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明細書 :鉄棒練習具

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2009-240337 (P2009-240337A)
公開日 平成21年10月22日(2009.10.22)
発明の名称または考案の名称 鉄棒練習具
国際特許分類 A63B   1/00        (2006.01)
FI A63B 1/00 B
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2008-087077 (P2008-087077)
出願日 平成20年3月28日(2008.3.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年2月8日 国立大学法人富山大学主催の「平成19年度富山大学体育学研究室卒業論文発表会」に発表
発明者または考案者 【氏名】佐伯 聡史
出願人 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100090206、【弁理士】、【氏名又は名称】宮田 信道
審査請求 未請求
要約 【課題】 け上がりの一連の動作を補助するための鉄棒練習具を提供する。
【解決手段】 棒材からなり一部が開口した枠体1と、枠体1の開口端に設けた鉄棒装着部2と、を有し、枠体1と鉄棒Bとで体挿入部3を形成し、鉄棒装着部2が、枠体1を鉄棒Bに対して回動自在かつ自由な位置で静止可能に支持する。枠体1を実施者の前方に向けて静止させ、け上がりを開始し、脚を体挿入部3に滑り込ませれば、枠体1が体の動きに従って鉄棒Bの周囲を下方へ回転して体を支えるので、自然に脚をつま先から大腿部にかけて鉄棒Bに沿わせ、それに伴って肩角を減少させながら腰を鉄棒Bに引き付けることができ、け上がりの類縁運動感覚を効果的に身に付けることができる。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
棒材からなり一部が開口した枠体(1)と、該枠体(1)の開口端に設けた鉄棒装着部(2)と、を有し、前記枠体(1)と鉄棒(B)とで体挿入部(3)を形成し、前記鉄棒装着部(2)が、前記枠体(1)を鉄棒(B)に対して回動自在かつ自由な位置で静止可能に支持することを特徴とする鉄棒練習具。
【請求項2】
前記枠体(1)が、鉄棒(B)と略平行な部分に、棒材に対して回動自在な筒状のロール体(4)を備えることを特徴とする請求項1記載の鉄棒練習具。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、器械運動の中の鉄棒の技である「け上がり」を練習するための鉄棒練習具に関する。
【背景技術】
【0002】
け上がりは鉄棒の技の一つであり、中学校・高等学校の指導要領の器械体操の授業にも組み込まれている一般的な技であるが、技術的な難易度は高く、中学校または高等学校の三年間で成功できる生徒は一割程度である。また、大学において中学校・高等学校の教員を目指す者が受講する器械運動の講座においても、成功できる学生は一割~二割程度である。図6に、け上がりを行う際の体の動きを示す。まず、(a)~(c)において、体全体を前方へ振り出す。そして、体が前から後へ振れ戻り始める(d)において、脚を鉄棒に引き付ける(以下、体が前から後へ振れ戻っている状態を振れ戻り局面という)。このとき、肩は鉄棒の下または前方にある。続いて(e)~(h)で、脚をつま先から大腿部にかけて鉄棒に沿わせるようにして、腰を鉄棒に引き付け、この動作と同調させて肩角(腕を下ろして胴体に沿った状態が0度であり、万歳をした状態が180度である)を減少させる。この動作は振れ戻りの勢いを利用するもので、肘を曲げずに行う。そして、(i)~(l)で、腰を鉄棒よりも高い位置で支持する。ここでも、肩角の減少は肘を曲げないようにして行う。
【0003】
次に、このけ上がりを失敗する場合に多く見られる例を図7に示す。まず、体全体を前方へ振り出した後、脚を鉄棒に引き付けなければいけないところ、脚が鉄棒から離れてしまう(a)。すると、振れ戻り局面において振れ戻りの勢いをうまく利用することができず、肩角を減少させつつ腰を鉄棒に引き付けることができない(b)。また、腕の力を利用しようとして肘が曲がってしまう。そして、最終的に鉄棒の上に支持になることができない(c)。そこで、け上がりについて指導する際には、補助者が実施者の腿の裏と腰に手を当て、振れ戻りに合わせて腰を鉄棒に近づけるような補助が行われている。このようにして類似した形態の運動を経験してけ上がりの運動感覚を掴むことが、習得のための練習として有効だからである。しかしながら、このような補助を行うためには実施者一人に対して補助者一人が必要であり、中学校・高等学校の授業などにおいては十分な補助を実施することができない。そこで文献1において、実施者一人で用いることができるけ上がり補助具が提案されている。これは、腰に鉤状の受具を装着し、受具を鉄棒に引っ掛けることで、腰が鉄棒から離れないようにするものである。

【特許文献1】実開昭60-61058号公報
【0004】
しかしながら、文献1の発明は、一人でけ上がりの練習を行うための補助具として十分なものではなかった。なぜなら、け上がりにおいて最も難しく失敗しやすいのは、脚をつま先から大腿部にかけて鉄棒に沿わせるようにして、肩角を減少させながら腰を鉄棒に引き付ける動き(図6の(e)~(h))であるのに対し、文献1の発明は、単に腰が鉄棒から離れないようにするためのもので、腰を鉄棒に近づける動作について補助するものではないからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、け上がりの一連の動作を補助するための鉄棒練習具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1の発明は、棒材からなり一部が開口した枠体と、該枠体の開口端に設けた鉄棒装着部と、を有し、前記枠体と鉄棒とで体挿入部を形成し、前記鉄棒装着部が、前記枠体を鉄棒に対して回動自在かつ自由な位置で静止可能に支持することを特徴とする。棒材からなり一部が開口した枠体とは、すなわち環状構造の一部が欠損した状態のものを指し、例えばコの字形やC字形・L字形などが挙げられる。また、棒材は内部が中空のパイプであってもよい。そして枠体は、枠体の開口端、すなわち棒材の端部に設けた鉄棒装着部により鉄棒に装着される。鉄棒装着部は、棒材の両端に設けても一端のみに設けてもよく、たとえば枠体がコの字形やC字形であれば両端に設け、L字形であれば一端のみに設けることが望ましい。そして、枠体と鉄棒とで囲まれた空間である体挿入部が形成される。また、枠体が鉄棒に対して回動自在かつ自由な位置で静止可能であるとは、枠体を鉄棒に対してどのような角度に向けても自重に抗して静止させることができるが、その状態から枠体を回転させるのに大きな力は必要なく、たとえば実施者が体重を掛ければ容易に回転する状態であることをいう。このような状態を実現するために、鉄棒装着部と鉄棒の間には、摩擦力や弾性力などの何らかの力が働く構造とする。
【0007】
本発明のうち請求項2の発明は、前記枠体が、鉄棒と略平行な部分に、棒材に対して回動自在な筒状のロール体を備えることを特徴とする。これはすなわち、筒状のロール体に棒材が挿入された構造である。なお、ロール体は実施者の体に接触するものであるから、その表面は柔らかい素材で形成されることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のうち請求項1の発明によれば、肩角を減少させながら腰を鉄棒に引き付けるという、け上がりの中核技術の類縁運動感覚を身に付けることができる。すなわち、この鉄棒練習具を鉄棒に装着し、実施者の前方に向けて静止させ、鉄棒に手を掛けてけ上がりを開始する。そして、振れ戻り局面で脚を鉄棒に引き付ける際に、脚を枠体と鉄棒とで形成される体挿入部に滑り込ませる。すると、枠体が体の動きに従って鉄棒の周囲を下方へ回転する。この枠体の動きを実施者から見ると、枠体が足首から膝の裏、腿の裏へと移動していくことになり、枠体が体を支えるので自然に脚をつま先から大腿部にかけて鉄棒に沿わせることができ、それに伴って肩角を減少させながら腰を鉄棒に引き付けることができる。このようにして、け上がりの習得に有効な練習を、一人で実施することができる。
【0009】
本発明のうち請求項2の発明によれば、枠体の体が接する部分に回動自在なロール体を設けたので、枠体が体に引っ掛かることがなく、足首から膝の裏、腿の裏へと滑らかに移動し、より本来のけ上がりに近い動きを経験することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の鉄棒練習具の具体的な構成について、各図面に基づいて説明する。図1は、鉄棒練習具の斜視図である。なお、以下において上下は図1の上下方向を指し、左右は鉄棒Bに水平な方向を指し、前後は実施者から見た前後を指す。本鉄棒練習具は、枠体1と、鉄棒装着部2と、ロール体4と、からなる。枠体1は、三本の直線状の棒材(塩化ビニル製パイプ)を二個のL字形継手(L字形に曲げられたパイプ)により連結して、上方に開口したコの字形にしたものである。ここでは、中央の棒材を水平部材1a、両端の棒材を垂直部材1bとする。そして、枠体1の両開口端、すなわち垂直部材1bの端部には鉄棒装着部2が設けてある。鉄棒装着部2はL字形継手を加工したもので、一端は垂直部材1bの端部に嵌め込み、他端は左右外側を向いている。水平部材1aと水平な部分の上側略三分の一は切り欠いて切欠部2aを形成してあり、この切欠部2aに鉄棒Bを嵌め込む。こうして枠体1と鉄棒Bとに囲まれた空間を体挿入部3とする。なお、鉄棒装着部2の内径は鉄棒Bの外径と略同一であり、切欠部2aの幅は鉄棒Bの直径よりも狭いが、鉄棒装着部2が弾性変形することで鉄棒Bを嵌め込むことができる。このように鉄棒装着部2の内径と鉄棒Bの外径とを略同一に形成することで、一定の摩擦力が働き、枠体1を鉄棒Bに対して回動自在かつ自由な位置で静止可能に支持することができる。そして、鉄棒Bを嵌め込んだ上から図示しないテーピングを施すことで、鉄棒Bから本鉄棒練習具が外れないように固定する。この際、テーピングの強さを調節することで、上記の摩擦力の強さを調整することができる。さらに、本鉄棒練習具を鉄棒Bに装着した際に鉄棒Bと水平になる水平部材1aには、筒状のロール体4が設けてある。ロール体4は水平部材1aに対して回動自在であり、一個だけ設けてもよいし、左右独立して回転するよう二個以上設けてもよい。また、ロール体4の表面はスポンジや布など柔らかい素材で形成することが望ましい。なお、枠体1の大きさについては、体挿入部3に体を挿入でき、かつ体を鉄棒に近接した状態で支えられるよう垂直部材1bが適度な長さを有することが必要である。ここでは、水平部材1aの長さは60cmとし、垂直部材1bの長さは32cmと44cmの二種類として、実施者の体格に合わせて使用できるようにした。
【0011】
次に、本発明の鉄棒練習具を用いて行うけ上がりの練習について説明する。まず、上記のとおり鉄棒に本鉄棒練習具を固定し、図2に示すように、枠体1を鉄棒Bの前側(実施者Mから見て前方)に向ける。この際、水平部材1aが鉄棒Bよりも高い位置になるように枠体1の向きを調整する。実施者Mは、両鉄棒装着部2の間の鉄棒Bに手を掛け、け上がりを行う。その際の体および鉄棒練習具の動きを図3に示す。まず、体全体を前方へ振り出し、体が前から後へ振れ戻り始める(a)において、脚をつま先から体挿入部へ挿入する。つま先は前方から体挿入部へ挿入されるが、最初に枠体1の向きを水平部材1aが鉄棒Bよりも高い位置になるようにしたので、つま先が枠体1に接触しない。そして、(b)~(d)のようにロール体4に脚を滑らせるようにして体を挿入していくと、枠体1は時計周りに回転し、実施者Mから見て足首から膝の裏、腿の裏へと移動していく。これにより、脚をつま先から大腿部にかけて鉄棒Bに沿わせるようにして腰を鉄棒Bに引き付ける動きが実現できる。この間、体は枠体1により支えられており、腕の力によって体を持ち上げる必要がないので、肘を伸ばしたまま自然に肩角を減少させることができる。そして、振り戻しの勢いにより体が持ち上がり、(e)、(f)のように支持体勢になることができる。け上がりに失敗する場合、(a)の段階で脚を鉄棒Bに引き付けられないことと、たとえ脚を引き付けることができたとしても、その後の(b)~(d)の段階で振れ戻りのタイミングに合わせて脚を鉄棒に沿うように移動させることができずに落下してしまうことが多いが、本発明によれば、鉄棒Bと枠体1とで形成される体挿入部という具体的な目標ができ、そこに脚を通すことさえできれば自動的に理想的なけ上がりの動きが発現するため、鉄棒に脚を近づける際に生じやすい「鉄棒に脚をぶつける」という恐怖感を軽減するとともに、理想的な脚の動きを体現することが可能になる。そして、本発明の鉄棒練習具は、単に腰が鉄棒から離れないように支持するだけではなく、脚を鉄棒に引き付け、つま先から大腿部にかけて鉄棒に沿わせ、肩角を減少させながら腰を鉄棒に引き付けて体を持ち上げるというけ上がりの一連の動きを補助するもので、け上がりの類縁運動感覚を効果的に身に付けることができる。
【0012】
次に、本発明の鉄棒練習具を用いることによる効果を確認する実験の結果について説明する。ここではA~Fの六名の被験者に練習を行わせた。被験者は全員大学生で、け上がりを成功したことのない者五名(A、B、D、E、F)と、け上がりの成功経験はあるが、時間が経ってできなくなった者一名(C)とした。実験は、最初に試技を行い、続いて鉄棒練習具を用いて五~十回の練習を行い、その後鉄棒練習具を外して試技を行うもので、これらを一日のうちに行い、最長で三日間繰り返した。表1に各被験者の練習の結果を示す。表中の丸で囲んだ数字は、その回数の試技でけ上がりを成功させたことを示す。
【表1】
JP2009240337A_000003t.gif

【0013】
このように、被験者六名のうち、四名がけ上がりを成功させた。図4に、この四名の鉄棒練習具による練習前後を比較した連続写真を示す。被験者A、Dについては、これまでにけ上がりの練習経験がなく、図4に示すように、練習前には脚や腰を鉄棒に引き付ける動作がまったくできていなかったにもかかわらず、一日目でけ上がりを成功させることができた。また、被験者Bについては、これまでに三年間け上がりを練習して成功できなかったが、鉄棒練習具を用いることで、三日目には成功させることができた。このように、本発明は、け上がり未経験の者および練習をしてもできなかった者の何れに対しても、短期間で有効な運動感覚を身に付けさせる効果に優れていることが示された。さらに、け上がりの成功経験があった被験者Cの成功から、本発明が粗形態にあるけ上がりの修正指導にも利用できることが示された。また、E、Fの二名についてはけ上がりを成功させることができなかったが、脚や腰を鉄棒に引き付ける動きに改善が見られた。
【0014】
本発明の鉄棒練習具は、上記の実施形態に限定されず、各部の形状は要件の範囲内で適宜変更できる。枠体は、コの字形のほか、C字形のように曲線状のものでもよいし、L字形で一端のみに鉄棒装着部を設け、片持ちで支持されるものでもよい。また、垂直部材を二重円筒構造として、実施者の体格に合わせて伸縮自在に構成してもよい。さらに、鉄棒装着部は、枠体を鉄棒に対して回動自在かつ自由な位置で静止可能に支持できるものであればどのような構造であってもよく、たとえば、図5に示すように、パイプを軸方向と水平に二分割し、一端を蝶番11で連結し、他端にリブ12を設けてネジ止めする構成としてもよいし、蝶番11部分にバネを設けて弾性力によりリブ12側が閉じる構成としてもよい。また、素材も使用時の荷重や衝撃に耐えられるものであればどのようなものでもよく、アクリルなどの樹脂や、アルミニウムなどの金属を用いてもよい。
【0015】
なお、本発明の鉄棒練習具は、上記のけ上がりの練習のほか、前方支持回転(いわゆる「前回り」)の練習に用いることもできる。前方支持回転は、鉄棒の上で支持になった状態から、前向きに一回転して再び支持になるものであるが、当初から体挿入部に体を挿入した状態で回転すれば、それに伴って鉄棒練習具も一回転し、常に腰が鉄棒から離れないように補助される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の鉄棒練習具の斜視図。
【図2】鉄棒練習具を鉄棒に取り付けた状態を示す側面図。
【図3】鉄棒練習具を用いたけ上がりの練習を示す連続図。
【図4】成功した各被験者の練習前後を比較した連続写真。
【図5】鉄棒練習具の第二実施形態の鉄棒装着部を示す部分斜視図。
【図6】け上がりの成功例を示す連続図。
【図7】け上がりの失敗例を示す連続図。
【符号の説明】
【0017】
1 枠体
2 鉄棒装着部
3 体挿入部
4 ロール体
B 鉄棒
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図4】
6