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明細書 :シガトキシン類CTX1Bおよび54-デオキシ-CTX1Bを認識するモノクローナル抗体およびそれを用いるシガトキシン類検出キット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5757497号 (P5757497)
公開番号 特開2012-077060 (P2012-077060A)
登録日 平成27年6月12日(2015.6.12)
発行日 平成27年7月29日(2015.7.29)
公開日 平成24年4月19日(2012.4.19)
発明の名称または考案の名称 シガトキシン類CTX1Bおよび54-デオキシ-CTX1Bを認識するモノクローナル抗体およびそれを用いるシガトキシン類検出キット
国際特許分類 C07K  16/18        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
C07D 493/22        (2006.01)
C07K  14/435       (2006.01)
C07K  14/765       (2006.01)
C07K  14/77        (2006.01)
C12N  15/02        (2006.01)
FI C07K 16/18
C12N 5/00 102
G01N 33/53 S
C07D 493/22
C07K 14/435
C07K 14/765
C07K 14/77
C12N 15/00 C
請求項の数または発明の数 9
微生物の受託番号 IPOD FERM BP-11401
IPOD FERM BP-11400
IPOD FERM BP-8293
全頁数 16
出願番号 特願2010-226734 (P2010-226734)
出願日 平成22年10月6日(2010.10.6)
審査請求日 平成25年8月9日(2013.8.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
発明者または考案者 【氏名】藤井 郁雄
【氏名】円谷 健
【氏名】平間 正博
【氏名】山下 修治
個別代理人の代理人 【識別番号】100065248、【弁理士】、【氏名又は名称】野河 信太郎
【識別番号】100145229、【弁理士】、【氏名又は名称】秋山 雅則
【識別番号】100159385、【弁理士】、【氏名又は名称】甲斐 伸二
【識別番号】100163407、【弁理士】、【氏名又は名称】金子 裕輔
【識別番号】100166936、【弁理士】、【氏名又は名称】稲本 潔
審査官 【審査官】森井 文緒
参考文献・文献 特開2006-193485(JP,A)
特開2003-267978(JP,A)
山下修治 他,シガトキシンCTX1BのABCDE環部新合成法,日本化学会第86春季年会(2006)講演予稿集II,2006年 3月13日,p.1365, 1 L4-17
山下修治 他,シガトキシンCTX1B左側フラグメントの合成研究,日本化学会第87春季年会(2007)講演予稿集II,2007年 3月12日,p.1208, 2 H3-39
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
PubMed
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
次の式(I):
【化1】
JP0005757497B2_000009t.gif
(式中、nは整数を表す)
で表されるタンパク質コンジュゲートでマウスを免疫して得られる、A環部にジヒドロキシブテニル基を有するシガトキシン類を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生する、受託番号FERM BP-11401として2010年9月15日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(郵便番号305-8566、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されたハイブリドーマ3G8。
【請求項2】
A環部にジヒドロキシブテニル基を有するシガトキシン類が、シガトキシンCTX1Bまたは54-デオキシ-CTX1Bである請求項1に記載のハイブリドーマ3G8。
【請求項3】
請求項1または2に記載のハイブリドーマ3G8により産生される、A環部にジヒドロキシブテニル基を有するシガトキシン類を特異的に認識するモノクローナル抗体。
【請求項4】
請求項3に記載のモノクローナル抗体と、受託番号FERM BP-11400として2004年12月22日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(郵便番号305-8566、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されたハイブリドーマ8H4または受託番号FERM BP-8293として平成14年(2002年)3月5日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(郵便番号305-8566、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されたハイブリドーマ3D11により産生されるモノクローナル抗体とを含む、シガトキシン類検出キット。
【請求項5】
請求項3に記載のモノクローナル抗体、または受託番号FERM BP-11400として2004年12月22日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(郵便番号305-8566、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されたハイブリドーマ8H4により産生されるモノクローナル抗体もしくは受託番号FERM BP-8293として平成14年(2002年)3月5日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(郵便番号305-8566、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されたハイブリドーマ3D11により産生されるモノクローナル抗体が標識されている請求項4に記載のシガトキシン類検出キット。
【請求項6】
標識が酵素標識である請求項5に記載のシガトキシン類検出キット。
【請求項7】
次の式(II):
【化2】
JP0005757497B2_000010t.gif
で表される化合物。
【請求項8】
請求項7に記載の化合物がキャリアータンパク質と結合してなる、次の式(I)
【化3】
JP0005757497B2_000011t.gif
(式中、nは整数を表す)
で表されるタンパク質コンジュゲート。
【請求項9】
キャリアータンパク質が、ウシ血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニンまたは卵アルブミンである請求項8に記載のタンパク質コンジュゲート。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シガトキシン類、特にA環部にジヒドロキシブテニル基を有するシガトキシンCTX1Bまたは54-デオキシ-CTX1Bを認識することができるモノクローナル抗体、該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、および該モノクローナル抗体を用いるシガトキシン類検出キットに関する。
本発明は、また上記のモノクローナル抗体を得るために用いられる化合物、該化合物がキャリアータンパク質に結合してなるコンジュゲート化合物にも関する。
【背景技術】
【0002】
食中毒シガテラは、ポリネシア、ハワイ、カリブ海、沖縄などの広いサンゴ礁海域で頻発し、年間5万人以上の中毒患者が発生している。シガテラ毒素は植物プランクトンが生産し、食物連鎖を介して魚介類に含まれることとなる。したがって、一旦発生すると多数の食用魚が広範に毒化して深刻な社会問題となることから、シガテラ毒素を迅速に検出することが食中毒シガテラの予防にとって重要となる。
【0003】
食中毒シガテラの主要原因毒素であるシガトキシン類(ciguatoxin、CTX)の免疫学的手法を用いた検出に関する研究は、ラジオイムノアッセイの発展に伴い、1977年頃からはじまった。免疫学的手法による研究においては、シガトキシン類を認識する抗体が必要であるが、シガトキシン類は天然からごく微量しか採集されず(例えば850匹、4トンのウツボから得られる毒本体のシガトキシンはわずか0.35 mg)、培養による生産も困難なことから、抗体を製造することも困難である。
【0004】
ハワイ大学ホカマらは、シガテラ毒の本体であるシガトキシン(1μg)をヒト血清アルブミンにカルボジイミド法で連結したコンジュゲートを作製し、これを抗原としてマウスに免疫して、モノクローナル抗体を作製したと報告している(非特許文献1参照)。
しかしながら、この抗体はシガトキシンに結合するが、シガトキシン類と類似の構造を有する海産ポリエーテル系毒素であるオカダ酸とも強い交差結合活性を示し、その親和性の差は非常に小さい(非特許文献2参照)。
また、この抗体は、その他の海産ポリエーテル系毒素であるブレべトキシン、マイトトキシン、パリトキシンなどと交差反応を示すことが分かっているが、詳しいデータは発表されていない(非特許文献3参照)。
このホカマらの抗体を用いて、シガトキシン類に汚染された魚類を免疫的手法により検出するための試薬や、キット(Cigua Check (商標))などが開発されている。
【0005】
ところで、シガトキシン類は、単一の化合物ではなく、多種の毒素の混合物であり、次の一般式(III):
【化1】
JP0005757497B2_000002t.gif
で表される4種(化合物1~4)が主に知られている。
【0006】
本発明者らは、以前にシガトキシンのうちCTX1B左側のABC環部を化学合成し、これを合成ハプテンとしたタンパク質コンジュゲートを用いて、3種のモノクローナル抗体を調製したが、これらはいずれもシガトキシンに非常に弱いアフィニティーしか示さなかった(非特許文献4参照)。
また、他のグループも合成ハプテンJKLM環部のコンジュゲートを用いて動物の免疫を試み、シガトキシンを認識するポリクローナル抗体を作製しているが、モノクローナル抗体は得られていない(非特許文献5参照)。
【0007】
このような状況のなかで、本発明者らは、シガトキシンCTX3C(上記の式中の化合物1)の右末端の部分構造であるIJKLM環部を含む合成ハプテンを設計、合成し、この合成ハプテンのタンパク質コンジュゲートでマウスを免疫する工程を含む方法により、受託番号FERM BP-8293のハイブリドーマ3D11を作製し、該ハイブリドーマを用いてシガトキシン類に特異性の高いモノクローナル抗体3D11を製造することに成功した(特許文献1参照)。
モノクローナル抗体3D11のシガトキシンCTX3Cに対する解離定数(Kd)は、122 nMであった。また、シガトキシンに構造が類似した海産ポリエーテル系毒素とモノクローナル抗体3D11との交差結合活性を調べたところ、赤潮毒ブレベトキシン類と交差活性が確認されたが、その交差結合活性は、シガトキシンとの結合に比べると約350分の1以下の非常に弱いものであった。
【0008】
さらに、本発明者らは、シガトキシンCTX3Cの左末端の部分構造であるABCDE環部を含む化合物をハプテンとして設計、合成し、この合成ハプテンのタンパク質コンジュゲートでマウスを免疫する工程を含む方法により受託番号FERM BP-8292のハイブリドーマ10C9を作製し、該ハイブリドーマを用いてシガトキシン類に特異性の高いモノクローナル抗体10C9を調製することに成功した(特許文献2参照)。
また、本発明者らは、上記の2種のモノクローナル抗体(3D11および10C9)を組み合わせて、検出特性をより改善したサンドイッチ法によりシガトキシンCTX3Cを検出するキットを作製した(特許文献3および非特許文献6参照)。
【0009】
さらに、本発明者らは、M環部にヒドロキシ基を有するシガトキシン51-OH-CTX3CやCTX1Bを検出する抗体を作製するために、シガトキシン類のHIJKLM環部の構造を有する化合物をはじめて合成し、これをハプテンとして動物を免疫することにより受託番号FERM BP-11400として寄託されたハイブリドーマ8H4を作製し、該ハイブリドーマを用いてシガトキシン類51-OH-CTX3CやCTX1Bに特異的に結合する特異性の高いモノクローナル抗体8H4を調製することに成功した。また、本発明者らは、上記モノクローナル抗体8H4と10C9とを組み合わせることにより、検出特性を改善したサンドイッチ法によりシガトキシン51-OH-CTX3Cを検出するキットを作製した(特許文献4および非特許文献7)。
【0010】
しかしながら、シガテラ食中毒の主要毒素であるシガトキシンには、上記の式に示すように、主にA環部およびM環部の置換様式が異なる4種類の類縁体が存在することが知られており(上記の化合物1~4)、これらはいずれも毒素としての強さは異なるもののシガテラ食中毒の毒素として作用し得る。従って、シガテラ食中毒を広く予防するためには、これらのシガトキシン類全てを検出することも必要である。特に、シガトキシンCTX1Bは、世界中で最も普遍的に存在するシガテラ原因毒と考えられているため、その検出は重要である。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開2003-55400号公報
【特許文献2】特許第3845796号明細書
【特許文献3】特許第3820519号明細書
【特許文献4】特開2006-193485号公報
【0012】

【非特許文献1】Toxicon 第15巻、(1977年)、第317頁
【非特許文献2】Journal of Clinical Laboratory Analysis 第6巻、(1992年)、第54頁
【非特許文献3】Journal of AOAC International 第81巻、(1998年)、第727頁
【非特許文献4】Synthesis (1999年)、第1431頁
【非特許文献5】Toxicon 第38巻、(2000年)、第669頁
【非特許文献6】Journal of American Chemical Society 第125頁、(2003年)、第7608頁
【非特許文献7】Toxicon第48巻、(2006年)、第287頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、シガトキシン類、特にA環部にジヒドロキシブテニル基を有するシガトキシンCTX1Bや54-デオキシ-CTX1Bを検出することができる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、A環部にジヒドロキシブテニル基を有するシガトキシン類のABCDE環部の構造を有する化合物をはじめて合成し、これをハプテンとして用いることにより、上記の課題を解決できることを見出した。
よって、本発明は、A環部にジヒドロキシブテニル基を有するシガトキシン類を特異的に認識するモノクローナル抗体を提供する。
また、本発明は、上記のモノクローナル抗体を産生する受番号FERM BP-11401として寄託されたハイブリドーマ3G8(受番号FERM BP-11401として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1-1-1中央第6、〒305-8566、日本)に寄託された。受日:平成22年9月15日、本明細書ではこのハイブリドーマを抗体と同じ名称3G8と表示する。)である。
【0015】
また、本発明は、上記のモノクローナル抗体と、受託番号FERM BP-11400として寄託されたハイブリドーマ8H4(平成16年12月22日に独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1-1-1中央第6、〒305-8566、日本)に寄託)により産生されるモノクローナル抗体またはFERM BP-8298として受託されたハイブリドーマ3D11(平成14年3月5日に独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1-1-1中央第6、〒305-8566、日本)に寄託)により産生されるモノクローナル抗体とを含むシガトキシン類検出キットである。
【0016】
さらに本発明は、次の式(II):
【化2】
JP0005757497B2_000003t.gif
で表される化合物である。
【0017】
また、本発明は、上記の式(II)の化合物がキャリアータンパク質と結合してなる、次の式(I):
【化3】
JP0005757497B2_000004t.gif
(式中、nは整数を表す)
で表されるタンパク質コンジュゲートでもある。
【発明の効果】
【0018】
本発明を用いることにより、今まで免疫学的手法により検出することができなかったシガトキシン類、特にA環部にジヒドロキシブテニル基を有するシガトキシンCTX1Bおよび54-デオキシ-CTX1Bを検出するシステムを構築することができるので、シガトキシン類の検出がより精密となり、食中毒シガテラをより効果的に予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明によるBSAコンジュゲートを用いて評価した、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)コンジュゲートをマウスに免疫して得られたマウス血清の抗体価を表すグラフである。
【図2】図2は、本発明によるシガトキシン検出キットのシガトキシンCTX1Bの検出特性を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のモノクローナル抗体は、上記の一般式(III)中のA環部にジヒドロキシブテニル基を有するシガトキシン類を特異的に認識するモノクローナル抗体である。A環部にジヒドロキシブテニル基を有するシガトキシン類としては、シガトキシンCTX1B(上記の式(III)における化合物4)、シガトキシン54-デオキシ-CTX1B(上記の式(III)における化合物3)などが挙げられる。
本発明のモノクローナル抗体はシガトキシンCTX1Bおよび54-デオキシ-CTX1Bに対するKdが1~100 nM程度である。

【0021】
本発明のモノクローナル抗体は、上記の式(I)のタンパク質コンジュゲートで動物を免疫して得ることができる。動物を免疫する方法としては、公知の方法を用いることができる。免疫される動物としては、例えばヤギ、ウサギ、マウスなどが挙げられ、マウスが好ましく用いられる。

【0022】
本発明のモノクローナル抗体は、A環部にジヒドロキシブテニル基を有するシガトキシン類のABCDE環部を認識して結合していると考えられる。
本発明のモノクローナル抗体は、単独で、それ自体公知の抗原抗体反応において用いてシガトキシン類を検出することができる。
あるいは、本発明のモノクローナル抗体が認識するシガトキシン類の部位とは異なる別の部位を認識するその他のモノクローナル抗体を、本発明のモノクローナル抗体と組み合わせて用いることにより、より高感度でシガトキシン類を検出することもできる。
したがって、本発明のモノクローナル抗体と、該モノクローナル抗体が認識するシガトキシン類の部位とは別の部位を認識するその他のモノクローナル抗体とを含むシガトキシン類検出キットも、本発明のひとつである。

【0023】
その他のモノクローナル抗体としては、受託番号FERM BP-11400として平成16年12月22日に独立行政法人産業技術総合研究所 特許微生物寄託センターに寄託されたハイブリドーマ8H4により産生されるモノクローナル抗体8H4、または受託番号FERM BP-8293として平成14年3月5日に独立行政法人産業技術総合研究所 特許微生物寄託センターに原寄託されたハイブリドーマ3D11により産生されるモノクローナル抗体3D11を好ましく用いることができる。
モノクローナル抗体8H4は、本発明者らにより、M環部にヒドロキシ基を有するシガトキシン類のHIJKLM環部を合成ハプテンとして用いて、M環部にヒドロキシ基を有するシガトキシン類に特異的に結合し得るモノクローナル抗体として作製された(特開2006-193485号公報参照)。また、モノクローナル抗体3D11は、本発明者らにより、M環部にヒドロキシ基を有しないシガトキシン類のIJKLM環部を合成ハプテンとして用いて、M環部にヒドロキシ基を有しないシガトキシン類に特異的に結合し得るモノクローナル抗体として作製された(特開2003-55400号公報参照)。

【0024】
上記のようなシガトキシン類の別々の部位を特異的に認識する2種類の抗体は、従来公知の免疫学的方法において用いて、シガトキシン類を検出できる。従来公知の免疫学的方法としては、2種類以上の抗体を用いて目的の抗原を検出するサンドイッチ法などが挙げられる。

【0025】
本発明のシガトキシン類検出キットにおいて、本発明のモノクローナル抗体およびその他のモノクローナル抗体は、いずれかが標識されていることが望ましい。該標識としては、免疫学的方法において通常用いられるものであればよく、例えば酵素標識(例えばペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクシダーゼなど)、蛍光標識(例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、アロフィコシアニン(APC)、フィコエリスリン(PE)、カルボシアニンなど)、放射性標識(例えばトリチウム(3H)、125I、131Iなど)などが挙げられる。本発明においては、標識は、酵素標識がより好ましい。
モノクローナル抗体を標識する方法としては、公知の方法を用いることができ、また、市販の抗体標識用キットを用いることもできる。

【0026】
上記の式(I)の化合物は、上記の式(II)の化合物から得ることができる。具体的には、式(I)の化合物は、キャリアータンパク質を3,3’-ジチオビス(スルホスクシンイミドイルプロピオネート) (DTSSP)と反応させた後、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)などの還元剤で還元して、キャリアータンパク質の塩基性アミノ酸残基(リジン、ヒスチジンおよびアルギニン残基)のアミノ基をチオール基に変換し、これを式(II)の化合物と反応させる方法により得ることができる。
従来、A環部にジヒドロキシブテニル基を有さないシガトキシン類のABCDE環部を含む化合物をキャリアータンパク質とコンジュゲートさせる方法としては、キャリアータンパク質の塩基性アミノ酸残基のアミノ基を、ABCDE環部を含む化合物のマレイミド誘導体と反応させる方法が知られていたが(特許第3845796号明細書を参照)、本発明においては、キャリアータンパク質の塩基性アミノ酸残基のアミノ基をチオール基に変換して反応させることにより、動物に目的抗体を産生させ得るタンパク質コンジュゲートを得ることができる。

【0027】
上記のキャリアータンパク質としては、通常、免疫学的手法においてハプテンに結合させるキャリアーとして用いられるものであればよく、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、卵アルブミン(OVA)、フィブリノゲンなどが挙げられ、BSA、KLH、OVAが好ましい。

【0028】
上記の式(II)の化合物は新規化合物であり、これも本発明のひとつである。
式(II)の化合物は、以下に記載する方法1により得ることができる。
【実施例】
【0029】
以下に、本発明の化合物、タンパク質コンジュゲート、モノクローナル抗体、ハイブリドーマおよびシガトキシン類検出キットについての実施形態を記載して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
A. 式(II)の化合物の製造
上記の式(II)の化合物を、下記の方法1により合成した。
方法1
【化4】
JP0005757497B2_000005t.gif
【実施例】
【0030】
上記の式中、Fmocは(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)を表し、DCCはジシクロヘキシルカルボジイミドを表し、DMAPはN,N-ジメチル-4-アミノピリジンを表し、DDQは2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノンを表し、PPTSはp-トルエンスルホン酸ピリジニウムを表し、MeOHはメタノールを表し、THFはテトラヒドロフランを表し、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを表し、BMPSは3-マレイミドプロピオン酸N-スクシンイミジルを表し、NAPは(ナフチルメチル)を表す。
【実施例】
【0031】
上記の方法1において、化合物5は、M. Hirama らOrg. Lett. 第6巻、(2004年)第751頁に記載の方法により得た。
Fmoc-グリシン(32.1 mg, 108.1μmol)のCH2Cl2 (1.1 mL)溶液に、室温でDMAP (9.89 mg, 81.0μmol)とDCC (22.3 mg, 108.1μmol)を加えた。反応溶液を室温で5分間攪拌後、化合物5(5.0 mg, 5.4μmol)のCH2Cl2 (1.0 mL)溶液を加えた。さらに反応溶液を14時間撹拌後、リン酸緩衝液(pH=7)を加えた。酢酸エチルで抽出したのち、分離した有機相をMgSO4で乾燥した。溶媒を留去後、残渣をシリカゲルカラム(CH2Cl2/EtOAc 1:0~1:9)で精製し化合物6を得た(6.5 mg、収率:100%)。
【実施例】
【0032】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.82-7.66 (15H, m), 7.61-7.59 (2H, m), 7.54-7.37 (8H, m), 7.34-7.28 (4H, m), 5.93 (1H, dd, J = 15.6, 5.2 Hz), 5.84 (1H, m), 5.82 (1H, m), 5.81-5.80 (2H, m), 5.74-5.68 (2H, m), 5.66 (1H, m), 5.48 (1H, m), 5.32 (1H, m), 5.30 (1H, m), 5.11-5.07 (2H, m), 5.03-4.98 (2H, m), 4.80 (1H, d, J = 12.4 Hz), 4.68 (1H, br), 4.66 (1H, d, J = 12.8 Hz), 4.63 (1H, d, J = 12.8 Hz), 4.62 (1H, d, J = 12.4 Hz), 4.44 (2H, m), 4.24 (1H, m), 4.16 (1H, m), 4.11 (1H, m), 4.08 (1H, m), 4.03 (2H, m), 3.86 (1H, m), 3.67 (1H, ddd, J = 8.4, 8.4, 2.8 Hz), 3.60 (H, dd, J = 10.4, 6.8 Hz), 3.57 (1H, m), 3.55 (1H, dd, J = 8.8, 8.8 Hz), 3.52 (1H, dd, J = 10.4, 4.0 Hz), 3.35 (1H, m), 3.31 (1H, m), 3.15 (1H, m), 3.13 (H, m), 2.67 (H, m), 2.40 (1H, m), 2.36 (1H, m), 2.31 (1H, m), 2.19 (1H, m), 1.61 (1H, m).
ESI-FT-MS : C77H73NO12Naについて算出 (M+Na+): 1226.5025, 実測値: 1226.5024.
【実施例】
【0033】
化合物6(6.5 mg, 5.4μmol)のCH2Cl2/H2O (容量比2:1、5.4 mL)溶液に対して、室温でDDQ (12.3 mg, 54.0μmol)を加え、30分間攪拌した。反応溶液に飽和Na2S2O3水溶液を加えたのち、酢酸エチルで希釈してから飽和NaHCO3水溶液を加えた。酢酸エチルで抽出したのち、分離した有機相をMgSO4で乾燥した。溶媒を留去後、残渣をシリカゲルカラム(CHCl3/MeOH 1:0~100:1)で精製し、化合物7(3.3 mg)と化合物8(3.0 mg)を得た。
ESI-FT-MS : 化合物7:C55H57NO12Naについて算出(M+Na+):946.3773, 実測値:946.3774.
化合物8: C55H55NO12 Naについて算出(M+Na+): 944.3616, 実測値: 944.3621.
【実施例】
【0034】
化合物7(3.3 mg, 3.6μmol)のCH2Cl2 (1.8 mL)溶液に対して、室温でDDQ (6.5 mg, 28.6 μmol)を加えて1時間攪拌した。反応溶液に飽和Na2S2O3水溶液を加えたのち、酢酸エチルで希釈してから飽和NaHCO3水溶液を加えた。酢酸エチルで抽出したのち、分離した有機相をMgSO4で乾燥した。溶媒を留去後、残渣をシリカゲルカラム(CHCl3/MeOH 1:0~100:1)で精製し、化合物8(1.0 mg)を得た。
【実施例】
【0035】
化合物8(4.0 mg, 4.3μmol)のTHF/MeOH (容量比1:1、2.2 mL)溶液に対して、室温でPPTS (6.5 mg, 26.0μmol)を加えて6時間攪拌後、反応溶液に飽和NaHCO3水溶液を加えた。酢酸エチルで抽出したのち、分離した有機相をMgSO4で乾燥した。溶媒を留去後、残渣をシリカゲルカラム(CHCl3/MeOH 1:0~30:1)で精製し、化合物9を得た(1.3 mg、収率:31%)。
ESI-FT-MS : C44H49NO12Naについて算出 (M+Na+): 806.3147, 実測値: 806.3152.
【実施例】
【0036】
化合物9(1.3 mg, 1.7μmol)のDMF (1.7 mL)溶液に対して、室温でピペリジン(1.6μL, 16.6μmol)を加えて1.5時間攪拌した。溶媒を留去後、トルエンで共沸してピペリジンを留去して粗精製物を得た。
【実施例】
【0037】
上記粗精製物のDMF (1.7 mL)溶液に対して、室温でBMPS (0.9 mg, 3.3μmol)を加え、2時間攪拌した。溶媒を留去後、残渣をシリカゲルカラム(CHCl3/MeOH 100:1~20:1)で精製し、式(II)の化合物を得た(1.2 mg、収率:99%)。
【実施例】
【0038】
1H NMR (400 MHz, C5D5N) δ 9.58 (1H, dd, J = 5.8, 5.8 Hz), 6.77 (2H, m), 6.39 (1H, m), 6.34 (1H, m), 5.95 (1H, m), 5.91 (1H, m), 5.89 (1H, m), 5.78 (1H, m), 5.76 (1H, m), 5.72 (1H, ddd, J = 13.2, 2.4, 2.4 Hz), 5.59 (1H, ddd, J = 13.2, 2.4, 2.4 Hz), 5.53 (1H, m), 5.15 (1H, dd, J = 17.2, 2.0 Hz), 5.09 (1H, dd, J = 10.4, 2.0 Hz), 4.86 (1H, br), 4.69 (1H, m), 4.36 (2H, m), 4.21 (1H, m), 4.15 (1H, m), 4.10 (1H, dd, J = 9.2, 8.8 Hz), 4.08 (2H, dd, J = 7.4, 7.4 Hz), 4.03 (1H, m), 3.97 (2H, m), 3.77 (1H, m), 3.76 (1H, dd, J = 8.8, 8.8 Hz), 3.50 (1H, m), 3.49 (1H, m), 3.42 (1H, dd, J = 9.2, 9.2 Hz), 3.35 (H, ddd, J = 11.2, 9.2, 4.0 Hz), 2.89 (2H, dd, J = 7.4, 7.4 Hz), 2.72 (H, ddd, J = 16.0, 8.0, 4.0 Hz), 2.55 (1H, m), 2.53 (1H, ddd, J = 11.2, 4.0, 4.0 Hz), 2.47 (1H, m), 2.25 (1H, ddd, J = 14.8, 7.6, 7.6 Hz), 1.84 (1H, ddd, J = 11.2, 11.2, 11.2 Hz).
ESI-FT-MS : C36H44N2O13Naについて算出 (M+Na+): 735.2736, 実測値: 735.2739.
【実施例】
【0039】
B. タンパク質コンジュゲートの製造
【化5】
JP0005757497B2_000006t.gif
【実施例】
【0040】
キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)コンジュゲートの製造: KLH (10.0 mg)のPBS (リン酸緩衝食塩水;4 mL)溶液に対して、室温で3,3'-ジチオビス(スルホスクシンイミドイルプロピオネート) (DTSSP) (13.7 mg, 45.0μmol)を加えた。室温で3時間静置したのち、4℃でPBS (1 L)に対して透析した。2時間ごとに2回PBS (1 L)を交換し、12時間後に透析膜から溶液を取り出して上記化合物10を得た。
【実施例】
【0041】
化合物10のPBS溶液(3.0 mL, 1.72 mg/mL)に対して、室温でトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP) (1.8 mg, 6.4μmol)のPBS (100μL)溶液を加えた。室温で2時間静置したのち、TCEP (1.8 mg, 6.4μmol) のPBS (100μL)溶液を再び加え、さらに室温で2時間静置したのちTCEP (1.8 mg, 6.4μmol)のPBS (100μL)溶液をもう一度加えた。室温で12時間静置したのち、4℃でPBS (1 L)に対して透析した。2時間ごとに2回PBS (1 L)を交換し、12時間後に透析膜から溶液を取り出して、上記化合物11 を得た。
【実施例】
【0042】
化合物11のPBS溶液(1.2 mL, 1.72 mg/mL)に対して、室温で上記の方法により得られた式(II)の化合物 (0.60 mg, 0.84μmol)のDMF (100μL)溶液を加えた。室温で24時間静かに攪拌したのち、4℃でPBS (1 L)に対して透析した。2時間ごとに2回PBS (1 L)を交換し、12時間後に透析膜からKLHコンジュゲートの溶液を取り出してエッペンドルフチューブに移し変えて保存した。
【実施例】
【0043】
【化6】
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【実施例】
【0044】
ウシ血清アルブミン(BSA)コンジュゲートの製造: BSA (20.0 mg)のPBS (10 mL)溶液に対して、室温でDTSSP (13.7 mg, 45.0μmol)を加えた。室温で3時間静置したのち、4℃でPBS (1 L)に対して透析した。2時間ごとに2回PBS (1 L)を交換し、12時間後に透析膜から溶液を取り出して上記化合物12を得た。
化合物12のPBS溶液(9.0 mL, 1.70 mg/mL)に対して、室温でTCEP (1.8 mg, 6.4μmol)のPBS (100μL)溶液を加えた。室温で2時間静置したのち、TCEP (1.8 mg, 6.4μmol)のPBS (100μL)溶液を再び加え、さらに室温で2時間静置したのちTCEP (1.8 mg, 6.4μmol)のPBS (100μL)溶液をもう一度加えた。室温で12時間静置したのち、4℃でPBS (1 L)に対して透析した。2時間ごとに2回PBS (1 L)を交換し、12時間後に透析膜から溶液を取り出して上記化合物13を得た。
【実施例】
【0045】
化合物13のPBS溶液(1.1 mL, 1.82 mg/mL)に対して、室温で上記の方法により得られた式(II)の化合物(0.60 mg, 0.84μmol)のDMF (100μL)溶液を加えた。室温で24時間静かに攪拌したのち、4℃でPBS (1 L)に対して透析した。2時間ごとに2回PBS (1 L)を交換し、12時間後に透析膜からBSAコンジュゲートの溶液を取り出してエッペンドルフチューブに移し変えて保存した。
【実施例】
【0046】
ハプテン価の解析
上記のようにして得られたBSAコンジュゲートを、MALDI-TOF-MSで分析した。BSAコンジュゲートの平均分子量は約77400であった(BSAの分子量は約66400)。上記の式(II)の化合物に由来する部分であるハプテン部分の分子量が802であるので、BSAコンジュゲートには平均14個のハプテンが連結されていることがわかる。
【実施例】
【0047】
C. 免疫
上記のようにして得られた式(II)の化合物とKLHとのコンジュゲート(300μg)に、アジュバントとしてのAbISCOTM-100 (ISCONOVA社製,150μL)およびPBSを加えて溶液量を1.2 mLとした。このようにして調製した溶液を抗原液として、Balb/cマウス(5匹)に2週間毎に3回、腹腔内投与した(1回の投与につき200μL/マウス)。3回目の投与から1週間後にマウスの血清を採取し、上記の式(II)の化合物とBSAとのコンジュゲートを抗原として用いて下記のELISA (enzyme-linked immunosorbent assay)法で血清の抗体価を決定した。
【実施例】
【0048】
ELISA法
96ウェルELISA用プレート(COSTAR社製3590)の各ウェルに50μLのBSAコンジュゲート(2μg/mL)を入れ、室温で2時間放置後、4℃で一晩放置して、プレートにBSAコンジュゲートを吸着させた。プレートをPBS-Tween [5% Tween-20 (ポリオキシエチレン (20)ソルビタンモノラウレート(ICI社製、Tween-20相当品BIO-RAD社製170-6531)を含むPBS]で3回洗浄し、吸着しなかったBSAコンジュゲートを除去した。ウェルに抗血清(またはハイブリドーマ培養上清、精製抗体溶液)を加え、室温で1時間放置後、PBS-Tweenで3回洗浄した。50μLの酵素標識二次抗体(ヤギ抗マウスIgG-西洋わさびペルオキシターゼ)(BIO-RAD社製、170-6516、PBS-Tweenで1000倍希釈した溶液)を各ウェルに入れ、室温で1時間放置後、PBS-Tweenでそれぞれ3回洗浄した。100μLの基質溶液[基質溶液の組成:1,2-フェニレンジアミン4.0 mg、過酸化水素水10μL、0.1 Mクエン酸バッファー(pH 5.0) 10 mL]を加え、数分間呈色反応を進行させた後、2規定硫酸(50μL)で反応を停止した。マイクロプレート吸光度測定装置(BIO-RAD社製、モデル680)を用いて、490 nmの吸光度を測定した。
【実施例】
【0049】
血清中の抗体価の測定
血清を10% FBS含有PBSを用いて300倍から38400倍まで順次2倍希釈した希釈系列サンプルを作製した。上記のようにしてBSAコンジュゲートを吸着させたELISAプレート(COSTAR 社製3590)に希釈系列サンプルを50μLずつ入れ、室温で1時間放置後、上記の方法で490 nmの吸光度を測定した(図1参照)。5匹のマウスについて、血清希釈度の対数と吸光度をプロットした結果を図1に示す。図1より、血清中の抗体が血清濃度依存的にBSAコンジュゲートと結合することがわかる。
【実施例】
【0050】
抗体価の高いマウスからの脾臓の摘出、細胞融合、モノクローナルハイブリドーマの作製
上記のようにして得られたKLHコンジュゲート(100μg)にAbISCOTM-100 (ISCONOVA社製、50μL)およびPBSを加えて溶液量を0.4 mLとし、抗原液を作製した。3回目の免疫から3週間後に、5匹の中で最も高い抗体価を示したマウスの腹腔内に、先に調製した抗原液を追加免疫し(200μL)、3日後に脾臓を摘出した。脾臓に付着している組織や臓器の断片をピンセットで取り除いた後、無血清培地 [RPMI 1640培地(GIBCO社製、11875-085) 1000 mLにペニシリン・ストレプトマイシン(GIBCO社製、15140-122) 10 mLを加えたもの] 15 mL入りのシャーレに移し、ピンセットで脾臓内の細胞を浮遊させた。脾臓細胞浮遊液を濾過後、50 mL遠心管に移した。さらに、無血清培地15 mLを加え、よくピペッティングして濾過し全量を30 mLとした。800 rpmで5分間、室温で遠心分離し、上清を除去、タッピングした。
【実施例】
【0051】
-180℃の液体窒素細胞保存容器からミエローマ細胞P3X63-Ag8.653 (大日本製薬社製)を凍結したチューブを取り出し、37℃の恒温槽中で速やかに解凍した。チューブをアルコール綿でよく消毒した後、チューブ内の細胞浮遊液を無血清培地30 mLに移した。800 rpmで5分間、室温で遠心分離し、上清を除去した。タッピング後、増殖培地(無血清培地1000 mLにFBS 100 mL、L-グルタミン(200 mM、GIBCO社製、25030-081) 10 mL、ブライクローン(BioResearch Ireland社製BR-001) 20 mLを加えたもの) 10 mLを加え、細胞を浮遊させ、50 mL培養フラスコに移した。フラスコの栓をゆるめ、炭酸ガス培養器に入れ、培養した。2~3日毎に継代培養し、250 mLフラスコ2本分(90~100 mL)にした。
【実施例】
【0052】
マウスから取り出した脾臓細胞(2×108個)と上記のミエローマ細胞(5×107個)とを混合し、遠心分離(800 rpm、5分間、室温)し、上清を除去し、タッピングした。この後、ECFバッファー[マンニトール45.5 g、10 mM 塩化マグネシウム10 mL、10 mM塩化カルシウム10 mL、20 mM TrisHCl (pH 7.2) 10 mLを蒸留水で溶解して1000 mLとしたもの]を30 mL加え、遠心分離(800 rpm、5分間、室温)、上清除去、タッピングする操作を2回繰り返した後、ECFバッファー4.8 mLを加えた。これを6ウェルプレート(SUMIRON社製、MS-80060)の各ウェルに1.2 mLずつ4ウェルに分注し、SSH-10細胞融合装置(島津社製)を用い、以下の条件で細胞融合した[電極間距離:1.0 mm; 交流周波数:1MHz; 交流初期印加電圧: 40 V; 交流初期印加時間:10秒(s); パルス幅: 40 (マイクロ秒(μs)); パルス電圧:230 V; パルス電界強度: 2.30 kV/cm; 交流2次印加電圧: 1.0 V; パルス印加間隔:0秒; 印加パルス数:1; パルス電圧変化: +0V ; 交流最終印加時間:0秒; 交流電圧減衰率:0%; 接触強化:off]。
【実施例】
【0053】
得られたハイブリドーマ細胞 (Mouse-Mouse hybridoma)をHAT培地[無血清培地144 mLにFCS 40 mL、L-グルタミン(200 mM、GIBCO 社製25030-081) 2 mL、ブライクローン(BioResearch Ireland社製BR-001)10 mL、HAT (GIBCO社製31062-011)4 mLを加えたもの] 60 mLに浮遊させ、100μL/ウェルずつ96ウェルプレート6枚に移した。炭酸ガス培養装置中、約2週間培養し、式(II)の化合物とBSAとのコンジュゲート(すなわち、式(I)におけるタンパク質がBSAの化合物)に結合する抗体を産生するハイブリドーマを、該BSAコンジュゲートを用いてELISA法でスクリーニングした。陽性のウェルを選択し、2回クローニング後に、再度ELISA陽性となったモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを順次培養し、それぞれ約200 mLまで増殖させた。これにより、高い抗体価でモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ3G8を得て、これを、平成22年9月15日に、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、受番号FERM BP-11401として寄託した(このハイブリドーマを抗体と同じ名称3G8と表示する)。
【実施例】
【0054】
E. モノクローナル抗体の評価
抗体の精製およびサブクラスの決定
上記のようにして作製したハイブリドーマ3G8の培養上清を、抗マウスIgG+IgMアフィニティーカラム(NGK Industries, Ltd.社製)で精製した(結合用バッファー:リン酸バッファーpH 7.0、溶出用バッファー:0.2 M Gly-HCl pH 2.5)。抗体のサブクラスを、マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキットIsoStrip (Roche Applied Science社製、11493027001)を用いて決定した。その結果、抗体3G8のサブクラスはIgG1κであった。
【実施例】
【0055】
抗体の親和性解析(競争阻害実験)
次に、精製した抗体についてハプテンとの解離常数(Kd)を求めた。ELISA用プレートに順次2倍希釈した競争阻害剤(以下に示す化合物14)(10%MeOH含有PBS溶液各30μL)の溶液を調製した。これに抗体溶液(30μL)を加え、室温で2時間放置した。抗体と阻害剤の混合液50μLを、BSAコンジュゲート(1.25μg/mL)を吸着した96ウェルELISA用プレート(COSTAR社製3590)に加え、室温で15分間放置した。プレートをPBS-Tweenで3回洗浄した後、50μLの酵素標識二次抗体(ヤギ抗マウスIgG-西洋わさびペルオキシターゼ)(BIO-RAD社製、170-6516、PBS-Tweenで1000倍希釈)を各ウェルに入れ、室温で1時間放置後、PBS-Tweenで3回洗浄した。100μLの基質溶液[基質溶液の組成:1,2-フェニレンジアミン4.0 mg、過酸化水素水10μL、0.1 Mクエン酸バッファー(pH 5.0) 10 mL]を加え、数分間呈色反応を進行させた後、2規定硫酸(50μL)で反応を停止させた。マイクロプレート吸光度測定装置(BIO-RAD社製、モデル680)を用いて、490 nmの吸光度を測定し、滴定曲線を得た。Friguetらの方法[Journal of Immunological Method, 第77巻(1985年)、第305頁]を参考に、Klotzプロットを作製して得た直線の傾きから阻害剤のKdを求めたところ、Kd = 1.5 nMとなり、モノクローナル抗体3G8はハプテン化合物14に強く結合することがわかる。
【実施例】
【0056】
シガトキシンCTX1B (化合物4)を用いて同様の阻害実験を行ったところ、抗体3G8はCTX1Bに高い親和性を示すことが明らかとなった(Kd = 14.9 nM)。また、3G8はシガトキシンCTX3C(化合物1)や他のポリエーテル海産毒(ブレベトキシンAおよびB、オカダ酸)とは全く交差反応を示さなかった。
【化7】
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【実施例】
【0057】
F. サンドイッチ法によるシガトキシン類検出キット
8H4抗体の酵素標識(サンドイッチ法に用いる8H4-HRPの合成)
受託番号FERM BP-11400として寄託されたハイブリドーマ8H4により産生される抗体8H4(M環部にOH基を有するシガトキシン類を認識するモノクローナル抗体、特開2006-193485号公報を参照)を、HRP-Antibody All-in-OneTM Conjugationキット(solulink社製)を同社説明書に従って用いて、HRP標識した。8H4抗体(100μg)を用いて8H4-HRP溶液約150μLが得られた。この溶液を500μLチューブに入れ、4℃で保存した。
【実施例】
【0058】
シガトキシンCTX1Bのサンドイッチ検出法
COSTAR社製ELISAプレート(3590)に、上記のようにして得られたモノクローナル抗体3G8のPBS溶液(10μg/mL)をウェルあたり50μL入れ、4℃で一晩放置した。溶液を捨て、1%スキムミルク含有PBSを加えて(400μL/ウェル)室温で1時間静置した。溶液を捨て、PBS-Tweenで3回洗浄後、シガトキシンCTX1B(化合物4)の希釈溶液を入れ(50μL/ウェル)、室温で1時間静置した。溶液を捨て、PBS-Tweenで3回洗浄した後、上記のHRP標識モノクローナル抗体8H4の溶液(20μg/mL、50μL)を添加し、室温で1時間静置した。溶液を捨て、PBS-Tweenで3回洗浄した後、100μLの基質溶液[基質溶液の組成:1,2-フェニレンジアミン4.0 mg、過酸化水素水10μL、0.1Mクエン酸バッファー(pH 5.0) 10 mL]を加え、数分間呈色反応を進行させた後、2規定硫酸(50μL)で反応を停止した。マイクロプレート吸光度測定装置(BIO-RAD社製、モデル680)を用いて、490 nmの吸光度を測定した。測定結果を図2に示す。
【実施例】
【0059】
図2の結果から、シガトキシンCTX1BのABCDE環部を持つハプテンを用いて作製した抗体である3G8と酵素標識した抗体8H4とを組み合わせることにより、シガトキシン CTX1Bを感度よく検出することができることがわかる。
図面
【図1】
0
【図2】
1