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明細書 :薄膜積層体及びそれを用いた有機トランジスタ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5305461号 (P5305461)
登録日 平成25年7月5日(2013.7.5)
発行日 平成25年10月2日(2013.10.2)
発明の名称または考案の名称 薄膜積層体及びそれを用いた有機トランジスタ
国際特許分類 H01L  29/786       (2006.01)
B32B   7/02        (2006.01)
H01L  51/05        (2006.01)
H01L  51/30        (2006.01)
FI H01L 29/78 618E
B32B 7/02 104
H01L 29/78 618B
H01L 29/28 100A
H01L 29/28 220A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2009-506238 (P2009-506238)
出願日 平成20年2月14日(2008.2.14)
国際出願番号 PCT/JP2008/052394
国際公開番号 WO2008/117579
国際公開日 平成20年10月2日(2008.10.2)
優先権出願番号 2007080314
優先日 平成19年3月26日(2007.3.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年2月4日(2011.2.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】岡田 裕之
【氏名】中 茂樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100114074、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 嘉一
審査官 【審査官】竹口 泰裕
参考文献・文献 特開2004-006476(JP,A)
特開2005-085945(JP,A)
特開平02-281047(JP,A)
千々石裕樹、中茂樹、岡田裕之,“ペンタセン系有機半導体超格子-有記半導体/絶縁膜構造-”,第54回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,(社)応用物理学会,2007年 3月27日,No.3,p.1413
千々石裕樹、中茂樹、岡田裕之,“有機ヘテロ構造を用いたペンタセン系有機半導体超格子トランジスタ”,第55回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,(社)応用物理学会,2008年 3月27日,No.3,p.1387
調査した分野 H01L 21/336、29/786
特許請求の範囲 【請求項1】
半導体部は第1の有機薄膜と第2の有機薄膜とを交互に積層し、第1の有機薄膜が少なくとも2層以上有し、
第1の有機薄膜はペンタセンの厚み100Å以下の薄膜であり、第2の有機薄膜は非晶質性の有機薄膜であることを特徴とする有機トランジスタ。
【請求項2】
ペンタセンの薄膜は2分子層の薄膜であり、非晶質性の有機薄膜はテトラアリールジアミン類の薄膜であることを特徴とする請求項1記載の有機トランジスタ。
【請求項3】
テトラアリールジアミン類の薄膜はα-NPDの薄膜であることを特徴とする請求項2記載の有機トランジスタ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は有機エレクトロルミネンス(EL)素子、有機光電変換素子、有機トランジスタ等の有機エレクトロニクスデバイス分野に応用が可能な薄膜積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
大面積化が可能で、超薄型及び軽量化を図ることができ、可撓性基材に配置することでフレキシブル性を有する等の特徴を有する有機エレクトロニクス技術が注目されている。
そのスイッチングデバイスとしては有機トランジスタが挙げられ、現在低分子有機材料系ではペンタセンを中心に検討が進められている。
低分子有機材料を用いたトランジスタ系では、非晶質状態で移動度1cm/Vs程度の高移動度を示す系の報告が無く、また単結晶形成も出来ず、専ら多結晶状態の制御により高移動度化が成されている。
過去、高移動度化の目覚ましい進展としては、1997年以降のPennsylvania大学によるペンタセントランジスタの検討が挙げられる。
(非特許文献1:Y.-Y.Lin,D.J.Gundlach,S.F.Nelson and T.N.Jackson:IEEE Trans.Electron Devices,44(8),1325(1997).)
特性例として 移動度1.5cm/Vs、オンオフ比10、サブスレッショルドスロープ0.5 V/decadeが報告されている。
ペンタセン(pentacene)は、π共役系分子構造を有するポリアセン化合物であり、π電子による移動度が高く、半導体特性を示す。
しかし、ペンタセンは、その平面分子構造から結晶化が難しく、数百Åの膜形成では、一般に数μmに渡る樹枝形状のペンタセンが成長し、細かに分子がステップした構造になり、安定した超格子構造膜を得ることが難しかった。
従って、ペンタセン有機半導体等で厚膜形成を行おうとすると、初期の二次元的成長から三次元的成長に切り替わり、上部では連続した半導体層形成が難しかった。
【0003】

【非特許文献1】Y.-Y.Lin,D.J.Gundlach,S.F.Nelson and T.N.Jackson:IEEE Trans.Electron Devices,44(8),1325(1997).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、分子層厚さレベルで制御された第1の有機層と、第1の有機層とは異なる第2の有機層又は無機系の極薄絶縁層との積層構造を形成することで、従来の半導体層成膜では樹枝状構造等になってしまい均一性が確保できない膜構造を、平坦膜とすることが可能となる薄膜積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る薄膜積層体は、半導体特性を有する第1の有機薄膜と、第2の有機薄膜又は無機系の絶縁性薄膜とを交互に複層積層してあることを特徴とする。
ここで第1の有機薄膜と第2の有機薄膜とは異なる有機物質からなることを意味する。
本発明において、第1の有機薄膜は、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセンなどのアセン系芳香族である。
アセン系芳香族としてペンタセンであることが好ましい。
第1の有機薄膜は、分子膜が複層していることが好ましく、例えば、ペンタセンでは2分子層であることが好ましい。
ペンタセンのみで数百Åの厚膜を形成するとペンタセン分子が樹枝状に3次元構造に成長してしまうが、本発明はペンタセンの厚みを約100Å以下に抑えることで3次元化を抑えたものである。
ペンタセン等のアセン系芳香族からなる第1の有機薄膜の3次元化を抑える手段としては、第1の有機薄膜とは異なる有機物質からなる第2の有機薄膜をこの第1の有機薄膜の間に積層する方法と、第1の有機薄膜と無機系の絶縁性薄膜とを積層する方法がある。
これにより均一性の高い、超格子構造が得られる。
従って、理想的には、ペンタセンを2分子膜にして、無機系の絶縁性薄膜と積層にするとよい。
無機系の絶縁性薄膜としては、金属酸化物薄膜が好ましい。
金属酸化物としては、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、Ta等の酸化物が挙げられるが、好ましくは、Al及びSiOxである。
ここで、SiOxと表現したのは、SiOに限定するものではなく、酸化珪素系の薄膜を意味する。
【0006】
均一性の高い超格子構造を得るには第1の有機薄膜と無機系の絶縁性薄膜とを積層させてもよいが、本発明者らは、ペンタセン/無機絶縁薄膜の積層体を有機トランジスタの半導体部に用いて試作した結果、無機絶縁薄膜では抵抗値が高いことが明らかになった。
そこで、第1の有機薄膜と、この第1の有機薄膜とは異なる第2の半導体性有機薄膜とを積層する積層体を有機トランジスタの半導体部に用いて試作評価した結果、トランジスタ特性が向上することが明らかになった。
第2の有機薄膜は第1の有機薄膜の3次元化を抑え、均一性の高い超格子構造を得るのが目的である。
発明者らは、表面のラフネス0.26nmのポリイミド絶縁膜の上に、2分子層のペンタセンを蒸着した結果、その表面ラフネスは0.27nmと非常に平坦であった。
また、3分子層のペンタセンにおいても2分子層レベルのラフネスであった。
次にペンタセンの2分子層及び3分子層の厚みを測定した結果、ペンタセンの1分子層当たりの厚みは1.54nmであることも明らかになった。
有機トランジスタの半導体部に適用する場合に第1の有機薄膜の3次元化を抑え、平坦性を確保するためには平坦な第2の有機薄膜を用いることが重要である。
また、格子構造の半導体特性を考慮すると、第2の有機薄膜は第1の有機薄膜の分子層の厚み以下の平坦性があればよい。
例えばペンタセン1分子層の厚みは1.54nmであるので第1の有機薄膜にペンタセンを用いた場合には第2の有機薄膜の平坦性は1.54nm以下が好ましい。
第2の有機薄膜は非晶質性で半導体であるのが好ましく、第2の有機薄膜として例えば、正孔輸送材料として知られている4,4’,4”-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(m-MTDATA)、N,N’-ジフェニル-N,N”-ビス(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD)、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(NPD)、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン(BTAPCH)等のテトラアリールジアミンが例として挙げられる。
その他にも日本国P2000-150168Aに記載の耐熱性低抵抗輸送材料のテトラアリールジアミン類を取り込むことができる。
好ましいものとしては、α-NPD:4,4’-bis[phenyl(1-naphtyl)amino]-1,1’biphenylである。
従って、半導体部として第1の有機薄膜と第2の有機薄膜とを交互に積層した薄膜積層体を用いるとトランジスタ特性に優れた有機トランジスタが得られる。
ここで第1の有機薄膜はペンタセンの薄膜、理想的には2分子膜のペンタセン薄膜がよく、第2の有機薄膜はα-NPD膜がよい。
α-NPDの分子構造を図6に示す。
α-NPDは、蒸着によりアモルファス特性を示すことが知られている。
【0007】
本発明に係る薄膜積層体の製造方法としては、ポリイミド等の絶縁性基材の上にアセン系芳香族薄膜と無機系の絶縁性薄膜とを、その順で交互に蒸着し、最表面層にアセン系芳香族薄膜を蒸着することを特徴とする。
本発明を可撓性の有するディスプレイのデバイスに応用する場合には、プラスチック等の基材に薄膜積層体を形成することになるが、必ずしも基材は可撓性が必要で無く、ガラス基板等の各種基板に形成することができる。
また、第1の有機薄膜と第2の有機薄膜とを積層するには、真空蒸着装置を用いて抵抗加熱法等で交互に薄膜を蒸着することで得られる。
【発明の効果】
【0008】
従来は1種類の有機材料のみで有機半導体を形成していたので樹枝状構造になり超格子膜構造の均一性に劣っていたが、本発明においては、超格子となる第1の有機薄膜と非晶質からなる第2の有機薄膜又は無機系の絶縁性薄膜とを積層したので第1の有機薄膜の二次元的成長を確保し、優れた有機半導体超格子構造になる。
また、ペンタセン等の有機層を2分子膜等の分子層厚レベルに制御し、無機系の絶縁性薄膜の材質をアルミナ薄膜等に選定すれば、薄膜積層体表面の表面ラフネスを小さく制御することも可能になる。
本発明においては、有機トランジスタの半導体部にペンタセン等のアセン芳香族の薄膜からなる第1の有機薄膜と、非晶質の第2の有機薄膜との薄膜積層体を用いたことにより優れたトランジスタ特性を有する有機トランジスタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ペンタセン膜とAl膜(5Å)の積層例を示す。
【図2】ペンタセン膜とAl膜(10Å)の積層例を示す。
【図3】ペンタセン膜とSiOx膜の積層例を示す。
【図4】ペンタセン膜100ÅとAl膜(10Å)の積層例を示す。
【図5】ペンタセン単独膜400ÅのAFM像を示す。
【図6】α-NPDの分子構造を示す。
【図7】試作評価した有機トランジスタの構造例を示す。
【図8】デバイス1のトランジスタ特性を示す。
【図9】デバイス2のトランジスタ特性を示す。
【図10】デバイス3のトランジスタ特性を示す。
【図11】デバイス4のトランジスタ特性を示す。
【図12】デバイス5のトランジスタ特性を示す。
【図13】デバイス1~5のトランジスタ特性の比較表である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る薄膜積層体の製造例を以下に説明する。
後述する実施例1の評価サンプルを例に製造例を説明すると、洗浄したガラス基板上に、ポリイミド絶縁膜(京セラケミカル、CT4112)をスピンコート法で塗布後、大気中で190℃、1時間のベークを行った。
その後、真空蒸着装置へサンプルを導入し、真空度3×10-6Torr程度に排気後、基板温度を70℃とし、抵抗加熱法でペンタセン(蒸着レート0.3Å/s)、電子ビーム蒸着法でAl(蒸着レート0.1Å/s)を、[Pentacene(2分子層相当)/Al(5Å)]×13 層/Pentacene(2分子層相当)構造を順次積層した。
上記実施例で積層回数を、ペンタセン層と無機層を一対にして13回としたのは所定のトータル膜厚を確保するのが目的であり、積層回数は用途に応じて設計される。
【実施例1】
【0011】
上記製造方法に従って、2分子膜のペンタセンと、膜厚約5ÅのAl薄膜とを交互に13回蒸着し、その上に2分子膜のペンタセンを積層した場合のAFM像(原子間力顕微鏡観察像)を図1に示す。
表面ラフネス(MR)は2nmと非常に小さく平坦性に優れた薄膜積層体が得られた。
【実施例2】
【0012】
2分子膜のペンタセン膜と、膜厚約10ÅのAl膜を交互に13回蒸着し、その上に2分子膜のペンタセン膜を蒸着したサンプルのAFM像を図2に示す。
Al膜が10Åの場合には表面ラフネスが19.6nmとなり、Al膜の膜厚の影響が認められた。
【実施例3】
【0013】
Al薄膜の替わりに膜厚約5ÅのSiOx膜を積層した場合のAFM像を図3に示す。
この場合に表面ラフネスは15.8nmとなり、無機系の材質の影響も認められた。
【実施例4】
【0014】
ペンタセン2分子膜の替わりに膜厚約100ÅとAl薄膜10Åを3回積層した上にペンタセン膜100Å形成した例を図4に示す。
この場合にラフネスは3.9nmであった。
【0015】
(比較例1)
ペンタセンのみを400Å蒸着したサンプルのAFM像を図5に示す。
表面ラフネス6.7nmであるとともに樹枝状構造になっていた。
【0016】
実施例1と比較例1とを比較すると、ペンタセンのみで400Åの厚膜にすると樹枝状のうねりのある膜構造になるが、Al(5Å)層との積層構造にするとペンタセン薄膜の均一な超格子構造のみならず、積層体の表面ラフネスが2nmと非常に平坦になる。
本発明を有機トランジスタの有機半導体基材に応用することを考慮すると、表面ラフネスの値が5nm以下であることは注目に値する。
また、ペンタセンの薄膜は、実施例4に示すように、100Å以下にするだけでも、3次元構造化を抑えることができ、50Å以下にする等、用途に応じて検討する余地がある。
無機系の絶縁性薄膜の厚みによっても超格子構造、表面ラフネスの値に影響を与えるので、平坦性が要求される場合には、一層当たりの膜厚を5Å以下にすることも考慮する価値がある。
本発明に係る薄膜積層体は、非晶質系構造とされる有機材料系の半導体膜でありながら、超格子構造の均一性に優れているので、抵抗低減や活性化エネルギーの変化、共鳴トンネリング、トランジスタの移動度増大、あるいは、フォトルミネセンス強度増大等の様々な効果が期待できる。
【実施例5】
【0017】
本発明に係る薄膜積層体を用いて有機トランジスタを試作評価した。
有機トランジスタの構造例としては図7に示したトップコンタクト構造例を用いた。
Taゲート電極/ポリイミド絶縁膜(1,600Å、京セラケミカル、CT4112)上に、[Pentacene(2分子層(2ML))/α-NPD(31Å)]×n(n =0~4)/Pentacene(2ML)構造を作製し、最後にソース/ドレインとしてAu電極を持つトップコンタクトOSLTFTを試作した。
チャネル長は0.5~2mm、チャネル幅は2mmである。
ペンタセン40nm厚のデバイスを比較例とし、デバイス1は、2分子層(2ML)のPentacene構造、デバイス2はPentacene(2ML)/α-NPD(31Å)/Pentacene(2ML)構造、デバイス3はPentacene(2ML)/α-NPD(31Å)/Pentacene(2ML)/α-NPD(31Å)/Pentacene(2ML)構造、デバイス4はPentacene(2ML)/α-NPD(31Å)/Pentacene(2ML)/α-NPD(31Å)/Pentacene(2ML)/α-NPD(31Å)構造、デバイス5はPentacene(2ML)/α-NPD(31Å)/Pentacene(2ML)/α-NPD(31Å)/Pentacene(2ML)/α-NPD(31Å)/Pentacene(2ML)構造の有機トランジスタを試作評価した。
図8~12には得られたトランジスタ特性を示す。
図8が、比較例となるペンタセン40nm厚のトランジスタ特性、デバイス1はトランジスタが動作せず図9はデバイス2、図10はデバイス3、図11はデバイス4、図12はデバイス5のトランジスタ特性となった。
図13の表1には、トランジスタ特性から求まる特性値をまとめた。
デバイス1ではトランジスタは動作せず、デバイス2、3で各々、移動度1.35、1.25cm/Vs、しきい電圧-14.5、-10.0Vオンオフ比4.6×10、10、オン抵抗1.35、0.56MΩが得られた。
以上を総合して、デバイス2、3で、通常ペンタセントランジスタ(比較例)を超える高い移動度が得られ、そのなかでもデバイス3で最も高いオンオフ比が得られた。
更には、積層数を変えることで有機トランジスタのしきい値が変化した。
これにより、しきい値制御ができた。
【産業上の利用分野】
【0018】
本発明に係る薄膜積層体はフレキシブル有機表示パネル、RFID駆動ドライバ、光センサ及び光スキャナ駆動、複合集積回路等に利用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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