1枚の磁性フィルタが順次を螺旋状に移動するように構成してもよい。この構成によれば、特に濃度が希薄な沈殿や微細な沈殿、或いは磁化率が小さく磁気吸着が十分でない常磁性沈殿についても、有効かつ高効率に分離することができる。
【実施例3】
【0047】
図4に、実際に5個の角柱状のバルク磁石を25mm間隔で並列に配置して作成した磁気分離装置の磁場分布を示す。バルク磁石は、冷凍機により30Kに冷却して得た超伝導状態で真空容器外部からの5Tのパルス磁場の印加によるパルス着磁によって励磁した。真空容器表面における磁場強度は最高で2.2Tを示した。これは、永久磁石の10倍に相当し、大型水冷電磁石の磁場を超えるものであり、コンパクトな超伝導バルク磁石が高い性能を発揮することが確認された。
【符号の説明】
【0048】
10、10a、10b、10c バルク磁石
13a、13b 磁場空間
15a N極(磁極)
15b S極(磁極)
20、20a、20b、20c 磁性フィルタ
23 磁性ヨーク
24a 短絡部(接触点)
32 磁性沈殿
40a、40b、40e、40f スラッジ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3