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明細書 :三次元細胞培養体の生体シグナルの検出方法及び検出キット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5130376号 (P5130376)
登録日 平成24年11月9日(2012.11.9)
発行日 平成25年1月30日(2013.1.30)
発明の名称または考案の名称 三次元細胞培養体の生体シグナルの検出方法及び検出キット
国際特許分類 C12Q   1/02        (2006.01)
C12N   5/071       (2010.01)
FI C12Q 1/02
C12N 5/00 202A
請求項の数または発明の数 12
全頁数 23
出願番号 特願2010-537775 (P2010-537775)
出願日 平成21年11月10日(2009.11.10)
国際出願番号 PCT/JP2009/069124
国際公開番号 WO2010/055829
国際公開日 平成22年5月20日(2010.5.20)
優先権出願番号 2008289011
優先日 平成20年11月11日(2008.11.11)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年1月17日(2011.1.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】松崎 典弥
【氏名】明石 満
【氏名】岡野 和宣
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000040、【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
審査官 【審査官】濱田 光浩
参考文献・文献 特開2007-279015(JP,A)
特開2007-228921(JP,A)
国際公開第2007/035301(WO,A1)
特開2007-082528(JP,A)
調査した分野 C12Q 1/00
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
積層された少なくとも2層の細胞層と、細胞外マトリックスと、生体シグナルを検出可能なセンサー粒子とを含む三次元細胞培養体を準備すること、及び、
前記センサー粒子を光学的に観察することを含み、
前記細胞外マトリックスは、少なくとも前記細胞層間に形成され、
前記センサー粒子は、前記細胞層間の細胞外マトリックスに配置されている、三次元細胞培養体の生体シグナルの検出方法。
【請求項2】
前記センサー粒子は、センサー機能を有する物質と、センサー機能を有する物質を担持する担持体と、前記担持体の表面に交互に積層された生体適合性を有する塩基性ポリマー層及び生体適合性を有する酸性ポリマー層とを含み、前記担持体が多孔性粒子である、請求項1記載の検出方法。
【請求項3】
前記センサー粒子の光学的な観察は、前記生体シグナルを可視化及び/又は数値化することを含む、請求項1記載の検出方法。
【請求項4】
前記細胞外マトリックスは、RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子と前記RGDを有するタンパク質若しくは高分子と相互作用するタンパク質若しくは高分子との組み合わせ、又は、正の電荷を有するタンパク質若しくは高分子と負の電荷を有するタンパク質若しくは高分子の組み合わせを含む、請求項1から3のいずれかに記載の検出方法。
【請求項5】
前記三次元細胞培養体は、細胞含有溶液を配置して細胞層を形成すること、第1液と第2液とを交互に配置して細胞外マトリックスを形成すること、前記細胞外マトリックスの形成及び前記細胞層の形成を交互に行うことにより前記細胞層を積層すること、及び、細胞層間に前記生体シグナルを検出可能なセンサー粒子を配置することを含む製法により製造されうるものであって、
前記第1液の含有物と第2液の含有物との組み合わせが、RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子と前記RGDを有するタンパク質若しくは高分子と相互作用するタンパク質若しくは高分子との組み合わせ、又は、正の電荷を有するタンパク質若しくは高分子と負の電荷を有するタンパク質若しくは高分子の組み合わせである、請求項1からのいずれかに記載の検出方法。
【請求項6】
前記センサー粒子は、センサー機能を有する物質と、センサー機能を有する物質を担持する担持体と、前記担持体の表面に交互に積層された塩基性ポリマー層及び酸性ポリマー層とを含む、請求項1記載の検出方法。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の検出方法に用いる検出キットであって、
積層された少なくとも2層の細胞層と、少なくとも前記細胞層間に形成された細胞外マトリックスと、前記細胞層間に形成された細胞外マトリックスに配置された生体シグナルを検出可能なセンサー粒子とを含む三次元細胞培養体を有する、検出キット。
【請求項8】
前記三次元細胞培養体は、細胞含有溶液を配置して細胞層を形成すること、第1液と第2液とを交互に配置して細胞外マトリックスを形成すること、前記細胞外マトリックスの形成及び前記細胞層の形成を交互に行うことにより前記細胞層を積層すること、及び、細胞層間に前記生体シグナルを検出可能なセンサー粒子を配置することを含む製法により製造されうるものであって、
前記第1液の含有物と第2液の含有物との組み合わせが、RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子と前記RGDを有するタンパク質若しくは高分子と相互作用するタンパク質若しくは高分子との組み合わせ、又は、正の電荷を有するタンパク質若しくは高分子と負の電荷を有するタンパク質若しくは高分子の組み合わせである、請求項記載の検出キット。
【請求項9】
前記センサー粒子は、センサー機能を有する物質と、センサー機能を有する物質を担持する担持体と、前記担持体の表面に交互に積層された生体適合性を有する塩基性ポリマー層及び生体適合性を有する酸性ポリマー層とを含む、請求項又はに記載の検出キット。
【請求項10】
細胞含有溶液を配置して細胞層を形成すること、
第1液と第2液とを交互に配置して細胞外マトリックスを形成すること、
前記細胞外マトリックスの形成及び前記細胞層の形成を交互に行うことにより前記細胞層を積層すること、及び、
細胞層間に、生体シグナルを検出可能なセンサー粒子を配置することを含み、
前記第1液の含有物と第2液の含有物との組み合わせが、RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子と前記RGDを有するタンパク質若しくは高分子と相互作用するタンパク質若しくは高分子との組み合わせ、又は、正の電荷を有するタンパク質若しくは高分子と負の電荷を有するタンパク質若しくは高分子の組み合わせである、三次元細胞培養体の製造方法。
【請求項11】
請求項1からのいずれかに記載の検出方法を用いて生体シグナルを検出すること、及び
前記生体シグナルの検出結果に基づき、細胞の活動を解析することを含む、三次元細胞培養体の評価方法。
【請求項12】
三次元細胞培養体と、被検物質である化合物、医薬組成物、化粧品及び食品からなる群から選択される物質とを接触させること、及び、
請求項1からのいずれかに記載の検出方法を用いて三次元細胞培養体の生体シグナルを検出することを含む、被検物質の生体に対する評価方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元細胞培養体の生体シグナルの検出方法及びそれに用いる検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞は、多様な機能を発揮し、生体として正常に機能するために情報を伝達する機能を有する。
【0003】
細胞の状態、細胞が産出するシグナル、薬物等に対する細胞の応答等を観察する技術としては、例えば、細胞に何らかの刺激を与えた後、細胞からDNAやタンパク質を抽出して解析する技術、細胞が産出する物質や、細胞表面や内部に存在する物質を、蛍光化合物等を用いて測定する技術(特許文献1)、及び、電極等が配置された細胞培養マイクロアレイ上で細胞を培養しながら、光学的又は電気化学的に細胞の形状観察や細胞電位の変化を計測する技術(特許文献2)等がある。
【0004】
一方、細胞を三次元に積層する技術としては、細胞外マトリックス形成と細胞層形成とを交互に繰り返して三次元積層体を形成する技術(特許文献3、非特許文献1及び2)、予めシート状に培養した二次元培養細胞シートを積層する細胞シート技術(非特許文献3)、キトサン薄膜を使用して細胞を積層する技術(非特許文献4)、及び、細胞と細胞外マトリックスを含むマイクロ流体を流路に流し込んで積層する技術(非特許文献5)等がある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2007-279015号公報
【特許文献2】特開2006-42671号公報
【特許文献3】特開2007-228921号公報
【0006】

【非特許文献1】M. Matsusaki et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 4689.
【非特許文献2】Y. Nakahara et al., J. Biomater Sci. Polymer Edn. 2007, 18, 1565.
【非特許文献3】T. Okano et al., Circ Res. 2002, 90. 40.
【非特許文献4】C.C. Co et al., J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 1598.
【非特許文献5】W. Tan. Et al., Biomaterials 2004, 25,1355.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の方法では、細胞単独の応答を評価することはできても、組織としての応答あるいは組織中の細胞としての応答を生体外で評価することはできなかった。また、細胞より産出された生体シグナルの拡散位置の特定や定量的な評価もできなかった。そこで、本発明は、三次元細胞培養体の生体シグナルを検出する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、積層された少なくとも2層の細胞層と、生体シグナルを検出可能なセンサー粒子とを含む三次元細胞培養体を準備すること、及び、前記センサー粒子を光学的に観察することを含む三次元細胞培養体の生体シグナルの検出方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、三次元に積層された細胞培養体の生体シグナルを容易に検出することができる。また、本発明によれば、例えば、組織としての応答あるいは組織中の細胞としての応答を生体外で評価することができるという効果を好ましくは奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1A及びBは、本発明における三次元細胞培養体の一例を示す模式図である。
【図2A】図2Aは、センサー粒子分散液の観察写真の一例である。
【図2B】図2Bは、センサー粒子分散液の観察写真の一例である。
【図2C】図2Cは、センサー粒子分散液の観察写真の一例である。
【図2D】図2Dは、センサー粒子分散液の観察写真の一例である。
【図2E】図2Eは、センサー粒子分散液の観察写真の一例である。
【図2F】図2Fは、センサー粒子分散液の観察写真の一例である。
【図3A】図3Aは、三次元細胞培養体の顕微鏡観察写真の一例である。
【図3B】図3Bは、三次元細胞培養体の顕微鏡観察写真の一例である。
【図3C】図3Cは、参考例の顕微鏡観察写真の一例である。
【図3D】図3Dは、参考例の顕微鏡観察写真の一例である。
【図4A】図4Aは、三次元細胞培養体の顕微鏡観察写真の一例である。
【図4B】図4Bは、三次元細胞培養体におけるセンサー粒子の蛍光スペクトルの一例である。
【図4C】図4Cは、参考例の細胞培養体の顕微鏡観察写真の一例である。
【図4D】図4Dは、参考例の細胞培養体におけるセンサー粒子の蛍光スペクトルの一例である。
【図5A】図5Aは、実施例で作製したカルシウムイオン応答センサー粒子の蛍光スペクトルの一例である。
【図5B】図5Bは、実施例で作製したpHセンサー粒子の蛍光スペクトルの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[三次元細胞培養体の生体シグナル]
本発明において、三次元細胞培養体の生体シグナルは、例えば、三次元に培養した細胞が産出する生体シグナルであって、三次元細胞培養体を構成する細胞が、単独又は二次元細胞培養時において産出する生体シグナル、及び、三次元細胞培養体の細胞として特異的に産出する生体シグナルを含む。さらに、三次元細胞培養体の生体シグナルは、その三次元細胞培養体のモデル対象(模倣対象)となる生体組織において産出される生体シグナルを含む。

【0012】
本発明は、積層された少なくとも2層の細胞層と、生体シグナルを検出可能なセンサー粒子とを含む三次元細胞培養体を用いれば、例えば、三次元に積層された細胞培養体において細胞から産出される生体シグナル等を観察できるという知見に基づく。すなわち、本発明は、積層された少なくとも2層の細胞層と、生体シグナルを検出可能なセンサー粒子とを含む三次元細胞培養体を準備すること、及び、前記センサー粒子を光学的に観察することを含む三次元細胞培養体の生体シグナルの検出方法に関する。

【0013】
本発明の三次元細胞培養体の生体シグナル検出方法によれば、例えば、生体組織において特異的に産出される生体シグナルの拡散位置を特定して定量的に検出することができ、それにより三次元細胞培養体がその生体組織と同等の組織体を形成し得たか否かの検査を行うことができる。また、発明の三次元細胞培養体の生体シグナル検出方法によれば、例えば、三次元細胞培養体を組織モデルとして使用し、様々な物質が生体組織に与える影響を調べることができる。本発明の三次元細胞培養体の生体シグナル検出方法は、例えば、従来の実験動物を用いた安全性や薬物動態に関する試験・検査の後であってヒトに投与する前の検査・スクリーニング、又は、実験動物を用いた試験・検査・スクリーニングの代替試験・検査・スクリーニングになり得るという効果を好ましくは奏する。

【0014】
本発明において、三次元細胞培養体の生体シグナルとして作用する物質としては、例えば、三次元細胞培養体を構成する細胞が単独又は二次元細胞培養時において生体シグナルとして産出する物質、三次元細胞培養体の細胞として生体シグナルとして特異的に産出する物質、そのモデル対象(模倣対象)となる生体組織において生体シグナルとして産出される物質を含み、例えば、ホルモン、オータコイド、神経伝達物質、細胞増殖因子、サイトカイン、生理活性物質、酵素、各種イオン等が挙げられる。より具体的には、例えば、一酸化窒素(NO)、Zn2+、Ca2+、OHラジカル、タンパク質チロシンホスファターゼ、活性酸素、Mg2+、Cl、カスパーゼ、ホスホジエラスターゼ、OCl、ヒスタミン、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン、過酸化水素等が挙げられる。

【0015】
[センサー粒子]
本発明において「生体シグナルを検出可能なセンサー粒子」とは、例えば、上述する生体シグナルとして作用する物質を検出できる粒子を含み、好適には、生体シグナル物質と特異的に反応又は結合することが可能であり、かつ、生体シグナル物質との反応又は結合によって蛍光特性等の発光特性が変化する粒子を含み得る。また、生体シグナルを検出可能なセンサー粒子は、細胞毒性のない粒子であることが好ましい。

【0016】
センサー粒子は、例えば、センサー機能を有する物質を局所的に濃縮できること、及び/又は、定量評価の感度を向上できること、及び/又は、局所的な変化を検出可能になるという観点から、センサー機能を有する物質とそれを担持する担持体とを含むことが好ましく、より好ましくはセンサー機能を有する物質が担持体内に担持されていることである。本発明において「センサー機能を有する物質」とは、例えば、生体シグナルとして作用する物質と特異的に反応又は結合することにより、励起波長、蛍光波長、蛍光強度等の蛍光特性が変化する機能性物質を含む。

【0017】
センサー機能を有する物質は、当業者であれば、検出する生体シグナル物質の種類に応じて適宜選択できる。NOを検出可能なセンサー機能を有する物質としては、例えば、4,5-diaminofluorescein(DAF-2)(H. Kojima et al., Anal. Chem. 1998, 70, 2446.)、diaminorhodamine(DAR-4M、DAR-4MAM)、2,3-diaminonaphtalene(DAN)、Diaminocyanine(DAC)、DAMBO-pH等が挙げられる。Ca2+を検出可能なセンサー機能を有する物質としては、例えば、1-[6-Amino-2-(5-carboxy-2-oxazolyl)-5-benzofuranyloxy]-2-(2-amino-5-methylphenoxy)ethane-N,N,N',N'-tetraacetic acid, pentapotassium salt(Fura-2(1))、1-[2-Amino-5-(2,7-dichloro-6-hydroxy-3-oxo-9-xanthenyl)phenoxy]-2-(2-amino-5-methylphenoxy)ethane-N,N,N',N'-tetraacetic acid(Fluo-3(2))(A. Takahashi et al., Physiol. Rev. 1999, 79, 1089.)等が挙げられる。Zn2+を検出可能なセンサー機能を有する物質としては、例えば、Dipicolycyanin(DIPCY)、1-[2-[5-(Dimethylamino)-1-naphthalenesulfonamido]ethyl]-1,4,7,10-tetraazacyclododecane, tetrahydrochloride, dihydrate(Dansylaminoethyl-cyclen)、ZnAF-2F、ZnAF 2 DA等が挙げられる。塩化物イオンを検出可能なセンサー機能を有する物質としては、例えば、N-Ethoxycarbonylmethyl-6-methoxyquinolinium bromide(MQAE)等が挙げられる。OHラジカル,パーオキシナイトライトを検出可能なセンサー機能を有する物質としては、例えば、Hydroxyphenyl Fluorescein(HPF)、Aminophenyl Fluorescein(APF)等が挙げられる。

【0018】
センサー粒子は、センサー機能を有する物質を担持体に安定に担持できるという観点から、センサー機能を有する物質を担持する担持体の表面に塩基性ポリマー層及び酸性ポリマー層が交互に積層されていることが好ましく、より好ましくは、塩基性ポリマー層及び酸性ポリマー層が交互に複数積層されていることであり、さらに好ましくは塩基性ポリマー層及び酸性ポリマー層をそれぞれ4層以上含み、それらが交互に形成されていることである。

【0019】
したがって、本発明におけるセンサー粒子の好ましい一形態は、センサー機能を有する物質と、センサー機能を有する物質を担持する担持体と、前記担持体の表面に交互に積層された塩基性ポリマー層及び酸性ポリマー層とを含み、前記担持体が多孔性粒子であるセンサー粒子である。この形態のセンサー粒子であれば、センサー粒子表面の電荷と後述する細胞外マトリックスとの電気的相互作用により、センサー粒子を安定に細胞外マトリックスに固定化することができ、三次元細胞培養体の表面及び内部における生体シグナルをより精度よく検出できる。より好ましい形態のセンサー粒子は、細胞が算出する低濃度(例えば、ナノモルオーダー)の生体シグナルの検出を可能とし得る。

【0020】
担持体表面の塩基性ポリマー層及び酸性ポリマー層は、例えば、交互積層(LBL)法を用い、センサー機能を有する物質を担持させた担持体を塩基ポリマー液及び酸性ポリマー液に交互に接触させて重層することにより作製できる。塩基性ポリマー及び酸性ポリマーとしては、例えば、生体適合性のものが好ましい。塩基性ポリマーとしては、例えば、キトサン、キチン、ポリリジン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。酸性ポリマーとしては、例えば、デキストラン硫酸、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等が挙げられる。また、塩基性ポリマーとして、正の電荷を有する高分子を使用してもよく、酸性ポリマーとして、負の電荷を有する高分子を使用してもよい。塩基性ポリマーと酸性ポリマーとの組み合わせとしては、例えば、ポリリジン及びデキストラン硫酸との組み合わせ、キトサンとデキストラン硫酸との組み合わせ等が挙げられ、中でも、生体適合性であり毒性が少なく、かつ、センサー機能を有する物質の流出を効率的に防止できる観点から、キトサンとデキストラン硫酸との組み合わせが好ましい。塩基性ポリマー及び酸性ポリマーは、生体シグナル物質を透過可能であり、好ましくは生分解性である。担持体は、センサー機能を有する物質を担持可能なものであればよく、好ましくは担持体の内部にセンサー機能を有する物質を担持可能なものであり、例えば、シリカ、アルミナ、リン酸カルシウム等の多孔性粒子が挙げられ、センサー粒子の担持安定性向上及び検出感度向上の観点からは、メソポーラスシリカが好ましい。

【0021】
センサー粒子におけるセンサー機能を有する物質の担持量は、三次元細胞培養体においてセンサー機能を有する物質を局所的に濃縮して配置するという観点から、センサー粒子1個当たり、0.1pg以上100μg以下が好ましく、より好ましくは1pg以上1μg以下である。

【0022】
センサー粒子の大きさ(粒径)は、細胞の大きさに応じて適宜決定できるが、細胞及び細胞層間の大きさの観点から、例えば、5μm以下であり、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下であり、生体シグナルを十分に検出し及び/又はセンサー機能を有する物質を担持させる観点から、例えば、200nm以上であり、好ましくは500nm以上であり、さらにセンサー粒子が細胞に取り込まれずに細胞層間に安定に保持させる観点から、より好ましくは1μm以上であり、さらに好ましくは1.6μm以上である。よって、センサー粒子の大きさ(粒径)は、センサー粒子の細胞間保持安定性向上の観点、並びに、センサー機能を有する物質の担持量向上の観点から、200nm~5μmが好ましく、500nm~3μmがより好ましく、1~2μmがさらに好ましく、1.6~2μmがさらにより好ましい。

【0023】
[細胞層]
三次元細胞培養体に積層される細胞層の数は特に制限されないが、ヒト等の生体組織とより同等の性質・機能を発揮させる観点から、3層以上が好ましく、より好ましくは4層以上、さらに好ましくは5層以上、さらにより好ましくは6層以上である。積層される細胞数の上限は特に制限されないが、例えば、100層以下、50層以下、40層以下、20層以下、10層以下等である。

【0024】
三次元細胞培養体に含まれる細胞としては、ヒト及び/又はヒト以外の動物の細胞及び/又はそれらに由来する細胞が挙げられる。ヒト以外の動物としては、特に限定されず、例えば、霊長類(アカゲザル等)、マウス、ラット、イヌ等が挙げられる。ヒトの生体組織とより同等の性質・機能を発揮させる観点からは、ヒトの細胞又はそれに由来する細胞が好ましい。

【0025】
細胞の種類も特に制限されず、肝細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞、表皮細胞、上皮細胞、乳腺細胞、筋細胞、神経細胞、組織幹細胞、胚性幹細胞、骨細胞及び免疫細胞等の接着性細胞が挙げられる。細胞は、一種類でもよいし、二種類以上を用いてもよい。

【0026】
三次元細胞培養体における細胞は、一種類でもよいし、二種類以上の細胞層であってもよい。例えば、血管モデルの三次元細胞培養体を形成する場合、最上層を血管内皮細胞の細胞層とし、その下の複数の細胞層を平滑筋細胞の細胞層とすることが考えられる。細胞層の組み合わせはこれらに限定されない。

【0027】
[細胞外マトリックス]
本発明における三次元細胞培養体は、細胞及びセンサー粒子の他に、細胞外マトリックスを含むことが好ましい。本発明において、細胞外マトリックスは、例えば、生体内で細胞の外の空間を充填し、骨格的役割、足場を提供する役割、及び/又は、生体因子を保持する役割等の機能を果たす生体内物質を含み、さらに、in vitro細胞培養において骨格的役割、足場を提供する役割、及び/又は、生体因子を保持する役割等の機能を果たしうる物質を含む。

【0028】
本発明における細胞外マトリックスは、形成作業の容易性、厚みの調整の容易性、及び、三次元細胞培養の効率化の観点から、RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子(以下、「RGD配列を有する第1物質」ともいう)と前記RGD配列を有する第1物質と相互作用するタンパク質若しくは高分子(以下、「相互作用する第2物質」ともいう)との組み合わせで形成される物質を含むこと、又は、正の電荷を有するタンパク質若しくは高分子(以下、「正の電荷を有する第1物質」ともいう)と負の電荷を有するタンパク質若しくは高分子(以下、「負の電荷を有する第2物質」ともいう)との組み合わせで形成される物質を含むことが好ましい。ここで、本発明において、「相互作用する」とは、例えば、静電的相互作用、疎水性相互作用、水素結合、電荷移動相互作用、共有結合形成、タンパク質間の特異的相互作用、ファンデルワールス力等により、化学的及び/又は物理的に、第1物質と第2物質とが結合、接着、吸着又は電子の授受が可能な程度に近接することを意味することが好ましい。

【0029】
(RGD配列を有する第1物質)
RGD配列を有する第1物質、すなわち、RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子における前記RGD配列とは、一般に知られている「Arg-Gly-Asp」配列をいう。本発明において「RGD配列を有する」とは、元来、RGD配列を有するものでもよいし、RGD配列が化学的に結合されたものであってもよい。RGD配列を有する第1物質は、生分解性であることが好ましく、また、水溶性であることが好ましい。RGD配列を有するタンパク質としては、例えば、従来公知の接着性タンパク質が挙げられ、具体的には、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、カドヘリン、コラーゲン等が挙げられる。また、RGD配列を有するタンパク質は、例えば、RGD配列を結合させたコラーゲン、ゼラチン、アルブミン、グロブリン、プロテオグリカン、酵素、抗体等であってもよい。RGD配列を有する高分子としては、例えば、天然由来高分子及び合成高分子が挙げられる。RGD配列を有する天然由来高分子としては、例えば、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、ポリリジン等のポリアミノ酸、ポリエステル、キチンやキトサン等の糖、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、及びこれらの共重合体等が挙げられる。RGD配列を有する合成高分子としては、例えば、直鎖型、グラフト型、くし型、樹状型、星型等のRGD配列を有するポリマー又は共重合体が挙げられる。前記ポリマー又は共重合体としては、例えば、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド-co-ポリアクリル酸)、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリε-カプロラクタム、ポリアクリルアミド、ポリ(メタクリル酸メチル-γ-ポリメタクリル酸オキシエチレン)等が挙げられる。

【0030】
(相互作用する第2物質)
相互作用する第2物質は、生分解性であることが好ましく、また、水溶性であることが好ましい。相互作用する第2物質のうち、RGD配列を有する第1物質と相互作用するタンパク質としては、例えば、コラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカン、インテグリン、酵素、抗体等が挙げられる。また、RGD配列を有する第1物質と相互作用する高分子としては、例えば、天然由来高分子及び合成高分子が挙げられる。RGD配列を有する第1物質と相互作用する天然由来高分子としては、例えば、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、エラスチン、ポリアミノ酸、ポリエステル、ヘパリンやヘパラン硫酸、デキストラン硫酸等の糖、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、及びこれらの共重合体等が挙げられる。RGD配列を有する第1物質と相互作用する合成高分子としては、例えば、直鎖型、グラフト型、くし型、樹状型、星型等のRGD配列を有するポリマー又は共重合体が挙げられる。前記ポリマー又は共重合体としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコール-グラフト-ポリアクリル酸、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド-co-ポリアクリル酸)、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリε-カプロラクタム、ポリアクリルアミド、ポリ(メタクリル酸メチル-γ-ポリメタクリル酸オキシエチレン)等が挙げられる。

【0031】
RGD配列を有する第1物質と相互作用する第2物質との組み合わせとしては、特に制限されず、相互作用する異なる物質の組み合わせであればよい。例えば、フィブロネクチンとゼラチン、ラミニンとゼラチン、フィブロネクチンとデキストラン硫酸、ポリリジンとエラスチン、フィブロネクチンとコラーゲン、ラミニンとコラーゲン、ビトロネクチンとコラーゲン、RGD結合コラーゲン又はRGD結合ゼラチンとコラーゲン又はゼラチン等の組み合わせが挙げられる。中でも、フィブロネクチンとゼラチン、ラミニンとゼラチンの組み合わせが好ましく、より好ましくはフィブロネクチンとゼラチンとの組み合わせである。なお、RGD配列を有する第1物質及び相互作用する第2物質は、それぞれ一種類ずつでもよいし、相互作用を示す範囲で二種類以上をそれぞれ併用してもよい。

【0032】
(正の電荷を有する第1物質)
正の電荷を有する第1物質のうち、正の電荷を有するタンパク質としては、例えば、水溶性タンパク質が好ましい。水溶性タンパク質としては、例えば、塩基性コラーゲン、塩基性ゼラチン、リゾチーム、シトクロムc、ペルオキシダーゼ、ミオグロビン糖が挙げられる。正の電荷を有する第1物質のうち、正の電荷を有する高分子としては、例えば天然由来高分子及び合成高分子が挙げられる。天然由来高分子としては、例えば、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、ポリアミノ酸、ポリエステル、キチンやキトサン等の糖、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、及びこれらの共重合体等が挙げられる。ポリアミノ酸としては、ポリ(α-リジン)、ポリ(ε-リジン)等のポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン等が挙げられる。合成高分子としては、例えば、直鎖型、グラフト型、くし型、樹状型、星型等のポリマー又は共重合体が挙げられる。前記ポリマー又は共重合体としては、例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリアリルアミンハイドロクロライド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアミドアミンデンドリマー等が挙げられる。

【0033】
(負の電荷を有する第2物質)
負の電荷を有する第2物質のうち、負の電荷を有するタンパク質としては、例えば、水溶性タンパク質が好ましい。水溶性タンパク質としては、例えば、酸性コラーゲン、酸性ゼラチン、アルブミン、グロブリン、カタラーゼ、β-ラクトグロブリン、チログロブリン、α-ラクトアルブミン、卵白アルブミン等が挙げられる。負の電荷を有する第2の物質のうち、負の電荷を有する高分子としては、天然由来高分子及び合成高分子が挙げられる。天然由来高分子としては、例えば、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、ポリ(βリジン)等のポリアミノ酸、デキストラン硫酸、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、及びこれらの共重合体等が挙げられる。合成高分子としては、例えば、直鎖型、グラフト型、くし型、樹状型、星型等のポリマー又は共重合体が挙げられる。前記ポリマー又は共重合体としては、例えば、ポリエステル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、末端カルボキシ化ポリエチレングリコール等が挙げられる。

【0034】
正の電荷を有する第1物質と負の電荷を有する第2物質との組み合わせとしては、例えば、キトサンとデキストラン硫酸との組み合わせ、ポリアリルアミンハイドロクロライドとポリスチレンスルホン酸との組み合わせ、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとポリスチレンスルホン酸との組み合わせ等が挙げられる。なお、正の電荷を有する第1物質及び負の電荷を有する第2物質は、それぞれ、一種類ずつでも良いし、相互作用を示す範囲で二種類以上をそれぞれ併用してもよい。

【0035】
また、本発明における細胞外マトリックスの成分としては、より生体の組織を模倣するという観点から、天然の(すなわち、生体内の)細胞外マトリックスに含まれる成分を使用することが好ましく、同様の観点から、ヒトの細胞外マトリックスの代替成分の一つとして使用されることがある、ヒトに存在しない成分であるキトサンを含まなくてもよい。

【0036】
本発明において、三次元細胞培養体は、例えば、複数種類の細胞を自在に積層でき、及び/又は、細胞層及び/又は細胞外マトリックスの厚みの制御が容易であるという観点から、前記三次元細胞培養体は、少なくとも細胞層間に細胞外マトリックスを含み、かつ、細胞含有溶液を配置して細胞層を形成すること、第1液と第2液とを交互に配置して細胞外マトリックスを形成すること、前記細胞外マトリックスの形成及び前記細胞層の形成を交互に行うことにより前記細胞層を積層すること、及び、積層された細胞層において最下層の細胞層の下、最上層の細胞層の上、及び細胞層間の少なくとも一層に、前記生体シグナルを検出可能なセンサー粒子を配置することを含む製法により製造されうるものであって、前記第1液の含有物と第2液の含有物との組み合わせが、RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子と前記RGDを有するタンパク質若しくは高分子と相互作用するタンパク質若しくは高分子との組み合わせ、又は、正の電荷を有するタンパク質若しくは高分子と負の電荷を有するタンパク質若しくは高分子の組み合わせであることが好ましい。本発明の三次元細胞培養体の生体シグナル検出方法において使用する三次元細胞培養体は、基体上に形成されたものであってもよい。前記基体としては、特に制限されず、例えば、ガラス、各種ポリマー、ろ紙、金属、ハイドロゲル等の従来公知の材料を適宜使用できる。

【0037】
三次元細胞培養体のうち基体と接触する層は、細胞外マトリックスの層であってもよく、細胞層であってもよく、基体を細胞層が足場とできない場合には、三次元細胞培養体を配置する領域に上述の細胞外マトリックスを配置するか、従来公知の細胞培養のためのコーティングを施すことが好ましい。

【0038】
本発明の三次元細胞培養体の生体シグナル検出方法において、センサー粒子は、三次元細胞培養体において最下層の細胞層の下、細胞層間、及び、最上層の細胞層の上の少なくとも一層に配置されていることが好ましい。生体シグナルの産出箇所や拡散箇所の特定が容易になるという観点から、最下層の細胞層の下、最上層の細胞層の上、及び、細胞層間のいずれか一層にセンサー粒子を配置してもよく、また、1つの三次元細胞培養体で生体シグナルの空間的拡散や動態像を観察できるという観点から、最下層の細胞層の下、最上層の細胞層の上、及び、細胞層間のうち複数の層にセンサー粒子を配置してもよい。

【0039】
本発明の三次元細胞培養体の生体シグナル検出方法において、生体シグナルの拡散箇所の特定が容易になるという観点から、最下層の細胞層の下、細胞層間、及び、最上層の細胞層の上のいずれか一層にセンサー粒子が配置された複数の三次元細胞培養体であって、センサー粒子が配置された層が異なる複数の三次元細胞培養体を準備し、複数の三次元細胞培養体それぞれについてセンサー粒子を光学的に観察することが好ましく、観察結果に基づき、生体シグナルの挙動解析を行ってもよい。

【0040】
複数の三次元細胞培養体を用いた三次元細胞培養体の生体シグナル検出方法について、細胞層が5層積層された三次元細胞培養体の場合を例にとり説明する。以下の例において、最下層を第1層、最上層を第5層とする。まず、第1層の細胞層の下、第1層の細胞層と第2層の細胞層との間、第2層の細胞層と第3層の細胞層との間、第3層の細胞層と第4層の細胞層との間、第4層の細胞層と第5層の細胞層との間、第5層の細胞層の上のいずれかにセンサー粒子が配置された6種類の三次元細胞培養体を準備する。ついで、6種類の三次元細胞培養体すべてに、例えば、被検物質等の何らかの刺激を与え、そして、センサー粒子を光学的に観察する。センサー粒子が検出可能な生体シグナルが、第5層の細胞から特異的に産出される生体シグナルである場合に、第1層の細胞層の下にセンサー粒子を配置した三次元細胞培養体において生体シグナルが検出された場合、第5層の細胞で産出された生体シグナルが、第1層まで拡散したことが確認できる。一方、第2層の細胞層と第3層の細胞層との間にセンサー粒子を配置した三次元細胞培養体では生体シグナルが検出されたが、第1層の細胞層の下にセンサー粒子を配置した三次元細胞培養体において生体シグナルが検出されなかった場合、生体シグナルは第2層の細胞層付近までは拡散されるが、それ以降の細胞層には拡散されないことが確認できる。

【0041】
本発明の三次元細胞培養体の生体シグナル検出方法において、センサー粒子の光学的な観察は、生体シグナルを可視化及び/又は数値化することを含むことが好ましい。センサー粒子の光学的な観察方法は、当業者であれば、例えば、含有されるセンサー粒子において適宜検出手段を選択できる。検出手段としては、例えば、蛍光顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡、蛍光分光光度計、共焦点分光光度計、紫外-可視分光光度計等が挙げられる。共焦点レーザー顕微鏡等を使用することにより、例えば、細胞が産出した生体シグナルを可視化してイメージングすることができ、好ましくは、細胞が産出した特定のシグナル分子の拡散及び/又は局在化を可視化することができる。このため、本発明の三次元細胞培養体の生体シグナル検出方法は、例えば、再生医療における分化誘導又は組織形成に関する研究における強力なツールになりうる。「生体シグナルを可視化する」とは、例えば、蛍光顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡等を用いて三次元細胞培養体におけるセンサー粒子を観察すること及び/又はその蛍光顕微鏡画像を撮像することを含む。また、「生体シグナルを数値化する」とは、例えば、蛍光分光光度計や共焦点分光光度計、紫外-可視分光光度計等を用いて三次元細胞培養体におけるセンサー粒子の蛍光スペクトルや吸収スペクトル等を測定することを含み、好ましくはこれらのスペクトルを用いて定量化することを含み得る。また、例えば、共焦点レーザー顕微鏡を用い、生体シグナルの拡散位置を特定し、その位置におけるスペクトルを測定することにより生体シグナルを定量化することもできる。

【0042】
本発明の三次元細胞培養体の生体シグナル検出方法及びそれに用いる三次元細胞培養体の一実施形態を図1A及びBを用いて説明する。但し、本発明は以下の実施形態に制限されない。

【0043】
図1Aは、本発明の三次元細胞培養体の生体シグナル検出方法に使用する三次元細胞培養体の構成の一例を概略的に示す図面である。図1Aに示す三次元細胞培養体1は、基体2上に形成されている。三次元細胞培養体1は、センサー粒子3、細胞層4~7、細胞外マトリックス層8~11を含み、細胞外マトリックス層8~11を介して細胞層4~7が積層されている。また、センサー粒子3は、細胞外マトリックス層8~11に配置されている。上述の通り、細胞層4~7における細胞の種類は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、センサー粒子3は、同一のセンサー機能を有するセンサー粒子であってもよいし、異なるセンサー機能を有するセンサー粒子であってもよい。異なるセンサー機能を有するセンサー粒子を使用した場合は、複数種類の生体シグナルを検出できる。異なるセンサー機能を有するセンサー粒子は、例えば、異なる種類の生体シグナルを検出するセンサー粒子、同一の生体シグナルを検出する異なる種類のセンサー粒子等を含む。

【0044】
つぎに、本発明の三次元細胞培養体の生体シグナル検出方法を、血管モデルにおける血管内皮細胞のシグナル伝達の検出を例にとり説明する。図1Bは、血管モデルの三次元細胞培養体の構成の一例であって、基体2上に4層の細胞層24~27が積層されている。最上層の細胞層27は血管内皮細胞の細胞層であり、その下の複数の細胞層24~26は平滑筋細胞の細胞層である。各細胞層の間には、細胞外マトリックス28~31及びNOを検出可能なセンサー粒子40が配置されている。血管内皮細胞から生体シグナル(NO)41が産出されると、NOは血管モデル内を伝達され(矢印)、NOを受け取ったセンサー粒子のみが発光する。このセンサー粒子の光学的変化を観察することにより、例えば、血管モデルにおいて血管内皮細胞からの生体シグナル(NO)の産出やシグナル伝達を局所的に検出することができる。また、生体シグナルを検出可能なセンサーが粒子状であるため、生体シグナルの局所的な検出がより容易になる。また、センサー粒子の光学的観察を経時的に行うことによって、例えば、生体シグナルの空間的拡散や動態像を観察できる。また、血管モデルにおいて血管内皮細胞からの生体シグナル(NO)の産出やシグナル伝達を局所的に検出することにより、例えば、血管モデルである三次元培養体の品質検査や、血管に対する薬剤等の影響を評価することができる。

【0045】
さらに、DAF-2の代わりにカルシウムイオンに応答するFura-4Fを本センサー粒子に担持させることで、血管モデルにおける平滑筋細胞の収縮や心筋モデルにおける心筋細胞の収縮を評価でき、動脈硬化や心筋梗塞に対する治療薬剤の応答評価に応用することができる。また、pH変化に応答するseminaphtho-rhodafluor-1-dye (SNARF-1)を本センサー粒子に担持させることで、癌や炎症反応への治療薬剤の応答を評価することができる。

【0046】
[評価方法]
本発明の三次元細胞培養体の生体シグナル検出方法は、例えば、三次元細胞培養体のモデル対象(模倣対象)となる生体組織において産出される生体シグナルを検出できるから、三次元細胞培養体の組織モデルとしての評価に使用できる。したがって、本発明は、さらにその他の態様において、本発明の三次元細胞培養体の生体シグナル検出方法を用いて生体シグナルを検出すること、及び、前記生体シグナルの検出結果に基づき、細胞の活動を解析することを含む三次元細胞培養体の評価方法に関する。本発明の三次元細胞培養体の評価方法は、例えば、再生医療における分化誘導又は組織形成に関する研究における強力なツールになりうる。

【0047】
本発明の三次元細胞培養体の評価方法において、細胞活動の解析は、例えば、生体シグナルの拡散位置の特定、生体シグナルの定量化等を含む。本発明の三次元細胞培養体の評価方法は、生体組織において特異的に産出される生体シグナルの拡散位置を特定すること、及び/又は、特異的に産出される生体シグナルを定量的に検出することを含み、必要に応じて、これらの結果に基づき三次元細胞培養体がその生体組織と同等の組織体を形成し得たか否かを評価することを含んでいてもよい。拡散位置の特定及び定量化は、例えば、蛍光顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡、蛍光分光光度計、共焦点分光光度計、紫外-可視分光光度計等により行うことができる。

【0048】
また、本発明は、さらにその他の態様において、三次元細胞培養体と、被検物質である化合物、医薬組成物、化粧品及び食品からなる群から選択される物質とを接触させること、及び、本発明の三次元細胞培養体の生体シグナル検出方法を用いて三次元細胞培養体の生体シグナルを検出することを含む被検物質の生体に対する評価方法に関する。本発明の評価方法によれば、例えば、医薬、製薬、化粧品、食品及び環境等の分野における安全性や薬物動態に関する試験・検査・スクリーニングを行うことができる。また、本発明の被検物質の生体に対する評価方法によれば、例えば、それらの試験・検査・スクリーニングについてヒトの生体をより反映した信頼性の高い結果を得られるという効果を好ましくは奏する。本発明の被検物質の生体に対する評価方法において、生体シグナルの検出は、例えば、生体シグナルの拡散位置を特定すること、生体シグナルを定量化すること等を含む。本発明において「被検物質の生体に対する評価」とは、例えば、被検物質が生体に与える影響を含む。

【0049】
生体シグナルの検出は、例えば、三次元細胞培養体と被検物質との接触前、接触時、接触後のいずれにおいて行ってもよいし、すべてにおいて行ってもよく、また、接触前から接触後において経時的に行ってもよい。

【0050】
[検出キット]
本発明において「検査キット」とは、所定の検査に用いる試薬、材料、用具、及び装置、並びに、その検査についての説明書(取扱説明書)の少なくとも1つを含む製品を含む。本発明は、その他の態様において、本発明の検出方法に用いる検出キット(以下、「本発明の検出キット」ともいう)であって、積層された少なくとも2層の細胞層と、生体シグナルを検出可能なセンサー粒子とを含む三次元細胞培養体を有する検出キットに関する。本発明の検出キットによれば、本発明の三次元細胞培養体の生体シグナル検出方法をより簡便に行うことができる。本発明の検出キットは、例えば、細胞機能の可視化や、拡散位置の特定等の生体シグナルのイメージング、定量解析等に使用できる。検出キットに含まれる三次元細胞培養体は、上述した本発明の検出方法で使用するものと同様である。また、前記検出キットは、さらに、三次元細胞培養体の生体シグナルの検出方法等が記載された取扱説明書等を含んでいてもよい。

【0051】
[三次元細胞培養体の製造方法]
本発明は、さらにその他の態様において、三次元細胞培養体の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)であって、細胞含有溶液を配置して細胞層を形成すること、第1液と第2液とを交互に配置して細胞外マトリックスを形成すること、前記細胞外マトリックスの形成及び前記細胞層の形成を交互に行うことにより前記細胞層を積層すること、及び、最下層の細胞層の下、細胞層間、及び、最上層の細胞層の上の少なくとも一層に、生体シグナルを検出可能なセンサー粒子を配置することを含み、前記第1液の含有物と第2液の含有物との組み合わせが、RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子と前記RGDを有するタンパク質若しくは高分子と相互作用するタンパク質若しくは高分子との組み合わせ、又は、正の電荷を有するタンパク質若しくは高分子と負の電荷を有するタンパク質若しくは高分子の組み合わせである、三次元細胞培養体の製造方法に関する。

【0052】
本発明の製造方法によれば、本発明の三次元細胞培養体の生体シグナル検出方法に使用可能な積層された少なくとも2層の細胞層と、生体シグナルを検出可能なセンサー粒子とを含む三次元細胞培養体を製造できる。したがって、本発明は、さらにその他の態様において、本発明の製造方法により製造された、積層された少なくとも2層の細胞層と、生体シグナルを検出可能なセンサー粒子とを含む三次元細胞培養体に関する。本発明の三次元細胞培養体において、センサー粒子は、三次元細胞培養体において最下層の細胞層の下、細胞層間、及び、最上層の細胞層の上の少なくとも一層に配置されていることが好ましい。

【0053】
[細胞外マトリックス形成]
本発明の製造方法における細胞外マトリックス形成は、例えば、基体上の細胞層に、第1液と第2液とを交互に配置することにより行う。第1液及び第2液の配置は、例えば、第1液及び第2液を接触させることにより行うことができる。例えば、塗布、浸漬、滴下、噴霧等により行うことができる。

【0054】
第1液及び第2液を1回ずつ配置して形成される細胞外マトリックス薄膜の厚みは、約1~20nmであり、第1液及び第2液の配置を繰り返し行うことによって所望の厚みの細胞外マトリックス層を形成できる。また、第1液及び第2液のそれぞれに含まれる第1物質及び第2物質の含有量によって形成する細胞外マトリックス層の厚みを調節してもよい。これらの方法により、例えば、厚みが1~1000nm、好ましくは1~300nm、より好ましくは5~100nmの細胞外マトリックス層を形成できる。

【0055】
第1液に含有される含有物は、上述したRGD配列を有する第1物質及び正の電荷を有する第1物質から選択して使用できる。第2液に含有される含有物は、上述した相互作用する第2物質及び負の電荷を有する第2物質から選択して使用できる。第1液の含有物及び第2液の含有物の好ましい組み合わせも上述の通りである。ここで、第1液の含有物又は第2液の含有物とは、各液の液媒体に溶解及び/又は分散して含まれる物質をいう。

【0056】
第1液及び第2液は、例えば、上記第1物質及び上記第2物質をそれぞれ溶媒又は分散媒体に溶解又は分散させることによって調製できる。第1液における第1物質の含有量及び第2液における第2物質の含有量は、例えば、0.0001~1質量%が好ましく、より好ましくは0.01~0.5質量%、さらに好ましくは0.02~0.1質量%である。

【0057】
第1液及び第2液における溶媒又は分散媒体(以下、単に「溶媒」ともいう)は、特に制限されないが、水や緩衝液等の水性溶媒が挙げられる。緩衝液としては、例えば、Tris-HCl緩衝液等のTris緩衝液、リン酸緩衝液、HEPES緩衝液、クエン酸-リン酸緩衝液、グリシルグリシン-水酸化ナトリウム緩衝液、Britton-Robinson緩衝液、GTA緩衝液等が使用できる。溶媒のpHは、特に制限されないが、例えば、3~11であり、好ましくは6~8、より好ましくは7.2~7.4である。

【0058】
第1液及び第2液は、さらに、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、リン酸水素ナトリウム、硫酸マグネシウム、コハク酸ナトリウム等の塩を含有していてもよい。塩は、一種類でもよいし二種類以上含有していてもよい。第1液及び第2液の双方が塩を含有していてもよいし、いずれか一方が塩を含有していてもよい。塩濃度は、特に制限されないが、例えば、1×10-6~2Mであり、好ましくは1×10-4~1M、より好ましくは1×10-4~0.05Mである。

【0059】
第1液及び第2液は、必要に応じて、さらに、例えば、細胞成長因子、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、生理活性ペプチド、疾患の治療剤、予防剤、抑制剤、抗菌剤、抗炎症剤等の医薬組成物等を含有してもよい。

【0060】
[細胞層形成]
本発明の製造方法における細胞層形成は、基体上の所定の領域及び/又は所定の領域に形成された細胞外マトリックスに細胞含有溶液を配置することにより行う。細胞含有溶液の配置は、第1液及び第2液と同様にして行うことができる。

【0061】
細胞層形成において、細胞含有溶液の配置後、一定時間インキュベーションすることが好ましい。このインキュベーションにより、配置された細胞が二次元(平面方向)に増殖して単層の細胞を形成しやすくなる。インキュベーションの条件は、特に制限されず、細胞に応じて適宜決定できる。一般的な条件としては、温度は、例えば、4~60℃、好ましくは20~40℃、より好ましくは30~37℃であり、時間は、例えば、1~168時間、好ましくは3~24時間、より好ましくは3~12時間である。また、細胞培養に使用する培地も特に制限されず、細胞に応じて適宜決定できる。例えば、Eagle’s MEM培地、Dulbecco’s Modified Eagle培地(DMEM)、Modified Eagle培地(MEM)、Minimum Essential培地、RDMI、GlutaMax培地、無血清培地等が使用できる。

【0062】
細胞含有溶液おける細胞濃度は、細胞層形成の効率化の観点から、(1.0)×10~(1.0)×10cells/mLが好ましく、より好ましくは(1.0)×10~(1.0)×10cells/mL、さらに好ましくは(1.0)×10~(1.0)×10cells/mLである。細胞含有溶液の媒体としては、上述の培地、及び/又はトリス緩衝液、リン酸緩衝液、HEPES、PBS等が使用できる。

【0063】
[センサー粒子の配置]
センサー粒子は、例えば、第1液、第2液及び細胞含有溶液に含有させて三次元細胞培養体内に配置してもよいし、その他の溶媒に分散させて、例えば、最下層の細胞層の下、細胞層間、及び、最上層の細胞層の上に配置してもよい。センサー粒子を分散させる溶媒は、例えば、第1液、第2液及び細胞含有溶液に使用する上記溶媒として上述して溶媒が使用できる。センサー粒子の配置箇所は、目的に応じて適宜決定でき、例えば、全体に三次元細胞培養体全体にまんべんなく配置してもよいし、局所的に配置してもよい。また、センサー粒子は、同一のセンサー機能を有するセンサー粒子であってもよいし、異なるセンサー機能を有するセンサー粒子であってもよい。異なるセンサー機能を有するセンサー粒子を使用した場合は、複数種類の生体シグナルを検出できる。

【0064】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されない。
【実施例】
【0065】
[センサー粒子の作製]
担持体としてメソポーラスシリカ粒子(平均粒径:1.6μm)、センサー機能を有する物質としてNO検出発光物質である4,5-diaminofluorescein(DAF-2)を使用した。まず、メソポーラスシリカ粒子を、25μM DAF-2溶液に24時間浸漬した。これにより、DAF-2をメソポーラスシリカ粒子内部に担持させた。ついで、DAF-2を担持したメソポーラスシリカ粒子を洗浄し、そして、キトサン溶液(1mg/mLキトサン、1M NaCl、pH1)とデキストラン硫酸溶液(1mg/mLデキストラン硫酸、1M NaCl、pH7)とに交互に浸漬させた。キトサン溶液とデキストラン硫酸溶液との交互浸漬を6回繰り返し、これにより、メソポーラスシリカ粒子表面に、キトサン層とデキストラン硫酸層が交互に6層ずつ積層されたセンサー粒子を作製した。シリカ表面に積層されたキトサン/デキストラン硫酸層の厚みは、約130nmであり、得られたセンサー粒子の平均粒径は、約1.8μmであった。
【実施例】
【0066】
上記センサー粒子によりNOを検出できることを確認した。まず、NOドナーとなるNOC-7(1-Hydroxy-2-oxo-3-(N-methyl-3-3aminopropyl)-3-methyl-1-triazene)を50mM トリス緩衝液(pH7.4)に溶解し、NOC-7溶液(50nM NOC-7)を調製した。ついで、NOC-7溶液をセンサー粒子分散液(0.5M NaCl、pH7)に添加し、NOC-7溶液の添加前後におけるセンサー粒子分散液を位相差顕微鏡及び蛍光顕微鏡で観察した。その結果を、図2A~Fに示す。図2A~Cは、それぞれ、NOC溶液添加前のセンサー分散液のデジタルカメラ写真、位相差顕微鏡写真(×40)、蛍光顕微鏡写真(×40)である。図2D~Fは、それぞれ、NOC溶液添加後のセンサー分散液の蛍光顕微鏡写真デジタルカメラ写真、位相差顕微鏡写真(×40)、蛍光顕微鏡写真(×40)である。図2A~Fに示すように、センサー粒子が、NO存在下で強い蛍光を示すことから、上記センサー粒子によりNOを検出できることが確認できた。
【実施例】
【0067】
[三次元細胞培養体の作製]
以下のようにして、基体上にヒト平滑筋細胞(SMC)上にヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)が積層され、SMC層とHUVEC層との間に細胞外マトリックス及びセンサー粒子が配置された。三次元細胞培養体を作製した。まず、基体上に、下地膜用溶液(0.2mg/mLフィブロネクチン、50mMトリス緩衝液(pH7.4))を浸漬して基体上に下地膜を形成した。つぎに、下地膜上に、SMC細胞含有液(4.0×10cells/mL ヒト平滑筋細胞、50mMトリス緩衝液(pH7.4))を配置し、細胞培養インキュベーター(37℃、5%CO)で一晩培養することで細胞を接着させた(SMC層)。つぎに、細胞外マトリックス形成用第1液(0.2mg/mLフィブロネクチン、50mMトリス緩衝液(pH7.4))及び細胞外マトリックス形成用第2液(0.2mg/mLゼラチン、50mMトリス緩衝液(pH7.4))を浸漬した。第1液(フィブロネクチン)及び第2液(ゼラチン)の浸漬を交互に10回繰り返すことで、SMC層表面にフィブロネクチン-ゼラチンの薄膜(細胞外マトリックス)を形成した。その後すぐに、細胞外マトリックス上に、センサー粒子を配置し、さらに、HUVEC細胞含有液(6.0×10cells/mL ヒト臍帯静脈内皮細胞、50mMトリス緩衝液(pH7.4))を配置し、細胞培養インキュベーター(37℃、5%CO)で一晩培養することで細胞を接着させた(HUVEC層)。
【実施例】
【0068】
また、参考例として、基体上にHUVEC層が形成され、その表面にセンサー粒子が配置された細胞培養体を作製した。まず、基体上に、下地膜用溶液を浸漬して基体上に下地膜を形成した。つぎに、下地膜上に、HUVEC細胞含有液を配置し、細胞培養インキュベーター(37℃、5%CO)で一晩培養することで細胞を接着させた(HUVEC層)。そして、HUVEC層表面にセンサー粒子を配置した。なお、下地膜用溶液及びHUVEC細胞含有液は、上述のものを使用した。
【実施例】
【0069】
得られた三次元細胞培養体及び参考例の細胞培養体を位相差顕微鏡及び共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その顕微鏡写真を図3A~Dに示す。なお、F-アクチンはファロイジン ローダミンで、細胞核はDAPI(4’6-diamino-2-2phenylidole)でそれぞれ染色した。図3Aは、三次元細胞培養体の位相差顕微鏡写真(×60)を示し、図3Bは、三次元細胞培養体の共焦点蛍光顕微鏡写真(×60)を示し、図3Cは、参考例の細胞培養体の位相差顕微鏡写真(×60)を示し、図3Dは、参考例の細胞培養体の共焦点蛍光顕微鏡写真(×60)を示す。なお、図3Bの写真は、SMC層及び層間に配置したセンサー粒子を観察できるように焦点を合わせて撮影した。図3A及びCにおいて、白矢印で示す円形のものがセンサー粒子であり、図3B及びDにおいて、黄緑色に発光しているのがセンサー粒子である。
【実施例】
【0070】
図3Dの写真には、HUVEC由来の敷石状の細胞とセンサー粒子とが確認された。一方、図3Bの写真には、SMCに特徴的な伸長した形態の細胞及びセンサー粒子が確認されたが、SMC層上に積層されているHUVEC由来の敷石状の細胞は確認できなかった。このように、図3Bの写真ではHUVEC層が確認できなかったことから、センサー粒子は、SMC層及びHUVEC層との間に担持されていることが確認できた。また、図3B及びDに示すように、SMC及びHUVECのいずれの細胞についても、細胞の形態に変化が見られていなかった。このことから、三次元細胞培養体に配置したセンサー粒子は、細胞(SMC及びHUVEC)に影響を与えず、細胞毒性がないことが確認できた。
【実施例】
【0071】
[三次元細胞培養体の生体シグナルの検出]
NOC-7溶液を上記三次元細胞培養体及び参考例の細胞培養体に滴下し、センサー粒子の共焦点レーザー顕微鏡を用いた観察及び蛍光スペクトル測定を行った。その結果を図4A~Dに示す。なお、NOC-7溶液は、センサー粒子の検出に使用したものと同様のものを使用した。図4Aは、三次元細胞培養体の共焦点蛍光顕微鏡写真(×40)を示し、図4Bは、三次元細胞培養体の蛍光スペクトルを示し、図4Cは、参考例の細胞培養体の共焦点蛍光顕微鏡写真(×40)を示し、図4Dは、参考例の細胞培養体の蛍光スペクトルを示す。なお、図4Aの写真は、SMC層、及び、SMC層とHUVEC層との間に配置したセンサー粒子を観察できるように焦点を合わせて撮影した。
【実施例】
【0072】
図4Aの写真には、SMCに特徴的な伸長した形態の細胞及びセンサー粒子が確認できたが、SMC層上に積層されたHUVEC由来の敷石状の細胞は確認できなかった。このため、センサー粒子は、SMC層及びHUVEC層との間に担持されていることが確認できた。また、黄緑色の蛍光を示していることから、層間に担持したセンサー粒子によってNOを検出できることが確認できた。
【実施例】
【0073】
図4B及びDのいずれにおいても、515nm付近にピークが現れた。このピークは、センサー粒子に担持されたDAF-2がNOを受け取ったことによりDAF-2T(triazolflorescein)に変化したことを示す。したがって、三次元細胞培養体に配置したセンサー粒子によりNOを検出できること、センサー粒子のスペクトルを測定できることが確認できた。また、三次元細胞培養体に配置したセンサー粒子内のDAF-2T(センサー機能を有する物質)のスペクトルを測定できることから、三次元細胞培養体の生体シグナルを定量的に評価できると考えられる。
【実施例】
【0074】
[カルシウム応答センサー粒子及びpH応答センサー粒子の作製]
担持体としてメソポーラスシリカ粒子(平均粒径:1.6μm)、センサー機能を有する物質としてカルシウムイオン応答物質であるFura-4Fと、pH応答物質であるSNARF-1を使用した。まず、メソポーラスシリカ粒子を、24μM Fura-4F溶液とSNARF-1溶液に、各24時間ずつ浸漬した。これにより、各応答物質をメソポーラスシリカ粒子内部に担持させた。ついで、各応答物質を担持したメソポーラスシリカ粒子を洗浄し、そして、キトサン溶液(1mg/mLキトサン、1M NaCl、pH1)とデキストラン硫酸溶液(1mg/mLデキストラン硫酸、1M NaCl、pH7)とに交互に浸漬させた。キトサン溶液とデキストラン硫酸溶液との交互浸漬を6回繰り返し、これにより、メソポーラスシリカ粒子表面に、キトサン層とデキストラン硫酸層が交互に6層ずつ積層されたセンサー粒子を作製した。シリカ表面に積層されたキトサン/デキストラン硫酸層の厚みは、約130nmであり、得られたセンサー粒子の平均粒径は、約1.8μmであった。
【実施例】
【0075】
上記センサー粒子によりカルシウムイオンとpH変化を検出できることを確認した。1Mの塩化カルシウム溶液(50mM トリス緩衝液、pH7.4)に、Fura-4Fを担持したセンサー粒子を濃度がおよそを1mg/mLになるように溶解し、蛍光スペクトルを測定した。その結果を図5Aに示す。カルシウムイオンが存在する時だけ発光することが確認された。また、pH変化を以下の手順で検出した。pHを5.3および8.5に調整した50mM 燐酸二水素カリウム緩衝液に、1mg/mLの濃度でSNARF-1を担持したセンサー粒子分散液を溶解し、蛍光スペクトルを測定した。その結果を図5Bに示す。酸性条件下(pH5.3)では580nmに強い蛍光が観察され、また、塩基性条件下(pH8.5)では640nmに蛍光が観察された。これらの結果より、カルシウムイオンやpH変化に応答して蛍光発光するセンサー粒子の作製が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0076】
上述した通り、本発明は、例えば、医薬、製薬、化粧品、食品、再生医療、環境保全等の分野において有用である。
【符号の説明】
【0077】
1,21 三次元細胞培養体
2 基体
3,40 センサー粒子
4~7,24~27 細胞層
8~11,28~31 細胞外マトリックス
41 生体シグナル(NO分子)
図面
【図1】
0
【図4B】
1
【図4D】
2
【図5A】
3
【図5B】
4
【図2A】
5
【図2B】
6
【図2C】
7
【図2D】
8
【図2E】
9
【図2F】
10
【図3A】
11
【図3B】
12
【図3C】
13
【図3D】
14
【図4A】
15
【図4C】
16