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明細書 :色彩画像撮像・解析システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5888639号 (P5888639)
公開番号 特開2012-063353 (P2012-063353A)
登録日 平成28年2月26日(2016.2.26)
発行日 平成28年3月22日(2016.3.22)
公開日 平成24年3月29日(2012.3.29)
発明の名称または考案の名称 色彩画像撮像・解析システム
国際特許分類 G01N  21/88        (2006.01)
G01N  21/85        (2006.01)
G01N  21/87        (2006.01)
A01G   7/00        (2006.01)
FI G01N 21/88 J
G01N 21/85 A
G01N 21/87
A01G 7/00 603
請求項の数または発明の数 6
全頁数 27
出願番号 特願2011-179268 (P2011-179268)
出願日 平成23年8月18日(2011.8.18)
優先権出願番号 2010182658
優先日 平成22年8月18日(2010.8.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年8月6日(2014.8.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
発明者または考案者 【氏名】亀岡 孝治
【氏名】橋本 篤
【氏名】木村 佳嗣
【氏名】山本 恭輔
審査官 【審査官】松谷 洋平
参考文献・文献 特開平09-318547(JP,A)
特開2005-188978(JP,A)
特開平03-226658(JP,A)
特開2009-025205(JP,A)
Junding Sun, Ximin Zhang, Jiangtao Cui, Lihua Zhou,Image retrieval based on color distribution entropy,Pattern Recognition Letters,2006年,Volume 27, Issue 10,Pages 1122-1126
調査した分野 G01N 21/84-21/958
特許請求の範囲 【請求項1】
(A)色彩画像撮像システム及び/又は(B)色彩画像解析システムからなる色彩画像撮像・解析システムであって、
(A)色彩画像撮像システムは、円筒型拡散光源を有し、該光源内に対象物を設置すること及び該光源の円筒底面中心部に垂直な軸の上部にカメラが設置されていること
(B)色彩画像解析システムは、CDE(Color Distribution Entropy)に基づく画像解析工程と、Color Histogramに基づく色彩解析工程とからなり、
前記画像解析工程において対象物画像の長径の両端を含むアニュラーサークルを最大アニュラーサークルとすること及びCDEの誤差を抑制するアニュラーサークルの分割数Nを決定すること
を特徴とする色彩画像撮像・解析システム。
【請求項2】
請求項記載の色彩画像撮像・解析システムを用いてなる生体鉱物の品質管理及び/又は品質評価システム。
【請求項3】
請求項記載の色彩画像撮像・解析システムを用いてなる農産物の品質管理及び/又は品質評価システム。
【請求項4】
請求項記載の色彩画像撮像・解析システムを用いてなる農産物の栽培診断装置。
【請求項5】
標準的な農産物とのCDEの類似度、形状の類似度及び大きさの類似度を評価指標とすることを特徴とする請求項3に記載の農産物の品質管理及び/又は品質評価システム。
【請求項6】
標準的な農産物とのCDEの類似度、形状の類似度及び大きさの類似度を評価指標とすることを特徴とする請求項4に記載の農産物の栽培診断装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、色彩画像撮像・解析システムに関する。詳しくは、色彩画像撮像システム及び/又は色彩画像解析システムに関する。さらに詳しくは、対象物の表面反射を除去又は軽減する色彩画像撮像システム及び/又はColor HistogramとCDEに基づく色彩画像解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
真珠等の生体鉱物の品質管理や評価、農産物の栽培・品質管理や評価等は、熟練者の経験や勘に頼ることが多く、明確な判断要因や基準を定量化することは困難である。
特に、農産物の色彩や形状、大きさ等の外観は食味・食感とともに農産物の商品価値を決める重要な品質要素である。又、少子化や食の多様化等にともなってカット品の流通・販売が盛んになっており、農産物の内観も重要視されている。上記の通り、農産物の栽培・品質管理や外観・内観評価等、生育過程の時系列モニタリングは、現場での熟練者の目視によって行われ、経験や勘に基づく判断要因や判断基準に依存しているため、客観性や再現性が課題となっている。
さらに、最近では農業の産業化が注目されており、植物工場等の導入が検討されているが、環境制御が中心となっている。農産物を製品としてとらえた場合、農産物の加工業者や消費者が希望する物理的特性(スペック)の構築、その数値化を含めた定量的評価の確立、ライン設計等が課題となっている。
【0003】
そこで、光学機器を用いた管理や評価の試みがなされているが、そもそも人の目による管理や評価は、部分的な評価の足し合わせや、画像処理といったアルゴリズムによるコンピュータ・ソフトウェア上の処理ではなく、全体の印象も含めて行われることが多い。そのため、分光測色計等を用いた部分的な評価ではなく,画像解析(色彩解析や形状解析)による人の目に近い管理や評価の構築が望まれている。
【0004】
対象物の表面色を解析するためには、対象物の表面画像をいかに忠実に撮像するかが重要となる。このために、カメラシステム、照明システムが極めて重要で、かつ画像撮像部を外光から遮蔽することが重要である。特に、表面反射を除去又は軽減することが課題であり、そのため拡散光源が用いられてきている。拡散光源を用いた撮像方法として、直接サーキュラー型の拡散光源をカメラに取り付け撮影する方法が知られている他、発明者の一部は、もともと拡散的な光源である標準蛍光灯からの光を、拡散反射板を用いて更に拡散光の程度を高める方法を構築した(非特許文献1)。
【0005】
しかしながら、真珠等の生体鉱物は表面光沢が顕著であること、農産物は表面光沢に加え表面の色むらや凹凸も顕著であることから、上記従来技術では、対象物の表面反射を除去又は軽減した色彩画像計測は困難であった。
【0006】
農産物の外観・内観品質の中でも、特に色彩は、色相の質的な変異、彩度の量的な変異、色彩の空間分布等が存在し、品質を決める重要な指標であるため、様々な色彩解析手法が開発されている。発明者の一部は、HSL 色空間を用いたイチゴ表面および断面における色彩画像解析により、品種識別の可能性を示した(非特許文献2)。又、非特許文献3には、L*a*b*表色系の内、a*の値に基づきイチゴの色彩解析を行い、形状及びサイズの解析結果と組み合わせることで、イチゴの等級判定を行う方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、非特許文献2及び3では、色彩の全体値や出現頻度だけが解析対象とされており、イチゴの表面および断面における果実色の空間的な分布情報が破棄されている問題点があった。
【先行技術文献】
【0008】

【非特許文献1】元永佳孝, 亀岡孝治,橋本篤, 農業機械学会誌, 59 (4), 21-28(1997).
【非特許文献2】H. Kitamura, T. Mori, A. Hashimoto, and T. Kameoka,Distinction of strawberry cultivars based on fruit characters evaluated byimage analysis, Jido Seigyo Rengo Koenkai(CD-ROM), 48, L2-15 (2005).
【非特許文献3】X. Liming, and Z. Yanchao, Automated strawberry grading systembased on image processing, Computers and Electronics in Agriculture, 71, S32–S39 (2010).
【非特許文献4】J. Sun, X. Zhanng, J. Cui, L.Zhou, Pattern Recognition Letters, 27, 1122-1126 (2006).
【非特許文献5】C. E. Shannon, A mathematicaltheory of communication, Bell Syst Tech (1948).
【非特許文献6】A. Hashimoto, H. Kondou, Y.Motonaga, H. Kitamura, K. Nakanishi, T. Kameoka, 1st World Congress ofComputers in Agriculture and Natural Resources, Zazueta, F. and Xin, J. ed.,70-77 (2001).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、人の目に近い、生体鉱物の品質管理や評価、農産物の栽培・品質管理や評価を課題とし、色彩画像撮像・解析システムを提供する。詳細には、対象物の表面反射を除去又は軽減する色彩画像撮像システムを提供する。又、Color HistogramとCDEに基づく色彩画像解析システムを提供する。
本発明は、当該色彩画像撮像撮像・解析システムを用いた生体鉱物の品質管理・評価装置を提供する。又、当該色彩画像撮像撮像・解析システムを用いた農産物の品質管理・評価装置を提供する。更に、当該色彩画像撮像撮像・解析システムを用いた農産物の栽培診断方法をも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の色彩画像撮像・解析システムは、
<1>(A)色彩画像撮像システム及び/又は(B)色彩画像解析システムからなる色彩画像撮像・解析システムであって、
(A)色彩画像撮像システムは、円筒型拡散光源を有し、該光源内に対象物を設置すること及び該光源の円筒底面中心部に垂直な軸の上部にカメラが設置されていること
(B)色彩画像解析システムは、CDE(Color Distribution Entropy)に基づく画像解析工程と、Color Histogramに基づく色彩解析工程とからなり、
前記画像解析工程において対象物画像の長径の両端を含むアニュラーサークルを最大アニュラーサークルとすること及びCDEの誤差を抑制するアニュラーサークルの分割数Nを決定すること
を特徴とする。
<2>生体鉱物の品質管理及び/又は品質評価システムであって、前記<1>記載の色彩画像撮像・解析システムを用いることを特徴とする。
<3>農産物の品質管理及び/又は品質評価システムであって、前記<1>記載の色彩画像撮像・解析システムを用いることを特徴とする。
<4>農産物の栽培診断装置であって、前記<1>記載の色彩画像撮像・解析システムを用いることを特徴とする。
<5>前記<3>記載の農産物の品質管理及び/又は品質評価システムであって、標準的な農産物とのCDEの類似度、形状の類似度及び大きさの類似度を評価指標とすることを特徴とする。
<6>前記<4>農産物の栽培診断装置であって、標準的な農産物とのCDEの類似度、形状の類似度及び大きさの類似度を評価指標とすることを特徴とする。

【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、対象物の表面反射を除去又は軽減する色彩画像撮像撮像・解析システムを提供することができる。又、Color HistogramとCDEに基づく色彩画像解析システムを提供する。
本発明によれば、当該色彩画像撮像撮像・解析システムを用いた生体鉱物の品質管理・評価装置を提供することができる。又、当該色彩画像撮像撮像・解析システムを用いた農産物の品質管理・評価装置を提供することができる。更に、発明によれば、当該色彩画像撮像撮像・解析システムを用いた農産物の栽培診断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の色彩画像撮像システムの一例を示す概略図。
【図2】本発明の色彩画像撮像システムの一例を示す設計図。
【図3】本発明の色彩画像撮像システムの一例を示す外観図。
【図4】SPIRAL VITALIGHTの可視分光スペクトル。
【図5】拡散円筒を構成する紙の本発明の可視分光スペクトル。
【図6】拡散円筒内の照度分布。
【図7】対象物の撮像画像。(a)本発明の色彩画像撮像システムを用いずに撮像した画像、(b)本発明の色彩画像撮像システムを用いて撮像した画像。
【図8】アニュラーサークルの設定。(a)従来法、(b)本発明。
【図9】アニュラーサークルのN数決定に用いたモデル画像。(b)は(a)の70%縮小、(c)は(a)の50%縮小。
【図10】Color binと色度変化の関係を示す図。
【図11】解析プログラムのフローチャート。
【図12】等級別の真珠の撮像画像。
【図13】等級別の真珠のColor Histogram。
【図14】拡散円筒の直径を変えてAランクの真珠を撮像した画像。
【図15】アニュラーサークルのN数決定に用いたイチゴ画像。(b)は(a)の60%縮小、(c)は(a)の150%拡大。
【図16】イチゴ表面の色彩画像。
【図17】イチゴのCDEの類似度を示す図。
【図18】イチゴの形状及び大きさの類似度を示す図。(上図)形状、(下図)大きさ。
【図19】イチゴの類似度(CDE、形状及び大きさの3次元プロット)を示す図。
【図20】イチゴの類似度(標準からのユークリッド距離のプロット)を示す図。
【図21】6次元のユークリッド距離によるイチゴの総合類似度を示す図。
【図22】3次元空間におけるコサイン尺度を示す図。
【図23】6次元のコサイン尺度によるイチゴの総合類似度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の色彩画像撮像・解析システムは、色彩画像撮像システムと色彩画像解析システムとから構成される。それぞれを独立して使用することも可能である(例えば、本色彩画像撮像システムで撮像した画像を、任意の画像解析手法を用いて解析してもよいし、任意の装置・条件で撮像した画像を、本色彩画像解析システムに供してもよい)。色彩画像撮像システムと色彩画像解析システムとを組み合わせて使用することにより、より人の目に近い管理・評価が可能となる。

【0014】
<1.色彩画像撮像システム>
本発明の色彩画像撮像システムは、主に、(1)試料設置台、(2)拡散円筒光源、(3)カメラ、及び(4)その他構成から構成される。本発明の色彩画像撮像システムの概略図を図1に、設計図を図2に、外観図を図3に示す。

【0015】
(1)試料設置台
撮像対象物が生体鉱物(真珠等)や農産物(サイズの小さい物としてはイチゴ、大きい物としてはスイカ、カット品を含む)等であり、様々なサイズを有するため、ジャッキによる試料の高さ調節が可能な他、下記(2)円筒が開閉可能なように設計されている。又、円筒の直径は、スイカを撮像可能とするために38[cm]に設定されている。より大きな対象物の場合、円筒の直径を大きくすることで対応できる。

【0016】
(2)拡散円筒光源
拡散円筒光源は、撮像対象物にほぼ均一な光が照射されることが望ましく、電球型蛍光灯と円筒からなる。光源である電球型蛍光灯としては、特に限定されないが、高い演色性を有することが望ましく、SPIRAL VITALIGHT(LS社製、演色指数92、色温度5500[K])が例示される。又、円筒の材質としては、特に限定されないが、対象物に照射されるスペクトルパターンが顕著な分布を有さないことが望ましく、標準白色ケント紙が例示される。標準白色ケント紙としては、ルミネッセンスニュートラルホワイト(特殊紙製)、マシュマロCOC (王子特殊紙製)等が例示される。
SPIRAL VITALIGHTの可視分光スペクトルを分光光度計(i1、エックスライト社製)にて測定した結果を図4に示す。このように任意のスペクトルパターンを有する光源であっても、標準白色ケント紙を介することによって、対象物に照射されるスペクトルパターンがピーク等の顕著な分布を有していなければよい(図5)。
円筒に対して4点から照明を照射することにより、拡散円筒内部で拡散光となって対象物に照射される。光源の数は4点から増減することも可能であるし、もちろん光源自体が、LED光源等を用いることにより、円筒形状を有していてもよい。
色彩照度計(CL-200、コニカミノルタ社製)により測定した拡散円筒内の照明ムラを図6に示す。円筒内においてほぼ均一の照度分布を有することがわかる。

【0017】
(3)カメラ
撮像を行うカメラは、特に限定されないが、デジタル一眼レフカメラが望ましく、D300(Nikon社製)、レンズはAF Zoom Nikkor ED(Nikon社製)が例示される。又、カメラを固定する撮影台は、カメラの高さの変更に対して自由度が高いL-4(KING社製)が例示される。

【0018】
(4)その他構成
更に外光の影響を遮断するために、撮像システム全体を暗幕で覆うことが好ましい。暗室内での暗幕の光の反射をなくすため、暗幕は、表地が遮光一級の暗幕、裏地が黒色の暗幕である二重暗幕が好適である。又、色の再現性の高いモニタを撮像システム外に設置し、上記(3)カメラと該モニタとを接続することにより、モニタリングが可能となる。色の再現性の高いモニタとしては、特に限定されないが、SyncMaster XL24(Samsung製)が例示される。

【0019】
鉄球、真珠、トマト、ナスについて、本発明の色彩画像撮像システムを用いずに撮像した画像(図7a)と、本発明の色彩画像撮像システムを用いて撮像した画像(図7b)とを比較したところ、本発明の色彩画像撮像システムを用いることにより、表面に光沢、色むら、凹凸を有する対象物であっても、反射光の影響が除去された画像を撮像可能であることがわかる。

【0020】
<2.色彩画像解析システム>
本発明の色彩画像解析システムは、主に、(1)CDEに基づく画像解析と(3)Color HistogramとCDEに基づく色彩解析からなる。表面の色・分布・形状等が複雑な対象物については、(1)と(3)の間に、(2)アニュラーサークルの最適N数決定の工程を挿入することが望ましい。又、色彩画像解析システムはコンピュータ等の計算機上で実行される。

【0021】
(1)CDEに基づく画像解析
CDE(Color Distribution Entropy)は、非特許文献4に記載のNSDH(Normalized Spatial Distribution Histogram)と非特許文献5に記載の情報エントロピーに基づく、画像中の色の空間情報を求める手法である。
AiをColor bin iの集合、|Ai|をAiの個数とし、CiをAiの重心としたとき、Ciを同心とするN個の円を等間隔に描く。このとき、j番目のアニュラーサークルの中に含まれているColor bin iのピクセル数を|Aij|とする。PiをColor bin iのNSDHとすると、Piは式1(数1)、式2(数2)のように定義される。
【数1】
JP0005888639B2_000002t.gif
【数2】
JP0005888639B2_000003t.gif
又、EiをColor bin iのCDEとすると,Eiは式3(数3)のように定義される.
【数3】
JP0005888639B2_000004t.gif
式3より、画像中に任意の色がどの程度分散しているかが与えられる。Eiの値が大きいほど,Color bin iのピクセルは分散しているといえる。
更に、CDEを改良したI-CDE(Improved CDE)も提案されている。I-CDEではまず、重み関数(式4(数4))を用いることで、重心に近いアニュラーサークルに対して重み付けを行う。
【数4】
JP0005888639B2_000005t.gif
これにより、式3は式5(数5)のようになる。
【数5】
JP0005888639B2_000006t.gif
又、エントロピーの対称性によって、異なるヒストグラムが同じエントロピーを持つ場合が生じる。即ち、全く異なる画像が同じエントロピーで表現されてしまう場合がある。この問題を解決するために、ヒストグラムエリアを用いた重み関数が提案されている。Hをヒストグラム{p1, p2, ・・・ ,pn}とすると、 HのヒストグラムエリアA(H)は式6(数6)のように定義される.
【数6】
JP0005888639B2_000007t.gif
ヒストグラムエリアを用いた重み関数g(H)は、式7(数7)のように定義される。
【数7】
JP0005888639B2_000008t.gif
これにより,式3は式8(数8)のようになる.
【数8】
JP0005888639B2_000009t.gif
式3、式5、式8から、I-CDEは式9(数9)のように定義される。
【数9】
JP0005888639B2_000010t.gif
上記のCDE は、画像全体の特徴化を行う。したがって、画像の特徴化を行うにあたり、図8(a)に示すように各色でそれぞれ重心座標と直径が異なるアニュラーサークルを基にして、情報エントロピーを計算するため、対象物のサイズに不適な結果となってしまう問題点があった。本発明では、8(b)に示すように対象物の長径を基にアニュラーサークルの大きさを決定し、色の分布情報が対象物のサイズにより正規化される。

【0022】
(2)CDEに基づく画像解析(アニュラーサークルの最適N数決定)
デジタル画像解析を行う際には、画像取得やプログラムによる計算の過程で様々な誤差が生じるため、理論的に導かれた解析手法を採用しても、実際の色彩解析結果にはこれらの誤差が含まれることになる。特に、農産物を対象にした場合、解析対象に併せて決定される最大アニュラーサークルのサイズと、アニュラーサークルの分割数が解析結果の精度に影響を与えることがある。
そこで、図9に示す、同じ色彩特徴を有する相似な画像、画像サイズが同じで色彩の空間分布が異なる画像およびベースの色相が異なる画像を作成した。表1にモデル画像のColor Histogramを示したが、(f)の図以外は赤と黒の色彩バランスはほぼ同じで(a)、(d)、(e)は色彩の空間配置が異なるもの、(a)、(b)、(c)は100%、70%、 50%の相似画像である。又、(a)と(f)は背景画像の色相が赤と青の画像である。これらの画像に対してそれぞれアニュラーサークルの分割数Nを10分割、20分割及び30分割と変えて色彩解析を施し、実際の画像解析作業における誤差評価を行い、アニュラーサークルの分割数NとCDE 値について検討した。
【表1】
JP0005888639B2_000011t.gif

【0023】
表2にモデル画像(図9)のCDE 解析の結果を示す。図9(a)~(C)は同じ色彩特徴を有する相似な画像であるため、画像の色彩分布の複雑さに対応する最適なアニュラーサークルの分割数Nを与えた場合には、理論的には画像のサイズに関わらず、一定のCDE 値が得られると考えられる。表2に示すように、分割数を10、あるいは30とした際には、i=15(赤)とi=36(黒)におけるCDE 値のばらつきが最大で4.1%確認された。しかし、分割数を20とした場合、i=15(赤)とi=36(黒)におけるCDE 値のばらつきが1%以内に収まり、このモデル画像では分割数としてN=20
が適していることが示された。
このように、CDE 手法を用いた色彩解析においてはアニュラーサークルの分割数Nが極めて重要なパラメータとなることが分かる。このことから、アニュラーサークルの分割数N は色彩特徴を基に解析対象ごとに決定する必要があり、又、このパラメータは画像の色彩特徴の複雑さを表す指標として用いることができる。
又、画像のサイズが同じで色彩の空間分布が異なる図9(a)、図9(d)、及び図9(e)のCDE 値を比較すると,i=15
ではそれほど大きな差は見られなかったものの、i=36 において37%以上の差が確認された。この結果から、図9のモデル画像においては、CDE
値に1%以上の差が認められれば、物体の大きさに関係なく有意な色彩の差が存在するとみなすことができると考えられた。又、ベースの色相が異なる図9(a)と図9(f)のColor Histogram 解析の結果を比較すると、図9(a)の代表色がi=15であるのに対し、図9(f)ではi=174 であったことから、Color Histogram の結果からは画像の全体的な色合いの差異を評価できる。
【表2】
JP0005888639B2_000012t.gif

【0024】
(3)Color HistogramとCDEに基づく色彩解析
次に、Color HistogramとCDEを用いて画像の色彩解析を行う。この2つの解析手法を用いることで、Color
Histogramで色の出現頻度を比較して大まかな画像の評価ができ,更によく似たColor Histogramを持つ画像をCDEで比較することで、より細かな画像の評価が可能になる。解析に用いる画像の色空間をRGBからHSVに変換し256色に減色することで、コンピュータへの負荷を軽減し、解析結果の評価を容易にする。減色後の色は0~255の値で表し、これをColor
bin iとする。Color bin iと色度変化の関係を図10示す。

【0025】
以上の解析をプログラム化することによって大幅な効率化が可能となる。様々な環境での使用を考慮し、画像解析プログラムはプラットフォームに依存しないソフトウェアを作成できるJava(登録商標)での開発が好ましい。開発した解析プログラムのフローチャートを図11に示す。
【実施例】
【0026】
以下に本発明の好適な一実施の形態を実施例によって具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の実施形態によって限定されるものでなく、本発明の範囲で様々に改変して実施することができる。
【実施例】
【0027】
<実施例1:真珠の色彩解析>
(1)ランク別の真珠の比較
専門家によってA、B、Cとランク付けされた真珠を色彩画像撮像システムにて撮像し、色彩解析をおこなうことでランクの違いの検出を行った。真珠画像撮像時のカメラの設定を表3に示す。
撮像した画像を図12、色彩画像解析システムによる解析結果を図13に示す。出現するColor
binの数はAで40、Bで27、Cで24となり、本発明の色彩画像撮像・解析システムを用いて真珠を等級別に分類できた。
【表3】
JP0005888639B2_000013t.gif
(2)最適拡散円筒
拡散円筒の直径を変えて撮像した真珠画像を図14に示す。円筒の直径が変わると、出現するColor
binの数が変化することがわかった(表4)。特に円筒の直径が37[cm]のとき、ランクの違いが解析結果に顕著に表れていることから、真珠の分類を行うためには直径37[cm]の円筒が最適であると判断できる。
【表4】
JP0005888639B2_000014t.gif
【実施例】
【0028】
<実施例2:イチゴの色彩解析>
色彩画像撮像システムにてイチゴの色彩画像を撮像し、品種の違いの検出を行った。
試料としてのイチゴは、野菜茶業研究所にて栽培されている3種類の栽培条件の下で育てられた34品種のイチゴを2010年1月から2月に採取し、冷蔵庫で保存した上で、採取から72時間以内のものを使用した。使用したイチゴの品種一覧を表5に、イチゴ画像撮像時のカメラの設定を表6に示す。
【表5】
JP0005888639B2_000015t.gif
【表6】
JP0005888639B2_000016t.gif
【実施例】
【0029】
まず、標準的なイチゴ画像を選び出し、イチゴのサイズのバリエーションを考慮し、この画像と同じ色彩特徴を有する2種類の相似な画像として、60%画像および150%画像を作成した。図15 にこれらのイチゴ画像を示す。これらの画像に対してアニュラーサークルの分割数Nをそれぞれ10分割、20分割、30分割、40分割及び50分割と変えて色彩解析を施し、実際の画像解析作業における誤差評価を行い、イチゴ画像の解析に最適と考えられるアニュラーサークルの数の決定と、その際に生ずる誤差を検討した。
拡大率を変えた標準イチゴ画像の色彩解析の結果を表7と表8に示す。表8から、標準イチゴの色彩解析ではアニュラーサークルの分割数を40としたときに、CDE値のばらつきが0.01%以内と最も小さくなり、これより分割数を増減させると、誤差が大きくなることが確認できる。
【表7】
JP0005888639B2_000017t.gif
【表8】
JP0005888639B2_000018t.gif
【実施例】
【0030】
次に、色彩画像解析システムによるイチゴの表面画像を図16に示す。表面画像では、色彩評価に悪影響を及ぼす種周辺のてかりが消え、表面テクスチャが正確に記録されていることが確認できた。
【実施例】
【0031】
<実施例3:イチゴの栽培診断>
色彩画像撮像システムにて撮像したイチゴ(久留米16号)の色彩画像について、色彩画像解析システムにより全試料の画像から標準的なイチゴのCDE、形状、大きさを算出し、全試料と標準的なイチゴとのCDE、形状、大きさの類似度を求めた。
イチゴのCDEの算出方法を式10(数10)に、全試料と標準的なイチゴとのCDEの類似度を表す図を図17に示す。
【数10】
JP0005888639B2_000019t.gif
次に、イチゴの形状の算出を非特許文献6に記載の方法により行った。全試料と標準的なイチゴとの形状の類似度を表す図を図18上図に示す。
更に、イチゴの大きさ(長径及び短径)の算出方法を式11(数11)に、全試料と標準的なイチゴとの大きさの類似度を表す図を図18下図に示す。
【数11】
JP0005888639B2_000020t.gif
以上により求めた全試料と標準的なイチゴとのCDE、形状、大きさを3次元プロット(図19)し、全試料のプロットについて、標準的なイチゴからの類似度のユークリッド距離を求めた(図20)。栽培過程のイチゴの色彩画像を撮像し、図20と比較することにより、栽培過程のイチゴと標準的なイチゴの類似度を検出することができる。即ち、栽培過程のイチゴと標準的なイチゴの類似度から栽培過程の診断が可能となる。
【実施例】
【0032】
更に、イチゴ断面についても、全試料と標準的なイチゴとのCDE、形状、大きさの類似度を求め、図20の結果と合わせてプロットした(図21)。この6次元のユークリッド距離による総合類似度により、外観品質だけでなく、内観品質に関する管理・評価が可能となる。即ち、栽培過程のイチゴの色彩画像を撮像し、図21と比較することにより、栽培過程のイチゴと標準的なイチゴの類似度から、内部品質も含めた栽培過程の診断が可能となる。
【実施例】
【0033】
上記は、ユークリッド距離による類似度を用いた農産物の管理・評価システムであるが、標準イチゴからのユークリッド距離ではなく、標準イチゴからのコサイン尺度(図22)を用いてもよい。
イチゴ表面及び断面について、全試料と標準的なイチゴとのサイズ類似度、色彩類似度、形状類似度をプロットし、標準的なイチゴからのコサイン尺度を求めた。図23に示す6次元のコサイン尺度による総合類似度により、イチゴの順列においてより一致し、有効性が示された。
【実施例】
【0034】
以上より、本発明の色彩画像撮像・解析システムにより、農産物の栽培過程、収穫過程、加工・流通・販売過程において、CDE、サイズ、色彩、形状、大きさ等のパラメータを任意に選択・抽出し、各過程における撮像画像と標準的な農産物画像との類似度を用いて、外観・内観品質を管理・評価できる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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