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明細書 :電解採取用陽極および該陽極を用いた電解採取法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第4916040号 (P4916040)
登録日 平成24年2月3日(2012.2.3)
発行日 平成24年4月11日(2012.4.11)
発明の名称または考案の名称 電解採取用陽極および該陽極を用いた電解採取法
国際特許分類 C25C   7/02        (2006.01)
FI C25C 7/02 306
C25C 7/02 307
請求項の数または発明の数 9
全頁数 16
出願番号 特願2011-067365 (P2011-067365)
出願日 平成23年3月25日(2011.3.25)
審査請求日 平成23年10月20日(2011.10.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】盛満 正嗣
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査官 【審査官】瀧口 博史
参考文献・文献 特開昭62-033790(JP,A)
特開昭61-281889(JP,A)
特開2010-001556(JP,A)
特開2009-293117(JP,A)
特開2000-110000(JP,A)
特表2002-513860(JP,A)
調査した分野 C25C 7/02
要約 【課題】硫酸系電解液を用いる電解採取において、従来の陽極に比べて酸素発生に対する電位が低く、電解電圧と電力量原単位の削減が可能で、かつ様々な種類の金属の電解採取の陽極として利用できる電解採取用陽極と、硫酸系電解液を用いる電解採取法において、陽極の電位および電解電圧が低く、電解採取の電力量原単位を低減することが可能な電解採取法を提供すること。
【解決手段】本発明の電解採取用陽極は、硫酸系電解液を用いる電解採取の陽極であって、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を導電性基体上に形成したものであり、また本発明の電解採取法は、硫酸系電解液を用いる電解採取法であって、本発明の電解採取陽極を用いるものである。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
硫酸系電解液を用いる電解採取の陽極であって、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を導電性基体上に形成したものであり、非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を導電性基体上に形成した陽極と比較して、電解採取時の電解電圧を0.02V以上低減可能であるか、または、結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を導電性基体上に形成した陽極と比較して、電解採取時の電解電圧を0.05V以上低減可能であることを特徴とする電解採取用陽極。
【請求項2】
硫酸系電解液を用いる電解採取の陽極であって、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を導電性基体上に形成したものであることを特徴とする電解採取用陽極。
【請求項3】
前記触媒層におけるルテニウムとタンタルのモル比が30:70であることを特徴とする請求項1または2に記載の電解採取用陽極。
【請求項4】
前記触媒層と前記導電性基体の間に、中間層が形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電解採取用陽極。
【請求項5】
前記中間層が、タンタル、ニオブ、タングステン、モリブデン、チタン、白金、またはこれらのいずれかの金属の合金からなることを特徴とする請求項4に記載の電解採取用陽極。
【請求項6】
前記中間層が、結晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含むことを特徴とする請求項4に記載の電解採取用陽極。
【請求項7】
電解採取される金属が、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、白金、金、銀、インジウム、鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウムのいずれか1つであることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の電解採取用陽極。
【請求項8】
硫酸系電解液を用いる電解採取法であって、請求項1~7のいずれかに記載の電解採取用陽極を用いて所望の金属を採取することを特徴とする電解採取法。
【請求項9】
電解採取される金属が、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、白金、金、銀、インジウム、鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウムのいずれか1つであることを特徴とする請求項8に記載の電解採取法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電解によって所望の金属を採取する電解採取に用いる電解採取用陽極、および電解によって所望の金属を採取する電解採取法に関する。特に、硫酸系電解液を用い、陽極反応が酸素発生である電解採取に用いる電解採取用陽極、および硫酸系電解液を用い、酸素発生を生じる陽極を用いて電解採取を行う電解採取法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の電解採取は、採取したい金属のイオンを含む水溶液(以下、電解液という)に陽極と陰極を浸漬させて通電し、陰極上に当該金属を析出させることにより行われる。代表的な電解採取の例としては、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉛、白金族金属(白金、イリジウム、ルテニウム、パラジウムなど)、貴金属(銀、金)、その他の遷移金属元素、レアメタルまたはクリティカルメタルに総称される金属元素などのいずれか1種以上を含む鉱石を粉砕し、適当な酸などを使って金属イオンを溶解してから、目的とする金属イオンを抽出する過程などを経て調製された電解液を用いて、電解により金属を製造する方法が挙げられる。また、電解採取には、一次電池、二次電池、燃料電池、携帯電話などのモバイル機器およびその他の電子機器、電気・電子部品、めっき鋼板、めっき装飾品などにおいて、様々な用途で使用された金属または合金をリサイクルするために、使用済みの金属または合金を粉砕・金属イオンを溶解する過程などを経て、目的とする金属イオンが含まれる電解液を用いて、電解により金属を再生して回収するものも含まれる。さらに、電解採取には、めっき廃液から金属イオンを抽出する過程などを経て、目的とする金属イオンが含まれる電解液を用いて、電解により金属を回収するものも含まれる。電解採取に用いられる電解液の金属イオン以外の成分に着目すると、硫酸を主たる電解質成分とする硫酸系電解液や塩酸や塩化物を主たる電解質成分とする塩化物系電解液があり、これら以外にもpHが酸性または塩基性に調整された水溶液を基本とする各種の電解液が使用されている。
【0003】
電解採取で消費されるエネルギーは電解電圧と通電した電気量の積であり、陰極で得られる金属量はこの電気量に比例する。したがって、採取される金属の単位重量あたりで必要となる電解採取の電気エネルギー消費量(以下、電力量原単位と記す)は、電解電圧が低いほど小さくなる。この電解電圧は、陽極と陰極の電位差であり、陰極反応は陰極で得られる金属によって異なり、その反応の種類によって陰極の電位も異なる。一方、陽極反応は、先に述べた電解液の種類で例示すれば、硫酸系電解液では酸素発生であり、塩化物系電解液では塩素発生である。例えば、現在商業的に行われている電解採取では、銅、亜鉛、ニッケル、コバルトなどの金属の電解採取には硫酸系電解液が使用されている。このような硫酸系電解液を用いる場合、酸素発生が生じる際の陽極の電位は、陽極に用いる材料によって変化する。例えば、酸素発生に対して触媒活性が低い材料と高い材料では、触媒活性が高い材料ほど陽極の電位は低くなる。したがって、同じ電解液を用いて電解採取を行う場合、電力量原単位を小さくするためには、陽極に触媒活性の高い材料を用いて、陽極の電位を低くすることが重要であり、また必要である。
【0004】
さらに、硫酸系電解液を用いる電解採取の陽極には、酸素発生に対する高い触媒活性に加えて、酸素発生以外に陽極上で生じる可能性がある反応(以下、副反応と記す)には、酸素発生とは反対に触媒活性が低いことが求められる。例えば、亜鉛、または銅、またはコバルト、またはニッケルなどの電解採取では、電解液中の必須成分である亜鉛イオン、または銅イオン、またはコバルトイオン、またはニッケルイオン以外に、他の金属イオンが含まれている場合がある。このような金属イオンとしては、マンガンイオン、鉛イオンなどが知られている。マンガンイオンや鉛イオンが含まれる電解液を用いて電解採取を行うと、陽極上では、+2価のマンガンイオンの酸化が生じて陽極上にオキシ水酸化マンガン(MnOOH)や二酸化マンガン(MnO)などのマンガン化合物が析出したり、または+2価の鉛イオンの酸化が生じて陽極上に二酸化鉛(PbO)が析出する。これらの反応は、硫酸系電解液の陽極反応である酸素発生と同時に陽極上で生じることになるが、マンガン化合物や二酸化鉛は酸素発生に対する触媒活性が低く、また導電性も高くないため、陽極上での酸素発生反応を阻害し、結果として陽極の電位を上昇させ、電解電圧が増加する原因となる。また、例えば、電解採取の対象となる金属イオンではなく、電解液の添加剤成分としてコバルトイオンが電解液に加えられている場合は、陽極上で酸素発生とともに、副反応として+2価のコバルトイオンの酸化が生じ、これによって生成するオキシ水酸化コバルト(CoOOH)が陽極上に析出して、前述したマンガン化合物や二酸化鉛の陽極への析出と同様にして、電解電圧を増加させる原因となる。上記に述べたような陽極上への副反応による金属酸化物や金属オキシ水酸化物の析出と蓄積は、電解電圧の上昇を引き起こし、同時に陽極の寿命・耐久性を低下させる原因となる。
【0005】
上記のような理由から、硫酸系電解液を使用する電解採取の陽極には、1)酸素発生に対する触媒活性が高く、2)陽極上に金属酸化物や金属オキシ水酸化物の析出を生じる副反応や、さらには金属成分を含まなくても陽極上に付着・蓄積するような析出物を生じる副反応に対する触媒活性は低く、3)したがって、酸素発生に対する高い選択性があり、4)その結果、陽極の電位が低く、言い換えれば陽極反応に対する過電圧が小さく、かつ電解採取を続けても副反応の影響による陽極電位の上昇を生じることがなく、5)したがって、電解電圧が低くかつ低い電解電圧が電解採取を続けても維持され、これによって目的とする金属を電解採取するための電力量原単位が小さくなり、6)同時に副反応の影響による陽極の寿命・耐久性の低下がなく、7)酸素発生に対して高い耐久性を有する材料を使用することが望まれる。
【0006】
一方、硫酸系電解液を使用する電解採取用陽極には、代表的なものとして、鉛電極や鉛合金電極のほか、チタン基体上を白金族金属または白金族金属酸化物またはこれらの混合物や複合酸化物を触媒層として被覆した電極(以下、被覆チタン電極と記す)などが用いられている。このような被覆チタン電極の具体的な例としては、酸化イリジウムを含む触媒層で被覆したチタン電極があり、特に、触媒層に酸化イリジウムと酸化タンタルの混合酸化物、もしくはこの混合酸化物に他の金属または金属酸化物をさらに混合した触媒層で被覆した被覆チタン電極が用いられている。また、被覆チタン電極を電解採取以外の利用分野にも広げて例を挙げれば、電気めっき、電解金属箔製造、食塩電解、電解水製造、電解機能水製造など、水溶液を用いる各種の電解プロセスの陽極に用いられる被覆チタン電極が、特許文献1~特許文献7に開示されている。なお、特許文献1~特許文献7に開示されている陽極は、酸素発生だけでなく、塩素発生に対して用いられる陽極も含まれている。また、特許文献8には電解採取用の被覆チタン電極を熱分解法で作製する際に用いられる前駆体溶液およびその調製方法が開示されている。一方、本願発明者は、特許文献9および特許文献10に、被覆チタン電極を含む電解採取用陽極とその陽極を用いた電解採取法を開示している。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開平6-101083号公報
【特許文献2】特開平9-87896号公報
【特許文献3】特開2007-246987号公報
【特許文献4】特開2008-50675号公報
【特許文献5】特開2010-507017号公報
【特許文献6】特開2011-17084号公報
【特許文献7】特開2011-503359号公報
【特許文献8】米国特許出願公開第2009/0288958号明細書
【特許文献9】特許第4516617号公報
【特許文献10】特許第4516618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の通り、本願発明者は、特許文献9において、非晶質の酸化イリジウムを含む触媒層を導電性基体上に形成した亜鉛の電解採取用陽極とこれを用いた亜鉛の電解採取法を開示し、これによって従来の亜鉛の電解採取用陽極および電解採取法に比べて、亜鉛電解採取時の酸素発生に対する陽極電位および電解電圧の低減が可能であることや、陽極の副反応として生じるオキシ水酸化マンガンや二酸化マンガンの析出を抑制できることなどを明らかにした。ここで、副反応であるオキシ水酸化マンガンや二酸化マンガンの析出が抑制できる理由は、非晶質の酸化イリジウムを含む触媒層が、酸素発生に対する触媒活性が高いため、副反応よりも酸素発生が優先され、したがって通電時の電流が副反応ではなく、主反応である酸素発生で消費されるためである。すなわち、硫酸系電解液を用いる電解採取の陽極は、酸素発生に対する触媒活性を高めて、酸素発生を他の副反応よりも優先的に生じさせることができれば、副反応はそれによって抑制されることになる。一方、特許文献10では非晶質の酸化ルテニウムを含む触媒層を導電性基体上に形成したコバルトの電解採取用陽極とこれを用いたコバルトの電解採取法を開示し、これによって塩化物系電解液を用いる従来のコバルトの電解採取用陽極および電解採取法に比べて、塩素発生に対する陽極電位および電解電圧の低減が可能であることや、陽極の副反応として生じるオキシ水酸化コバルトの析出を抑制できることなどを明らかにした。これらの先行技術においては、硫酸系電解液を用いる亜鉛またはコバルトの電解採取について、非晶質の酸化イリジウムを含む触媒層が、陽極での酸素発生に対して選択的に高い触媒活性を有することを見出し、一方で塩化物系電解液を用いるコバルトの電解採取について、非晶質の酸化ルテニウムを含む触媒層が、陽極での塩素発生に対して選択的に高い触媒活性を有することを見出した。
【0009】
しかし、硫酸系電解液を用いる電解採取については、陽極反応に対する触媒活性をさらに高めることでさらなる陽極電位の低下と、これに伴う電解電圧のさらなる低減が求められていた。また、硫酸系電解液を用いる金属の電解採取、すなわち酸素発生を陽極反応とする電解採取において、他の金属、例えば、銅、ニッケルなどの金属の電解採取に対しても、電解電圧の低減がさらに可能な陽極や電解採取法が求められていた。また、硫酸系電解液を用いる電解採取での電力量原単位の削減とともに、イリジウムのような高価な金属を成分として含む触媒層を用いた陽極ではなく、これよりもより安価な触媒層を形成した陽極またはより製造コストが低い陽極が求められていた。さらに、硫酸系電解液を用いる電解採取法についても、電解電圧のさらなる低減が可能で、かつ陽極のコストを低減して、より電解採取のコストを低くできる電解採取法が求められていた。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、硫酸系電解液を用いる電解採取において、鉛電極、鉛合金電極、被覆チタン電極に比べて、酸素発生に対する陽極の電位が低く、それによって電解採取における電解電圧の低下と、所望する金属に対する電力量原単位の削減が可能であり、かつ様々な種類の金属の電解採取の陽極として利用が可能で、同時に硫酸系電解液を用いる電解採取に使用されている被覆チタン電極に比べて、触媒層のコストおよび陽極のコストを低下させることができる電解採取用陽極と、硫酸系電解液を用いる電解採取法において、陽極の電位および電解電圧が低く、したがって電解採取の電力量原単位を低減することが可能で、かつ陽極にかかる初期コスト・維持コストも低く、したがって電解採取プロセス全体のコストを低減できる電解採取法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者は、上記の課題を解決するために種々検討した結果、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を導電性基体上に形成した陽極、およびこれを用いた電解採取法によって上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、上記課題を解決するための本発明の電解採取用陽極は、硫酸系電解液を用いる電解採取の陽極であって、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を導電性基体上に形成したものであることを特徴とする。
【0013】
ここで、導電性基体としては、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、タングステン、モリブデン等のバルブ金属や、チタン-タンタル、チタン-ニオブ、チタン-パラジウム、チタン-タンタル-ニオブ等のバルブ金属を主体とする合金、バルブ金属と白金族金属および/または遷移金属との合金、または導電性ダイヤモンド(例えば、ホウ素をドープしたダイヤモンド)が好ましいが、これに限定されるものではない。また、その形状は、板状、網状、棒状、シート状、管状、線状、多孔板状、多孔質状、真球状の金属粒子を結合させた三次元多孔体等の種々の形状とすることができる。導電性基体としては、上記のものの他、上記のバルブ金属、合金、導電性ダイヤモンドなどを鉄、ニッケル等のバルブ金属以外の金属または導電性セラミックス表面に被覆させたものを使用してもよい。
【0014】
非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層は、硫酸系電解液からの酸素発生に対して選択的に高い触媒活性を示し、酸素発生に対する陽極の電位が著しく低くなるという作用を有する。本願発明者は、特許文献9において、結晶質の酸化イリジウムを含む触媒層を導電性基体上に形成した電極が鉛電極や鉛合金電極よりも硫酸系電解液における酸素発生の電位が低いこと、さらに非晶質の酸化イリジウムを含む触媒層を導電性基体上に形成した電極はこれらに対してさらに酸素発生の電位が低く、同時に副反応を抑制できることを開示したが、本願発明者は、本発明の電解採取用陽極がこれらの電極よりもさらに酸素発生に対する触媒活性が高いことを見出した。これによって、本発明の電解採取用陽極は、陰極で採取される金属の種類によらず、硫酸系電解液を用いる電解採取において、他の陽極を用いる場合に比べて、電解電圧を低減することができるという作用を有する。特に、この作用は、本願発明者が特許文献9ですでに開示した非晶質の酸化イリジウムを含む触媒層を形成した陽極、特に非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極を用いて、硫酸系電解液で電解採取を行う場合よりも、さらに陽極の電位を低下させることが可能で、電解電圧を低減できるという、極めて進歩性が高く、かつ新規で特異的な作用である。また、このように酸素発生に対する陽極の電位が低くなり、酸素発生が他の副反応に対して優先されることによって、オキシ水酸化マンガン、二酸化マンガン、二酸化鉛、オキシ水酸化コバルトなどの陽極での析出・蓄積といった陽極での副反応が抑制されるという作用を有する。さらに、ルテニウムはイリジウムに比べて1/3以下の価格であることから、非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層での酸素発生に対する触媒活性以上の高い触媒活性を、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層では、より安価な触媒層で達成することができるという作用を有する。
【0015】
また、本願発明者は、非晶質の酸化ルテニウムを非晶質の酸化タンタルとの混合物とすることによって、硫酸系電解液を用いる電解採取に応用可能な耐久性が得られることも見出した。すなわち、特許文献6では比較例の一つとして、480℃の熱分解で得られたルテニウムとタンタルを金属成分とするコーティング層の硫酸溶液中における耐久性が極めて低かったことが開示されているが、このような結果は、熱分解を少なくとも350℃以上の温度で行って得られるような結晶質の酸化ルテニウムを含む場合において生じる問題であり、これに対して、本願発明者は、酸化ルテニウムを非晶質の酸化タンタルとの混合物の中で非晶質とした状態の触媒層を形成した陽極が、硫酸系電解液を用いる電解採取用陽極として、特許文献6のような酸素発生に対する耐久性の問題を生じないことを見出した。特に、本発明の電解採取用陽極は、硫酸系電解液中で酸素発生を陽極反応とする電解採取での一般的な電解条件である、陽極の電極面積あたりの電流密度が0.1A/cm以下のような電解条件において、優れた耐久性を発揮する。
【0016】
以下に、本発明の内容をさらに詳細に説明する。導電性基体上に非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成する方法には、ルテニウムとタンタルを含む前駆体溶液を導電性基体上に塗布した後、所定の温度で熱処理する熱分解法の他、スパッタリング法やCVD法など各種の物理蒸着法や化学蒸着法などを用いることが可能である。ここで、本発明の電解採取用陽極を作製する方法の中で、特に熱分解法による作製方法についてさらに述べる。例えば、無機化合物、有機化合物、イオン、錯体などの様々な形態のルテニウムおよびタンタルを含む前駆体溶液をチタン基体上に塗布し、これを少なくとも350℃よりも低い温度範囲で熱分解すると、チタン基体上に非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層が形成される。例えば、塩化ルテニウム水和物と塩化タンタルを溶解したブタノール溶液を前駆体溶液として、これをチタン基体上に塗布して熱分解するとき、例えばブタノール溶液中のルテニウムとタンタルのモル比が30:70であれば、熱分解温度を280℃とすると、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルの混合物からなる触媒層が形成される。また、上記の前駆体溶液を塗布した後に、260℃で熱分解しても、同じく、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルの混合物からなる触媒層が形成される。
【0017】
熱分解法において非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を導電性基体上に形成する場合、チタン基体に塗布する前駆体溶液中に含まれるルテニウムとタンタルのモル比、熱分解温度、さらには前駆体溶液中にルテニウムとタンタル以外の金属成分が含まれる場合は、その金属成分の種類と前駆体溶液に含まれる全金属成分中でのモル比などによっても、触媒層中に非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルが含まれるかどうかは変化する。例えば、前駆体溶液に含まれる金属成分以外の成分が同じであり、かつ金属成分としてはルテニウムとタンタルだけが含まれる場合では、前駆体溶液中のルテニウムのモル比が低いほうが非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層が得られる熱分解温度の範囲は広くなる傾向を示す。また、このような金属成分のモル比だけでなく、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルが含まれる触媒層を形成する条件は、前駆体溶液の調製方法や材料、例えば前駆体溶液の調製の際に用いるルテニウムおよびタンタルの原材料、溶媒の種類、熱分解を促進するために添加されるような添加剤の種類や濃度によっても変化する。
【0018】
したがって、本発明の電解採取用陽極において、熱分解法で非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成する際の条件は、上記に述べた熱分解法おけるブタノール溶媒の使用、ルテニウムとタンタルのモル比やこれに関連した熱分解温度の範囲に限定されたものではなく、上記の条件はあくまでその一例であり、本発明の電解採取用陽極の作製方法は、上記に示した以外のあらゆる方法において、導電性基体上に非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成できるものであれば、これらはすべて含まれる。例えば、このような方法には、特許文献8で開示されているような、前駆体溶液の調製過程で加熱処理を伴うような方法も当然に含まれる。なお、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層の形成については、一般的に用いられるX線回折法によって、酸化ルテニウムに対応する回折ピークが観察されないこと、および酸化タンタルに対応する回折ピークが観察されないことによって知ることができる。
【0019】
また、本発明は、触媒層と導電性基体の間に、中間層が形成されていることを特徴とする電解採取用陽極である。ここで、中間層とは、触媒層に比べて酸素発生に対する触媒活性は低いが、導電性基体を十分に被覆しており、導電性基体の腐食を抑制する作用を有するものであり、金属、合金、ボロンドープダイヤモンドなどの炭素系材料、酸化物や硫化物などの金属化合物、金属複合酸化物などの複合化合物などが挙げられる。例えば、金属であればタンタル、ニオブなどの薄膜が好適であり、また合金であればタンタル、ニオブ、タングステン、モリブデン、チタン、白金などの合金が好適である。このような金属または合金が触媒層と導電性基体の間に中間層として形成され、同時に導電性基体の表面を被覆していることによって、触媒層中に電解液が浸透しても、導電性基体に到達することを防止し、したがって導電性基体が酸性の電解液によって腐食し、腐食生成物によって導電性基体と触媒層の間で電流が円滑に流れなくなることを抑制するという作用を有する。また、ボロンドープダイヤモンドなどの炭素系材料を用いた中間層についても同様な作用を有する。上記の金属、合金、炭素系材料からなる中間層は、熱分解法、スパッタリング法やCVD法など各種の物理蒸着法や化学蒸着法、溶融めっき法、電気めっき法などの様々な方法により形成することができる。酸化物や硫化物などの金属化合物、または金属複合酸化物からなる中間層としては、例えば、結晶質の酸化イリジウムを含む酸化物からなる中間層などが好適である。特に、触媒層を熱分解法で作製する場合、同じ熱分解法で酸化物や複合酸化物からなる中間層を形成することは、陽極の工程の簡素化の点で有利である。また、本発明の電解採取用陽極の触媒層とは異なる酸化物や複合酸化物からなる中間層は、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層に比べて酸素発生に対する触媒活性が低いため、したがって触媒層中を電解液が浸透して中間層に至った場合でも、中間層では酸素発生が触媒層に比べて優先的に起こらないことから、触媒層よりも耐久性が高く、よって導電性基体を保護する作用を有する。同時に、このような耐久性のより高い酸化物または複合酸化物が導電性基体を被覆することで、中間層がない場合に比べて、電解液による導電性基体の腐食を抑制することができるという作用を有する。
【0020】
また、本発明は、中間層が、結晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含むことを特徴とする電解採取用陽極である。結晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む中間層は、すでに述べた作用に加えて、特に触媒層中の酸化ルテニウムと中間層中の酸化イリジウムが同じ結晶系に属し、原子間距離が近いことから、中間層上に形成される触媒層との間の密着性がよく、よって耐久性が特に向上するという作用を有する。結晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む中間層は、イリジウムとタンタルを含む前駆体溶液を導電性基体上に塗布した後、所定の温度で熱処理する熱分解法の他、スパッタリング法やCVD法など各種の物理蒸着法や化学蒸着法などの方法により作製することが可能である。例えば、熱分解法の場合、イリジウムとタンタルを含む前駆体溶液を400℃~550℃の温度で熱分解して得られる結晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルからなる中間層などは好適である。
【0021】
また、本発明は、電解採取される金属が、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、白金、金、銀、インジウム、鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウムのいずれか1つであることを特徴とする電解採取用陽極である。また、本発明は、本発明の電解採取用陽極を用いて所望の金属を採取することを特徴とする電解採取法であり、またその電解採取される金属が、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、白金、金、銀、インジウム、鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウムのいずれか1つであることを特徴とする電解採取法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば下記の効果を奏する。
1)硫酸系電解液を用いる金属の電解採取において、従来に比べて、陽極における酸素発生の電位を低くすることができることから、採取する金属の種類に関わらず、電解採取時の電解電圧を低減することが可能となり、これによって電力量原単位を大幅に削減できるという効果を有する。
2)また、従来に比べて、陽極における酸素発生の電位を低くすることができることから、陽極上で生じる可能性がある様々な副反応を抑制することが可能となり、長期間の電解採取において電解電圧の上昇を抑制することができるという作用を有する。
3)上記の効果とともに、副反応によって陽極上に析出・蓄積する酸化物、オキシ水酸化物、その他の化合物を取り除く必要がなくなる、または軽減されることから、このような作業による陽極のダメージが抑制され、したがって陽極の寿命が長くなるという効果を有する。
4)上記の効果とともに、副反応によって陽極上に析出・蓄積した酸化物、オキシ水酸化物、その他の化合物を取り除く作業が不要、または少なくなることから、電解採取における陽極のメンテナンス・交換が抑制または軽減されるという効果を有する。また、このような除去作業によって、電解採取を休止する必要性が抑えられるため、連続的かつより安定した電解採取が可能になるという効果を有する。
5)上記の効果とともに、陽極上への析出物が抑制されることから、これが起こる場合に析出物によって陽極の有効表面積が制限され、または陽極での電解可能な面積が不均一となり、陰極上に金属が不均一に析出して回収が容易でなくなったり、平滑性の乏しい金属が生成して、採取される金属の品質が低下するのを抑制することができるという効果を有する。
6)また、上記のような理由で陰極上に不均一に成長した金属が、陽極に達してショートし、電解採取ができなくなることを防止することができるという効果を有する。また、陰極上で金属が不均一にかつデンドライト成長することが抑制されるため、陽極と陰極の極間距離を短くすることができ、電解液のオーム損による電解電圧の増加を抑制できるという効果を有する。
7)また、上記のように、副反応で生じる陽極上への析出物による様々な問題が解消されることによって、安定で連続的な電解採取が可能になり、電解採取における保守・管理作業を低減することができるとともに、採取される金属の製品管理が容易になるという効果を有する。また、長期間の電解採取における陽極のコストを低減できるという効果を有する。
8)また、本発明によれば、従来の酸化イリジウムを含む触媒層を形成した被覆チタン電極に比べて、酸化ルテニウムを用いることにより触媒層のコストが軽減され、また熱分解温度が低いことから触媒層の形成工程におけるコストも軽減されるという効果を有する。
9)上記の効果とともに、硫酸系電解液を用いる様々な金属の電解採取において、電解採取全体の製造コストを大幅に低減できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1、実施例2、比較例1の陽極で得られたX線回折像のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施例、比較例を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、例えば、本発明は亜鉛、銅、コバルト以外の他の金属の電解採取にも適用可能である。

【0025】
[亜鉛の電解採取]
(実施例1)
市販のチタン板(長さ5cm、幅1cm、厚さ1mm)を10%のシュウ酸溶液中に90℃で60分間浸漬してエッチング処理を行った後、水洗し、乾燥した。次に、6vol%の濃塩酸を含むブタノール(n-COH)溶液に、ルテニウムとタンタルのモル比が30:70で、ルテニウムとタンタルの合計が金属換算で50g/Lとなるように三塩化ルテニウム三水和物(RuCl・3HO)と五塩化タンタル(TaCl)を添加した塗布液を調製した。この塗布液を上記乾燥後のチタン板に塗布し、120℃で10分間乾燥し、次いで260℃に保持した電気炉内で20分間熱分解した。この塗布、乾燥、熱分解を計5回繰り返し行い、導電性基体であるチタン板上に触媒層を形成した陽極を作製した。

【0026】
実施例1の陽極をX線回折法により構造解析したところ、図1に示したように、X線回折像にはRuOに相当する回折ピークは認められず、またTaに相当する回折ピークも認められなかった。なお、Tiの回折ピークが見られたが、これはチタン板によるものである。すなわち、実施例1の陽極には、チタン板上に非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層が形成されていた。

【0027】
0.80mol/LのZnSOと2.0mol/Lの硫酸からなる電解液を調製し、この電解液に亜鉛板(2cm×2cm)を陰極として浸漬した。また、上記の陽極をポリテトラフルオロエチレン製ホルダーに埋設し、電解液に接触する電極面積を1cmに規制した状態で同じく電解液に上記の陰極と所定の極間距離をおいて対向配置した。そして、陽極と陰極との間に、陽極の電極面積基準で電流密度10mA/cmまたは50mA/cmのいずれかの電解電流を流して亜鉛の電解採取を行いながら、陽極-陰極間の端子間電圧(電解電圧)を測定した。なお、電解液は40℃とした。

【0028】
(実施例2)
実施例2の陽極は、触媒層を形成する際の熱分解温度を260℃から280℃に変えた以外は実施例1と同じ方法で作製した。実施例2の陽極をX線回折法により構造解析したところ、図1に示したように、RuOに相当する回折ピークは認められず、Taに相当する回折ピークも認められなかった。なお、Tiの回折ピークが見られたが、これはチタン板によるものである。すなわち、実施例2の陽極には、チタン板上に非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層が形成されていた。

【0029】
0.80mol/LのZnSOと2.0mol/Lの硫酸からなる電解液を調製し、この電解液に亜鉛板(2cm×2cm)を陰極として浸漬した。また、上記の陽極をポリテトラフルオロエチレン製ホルダーに埋設し、電解液に接触する電極面積を1cmに規制した状態で同じく電解液に上記の陰極と所定の極間距離をおいて対向配置した。そして、陽極と陰極との間に、陽極の電極面積基準で電流密度10mA/cmまたは50mA/cmのいずれかの電解電流を流して亜鉛の電解採取を行いながら、陽極-陰極間の端子間電圧(電解電圧)を測定した。なお、電解液は40℃とした。

【0030】
(比較例1)
比較例1の陽極は、触媒層を形成する際の熱分解温度を260℃から360℃に変えた以外は実施例1と同じ方法で作製した。比較例1の陽極をX線回折法により構造解析したところ、図1に示したように、RuOに相当する回折ピークは認められたが、Taに相当する回折ピークは認められなかった。なお、Tiの回折ピークが見られたが、これはチタン板によるものである。すなわち、比較例1の陽極には、結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層が形成されていた。

【0031】
0.80mol/LのZnSOと2.0mol/Lの硫酸からなる電解液を調製し、この電解液に亜鉛板(2cm×2cm)を陰極として浸漬した。また、上記の陽極をポリテトラフルオロエチレン製ホルダーに埋設し、電解液に接触する電極面積を1cmに規制した状態で同じく電解液に上記の陰極と所定の極間距離をおいて対向配置した。そして、陽極と陰極との間に、陽極の電極面積基準で電流密度10mA/cmまたは50mA/cmのいずれかの電解電流を流して亜鉛の電解採取を行いながら、陽極-陰極間の端子間電圧(電解電圧)を測定した。なお、電解液は40℃とした。

【0032】
(比較例2)
市販のチタン板(長さ5cm、幅1cm、厚さ1mm)を10%のシュウ酸溶液中に90℃で60分間浸漬してエッチング処理を行った後、水洗し、乾燥した。次に、6vol%の濃塩酸を含むブタノール(n-COH)溶液に、イリジウムとタンタルのモル比が80:20でイリジウムとタンタルの合計が金属換算で70g/Lとなるように塩化イリジウム酸六水和物(HIrCl・6HO)と塩化タンタル(TaCl)を添加した塗布液を調製した。この塗布液を上記乾燥後のチタン板に塗布し、120℃で10分間乾燥し、次いで360℃に保持した電気炉内で20分間熱分解した。この塗布、乾燥、熱分解を計5回繰り返し行い、導電性基体であるチタン板上に触媒層を形成した陽極を作製した。

【0033】
比較例2の陽極をX線回折法により構造解析したところ、X線回折像にはIrOに相当する回折ピークは認められず、またTaに相当する回折ピークも認められなかった。すなわち、比較例2の陽極には、チタン板上に非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層が形成されていた。

【0034】
0.80mol/LのZnSOと2.0mol/Lの硫酸からなる電解液を調製し、この電解液に亜鉛板(2cm×2cm)を陰極として浸漬した。また、上記の陽極をポリテトラフルオロエチレン製ホルダーに埋設し、電解液に接触する電極面積を1cmに規制した状態で同じく電解液に上記の陰極と所定の極間距離をおいて対向配置した。そして、陽極と陰極との間に、陽極の電極面積基準で電流密度10mA/cmまたは50mA/cmのいずれかの電解電流を流して亜鉛の電解採取を行いながら、陽極-陰極間の端子間電圧(電解電圧)を測定した。なお、電解液は40℃とした。

【0035】
上記の実施例1、実施例2、比較例1、比較例2の電解採取を行った際の端子間電圧は、表1~表4のようになった。
【表1】
JP0004916040B1_000002t.gif
【表2】
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【表3】
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【表4】
JP0004916040B1_000005t.gif

【0036】
表1に示したように、亜鉛の電解採取において、260℃での熱分解で作製した、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を使用した実施例1は、360℃の熱分解で作製した、結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を使用した比較例1に対して、電解電圧が0.17V~0.19V低かった。また、表2に示したように、実施例1は、非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を使用した比較例2に対して、電解電圧が0.05V~0.06V低かった。すなわち、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極(実施例1)は、結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極(比較例1)よりも電解電圧が大幅に低下し、さらに非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極(比較例2)よりも、さらに電解電圧を低下させることができた。

【0037】
また、表3に示したように、亜鉛の電解採取において、280℃の熱分解で作製した、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を使用した実施例2は、360℃の熱分解で作製した、結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を使用した比較例1に対して、電解電圧が0.15V~0.20V低かった。また、表4に示したように、実施例2は、非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を使用した比較例2に対して、電解電圧が0.04V~0.06V低かった。すなわち、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極(実施例2)は、結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極(比較例1)よりも電解電圧が大幅に低下し、さらに非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極(比較例2)よりも、さらに電解電圧を低下させることができた。

【0038】
[銅の電解採取]
(実施例3)
実施例1における電解液を、0.60mol/LのCuSOと0.90mol/Lの硫酸からなる電解液に変え、他の条件は実施例1と同じとして、銅の電解採取を行いながら、陽極-陰極間の端子間電圧(電解電圧)を測定した。

【0039】
(実施例4)
実施例2における電解液を、0.60mol/LのCuSOと0.90mol/Lの硫酸からなる電解液に変え、他の条件は実施例2と同じとして、銅の電解採取を行いながら、陽極-陰極間の端子間電圧(電解電圧)を測定した。

【0040】
(比較例3)
比較例1における電解液を、0.60mol/LのCuSOと0.90mol/Lの硫酸からなる電解液に変え、他の条件は比較例1と同じとして、銅の電解採取を行いながら、陽極-陰極間の端子間電圧(電解電圧)を測定した。

【0041】
(比較例4)
比較例2における電解液を、0.60mol/LのCuSOと0.90mol/Lの硫酸からなる電解液に変え、他の条件は比較例2と同じとして、銅の電解採取を行いながら、陽極-陰極間の端子間電圧(電解電圧)を測定した。

【0042】
上記の実施例3、実施例4、比較例3、比較例4の電解採取を行った際の端子間電圧は、表5~表8のようになった。
【表5】
JP0004916040B1_000006t.gif
【表6】
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【表7】
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【表8】
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【0043】
表5に示したように、銅の電解採取において、260℃での熱分解で作製した、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を使用した実施例3は、360℃の熱分解で作製した、結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を使用した比較例3に対して、電解電圧が0.11V~0.16V低かった。また、表6に示したように、実施例3は、非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を使用した比較例4に対して、電解電圧が0.05V~0.07V低かった。すなわち、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極(実施例3)は、結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極(比較例3)よりも電解電圧が大幅に低下し、さらに非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極(比較例4)よりも、さらに電解電圧を低下させることができた。

【0044】
また、表7に示したように、銅の電解採取において、280℃の熱分解で作製した、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を使用した実施例4は、360℃の熱分解で作製した、結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を使用した比較例3に対して、電解電圧が0.10V~0.16V低かった。また、表8に示したように、実施例4は、非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を使用した比較例4に対して、電解電圧が0.04V~0.07V低かった。すなわち、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極(実施例4)は、結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極(比較例3)よりも電解電圧が大幅に低下し、さらに非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極(比較例4)よりも、さらに電解電圧を低下させることができた。

【0045】
[コバルトの電解採取]
(実施例5)
実施例1における電解液を、0.30mol/LのCoSOと2.0×10-3mol/Lの硫酸からなる電解液に変え、電流密度を10mA/cmとした以外の条件は実施例1と同じとして、コバルトの電解採取を行いながら、陽極-陰極間の端子間電圧(電解電圧)を測定した。

【0046】
(実施例6)
実施例2における電解液を、0.30mol/LのCoSOと2.0×10-3mol/Lの硫酸からなる電解液に変え、電流密度を10mA/cmとした以外の条件は実施例2と同じとして、コバルトの電解採取を行いながら、陽極-陰極間の端子間電圧(電解電圧)を測定した。

【0047】
(比較例5)
比較例1における電解液を、0.30mol/LのCoSOと2.0×10-3mol/Lの硫酸からなる電解液に変え、電流密度を10mA/cmとした以外の条件は比較例1と同じとして、コバルトの電解採取を行いながら、陽極-陰極間の端子間電圧(電解電圧)を測定した。

【0048】
(比較例6)
比較例2における電解液を、0.30mol/LのCoSOと2.0×10-3mol/Lの硫酸からなる電解液に変え、電流密度を10mA/cmとした以外の条件は比較例2と同じとして、コバルトの電解採取を行いながら、陽極-陰極間の端子間電圧(電解電圧)を測定した。

【0049】
上記の実施例5、実施例6、比較例5、比較例6の電解採取を行った際の端子間電圧は、表9~表12のようになった。
【表9】
JP0004916040B1_000010t.gif
【表10】
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【表11】
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【表12】
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【0050】
表9に示したように、コバルトの電解採取において、260℃での熱分解で作製した、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を使用した実施例5は、360℃の熱分解で作製した、結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を使用した比較例5に対して、電解電圧が0.05V低かった。また、表10に示したように、実施例5は、非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を使用した比較例6に対して、電解電圧が0.02V低かった。すなわち、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極(実施例5)は、結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極(比較例5)よりも電解電圧が低下し、さらに非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極(比較例6)よりも、さらに電解電圧を低下させることができた。

【0051】
また、表11に示したように、コバルトの電解採取において、280℃の熱分解で作製した、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を使用した実施例6は、360℃の熱分解で作製した、結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を使用した比較例5に対して、電解電圧が0.12V低かった。また、表12に示したように、実施例6は、非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を使用した比較例6に対して、電解電圧が0.09V低かった。すなわち、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極(実施例6)は、結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極(比較例5)よりも電解電圧が低下し、さらに非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極(比較例6)よりも、さらに電解電圧を低下させることができた。
図面
【図1】
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