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明細書 :手術用クリップ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5066712号 (P5066712)
公開番号 特開2008-194220 (P2008-194220A)
登録日 平成24年8月24日(2012.8.24)
発行日 平成24年11月7日(2012.11.7)
公開日 平成20年8月28日(2008.8.28)
発明の名称または考案の名称 手術用クリップ
国際特許分類 A61C   5/14        (2006.01)
FI A61C 5/14
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願2007-032227 (P2007-032227)
出願日 平成19年2月13日(2007.2.13)
審査請求日 平成22年1月6日(2010.1.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】和田 重人
個別代理人の代理人 【識別番号】100090206、【弁理士】、【氏名又は名称】宮田 信道
審査官 【審査官】川島 徹
参考文献・文献 特開昭62-192151(JP,A)
特表平10-509615(JP,A)
特開2001-037764(JP,A)
特表2006-517831(JP,A)
調査した分野 A61C 5/14
特許請求の範囲 【請求項1】
一対の挟持部材(1a,1b)と、該挟持部材(1a,1b)同士を枢着する支軸(5)と、一方の前記挟持部材(1a)の先部分に設けられる環状の押さえ部(2)と、他方の前記挟持部材(1b)の先部分に前記押さえ部(2)と対向して設けられる板状の受け部(3)と、前記押さえ部(2)および前記受け部(3)が閉じる方向に前記挟持部材(1a,1b)を付勢するバネ部材(6)と、からなり、前記押さえ部(2)および前記受け部(3)が、患部を環状の押さえ部(2)で囲むようにして挟み込むものであることを特徴とする手術用クリップ。
【請求項2】
前記押さえ部(2)および前記受け部(3)が、押さえ部(2)側に凸となるように湾曲していることを特徴とする請求項1記載の手術用クリップ。
【請求項3】
前記押さえ部(2)および前記受け部(3)が、先端に向けて広がる略扇形であることを特徴とする請求項1または2記載の手術用クリップ。
【請求項4】
前記バネ部材(6)による付勢力を調節するための調節部(7)を有することを特徴とする請求項1、2または3記載の手術用クリップ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、口唇の裏側などの隠れた部位の患部を手術する際に患部を露出させるための手術用クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内には粘液嚢胞や腫瘍などの疾患が生じることがあり、治療のためには摘出術が必要となる。この際、とくに発生箇所が口唇の裏側部分である場合には、患部を露出させるために、上唇または下唇を大きく開いた状態で固定して治療を行わなければならないが、従来は、助手が指で押し広げて固定していた。そのため、治療作業には少なくとも二名の人員が必要となり、効率性の点で問題であった。また、口腔内は唾液や血液で滑りやすく、さらに手袋をはめて作業をしなければならないことから、治療開始から終了まで確実に固定をしておくことが困難であり、そのため手術に予定以上の時間を要したり、不確実な手術となって疾患が再発したりすることがあった。そこで、口腔内の治療のために口唇を押し開く器具として、文献1の歯科用唇圧子が提案されている。また、治療箇所を固定しつつ治療を施すための器具として、文献2のレーザ用止血鉗子が提案されている。

【特許文献1】特開平10-146347号公報
【特許文献2】特開2001-37764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、文献1の発明は、助手が把持部を保持しなくてはならないので二名が必要であることは変わらず、また板状のカバーを上唇または下唇に押し当てるので、上唇または下唇の裏側部分はカバーに覆われてしまい、当該部分の治療に用いることはできない。文献2の発明も、治療箇所を固定しておくためには器具を保持し続けなくてはならず、保持するための助手が必要となり、また患部を一定の力で押さえ続けることは困難である。
【0004】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、口唇の裏側などの隠れた部位の患部を手術する際に、人手を介さずに、患部を露出させた状態で固定し続けることができる手術用クリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうち請求項1の発明は、一対の挟持部材と、該挟持部材同士を枢着する支軸と、一方の前記挟持部材の先部分に設けられる環状の押さえ部と、他方の前記挟持部材の先部分に前記押さえ部と対向して設けられる板状の受け部と、前記押さえ部および前記受け部が閉じる方向に前記挟持部材を付勢するバネ部材と、からなり、前記押さえ部および前記受け部が、患部を環状の押さえ部で囲むようにして挟み込むものであることを特徴とする。
【0006】
また、請求項2の発明は、前記押さえ部および前記受け部が、押さえ部側に凸となるように湾曲していることを特徴とする。
【0007】
さらに、請求項3の発明は、前記押さえ部および前記受け部が、先端に向けて広がる略扇形であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4の発明は、前記バネ部材による付勢力を調節するための調節部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のうち請求項1の発明によれば、患部を環状の押さえ部で囲むようにして挟み込むことで、以後人手を介さず患部を露出させた状態で固定し続けることができる。その結果、一人でも容易に治療作業を行うことができ、また、手術時間を短縮し、安全性・確実性も向上させることができる。さらに、患部の周囲を環状の押さえ部が押圧することで患部が虚血状態となり、手術時の出血量を減少させることができる。その結果、確実な手術を行うことができ、再発率の低下にもつながる。
【0010】
本発明のうち請求項2の発明によれば、湾曲した押さえ部および受け部で挟み込むことにより、患部が押さえ部側に突出し、より手術をしやすくなる。
【0011】
本発明のうち請求項3の発明によれば、押さえ部および受け部を扇形とすることで、とくに口唇の裏側の患部を対象とする場合に、口唇を広い面積で押圧し安定して固定することができ、なおかつ先端が歯に接することがない。
【0012】
本発明のうち請求項4の発明によれば、調節部により付勢力を調節することで、患部の大きさや状態に合わせた適切な力で患部一帯を押圧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の手術用クリップの具体的な構成について、各図面に基づいて説明する。図1に示すのは、本発明の手術用クリップの実施例の斜視図である。また、図2に示すのは三面図であり、(a)が平面図、(b)が正面図、(c)が側面図である。
【0014】
本手術用クリップは、一組の挟持部材1a,1bからなる。挟持部材1a,1bは、共に略矩形で、断面がコの字形であり、凹側が内側、その反対面が外側となる。挟持部材1a,1bの内側の中央には支軸5を通すための連結部8a,8bが設けられる。一方の挟持部材1aの一端(先部分とする)には、押さえ部2が設けられる。押さえ部2は環状で、先端に向けて広がる略扇形であり、根元から先端にかけて、外側に凸となるように湾曲している。また、断面は円形状に形成される。さらに、挟持部材1aの他端の外側には滑り止めのための溝が彫られ、摘み部4aを形成する。他方の挟持部材1bの一端(先部分とする)には、受け部3が設けられる。受け部3は板状で、押さえ部2と同様、先端に向けて広がる略扇形であり、根元から先端にかけて、内側に凸となるように湾曲している。また周縁部は丸く面取り加工される。さらに、挟持部材1bの他端の外側には滑り止めのための溝が彫られ、摘み部4bを形成する。
【0015】
挟持部材1a,1bは、支軸5が連結部8a,8bを貫通することにより回動自在に枢着される。さらに支軸5にはバネ部材6が通され、挟持部材1a,1bそれぞれの内側を押圧することで、押さえ部2および受け部3が閉じる方向に付勢力が働く。押さえ部2および受け部3は、閉じた状態では全体が密接する。そして、摘み部4a、4b側を摘んで閉じれば、押さえ部2および受け部3を開くことができる。なお、押さえ部2および受け部3には、滑り止めのために、溝を彫るなどの加工を施してもよいし、ゴムなどでコーティングをしてもよい。また、バネ部材6としては、図に示すようなねじりバネのほか、板バネなど、他の形状のバネを用いてもよい。さらに、挟持部材1a,1bが一体となり、挟持部材自身の弾性で押さえ部2および受け部3を閉じるものであってもよい。
【0016】
本手術用クリップの各部は、どのような素材からなるものであってもよいが、直接体に触れるものであるから、耐久性や耐食性が高く、一般的な医療器具にも用いられるステンレス製とすることが望ましい。また、本クリップ自体にある程度の重量があったほうが患部を露出させた状態で安定して固定できるため、その点においてもステンレス製であることが望ましい。
【0017】
図3に示すのは、本手術用クリップの使用方法の説明図である。ここでは、患者の下唇Lの裏側に患部A(粘液嚢胞など)がある場合を想定する。患部Aを切除する手術を行う際には、開始から終了まで下唇Lを大きく開き、患部Aを露出させた状態で固定しておかなければならない。そこで、本手術用クリップを用い、環状の押さえ部2が患部Aを囲むようにして下唇Lを挟み込む。このようにすると、下唇Lが外側に大きく開かれ、クリップを把持しなくてもその状態が維持される。よって、医師は助手の手を介することなく、患部Aを手術することができる。なお、押さえ部2の断面を円形に形成し、また受け部3の周縁部を丸く面取り加工することで、下唇Lなどを挟み込んだ際に患者が痛みを感じることがない。また、本クリップは押さえ部2側に凸となるように湾曲しており、下唇Lもその形に沿うように変形するため、患部Aが押さえ部2側に突出し、より手術が行いやすくなる。さらに、押さえ部2および受け部3が略扇形であることで、下唇Lを押圧する面積が広くなるため、安定して固定することができ、さらに押さえ部2の先端が歯Tに接触することもない。また、患部Aの周囲が押さえ部2により押圧されることにより、血流が妨げられ、患部Aが虚血状態となる。その結果、手術時の出血量を低減し、確実な処置を行うことが可能となり、再発率も低下する。
【0018】
図4に示すのは、本手術用クリップの第二実施形態の斜視図である。第二実施形態は、第一実施形態のクリップに付勢力を調節する調節部7を付加したものである。調節部7は、摘み部4a,4bに設けられる貫通孔9a,9bと、貫通孔9a,9bに貫挿されるネジ棒10と、ネジ棒10の一端に形成される貫通孔9bより大きなネジ頭部11と、ネジ棒10の他端に螺合される貫通孔9aより大きな蝶ナット12と、からなり、ネジ頭部11は貫通孔9bの周縁部に、蝶ナット12は貫通孔9aの周縁部にそれぞれ係止される。
【0019】
第二実施形態では、調節部7の蝶ナット12をねじ込むことで、押さえ部2および受け部3の挟み込む力を弱めることができる。すなわち、調節部7がない場合、バネ部材6によるバネ力(付勢力)はすべて患者の体(下唇Lなど)にかかるが、調節部7を設けると、バネ力は患者の体と蝶ナット12およびネジ頭部11に分散されるからである。このような構成にすると、蝶ナット12をねじ込むほど、より挟み込む力を弱めることができる。よって、患者の体型や患部の状態などに合わせて適切な力で挟み込むことができる。また、ネジ棒10を取り外せば、第一実施形態のクリップと同様に使用できる。
【0020】
本手術用クリップは、粘液嚢胞や腫瘍の手術のほか、外傷の治療の際にも用いることができる。この場合においても、押さえ部により押圧することで出血量が抑えられ、治療が行いやすくなる。また、口唇の裏側の患部以外にも、舌や頬粘膜の患部にも用いることができる。その場合、押さえ部および受け部の形状は、扇形以外に、円形、楕円形や直方体形など、部位に合わせてどのような形状としてもよい。さらに、同じ形状で異なる大きさのクリップを数種類用意しておき、患部の大きさなどに合わせて使い分けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の手術用クリップの実施例の斜視図。
【図2】手術用クリップの三面図。
【図3】手術用クリップの使用方法の説明図。
【図4】手術用クリップの第二実施形態の斜視図。
【符号の説明】
【0022】
1a,1b 挟持部材
2 押さえ部
3 受け部
5 支軸
6 バネ部材
7 調節部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3