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明細書 :皮膚カテプシンの分析方法、皮膚の光ストレスの判定方法およびそのためのキット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5234453号 (P5234453)
公開番号 特開2009-210411 (P2009-210411A)
登録日 平成25年4月5日(2013.4.5)
発行日 平成25年7月10日(2013.7.10)
公開日 平成21年9月17日(2009.9.17)
発明の名称または考案の名称 皮膚カテプシンの分析方法、皮膚の光ストレスの判定方法およびそのためのキット
国際特許分類 G01N  33/573       (2006.01)
G01N  33/543       (2006.01)
G01N  33/553       (2006.01)
FI G01N 33/573 A
G01N 33/543 521
G01N 33/543 595
G01N 33/553
請求項の数または発明の数 2
全頁数 13
出願番号 特願2008-053577 (P2008-053577)
出願日 平成20年3月4日(2008.3.4)
審査請求日 平成23年3月2日(2011.3.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】山口 昌樹
【氏名】清水 忠道
【氏名】牧野 輝彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100064746、【弁理士】、【氏名又は名称】深見 久郎
【識別番号】100085132、【弁理士】、【氏名又は名称】森田 俊雄
【識別番号】100083703、【弁理士】、【氏名又は名称】仲村 義平
【識別番号】100096781、【弁理士】、【氏名又は名称】堀井 豊
【識別番号】100098316、【弁理士】、【氏名又は名称】野田 久登
【識別番号】100109162、【弁理士】、【氏名又は名称】酒井 將行
【識別番号】100111246、【弁理士】、【氏名又は名称】荒川 伸夫
審査官 【審査官】草川 貴史
参考文献・文献 特開2007-199053(JP,A)
特開平08-015260(JP,A)
特表2005-535887(JP,A)
特開2003-254975(JP,A)
国際公開第2006/098523(WO,A1)
特開2002-116203(JP,A)
Cecilia A. Bivik, Petra K. Larsson, Katarina M. Kagedal, Inger K. Rosdahl, Karin M. Ollinger,UVA/B-Induced Apoptosis in Human Melanocytes Involves Translation of Cathepsins and Bcl-2 Family Members,Journal of Investigative Dermatology,米国,2006年,Vol. 126: pp1119-1127
Guillaume-Rousselet N, Jean D, Frade R.,Cloning and characterization of anti-cathepsin L single chain variable fragment whose expression inhibits procathepsin L secretion in human melanoma cells,Biochem J. ,2002年10月,Vol.367,Page.219-227
Urbich C, Heeschen C, Aicher A, Sasaki K, Bruhl T, Farhadi MR, Vajkoczy P, Hofmann WK, Peters C, Pennacchio LA, Abolmaali ND, Chavakis E, Reinheckel T, Zeiher AM, Dimmeler S.,Cathepsin L is required for endothelial progenitor cell-induced neovascularization ,Nat Med ,2005年 2月 1日,Vol.11,No.2 ,Page.206-213
木南英紀, 武野大策, 石堂一巳, 佐藤昇, 上野隆,リソゾ-ムシステインプロテア-ゼ群の細胞内機能 マクロファ-ジにおける役割,炎症,日本,1992年 9月,Vol.12,No.5 ,Page.425-429
調査した分野 G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
皮膚から採取した試料中に含まれる皮膚カテプシンおよび総タンパク質を測定し、総タンパク質に対する皮膚カテプシンの比から、皮膚の光ストレスを判定する方法であって、
局在プラズモン共鳴を用いたイムノクロマトグラフィによって皮膚カテプシンを測定する、方法。
【請求項2】
皮膚カテプシンが皮膚カテプシンLである、請求項1に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚カテプシンの分析方法およびそのためのキット、ならびに、皮膚の光ストレスの判定方法およびそのためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線露光などの光ストレスによって、皮膚の角層が肥厚し、角層の脱落が促進することが知られている。従来、皮膚における肌水分量やメラニン量の変化から、このような皮膚の光ストレスを判定することがなされていたが、定性的な評価に過ぎず、皮膚の光ストレスを定量的に評価できるものではなかった。
【0003】
近年、光ストレスによる皮膚代謝において、皮膚カテプシンが角質の生成を担う酵素として着目されている。カテプシンは、細胞内小器官のリソソームから分泌されるプロテアーゼで、その構造や機能によりおよそ18種類に分類される(下記の表1を参照)。
【0004】
【表1】
JP0005234453B2_000002t.gif

【0005】
カテプシンLは、分子量24kDa、最適pH5.0~6.0のシステインプロテアーゼであり、コラーゲン、アゾカゼインやヘモグロビンなどのタンパクを強力に加水分解する(たとえば、鶴大典ら、「蛋白質分解酵素I」、学会出版センター、51-55頁(非特許文献1)を参照。)。また、外傷などにより炎症を起こした皮膚や、癌細胞で増加することが知られており、細胞周期の調節因子としても働いている(たとえば、Thomas Reinheckell et al., 「The lysosomal cysteine protease cathepsin L regulates keratinocyte proliferation by control of growth factor recycling」、Journal of cell science, vol. 118(15), pp 3387-3395(非特許文献2)を参照。)。
【0006】
皮膚が紫外線に暴露すると、刺激を受けた皮膚細胞中でカテプシンの分泌量が増え、それが引き金となって連鎖的にシグナルの伝達が行われ、最終的にアポトーシスに繋がると考えられている(たとえば、Cecilia A. Bivik et al., 「UVA/B-Induced Apoptosis in Human Melanocytes Involves Translocation of Cathepsins and Bcl-2 Family Members」、Journal of Investigative Dermatology、Vol. 126、1119-1127頁(2006)(非特許文献3)を参照。)。皮膚が紫外線に暴露すると、細胞の損傷を防ぐためにメラノサイトからのメラニンの分泌量が増加するが、もともとメラニン量の異なる人種間(黒人と白人)では、カテプシンL活性に差が見られるという研究報告がある(たとえば、Nannan Chen et al., 「Cathepsin L2 Levels Inversely Correlate with Skin Color, Journal of Investigative Dermatology, Vol.126, pp2345-2347(2006)(非特許文献4)を参照。)。このため、皮膚から採取された試料中における皮膚カテプシンを分析することで、皮膚の光ストレスを簡便・迅速に判定できる方法の開発が試みられている。
【0007】
一般に、生体試料中に含まれる微量タンパクを分析する技術としては、酵素免疫測定(ELISA:Enzyme-Linked Immunosorbent Asssay)法が多く用いられている。この酵素免疫測定法には、大きく分けて競合法とサンドイッチ法とがあるが、いずれも広く知られており、主に感度向上を主眼とし、標識自体の感度改良に関するものを中心とした種々の改良がなされている(たとえば特開2000-180448号公報(特許文献1)、特開2005-337960号公報(特許文献2)などを参照。)。
【0008】
上述した皮膚カテプシンの分析に関しては、現在のところ、分析キットの開発・販売は実現しておらず、皮膚カテプシンの遺伝子発現解析で生体試料中の有無を定性的に判定しているのが実情である。しかしながらこのような方法では、試料の前処理を行うのに何時間も必要であるだけでなく、皮膚カテプシンの定量的な評価は難しい。

【特許文献1】特開2000-180448号公報
【特許文献2】特開2005-337960号公報
【非特許文献1】鶴大典ら、「蛋白質分解酵素I」、学会出版センター、51-55頁
【非特許文献2】Thomas Reinheckell et al., 「The lysosomal cysteine protease cathepsin L regulates keratinocyte proliferation by control of growth factor recycling」、Journal of cell science, vol. 118(15), pp 3387-3395
【非特許文献3】Cecilia A. Bivik et al., 「UVA/B-Induced Apoptosis in Human Melanocytes Involves Translocation of Cathepsins and Bcl-2 Family Members」、Journal of Investigative Dermatology、Vol. 126、1119-1127頁(2006)
【非特許文献4】Nannan Chen et al., 「Cathepsin L2 Levels Inversely Correlate with Skin Color, Journal of Investigative Dermatology, Vol.126, pp2345-2347(2006)
【非特許文献5】橋本ら、「テトラブロモフェノールを用いる尿タンパク質の吸光光度定量及び目視定量」、分析化学、Vol.54、No.9、2005、783-788頁
【非特許文献6】Welss T et al., 「Hurpin is a selective inhibitor of lysosomal cathepsin L and protects keratinocytes from ultraviolet-induced apoptosis」、Biochemistry 42(24)、2003、7381-7389頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、皮膚から採取された試料中における皮膚カテプシンを簡便・迅速に定量分析できる方法およびそのためのキットを提供することである。
【0010】
また本発明は、皮膚から採取された試料から、皮膚の光ストレスのレベルを簡便・迅速に判定できる方法およびそのためのキットを提供することもその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、皮膚から採取した試料中に含まれる皮膚カテプシンを、局在プラズモン共鳴を用いたイムノクロマトグラフィによって分析する方法であることを特徴とする。
【0012】
本発明の皮膚カテプシンの分析方法において、皮膚カテプシンは皮膚カテプシンLであることが好ましい。
【0013】
本発明は、皮膚から採取した試料中に含まれる皮膚カテプシンおよび総タンパク質を測定し、総タンパク質に対する皮膚カテプシンの比から皮膚の光ストレスを判定する方法(以下、「第1の判定方法」と呼称する。)についても提供する。
【0014】
本発明の第1の判定方法においては、局在プラズモン共鳴を用いたイムノクロマトグラフィによって皮膚カテプシンを測定することが好ましい。
【0015】
また本発明の第1の判定方法において、皮膚カテプシンは皮膚カテプシンLであることが好ましい。
【0016】
本発明はまた、皮膚から採取した試料中に含まれる皮膚カテプシン、皮膚カテプシン阻害物質および総タンパク質を測定し、総タンパク質に対する皮膚カテプシンの比、総タンパク質に対する皮膚カテプシン阻害物質の比および皮膚カテプシン阻害物質に対する皮膚カテプシンの比から皮膚の光ストレスを判定する方法(以下、「第2の判定方法」と呼称する。)についても提供する。
【0017】
本発明の第2の判定方法においては、局在プラズモン共鳴を用いたイムノクロマトグラフィによって皮膚カテプシンおよび皮膚カテプシン阻害物質を測定することが好ましい。
【0018】
また本発明の第2の判定方法において、皮膚カテプシンは皮膚カテプシンLであることが好ましい。
【0019】
本発明は、毛細管現象によって液体が移動し得るように構成された基板上に、皮膚カテプシンの抗体と金コロイドとのコンジュゲートが予め含浸されたコンジュゲートパッドと、コンジュゲートに用いた抗体とは異なる部位を認識する皮膚カテプシンの抗体が予め固定された検出部とが形成された、皮膚カテプシン分析用キット(以下、「第1のキット」と呼称する。)についても提供する。
【0020】
また本発明は、毛細管現象によって液体が移動し得るように構成された基板上に、皮膚カテプシンの抗体と金コロイドとのコンジュゲートが予め含浸されたコンジュゲートパッドと、コンジュゲートに用いた抗体とは異なる部位を認識する皮膚カテプシンの抗体が予め固定された第1の検出部と、酸塩基指示薬を含む第2の検出部とが形成された、皮膚の光ストレス判定用キット(以下、「第2のキット」と呼称する。)についても提供する。
【0021】
本発明はさらに、毛細管現象によって液体が移動し得るように構成された基板上に、皮膚カテプシンの抗体と金コロイドとのコンジュゲートが予め含浸されたコンジュゲートパッドと、コンジュゲートに用いた抗体とは異なる部位を認識する皮膚カテプシンの抗体が予め固定された第1の検出部と、酸塩基指示薬を含む第2の検出部と、皮膚カテプシン阻害物質の抗体が予め固定された第3の検出部とが形成された、皮膚の光ストレス判定用キット(以下、「第3のキット」と呼称する。)についても提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の皮膚カテプシンの分析方法およびそのためのキット(第1のキット)によれば、局在プラズモン共鳴を用いたイムノクロマトグラフィによって、特異性の高い免疫測定法で皮膚から採取された試料中の皮膚カテプシンを分子認識して、簡便・迅速に定量分析することが可能となる。このような方法およびキットは、皮膚の光ストレスのレベルの簡便・迅速な判定に有用である。
【0023】
また本発明の皮膚の光ストレスの判定方法(第1の判定方法、第2の判定方法のいずれもを含む)によれば、皮膚から採取された試料中の皮膚カテプシンおよび総タンパク質、または、皮膚カテプシン、皮膚カテプシン阻害物質および総タンパク質を測定し、それぞれの比率を算出することで、皮膚の光ストレスのレベルを迅速に有意に判定することができる。また、これらの方法を行うためのキット(第2のキット、第3のキットのいずれもを含む)によれば、皮膚カテプシンおよび総タンパク質、または、皮膚カテプシン、皮膚カテプシン阻害物質および総タンパク質を1つの試験紙上にドライケミストリーで構成することで、低廉なディスポーザブル・テストストリップを実現できるという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<皮膚カテプシンの分析方法およびそのためのキット>
本発明の皮膚カテプシンの分析方法は、皮膚から採取した試料中に含まれる皮膚カテプシンを、局在プラズモン共鳴を用いたイムノクロマトグラフィによって分析することを特徴とする。このような本発明の皮膚カテプシンの分析方法によれば、皮膚から採取された試料中における皮膚カテプシンを簡便・迅速に定量分析することができる。
【0025】
本発明の分析方法において分析の対象となる皮膚カテプシンは、ヒトの皮膚に存在する、光ストレスによる皮膚代謝において角質の生成を担う酵素であり、上述した表1に示したように、皮膚カテプシンL、皮膚カテプシンA、皮膚カテプシンB、皮膚カテプシンC、皮膚カテプシンD、皮膚カテプシンE、皮膚カテプシンF、皮膚カテプシンG、皮膚カテプシンH、皮膚カテプシンK、皮膚カテプシンL1、皮膚カテプシンL2、皮膚カテプシンO、皮膚カテプシンR、皮膚カテプシンS、皮膚カテプシンT、皮膚カテプシンW、皮膚カテプシンXなどの種類が知られている。本発明の分析方法では、これらのうちのどの種類の皮膚カテプシンを分析の対象とするものであってもよいが、皮膚から最も高い濃度で採取することができることから、皮膚カテプシンLを分析の対象とすることが好ましい。
【0026】
本発明の分析方法において分析に供する皮膚カテプシンを含む試料は、ヒトの皮膚、特にはヒトの皮膚の角質から採取されたものを用いる。試料を採取するヒトの身体の部位は、たとえば腕、顔、手、首などの皮膚が露出している部位であれば特に制限はされないが、最も露出時間が長く、光ストレスを受けやすいことから、腕または顔が好ましい。また試料の採取方法についても特に制限されないが、たとえば粘着層を有するパッド(好適な具体例としてはD-Squame D100(Cuderm社製)(直径22mm×厚み0.1mm程度)など)を、上述したようなヒトの身体の部位の皮膚に貼着した後、これを剥離することで、粘着層への付着物を回収することで採取することができる。なお、採取された試料をイムノクロマトグラフィによって分析するに際しては、当該試料を抽出液に溶解させた液体試料を調製する。この抽出液としては、たとえば、酢酸緩衝液中にTritonX-100を0.1%含有させた、下記の表2に示す組成(100mLあたり)を有するものが好適に用いられる。表2に示す例の酢酸緩衝液では、濃度を低濃度(たとえば4mM)にすることで、その後の濃縮処理による影響を受けにくくしている。また、表2に示す例の酢酸緩衝液は、pHを皮膚カテプシンLの最適pHである5にしている。
【0027】
【表2】
JP0005234453B2_000003t.gif

【0028】
本発明の分析方法においては、特異性の高い免疫測定法で、試料中に含まれる皮膚カテプシンを分子認識し、局在プラズモン共鳴により試料中に含まれる皮膚カテプシンの検出感度を増加(増感)させるため、たとえば金コロイド、銀コロイドなどの希金属粒子などが用いられる。これらの中でも、化学的安定性の理由から、金コロイドが好ましい。金コロイドは、市販の製品を好適に用いることができ、具体例としては、OD520=12のイムノクロマト用金コロイド原液(WRGH1、(株)ワインレッドケミカル製)などが挙げられる。
【0029】
金コロイドを用いた局在プラズモン共鳴によるイムノクロマトグラフィは、具体的には、皮膚カテプシンの抗体と金コロイドとのコンジュゲートを予め作製し、これをまず、試料(液体試料)中の皮膚カテプシンと抗原抗体反応により結合させ、次に、この皮膚カテプシン-コンジュゲートの結合体を、コンジュゲートの抗体とは異なる部位を認識する皮膚カテプシンの抗体とさらに抗原抗体反応により結合させてトラップし、トラップした結合体を定量分析することで行うことができる。ここで、本発明の皮膚カテプシンの分析方法において、コンジュゲートに用いられる抗体、ならびに、当該コンジュゲートの抗体とは異なる部位を認識する皮膚カテプシンの抗体は、それぞれ市販の製品を好適に用いることができる。
【0030】
また、本発明における金コロイドを用いた局在プラズモン共鳴によるイムノクロマトグラフィに用いるイムノクロマト試験紙は、具体的には、以下の手順にて好適に作製することができる。まず、OD520=12のイムノクロマト用金コロイド原液(WRGH1、(株)ワインレッドケミカル製)500μLをTris-HCl緩衝液(pH9.2、20mM)500μLに加えて2倍希釈し、金コロイド溶液(OD520=6)を調製する。この金コロイド溶液1mLに、シリコナイズドチューブ(1.5mL)中で、皮膚カテプシンLの抗体(抗カテプシンL抗体)溶液(0.5mg/mL、Anti Cathepsin L、型番:MAB952、R&D SYSTEMS Inc.製)100μLを攪拌しながら加え、4℃で20分間静置する。その後、カゼインナトリウムを2.5%含んだ20mM Tris-HCl緩衝液(pH9.8)123μLを攪拌しながら加え、再び4℃で20分間静置する。これを、14,000×g、10℃で15分間遠心分離する。遠心分離後の上清を除去し、BSA(Bovine serum albumin)を1%含んだ20mM Tris-HCl緩衝液(pH9.2)(以下、BSA溶液とする)を1mL加えて懸濁する。再びこれを14,000×g、10℃で15分間遠心分離し、遠心分離後の上清を除去してD(+)-トレハロース二水和物を5%含んだBSA溶液267μLを加える。これを金コロイド標識抗体溶液とする。この金コロイド標識抗体溶液に、グラスファイバーパッド(5×5×0.41mm3、GFCP103000、ミリポア社製)を浸し、室温で30分間乾燥させてコンジュゲートパッドを作製する。
【0031】
次に、ストリップ状にカットしたニトロセルロース膜(50×5×0.24mm3、HF12004XSS、ミリポア社製)を作製し、端から20mmの位置に抗カテプシンL抗体(0.5mg/mL、Anti Cathepsin L、型番:MAB952、R&D SYSTEMS Inc.製)をライン状に2μL塗布する。これを室温で30分間乾燥させ、次に、カゼインナトリウムを1%含む10mMリン酸緩衝液(pH7)をガラスシャーレに満たし、ニトロセルロース膜を入れて50rpmで30分間振盪する。その後、10mMリン酸緩衝液(pH7)を満たしたガラスシャーレにニトロセルロース膜を浸して30分間振盪し、洗浄を行う。洗浄終了後、ニトロセルロース膜の表面の水分をキムワイプで吸い取り、室温で30分間乾燥する。ニトロセルロース膜上に、コンジュゲートパッド、サンプルパッド(5×10×0.83mm3、CFSP203000、ミリポア社製)、吸収パッド(5×5×0.83mm3、CFSP203000、ミリポア社製)を重ね、粘着テープで固定することで、イムノクロマト試験紙が好適に作製できる。
【0032】
ここで、図1は、本発明の好ましい一例の皮膚カテプシンの分析用キット(第1のキット)1を模式的に示す図であり、図1(a)は液体試料8を注入する前の状態、図1(b)は液体試料8を注入した後の状態をそれぞれ模式的に示している。本発明は、上述した本発明の皮膚カテプシンの分析方法に特に有用なキット(第1のキット)であって、毛細管現象によって液体が移動し得るように構成された基板上に、皮膚カテプシンの抗体と金コロイドとのコンジュゲートが予め含浸されたコンジュゲートパッドと、コンジュゲートに用いた抗体とは異なる部位を認識する皮膚カテプシンの抗体が予め固定された検出部とが形成された皮膚カテプシン分析用キットについても提供するものである。図1には、毛細管現象によって液体が移動し得るように構成された基板2上に、液体試料8を滴下するための試料パッド3と、皮膚カテプシンの抗体13と金コロイド12とのコンジュゲート11が予め含浸されたコンジュゲートパッド4と、コンジュゲート11に用いた抗体13とは異なる部位を認識する皮膚カテプシンの抗体14が予め固定された検出部5とが形成された例の本発明の第1のキットを示している。このような本発明の第1のキットにより、金コロイドを用いた局在プラズモン共鳴によるイムノクロマトグラフィによって、特異性の高い免疫測定法で、皮膚から採取された試料中の皮膚カテプシンを分子認識して、簡便・迅速に定量分析を行うことができる、低廉なディスポーザブル・テストストリップが提供される。
【0033】
本発明の第1のキット1に用いられる基板2は、毛細管現象によって液体が移動し得るように構成される。このような基板2を形成する材料としては、たとえば上述したようなストリップ状にカットしたニトロセルロース膜、セルロース膜などが好適に用いられるが、これに限定されるものではない。また、ポリエチレン、ポリエステル、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ガラスなどで形成されたベース基板上に、ニトロセルロース膜が形成されて、基板2が実現されていてもよい。
【0034】
試料パッド3は、液体試料8を注入した際に、当該液体試料8中に含まれる、分析対象である皮膚カテプシンが当該試料パッド3を通過し、基板2に到達するように構成される。より精度の高い競合反応を行うことができるようになる観点からは、試料パッド3は、皮膚から採取された液体試料8中に含まれる分子量が比較的大きい夾雑物(たとえばムチン、ペクリル、リゾチームなど)をろ過または吸着により除去し得るような材料で形成されることが好ましい。このような分子量が比較的大きい夾雑物をろ過または吸着し得るような試料パッド3の形成材料としては、たとえば、ガラス繊維、セルロースなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。なお、図1に示す例では、試料パッド3をコンジュゲートパッド4とは別に設けた例を示しているが、コンジュゲートパッド4に液体試料を直接注入して、コンジュゲートパッド4が試料パッドを兼ねるように構成されていても勿論よい。
【0035】
コンジュゲートパッド4には、上述した金コロイド12と皮膚カテプシンの抗体13とのコンジュゲート11が予め含浸されている。ここで、図2(a)は、本発明の第1のキット1のコンジュゲートパッド4における抗原抗体反応、図2(b)は、本発明の第1のキット1の検出部5における抗原抗体反応を模式的に示す図である。図1(b)に示したように、上述した試料パッド3に液体試料8が注入された場合、液体試料8はまずコンジュゲートパッド4に移動し、コンジュゲートパッド4中に予め含浸されていた金コロイド12と皮膚カテプシンの抗体13とのコンジュゲート11が液体試料8に溶け込む。これによって、図2(a)に示すように、コンジュゲートパッド4において、皮膚カテプシン9とコンジュゲート11の抗体13とが抗原抗体反応し、皮膚カテプシン9とコンジュゲート11との結合体が形成される。このようなコンジュゲートパッド4を形成する材料としては、試料パッド3を形成する好適な材料として上述した材料が同様に好適に用いることができる。なお、コンジュゲート11をコンジュゲートパッド4に予め含浸させておく方法としては、従来公知の適宜の方法を適用でき、特に制限されないが、たとえば上述したような方法が好適である。
【0036】
本発明の第1のキット1における検出部5には、上述したようにコンジュゲート11に用いられた皮膚カテプシンの抗体13とは異なる部位を認識する皮膚カテプシンの抗体14が予め固定されている。抗体14は、たとえば共有結合、イオン結合、配位結合、ファンデルワールス力などの化学的な結合による固定、コーティングなどの被膜形成などの従来公知の適宜の手法を用いて、検出部5に固定することができる。上述したようにコンジュゲートパッド4における抗原抗体反応で形成された皮膚カテプシン9とコンジュゲート11との結合体は、毛細管現象によって水平方向に概ね沿って検出部5まで移動し、検出部5において、図2(b)に示すように、抗体14と抗原抗体反応を起こし、検出部5にトラップされる。
【0037】
図3は、図1に示した例の本発明のキット1の検出部5における皮膚カテプシン量の測定を模式的に示す図であり、図3(a)は斜視図、図3(b)は断面図である。上述したように皮膚カテプシン9とコンジュゲート11との結合体は、毛細管現象によって水平方向に概ね沿って検出部5まで移動し、検出部5に予め固定されていた抗体14にトラップされる。このトラップされた皮膚カテプシン9とコンジュゲート11と抗体14との結合体について、図3に示すような発光素子21、受光素子22を備え、さらに化学反応、発色濃度の安定化のための温度制御機構23が内蔵された光学式測定器を用いて、皮膚カテプシンを定量的に分析する。すなわち、検出部5にトラップされた結合体に、発光素子21から光を照射し、その反射光を受光素子22にて受光して結合体中における金コロイドの濃度測定を行うことで、トラップされた皮膚カテプシンを定量的に分析することができる。
【0038】
なお、本発明の第1のキット1は、通常、検出部5に関し、試料パッド3とは反対側の基板2の端部に吸収パッド10が設けられる。この吸収パッド10は、毛細管現象によって水平方向に概ね沿って移動し、検出部5を通過した後の液体試料を吸収するためのものであり、上述した試料パッド3を形成する好適な材料として上述した材料にて形成された吸収パッド10を好適に用いることができる。
【0039】
<皮膚の光ストレスの判定方法(第1の判定方法)およびそのためのキット>
本発明はまた、皮膚から採取した試料中に含まれる皮膚カテプシンおよび総タンパク質を測定し、総タンパク質に対する皮膚カテプシンの比から皮膚の光ストレスを判定する方法(第1の判定方法)についても提供する。本発明の第1の判定方法によれば、皮膚カテプシンおよび総タンパク質を測定し、その比率を算出することで、皮膚の光ストレスのレベルを迅速に有意に判定することができる。ここで、「総タンパク質」とは、皮膚から採取された試料中におけるタンパク質の総量を指し、この総タンパク質に対する皮膚カテプシンの比率が低い場合には、急性ストレスが低いと判定することができ、逆に、総タンパク質に対する皮膚カテプシンの比率が高い場合には、急性ストレスが高いと判定することができる(総タンパク質に対する皮膚カテプシンの比率と急性ストレスとの相関関係については、たとえば非特許文献3などを参照)。
【0040】
なお、本発明の第1の判定方法において、試料の採取は本発明の皮膚カテプシンの分析方法において上述したのと同様の手法にて行うことができ、また、測定する皮膚カテプシンの種類も同様の理由から皮膚カテプシンLが好ましい。また本発明の第1の判定方法において、皮膚から採取された試料中の皮膚カテプシンを測定する方法は、特に制限されるものではなく、局在プラズモン共鳴を用いた免疫クロマトグラフィ、マイクロ電気泳動、表面プラズモン共鳴などの適宜の手法を用いることができるが、簡便性、迅速性の観点からは、上述した本発明の皮膚カテプシンの分析方法と同様に、金コロイドを用いた局在プラズモン共鳴による免疫クロマトグラフィを利用することが、好ましい。
【0041】
また本発明の第1の判定方法において、皮膚から採取した試料中に含まれる総タンパク質を測定する方法としては、特に制限されないが、たとえば、橋本ら、「テトラブロモフェノールを用いる尿タンパク質の吸光光度定量及び目視定量」、分析化学、Vol.54、No.9、2005、783-788頁(非特許文献5)に記載されたような、酸塩基指示薬を利用する方法が好適に採用できる。たとえば、酸塩基指示薬の1つであるテトラブロモフェノールブルー(C1910Br45S、TBPB、分子量:669.96)は、水溶液中でH2TBPB、HTBPB-、もしくはTBPB2-として存在する。非イオン界面活性剤TritonX-100の存在下では、次式(A)の状態でミセル内に溶解する。次に、この酸塩基指示薬にタンパク質を加えると、次式(B)の反応が起こる。このような反応によって、酸塩基指示薬は、タンパク質濃度に応じて、黄色から深緑色に変化するため、この色の変化を観察することで、皮膚から採取した試料中に含まれる総タンパク質を定量的に分析することが可能となる。
【0042】
HTBPNB-xTritonX-100
→(HTBPB-xTritonX-100)m (A)
y(HTBPB-xTritonX-100)m+Protein
→〔y(HTBPB-xTritonX-100・Protein)m (B)
(上記式(A)、(B)において、xはHTBPB- 1molを取り込むTritonX-100のモル数、yはProtein 1molと反応するHTBPB-のモル数、mはミセルを表す。)
ここで、図4は、本発明の好ましい一例の皮膚の光ストレスの判定用キット(第2のキット)51を模式的に示す斜視図であり、図4(a)は外観図、図4(b)は図4(a)の状態からハウジング52を取り除いた上体を示す図である。本発明は、上述した本発明の第1の判定方法を好適に行い得るキットであって、図4に示すように、毛細管現象によって液体が移動し得るように構成された基板55上に、液体試料54を滴下するための試料パッド53と、皮膚カテプシンの抗体と金コロイドとのコンジュゲートが予め含浸されたコンジュゲートパッド56と、コンジュゲートに用いた抗体とは異なる部位を認識する皮膚カテプシンの抗体が予め固定された第1の検出部57と、酸塩基指示薬を含む第2の検出部58とが形成されたキット51についても提供する。このような本発明の第2のキットにより、局在プラズモン共鳴を用いたイムノクロマトグラフィによって、特異性の高い免疫測定法で、皮膚から採取された試料中の皮膚カテプシンを分子認識して定量分析を行うとともに、当該試料中の総タンパク質についても同時に測定し、皮膚の光ストレスを簡便・迅速に判定することができる、低廉なディスポーザブル・テストストリップが提供される。
【0043】
本発明の第2のキット51において、基板55、試料パッド53、コンジュゲートパッド56および第1の検出部57は、本発明の第1のキット1において上述した基板2、試料パッド3、コンジュゲートパッド4および検出部5についてそれぞれ上述したとおりであり、コンジュゲートパッド56に用いる金コロイド、皮膚カテプシンの抗体、検出部57に用いる皮膚カテプシンの抗体もそれぞれ同様である。本発明の第2のキット51では、図4に示すように、基板55の中央付近に液体試料54を注入するための試料パッド53が設けられ、基板55の約半分には、上述したコンジュゲートパッド56および第1の検出部57が形成され、液体試料中の皮膚カテプシンを定量的に分析できるように構成されているとともに、基板55の残りの約半分には、酸塩基指示薬を含む第2の検出部58が形成され、液体試料中の総タンパク質を同時に測定できるように構成されていることを特徴とする。
【0044】
ここで、第2の検出部58には、たとえば、上述した酸塩基指示薬の1つであるテトラブロモフェノールブルーを利用した総タンパク試験紙が設置される。この総タンパク試験紙は、たとえば、まず、(1)テトラブロモフェノールブルーをエタノールに溶解し、74μMとしたTBPB溶液、TritonX-100を水に溶解した1%界面活性剤溶液、0.5Mの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を調製した後、(2)TBPB溶液:界面活性剤溶液:緩衝液=5:1:5の割合で混合して指示薬を調整した後、(3)指示薬をろ紙に含浸し、温度15℃、湿度15%で20分間乾燥させることで好適に作製することができる。
【0045】
<皮膚の光ストレスの判定方法(第2の判定方法)およびそのためのキット>
本発明はさらに、皮膚から採取した試料中に含まれる皮膚カテプシン、皮膚カテプシン阻害物質および総タンパク質を測定し、総タンパク質に対する皮膚カテプシンの比、総タンパク質に対する皮膚カテプシン阻害物質の比および皮膚カテプシン阻害物質に対する皮膚カテプシンの比から皮膚の光ストレスを判定する方法(第2の判定方法)についても提供する。本発明の第2の判定方法によれば、皮膚カテプシン、皮膚カテプシン阻害物質および総タンパク質を測定し、総タンパク質に対する皮膚カテプシンの比率、総タンパク質に対する皮膚カテプシン阻害物質の比率および皮膚カテプシン阻害物質に対する皮膚カテプシンの比率をそれぞれ算出することで、以下の表3に示す相関関係から、急性ストレスについてだけでなく、慢性ストレスについても迅速に有意に判定することができる。なお、下記表3に示す相関関係については、たとえばWelss T et al., 「Hurpin is a selective inhibitor of lysosomal cathepsin L and protects keratinocytes from ultraviolet-induced apoptosis」、Biochemistry 42(24)、2003、7381-7389頁(非特許文献6)などを参照できる。
【0046】
【表3】
JP0005234453B2_000004t.gif

【0047】
本発明の第2の判定方法においても、試料の採取は本発明の皮膚カテプシンの分析方法において上述したのと同様の手法にて行うことができ、また、測定する皮膚カテプシンの種類も同様の理由から皮膚カテプシンLが好ましい。また本発明の第2の判定方法においても、皮膚から採取された試料中の皮膚カテプシンを測定する方法は、特に制限されるものではなく、局在プラズモン共鳴を用いた免疫クロマトグラフィ、マイクロ電気泳動、表面プラズモン共鳴などの適宜の手法を用いることができるが、簡便性、迅速性の観点からは、上述した本発明の皮膚カテプシンの分析方法と同様に、金コロイドを用いた局在プラズモン共鳴による免疫クロマトグラフィを利用することが好ましい。また、本発明の第2の判定方法でも、皮膚から採取された試料中の総タンパク質を測定する方法については特に制限されないが、上述した本発明の第1の判定方法と同様に、酸塩基指示薬を利用する方法が好適である。
【0048】
本発明の第2の判定方法によれば、皮膚から採取した試料中に含まれる皮膚カテプシン阻害物質についても測定し、総タンパク質に対する皮膚カテプシン阻害物質の比および皮膚カテプシン阻害物質に対する皮膚カテプシンの比も判定材料とする。ここで、上述した非特許文献6には、皮膚カテプシンL(CatL)は、皮膚のアポトーシスを進める酵素であるが、一方で、紫外線刺激によって引き起こされるアポトーシスの結果生じる皮膚の角質化は、Hurpin(headpin、PI13もしくはserpin)という阻害物質(inhibitCatL)により防止されることが指摘されている。すなわち、紫外線による皮膚細胞のダメージの程度により、CatLとinhibitCatLの分泌バランスが変わり、その結果、皮膚細胞のアポトーシスが調節されている可能性が示唆されている。したがって、被験者の皮膚に引き起こされた光ストレスが、急性的なものか慢性的なものかは、皮膚カテプシン/カテプシン阻害物質比を求めることで、より正確に判断できる可能性がある。
【0049】
本発明の第2の判定方法において、測定の対象となる皮膚カテプシン阻害物質としては特に制限されず、Hurpinなどが挙げられる。
【0050】
皮膚から採取した試料中に含まれる皮膚カテプシン阻害物質は、たとえば、金コロイドを用いた局在プラズモン共鳴による免疫クロマトグラフィ、マイクロ電気泳動、表面プラズモン共鳴などの適宜の手法を用いて測定することができ、その測定方法は特に制限されないが、簡便性、迅速性の観点からは、皮膚から採取した試料中に含まれる皮膚カテプシンを測定する場合と同様に、免疫クロマトグラフィを利用することが好ましい。この場合、皮膚カテプシン阻害物質の抗体は、市販品を好適に用いることができる(具体例は上述)。
【0051】
本発明はさらに、上述した本発明の第2の判定方法を好適に行い得るキットであって、毛細管現象によって液体が移動し得るように構成された基板上に、液体試料を滴下するための試料パッドと、皮膚カテプシンの抗体と金コロイドとのコンジュゲートが予め含浸されたコンジュゲートパッドと、コンジュゲートに用いた抗体とは異なる部位を認識する皮膚カテプシンの抗体が予め固定された第1の検出部と、酸塩基指示薬を含む第2の検出部と、皮膚カテプシン阻害物質の抗体が予め固定された第3の検出部とが形成されたキット(第3のキット)についても提供する。このような本発明の第3のキットによっても、局在プラズモン共鳴を用いたイムノクロマトグラフィによって、特異性の高い免疫測定法で、皮膚から採取された試料中の皮膚カテプシンを分子認識して定量分析を行うとともに、当該試料中の総タンパク質および皮膚カテプシン阻害物質についても同時に測定し、皮膚の光ストレスを簡便・迅速に判定することができる、低廉なディスポーザブル・テストストリップが提供される。
【0052】
本発明の第3のキットにおいて、基板、試料パッド、コンジュゲートパッド、第1の検出部および第2の検出部は、本発明の第2のキット51において上述した基板、試料パッド、コンジュゲートパッドおよび第1の検出部、第2の検出部についてそれぞれ上述したとおりであり、コンジュゲートパッドに用いる金コロイド、皮膚カテプシンの抗体、第1の検出部に用いる皮膚カテプシンの抗体、第2の検出部に用いる総タンパク試験紙などももそれぞれ同様である。本発明の第3のキットは、たとえば、基板の中央付近に液体試料を注入するための試料パッドが設けられ、基板は、試料パッドを中心に概ね3つの領域に分けられ、その約3分の1の部分には、上述したコンジュゲートパッドおよび第1の検出部が形成され、液体試料中の皮膚カテプシンを定量的に分析できるように構成され、また約3分の1の部分には、上述した総タンパク試験紙が設けられた第2の検出部が形成され、液体試料中の総タンパク質を定量的に分析できるように構成されているとともに、さらに、残る約3分の1の部分には、第3の検出部が形成され、液体試料中の皮膚カテプシン阻害物質を定量的に分析できるように構成されている。
【0053】
ここで、第3の検出部には、たとえば、皮膚カテプシン阻害物質(好適には、上述したHurpin)の抗体が予め固定されている。抗体は、たとえば共有結合、イオン結合、配位結合、ファンデルワールス力などの化学的な結合による固定、コーティングなどの被膜形成などの従来公知の適宜の手法を用いて、第3の検出部に固定することができる。
【0054】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内で全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
皮膚カテプシンは、光ストレスによる皮膚代謝において、角質の生成を担う酵素であり、ヒトの角質に含まれる皮膚カテプシンの簡便・迅速な分析が実現されれば、皮膚の光ストレスの定量評価に有用である。また、本技術は、皮膚カテプシンだけでなく他の皮膚酵素の迅速分析にも寄与すると考えられ、化粧品・医療分野での応用範囲は広い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の好ましい一例の皮膚カテプシンの分析用キット(第1のキット)1を模式的に示す図であり、図1(a)は液体試料8を注入する前の状態、図1(b)は液体試料8を注入した後の状態をそれぞれ模式的に示している。
【図2】図2(a)は、本発明の第1のキット1のコンジュゲートパッド4における抗原抗体反応、図2(b)は、本発明の第1のキット1の検出部5における抗原抗体反応を模式的に示す図である。
【図3】図1に示した例の本発明のキット1の検出部5における皮膚カテプシン量の測定を模式的に示す図であり、図3(a)は斜視図、図3(b)は断面図である。
【図4】本発明の好ましい一例の皮膚の光ストレスの判定用キット(第2のキット)51を模式的に示す斜視図であり、図5(a)は外観図、図5(b)は図5(a)の状態からハウジング52を取り除いた上体を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 キット、2 基板、3 試料パッド、4 コンジュゲートパッド、5 検出部、8 液体試料、9 皮膚カテプシン、10 吸収パッド、11 コンジュゲート、12 金コロイド、13 皮膚カテプシンの抗体、14 皮膚カテプシンの抗体、21 発光素子、22 受光素子、51 キット、52 ハウジング、53 試料パッド、54 液体試料、55 基板、56 コンジュゲートパッド、57 第1の検出部、58 第2の検出部。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3