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明細書 :検体の毒物検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5447913号 (P5447913)
公開番号 特開2010-094048 (P2010-094048A)
登録日 平成26年1月10日(2014.1.10)
発行日 平成26年3月19日(2014.3.19)
公開日 平成22年4月30日(2010.4.30)
発明の名称または考案の名称 検体の毒物検出方法
国際特許分類 C12Q   1/02        (2006.01)
C12Q   1/28        (2006.01)
FI C12Q 1/02
C12Q 1/28
請求項の数または発明の数 3
全頁数 13
出願番号 特願2008-265662 (P2008-265662)
出願日 平成20年10月14日(2008.10.14)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 第31回日本神経科学大会(Neuroscience2008)(平成20年6月24日)に電気通信回線を通じて発表
特許法第30条第1項適用 平成20年7月9日-11日に東京国際フォーラムにおいて開催された第31回日本神経科学大会(Neuroscience2008)で文書をもって発表
審査請求日 平成23年10月5日(2011.10.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】篠原寛明
個別代理人の代理人 【識別番号】100114074、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 嘉一
審査官 【審査官】清水 晋治
参考文献・文献 特開2001-017196(JP,A)
特開2006-262813(JP,A)
特開2006-068009(JP,A)
Nature protocols. 2008(Epub 2008 Sep), Vol.3, No.10, p.1639-1644
Analytical chemistry. 2008 May, Vol.80, No.10, p.3762-3768
福田英臣、外2名 監訳,トキシコロジーII,同文書院,1988年12月 9日,第1版,p.791-793
今堀和友、1名 監修,生化学辞典(第3版),東京化学同人,1998年10月 8日,第3版,p.268(「貝毒」の項)
調査した分野 C12Q 1/00-1/24
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
検体を培養細胞と共存させた状態で、
電位依存性イオンチャンネル開放化合物を用いて当該培養細胞を刺激をすることで、当該培養細胞から放出される化合物を、
酸化酵素を用いた酸素発光法により検体に含まれている毒物の検出方法であって、
前記培養細胞はPC12細胞であり、前記PC12細胞から放出される化合物がドーパミンであり、
前記電位依存性イオンチャンネル開放化合物はベラトリジン又はシガトキシンであり、
検体から検出する毒物は麻痺性貝毒又はフグ毒であり、
前記毒物が含まれていない検体からの発光量に対して前記毒物が含まれている検体からの発光量の減少により前記毒物を検出することを特徴とする検体の毒物検出方法。
【請求項2】
検体を培養細胞と共存させた状態で、
電位依存性イオンチャンネル開放化合物を用いて当該培養細胞を刺激をすることで、当該培養細胞から放出される化合物を、
酸化酵素を用いた酸素発光法により検体に含まれている毒物の検出方法であって、
前記培養細胞はC6グリオーマ細胞であり、前記C6グリオーマ細胞から放出される化合物がグルタミン酸であり、
前記電位依存性イオンチャンネル開放化合物はベラトリジン又はシガトキシンであり、
検体から検出する毒物は麻痺性貝毒又はフグ毒であり、
前記毒物が含まれていない検体からの発光量に対して前記毒物が含まれている検体からの発光量の減少により前記毒物を検出することを特徴とする検体の毒物検出方法。
【請求項3】
検体を培養細胞と共存させた状態で、
検体が培養細胞を刺激することで当該培養細胞から放出される化合物を、
酸化酵素を用いた酸素発光法により検体に含まれる毒物の検出方法であって、
前記培養細胞はC6グリオーマ細胞であり、
C6グリオーマ細胞から放出される化合物がグルタミン酸であり、
前記検体に含まれる毒物は記憶喪失性貝毒又は、キノコ毒のイボテン酸であることを特徴とする検体の毒物検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、培養細胞を用いる毒物の検出方法に関し、さらに、詳しくは、培養細胞を用いるイオンチャンネル、イオンチャンネル型受容体に作用する貝毒、魚毒、キノコ毒などの毒物の検出方法に係る。
【背景技術】
【0002】
フグ毒に代表される魚介類の毒(マリントキシン)の起源は、海洋性細菌、渦鞭毛藻、珪藻などである。
これらの細菌や植物プランクトンが生産する毒成分の食物連鎖により魚や貝は毒化される。
有毒フグは、ビブリオ属など海洋性細菌が産生するテトロドトキシンが食物連鎖により毒化したものである。
また、ボウシュウボラのような食用巻貝類の毒成分がテトロドトキシンであることが知られている。
テトロドトキシンは、神経細胞や筋肉細胞の表面に存在する電位依存性イオンチャンネル、特にナトリウムチャンネルにおけるナトリウムイオンの流入を妨害し麻痺を引き起こす。
【0003】
麻酔性貝毒は、アレキサンドリウム(Alexandrium)属、ギムノデニュウム(Gymnodinium)属などの渦鞭毛藻類が産生するサキシトキシン、ゴニオトキシンなどが生物濃縮されカキ、ホタテ、アサリなどの貝が毒化したものである。
麻酔性貝毒もテトラドトキシンと同様にナトリウムチャンネルをブロックすることにより毒作用を発現する。
【0004】
記憶喪失性貝毒は、シュードニッチア(Pseudonitzschia)属等の珪藻類が産生するドウモイ酸によりムラサキイガイ、マテガイなどが毒化したものである。
ドウモイ酸、カイニン酸、L-グルタミン酸などは興奮性アミノ酸である。
これらは中枢神経にあるL-グルタミン酸受容体のうちイオンチャネル型受容体の一つであるカイニン酸型受容体のアゴニストである。
【0005】
その他、マリントキシンとして、ナトリウムチャネルを開き放しにするシガトキシンやパリトキシン、カルシウムチャネルを開き放しにするマイトトキシンなどが知られている。
【0006】
食品衛生法上のフグ毒、麻酔性貝毒の検出は、マウスの生死で判定するマウスアッセイ法である。
麻酔性貝毒については、例えば、これ以外に培養神経細胞を用いるバイオアッセイ(特許文献1)、麻酔性貝毒抗体を用いる酵素免疫測定(特許文献2)、液体クロマトグラフィ-蛍光検出法(特許文献3)が知られている。
【0007】
一方、PC12細胞やC6細胞などの培養細胞を電位依存性イオンチャンネルの開放化合物で刺激し、刺激により培養細胞から放出されるアミンやグルタミン酸を、チラミンオキシダーゼやグルタミン酸オキシダーゼなどの酸化酵素を用いて酸化し、生成する過酸化水素と反応するルミノールの発光を検出する方法が知られている(非特許文献1、非特許文献2)。

【特許文献1】特開2001-17196
【特許文献2】特開2003-12699
【特許文献3】特開平09-133669
【非特許文献1】Analytical Sciences, 23, 81-84(2007)
【非特許文献2】Anal. Chem., 80(10), 3762-3768(2008)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
マウスアッセイ法は公定法であるが、多量のマウスを必要であり手間と時間を要する。特許文献1の培養神経細胞を用いるバイオアッセイ法は、細胞を用いており確度が向上するものの生存細胞を染色するなど手間がかかる。
特許文献2の酵素免疫法は、抗体を用いるため、特定の毒素の検出・定量に優れ、時間の短縮を図ることができるが、抗体作製などに手間・時間を要し、酵素免疫法の手順などは煩雑である。
特許文献3液体クロマトグラフィ-蛍光検出法は、種々の毒素を判別・定量できるがやはり手間がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
非特許文献2に記載されたC6細胞刺激により放出されるグルタミン酸をグルタミン酸オキシダーゼで酸化させ、生成する過酸化水素と反応させたルミノールの発光を検出する方法で麻痺性貝毒の検出を試みた結果、麻痺性貝毒を高感度に検出できることを見出した。
さらに、研究を進め、NMDA型グルタミン酸受容体のアゴニストであるキノコ毒であるイボテン酸が検出できること、また、非特許文献1に記載された細胞刺激により放出されるドーパミンを、チラミンオキシダーゼで酸化させ、生成する過酸化水素と反応するルミノールの発光を検出する方法も高感度に麻痺性貝毒を検出できる方法であることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明に係る検体の毒物検出方法は、検体を培養細胞と共存させた状態で、電位依存性イオンチャンネル開放化合物を用いて当該培養細胞を刺激することで当該培養細胞から放出される化合物を、又は、検体が培養細胞を刺激することで当該培養細胞から放出される化合物を、酸化酵素を用いた酸素発光法により検出することを特徴とする。
【0011】
培養細胞としては、ヒトまたは動物の神経系細胞から樹立された細胞株であれば特に限定されないが、例えば、ラット褐色細胞腫由来のPC12細胞(CRL-1721)、ヒト神経芽腫由来のSH-SY5Y細胞(CRL-2266)、マウス神経芽腫とラットグリオーマのハイブリドーマ由来のNG108-15細胞(HB-12317)、マウス神経芽腫由来のN2A細胞(CCL-131)、ラット神経膠芽腫(ラットグリオーマ)由来のC6細胞(CCL-107、JCRB9096)などを挙げることができる。
好ましいものとして、PC12細胞およびC6細胞が挙げられる。
【0012】
電位依存性イオンチャンネルの開放化合物としては、ベラトリジン、シガトキシンなどの電位依存性ナトリウムチャンネルの活性化剤、マイトトキシンなどの電位依存性カルシウムチャンネルの活性化剤が挙げられる。
好ましいものとして、ベラトリジン、シガトキシンなどの電位依存性ナトリウムチャンネルの活性化剤が挙げられる。
【0013】
放出される化合物として、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンなどのカテコールアミン;グルタミン酸などのアミノ酸が挙げられる。
【0014】
酸化酵素としては、チラミンオキシダーゼ、モノアミンオキシダーゼ、チラミダーゼ、アドレナリンオキダーゼ、ジアミンオキダーゼ、ヒスタミナーゼなどのアミンオキシダーゼおよびグルタミン酸オキダーゼが挙げられる。
好ましいものとしてチラミンオキシダーゼおよびグルタミン酸オキシダーゼが挙げられる。
【0015】
本発明は、酸化酵素により生成した過酸化水素の量を化学発光法により検出することで毒物を検出及び定量することができる。
過酸化水素の検出に用いる化学発光法は、公知の方法をそのまま利用できるが、例えば、ルミノール、ルシゲニンまたはロフィンを発光基質として用いる化学発光法が挙げられる。
【0016】
発光基質としてルミノールを用いる化学発光法において、触媒として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、微生物(Arthromyces ramosus)由来ペルオキシダーゼ、カタラーゼなどのヘム酵素;ヘモグロビン、ミオグロビン、シトクロムcなどのヘムタンパク質;プロトヘム(ペルオキシダーゼやヘモグロビンの補欠分子族部分)のどの低分子のヘミン;鉄錯体、オスミウム錯体、ルテニウム錯体などの金属錯体から成る群から選ばれる少なくとも1種を用いてもよい。
【0017】
本発明の方法における酸化酵素の使用量は、分析に要求される感度等を考慮して適宜決定されるが、例えば、30 fmol(1nMで30μL)~30 pmol(1μMで30μL)のカテコールアミン(ドーパミン)当たり、1μg(0.1 mg/mLを10μL)~150μg(5 mg/mLを30 μL)の範囲とすることが適当である。
また、30 fmol(1nMで30μL)~30 pmol(1μMで30μL)のL-グルタミン酸の検出定量に当たっては、グルタミン酸オキシダーゼの使用量を1μg(0.2 mg/mLを5μL)~100μg(5 mg/mLを20 μL)の範囲とすることが適当である。
【0018】
化学発光法で使用する発光基質、触媒などの使用量は、使用される試薬の種類や分析に要求される感度等を考慮して適宜決定される。
【0019】
本発明の方法は、多数の試料を並行して分析する方法に特に有効であり、例えば、マルチマイクロウェルプレートの各マイクロウェルにおいて本発明の方法を実施することことで、多数の試料を並行して分析することができる。
具体的には、24ウェルプレートまたは96ウェルプレートの各マイクロウェルに細胞を一晩接着培養した後、培地を交換する形で、例えば、ルミノール溶液、ペルオキシダーゼ溶液、チラミンオキシダーゼ溶液および緩衝溶液を適当な濃度になるよう適量取り、発光検出型プレートリーダーにセットし、オートインジェクターを用いてウェルに毒物または毒物を含む溶液をインジェクションし、その際の発光を経時観測し、そのピーク強度を計測することで、毒物を検出、定量することができる。
【0020】
電位依存性イオンチャンネル開放化合物にて培養細胞を刺激する方法で検出される毒物は、カキ、ホタテ、アサリなどの麻痺性貝毒であるサキシトキシン、ゴニオトキシンなど;フグ毒のテトロドトキシンなどのナトリウムチャンネルの阻害作用を有する化合物などが挙げられる。
【0021】
検体が培養細胞を刺激することで検出される毒物は、例えば、NMDA型グルタミン酸受容体アゴニストであるキノコ毒のイボテン酸など;カイニン酸型受容体のアゴニストである麻痺性貝毒のドウモイ酸など;シガトキシンやパリトキシンなどのナトリウムチャンネルを活性化する化合物;マイトトキシンなどのカルシウムチャネルを活性化する化合物が挙げられる。
【発明の効果】
【0022】
従来の方法に比して、マウスを用いないこと、高価な機器を用いないこと、手間がかからないこと、煩雑さがないことなどから、本発明方法は簡便で優れた方法である。
また、PC12細胞から放出されるドーパミンを検出するアッセイ系は、ナトリウムチャネルを遮断する麻痺性貝毒のサキシトキシンやゴニオトキシンなどの検出だけでなく、同様の作用を示すフグ毒のテトロドトキシン、ナトリウムチャネルを開き放しにするシガトキシンやパリトキシン、あるいはカルシウムチャネルを開き放しにするマイトトキシンなどの海産物毒素の検出にも有効である。
C6グリオーマから放出されるグルタミン酸を検出するアッセイ系は、上記のイオンチャネルに作用する海産物毒素の検出の他、カイニン酸型グルタミン酸受容体のアゴニストである記憶喪失性貝毒であるドウモイ酸やNMDA型グルタミン酸受容体のアゴニストであるキノコ毒であるイボテン酸の検出にも有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る電位依存性イオンチャンネル開放化合物にて培養細胞を刺激する態様として、PC12細胞をベラトリジンで刺激し、PC12細胞から放出されるドーパミンを、チラミンオキダーゼとルミノール発光を組み合わせた酵素発光法で測定する、麻痺性貝毒の検出方法が挙げられる。
【0024】
また、C6細胞をベラトリジンで刺激し、C6細胞から放出されるグルタミン酸をグルタミン酸オキダーゼとルミノール発光を組み合わせた酵素発光法で測定する、麻痺性貝毒の検出方法が挙げられる。
【0025】
本発明に係る検体が培養細胞を刺激する態様として、C6細胞を用い、検体の刺激によりC6細胞から放出されるグルタミン酸をグルタミン酸オキダーゼとルミノール発光を組み合わせた酵素発光法で測定する、記憶喪失性貝毒およびキノコ毒の検出方法が挙げられる。
【0026】
また、C6細胞を用い、検体の刺激によりC6細胞から放出されるグルタミン酸をグルタミン酸オキダーゼとルミノール発光を組み合わせた酵素発光法で測定する、シガトキシンやパリトキシンなどのナトリウムチャンネルを活性化する化合物やマイトトキシンなどのカルシウムチャネルを活性化する化合物の検出方法が挙げられる。
さらに別の好ましい態様として、PC12細胞を用い、検体の刺激によりPC12細胞から放出されるドーパミンをチラミンオキダーゼとルミノール発光を組み合わせた酵素発光法で測定する、シガトキシンやパリトキシンなどのナトリウムチャンネルを活性化する化合物やマイトトキシンなどのカルシウムチャネルを活性化する化合物の検出方法が挙げられる。
次に、本発明について、以下の実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0027】
[実施例1]
・PC12細胞を用いるゴニオトキシンの検出。
<培地の調製>
オートクレーブ滅菌の済んだ超純水にダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)2.0gを十分に溶かした後、炭酸水素ナトリウム0.74gを溶かした。
次にクリーンベンチ内に移し、恒温漕で37℃にしたウマ血清(GIBCO社製)20mL(10%-v/v)、ウシ胎児血清(SIGMA社製)10mL(5%-v/v)、ペニシリン-ストレプトマイシン(GIBCOBAL社製)2mL(1%-v/v)を加える。
ボトルトップフィルターで濾過滅菌を行い、乾熱滅菌を行った200mLメディウムビンに溶液を移した。
作製した培地は35mmディッシュに2 mLほど移し、1日培養してコンタミネーションしていないことを確認してから使用した。
【0028】
<細胞培養>
調製したDMEM培地を用いて、25cmの細胞培養用フラスコで培養した。
前培養は、37℃、5%炭酸ガスインキュベータでコンフルエントになるまで置いた。 この際、3日ごとに培地交換を行った。
【0029】
<Locke’s溶液の調製>
超純水を用いて、145mM塩化ナトリウム、5.6mM塩化カリウム、2.3mM塩化カルシウム、3.6mM炭酸水素ナトリウム、5.6mMグルコース、5.0mM HEPES(ナカライテスク社製)を溶かし、0.1M 水酸化ナトリウムを用いてpH7.4にし、メスアップした。
【0030】
<酵素発光法による検出>
PC12細胞を1×10cells/mLになるように96ウェルプレートに播き、二晩接着させた。
2日後、培地を全て取り除きLocke’s溶液で2回洗浄し、各ウェルにLocke’s (pH7.4) 130μL、0.05mM ルミノール(和光純薬製)20μL、1mg/mL チラミンオキシダーゼ(旭化成社製)20μL、0.5mg/mL ペルオキシダーゼ(東洋紡社製)20μL、各濃度のゴニオトキシン1/4(ゴニオトキシン1および4の混合物)を添加し10分間インキュベーション後、100μM(最終濃度)のベラトリジンを測定の5秒後に10μLインジェクションした。
【0031】
<結果>
PC12細胞を播いた96ウェルプレートにGTX1/4を添加し10分間インキュベーション後、発光測定を開始した。
測定開始5秒後に100μMのベラトリジンをインジェクトすると数秒以内に発光のピークが見られたが、図1及び図2に示すように10nMのGTX1/4を添加したものはGTX1/4を添加していないコントロールに比べ、発光の減少が見られた。
また、100nMのGTX1/4を添加したものは完全に発光が見られなくなり、PC12細胞のベラトリジン刺激によるドーパミン放出を完全に阻害した。
【0032】
[実施例2]
・C6細胞を用いるイボテン酸およびドウモイ酸の検出。
<細胞培養>
ラットC6グリオーマ細胞(JCRB9096) はヒューマンサイエンス研究資源バンク(大阪)から入手した。
細胞は、T-25 フラスコ中で15% (v/v) ウマ血清、 2.5% (v/v) ウシ胎児血清、および1%ペニシリン-ストレプトマイシンを含む Ham’s F10 培地(ギブコ社製)を用い、37℃、5%炭酸ガスのインキュベーターで培養した。
継代操作は4日ごとに行った。
細胞を用いた刺激応答計測実験を行う場合は、24時間前に細胞を24ウェルプレートの各ウェルに1×10cells/mLの濃度で播いて一晩接着させた。
【0033】
<薬剤・毒素類の調製>
薬剤・毒素類は要時調製し、希釈にはハンクス溶液(pH 7.4)を用いた。
ベラトリジンはジメチルスルホキシド(DMSO)で溶解後、最終的にはDMSOが1%以下になるよう、ハンクス溶液で希釈して用いた。
その他の試薬もすべてハンクス溶液で調製した。
【0034】
<グルタミン酸オキシダーゼ>
グルタミン酸オキシダーゼはヤマサ製のStreptomyces sp. 由来のものを用いた。
この酵素の基質特異性(pH 7.4、37℃における )は、L-グルタミン酸に対する活性を100%として、L-アスパラギン酸は0.6%、他のアミノ酸に対しては0%であった。
【0035】
<酵素発光法を用いたC6細胞からのグルタミン酸放出のリアルタイム測定>
ラットグリオーマC6細胞を培養したウェル中の培地を取り除き、2回ハンクス溶液で洗浄後、ハンクス溶液(pH 7.4) 205 μL、ペルオキシダーゼ溶液(64U/mL≒0.25mg/mL)30μL、ルミノール溶液(0.05mM)30μL、およびL-グルタミン酸オキシダーゼ溶液(17U/mL≒2mg/mL)5μLを各ウェルに入れ、発光検出器を備えたプレートリーダー(FLUOstar OPTIMA, BMG LABTECH, Germany)にセットし、10分間インキュベートした。 細胞の刺激は、その後、適当な濃度のイボテン酸溶液またはドウモイ酸を30 μL、オートインジェクターで各ウェルにインジェクトすることにより行い、ウェルごとにグルタミン酸の放出を示す発光強度の時間変化を30秒間モニタリングした。
計測後その発光ピーク強度を読み取り(多くの場合、数秒以内にピークが観測された)、刺激薬物あるいは毒素の濃度とプロットして、その濃度依存性をみた(図3、図4)。
【0036】
<結果>
記憶喪失性貝毒であるドウモイ酸をC6細胞に投与した際のグルタミン酸放出を酵素発光法で観測した。
図3(b)に示すように1~10nMの濃度範囲でドウモイ酸が検出可能であった。
キノコ毒であるイボテン酸をC6細胞に投与した際のグルタミン酸放出を酵素発光法で観測した。
図4(b)に示すように1~100nMの濃度範囲でイボテン酸が検出可能であった(図4)。
【0037】
[実施例3]
・C6細胞を用いるゴニオトキシンの検出
C6細胞を接着培養した各ウェルに、培地を取り除いて洗浄した後、ハンクス溶液(pH 7.4) 175μL、ペルオキシダーゼ溶液(64U/mL≒0.25mg/mL)30μL、ルミノール溶液(0.05mM)30μL、L-グルタミン酸オキシダーゼ(17U/mL≒2mg/mL)5μL、そして適当な濃度のゴニオトキシン2/3(ゴニオトキシン2および3の混合物)を溶かしたハンクス溶液30μLを入れ、発光検出器を備えたプレートリーダーにセットする。
そして10分間、このゴニオトキシン入り測定液中でインキュベートした後、0.5μMベラトリジン30μLのインジェクションにより刺激を行った際の発光強度変化(減少する)を測定した。(図5)
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明方法により、麻痺や記憶障害を引き起こす貝毒、魚毒、キノコ毒を簡便に高感度で検出することができる。
従って、本発明方法は、マリントキシンに限らず、天然物の神経毒の検出方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ゴニオトキシン1/4を表示濃度で投与して10分間インキュベーションしたPC12細胞をベラトリジン刺激した際のドーパミン放出の酵素発光観測結果を示す。
【図2】ベラトリジン刺激により引き起こされるPC12細胞からのドーパミン放出に及ぼすゴニオトキシン1/4の阻害効果結果を示す。
【図3】(a)ドウモイ酸投与によるC6細胞からのグルタミン酸放出の発光観測結果を示す。(b)グルタミン酸放出に対応する発光強度のドウモイ酸濃度依存性を示す。
【図4】(a)イボテン酸投与によるC6細胞からのグルタミン酸放出の発光観測結果を示す。(b)グルタミン酸放出に対応する発光強度のイボテン酸濃度依存性を示す。
【図5】C6細胞をベラトリジン刺激した際のL-グルタミン酸の放出に及ぼすゴニオトキシン2/3の阻害効果結果を示す。(a)種々の濃度(1~10μM)のゴニオトキシン2/3の存在、非存在下におけるC6細胞からのL-グルタミン酸放出の酵素発光モニタリング結果を示す。(b)0.5μMベラトリジンで刺激した際のL-グルタミン酸放出のゴニオトキシン2/3による阻害の濃度依存性を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4