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明細書 :微細流路のバルブ構造、これを備えるマイクロデバイス、マイクロセンサ及びマイクロリアクター及び微細流路の送液制御方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5879611号 (P5879611)
公開番号 特開2013-088211 (P2013-088211A)
登録日 平成28年2月12日(2016.2.12)
発行日 平成28年3月8日(2016.3.8)
公開日 平成25年5月13日(2013.5.13)
発明の名称または考案の名称 微細流路のバルブ構造、これを備えるマイクロデバイス、マイクロセンサ及びマイクロリアクター及び微細流路の送液制御方法
国際特許分類 G01N  35/08        (2006.01)
G01N  37/00        (2006.01)
FI G01N 35/08 A
G01N 37/00 101
請求項の数または発明の数 17
全頁数 14
出願番号 特願2011-227516 (P2011-227516)
出願日 平成23年10月16日(2011.10.16)
審査請求日 平成26年10月12日(2014.10.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】浮田 芳昭
【氏名】高村 禅
個別代理人の代理人 【識別番号】100154966、【弁理士】、【氏名又は名称】海野 徹
審査官 【審査官】福田 裕司
参考文献・文献 特開2007-033225(JP,A)
国際公開第2006/077695(WO,A1)
国際公開第2006/106608(WO,A1)
特開2011-033477(JP,A)
独国特許出願公開第102009050947(DE,A1)
調査した分野 G01N 35/00~37/00
特許請求の範囲 【請求項1】
内部に液体を収容した少なくとも2つの上流側容器と、当該上流側容器内の液体を受容するための下流側容器と、上流側容器と下流側容器とを繋ぐ流路とが基板上に設けられ、前記上流側容器内の液体に外力を作用させることで、前記流路を通して前記下流側容器に液体が送られるように構成した微細流路のバルブ構造において、
前記下流側容器に気体排出口を設けると共に、前記上流側容器のうち気体導入口を設けたものを第1上流側容器、気体導入口を設けないものを第2上流側容器とし、
前記第1上流側容器と前記下流側容器を繋ぐ流路を第1流路、前記第1上流側容器又は前記第1流路と前記第2上流側容器の上流側とを繋ぐ流路を第2流路、前記第2上流側容器の下流側と前記下流側容器又は前記第1流路若しくは前記第2流路が接続されている場合には接続部分よりも下流側の前記第1流路とを繋ぐ流路を第3流路とし、
第1上流側容器から前記第1流路を介して下流側容器への送液を開始した時点では、当該第1上流側容器内の液体によって前記第2流路の一部が封鎖されており、送液中の所定の時点又は送液が終了した時点で当該封鎖が解除されることで、第2上流側容器からの送液が自動的に開始されることを特徴とする微細流路のバルブ構造。
【請求項2】
気体導入口を設けた第1上流側容器と、
気体導入口を設けない第2上流側容器と、
気体排出口を設けた下流側容器と、
前記第1上流側容器と前記下流側容器とを繋ぐ第1流路と、
前記第1上流側容器又は前記第1流路と前記第2上流側容器の上流側とを繋ぐ第2流路と、
前記第2上流側容器の下流側と前記下流側容器又は前記第1流路若しくは前記第2流路が接続されている場合には接続部分よりも下流側の前記第1流路とを繋ぐ第3流路と、
を備えたことを特徴とする微細流路のバルブ構造。
【請求項3】
前記気体導入口及び前記気体排出口それぞれ前記第1上流側容器及び前記下流側容器に対して前記外力の作用方向の反対方向側に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の微細流路のバルブ構造。
【請求項4】
前記第1上流側容器を前記第2上流側容器に対して前記外力の作用方向側に配置したことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の微細流路のバルブ構造。
【請求項5】
前記第2流路が、前記第1上流側容器又は前記第1流路との接続部から前記外力の作用方向の反対方向側に屈曲した後、第2上流側容器に繋がる構造となっていることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の微細流路のバルブ構造。
【請求項6】
前記下流側容器を前記上流側容器に対して前記外力の作用方向側に配置したことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の微細流路のバルブ構造。
【請求項7】
前記外力が遠心力と重力のうち少なくとも一方であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の微細流路のバルブ構造。
【請求項8】
前記第2上流側容器を複数備えていることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の微細流路のバルブ構造。
【請求項9】
前記複数の第2上流側容器のそれぞれが前記第1上流側容器に直接繋がる並列構造を有することを特徴とする請求項に記載の微細流路のバルブ構造。
【請求項10】
前記複数の第2上流側容器を第2‐1~第2‐n(nは1以上の自然数)番目の上流側容器とした場合に、前記第1上流側容器に第2‐1番目の上流側容器が繋がり、第2‐1番目の上流側容器に第2‐2番目の上流側容器に繋がり、以下同様に第2‐(n-1)番目の上流側容器に第2‐n番目の上流側容器が繋がる直列構造を有することを特徴とする請求項に記載の微細流路のバルブ構造。
【請求項11】
請求項に記載のバルブ構造と請求項10に記載のバルブ構造を備えることを特徴とする微細流路のバルブ構造。
【請求項12】
前記下流側容器を設けずに、前記第1上流側容器と前記気体排出口とを直接前記第1流路で繋ぐ構成として第1上流側容器から第1流路を通して送られた液体を気体排出口から外部に排出する及び/又は前記第2上流側容器と前記気体排出口とを直接流路で繋ぐ構成として第2上流側容器から流路を通して送られた液体を気体排出口から外部に排出することを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の微細流路のバルブ構造。
【請求項13】
請求項1~12のうちいずれか一つに記載された微細流路のバルブ構造を備えることを特徴とするマイクロデバイス。
【請求項14】
請求項1~12のうちのいずれか一つに記載された微細流路のバルブ構造を備えることを特徴とするマイクロセンサ。
【請求項15】
請求項1~12のうちのいずれか一つに記載された微細流路のバルブ構造を備えることを特徴とするマイクロリアクター。
【請求項16】
内部に液体を収容した少なくとも2つの上流側容器と、当該上流側容器内の液体を受容するための下流側容器と、上流側容器と下流側容器とを繋ぐ流路とが基板上に設けられ、前記上流側容器内の液体に外力を作用させることで、前記流路を通して前記下流側容器に液体が送られるように構成した微細流路の送液制御方法において、
前記下流側容器に気体排出口を設けると共に、前記上流側容器のうち気体導入口を設けたものを第1上流側容器、気体導入口を設けないものを第2上流側容器とし、
前記第1上流側容器と前記下流側容器を繋ぐ流路を第1流路、前記第1上流側容器又は前記第1流路と前記第2上流側容器の上流側とを繋ぐ流路を第2流路、前記第2上流側容器の下流側と前記下流側容器又は前記第1流路若しくは前記第2流路が接続されている場合には接続部分よりも下流側の前記第1流路とを繋ぐ流路を第3流路とし、
第1上流側容器から前記第1流路を介して下流側容器への送液を開始した時点では、当該第1上流側容器内の液体によって前記第2流路の一部が封鎖されており、送液中の所定の時点又は送液が終了した時点で当該封鎖が解除されることで、第2上流側容器からの送液が自動的に開始されることを特徴とする微細流路の送液制御方法。
【請求項17】
前記下流側容器を設けずに、前記第1上流側容器と前記気体排出口とを直接前記第1流路で繋ぐ構成として第1上流側容器から第1流路を通して送られた液体を気体排出口から外部に排出する及び/又は前記第2上流側容器と前記気体排出口とを直接流路で繋ぐ構成として第2上流側容器から流路を通して送られた液体を気体排出口から外部に排出することを特徴とする請求項16に記載の微細流路の送液制御方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、生体物質の分析や化学反応などに使用されるマイクロデバイス等に設けた微細流路内の液体の送液を制御するためのバルブ構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、試料分析の各工程の手間を省き、作業時間を短縮するための技術として、マイクロ統合分析システム(Micro Total Analysis System:μTAS)あるいはラボチップ(Lab-on-a-chip)と呼ばれる数センチないし数ミリ程度の超小型の生化学分析デバイス(マイクロデバイス)が登場してきた。
マイクロデバイスはこれまで人手で行っていた各オペレーションやオペレーション間の試料の移動など、分析に関わる一連の工程を1つの基板上で再現するものであり、従来と比較して試料や試薬の必要量が少ない、反応時間が短い、廃棄物が少ないなどのメリットがあり、医療診断、環境や食品のオンサイト分析、医薬品や化学品の生産等、広い分野での利用が期待されている。
【0003】
通常、マイクロデバイスは、一つの基板上にリアクタやリザーバー等の各種容器及びこれらを繋ぐ微細流路、微細流路を通る液体の流れを制御するためのバルブ等が形成されており、液体の混合、加熱、冷却などによる反応制御や、分光学的あるいは電気的作用を応用した検出作業を可能としている。
マイクロデバイスで用いる液体としては、たとえば血液・蛋白・遺伝子などを含む溶液、微生物・動植物細胞などの固体成分を含む溶液、各種化学物質を含む環境水、土壌抽出水など、さらにはそれらの分析に使用する各種の試薬、バッファ液、洗浄水などが挙げられる。以下、本明細書中ではこれらマイクロデバイスで用いる各種液体をまとめて単に「液体」と表記する。
【0004】
マイクロデバイスでは複数の容器内の液体の流れを制御する、いわゆる送液制御のためのバルブ構造の開発が望まれている。
例えば、非特許文献1には、コンパクトディスク(CD)からなる基板上に作成した複数の容器それぞれの出口にくびれを作り、各くびれで液体を表面張力により保持することでバルブとしての機能を持たせた構造が開示されている。
本構造では、くびれで保持した溶液に対して加える圧力を、容器の形状及び位置、CDの回転数、くびれのサイズ及び表面物性等で適宜調節することで、容器から液体が流出するタイミングを制御する仕組みになっている。
【0005】
また、非特許文献2には、容器の出口や流路に、酸化鉄のナノ粒子を混ぜた樹脂(ワックス)を詰めて閉鎖する構造が開示されている。
本構造では、CDの回転を止めた上で、所望位置のワックスにレーザを照射して酸化鉄を発熱させることでワックスを溶かし、再度CDを回転させて遠心力を加えることによって液体を流出させる仕組みになっている。
【0006】
また、非特許文献3には、遠心力、毛間力、表面張力及びサイフォンの原理を併用する方法が開示されている。すなわち、容器の流出口から出た微細流路が一旦CDの回転中心側に屈曲した後、再び径方向外側に屈曲して他の容器に至る構造になっている。
本構造では、まずCDを高速回転させると、流路内の液体には遠心力により径方向外側に向かう力が作用するが、微細流路が回転中心側に屈曲しているため、液体は当該屈曲箇所に留まる。次に、CDの回転数を低くすると、屈曲箇所の液体に作用する遠心力が小さくなるため、液路内壁と液体との濡れ性を良好なものにしておくことにより、液体は毛管力により回転中心側に流れ出す。そして、CDの回転数を再度上昇させると、液体は再び他の容器に向かって流れ出し、その後はサイフォンの原理により容器内の液体が順次他の容器に移動していく仕組みになっている。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】S.Laiet al., Anal. Chem., 2004, 76, pp. 1832-1837
【非特許文献2】B. S. Lee et al., Lab Chip, 2009, 9, pp. 1548-1555
【非特許文献3】G. Welte et al., Proc. of Micro TAS 2010, pp. 818-820
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記技術では以下のような問題がある。
すなわち、非特許文献1では、バルブの特性の一部は液体の粘度や表面張力、流路表面の濡れ性などの物性に依存することになるが、これら物性は温度・湿度等の環境の影響を受け易いため、設計当初の機能を発揮させることが難しく、誤作動により2種類の液体が混在してしまうというような問題がある。また、構造上、遠心力の影響を受け易いため、極めて高回転に動作させることが困難であると共に、また、動作開始直後は低い回転数に抑えておく必要がある。したがって、例えば高回転により全血から血清だけを遠心分離により取り出すような作業には適さないという問題がある。
【0009】
また、非特許文献2では、ワックスを流路に詰める作業が煩雑であると共に時間を要するという問題がある。また、溶融したワックスが液体に混入する可能性があるという問題がある。また、レーザを照射するためにCDの回転を一旦停止する必要があるという問題や、レーザ照射位置の正確な制御を可能にする制御機構を設ける必要があるため、製造コストが増大するという問題や、更には、複数個所のワックスを同時に加熱するには複数のレーザ照射機構を設ける必要があるという問題があった。
【0010】
また、非特許文献3では、CDの回転数を適宜変化させることで液体に作用する遠心力と毛管力を調節する必要があるため、回転数を正確に制御できる制御機構を設ける必要があるという問題や、流路内壁の濡れ性等の物性や液体の物性の影響を強く受けるため、正確な送液が難しいという問題がある。
【0011】
本発明はこのような問題に鑑み、液体や流路内壁の物性の影響をほとんど受けず、安価且つ簡便な制御機構で動作可能な微細流路のバルブ構造、これを備えるマイクロデバイス、マイクロセンサ及びマイクロリアクター及び微細流路の送液制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の微細流路のバルブ構造は、内部に液体を収容した少なくとも2つの上流側容器と、当該上流側容器内の液体を受容するための下流側容器と、上流側容器と下流側容器とを繋ぐ流路とが基板上に設けられ、前記上流側容器内の液体に外力を作用させることで、前記流路を通して前記下流側容器に液体が送られるように構成した微細流路のバルブ構造において、
前記下流側容器に気体排出口を設けると共に、前記上流側容器のうち気体導入口を設けたものを第1上流側容器、気体導入口を設けないものを第2上流側容器とし、前記第1上流側容器と前記下流側容器を繋ぐ流路を第1流路、前記第1上流側容器又は前記第1流路と前記第2上流側容器の上流側とを繋ぐ流路を第2流路、前記第2上流側容器の下流側と前記下流側容器又は前記第1流路若しくは前記第2流路が接続されている場合には接続部分よりも下流側の前記第1流路とを繋ぐ流路を第3流路とし、第1上流側容器から前記第1流路を介して下流側容器への送液を開始した時点では、当該第1上流側容器内の液体によって前記第2流路の一部が封鎖されており、送液中の所定の時点又は送液が終了した時点で当該封鎖が解除されることで、第2上流側容器からの送液が自動的に開始されることを特徴とする。
また、気体導入口を設けた第1上流側容器と、気体導入口を設けない第2上流側容器と、気体排出口を設けた下流側容器と、前記第1上流側容器と前記下流側容器とを繋ぐ第1流路と、前記第1上流側容器又は前記第1流路と前記第2上流側容器の上流側とを繋ぐ第2流路と、前記第2上流側容器の下流側と前記下流側容器又は前記第1流路若しくは前記第2流路が接続されている場合には接続部分よりも下流側の前記第1流路とを繋ぐ第3流路と、を備えたことを特徴とする。

【0013】
また、前記気体導入口及び前記気体排出口がそれぞれ前記第1上流側容器及び前記下流側容器に対して前記外力の作用方向の反対方向側に設けたことを特徴とする。
また、前記第1上流側容器を前記第2上流側容器に対して前記外力の作用方向側に配置したことを特徴とする。
また、前記第2流路が、前記第1上流側容器又は前記第1流路との接続部から前記外力の作用方向の反対方向側に屈曲した後、第2上流側容器に繋がる構造となっていることを特徴とする。
また、前記下流側容器を前記上流側容器に対して前記外力の作用方向側に配置したことを特徴とする。
【0014】
また、前記外力が遠心力と重力のうち少なくとも一方であることを特徴とする。
また、前記第2上流側容器を複数備えていることを特徴とする。
また、前記複数の第2上流側容器のそれぞれが前記第1上流側容器に直接繋がる並列構造を有することを特徴とする。
また、前記複数の第2上流側容器を第2‐1~第2‐n(nは1以上の自然数)番目の上流側容器とした場合に、前記第1上流側容器に第2‐1番目の上流側容器が繋がり、第2‐1番目の上流側容器に第2‐2番目の上流側容器に繋がり、以下同様に第2‐(n-1)番目の上流側容器に第2‐n番目の上流側容器が繋がる直列構造を有することを特徴とする。
【0015】
また、上記バルブ構造を併用することを特徴とする。
また、前記下流側容器を設けずに、前記第1上流側容器と前記気体排出口とを直接前記第1流路で繋ぐ構成として第1上流側容器から第1流路を通して送られた液体を気体排出口から外部に排出する及び/又は前記第2上流側容器と前記気体排出口とを直接流路で繋ぐ構成として第2上流側容器から流路を通して送られた液体を気体排出口から外部に排出することを特徴とする。
また、本発明のマイクロデバイスは、上記微細流路のバルブ構造を備えることを特徴とする。
また、本発明のマイクロセンサは、上記微細流路のバルブ構造を備えることを特徴とする。
また、本発明のマイクロリアクターは、上記微細流路のバルブ構造を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の微細流路の送液制御方法は、内部に液体を収容した少なくとも2つの上流側容器と、当該上流側容器内の液体を受容するための下流側容器と、上流側容器と下流側容器とを繋ぐ流路とが基板上に設けられ、前記上流側容器内の液体に外力を作用させることで、前記流路を通して前記下流側容器に液体が送られるように構成した微細流路の送液制御方法において、前記下流側容器に気体排出口を設けると共に、前記上流側容器のうち気体導入口を設けたものを第1上流側容器、気体導入口を設けないものを第2上流側容器とし、前記第1上流側容器と前記下流側容器を繋ぐ流路を第1流路、前記第1上流側容器又は前記第1流路と前記第2上流側容器の上流側とを繋ぐ流路を第2流路、前記第2上流側容器の下流側と前記下流側容器又は前記第1流路若しくは前記第2流路が接続されている場合には接続部分よりも下流側の前記第1流路とを繋ぐ流路を第3流路とし、第1上流側容器から前記第1流路を介して下流側容器への送液を開始した時点では、当該第1上流側容器内の液体によって前記第2流路の一部が封鎖されており、送液中の所定の時点又は送液が終了した時点で当該封鎖が解除されることで、第2上流側容器からの送液が自動的に開始されることを特徴とする。
また、前記下流側容器を設けずに、前記第1上流側容器と前記気体排出口とを直接前記第1流路で繋ぐ構成として第1上流側容器から第1流路を通して送られた液体を気体排出口から外部に排出する及び/又は前記第2上流側容器と前記気体排出口とを直接流路で繋ぐ構成として第2上流側容器から流路を通して送られた液体を気体排出口から外部に排出することを特徴とする。

【発明の効果】
【0017】
本発明の微細流路のバルブ構造によれば、第1上流側容器からの送液を開始した時点では、当該第1上流側容器内の液体によって第2流路の一部が封鎖される。そして、送液中の所定の時点又は送液が終了した時点で当該封鎖が解除されると、第2上流側容器からの送液が自動的に開始される。
すなわち、原則的に第1上流側容器の送液が終了するまでは第2上流側容器の送液は開始されず、第1上流側容器の送液が終了したことをきっかけにして第2上流側容器の送液が自動的に開始される。したがって、流路内で第1上流側容器の液体と第2上流側容器の液体とが混在するような事態を確実に防止できる。
【0018】
また、流路内壁の濡れ性や液体の粘度等の物性の影響や気温・湿度等の環境の影響をほとんど受けず、第1上流側容器、第2上流側容器及び流路の構造で送液を制御できるので、設計段階とほぼ同等の正確な送液制御を実現できる。
また、液体に対する外力を遠心力によるとものとすると、基板を回転させるための制御機構を簡略化でき、また、圧力可変装置やレーザ照射装置等の機器も不要であるため、製造コストを抑えることができる。
また、液体に対する外力を遠心力によるとものとすると、動作開始直後からすぐに基板を高速回転させることができるので、例えば全血の遠心分離作業等に特に有用である。
【0019】
また、気体導入口及び気体排出口を外力の作用方向の反対方向側に設けることで、液体と気体との置換がスムーズに行われ、送液のスピードを上げることができる。
また、第1上流側容器を第2上流側容器に対して外力の作用方向側に配置して水頭差を設けたり、第2流路を外力の作用方向の反対方向側に屈曲させて当該屈曲部に第1上流側容器内の液体を留めておくことで、第1上流側容器内の液体が第2流路を介して第2上流側容器に流れ込む事態を防止できる。
【0020】
また、第2上流側容器を複数配置することで、複数種類の液体の送液が可能となる。
また、複数の第2上流側容器を並列構造や直列構造としたり、これらを組み合わせた構造とすることで、時間差による逐次送液や同時送液が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一の実施の形態における微細流路のバルブ構造を示す図
【図2】第二の実施の形態における微細流路のバルブ構造を示す図
【図3】第三の実施の形態における微細流路のバルブ構造を示す図
【図4】第四の実施の形態における微細流路のバルブ構造を示す図
【図5】第五の実施の形態における微細流路のバルブ構造を示す図
【図6】第六の実施の形態における微細流路のバルブ構造を示す図
【図7】第七の実施の形態における微細流路のバルブ構造を示す図
【図8】第八の実施の形態における微細流路のバルブ構造を示す図
【図9】第九の実施の形態における微細流路のバルブ構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第一の実施の形態]
本発明の微細流路のバルブ構造の第一の実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施の形態におけるバルブ構造10は、基板(図示省略)上に配置した2つの上流側容器1及び2、下流側容器3及び流路4から概略構成されている。

【0023】
上流側容器は、気体導入口5を備える第1上流側容器1と気体導入口5を備えない第2上流側容器2に区分されており、両容器の内部には予め液体が収容されている。液体の種類は2つの容器で異なるものにしてもよいし、同一種類のものでもよい。
また、第1上流側容器1を第2上流側容器2に対して僅かに外力の作用方向側に配置している。すなわち、第2上流側容器2を第1上流側容器1と比較して、外力が遠心力の場合には基板の回転中心に近い側に配置し、外力が重力の場合には上方に配置している。
気体導入口5は第1上流側容器1の側面であって、外力の作用方向の反対側に設けられている。すなわち、外力が遠心力の場合には回転中心に近い側に設けられており、外力が重力の場合には上方に設けられている。
なお、気体の種類は特に限定されるものではないが、用途に応じて例えば空気、窒素、二酸化炭素等、酸素が挙げられる。

【0024】
下流側容器3は上流側容器1及び2内の液体を収容するために設けられており、気体排出口6を備えている。本実施の形態では下流側容器3を一つだけ配置し、上記第1上流側容器1と第2上流側容器2とで共用する構成になっているが、第1上流側容器1用と第2上流側容器2用の2つの下流側容器を配置してもよく、この場合も各下流側容器に気体排出口を設けることになる。
気体排出口6も上記気体導入口5と同様に、下流側容器3の側面であって外力の作用方向の反対側に設けられている。
また、上流側容器1及び2に対し、下流側容器3は外力の作用方向側に配置されている。すなわち、外力が遠心力の場合には回転中心に近い側に上流側容器1及び2を配置し、上流側容器1及び2に対して径方向外側に下流側容器3を配置しており、外力が重力の場合には上流側容器1及び2を上方に配置し、下流側容器3を下方に配置している。

【0025】
流路4は上流側容器1及び2と下流側容器3とを繋ぐものであり、第1上流側容器1と下流側容器3を繋ぐ流路を第1流路4a、第1流路4aと第2上流側容器2とを繋ぐ流路を第2流路4bとしている。なお、第2流路4bを第1上流側容器1と第2上流側容器2とを繋ぐように配置してもよい。
また、第2流路4bは、第1流路4aとの接続部から外力の作用方向の反対方向側に一旦屈曲した後、第2上流側容器2に繋がる構造となっている。なお、第2流路4bの内径はある程度、例えば10μm~100μm程度の小さいものにすることが好ましい。内径がこれより大きい場合には、外力の作用により第2流路4bが押し潰されて内径が小さくなる結果、第2流路4b内に存在する第1上流側容器1の液体が押し出されて第2上流側容器2に入ってしまうおそれがあるためである。

【0026】
なお、上流側容器1及び2、下流側容器3及び流路4の材質は特に限定されるものではなく、有機材料では例えばシリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、フッ素樹脂、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどのエラストマーなどが挙げられ、無機材料では例えばガラス、石英、アルミナ、ジルコニアなどが挙げられる。また、各容器及び流路の内壁に濡れ性等の物性を調節するための処理を施していてもよい。

【0027】
次に、本実施の形態のバルブ構造の動作について説明する。
まず、図1(a)に示すように、第1上流側容器1と第2上流側容器2の両者に予め液体を収容し、下流側容器3は空の状態にしておくか、あらかじめ反応試薬等を収容しておいてもよい。図1では例として空にした状態を示している。
この状態から基板を回転させて液体に外力を作用させると、図1(b)に示すように、第1上流側容器1内の液体のほとんどが第1流路4aを通って下流側容器3内に入っていくと共に液体の一部が第2流路4b側に侵入する。第2流路4b側に侵入した液体にも外力が作用しているため、当該液体は流路の屈曲箇所で留まる。

【0028】
第1上流側容器1から下流側容器3への送液に関しては、第1上流側容器1からの単位時間当たりの送液量とほぼ同じ割合で気体導入口5から気体が第1上流側容器1内に導入され、更に、ほぼ同じ割合で気体排出口6から下流側容器3内の気体が外部に排出される、つまり、気体導入口5及び気体排出口6を介して液体と気体との置換が速やかに行われるので、第1上流側容器1内の液体は速やかに第1流路4aを通って下流側容器3内に入っていく。

【0029】
一方、第2上流側容器2に関しては、上記の通り、第1上流側容器1の液体の一部が第2流路4b側の屈曲箇所で留まり、第2流路4bを封鎖することになるため、第2上流側容器2への気体の供給が遮断される。
したがって、第1上流側容器1からの送液が終了するまでは第2上流側容器2内の液体はほとんどが第2上流側容器2内に留まっており、ごく一部のみが外力の作用を受けて下流側容器3に繋がる流路内に侵入することになる。
そして、第1上流側容器1内から下流側容器3への液送が完了する直前のタイミングで、上記第2流路4b側に侵入していた液体が第1流路4a側に戻ることで第2流路4bの封鎖が解除される。なお、第2流路4b側に侵入していた液体は速やかに下流側容器3内に入っていく。

【0030】
第2流路4bの封鎖が解除されることで、気体排出口6から第1上流側容器1及び第2流路4bを介して第2上流側容器2へ気体が進入し出すため、図1(c)に示すように、第2上流側容器2から下流側容器3への送液が自動的に開始され、図1(d)に示すように第2上流側容器2内の液体のほとんど全てが下流側容器3内に入っていき、送液が終了する。

【0031】
このように第1上流側容器1内の液体の送液がほぼ完了した後、第2上流側容器2内の液体の送液が自動的に開始されるので、下流側容器3に対して第1上流側容器1内の液体と第2上流側容器2内の液体とが流路内で混在することがない。

【0032】
[第二の実施の形態]
次に、本発明の微細流路のバルブ構造の第二の実施の形態について説明する。なお、上記第一の実施の形態と同様の構成となる箇所については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態においては、図2に示すように、基板上に第2上流側容器2が複数(図では4つ)配置されており、各第2上流側容器2‐1~2‐4が第1上流側容器1に直接繋がる並列構造を有する点に特徴を有する。

【0033】
この構造によると、第1上流側容器1内の液体は外力の作用方向に流れ出すため、複数の第2上流側容器2のうち、第1上流側容器1に対して最も外力の作用方向の反対側に繋がっている第2‐1番目の上流側容器内の液体から送液が開始され、第1上流側容器1に対して最も外力の作用方向側に繋がっている第2‐4番目の上流側容器からの送液が最後に開始される。
なお、下流側容器3は各第2上流側容器2に対して一つずつ配置してもよく、全ての第2上流側容器2で共用してもよい。

【0034】
このように、第1上流側容器1を利用して4つの第2上流側容器2からの送液を時間をずらして(調節して)逐次行うことができるので、送液の時間調節を可能とした水時計(タイマー)としての機能を持ったバルブ構造を得られる。
また、この場合、第1上流側容器1の液体は必ずしも分析用液体として使用しなくてもよいので、例えば精製水などの物性が明らかな液体を使用することにすれば、タイマー機能の精度を向上させることができる。

【0035】
[第三の実施の形態]
次に、本発明の微細流路のバルブ構造の第三の実施の形態について説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成となる箇所については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態においては、図3に示すように、基板上に第2上流側容器2が複数(図では3つ)配置されており、各第2上流側容器2‐1~2‐3が直列的に第1上流側容器1に直接繋がっている点に特徴を有する。

【0036】
すなわち、第1上流側容器1に第2‐1番目の上流側容器が繋がり、第2‐1番目の上流側容器に第2‐2番目の上流側容器に繋がり、第2‐2番目の上流側容器に第2‐3番目の上流側容器が繋がる直列構造になっている。
この構造によると、第1上流側容器1からの送液が開始され、第1上流側容器1内の気体が第2流路4bとの接続部に至った時点で、第2‐1番目の上流側容器からの送液が開始され、以下順に第2‐2番目、第2‐3番目の上流側容器の順に送液が開始される。
このように、第1上流側容器1を利用して3つの第2上流側容器2からの送液を連鎖的(逐次的)に行うことができるので、送液連鎖機能を持ったバルブ構造を得られる。

【0037】
[第四の実施の形態]
次に、本発明の微細流路のバルブ構造の第四の実施の形態について説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成となる箇所については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態においては、図4に示すように、上記第二の実施の形態で示した水時計型のバルブ構造と、第三の実施の形態で示した連鎖型バルブ構造を組み合わせた点に特徴を有する。
この構造によると、第1上流側容器1に対して外力の作用方向の反対方向側に接続した3つの第2上流側容器2から連鎖的に送液が開始され、水時計機能により所定時間経過後に、他方の3つの第2上流側容器2から連鎖的に送液を開始できる。また、この接続を逆にして連鎖的送液の後水時計機能を開始することも可能である。

【0038】
[第五の実施の形態]
次に、本発明の微細流路のバルブ構造の第五の実施の形態について説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成となる箇所については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態においては、図5に示すように、第2流路4bを途中で分岐させて2つの第2上流側容器2に接続している点に特徴を有する。
この構造によると2つの第2上流側容器2から同時に送液を開始できる。

【0039】
[第六の実施の形態]
次に、本発明の微細流路のバルブ構造の第六の実施の形態について説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成となる箇所については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態においては、図6に示すように、上記第二の実施の形態で示した連鎖型構造に加えて、下流側容器3を共通化すると共に下流側容器3から別途外力の作用方向の反対側に屈曲する流路4cを設けた点と、第1上流側容器1の体積が下流側容器3の体積より小さく、第1上流側容器1の体積と第2‐1番目の上流側容器の体積とを足し合わせたものが、下流側容器3の体積よりも大きくなるようにした点に特徴を有する。

【0040】
この構造によるとまず第1上流側容器1内の液体が下流側容器3に入り、次に第2‐1番目の上流側容器内の液体が下流側容器3に入ることにより両液体が混在した状態で別途設けた流路4cから送液される。一旦当該流路4cから送液が開始されると、いわゆるサイフォン効果により下流側容器3内の液体は継続的に液送され、この時気体排出口6は気体導入口5として働く。第2‐2番目の上流側容器内の液体は第1上流側容器1内の液体と第2‐1番目の上流側容器内の液体とが混在した状態、あるいは第2‐2番目の上流側容器内の液体のみが空の状態の下流側容器3に入った後、別途設けた流路4cから送液される。このように、本構造によると複数の液体を混在させた状態で他の容器に送ることができる。

【0041】
[第七の実施の形態]
次に、本発明の微細流路のバルブ構造の第七の実施の形態について説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成となる箇所については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態においては、図7に示すように、上記第六の実施の形態で示した構造に加えて、第2-2番目の上流側容器からの流路が、第2‐1番目の上流側容器からの流路に合流する前に別途時間調整用容器7を設けた点に特徴を要する。

【0042】
この構造によると、第2‐2番目の上流側容器の液体は一旦時間調整用容器7内に入った後、サイフォン効果により下流側容器3に入る。
したがって、当該第2‐2番目の上流側容器内の液体が、第1上流側容器1内の液体と第2‐1番目の上流側容器内の液体との混合液体に混ざることなく、当該混合液体が下流側容器3から別途設けた流路4cを介して送られた後、下流側容器3に入り、その後送られることになる。このように、本構造によると複数種類の液体の混合液体と、非混合液体とを順に送ることができる。

【0043】
[第八の実施の形態]
次に、本発明の微細流路のバルブ構造の第八の実施の形態について説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成となる箇所については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態においては、図8に示すように、第2流路4bを3つに分岐させ、各分岐流路を容器8‐1~8‐3に繋ぐと共に、各容器に第2‐1~第2‐3番目の上流側容器を繋ぎ、各上流側容器に気体導入口を設けた点に特徴を要する。
この構造によると、第1上流側容器1内の送液が終了した後、第2‐1~第2‐3番目の上流側容器から各容器8‐1~8‐3への送液が同時に行うことができる。この際には、第1上流側容器1の気体導入口5は気体排出口として機能する。

【0044】
[第九の実施の形態]
次に、本発明の微細流路のバルブ構造の第九の実施の形態について説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成となる箇所については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態においては、図9に示すように、第2上流側容器2の長手方向の側部に流路4dを設けた点に特徴を要する。

【0045】
この構造において、図9(a)に示すように第2上流側容器2内に粒子懸濁液を入れておき、外力として遠心力を作用させると、図9(b)に示すように第1上流側容器1内の送液が終了するまでの所定時間内に、第2上流側容器2内において、遠心力の作用により液体成分と粒子が分離する。そして、第1上流側容器1内の送液が終了した時点で、図9(c)に示すように、第2上流側容器2に設けた流路4dから液体成分のみを自動的に送ることができる。
なお、上記各実施の形態においては各容器及び流路を基板表面上に形成したケースについて説明したが、例えば各容器及び流路を基板表面上に積層する構造にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
液体や流路内壁の物性の影響をほとんど受けず、安価且つ簡便な制御機構で動作可能な微細流路のバルブ構造等であり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0047】
1 第1上流側容器
2 第2上流側容器
3 下流側容器
4 流路
4a 第1流路
4b 第2流路
5 気体導入口
6 気体排出口
7 時間調整用容器
8 容器
10 バルブ構造

図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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