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明細書 :重金属固定化剤及び重金属固定化方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4837291号 (P4837291)
公開番号 特開2006-223569 (P2006-223569A)
登録日 平成23年10月7日(2011.10.7)
発行日 平成23年12月14日(2011.12.14)
公開日 平成18年8月31日(2006.8.31)
発明の名称または考案の名称 重金属固定化剤及び重金属固定化方法
国際特許分類 C09K   3/00        (2006.01)
A62D   3/33        (2007.01)
B09B   3/00        (2006.01)
C02F   1/62        (2006.01)
A62D 101/43        (2007.01)
FI C09K 3/00 S
A62D 3/33
B09B 3/00 304G
B09B 3/00 304H
C02F 1/62 B
C02F 1/62 C
C02F 1/62 D
C02F 1/62 E
C02F 1/62 Z
A62D 101:43
請求項の数または発明の数 2
全頁数 16
出願番号 特願2005-041004 (P2005-041004)
出願日 平成17年2月17日(2005.2.17)
審査請求日 平成20年2月15日(2008.2.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】加賀谷 重浩
【氏名】石塚 俊章
【氏名】小林 紀秋
【氏名】佐野 寛
個別代理人の代理人 【識別番号】100075351、【弁理士】、【氏名又は名称】内山 充
審査官 【審査官】川島 明子
参考文献・文献 特開2003-154336(JP,A)
特開2003-301165(JP,A)
特開2003-136039(JP,A)
特開昭53-025287(JP,A)
特開平08-332475(JP,A)
特開昭64-090083(JP,A)
調査した分野 A62D 3/00-3/40
B09B 3/00
C09K 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
ジチオカルバミン酸、ジチオカルボン酸、キサントゲン酸、ジチオリン酸又はトリチオリン酸のマンガン錯体又はマンガン塩であって、該マンガン錯体又はマンガン塩の25℃における水に対する溶解度が5質量%以下であることを特徴とする重金属固定化剤。
【請求項2】
重金属を含有する廃棄物若しくは廃液又は重金属により汚染された土壌に、請求項1記載の重金属固定化剤を、土壌と重金属固定化剤の合計100質量部に対して、10~60質量部を添加して、温度0~100℃で混練又は該混練後0~50℃で養生することを特徴とする重金属固定化方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属固定化剤及び重金属固定化方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、重金属を含有する廃棄物若しくは廃液又は重金属により汚染された土壌に少量を添加して混合することにより、廃棄物又は土壌からの重金属の溶出を防止することができ、重金属固定化剤に由来する有害成分の溶出も生じない重金属固定化剤及び該固定化剤を用いる重金属固定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴミ焼却炉や火力発電所などから発生する焼却灰や飛灰、産業廃棄物、廃水、汚染土などは、水銀、カドミウム、鉛、クロム、ヒ素、セレンなどの人体に有害な重金属を含んでいるために、厚生省告示により定められた処理方法、すなわち、セメント固化法、酸抽出法、キレート固化法及び溶融固化法の4種から選択された方法によって処理された後に処分される。これらの4種の処理方法の中では、容易でかつ安価なキレート固化法が多く採用されている。
キレート固化法においては、使用されるキレート化剤が重金属に配位して水に不溶なキレート化合物を形成することによって、重金属が固定化される。例えば、強力なキレート作用を有し、寒冷地などの低温下でも安定な状態で使用することができる重金属固定剤及び無害化処理方法として、ジチオカルバミン酸カリウム塩水溶液からなる重金属固定剤、及び、該重金属固定剤を重金属汚染土壌又は重金属含有灰に添加したのち混練する方法が提案されている(特許文献1)。また、土壌、EP灰、重金属スラッジなどの固体状廃棄物中の有害重金属類を確実に固定化して溶出を防止することができる重金属類の固定化方法として、ポリアミン類とエピハロヒドリンとが重縮合したポリアミンの活性水素原子と置換したジチオカルボキシ基及び/又はその塩類を置換基として有する金属捕集剤の水溶液を、土壌又は固体状廃棄物に添加し、重金属類を不溶化する方法が提案されている(特許文献2)。
しかし、近年では、ダイオキシン問題の解決、飛灰の減量化又はリサイクル化を目的として、ゴミ焼却炉の改良、開発が行われたことに伴い、高炉方式やガス化溶融炉などから発生する飛灰は、有害な重金属の含有量が従来に比して増加しており、特に溶融飛灰は結果として重金属が濃縮された二次飛灰を発生し、ジチオカルバミン酸アルカリ塩水溶液などの従来のキレート化剤を大幅に増量して使用しても、重金属を固定化できない事例が多くなっている。
また、これらの従来のキレート化剤は、一般に水溶液の状態で用いられている。しかし、水溶液状のキレート化剤は、焼却灰などと混練する設備が比較的安価で済むという利点があるものの、水溶液を大量に使用する必要がある場合、たとえ有害な重金属を固定化できたとしても、処理飛灰中に多くの水が含まれることになり、その結果、処理灰に強度がなくなり、取り扱いが困難になる。このような場合には、処理灰に強度を持たせるために、さらにセメントを使用する必要があるが、設備が複雑になるという問題がある。また、非常に多くのキレート化剤液量を必要とするために、コストが高くなるという欠点もあった。
さらに、水溶液状のキレート化剤は、液の性状が強アルカリ性である場合や、他の薬剤が混入した場合には有害ガスが発生するといった問題、漏出した場合には水質汚濁の原因になるといった問題などがあり、取り扱いにあたっては専門的な知識や十分な注意を必要とするものである。
これらの欠点を改善する方法として、降雨によって溶出することなく、少量で、飛灰との混合温度に左右されることなく重金属を強固に固定化することができる飛灰の重金属固定剤として、N,N-ジ置換ジチオカルバミン酸の亜鉛塩、鉄塩又はテルル塩からなる重金属固定剤が提案されている(特許文献3)。また、飛灰及び焼却灰の処理剤として好適に用いることができる重金属類溶出防止剤として、水に難溶性のジチオカルバミン酸塩、特に亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩などの遷移金属塩を含む重金属溶出防止剤が提案されている(特許文献4)。しかし、本発明者らの追試によると、これらは重金属を固定化するのに長時間を必要とし、溶融飛灰のような高濃度に重金属を含有している場合には多くの添加量が必要であった。
また、重金属を固定化する処理の際には、重金属固定化剤である塩の陽イオン、すなわち、亜鉛、鉄、テルル、コバルトなどのイオンと重金属が置き換わることから、処理飛灰から重金属固定化剤に由来する亜鉛、鉄、テルル、コバルトなどが遊離し、その後アルカリによって溶出してくるといった結果も生じている。この場合は、例えば、灰の埋立場からの浸出水にこれらの金属が含まれることになるなどの問題が生ずる。
したがって、ゴミ焼却炉関係業界から、添加量が少量でも重金属などの固定化能力が高く、さらに処理後の飛灰の取扱い上の問題が生じない重金属固定化剤の開発が強く要望されている。

【特許文献1】特開平8-332475号公報
【特許文献2】特開昭64-90083号公報
【特許文献3】特開2003-154336号公報
【特許文献4】特開2003-301165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、重金属を含有する廃棄物若しくは廃液又は重金属により汚染された土壌に少量を添加して混合することにより、廃棄物又は土壌からの重金属の溶出を防止することができ、重金属固定化剤に由来する有害成分の溶出も生じない重金属固定化剤及び該固定化剤を用いる重金属固定化方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のマンガン錯体が高い重金属固定化能力を有し、少量でも強固に重金属を固定化することができ、かつ処理に際してマンガンの溶出がないことを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)ジチオカルバミン酸、ジチオカルボン酸、キサントゲン酸、ジチオリン酸又はトリチオリン酸のマンガン錯体又はマンガン塩であって、該マンガン錯体又はマンガン塩の25℃における水に対する溶解度が5質量%以下であることを特徴とする重金属固定化剤、及び、
(2)重金属を含有する廃棄物若しくは廃液又は重金属により汚染された土壌に、(1)記載の重金属固定化剤を、土壌と重金属固定化剤の合計100質量部に対して、10~60質量部を添加して、温度0~100℃で混練又は該混練後0~50℃で養生することを特徴とする重金属固定化方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の重金属固定化剤は、ゴミ焼却炉から発生する飛灰などの重金属を含有する廃棄物や廃液、重金属により汚染された土壌などに対して、少量の添加により重金属を強固に固定化することができる。本発明の重金属固定化剤及び重金属固定化方法によれば、処理後の廃棄物からのマンガンの溶出は見られない。
本発明の重金属固定化剤は、水難溶性であって剤型を粉末状とすることができ、それ自体の取り扱い性に優れ、貯蔵及び輸送を効率的かつ容易に行うことができる。また、廃棄物と混練する際に、強アルカリ性を示す水溶液状のものとは異なり、有害ガスの発生や、処理飛灰の強度の低下を伴うことがない。したがって、重金属の固定化作業を容易に行うことができ、作業環境の点でも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の重金属固定化剤は、ジチオカルバミン酸、ジチオカルボン酸、キサントゲン酸、ジチオリン酸又はトリチオリン酸のマンガン錯体又はマンガン塩を含有する。
本発明に用いるマンガン錯体の製造方法に特に制限はなく、例えば、塩化マンガン(II)などの水溶性マンガン(II)塩の水溶液に、ジチオカルバミン酸、ジチオカルボン酸、キサントゲン酸、ジチオリン酸若しくはトリチオリン酸又はこれらの水溶性塩の水溶液を添加して混合することにより、マンガン(II)錯体を結晶として析出させることができる。さらに、マンガン(II)錯体の結晶が析出した水溶液に過酸化水素などの酸化剤を添加して酸化し、あるいは、曝気して空気酸化することにより、マンガンの酸化数を高めて、マンガン(III)錯体又はマンガン(IV)錯体を得ることができる。
水溶性マンガン(II)としては、例えば、酢酸マンガン(II)、臭化マンガン(II)、炭酸マンガン(II)、硝酸マンガン(II)、硫酸マンガン(II)、塩化マンガン(II)、チオシアン酸マンガン(II)などを挙げることができる。
【0007】
本発明におけるジチオカルバミン酸は、アミン類と二硫化炭素とを塩基の存在下で反応させて得ることができる。例えば、(ア)炭素数1~10の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和脂肪族基を有するジチオカルバミン酸、(イ)置換基を有していてもよいアラルキルジチオカルバミン酸などの芳香族ジチオカルバミン酸、(ウ)炭素数1~32の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族ビスジチオカルバミン酸、(エ)置換基を有していてもよい芳香族ビスジチオカルバミン酸、(オ)置換基を有していてもよい芳香族トリスジチオカルバミン酸、(カ)ポリアミンと二硫化炭素との反応物、(キ)ポリエチレンイミンと二硫化炭素との反応物、(ク)ポリアミンとエピハロヒドリンとが重縮合した重縮合物ポリアミンと二硫化炭素との反応物、(ケ)ポリビニルアミンと二硫化炭素との反応物、(コ)ポリアリルアミンと二硫化炭素との反応物などを挙げることができる。
ジチオカルボン酸は、グリニヤール試薬と二硫化炭素とを反応させた後に加水分解させることより得ることができる。例えば、(サ)炭素数1~10の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和脂肪族ジチオカルボン酸、(シ)置換基を有していてもよい芳香族ジチオカルボン酸、これらの混合物などを挙げることができる。
【0008】
キサントゲン酸は、アルコール系又はフェノール系化合物と二硫化炭素とを塩基の存在下で反応させて得ることができる。例えば、(ス)炭素数1~10の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和脂肪族キサントゲン酸、(セ)置換基を有してもいてもよい芳香族キサントゲン酸、(ソ)多価アルコール又はフェノール樹脂と二硫化炭素との反応物、これらの混合物などを挙げることができる。
ジチオリン酸及びトリチオリン酸は、アルコール系又はフェノール系化合物と五硫化二リンとを反応させて得ることができる。例えば、(タ)炭素数1~10の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和脂肪族ジチオリン酸又はトリチオリン酸、(チ)置換基を有していてもよい芳香族ジチオリン酸又はトリチオリン酸、(ツ)多価アルコール又はフェノール樹脂と五硫化二リンとの反応物、これらの混合物などを挙げることができる。
【0009】
前記のジチオカルバミン酸、ジチオカルボン酸、キサントゲン酸、ジチオリン酸又はトリチオリン酸の製造に用いることのできる原料は、以下の通りである。
前記(ア)の製造に用いるアミン類としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アリルアミンなどの低分子量第一級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアリルアミンなどの低分子量第二級アミン;シクロヘキシルアミン、モルホリン、ピペリジン、メチルピペリジン、ジメチルピペリジン、ピロリジン、ピロール、ピロリン、インドール、インドリン、イミダゾール、N-メチルピペラジン、N-エチルピペラジン、N-メチルホモピペラジンなどの環状アミンなどを挙げることができる。
前記(イ)の製造に用いるアミン類としては、例えば、ベンジルアミン、アニリンなどの第一級アミン;ジベンジルアミン、ベンジルメチルアミン、ベンジルエチルアミン、フェニルメチルアミン、フェニルエチルアミンなどの第二級アミンなどを挙げることができる。
前記(ウ)の製造に用いるアミン類としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなどのアルキレンジアミン;ジプロピルエーテルジアミン、ジプロポキンエタンジアミン、ジプロポキシジメチルプロパンジアミンなどのジアルキレンエーテルジアミン;ピペリジン、ピペラジン、メチルピペラジン、ジメチルピペラジン、ホモピペラジンなどの環状ジアミンなどを挙げることができる。
【0010】
前記(エ)の製造に用いるアミン類としては、例えば、フェニレンジアミン、アセトグアナミン、ジアミノピリジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルプロパンなどを挙げることができる。
前記(オ)の製造に用いるアミン類としては、例えば、メラミン、イソシアヌル酸などを挙げることができる。
前記(カ)の製造に用いるポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、トリブチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、テトラブチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどを挙げることができる。
前記(キ)の製造に用いるポリエチレンイミンとしては、例えば、重量平均分子量1,000~1,000,000のポリエチレンイミンなどを挙げることができる。
前記(ク)の製造に用いるポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなどのアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、トリブチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、テトラブチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのポリアルキレンポリアミン;ジプロピルエーテルジアミン、ジプロポキシエタンジアミン、ジプロポキシジメチルプロパンジアミンなどのジアルキレンエーテルジアミン;ピペリジン、ピペラジン、メチルピペラジン、ジメチルピペラジン、ホモピペラジンなどの環状ジアミン;フェニレンジアミン、アセトグアナミン、ジアミノピリジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルプロパンなどの芳香族ジアミンなどを挙げることができる。
【0011】
前記(ケ)の製造に用いるポリビニルアミンとしては、例えば、重量平均分子量2,000~500,000のポリビニルアミンなどを挙げることができる。
前記(コ)の製造に用いるポリアリルアミンとしては、例えば、重量平均分子量3,000~1,000,000のポリアリルアミンなどを挙げることができる。
前記(サ)の製造に用いるグリニヤール試薬としては、例えば、メチルマグネシウムハライド、エチルマグネシウムハライド、プロピルマグネシウムハライド、イソプロピルマグネシウムハライド、ブチルマグネシウムハライド、ペンチルマグネシウムハライド、ヘキシルマグネシウムハライドなどの低分子量アルキルマグネシウムハライドなどを挙げることができる。
前記(シ)の製造に用いるグリニヤール試薬としては、例えば、フェニルマグネシウムハライド、メチルフェニルマグネシウムハライド、メトキシフェニルマグネシウムハライド、トリメチルフェニルマグネシウムハライド、ナフチルマグネシウムハライドなどを挙げることができる。これらのマグネシウムハライドは、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。なお、ハライドとしては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物などを挙げることができる。
【0012】
前記(ス)の製造に用いるアルコール系化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、オクタノールなどの低分子量アルコールなどを挙げることができる。
前記(セ)の製造に用いるフェノール類としては、例えば、フェノール、ハイドロキノン、カテコールなどのフェノール系化合物やフェノール樹脂などを挙げることができる。
前記(ソ)の製造に用いる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、キシリレングリコールなどのジオール;グリセリン、エリスリトール、トリメチロールプロパン、単糖類、多糖類、ポリアルコール、セルロースなどのポリオール、これらの混合物などを挙げることができる。
前記(タ)の製造に用いるアルコール系化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、オクタノールなどの低分子量アルコールなどを挙げることができる。
前記(チ)製造に用いるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ハイドロキノン、カテコール、フェノール樹脂などを挙げることができる。
前記(ツ)の製造に用いる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、キシリレングリコールなどのジオール;グリセリン、エリスリトール、トリメチロールプロパン、単糖類、多糖類、ポリアルコール、セルロースなどのポリオールなどを挙げることができる。
【0013】
本発明において、マンガン錯体及びマンガン塩は、水難溶解性であることが好ましく、25℃における水に対する溶解度が5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明の重金属固定化剤は、ジチオカルバミン酸、ジチオカルボン酸、キサントゲン酸、ジチオリン酸又はトリチオリン酸のマンガン錯体又はマンガン塩のうち、いずれか一つの系から選ばれる1種又は2種以上のマンガン錯体又はマンガン塩を含有することができ、異なる2つ以上の系から選ばれる2種以上のマンガン錯体又はマンガン塩を含有することもできる。本発明の重金属固定化剤は、これらのマンガン錯体又はマンガン塩100質量%の剤とすることができ、あるいは、必要に応じてその他の成分を混合することもできる。本発明の重金属固定化剤の剤型に特に制限はなく、例えば、粉末状、結晶状、少量の水や溶媒を添加したペースト状のいずれとすることもでき、必要に応じて分散液状とすることもできる。
本発明の重金属固定化剤によって固定化することができる重金属としては、例えば、鉛、カドミウム、クロム、水銀、亜鉛、銅、ヒ素、セレンなどを挙げることができる。
【0014】
本発明の重金属固定化方法においては、重金属を含有する廃棄物若しくは廃液又は重金属により汚染された土壌に本発明の重金属固定化剤を混合する。重金属を含有する廃棄物としては、例えば、ゴミ焼却炉や火力発電所などから発生する焼却灰、飛灰などを挙げることができる。本発明の重金属固定化方法によれば、重金属により汚染された土壌、重金属を含む廃液などの外に、重金属を溶出しやすい物質であれば、人体に有害な重金属を固定化することが可能である。重金属固定化剤の添加量は、焼却飛灰などの被処理物中に含まれる重金属の濃度によっても変動するが、有効成分であるマンガン錯体の合計質量が、被処理物100質量部に対して0.05~50質量部となる量を加えることが好ましい。
本発明方法において、被処理物が、焼却灰、飛灰、汚染土壌などの固体やペースト状物である場合には、本発明の重金属固定化剤を添加した後に混練することが好ましい。この場合、混練がより容易になるように、重金属固定化剤に予め適量の水を加えることができ、重金属固定化剤を焼却飛灰などの被処理物に加えて混合した後に水を加えて混練することもでき、あるいは、重金属固定化剤と水を同時に加えて混練することもできる。水の添加量は、被処理物の性状、重金属固定化剤の添加量などによって変動することができるが、被処理物と重金属固定化剤の合計100質量部に対して、10~60質量部であることが好ましい。
【0015】
混練の温度は0~100℃であることが好ましく、混練時間は5~30分間であることが好ましい。混練の後にさらに養生する場合には、混練時間を多少短くすることができ、例えば、30秒~10分間混練したのち、好ましくは0~100℃、より好ましくは0~50℃で10分以上養生することが好ましく、8時間以上養生することがより好ましい。
本発明方法においては、重金属固定化剤が焼却灰などの被処理物中に均一に混合されることが好ましく、そのために、重金属固定化剤を適当な粉体と混合することによって希釈したのち用いることができる。この際に使用する粉体としては、例えば、セメント、活性白土、酸性白土などの多孔質アルミニウムシリケート、多孔質二酸化珪素などを挙げることができる。
本発明方法により固定化処理された処理物は、そのまま産業廃棄物として埋め立てなどの廃棄処理を行うことができる。この際、必要に応じてセメントなどの固化剤を用いて処理灰を固化した後に廃棄することもできる。
被処理物が、重金属を含有する廃液などの液体である場合には、本発明の重金属固定化剤を添加して撹拌することにより、廃液中の重金属を捕捉することができる。撹拌の際の温度や時間に特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0016】
キレート固化法において従来より用いられているキレート化剤は、水溶液状のものが殆どであって、水に溶解したキレート化剤が重金属類とキレート化合物を形成する機構によって重金属を固定化するものである。また、ジチオカルバミン酸系キレート化剤を粉末状に賦形したものも重金属固定化剤として知られているが、この場合でも重金属類の固定は、被処理物と粉末状のキレート化剤とを混合して水とともに混練する際に、キレート化剤が水に溶解することによって重金属類とキレートを形成するという機構に基づいている。
本発明において用いるマンガン錯体又はマンガン塩は、水難溶性であるにも拘わらず優れた固定化能を示すものであって、重金属類の固定化は、従来のようにキレート化剤が水に溶解する過程を経てキレート化合物を形成するものとは異なる機構で行われているか、あるいは、重金属固定化剤が水に溶解することがキレート形成の決定的な要因ではないと推察される。
本発明の重金属固定化剤及び重金属固定化方法によれば、焼却灰、飛灰、廃水などの廃棄物や、廃液や、汚染土壌に含まれる人体に有害な重金属を固定化して無害化処理することができる。本発明の重金属固定化剤は、重金属の固定化能力に優れ、少量の使用により重金属を強固に固定化することができ、さらに、処理飛灰などから重金属固定化剤に由来するマンガンが溶出することもない。
【実施例】
【0017】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例においては、試料飛灰として、都市ゴミ焼却炉より採取したカルシウム18l,000mgCa/kg、鉛15,700mgPb/kg、亜鉛1,300mgZn/kgを含有する飛灰を用いた。
また、重金属溶出試験は、環境庁告示第13号「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」に準じて行った。重金属固定化剤により処理した飛灰50gを、pH6.0の水500mLに加えて6時間振盪して溶出したのち、孔径1μmのフィルターでろ過した。得られたろ液について、JIS K 0102 54.3に従って鉛、JIS K 0102 56.4に従ってマンガン、JIS K 0102 53.3に従って亜鉛、JIS K 0102 57.4に従って鉄をそれぞれ定量した。
【0018】
実施例1
塩化マンガン(II)5.0質量部を水50質量部に溶解した水溶液に、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム20.4質量部を水100質量部に溶解した水溶液を添加し、沈殿を生成させた。得られた沈殿を含む溶液に、30質量%過酸化水素水45.0質量部を添加して撹拌した。次に、沈殿をろ過し、水で洗浄して風乾することでジエチルジチオカルバミン酸マンガン(III)錯体16.9質量部を得た。
試料飛灰80質量部に、水24質量部とジエチルジチオカルバミン酸マンガン(III)錯体12質量部を添加し、25℃で20時間養成させた。養成後、得られた処理飛灰について重金属溶出試験を行い、金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛0.1mgPb/L未満、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.1mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
実施例2
塩化マンガン(II)5.0質量部を水50質量部に溶解した水溶液に、ジベンジルジチオカルバミン酸ナトリウム35.2質量部を水100質量部に溶解した水溶液を添加し、沈殿を生成させた。得られた沈殿を含む溶液に、30質量%過酸化水素水45.0質量部を添加して撹拌した。次に、沈殿をろ過し、水で洗浄して風乾することでジベンジルジチオカルバミン酸マンガン(III)錯体29.5質量部を得た。
試料飛灰80質量部に、水24質量部とジベンジルジチオカルバミン酸マンガン(III)錯体12質量部を添加し、25℃で20時間養成させた。養成後、得られた処理飛灰について重金属溶出試験を行い、金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛0.1mgPb/L未満、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.2mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
【0019】
実施例3
塩化マンガン(II)5.0質量部を水50質量部に溶解した水溶液に、ピペラジンビスジチオカルバミン酸カリウム18.8質量部を水100質量部に溶解した水溶液を添加し、沈殿を生成させた。得られた沈殿を含む溶液に、30質量%過酸化水素水45.0質量部を添加して撹拌した。次に、沈殿をろ過し、水で洗浄して風乾することでピペラジンビスジチオカルバミン酸マンガン(III)錯体30.9質量部を得た。
試料飛灰80質量部に、水24質量部とピペラジンビスジチオカルバミン酸マンガン(III)錯体12質量部を添加し、25℃で20時間養成させた。養成後、得られた処理飛灰について重金属溶出試験を行い、金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛0.1mgPb/L未満、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.2mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
実施例4
塩化マンガン(II)5.0質量部を水50質量部に溶解した水溶液に、ピペリジンジチオカルバミン酸ナトリウム21.8質量部を水100質量部に溶解した水溶液を添加し、沈殿を生成させた。得られた沈殿を含む溶液に、30質量%過酸化水素水45.0質量部を添加して撹拌した。次に、沈殿をろ過し、水で洗浄して風乾することでピペリジンジチオカルバミン酸マンガン(III)錯体18.1質量部を得た。
試料飛灰80質量部に、水24質量部とピペリジンジチオカルバミン酸マンガン(III)錯体12質量部を添加し、25℃で20時間養成させた。養成後、得られた処理飛灰について重金属溶出試験を行い、金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛0.1mgPb/L未満、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.2mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
【0020】
実施例5
塩化マンガン(II)5.0質量部を水50質量部に溶解した水溶液に、エチレンビスジチオカルバミン酸ナトリウム15.3質量部を水100質量部に溶解した水溶液を添加し、沈殿を生成させた。得られた沈殿を含む溶液に、30質量%過酸化水素水45.0質量部を添加して撹拌した。次に、沈殿をろ過し、水で洗浄して風乾することでエチレンビスジチオカルバミン酸マンガン(III)錯体25.0質量部を得た。
試料飛灰80質量部に、水24質量部とエチレンビスジチオカルバミン酸マンガン(III)錯体12質量部を添加し、25℃で20時間養成させた。養成後、得られた処理飛灰について重金属溶出試験を行い、金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛0.1mgPb/L未満、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.2mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
実施例6
ポリエチレンイミン[(株)日本触媒、SP-200、重量平均分子量10,000]10.0質量部を水20.1質量部に溶解した水溶液に、水酸化ナトリウム4.8質量部を水42.9質量部に溶解させた水溶液を、撹拌しながら添加した。次に、二硫化炭素9.1質量部を添加して更に撹拌反応させた。得られた反応液に、塩化マンガン(II)5.0質量部を水25質量部に溶解した水溶液を添加し、沈殿を生成させた。得られた沈殿を含む溶液に、空気を吹き込みながら撹拌した。次に、沈殿をろ過し、水で洗浄して風乾することでポリエチレンイミンポリアミンポリジチオカルバミン酸マンガン(III)錯体19.0質量部を得た。
試料飛灰80質量部に、水24質量部とポリエチレンイミンポリアミンポリジチオカルバミン酸マンガン(III)錯体12質量部を添加し、25℃で20時間養成させた。養成後、得られた処理飛灰について重金属溶出試験を行い、金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛0.1mgPb/L未満、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.1mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
【0021】
実施例7
ポリビニルアミン[三菱化学(株)、PVAM0595、重量平均分子量60,000]12.0質量部を水50質量部に溶解した水溶液に、水酸化ナトリウム5.6質量部を水50.2質量部に溶解させた水溶液を、撹拌しながら添加した。次に、二硫化炭素10.6質量部を添加して更に撹拌反応させた。得られた反応液に、塩化マンガン(II)5.9質量部を水29.3質量部に溶解した水溶液を添加し、沈殿を生成させた。得られた沈殿を含む溶液に、空気を吹き込みながら撹拌した。次に、沈殿をろ過し、水で洗浄して風乾することでポリビニルアミンポリジチオカルバミン酸マンガン(III)錯体21.2質量部を得た。
試料飛灰80質量部に、水24質量部とポリビニルアミンポリジチオカルバミン酸マンガン(III)錯体12質量部を添加し、25℃で20時間養成させた。養成後、得られた処理飛灰について重金属溶出試験を行い、金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛0.1mgPb/L未満、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.2mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
実施例8
ポリアリルアミン[日東紡績(株)、PAA-05、重量平均分子量5,000]10.0質量部を水41.3質量部に溶解した水溶液に、水酸化ナトリウム3.5質量部を水31.6質量部に溶解させた水溶液を、撹拌しながら添加した。次に、二硫化炭素6.7質量部を添加して更に撹拌反応させた。得られた反応液に、塩化マンガン(II)3.7質量部を水18.4質量部に溶解した水溶液を添加し、沈殿を生成させた。得られた沈殿を含む溶液に、空気を吹き込みながら撹拌した。次に、沈殿をろ過し、水で洗浄して風乾することでポリアリルアミンポリジチオカルバミン酸マンガン(III)錯体15.6質量部を得た。
試料飛灰80質量部に、水24質量部とポリアリルアミンポリジチオカルバミン酸マンガン(III)錯体12質量部を添加し、25℃で20時間養成させた。養成後、得られた処理飛灰について重金属溶出試験を行い、金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛0.1mgPb/L未満、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.1mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
【0022】
実施例9
テトラヒドロフラン49.0質量部にマグネシウム4.9質量部を添加し、イソプロピルブロミド29.5質量部をテトラヒドロフラン59.0質量部に溶解させた溶液を滴下した。次に、二硫化炭素13.7質量部をテトラヒドロフラン27.4質量部に溶解させた溶液を滴下して反応させた。反応後、希塩酸水溶液にて酸分解し、エーテルにて抽出、洗浄して得られた反応物に、水酸化ナトリウム7.2質量部を水64.8質量部に溶解した水溶液を添加した。次に、塩化マンガン(II)8.4質量部を水41.9質量部に溶解した水溶液を添加し、沈殿を生成させた。得られた沈殿を含む溶液に、空気を吹き込みながら撹拌した。次に、沈殿をろ過し、水で洗浄して風乾することでイソプロピルジチオカルボン酸マンガン(III)錯体20.9質量部を得た。
試料飛灰80質量部に、水24質量部とイソプロピルジチオカルボン酸マンガン(III)錯体12質量部を添加し、25℃で20時間養成させた。養成後、得られた処理飛灰について重金属溶出試験を行い、金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛0.1mgPb/L未満、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.2mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
実施例10
テトラヒドロフラン49.0質量部にマグネシウム4.9質量部を添加し、ブロモトルエン41.0質量部をテトラヒドロフラン82.1質量部に溶解させた溶液を滴下した。次に、二硫化炭素13.7質量部をテトラヒドロフラン27.4質量部に溶解させた溶液を滴下して反応させた。反応後、希塩酸水溶液にて酸分解し、エーテルにて抽出、洗浄して得られた反応物に、水酸化ナトリウム7.2質量部を水64.8質量部に溶解した水溶液を添加した。次に、塩化マンガン(II)8.4質量部を水41.9質量部に溶解した水溶液を添加し、沈殿を生成させた。得られた沈殿を含む溶液に、空気を吹き込みながら撹拌した。次に、沈殿をろ過し、水で洗浄して風乾することでメチルフェニルジチオカルボン酸マンガン(III)錯体27.5質量部を得た。
試料飛灰80質量部に、水24質量部とメチルフェニルジチオカルボン酸マンガン(III)錯体12質量部を添加し、25℃で20時間養成させた。養成後、得られた処理飛灰について重金属溶出試験を行い、金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛0.1mgPb/L未満、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.3mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
【0023】
実施例11
水酸化ナトリウム3.0質量部を水50.9質量部に溶解させた水溶液に、ノボラック樹脂[住友ベークライト(株)、PR-NMP-103、重量平均分子量1,000]10.0質量部を、撹拌しながら添加した。次に、二硫化炭素5.7質量部を添加して更に撹拌反応させた。得られた反応液に、塩化マンガン(II)3.2質量部を水15.8質量部に溶解した水溶液を添加し、沈殿を生成させた。得られた沈殿を含む溶液に、空気を吹き込みながら撹拌した。次に、沈殿をろ過し、水で洗浄して風乾することでノボラック樹脂ポリキサントゲン酸マンガン(III)錯体15.3質量部を得た。
試料飛灰80質量部に、水24質量部とノボラック樹脂ポリキサントゲン酸マンガン(III)錯体12質量部を添加し、25℃で20時間養成させた。養成後、得られた処理飛灰について重金属溶出試験を行い、金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛0.1mgPb/L未満、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.3mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
実施例12
水酸化ナトリウム4.0質量部を水56.0質量部に溶解させた水溶液に、フェノール9.4質量部を、撹拌しながら添加した。次に、二硫化炭素7.6質量部を添加して更に撹拌反応させた。得られた反応液に、塩化マンガン(II)4.2質量部を水21.0質量部に溶解した水溶液を添加し、沈殿を生成させた。得られた沈殿を含む溶液に、空気を吹き込みながら撹拌した。次に、沈殿をろ過し、水で洗浄して風乾することでフェニルキサントゲン酸マンガン(III)錯体13.8質量部を得た。
試料飛灰80質量部に、水24質量部とフェニルキサントゲン酸マンガン(III)錯体12質量部を添加し、25℃で20時間養成させた。養成後、得られた処理飛灰について重金属溶出試験を行い、金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛0.1mgPb/L未満、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.3mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
【0024】
実施例13
ジメチルスルホキシド55.0質量部に、ポリビニルアルコール[(株)クラレ、PVA105]5.5質量部を分散させ、撹拌しながら五硫化二リン16.7質量部を添加し、反応させた。反応後、水酸化カリウム4.2質量部を水37.8質量部に溶解させた水溶液を撹拌しながら添加した。次に、塩化マンガン(II)3.1質量部を水15.7質量部に溶解した水溶液を添加し、沈殿を生成させた。得られた沈殿を含む溶液に、空気を吹き込みながら撹拌した。次に、沈殿をろ過し、水で洗浄して風乾することでポリビニルアルコールポリジチオリン酸マンガン(III)錯体19.1質量部を得た。
試料飛灰80質量部に、水24質量部とポリビニルアルコールポリジチオリン酸マンガン(III)錯体12質量部を添加し、25℃で20時間養成させた。養成後、得られた処理飛灰について重金属溶出試験を行い、金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛0.1mgPb/L未満、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.4mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
実施例14
フェノール9.4質量部に、撹拌しながら五硫化二リン7.4質量部を添加し、反応させた。反応後、水酸化カリウム5.6質量部を水50.4質量部に溶解させた水溶液を撹拌しながら添加した。次に、塩化マンガン(II)4.2質量部を水21.0質量部に溶解した水溶液を添加し、沈殿を生成させた。得られた沈殿を含む溶液に、空気を吹き込みながら撹拌した。次に、沈殿をろ過し、水で洗浄して風乾することでフェニルポリトリチオリン酸マンガン(III)錯体13.8質量部を得た。
試料飛灰80質量部に、水24質量部とフェニルポリトリチオリン酸マンガン(III)錯体12質量部を添加し、25℃で20時間養成させた。養成後、得られた処理飛灰について重金属溶出試験を行い、金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛0.1mgPb/L未満、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.4mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
【0025】
比較例1
試料飛灰80質量部に水24質量部を添加し、25℃で15分間混練したのち、25℃で20時間養生させた。養生後、得られた処理飛灰について金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛680mgPb/L、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛24mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
比較例2
試料飛灰80質量部に、水24質量部とジエチルジチオカルバミン酸亜鉛12質量部を添加し、25℃で15分間混練したのち、25℃で20時間養生させた。養生後、得られた処理飛灰について金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛5mgPb/L、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛20mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
比較例3
ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛の添加量を16質量部とした以外は、比較例2と同じ操作を行った。溶出量は、鉛0.1mgPb/L未満、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛23mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
比較例4
試料飛灰80質量部に、水24質量部とジエチルジチオカルバミン酸鉄12質量部を添加し、25℃で15分間混練したのち、25℃で20時間養生させた。養生後、得られた処理飛灰について金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛6mgPb/L、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.4mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
比較例5
ジエチルジチオカルバミン酸鉄の添加量を16質量部とした以外は、比較例4と同じ操作を行った。溶出量は、鉛0.1mgPb/L未満、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.3mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
【0026】
比較例6
試料飛灰80質量部に、水24質量部とジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム12質量部を添加し、25℃で15分間混練したのち、25℃で20時間養生させた。養生後、得られた処理飛灰について金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛250mgPb/L、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.3mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
比較例7
ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムの添加量を24質量部とした以外は、比較例6と同じ操作を行った。溶出量は、鉛0.1mgPb/L未満、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.2mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
比較例8
試料飛灰80質量部に、水24質量部とピペラジンビスジチオカルバミン酸カリウム12質量部を添加し、25℃で15分間混練したのち、25℃で20時間養生させた。養生後、得られた処理飛灰について金属の溶出量を測定した。溶出量は、鉛120mgPb/L、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.3mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
比較例9
ピペラジンビスジチオカルバミン酸ナトリウムの添加量を20質量部とした以外は、比較例8と同じ操作を行った。溶出量は、鉛0.1mgPb/L未満、マンガン0.01mgMn/L未満、亜鉛0.2mgZn/L、鉄0.01mgFe/L未満であった。
実施例1~14の結果を第1表に、比較例1~9の結果を第2表に示す。
【0027】
【表1】
JP0004837291B2_000002t.gif

【0028】
【表2】
JP0004837291B2_000003t.gif

【0029】
第1表に見られるように、鉛及び亜鉛を含有する飛灰にジチオカルバミン酸マンガン(III)錯体、ジチオカルボン酸マンガン(III)錯体、キサントゲン酸マンガン(III)錯体又はジチオリン酸マンガン(III)錯体を添加して混練した実施例1~14では、飛灰100質量部に対してマンガン(III)錯体15質量部を添加することにより、鉛の溶出量が0.1mgPb/L未満、亜鉛の溶出量が0.1~0.4mgZn/Lとなり、マンガン(III)錯体に由来するマンガンの溶出は認められない。
第2表に見られるように、同じ飛灰100質量部に対してジエチルジチオカルバミン酸亜鉛15質量部を添加した比較例2では、鉛の溶出量は5mgPb/Lであり、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛の添加量を20質量部に増加した比較例3で、鉛の溶出量が0.1mgPb/L未満となる。しかし、比較例2~3の亜鉛の溶出量は、重金属固定化剤を添加しない比較例1の亜鉛の溶出量と同程度であり、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛には飛灰中の亜鉛を固定化する効果はない。
飛灰100質量部に対してジエチルジチオカルバミン酸鉄15質量部を添加した比較例4では、鉛の溶出量は6mgPb/Lであり、ジエチルジチオカルバミン酸鉄の添加量を20質量部に増加した比較例5で、鉛の溶出量が0.1mgPb/L未満となる。飛灰100質量部に対してジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム15質量部を添加した比較例6では、鉛の溶出量は250mgPb/Lであり、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムの添加量を30質量部に増加した比較例7で、鉛の溶出量が0.1mgPb/L未満となる。飛灰100質量部に対してピペラジンビスジチオカルバミン酸カリウム15質量部を添加した比較例8では、鉛の溶出量は120mgPb/Lであり、ピペラジンビスジチオカルバミン酸カリウムの添加量を25質量部に増加した比較例9で、鉛の溶出量が0.1mgPb/L未満となる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の重金属固定化剤は、重金属を含有する廃棄物若しくは廃液や重金属により汚染された土壌などに対して、少量でしかも強固に重金属を固定化することができる。さらに、処理後の廃棄物から重金属固定化剤に由来するマンガンの溶出が見られないことから、作業性がよく、処理のコストを低く抑えることができ、実用性にも優れ、とりわけ、ゴミ焼却炉業界での焼却灰、飛灰や、汚染土壌の重金属を固定する際に有用である。