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明細書 :色彩画像撮像・外観特徴解析システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-169156 (P2013-169156A)
公開日 平成25年9月2日(2013.9.2)
発明の名称または考案の名称 色彩画像撮像・外観特徴解析システム
国際特許分類 A01G   7/00        (2006.01)
G01N  21/84        (2006.01)
FI A01G 7/00 603
G01N 21/84 Z
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 29
出願番号 特願2012-033452 (P2012-033452)
出願日 平成24年2月18日(2012.2.18)
発明者または考案者 【氏名】亀岡 孝治
【氏名】橋本 篤
【氏名】戸上 崇
【氏名】山本 恭輔
【氏名】岩田 智之
出願人 【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
審査請求 未請求
テーマコード 2G051
Fターム 2G051AA05
2G051AA90
2G051AB20
2G051BA01
2G051BB01
2G051CA04
2G051EA17
2G051EA25
2G051EC01
2G051EC02
2G051EC06
要約 【課題】人の目に近い農産物の栽培・品質管理や評価を課題とし、色彩画像撮像・外観特徴解析システムを提供する。
【解決手段】色彩画像撮像システム及び又は外観特徴解析システムからなる色彩画像撮像・外観特徴解析システムであって、色彩画像撮像システムは、円錐光源・円錐台光源・円筒円錐台光源のいずれか1つの光源を有し、該光源内に対象物を設置し、外観特徴解析システムは、形状の算出工程と、統計解析工程とからなる工程、又は形状、色彩、サイズうち、少なくとも2つの算出工程と、統計解析工程若しくは外観特徴距離の可視化工程とからなる工程、を備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
色彩画像撮像システム及び/又は外観特徴解析システムからなる色彩画像撮像・外観特徴解析システムであって、
色彩画像撮像システムは、円錐光源・円錐台光源・円筒円錐台光源のいずれか1つの光源を有し、該光源内に対象物を設置すること、
外観特徴解析システムは、(A)形状の算出工程と、統計解析工程とからなる工程、又は(B)形状、色彩、サイズうち、少なくとも2つの算出工程と、統計解析工程若しくは外観特徴距離の可視化工程とからなる工程、を備えること、
を特徴とする色彩画像撮像・外観特徴解析システム。
【請求項2】
前記形状の算出工程が、θφ極座標系から、形状の類似度又は非類似度のいずれかに変換する工程であることを特徴とする請求項1に記載の色彩画像撮像・外観特徴解析システム。
【請求項3】
前記外観特徴距離の可視化工程が、n次元ユークリッド空間におけるユークリッド距離算出、コサイン尺度算出、多次元尺度構成法、階層的クラスター分析のうち、いずれか1つを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の色彩画像撮像・外観特徴解析システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか記載の色彩画像撮像・外観特徴解析システムを用いてなる農産物の品質管理及び/又は品質評価システム。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか記載の色彩画像撮像・外観特徴解析システムを用いてなる農産物の栽培管理及び/又は栽培診断システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、色彩画像撮像・外観特徴解析システムに関する。詳しくは、色彩画像撮像システム及び/又は外観特徴解析システムに関する。更に詳しくは、対象物の表面反射を除去又は軽減する色彩画像撮像システム及び/又は形状情報、色彩情報、サイズ情報のうち少なくとも1つの情報に基づく外観特徴解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
農産物の栽培・品質管理や評価等は、熟練者の経験や勘に頼ることが多く、明確な判断要因や基準を定量化することは困難である。
特に、農産物の色彩や形状、大きさ等の外観は食味・食感とともに農産物の商品価値を決める重要な品質要素である。又、少子化や食の多様化等にともなってカット品の流通・販売が盛んになっており、農産物の内観も重要視されている。上記の通り、農産物の栽培・品質管理や外観・内観評価等、生育過程の時系列モニタリングは、現場での熟練者の目視によって行われ、経験や勘に基づく判断要因や判断基準に依存しているため、客観性や再現性が課題となっている。
最近では農業の6次産業化が注目されており、消費者ニーズにマッチした・消費者が見て美味しいと感じる農産物の作り込み(育種や栽培へのフィードバック等を含む)が重要となるが、消費者の目に相当する装置化が求められている。更に、植物工場等の導入が検討されているが、環境制御が中心となっている。農産物を製品としてとらえた場合、農産物の加工業者や消費者が希望する物理的特性(スペック)の構築、その数値化を含めた定量的評価の確立、ライン設計等が課題となっている。
【0003】
そこで、光学機器を用いた管理や評価の試みがなされているが、そもそも人の目による管理や評価は、部分的な評価の足し合わせや、画像処理といったアルゴリズムによるコンピュータ・ソフトウェア上の処理ではなく、全体の印象も含めて行われることが多い。そのため、分光測色計等を用いた部分的な評価ではなく,画像解析(色彩解析や形状解析)による人の目に近い管理や評価の構築が望まれている。
【0004】
対象物の表面色を解析するためには、対象物の表面画像をいかに忠実に撮像するかが重要となる。このために、カメラシステム、照明システムが極めて重要で、かつ画像撮像部を外光から遮蔽することが重要である。特に、表面反射を除去又は軽減することが課題であり、そのため拡散光源が用いられてきている。拡散光源を用いた撮像方法として、直接サーキュラー型の拡散光源をカメラに取り付け撮影する方法が知られている他、発明者の一部は、もともと拡散的な光源である標準蛍光灯からの光を、拡散反射板を用いて更に拡散光の程度を高める方法を構築した(非特許文献1)。
しかしながら、農産物は表面光沢に加え表面の色むらや凹凸も顕著であることから、上記従来技術では、対象物の表面反射を除去又は軽減した色彩画像計測は困難であった。
【0005】
農産物の外観・内観品質の中でも、特に色彩は、色相の質的な変異、彩度の量的な変異、色彩の空間分布等が存在し、品質を決める重要な指標であるため、様々な色彩解析手法が開発されている。発明者の一部は、HSL 色空間を用いたイチゴ表面および断面における色彩画像解析により、品種識別の可能性を示した(非特許文献2)。又、非特許文献3には、L*a*b*表色系の内、a*の値に基づきイチゴの色彩解析を行い、形状及びサイズの解析結果と組み合わせることで、イチゴの等級判定を行う方法が開示されている。
しかしながら、非特許文献2及び3では、色彩の全体値や出現頻度だけが解析対象とされており、イチゴの表面および断面における果実色の空間的な分布情報が破棄されている問題点があった。
【0006】
そこで、発明者の一部は、(1)対象物の表面反射を除去又は軽減する色彩画像撮像システムとして、円筒型拡散光源を有し、該光源内に対象物を設置する色彩画像撮像システムと、(2)人の目に近い農産物の栽培・品質管理や評価行う色彩画像解析システムとして、CDEに基づく画像解析工程と、Color Histogramに基づく色彩解析工程とからなる色彩画像解析システムと、を備えた色彩画像撮像・解析システムを発明し、特許出願している(特許文献1)。
しかしながら、上記特許文献1に記載の色彩画像撮像システムでは、図6の通り、対象物の表面反射の除去が十分ではなかった。又、上記特許文献1に記載の色彩画像解析システムでは、標準的な色・形状・サイズの対象物画像(イチゴ)を算出し,標準画像からのユークリッド距離・コサイン尺度の差を計算しているため、キャリブレーションが必要となる、様々な色・形状・サイズの対象物が必要となる、基準が不明確な場合に色彩画像解析方法が意味をなさなくなる等の問題点があった。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特願2011-179268
【0008】

【非特許文献1】元永佳孝, 亀岡孝治, 橋本篤, 農業機械学会誌, 59 (4), 21-28 (1997).
【非特許文献2】H. Kitamura, T. Mori, A.Hashimoto, and T. Kameoka, Distinction of strawberry cultivars based on fruitcharacters evaluated by image analysis, Jido SeigyoRengo Koenkai (CD-ROM), 48, L2-15 (2005).
【非特許文献3】X. Liming, and Z. Yanchao,Automated strawberry grading system based on image processing, Computers and Electronics inAgriculture, 71, S32-S39 (2010).
【非特許文献4】A. Hashimoto, H. Kondou, Y. Motonaga, H. Kitamura, K. Nakanishi,T. Kameoka, 1st World Congress of Computers in Agriculture and Natural Resources,Zazueta, F. and Xin, J. ed., 70-77 (2001).
【非特許文献5】Y. Rubner, C. Tomasi, L. J. Guibas,The earth mover's distance as a metric for image retrieval, InternationalJournal of Computer Vision, 40 (2), 99-121 (2000).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、人の目に近い農産物の栽培・品質管理や評価を課題とし、色彩画像撮像・外観特徴解析システムを提供する。詳細には、対象物の表面反射を除去又は軽減する色彩画像撮像システムを提供する。又、形状情報、色彩情報、サイズ情報のうち少なくとも1つの情報に基づく外観特徴解析システムを提供する。
本発明は、当該色彩画像撮像撮像・外観特徴解析システムを用いた農産物の品質管理・評価装置を提供する。又、当該色彩画像撮像撮像・外観特徴解析システムを用いた農産物の栽培診断方法をも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の色彩画像撮像・外観特徴解析システムは、
<1>色彩画像撮像システム及び/又は外観特徴解析システムからなる色彩画像撮像・外観特徴解析システムであって、
色彩画像撮像システムは、円錐光源・円錐台光源・円筒円錐台光源のいずれか1つの光源を有し、該光源内に対象物を設置すること、
外観特徴解析システムは、(A)形状の算出工程と、統計解析工程とからなる工程、又は(B)形状、色彩、サイズうち、少なくとも2つの算出工程と、統計解析工程若しくは外観特徴距離の可視化工程とからなる工程、を備えること、
を特徴とする。
<2>前記<1>の形状の算出工程が、θφ極座標系から、形状の類似度又は非類似度のいずれかに変換する工程であることを特徴とする。
<3>前記<1>又は<2>の外観特徴距離の可視化工程が、n次元ユークリッド空間におけるユークリッド距離算出、コサイン尺度算出、多次元尺度構成法、階層的クラスター分析のうち、いずれか1つを含むことを特徴とする。
<4>農産物の品質管理及び/又は品質評価システムであって、前記<1>~前記<3>のいずれか記載の色彩画像撮像・外観特徴解析システムを用いることを特徴とする。
<5>農産物の栽培管理及び/又は栽培診断システムであって、前記<1>~前記<3>のいずれか記載の色彩画像撮像・外観特徴解析システムを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、対象物の表面反射を除去又は軽減する色彩画像撮像撮像システムを提供することができる。又、形状情報、色彩情報、サイズ情報のうち少なくとも1つの情報に基づく外観特徴解析システムを提供できる。
本発明によれば、当該色彩画像撮像撮像・外観特徴解析システムを用いた農産物の品質管理・評価システムを提供することができる。又、本発明によれば、当該色彩画像撮像撮像・外観特徴解析システムを用いた農産物の栽培管理及び/又は栽培診断システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の色彩画像撮像システムの一例を示す詳細図。
【図2】SPIRAL VITALIGHTの可視分光スペクトル。
【図3】拡散円筒を構成する紙の本発明の可視分光スペクトル。
【図4】拡散光源の組合せの一例。
【図5】可視分光スペクトルの測定位置。
【図6】可視分光スペクトル。数字は測定位置を表す。(A)拡散体無し、(B)円筒拡散体、(C)円錐拡散体
【図7】様々な大きさの試料の撮像画像。
【図8】イチゴ果実形状の種類。
【図9】イチゴ果実形状のモデル画像。
【図10】外観特徴距離。(A)基準を選んだ場合、(B)基準を選ばない場合。
【図11】MDSの結果。
【図12】階層的クラスター分析の結果。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の色彩画像撮像・外観特徴解析システムは、色彩画像撮像システムと外観特徴解析システムとから構成される。それぞれを独立して使用することも可能である(例えば、本色彩画像撮像システムで撮像した画像を、任意の画像解析手法を用いて解析してもよいし、任意の装置・条件で撮像した画像、形状、サイズを、本外観特徴解析システムに供してもよい)。色彩画像撮像システムと外観特徴解析システムとを組み合わせて使用することにより、より人の目に近い管理・評価が可能となる。

【0014】
<1.色彩画像撮像システム>
本発明の色彩画像撮像システムは、主に、(1)試料設置台、(2)拡散円錐光源、又は拡散円錐台光源、又はそれらを縦方向に結合した拡散円筒円錐台光源(3)カメラ、及び(4)その他構成から構成される。本発明の色彩画像撮像システムの詳細図を図1に示す。

【0015】
(1)試料設置台
撮像対象物が農産物(サイズの小さい物としてはイチゴ、大きい物としてはスイカ、カット品を含む)等であり、様々なサイズを有するため、ジャッキによる試料の高さ調節が可能な他、下記(2)拡散円錐光源、又は拡散円錐台光源、又はそれらを縦方向に結合した拡散円筒円錐台光源が開閉可能なように設計されている。より大きな対象物の場合、底面の円の直径や高さを大きくすることで対応できる。

【0016】
(2)拡散円錐光源・拡散円錐台光源・拡散円筒円錐台光源
拡散円錐光源、又は拡散円錐台形源、又はそれらを縦方向に結合した拡散円筒円錐台光源は、撮像対象物にほぼ均一な光が照射されることが望ましく、電球型蛍光灯と円錐、又は円錐台、又はそれらを縦方向に結合した円筒円錐台からなる。光源である電球型蛍光灯としては、特に限定されないが、高い演色性を有することが望ましく、SPIRAL VITALIGHT(LS社製、演色指数92、色温度5500[K])が例示される。又、円錐、又は円錐台、又は円筒円錐台の材質としては、特に限定されないが、対象物に照射されるスペクトルパターンが顕著な分布を有さないことが望ましく、標準白色ケント紙が例示される。標準白色ケント紙としては、ルミネッセンスニュートラルホワイト(特殊紙製)、マシュマロCOC (王子特殊紙製)等が例示される。
SPIRAL VITALIGHTの可視分光スペクトルを分光光度計(i1、エックスライト社製)にて測定した結果を図2に示す。このように任意のスペクトルパターンを有する光源であっても、標準白色ケント紙を介することによって、対象物に照射されるスペクトルパターンがピーク等の顕著な分布を有していなければよい(図3)。
円錐、又は円錐台、又は円筒円錐台に対して4点から照明を照射することにより、拡散円錐、又は拡散円錐台、又は拡散円筒円錐台内部で拡散光となって対象物に照射される。光源の数は4点から増減することも可能であるし、図4のように、電球型光源と、円錐、又は円錐台、又は円筒円錐台との間に半円筒を設置し、半円筒状の照明を照射してもよい。ちろん光源自体が、LED光源等を用いることにより、円錐形状、又は円錐台形状、又はそれらを縦方向に結合した円筒円錐台形状を有していてもよい。
マルチチャンネル分光器(PMA-12、浜松ホトニクス社製)より、図5に示す計25点において、測定した可視分光スペクトル分布を計測した(図6)。その際、照明の温度依存性の問題を解決するため、照明を点灯して1時間経過してから計測した。図6より、拡散円錐光源を用いることで、ノイズやばらつきの少ない、完全拡散光とほぼ同一の照明条件下での撮像が可能となる。光拡散体の形状として最も理想的であるのは、対象物からの等方性が確保できる球型であるが、ハンドリングや成形・成型が非常に困難である。したがって、実用面を考慮すると、円錐型、より球形に近い拡散円錐台型、拡散円筒円錐台型の光源が好適である。

【0017】
(3)カメラ
撮像を行うカメラは、特に限定されないが、デジタル一眼レフカメラが望ましく、D300(Nikon社製)、レンズはAF
Zoom Nikkor ED(Nikon社製)が例示される。又、カメラを固定する撮影台は、カメラの高さの変更に対して自由度が高いL-4(KING社製)が例示される。

【0018】
(4)その他構成
更に外光の影響を遮断するために、撮像システム全体を暗幕で覆うことが好ましい。暗室内での暗幕の光の反射をなくすため、暗幕は、表地が遮光一級の暗幕、裏地が黒色の暗幕である二重暗幕が好適である。又、色の再現性の高いモニタを撮像システム外に設置し、上記(3)カメラと該モニタとを接続することにより、モニタリングが可能となる。色の再現性の高いモニタとしては、特に限定されないが、SyncMaster XL24(Samsung製)が例示される。
又、撮像システムを植物工場内や栽培装置(インキュベータ等)に設置し、栽培モニタリング・生育モニタリング等することも可能である。

【0019】
本発明の色彩画像撮像システムにより撮像した画像を図7に示す。非常に小さい農産物に類別される数[cm]オーダーのイチゴから、非常に大きい農産物の代表例である数10[cm]オーダーの大玉スイカを試料として用いたにも係わらず、得られた画像では表面の色彩やテクスチャが正確に記録されていることが確認された。したがって、本発明の色彩画像撮像システムを用いることにより、幅広い農産物について、対象物の表面反射を除去又は軽減した画像撮像・画像解析への適用ができる。

【0020】
<2.外観特徴解析システム>
本発明の外観特徴解析システムは、主に、(A)形状情報のみに基づく解析工程と、(B)形状情報・色彩情報・サイズ情報のうち2つ以上の情報に基づく解析工程に分類される。
詳しくは、(A)形状情報のみに基づく解析工程は、(A-1)θφ極座標系から、相関による形状類似度(以下、相関形状類似度)・差の二乗和による形状類似度(以下、差の二乗和形状類似度)・Earth Mover’s Distanceによる形状の非類似度(以下、EMD)のいずれかに変換する工程と、(A-2)モデル画像を算出する工程と、(A-3)それら(A-1)と(A-2)で得られたデータを統計解析する工程と、を備える。
又、(B)形状情報・色彩情報・サイズ情報のうち2つ以上の情報に基づく解析工程は、(B-1)θφ極座標系から、相関形状類似度・差の二乗和形状類似度・EMDのいずれかに変換する工程、(B-2)CDEに基づく画像解析と、表面の色・分布・形状等が複雑な対象物についてはアニュラーサークルの最適N数決定と、Color HistogramとCDEに基づく色彩解析により色彩情報を得る工程、(B-3)サイズ情報を得る工程、(B-4)それら3つの工程のうち2つ以上の工程で得られたデータを統計解析する工程を備える。又は、(B-4)の代わりに、(B-5)外観特徴距離の可視化工程を備える。
より詳しくは、上記(A-3)統計解析としては、分散分析、Bonferroni法による多重比較検定等が例示される。又、(B-4)統計解析としては、分散分析、TukeyHSD法による多重比較検定等が例示される。又、(B-5)外観特徴距離の可視化としては、n次元ユークリッド空間において、ユークリッド距離を用いる手法、コサイン尺度を用いる手法、多次元尺度構成法(Muiti Dimensional Scaling、以下、MDS)、階層的クラスター分析等が例示される。
上記外観特徴解析システムはコンピュータ等の計算機上で実行される。

【0021】
(1)形状解析
上記(A-1)、(B-1)θφ極座標系から、相関形状類似度・差の二乗和形状類似度・EMDのいずれかに変換する工程について、以下に詳述する。θφ極座標系は非特許文献4に開示されている。
(1-1)相関形状類似度
全く同じ形状をもつ物体に対してθφ極座標系変換を適用した場合には、同じ波形が得られることから2つの輪郭の類似性を検討するための相関係数を適用し、形状の類似度を計算する。ある試料群をZ={z,z,・・・z}と定義する。ここで、試料zの形状を直交座標系からθφ極座標系へ変換したとき、θ=tにおける φ値をφとすると、zとzの形状の相関係数Rijは次式1(数1)と定義される。
【数1】
JP2013169156A_000003t.gif
相関係数は負の値を取り得るため、類似度の比較には相関係数の二乗値である決定係数を用いることとする。したがって、形状の類似度Sshapeは次式2(数2)により求められる。形状類似度が最大の場合にはSshape=1となり、最小の場合にはSshape=0となる。
【数2】
JP2013169156A_000004t.gif
(1-2)差の二乗和形状類似度
rθφ極座標・接線座標系に基づく形状解析により得られたデータを基に、形状類似度を計算するための手法として、差の二乗和による形状類似度を求める。前述の定義に基づくと、差の二乗和による形状類似度は次式3(数3)より求められる。形状が完全に一致するとき、Sshape=0となる。
【数3】
JP2013169156A_000005t.gif
(1-3)EMD
EMD(非特許文献5)により、2つのシグニチャ間の類似度を表すことが可能となる。ここで、n個の要素とm個の要素をそれぞれ持つ以下の2つのシグニチャを考える。
【数4】
JP2013169156A_000006t.gif
1≦i≦n、1≦j≦mとすると、p、qは特徴ベクトル、wpi、wqjはそれぞれの特徴ベクトルの重みを表す。このとき、,pとqの距離をdij、pからqへの輸送量をfij、全輸送量をFとし、次式5(数5)を最小とする最適フローを考える。ただし、このとき、次式6(数6)の条件を満たす必要がある。
【数5】
JP2013169156A_000007t.gif
【数6】
JP2013169156A_000008t.gif
これらの条件の下、求められた最適フローをmin(WORK(P,Q,F))とすると、EMD(P,Q)は次式7(数7)によって求められる。
【数7】
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rθφ極座標・接線座標系に基づく形状解析により、解析対象物の形状は特徴ベクトルθとその重みであるφによって表される。本発明では、これにより形状をシグニチャとして表し、シグニチャ間のEMDを2つの形状間の非類似度として用いた。

【0022】
(2)モデル画像の算出
上記(A-2)モデル画像を算出する工程について、以下に詳述する。
例えば、イチゴの果実形状は作型や作期、栽培地などの環境条件や株の栄養状態によって変化しやすく、品種内でもその形状は多様であり、時には同一品種とは思えないほどの差異が生じることもある。しかし、イチゴの果実形状は品種ごとに特徴付けられており、新品種の開発においても目的とする形状の設計が非常に重要な要素となる。
上述のように、品種や栽培条件、栄養状態によってイチゴの果実形状は様々であるが、イチゴの果実形状は大きく8種類に分けられる(図8)。例えば、この中から「球形」、「長円錐」、「長くさび形」の3つについては、図9(a)~(c)に示すイチゴの果実形状のモデル画像が作製できる。さらに、図9(d)に示す四角形のモデル画像をあらかじめ準備することもできる。

【0023】
(3)外観特徴距離の可視化
上記(B-5)外観特徴距離の可視化工程について、以下に詳述する。
熟練者の目視による農産物の外観特徴の評価においては、複数の外観特徴をそれぞれに独立に評価し、その結果から複合的な評価を決定していると考えられる。そのため、これらの外観特徴がそれぞれ直交関係にあると仮定し、物体間の外観特徴を表わす距離空間としてn次元のユークリッド空間を考える。このユークリッド空間において、試料zと試料
の外観特徴距離D(zi,zj) は次式8(数8)で求められる。
【数8】
JP2013169156A_000010t.gif
ただし、nを距離空間の次元数、wを各次元の重みとする。特徴量の次元数であるnを増やすことで距離空間の拡張ができ、又、wを設定することで各次元の重み付けが可能となる。例えば、形状・色彩・サイズから構成される3次元ユークリッド空間(図10)におけるプロット間のユークリッド距離を試料間の外観特徴距離として用いることができる。
ここで、本手法により複数の物体間の外観特徴距離を表わす場合には、2通りの方法が考えられる。1つは、供試試料の中から基準とするものを1つ選び、基準とした試料に対応する距離空間上の点を原点として、その他の試料の外観特徴を原点からのユークリッド距離という形で表現する方法である(図10(A))。もう1つは、距離空間にプロットした全ての試料間のユークリッド距離を計算し、試料間の外観特徴の関係を外観特徴距離行列として表現する方法である(図10(B))。前者については、キャリブレーションが必要となる、様々な形状・色・サイズの対象物が必要となる、基準が不明確な場合に解析方法が意味をなさなくなる等の欠点がある。一方、後者については、象物集団(母集団)内での解析を行うため、1回の収穫物や撮像物全体・その中の特定の集団内での解析,特定の栽培地域や栽培時期・その中の特定の集団内での解析が可能となる利点がある。例えば、得られた外観特徴距離行列に対し多次元尺度構成法(MDS)による二次元平面への射影を行うことができる。
なお、MDSとは、多次元で表される分類対象物の関係を、少数の次元の空間において幾何学的に表現することが可能な、多変量解析の1手法である。MDSでは物体同士の位置関係を可視化できることから、主にデータ中に潜むパターンやその構造を抜き出すことを目的として用いられる。例えば、イチゴ果実の外観特徴距離の可視化を目的として、果実の形状・色彩・サイズから構成される3次元ユークリッドにイチゴをプロットし、試料間の外観特徴距離を全て計算する。更に、得られたデータに対し、MDSによる二次元平面への射影を行う。

【0024】
次に、階層的クラスター分析について、以下に詳述する。
階層的クラスター分析とは、分類対象物同士の類似度(あるいは非類似度)に基づいて、それらをいくつかの階層的な群(クラスター)に分類する手法である。類似度の高い対象物同士を同じクラスターに集め、分類することが可能である。例えば、上記距離空間にイチゴをプロットして全てのイチゴ間の外観特徴距を計算し、得られたデータに対して階層的クラスター分析を行い、その結果からイチゴの品質評価を行うことができる。階層的クラスター分析には様々な手法が存在するが、例えば、比較的安定した結果が得られるWard法が挙げられる。
【実施例】
【0025】
以下に本発明の好適な一実施の形態を実施例によって具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の実施形態によって限定されるものでなく、本発明の範囲で様々に改変して実施することができる。
【実施例】
【0026】
<実施例1:イチゴの形状解析、解析工程(A)>
イチゴの色彩画像を撮像し、形状解析に基づく品種識別を行った。
試料としてのイチゴは、野菜茶業研究所にて栽培されている表1に示すイチゴを2010年1月から2月に採取し、冷蔵庫9℃で保存した上で、採取から72時間以内のものを使用した。イチゴ画像撮像時のカメラの設定を表2に示す。
【表1】
JP2013169156A_000011t.gif
【表2】
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【実施例】
【0027】
イチゴ果実の形状データに対して分散分析を行った結果を表3に示す。3つの類似度のうち、どれを使用した場合においても0.1%水準で品種間に有意な差が認められた。次に、Bonferroni法による多重比較検定の結果を表4に示す。解析には14品種のイチゴを供したが、91通りの品種の組合せのうち,相関形状類似度とEMDを用いた場合では49通り、差の二乗和類似度を用いた場合では44通りの品種間で有意な差が認められた。又、多重比較検定により有意差が認められなかった品種同士の形状を比較すると、互いに類似した形状のイチゴが多い品種同士であることがわかる。
【表3】
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【表4】
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【実施例】
【0028】
<実施例2:イチゴの形状解析、解析工程(B)、(B-4)>
イチゴの色彩画像を撮像し、複数の外観特徴情報に基づく品種識別を行った。
イチゴ果実の形状・表面色彩(特許文献1に記載の手法により求めた)・サイズ(同)データに対して分散分析を行った結果を表5に示す。分散分析の結果、0.1%水準で品種間に有意差が認められた。次に,TukeyHSD法による多重比較検定の結果を表6に示す。この結果においては、91通りの品種の組合せ中、61通りの品種間で有意差が認められた。特に、y02、y14、y31では、13品種中11品種との間、y08、y10、y35では、13品種中10品種との間で有意差が認められた。同一品種内であっても栽培条件の違いなどに起因する外観特徴の差異はあるものの、今回用いた試料では大半の品種間で有意差が確認できた。一方で、有意差が認められなかった品種同士のイチゴ果実の外観特徴を見てみると、形状・色彩・サイズのいずれかが類似したイチゴが多く含まれる品種同士であることがわかる。
【表5】
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【表6】
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【実施例】
【0029】
<実施例3:スイカの形状解析、解析工程(B)、(B-4)>
スイカの色彩画像を撮像し、複数の外観特徴情報に基づく品種識別を行った。
試料としてのスイカは、三重県津市内のスーパーマーケット(マルヤス南が丘店三重県津市垂水750-25)と契約し、品種ごとに同じ農家で同じ時期に栽培された3品種のスイカを用いた(表7)。イチゴ画像撮像時のカメラの設定を表8に示す。
【表7】
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【表8】
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【実施例】
【0030】
一般にスイカの品種識別においては、果実形状がそれほど有用な情報を持たないと考えられるため、色彩情報とサイズ情報だけを用いた品種識別を試みた。スイカ果実の断面色彩(特許文献1に記載の手法により求めた)・サイズ(同)データ対して分散分析を行った結果を表9に示す。用いた3つの品種間で有意差が認められた。次に、TukeyHSD法による多重比較検定の結果を表10に示す。用いた全ての品種間で有な差が認められた
【表9】
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【表10】
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【実施例】
【0031】
<実施例4:イチゴの形状解析、解析工程(B)、(B-5)>
イチゴの色彩画像を撮像し、複数の外観特徴情報に基づく品種識別を行った。
MDSの結果を図11に示す。同図から,第1軸(横軸)あるいは第2軸(縦軸)の値の変化に伴ってイチゴの外観特徴が変化していることが確認された。ここで、第1軸に対し、果実表面の平均L値と果実サイズとを説明変数として、重回帰分析を行った結果を表11に示す。r=0.950と非常に高い相関が認められ、L値と果実サイズの効果はそれぞれ0.1%%水準で有意であった。又、回帰式も0.1%水準で有意であったことから、第1軸は、果実表面の明度値と果実サイズ変化を表している。次に、第2軸に対し、果実表面の平均a値、平均b値と果実サイズとを説明変数として、重回帰分析を行った結果を表12に示す。この場合も、r=0.813と相関関係が認められ、果実サイズとb値の効果は0.1%水準、aの効果は5%水準で有意であった。又、回帰式も0.1%水準で有意であったため、第2軸は果実表面の色彩と果実サイズの変化に対応する。以上の結果から、イチゴ果実の外観特徴の精細な変化をMDSによって可視化できることがわかった。
これまでの農産物の外観特徴の評価は、専門家による定性的かつ主観的な評価法によって行われてきた。そのため、図11のように外観特徴の微細な変化を表わすことは非常に困難であった。MDSの結果では、それぞれの軸がイチゴ果実の外観特徴の変化を表していることから、今後,例えば育種分野においては、イチゴの遺伝情報とMDSによる二次元平面への射影の結果をリンクさせることで、どのような遺伝情報を持つイチゴと近い表現型を有するものであるかを容易に調べることができる。
【表11】
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【表12】
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【実施例】
【0032】
<実施例5:イチゴの形状解析、解析工程(B)、(B-5)>
イチゴの色彩画像を撮像し、複数の外観特徴情報に基づく品種識別を行った。
クラスター数を14として階層的クラスター分析を行った結果を図12に示す。同図から、色彩や形状、テクスチャ等の外観特徴が類似したイチゴが、同じクラスターに分類されることが確認できた。ここで、クラスターごとの平均HSV値、球の形状モデル(図10(A))との形状非類似度の平均値、及び基準イチゴのサイズを1としたときの平均サイズを表13に示す。この結果から、Cluster6、7、10、11、12の平均V値は他のクラスターと比べ小さいことがわかる。したがって、これらのクラスターに含まれるイチゴは、表面の色彩が黒ずんだものであり、商品価値の低いクラスターである。又、球との形状の非類似度値では、Cluster1、2、12、14においてその値が小さいことから、これらのクラスターには、みを帯びた形状のイチゴが多く含まれる。反対に、Cluster5、9、11では非類似度値が大きいことから、ここでは円錐形のイチゴが多いクラスターである。更に、クラスターごとの果実サイズの平均は、Cluster4、5、8、13、14で小さく、Cluster1、7、10、12で大きくなっている。したがって、前者は果実サイズの小さいイチゴが多く、後者は比較的大きなイチゴが多く含まれるクラスターである。このように各クラスターが異なる特徴を有しており、果実の形状・色彩・サイズ等の外観特徴に基づく分類がなされていたことから、本システムと階層的クラスター分析によるイチゴの品質評価が可能となる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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