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明細書 :フェニルアラニンセンサ及びフェニルアラニン測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4702341号 (P4702341)
公開番号 特開2009-069085 (P2009-069085A)
登録日 平成23年3月18日(2011.3.18)
発行日 平成23年6月15日(2011.6.15)
公開日 平成21年4月2日(2009.4.2)
発明の名称または考案の名称 フェニルアラニンセンサ及びフェニルアラニン測定方法
国際特許分類 G01N  27/327       (2006.01)
G01N  27/416       (2006.01)
FI G01N 27/30 353U
G01N 27/30 353F
G01N 27/30 353B
G01N 27/46 336G
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2007-240318 (P2007-240318)
出願日 平成19年9月17日(2007.9.17)
審査請求日 平成22年9月13日(2010.9.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
【識別番号】000236920
【氏名又は名称】富山県
発明者または考案者 【氏名】篠原 寛明
【氏名】浅野 泰久
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100114074、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 嘉一
審査官 【審査官】大竹 秀紀
参考文献・文献 国際公開第02/018627(WO,A1)
特開平08-322582(JP,A)
国際公開第2006/022113(WO,A1)
国際公開第2005/075970(WO,A1)
調査した分野 G01N 27/327
G01N 27/416
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
電極上にフェニルアラニン脱水素酵素とジアホラーゼとを共有結合法により同時固定化した作用極対極からなり、補酵素及び電子メディエーターを含有する試料液に浸漬してフェニルアラニンの濃度を測定するのに使用するものであることを特徴とするフェニルアラニンセンサ。
【請求項2】
補酵素は、NADH又はNADPHである前記試料液に浸漬して使用するものであることを特徴とする請求項記載のフェニルアラニンセンサ。
【請求項3】
電子メディエーターは、フェロセン誘導体、キノン類、フェリシアン化カリウム、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、フェノチアジン誘導体、フェナジンメトサルフェート誘導体、p-アミノフェノール、メルドーラブルー、2,6-ジクロロフェノールインドフェノールのいずれかである前記試料液に浸漬して使用するものであることを特徴とする請求項1又は2記載のフェニルアラニンセンサ。
【請求項4】
生体中又は食品中に含まれるフェニルアラニンの測定方法であって、
請求項3記載のフェニルアラニンセンサを用いて、
フェニルアラニン脱水素酵素を触媒にしてフェニルアラニン基質からNAD又はNADPに電子移動反応をさせ、
生じたNADH又はNADPHからジアホラーゼを触媒として電子メディエーターに電子移動反応させて、所定の印加電圧下における還元型電子メディエーターの酸化応答電流値を測定することを特徴とするフェニルアラニンの濃度測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、尿、唾液等の生体試料中のフェニルアラニン濃度、あるいは食品試料中のフェニルアラニン濃度を測定するバイオセンサ及びバイオセンサを用いたフェニルアラニンの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種基質に対する脱水素酵素反応を用いて、その酵素反応により生じる補酵素の還元型補酵素(NADH,NADPH)を直接的に分光学的あるいは電気化学的に定量すること、さらには、この還元型補酵素により生成する還元型電子メディエーターや還元型色素を電気化学的あるいは比色法や蛍光法といった分光学的方法により検出するバイオセンサが開発されている。
【0003】
フェニルアラニンは必須アミノ酸の1つであり、生体試料中のフェニルアラニンの濃度測定はフェニルケトン尿症(PKU)の診断に有用であることから、フェニルアラニンを基質とした酵素反応を用いたバイオセンサも開発されている。
例えば、非特許文献1には、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(フェニルアラニン脱水素酵素)、NAD、ジアホラーゼ、さらにヨードニトロテトラゾリウムの混合液中に、フェニルアラニンを加えると生じたNADHによりテトラゾリウムがホルマザンとなり、その492nmの30分間の吸光度増加から、血漿中のフェニルアラニンを30~1200μMの範囲で定量検出することを記載する。
非特許文献2には、スライドグラス上に組み換えフェニルアラニンデヒドロゲナーゼを固定化し、その上に形成した微小ウェル中に、ジアホラーゼ、NAD、レサズリン、血液サンプルから抽出したフェニルアラニンの混合液を添加し、1時間後、酵素反応で生じた還元型レサズリンの蛍光を蛍光スキャナーで計測することにより、24~780μMの濃度範囲でフェニルアラニンの検出ができることを記載する。
また、非特許文献3には、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ、NAD、電子メディエーターとしての3,4-DHBをカーボンペーストの中に同時に包括固定した電極を用い、試薬を一切添加せず、ヒト尿中のフェニルアラニンの検出を酸化電流の増加より行い、0.5~80mMの検出を実現できることを示している。
非特許文献4には、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼを架橋法で共有結合固定化したアセチルセルロース膜をカーボン電極の先端に装着して、NADを含む緩衝液中で+700mVに電位設定して、フェニルアラニン添加時に酵素反応で生じるNADHの電気化学酸化電流を測定することにより、25μM~9mMのフェニルアラニンの検出方法を記載する。
特許文献5には、試薬としてL-フェニルアラニン脱水素酵素と補酵素である酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)もしくは酸化型ニコチンアミドアデニンヌクレオチドリン酸(NADP)および電子メディエーターを、少なくとも作用極と対極からなる電極系と一体化することによって構成される旨が開示されている。
【0004】
しかし、これらの発明の多くが、デヒドロゲナーゼ、補酵素(NADあるいはNADP)、電子メディエーターや発色色素をウェル中で均一な混合溶液として測定する、もしくは高分子膜担体や導電性微粉末材料中に吸着や包括固定化して測定するものであり、測定の後、酵素は使い捨てにするものがほとんどであった。
また、分光学的測定法では試料の処理方法が煩雑で且つ分析時間に30分以上も要する問題があり、電流計測方法においてはフェニルアラニンの検出限界が100μMレベルと高かった。
【0005】

【非特許文献1】U.Wendel, W.Hummel, and U. Langenbeck, Monitoring of phenylketonuria: A colorimetric method for the determination of plasma phenylalanine using -phenylalanine dehydrogenase, Analytical Biochemistry, 180(1), 91-94(1989).
【非特許文献2】S.Tachibana, M.Suzuki and Y.Asano, Application of an enzyme chip to the microquantification of l-phenylalanine, Analytical Biochemistry, 359( 1), 72-78 (2006).
【非特許文献3】D.J.Weiss, M.Dorris, A Loh and L.Peterson, Dehydrogenase based reagentless biosensor for monitoring phenylketonuria, Biosensors and Bioelectronics, 22(11), 2436-2441(2007).
【非特許文献4】R.Villalonga, A.Fujii, H.Shinohara, S.Tachibana and Y.Asano, Covalent immobilization of phenylalanine dehydrogenase on cellulose membrane for biosensor construction, Sensors and Actuators B: Chemical, In Press, Accepted Manuscript, Available online 27 July 2007.
【特許文献5】国際公開WO00/04378パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フェニルアラニンの検出限界濃度が低く、短時間にて分析測定できるとともに繰り返し使用も可能なフェニルアラニンセンサ及びこれを用いたフェニルアラニンの測定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフェニルアラニンセンサは、電極上にフェニルアラニン脱水素酵素とジアホラーゼとを共有結合法により同時固定化した作用極対極からなり、補酵素及び電子メディエーターを含有する試料液に浸漬してフェニルアラニンの濃度を測定するのに使用するものであることを特徴とする。
作用極となる電極上に、フェニルアラニン脱水素酵素とジアホラーゼとを固定化する方法はメルカプトカルボン酸の自己集積化膜等を用いた共有結合法が簡便で同時固定化できるので好ましい。
【0008】
本発明においては、脱水素酵素とジアホラーゼの二種類の異なる酵素を同一電極上に共有結合法にて同時固定化した点に特徴があり、第1段階の脱水素酵素反応により生成するNADH又はNADPHが第2段階のジアホラーゼ等による酵素反応で即座に電子メディエーターの還元に使われることから、基質の検出性能が高く、脱水素酵素及び電子メディエーターの選定により各種基質のバイオセンサとして活用できるものであり、第1段階酵素反応として、グルタミン酸脱水素酵素、ロイシン脱水素酵素等をフェニルアラニン脱水素酵素と組み合せることでマルチバイオセンサも可能になる。
【0009】
補酵素としては、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)又は酸化型ニコチンアミドアデニンヌクレオチドリン酸(NADP)が好ましい。
フェニルアラニン基質とフェニルアラニン脱水素酵素との酵素反応により生じた還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)又は還元型ニコチンアミドアデニンヌクレオチドリン酸から電子メディエーターに電子移動し、このメディエーターが還元型の電子メディエーターになる。
還元型の電子メディエーターの存在下において電極系に所定の電圧を印加すると基質濃度に応じて酸化電流が応答電流として出力される。
従って、本発明において電子メディエーターはNADH又はNADPHにより電気化学的に還元され、電極において酸化される可逆的反応物質であれば特に限定されない。
電子メディエーターとしてはフェロセン誘導体、キノン類、フェリシアン化カリウム、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、フェノチアジン誘導体、フェナジンメトサルフェート誘導体、p-アミノフェノール、メルドーラブルー、2,6-ジクロロフェノールインドフェノールのいずれかが良く、フェロセン誘導体の代表例にはフェロセンメタノールがあり、キノン類の代表例にはベンゾキノンがある。
例えば、フェロセンメタノールは下記化学式のように酸化、還元反応を示す。
【化1】
JP0004702341B2_000002t.gif

【0010】
このようなバイオセンサを用いた生体中又は食品中に含まれるフェニルアラニンの測定方法であって、フェニルアラニン脱水素酵素とジアホラーゼとを固定化した作用極及び、対極からなる電極系を用いて、フェニルアラニン脱水素酵素を触媒にしてフェニルアラニン基質からNAD又はNADPに電子移動反応をさせ、生じたNADH又はNADPHからジアホラーゼを触媒として電子メディエーターに電子移動反応させて、所定の印加電圧下における還元型電子メディエーターの酸化応答電流値を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、電極上においてフェニルアラニン脱水素酵素とジアホラーゼの2種類の酵素を相互に近傍に固定化したことにより、第1段階のフェニルアラニン脱水素酵素の酵素反応で生じたNADH又はNADPHが第2段階のジアホラーゼの酵素反応により電子メディエーターを還元するのでフェニルアラニン脱水素酵素の見かけの平衡定数Km値が75μMから40μMに減少し、より低濃度でのフェニルアラニンの検出が可能になる。
また、これにより容易に血中のフェニルアラニンを測定できる。
なお、正常人では血中フェニルアラニンは20~110μMであるがフェニルケトン尿症患者は約120μM以上といわれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係るフェニルアラニンセンサの構造及び測定方法を以下説明するが、2種類以上の酵素を同一電極上に固定化するものである限りにおいて広く展開でき、本実施例に限定されるものではない。
【0013】
(電極への酵素の固定)
直径1.6mmの金ディスク電極を、2~20mMになるようメルカプトカルボン酸のスクシンイミドエステルを溶かしたジメチルスルホキシド(DMSO)溶液に1~2時間浸漬し、その自己組織化膜を形成した。
次いで約5%のポリアリルアミン(PAA)を溶かしたリン酸緩衝液(pH7.0)に30分~1晩浸漬してPAAをこの自己組織化膜に結合させた。
さらに5%グルタルアルデヒド水溶液で30分から2時間処理した後、2mg/mLのフェニルアラニン脱水素酵素(PheDH)と2mg/mLのジアホラーゼ(DI)の等量混合液に30分~一晩浸けて電極にこれらの酵素を同時に修飾した。
その構造を図1に模式的に示す。
なお、自己組織化膜を形成する際のメルカプトカルボン酸スクシンイミドエステルとしては、メルカプトプロピオン酸やメルカプトウンデカン酸等のスクシンイミドエステル体が利用可能であるが、鎖長が適当に長いメルカプトカルボン酸を用いて自己組織化膜を作製したほうが、その疎水性分子薄膜のバリヤ効果により、後のフェニルアラニンセンサの出力測定の際に血中などに含まれるアスコルビン酸、尿酸などの負電荷を持ち電気化学反応性の夾雑物質による妨害を受けにくくできることを新たに明らかにしており、現状ではメルカプトウンデカン酸スクシンイミドエステルの利用が好ましい。
また、さらに血中や食品サンプル中に共存するアスコルビン酸などの電気化学反応性物質の妨害を抑制したいときには、市販の陰イオン性ポリマーである商品名:Nafion(ナフィオン)(登録商標)の溶液を酵素固定化電極表面に滴下乾燥して、修飾電極を仕上げると有効である。
こうして作製した酵素固定化電極は、洗浄後使用時までは、酵素の活性を最適に保つグリシン‐KOH緩衝液(pH9.5)中に浸漬して、冷蔵保存した。
【0014】
(フェニルアラニンセンサの応答測定)
フェニルアラニンセンサの応答は、Gly-KOH緩衝液(pH9.5)に、NADを1.5mM、フェロセンメタノールを0.1 mM溶かした測定液中に酵素固定化電極をセットして測定した。
そこにフェニルアラニン溶液を順次添加し、0~500mV(vs.Ag/AgCl)の電位範囲でサイクリックボルタンメトリー(CV)を用いて触媒電流の増加を調べた。
CVの走査速度は5mV/sで行った(1サイクルの測定で200秒)。
対極にはPt電極を、参照電極はAg/AgCl電極を使用した。
その構造を図2に模式的に示す。
【0015】
本発明に係るバイオセンサの計測原理を図3に示す。
作製したフェニルアラニンセンサは、図4に示すように、フェニルアラニン濃度の増加とともにCVにおける触媒電流の増加が観測された。
また、290mVでの触媒電流値とフェニルアラニン濃度の関係を図5に示した。
この結果から本センサのフェニルアラニン定量可能範囲は、20μM~160μMであった。
また、比色法(均一系)で測定したPheDHフェニルアラニンに対するKm値は75μMであったが、一方、本センサのフェニルアラニンに対する見かけのKm値は42μMであり、高感度検出に有利であった。
【0016】
図6にフェニルアラニンセンサとフェニルアラニン脱水素酵素の基質特異性の比較を示す。
本センサは比色法で測定したフェニルアラニン脱水素酵素自体とほぼ同様の基質特異性を示した。
フェニルアラニンに対する選択性が高いことが明らかになった。
本発明は血液中や食品中のフェニルアラニンの定量によりフェニルケトン尿症等の先天性代謝異常症早期診断や食品中の有用成分の検出に適用できる。
また、フェニルアラニン脱水素酵素とジアホラーゼを電極表面に直接共有結合固定化してあるため、電極を洗浄し、補酵素と電子メディエーターを加えた緩衝液中に浸漬すれば繰り返し使用できるので経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電極構造を示す。
【図2】計測システムを示す。
【図3】センサの計測原理を示す。
【図4】フェニルアラニン濃度に依存したセンサのサイクリックボルタモグラムの変化を示す。
【図5】290mVにおける触媒電流のフェニルアラニン濃度依存性を示す。
【図6】フェニルアラニンセンサとフェニルアラニン脱水素酵素の基質特異性の比較を示す。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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