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明細書 :プロスタノイドDP1受容体作動物質によるタキキニンNK1受容体の発現抑制

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5326101号 (P5326101)
公開番号 特開2008-189619 (P2008-189619A)
登録日 平成25年8月2日(2013.8.2)
発行日 平成25年10月30日(2013.10.30)
公開日 平成20年8月21日(2008.8.21)
発明の名称または考案の名称 プロスタノイドDP1受容体作動物質によるタキキニンNK1受容体の発現抑制
国際特許分類 A61K  31/5575      (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
FI A61K 31/5575
A61P 43/00
請求項の数または発明の数 1
全頁数 5
出願番号 特願2007-027842 (P2007-027842)
出願日 平成19年2月7日(2007.2.7)
審査請求日 平成22年1月21日(2010.1.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】安東 嗣修
【氏名】倉石 泰
審査官 【審査官】安藤 公祐
参考文献・文献 HAMMAD,H. et al,Prostaglandin D2 inhibits airway dendritic cell migration and function in steady state conditions by selective activation of the D prostanoid receptor 1,J Immunol,2003年,Vol.171, No.8,p.3936-40
ADCOCK,I.M. et al,Increased tachykinin receptor gene expression in asthmatic lung and its modulation by steroids,J Mol Endocrinol,1993年,Vol.11, No.1,p.1-7
調査した分野 A61K 45/00
A61K 31/5575
A61P 11/02
A61P 11/04
A61P 11/06
A61P 37/04
A61P 37/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
プロスタグラジンD2を有効成分とする皮膚のタキキニンNK1受容体の発現抑制剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、タキキニンNK1受容体の発現を抑制する方法およびプロスタノイドDP1受容体に作用する物質を有効成分と治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
プロスタグランジンD2は、アラキドン酸からシクロオキシゲナーゼにより産生されるプロスタノイドの一つであり、睡眠誘発作用、気管支平滑筋収縮作用、粘液分泌促進作用、血小板凝集抑制作用など示す。プロスタグランジンD2の受容体として、プロスタノイドDP1受容体(D prostanoid receptor 1)とCRTH2(chemoattactant receotor homologous molecule expressed on Th2 cells)の2種が知られている。また、皮膚炎を自然発症するNC系マウスを用いた研究からプロスタグランジンD2がプロスタノイドDP1受容体を介してNC系マウスの掻痒を抑えることが報告されている(非特許文献1)。
一方、タキキニンNK1受容体は、ペプチド性神経伝達物質のタキキニンの一つであるサブスタンスPの受容体である。喘息気道ではタキキニンNK1受容体の発現が亢進しており、ステロイド投与により減少すること(非特許文献2)、免疫調整作用をもつタクロリムスが、培養ケラチノサイトおよび血管内皮細胞においてタキキニンNK1受容体の発現を抑制すること(非特許文献3)などが知られている。

【非特許文献1】日本薬理学雑誌, 128, 405-410(2006)
【非特許文献2】J. Mol. Endocrinol., 11, 1-7(1993)
【非特許文献3】Derma No.101, 15-24(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、鼻腔・気道過敏症に対する治療薬として、抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、トロンボキサン合成酵素阻害薬、トロンボキサン受容体拮抗薬、ロイコトリエンB受容体拮抗薬、抗コリン薬、ステロイド、テオフィリン、βアドレナリン受容体刺激薬などが使用されている。
一方で、喘息やアレルギー性鼻炎の治療薬開発のため、新しいターゲット分子の探索研究が行われている。例えば、鼻腔・気道過敏症の発症に、サブスタンスPなどの神経ペプチドの関与が報告されているが、その受容体拮抗薬は未だ実用化されていない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、痒みの発生機序を解明し、新規鎮痒薬の開発を進める過程で、マウスを用い、種々の起痒物質によって誘発される痒み様反応と慢性皮膚炎による痒み様反応に及ぼすプロスタグランジンD2の影響を調べた。その結果、プロスタグランジンD2(0.1%)を塗布した皮膚においてヒスタミンH1受容体の発現レベルは変化しないが、サブスタンPの受容体であるタキキニンNK1受容体の発現レベルが減少することを見出した。
タキキニンNK1受容体は、表皮ケラチノサイトに存在し、サブスタンPの刺激により、起痒物質であるロイコトリエンBや痒みの増強物質である一酸化窒素を放出して痒みを引き起こしていると考えられ。タキキニンNK1受容体は表皮以外にも気道などに存在し、例えば、喘息気道ではその発現が亢進する。
本発明は、上記知見を基になされたものであり、プロスタノイドDP1受容体作動物質によるタキキニンNK1受容体の発現を抑制方法およびプロスタノイドDP1受容体作動物質を有効成分とする鼻腔・気道過敏症の治療薬を提供することを目的とする。以下、本発明を詳細に説明する。
【0005】
本発明において、プロスタノイドDP1受容体作動物質とは、プロスタノイドDP1受容体に作用するアゴニストまたはアゴニスト様の物質であれば、天然物または合成化合物として特に限定されない。好ましい例として、プロスタグランジンD2およびプロスタグランジンD2の誘導体が挙げられる。
プロスタグランジンD2の誘導体としては、例えば、特開平7-233144、特開2000-273082、特開2001-151749、WO01/19790およびWO01/12596に記載のプロスタグランジン誘導体が挙げられるが、これらの化合物に限定されない。
【0006】
プロスタノイドDP1受容体作動物質をタキキニンNK1受容体の発現抑制剤、鼻腔・気道過敏症治療薬として使用するには、全身的または局所的に経口または非経口的に慣用の投与剤型で投与することができる。これらは、例えば、通常の方法により製造することができる錠剤、粉剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、液剤、乳剤、懸濁剤等の形で経口投与することができる。また,エアゾール剤の形で局所適用することができる。静脈内投与の製剤としては、水性または非水性溶液剤、乳剤、懸濁剤、使用直前に注射溶媒に溶解して使用する固形製剤等を用いることができる。また、本発明の化合物は、α、βもしくはγ-シクロデキストリンまたはメチル化シクロデキストリン等と包接化合物を形成させて製剤化することもできる。更に、その水性または非水性溶液剤、乳剤、懸濁剤等を注射等により投与することができる。投与量は年齢、体重等により異なるが、成人に対し1ng~1mg/日であり、これを1日1回または数回に分けて投与すればよい。
【0007】
プロスタノイドDP1受容体作動物質を用い、タキキニンNK1受容体の発現抑制することにより、痛み、不安、パニック、うつ病、精神分裂病、神経痛および薬物依存症を含む各種の脳疾患;関節炎、喘息および乾癖などの炎症性疾患;大腸炎、クローン病および過敏性腸症候群などの胃腸系疾患;鼻炎などアレルギー疾患;アンギーナおよび偏頭痛などの血管性疾患;パーキンソン病、多発性硬化症およびアルツハイマー病などの神経変性疾患;眼疾患の処置または予防を行うことができる。より具体的には、プロスタノイドDP1受容体作動物質は、例えば、鼻腔・気道過敏症の治療薬として有用である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、その羅漢率が年々増加している喘息やアレルギー性鼻炎などの治療薬開発の新ターゲット分子を明らかとし、この新ターゲットの作動物質を有効成分とした薬剤により、従来の治療方法に比して高い効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施例1
[ICRマウスの皮膚におけるヒスタミンH1受容体(H1R)およびタキキニンNK1受容体(NK1R)発現量に対するプロスタグランジンD2(PGD)の効果]
PGD を100%エタノールに溶解(0.1%,V/W) し、200μLをICRマウスの吻側背部に塗布した。対照は100%エタノールのみ塗布した。30分後に、溶媒及びPGD処置したICRマウスを麻酔下で、生理食塩水を用いて脱血した後、吻側背部の皮膚を採取した。採取した皮膚は液体窒素で凍結し、実験に用いるまで-80 ℃で保存した。採取した皮膚にlysis buffer(137mM NaCl、20mM Tris-HCl;pH7.5、1%NP-40, 10% glycerol, 1 mM PMSF, 10μg/mL aprotinin, 1μg/mL leupeptin) を1mLずつ加え、ホモジナイズした後、1500 rpmで5分間遠心し、上清を採取した。上清中のタンパクが2.5μg/μLになるように滅菌水で希釈し、0.3125 M Tris-HCl buffer (pH 6.8;8.3% SDS, 25% glycerol, 25% mercaptoethanol, 0.01% bromophenol blue)をサンプルの1/5量加え、加熱(100℃, 5分)後、氷浴にて急冷した。調製したサンプルをSDS-PAGE (200V) でタンパク分離した。SDS-PAGE終了後、ゲルからPVDF(Polyvinylidene difluoride)膜に転写した(200mA, 70分)した。転写終了後、5%スキムミルクを含むTBS-T(0.1% Tween20, 0.1M NaCl, 0.01M Tris-HCl ) 溶液で60分間ブロッキング処理した。その後適当な濃度の一次抗体[rabbit anti-histamine H1 receptor polyclonal IgG (1:200;Santa Cruz Biotechnology, goat anti-NK1R polyclonal IgG (1:1000; Santa Cruz Biotechnology, mouse anti-β-actin IgG (1:5000;Sigma)]を反応(4℃,一昼夜)させた。一次抗体反応終了後、PVDF膜をTBS-T溶液で10分間洗浄し、二次抗体[H1R用;ECLTM anti-rabbit IgG, Horseradish Peroxidase (HRP) linked whole antibody from donkey (1:2500;GE Healthcare UK), NK1R用;donkey anti-goat IgG-HRP (1:20000;Santa Cruz Biotechnology), β-actin用;ECLTM anti-mouse IgG, HRP linked whole antibody from sheep (1:20000;GE Healthcare UK)]を室温で60分間反応させた。その後TBS-T溶液で洗浄(15分×3回)し、検出試薬(ECL溶液,Amersham)を1分間反応させてパーオキシダーゼとの化学発光を惹起した。その発光をX線フィルムに感光させることで、H1R、NK1Rおよびβ-actinのバンドを検出した。バンド強度は画像解析処理ソフトウェアScion Imageによって定量化した。
H1RおよびNK1Rの発現量をウェスタンブロット解析した結果を図1に示した。
PGDで処置した群では溶媒塗布群と比較して、ヒスタミンH1受容体の発現量にはほぼ変化がなかった(図1A)が、タキキニンNK1受容体の発現量は有意に減少した(図1B)。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明のプロスタノイドDP1受容体に作用する物質によるタキキニンNK1受容体の発現を抑制方法は、羅漢率が年々増加している喘息やアレルギー性鼻炎などの治療薬開発に有用な方法であり、プロスタノイドDP1受容体に作用する物質は、鼻腔・気道過敏症に対する治療薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ヒスタミンH1受容体(H1R)とタキキニンNK1受容体(NK1R)に係わるウェスタンブロット解析の図である。図中のPGDはプロスタグランジンD2を,VHは溶媒(100%エタノール)を示している。*は,VH塗布と比べてPGD2塗布により有意にタキキニンNK1受容体(NK1R)の発現を抑制したことを示す。
図面
【図1】
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