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明細書 :X線回折方法および中性子線回折方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4492779号 (P4492779)
公開番号 特開2003-098124 (P2003-098124A)
登録日 平成22年4月16日(2010.4.16)
発行日 平成22年6月30日(2010.6.30)
公開日 平成15年4月3日(2003.4.3)
発明の名称または考案の名称 X線回折方法および中性子線回折方法
国際特許分類 G01N  23/20        (2006.01)
G01N  23/204       (2006.01)
G21K   1/06        (2006.01)
FI G01N 23/20
G01N 23/204
G21K 1/06 G
請求項の数または発明の数 8
全頁数 7
出願番号 特願2001-289460 (P2001-289460)
出願日 平成13年9月21日(2001.9.21)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2001年3月21日 社団法人日本セラミックス協会発行の「2001年年会講演予稿集」に発表
審査請求日 平成18年12月21日(2006.12.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】佐伯 淳
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100077517、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 敬
【識別番号】100087413、【弁理士】、【氏名又は名称】古賀 哲次
【識別番号】100093665、【弁理士】、【氏名又は名称】蛯谷 厚志
【識別番号】100102990、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良博
【識別番号】100080919、【弁理士】、【氏名又は名称】田崎 豪治
審査官 【審査官】遠藤 孝徳
参考文献・文献 特開平11-304729(JP,A)
特開平06-213835(JP,A)
特開平09-072865(JP,A)
特開平05-087748(JP,A)
特開平11-030597(JP,A)
特開平03-216537(JP,A)
特開2000-039409(JP,A)
特開2001-021509(JP,A)
特開2000-055838(JP,A)
特開2001-228103(JP,A)
調査した分野 G01N 23/00-23/227
G21K 1/00-1/06
JSTPlus(JDreamII)
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
試料における逆格子点をX線回折方法により測定する際に、入射X線と回折X線のなす角度である2θ軸、入射X線と試料のなす角度であるω軸、X線の入射方向に対して垂直方向のあおり角であるψ軸ならびに試料の面内回転角であるφ軸からなる4つの可動軸を備えたX線回折を用い、2θ軸とω軸をカップリングさせて一定の角度区間を走査し、ついでψ軸をシフトして再び2θ軸とω軸をカップリングさせながら一定の角度区間を走査することを最大で角度90度まで繰返すことにより逆格子点を測定し、ならびにこの測定中にφ軸を高速回転させることを特徴とするX線回折方法。
【請求項2】
試料における逆格子点をX線回折方法により測定する際に、入射X線と回折X線のなす角度である2θ軸、入射X線と試料のなす角度であるω軸、X線の入射方向に対して垂直方向のあおり角であるψ軸ならびに試料の面内回転角であるφ軸からなる4つの可動軸を備えたX線回折を用い、2θ軸とω軸をカップリングさせて一定の角度区間を走査し、ついでω軸をシフトして再び2θ軸とω軸をカップリングさせながら一定の角度区間を走査することを最大で角度90度まで繰返すことにより逆格子点を測定し、ならびにこの測定中にφ軸を高速回転させることを特徴とするX線回折方法。
【請求項3】
φの高速回転が全空間における逆格子を収集できるような回転である請求項1もしくは2記載のX線回折方法。
【請求項4】
試料より反射する回折X線を検出する検出器の前にスリットを挿入する請求項1もしくは2記載のX線回折方法。
【請求項5】
試料における逆格子点を中性子線回折方法により測定する際に、入射中性子線と回折中性子線のなす角度である2θ軸、入射中性子線と試料のなす角度であるω軸、中性子線の入射方向に対して垂直方向のあおり角であるψ軸ならびに試料の面内回転角であるφ軸からなる4つの可動軸を備えた中性子線回折を用い、2θ軸とω軸をカップリングさせて一定の角度区間を走査し、ついでψ軸をシフトして再び2θ軸とω軸をカップリングさせながら一定の角度区間を走査することを最大で角度90度まで繰返すことにより逆格子点を測定し、ならびにこの測定中にφ軸を高速回転させることを特徴とする中性子線回折方法。
【請求項6】
試料における逆格子点を中性子線回折方法により測定する際に、入射中性子線と回折中性子線のなす角度である2θ軸、入射中性子線と試料のなす角度であるω軸、中性子線の入射方向に対して垂直方向のあおり角であるψ軸ならびに試料の面内回転角であるφ軸からなる4つの可動軸を備えた中性子線回折を用い、2θ軸とω軸をカップリングさせて一定の角度区間を走査し、ついでω軸をシフトして再び2θ軸とω軸をカップリングさせながら一定の角度区間を走査することを最大で角度90度まで繰返すことにより逆格子点を測定し、ならびにこの測定中にφ軸を高速回転させることを特徴とする中性子線回折方法。
【請求項7】
φの高速回転が全空間における逆格子を収集できるような回転である請求項5もしくは6記載の中性子線回折方法。
【請求項8】
試料より反射する回折中性子線を検出する検出器の前にスリットを挿入する請求項5もしくは6記載の中性子線回折方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はX線もしくは中性子線回折方法に関し、さらに詳しくは試料における空間的な逆格子点を測定するためのX線もしくは中性子線回折方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
薄膜において、様々な目的の特性向上のために配向性の制御が行なわれる。しかしながら、基板の状態、膜の特性、組成、成膜条件の変動等により膜構造の乱れ、異相の出現が生じやすくなる。このような薄膜等における表面の特性を評価するに際して、その配向性を把握するために空間的な逆格子点を測定することが多い。逆格子は三次元空間の中の点の配列であり、結晶格子(実格子)の一組の格子面(hkl)が、逆格子の空間では、座標hklの一点で表される。そして、(1)逆格子点Pに対応する一組の結晶面(hkl)はブラッグの法則にしたがって入射X線を反射する。(2)回折X線の方向は逆空間内に描かれた反射球の中心点Cから反射球の表面上の点Pに向かい、回折X線の方向と一次X線の方向の間の角度は2θである。ここで上記反射球は一次X線の方向(すなわち入射および投下X線の方向)の単位ベクトルsが、一つの直径に平行となるように、半径1/λ(λはX線の波長)の球を描いたものである。結晶(したがって結晶格子)が一つの回転軸のまわりを回転するとき、逆格子は原点O(透過X線が反射球から出てくる点)を通り結晶の回転軸に平行な軸のまわりに同じ角度だけ回転して、反射球を通り抜ける。この反射球の中に含まれる逆格子点はすべて回折点として記録される可能性を持つ。膜構造の複雑化に伴いその表面の特性を評価するために、このような逆格子点の測定が利用されることが多くなっている。しかしながら、粉末X線回折計によると、測定面に平行な面間隔の測定(薄膜では配向面のみの情報)には適するが、逆格子空間マップの測定には不向きである。電子線回折法が用いられることも多いが、電子線の利用は超高真空の測定環境を必要とし、試料も非常に限定される。したがって、空気中において非破壊で試料を評価しうる方法が望まれ、その1つとして4つの可動軸を有し、これらを走査することにより、多岐にわたる測定が可能な薄膜材料結晶性解析X線回折装置(Materials Research Diffractometer :MRD)が知られており、逆格子空間マップ測定機能も有する。
【0003】
このMRDにおいては、4つの可動な軸(ω、2θ、ψおよびφ軸)を組合わせて走査して、逆格子空間マップを作成することができる。しかし、この方法ではφ軸の回転は低速回転であり、しかも低角度(試料の影で測定できない)に難があるがψ軸よりも精度の高いωシフトが利用されていることと相俟って、基板および膜の構造が既知であり、しかも相互の格子軸が実質的に平行でないと評価しにくい難点がある。したがって、基板に平行な配向面の強度が弱かったり、消滅則などで出ない相が出現した場合、その存在を見落とす可能性があり、全空間の逆格子点マップを得ることは困難である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者は、薄膜等における空間的な逆格子を見落とすことなく非破壊で測定し得、未知相の同定や双晶の存在確認も可能としうるX線もしくは中性子線回折方法を見出すべく検討を行ない本発明に到達した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、
(1)試料における逆格子点をX線回折方法により測定する際に、入射X線と回折X線のなす角度である2θ軸、入射X線と試料のなす角度であるω軸、X線の入射方向に対して垂直方向のあおり角であるψ軸ならびに試料の面内回転角であるφ軸からなる4つの可動軸を備えたX線回折を用い、
2θ軸とω軸をカップリングさせて一定の角度区間を走査し、ついでψ軸をシフトして再び2θ軸とω軸をカップリングさせながら一定の角度区間を走査することを最大で角度90度まで繰返すことにより逆格子点を測定し、ならびに
この測定中にφ軸を高速回転させることを特徴とするX線回折方法、
(2)試料における逆格子点をX線回折方法により測定する際に、入射X線と回折X線のなす角度である2θ軸、入射X線と試料のなす角度であるω軸、X線の入射方向に対して垂直方向のあおり角であるψ軸ならびに試料の面内回転角であるφ軸からなる4つの可動軸を備えたX線回折を用い、
2θ軸とω軸をカップリングさせて一定の角度区間を走査し、ついでω軸をシフトして再び2θ軸とω軸をカップリングさせながら一定の角度区間を走査することを最大で角度90度まで繰返すことにより逆格子点を測定し、ならびに
この測定中にφ軸を高速回転させることを特徴とするX線回折方法、
(3)試料における逆格子点を中性子線回折方法により測定する際に、入射中性子線と回折中性子線のなす角度である2θ軸、入射中性子線と試料のなす角度であるω軸、中性子線の入射方向に対して垂直方向のあおり角であるψ軸ならびに試料の面内回転角であるφ軸からなる4つの可動軸を備えた中性子線回折を用い、
2θ軸とω軸をカップリングさせて一定の角度区間を走査し、ついでψ軸をシフトして再び2θ軸とω軸をカップリングさせながら一定の角度区間を走査することを最大で角度90度まで繰返すことにより逆格子点を測定し、ならびに
この測定中にφ軸を高速回転させることを特徴とする中性子線回折方法、ならびに
(4)試料における逆格子点を中性子線回折方法により測定する際に、入射中性子線と回折中性子線のなす角度である2θ軸、入射中性子線と試料のなす角度であるω軸、中性子線の入射方向に対して垂直方向のあおり角であるψ軸ならびに試料の面内回転角であるφ軸からなる4つの可動軸を備えた中性子線回折を用い、
2θ軸とω軸をカップリングさせて一定の角度区間を走査し、ついでω軸をシフトして再び2θ軸とω軸をカップリングさせながら一定の角度区間を走査することを最大で角度90度まで繰返すことにより逆格子点を測定し、ならびに
この測定中にφ軸を高速回転させることを特徴とする中性子線回折方法、にある。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
まず、本発明においては、試料における空間的な逆格子点が測定されるが、試料としては薄膜、積層、単結晶等のバルク試料をそのままの状態(非破壊)で使用しうる。
【0008】
本発明においては4つの可動軸を有するX線回折装置が使用される。この4つの可動軸は、入射X線と回折X線のなす角度である2θ軸、入射X線と試料のなす角度であるω軸、X線の入射方向に対して垂直方向のあおり角であるψ軸ならびに試料の面内回転角であるφ軸からなる。3次元空間の逆格子点を測定するためには、3つの軸を走査する必要がある。本発明においては、好適には2θ軸とω軸をカップリングさせて一定の角度区間を走査し、ついでψ軸をシフトして再び2θ軸とω軸をカップリングさせながら一定の角度区間を走査することを最大で角度90度まで繰返すことにより逆格子点を測定し、この測定中にはφ軸を高速回転させる。
【0009】
このように2θ軸とω軸をカップリングさせながら走査させるとき、2θ軸がメインの軸となる2θ/ω、およびω軸がメインとなるω/2θの組合せが可能であるが、前者が好適である。上述のように、一定の角度区間の走査が終了した後に、ψ軸をシフトし、再び2θとωの走査を行なう。ψ軸のシフト角度は試料の種類、回折装置の種類、操作条件等を考慮して全空間における逆格子を収集できるように適宜選択されるが、通常1~5度程度から選択される。ψ軸をシフトしての再走査は最大で角度90度まで繰返されるが、目的により適宜その角度を選定しうる。
【0010】
本発明においては、この測定中に、φ軸を高速回転させることが必要であるが、これはφ軸の高速回転は全空間における逆格子を収集できるような回転であることを意味する。たとえば、ステップ走査の場合、2θ軸(もしくはω軸)の1ステップ(たとえば、0.01~1度。0.01~1度/秒程度で)毎に1回転以上回転するようにして、格子点を見落とすことがないようにすることを目的とする。また、連続走査の場合にも、ステップ走査に相当するような回転速度が選ばれ、格子点を見落とすことがないようにする。このため、たとえば上記のMRDのような市販装置を使用する場合には、φ軸はこのような高速回転(たとえば60~1800rpm)は不可能である(高々数rpmであり、通常の走査では2θ軸もしくはω軸の1ステップ毎に1回転以上回転することはできない)ので、試料ステージ上に新たに高速回転できるφ軸回転ステージを設ける必要がある(既設のφ軸は使用されない)。さらに、本発明においては、検出器の前にψ軸方向の分離を向上させるためにスリットを設け、ψ軸方向の発散を低減し、ピークの測定位置精度を高めるのが好適である。このような点から、スリットは横方向の拡散を抑える縦スリットが好適であり、その開き角度は通常0.1~3度程度から選ばれる。
【0011】
本発明においては上記のように、一定の角度区間の走査が終了した後に、ψ軸をシフトさせていくのが好適であるが、目的によっては(たとえば低角における逆格子点のデータを重視しなくてもよい場合)、ψ軸のシフトに代えて従来のようなω軸のシフトによってもよい。
【0012】
X線に代えて中性子線を用いる場合は、線源として加速器によりパルス的に発生される中性子線、または原子炉で発生される定常的な中性子線を利用しうる。これらの線源から得られる熱中性子線の強度は性能のよいX線管から得られるビームより低いが、上記のX線回折の場合と同様に、上記の構成により中性子線回折(中性子回折)を実施しうる。
【0013】
次に図面により本発明をさらに詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明において用いられるX線回折計の試料ステージ部分の概略図であり、試料ステージ上に新たにφ軸回転ステージ(高速タイプ:回転速度60~1800rpm)が設けられている。そして検出器の前には単孔(クロス)スリットが設けられている(開き角:0.25°)(図示せず)。
【0015】
図2は、本発明において逆格子空間を測定するために、φ軸を高速回転(600rpm)させながら2θ/ω走査し(1ステップを0.02度(0.5秒)として、ψ軸をシフト(2度づつ)させて全空間的な逆格子点を収集する様子を示すものである(2θ/ω-ψ-φ走査)。図3の(b)および(c)は、水溶液より析出したCaCu(Cl1-xBr)層状結晶(テトラゴナル、a=0.374nm,c=2.668nm)を上記の条件で走査して逆格子点を測定(実施例1)して得られたマップを示す。図3の(a)は同一試料について得られたバルクX線回折図形を示す。ただし、矢印は図3の(b)に示す走査マップより予測されるピーク位置を示す(粉末X線回折図形で確認された)。図3の(c)は全空間の逆格子点を2次元マップとして重畳した逆格子空間マップを示し、縦軸は逆格子ユニットQ/rlu、そして横軸は逆格子ユニットQ/rluである。
実施例2
測定試料はKrFエキシマレーザーを用いたプラズマレーザー堆積(PLD)法でSi(001)基板上に成膜したMA/CeO/YSZ薄膜(MA:Al添加MgO)とインダクション・カップリング・プラズマ(ICP)フラッシュ蒸発法によりMgO(001)基板上に成膜したYSZ薄膜を用いた。実施例1と同様にしてMA/CeO/YSZ薄膜およびSi基板の逆格子点を測定したところ、Alを2モル%添加したMgO膜には通常のX線回折(XRD)で観察される(001)、(101)、(111)配向以外に新たに(311)配向のドメインが存在していることがわかった。
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば、薄膜等における空間的な逆格子を見落とすことなく非破壊で測定し得、未知相の固定や双晶の存在確認も可能としうるX線もしくは中性子線回折方法が提供される。すなわち、本発明によれば、結晶、薄膜試料等をバルクの状態のままで2次元マッピング測定でき、得られる逆格子を用いて、・未知層の同定が可能 ・極点図形測定を得るための有用な情報が得られ、・格子の歪み等が直接読み取れる ・結晶方位の揺らぎ等の立体的な解析がマッピングにより容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において用いられるX線回折計の試料ステージ部分の概略図。
【図2】本発明において逆格子空間を測定する1態様を示す。
【図3】(a)はCaCu(Cl1-xBr)層状結晶について得られたバルクX線回折図形を示す。(b)および(c)は、同一結晶の逆格子点を測定(実施例1)して得られたマップを示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2