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明細書 :メソポーラス金属酸化物の作製方法、及びメソポーラス金属酸化物形成のための補助剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5610341号 (P5610341)
公開番号 特開2012-056820 (P2012-056820A)
登録日 平成26年9月12日(2014.9.12)
発行日 平成26年10月22日(2014.10.22)
公開日 平成24年3月22日(2012.3.22)
発明の名称または考案の名称 メソポーラス金属酸化物の作製方法、及びメソポーラス金属酸化物形成のための補助剤
国際特許分類 C01B  37/00        (2006.01)
C07C  43/23        (2006.01)
C07C  41/30        (2006.01)
C07F   7/28        (2006.01)
FI C01B 37/00
C07C 43/23 D
C07C 41/30
C07F 7/28 F
請求項の数または発明の数 3
全頁数 18
出願番号 特願2010-203896 (P2010-203896)
出願日 平成22年9月13日(2010.9.13)
審査請求日 平成25年6月24日(2013.6.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
発明者または考案者 【氏名】西久保 忠臣
【氏名】内藤 周弌
【氏名】工藤 宏人
【氏名】吉田 曉弘
【氏名】新名 伸光
個別代理人の代理人 【識別番号】100151183、【弁理士】、【氏名又は名称】前田 伸哉
審査官 【審査官】西山 義之
参考文献・文献 特開2008-044825(JP,A)
調査した分野 C01B 33/20-39/54
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
金属元素に配位可能な置換基を複数有し、複数のベンゼン環からなる下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される環状オリゴマーの溶液中に、加水分解性の金属化合物を加え、次いで前記加水分解性の金属化合物を前記溶液中で加水分解させて、加水分解物を形成させる加水分解工程と、
得られた前記加水分解物を焼成する焼成工程と、を含むメソポーラス金属酸化物の作製方法。
【化1】
JP0005610341B2_000017t.gif
(上記一般式(3)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、Xは、それぞれ独立に、置換又は非置換のプロピレン基を表す。ただし、少なくともいずれかのRは、炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、少なくとも2つのRは、水素原子を表す。)
【化2】
JP0005610341B2_000018t.gif
(上記一般式(4)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、Xは、それぞれ独立に、置換又は非置換のアルキレン基を表し、nは、2又は3を表す。ただし、少なくともいずれかのRは、炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、少なくとも2つのRは、水素原子を表す。)
【請求項2】
金属元素に配位可能な置換基を複数有し、複数のベンゼン環からなる下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される環状オリゴマーを主成分とするメソポーラス金属酸化物形成のための補助剤。
【化3】
JP0005610341B2_000019t.gif
(上記一般式(3)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、Xは、それぞれ独立に、置換又は非置換のプロピレン基を表す。ただし、少なくともいずれかのRは、炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、少なくとも2つのRは、水素原子を表す。)
【化4】
JP0005610341B2_000020t.gif
(上記一般式(4)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、Xは、それぞれ独立に、置換又は非置換のアルキレン基を表し、nは、2又は3を表す。ただし、少なくともいずれかのRは、炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、少なくとも2つのRは、水素原子を表す。)
【請求項3】
金属元素に配位可能な置換基を複数有し、複数のベンゼン環からなる下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される環状オリゴマーの、メソポーラス金属酸化物形成助剤としての使用方法。
【化5】
JP0005610341B2_000021t.gif
(上記一般式(3)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、Xは、それぞれ独立に、置換又は非置換のプロピレン基を表す。ただし、少なくともいずれかのRは、炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、少なくとも2つのRは、水素原子を表す。)
【化6】
JP0005610341B2_000022t.gif
(上記一般式(4)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、Xは、それぞれ独立に、置換又は非置換のアルキレン基を表し、nは、2又は3を表す。ただし、少なくともいずれかのRは、炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、少なくとも2つのRは、水素原子を表す。)
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、メソポーラス金属酸化物の作製方法、及びメソポーラス金属酸化物形成のための補助剤に関する。また、本発明は、金属元素に配位可能な置換基を複数有し、複数のベンゼン環からなる環状オリゴマーの、メソポーラス金属酸化物形成助剤としての使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機酸化物材料は、顔料、塗料、ポリマー製造におけるバインダー、紫外線吸収剤、触媒材料等として幅広い用途が知られている。これらの用途の中でも、特に触媒材料としての用途に着目すると、耐熱性、高い化学的安定性及び各種金属と高い親和性を示す酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム等の材料が、触媒作用を有する金属微粒子を分散固定化する触媒担体として工業的に広く使用されている。また、二酸化チタンや酸化亜鉛に代表される酸化物半導体は、それらの酸化物自身が紫外光の存在下で光触媒として機能することから、大気中の汚染物質の分解、環境水の浄化等の用途で実用化されている。これら触媒材料としての用途においては、反応物が存在する気相や液相と触媒材料との接触面積が大きいほど触媒活性が向上し得ることから、高い比表面積を有する無機酸化物材料が極めて有用である。
【0003】
高い比表面積を有する無機酸化物材料としては、無機酸化物の多孔質材料が挙げられる。こうした多孔質材料は、シリカゲルやゼオライトが著名であるように、分離材や吸着剤、触媒又はその担体として使用されている。これら多孔質材料の性質は、含まれる細孔の直径、分布及び配列、並びに細孔内の表面構造によって決定される。これらの中でも、特に細孔の直径である細孔径は、多孔質材料の比表面積に直接影響を与えるものであり、多孔質材料の性質を決定する大きな因子である。このため、より均一で微細な細孔径分布を有する多孔質材料の開発が重要である。このような背景から、近年、様々な無機酸化物を使用して、直径が2~50nm程度のメソ細孔を有するメソポーラス酸化物材料の開発が盛んに行われている。
【0004】
こうした開発の一例として、鋳型となる有機分子の集合体の周囲で金属酸化物の前駆体である塩又はアルコキシドの加水分解により水酸化物を発生させ、これを加熱することでメソポーラス金属酸化物材料を得るゾル-ゲル法が検討されている。例えば、特許文献1には、有機テンプレートとして界面活性剤のミセルを使用し、アルコキシシランの加水分解物をこのミセルの周囲に配置させたゾルを形成させ、次いで、このゾルの構造が保持される条件でゲルを形成させ、さらに熱処理するナノ多孔質材料(メソポーラス酸化物材料)の形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2008-44825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された方法では、金属源としてアルコキシシランを使用する。このアルコキシシランは、加水分解される速度が比較的遅いことから、鋳型となる分子の形態を保持したまま多孔質の酸化ケイ素、すなわちメソポーラス酸化物材料を形成させることができる。しかし、特に、チタン等の遷移金属は、金属源となるアルコキシド等の加水分解速度が著しく大きいため、鋳型となる分子の形態を保持したまま多孔質の金属酸化物を形成させることが困難である。このため、遷移金属のメソポーラス酸化物材料を得ることは、極めて難しい。
【0007】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであり、遷移金属にも適用することが可能な、新規なメソポーラス金属酸化物の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、3nm程度という、非重合性の有機分子としては比較的大きなサイズを有する、複数のベンゼン環が結合して形成された環状オリゴマーに注目し、その中でも特に、レゾルシノールと2官能アルキレンアルデヒドとの縮合生成物のような、金属元素に配位可能な置換基を有する環状オリゴマーを鋳型として使用することにより、遷移金属のメソポーラス酸化物材料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の第一の態様は、金属元素に配位可能な置換基を複数有し、複数のベンゼン環からなる下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される環状オリゴマーの溶液中に、加水分解性の金属化合物を加え、次いで前記加水分解性の金属化合物を前記溶液中で加水分解させて、加水分解物を形成させる加水分解工程と、得られた前記加水分解物を焼成する焼成工程と、を含むメソポーラス金属酸化物の作製方法である。
【化7】
JP0005610341B2_000002t.gif
(上記一般式(3)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、Xは、それぞれ独立に、置換又は非置換のプロピレン基を表す。ただし、少なくともいずれかのRは、炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、少なくとも2つのRは、水素原子を表す。)
【化8】
JP0005610341B2_000003t.gif
(上記一般式(4)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、Xは、それぞれ独立に、置換又は非置換のアルキレン基を表し、nは、2又は3を表す。ただし、少なくともいずれかのRは、炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、少なくとも2つのRは、水素原子を表す。)
【0012】
本発明の第二の態様は、金属元素に配位可能な置換基を複数有し、複数のベンゼン環からなる下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される環状オリゴマーを主成分とするメソポーラス金属酸化物形成のための補助剤である。
【化9】
JP0005610341B2_000004t.gif
(上記一般式(3)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、Xは、それぞれ独立に、置換又は非置換のプロピレン基を表す。ただし、少なくともいずれかのRは、炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、少なくとも2つのRは、水素原子を表す。)
【化10】
JP0005610341B2_000005t.gif
(上記一般式(4)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、Xは、それぞれ独立に、置換又は非置換のアルキレン基を表し、nは、2又は3を表す。ただし、少なくともいずれかのRは、炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、少なくとも2つのRは、水素原子を表す。)
【0014】
本発明の第三の態様は、金属元素に配位可能な置換基を複数有し、複数のベンゼン環からなる下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される環状オリゴマーの、メソポーラス金属酸化物形成助剤としての使用方法である。
【化11】
JP0005610341B2_000006t.gif
(上記一般式(3)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、Xは、それぞれ独立に、置換又は非置換のプロピレン基を表す。ただし、少なくともいずれかのRは、炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、少なくとも2つのRは、水素原子を表す。)
【化12】
JP0005610341B2_000007t.gif
(上記一般式(4)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、Xは、それぞれ独立に、置換又は非置換のアルキレン基を表し、nは、2又は3を表す。ただし、少なくともいずれかのRは、炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、少なくとも2つのRは、水素原子を表す。)
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、遷移金属にも適用することが可能な、新規なメソポーラス金属酸化物の作製方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のメソポーラス金属酸化物の作製方法を示す模式図である。
【図2】実施例1~3のメソポーラス酸化チタンにおける吸脱着等温線である。
【図3】実施例1~3のメソポーラス酸化チタンの細孔径分布を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものでなく、本発明の構成の範囲において適宜変更を加えて実施することが可能である。

【0019】
まず、本発明のメソポーラス金属酸化物の作製方法の一実施形態について説明する。本発明のメソポーラス金属酸化物の作製方法は、加水分解工程と、当該加水分解工程で得られた加水分解物を焼成する焼成工程とを含む。以下、加水分解工程、及び焼成工程の順に説明する。

【0020】
<加水分解工程>
加水分解工程は、金属元素に配位可能な置換基を有し、複数のベンゼン環からなる環状オリゴマー(以下、単に「環状オリゴマー」とも呼ぶ。)の溶液中に、加水分解性の金属化合物を加え、次いで、この加水分解性の金属化合物をその溶液中で加水分解させて、加水分解物を形成させる工程である。まず、この工程で使用される環状オリゴマーについて説明する。

【0021】
[環状オリゴマー]
本実施形態で使用される環状オリゴマーは、複数のベンゼン環が環状に結合して形成されたものであり、下記一般式(1)で表される化合物又は化合物群と、下記一般式(2)で表される化合物と、を縮合反応させて得られる化合物が好ましく例示される。また、このような化合物の他、環状オリゴマーとして、複数のベンゼン環がメチレン鎖を介して環状に結合したカリックスアレーン類やカリックスレゾルシンアレーン類を使用することも可能である。

【0022】
【化9】
JP0005610341B2_000008t.gif

【0023】
上記一般式(1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表す。ただし、上記一般式(1)で表される化合物又は化合物群において、少なくともいずれかのRは、炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、少なくともいずれかのRは、水素原子を表す。

【0024】
ここで、「上記一般式(1)で表される化合物又は化合物群において、少なくともいずれかのRは、炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、少なくともいずれかのRは、水素原子を表す」とは、上記一般式(1)で表される化合物として単独の化合物を使用する場合には、上記一般式中で2個存在するRのうち、一方が水素原子で他方が炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表すことを意味し、上記一般式(1)で表される化合物として複数の化合物(すなわち化合物群)を使用する場合には、使用するいずれかの化合物のいずれかのRが水素原子を表し、使用するいずれかの化合物のいずれかのRが炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表すことを意味する。一般式(1)で表される化合物又は化合物群としてこのような化合物を使用することにより、製造される環状オリゴマーに、金属元素に配位可能な置換基である水酸基、及び環状オリゴマーに溶解性を付与するアルキルエーテル基の両方が導入される。

【0025】
また、上記一般式(1)中、Rで表される「炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基」の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等を好ましく例示することができ、n-ブチル基をより好ましく例示することができる。上記一般式(1)中に含まれる2個のRは、いずれか一方が水素原子であり、他方が炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基であることが好ましい。これにより、製造された環状オリゴマーの溶媒への溶解性を良好とすることができる。なお、上記一般式(1)で表される化合物として、単独の種類の化合物のみを使用してもよいし、複数の種類の化合物を組み合わせて使用してもよい。

【0026】
【化10】
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【0027】
上記一般式(2)中、Xは、炭素数3~11の置換若しくは非置換のアルキレン基を表す。このようなXの具体例としては、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が例示される。また、上記一般式(2)中のXは、高収率で環状オリゴマーを得られるとの観点から、炭素数3~6のアルキレン基が好ましく、プロピレン基がより好ましい。

【0028】
縮合反応の条件(方法)は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、酸触媒をはじめとする適当な触媒の存在下、適当な反応溶媒中、60~90℃で6~72時間脱水縮合させる方法等を例示できる。

【0029】
脱水縮合反応に際して使用される触媒としては、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸等が例示される。これらの中でも、より高収率で環状オリゴマーを得られるとの観点からは、トリフルオロ酢酸が好ましく例示される。これらの触媒は、一種を単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。

【0030】
脱水縮合反応に際して使用する反応溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒等が例示される。これらの溶媒は、一種を単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。

【0031】
縮合反応に際して、上記一般式(1)で表される化合物と、上記一般式(2)で表される化合物との割合は特に制限ないが、環状オリゴマーの収率を向上させるという観点から、上記一般式(2)で表される化合物1molに対して上記一般式(1)で表される化合物が、1~8molであることが好ましく、2~6molであることがより好ましく、3~5molであることが特に好ましい。上記割合の範囲内であれば、目的とする環状オリゴマーの収率を良好なものとすることができる。

【0032】
縮合反応における反応溶液中の基質濃度(上記一般式(1)で表される化合物と、上記一般式(2)で表される化合物との合計の濃度)は、特に限定されないが、目的とする環状オリゴマーの収率を向上させるとの観点からは、2mol/L以上であることが好ましく、4mol/L以上であることがより好ましく、4~10mol/Lであることが特に好ましい。基質濃度を上記の範囲とすることにより、環状オリゴマーの収率を良好にすることができる。

【0033】
縮合反応が終了すると、環状オリゴマーを縮合物(沈殿物)として得ることができる。得られた縮合物(沈殿物)を、水、有機溶媒、又は水と有機溶媒との混合溶媒、で洗浄して精製することが好ましい。有機溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3-メチルシクロペンタノン、2,6-ジメチルシクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1,4-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジメチロール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸イソアミル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;フェノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等を例示することができる。これらの中でも、メタノール、エタノール、ジエチルエーテルが好ましく例示される。なお、これらの有機溶媒は、一種を単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。また、得られた縮合物(沈殿物)を有機溶媒に溶解させ、得られた溶液を水で洗浄することにより、残存する原料や副生成物を除去することも好ましい。

【0034】
上記の縮合反応によって主として得られる環状オリゴマーの構造は、原料化合物となる上記一般式(2)におけるXのアルキレン骨格に含まれる炭素数によって決まる。例えば、上記一般式(2)中のXがプロピレン基(アルキレン骨格に含まれる炭素数が3)である化合物を原料とすれば、下記一般式(3)の環状オリゴマーが主として得られる。また、上記一般式(2)中のXのアルキレン骨格に含まれる炭素数が4以上である化合物を使用すれば、偶奇効果により、Xのアルキレン骨格に含まれる炭素数が奇数の場合には、下記一般式(4)におけるn=2の環状オリゴマーが主として得られ、Xのアルキレン骨格に含まれる炭素数が偶数の場合には、下記一般式(4)におけるn=3の環状オリゴマーが主として得られる。なお、上記一般式(2)中のXのアルキレン骨格に含まれる炭素数が2以下である化合物を原料とすると、所望とする環状オリゴマーが得られない。

【0035】
【化11】
JP0005610341B2_000010t.gif

【0036】
上記一般式(3)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、Xは、それぞれ独立に、置換若しくは非置換のプロピレン基を表す。ただし、少なくともいずれかのRは、炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、少なくとも2つのRは、水素原子を表す。

【0037】
上記一般式(3)で表される環状オリゴマーに含まれるそれぞれのベンゼン環における2個のRは、いずれか一方が水素原子であり、他方が炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基であることがより好ましい。これにより、環状オリゴマーの溶媒への溶解性を良好とすることができる一方で、環状オリゴマーが金属元素に配位可能な置換基として水酸基を複数有することとなる。このような環状オリゴマーは、縮合反応に使用する一般式(1)で表される化合物として、上記一般式(1)中に含まれる2個のRのうち、いずれか一方が水素原子であり、他方が炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基である化合物を使用することにより得られる。

【0038】
一般式(3)で表される化合物について、理解を容易にするために、一般式(3)を展開した一般式(3A)を下記に示す。下記の一般式(3A)は、上記の一般式(3)と同様な化合物を表す。

【0039】
【化12】
JP0005610341B2_000011t.gif

【0040】
上記一般式(3A)中、R及びXは、上述の一般式(3)におけるものと同様である。

【0041】
【化13】
JP0005610341B2_000012t.gif

【0042】
上記一般式(4)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、Xは、それぞれ独立に、置換又は非置換のアルキレン基を表し、nは、2又は3を表す。ただし、少なくともいずれかのRは、炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、少なくとも2つのRは、水素原子を表す。

【0043】
既に述べたように、nは、環状オリゴマーを製造するのに使用した上記一般式(2)で表される化合物における、Xのアルキレン骨格に含まれる炭素数によって決まる。Xのアルキレン骨格に含まれる炭素数が5以上の奇数の場合には、n=3となり、一般式(4)で表される化合物は3量体構造となる。Xは上記一般式(2)で表される化合物におけるXを由来とするものであるから、この場合、Xのアルキレン骨格に含まれる炭素数は5以上の奇数となる。また、Xのアルキレン骨格に含まれる炭素数が4以上の偶数の場合には、n=2となり、一般式(4)で表される化合物は2量体構造となる。この場合、一般式(4)におけるXのアルキレン骨格に含まれる炭素数は4以上の偶数となる。

【0044】
一般式(4)で表される環状オリゴマーに含まれるそれぞれのベンゼン環における2個のRは、いずれか一方が水素原子であり、他方が炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基であることがより好ましい。これにより、環状オリゴマーの溶媒への溶解性を良好とすることができる一方で、環状オリゴマーが金属元素に配位可能な置換基として水酸基を複数有することとなる。このような環状オリゴマーは、縮合反応に使用する一般式(1)で表される化合物として、上記一般式(1)中に含まれる2個のRのうち、いずれか一方が水素原子であり、他方が炭素数1~18の置換若しくは非置換のアルキル基である化合物を使用することにより得られる。

【0045】
一般式(4)で表される化合物について、理解を容易にするために、一般式(4)を展開した一般式(4A)及び(4B)を下記に示す。下記の一般式(4A)及び(4B)は、上記の一般式(4)と同様な化合物を示す。なお、下記の一般式(4A)は、一般式(4)の3量体構造(n=3)を表し、下記の一般式(4B)は、一般式(4)の2量体構造(n=2)を表す。

【0046】
【化14】
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【0047】
【化15】
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【0048】
上記一般式(4A)及び(4B)中、R及びXは、上述の一般式(4)におけるものと同様である。

【0049】
環状オリゴマーとして例示した一般式(3)及び(4)で表される化合物は、上記のように少なくとも2つのRが水素原子であるので、複数の水酸基を有する。この水酸基は、金属元素に配位可能な置換基として使用され、後述する加水分解性の金属化合物と結合するために使用される。環状オリゴマーとして例示した上記一般式(3)及び(4)で表される化合物は、金属元素に配位可能な置換基として水酸基を有するが、金属元素に配位可能な置換基として水酸基以外の置換基を有する環状オリゴマーを使用することも可能である。このような置換基の例として、水酸基の他に、アミノ基、カルボキシル基、アミド基等を挙げることができる。

【0050】
[加水分解工程]
次に、加水分解工程について説明する。加水分解工程は、上記環状オリゴマーの溶液中に加水分解性の金属化合物を加え、次いで、この加水分解性の金属化合物をその溶液中で加水分解させて、加水分解物を形成させる工程である。

【0051】
環状オリゴマー及び加水分解性の金属化合物を溶解させるのに使用する溶媒としては、特に限定されず、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3-メチルシクロペンタノン、2,6-ジメチルシクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1,4-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジメチロール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソアミル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等の含ハロゲン溶媒等を例示できる。これらの有機溶媒は、一種を単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。例えば、加水分解性の金属化合物を加水分解させるのに好ましく使用できるアルコール類に環状オリゴマーが溶解しにくい場合には、環状オリゴマーを溶解させる能力の高い含ハロゲン溶媒とアルコール類とを組み合わせた混合溶媒を使用すればよい。

【0052】
加水分解性の金属化合物は、メソポーラス金属酸化物を作製するための金属源である。したがって、作製しようとするメソポーラス金属酸化物の種類に応じて、使用する加水分解性の金属化合物を選択する必要がある。例えば、メソポーラス酸化チタンを作製しようとする場合であれば、例えばチタンのアルコキシドやハライド等のような加水分解性のチタン化合物を使用する。

【0053】
加水分解性の金属化合物は、水分又は水酸基の存在下で加水分解を受け、さらに、加水分解を受けた加水分解性の金属化合物同士が、互いに縮合反応を引き起こし、[-金属元素-酸素原子-]という繰り返し単位を有する重合体を形成する。このため、加水分解性の金属化合物は、2以上の加水分解性の置換基を有することが好ましい。このような加水分解性の金属化合物としては、テトラメトキシシラン、トリメトキシシラン、ジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシシラン、ジエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、トリプロポキシシラン、ジプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、ジイソプロポキシシラン、テトラメトキシチタン、トリメトキシチタン、ジメトキシチタン、テトラエトキシチタン、トリエトキシチタン、ジエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、トリプロポキシチタン、ジプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、トリイソプロポキシチタン、ジイソプロポキシチタン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムブトキシド等の金属アルコキシド;ジクロロシラン、テトラクロロシラン、テトラクロロチタン等の金属ハライド等を挙げることができる。これらの加水分解性の金属化合物は、一種を単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。

【0054】
加水分解性の金属化合物を加水分解させる手順としては、一例として、まず、環状オリゴマーを溶媒に溶解させて溶液とし、ついで、この溶液中に加水分解性の金属化合物を加えて混合し、さらに、この溶液に加水分解のための水を加えて混合することが挙げられる。加水分解のために添加される水は、加水分解反応を促進させるために、酸を含むことが好ましい。このような水としては、1N塩酸水溶液、1N硝酸水溶液、1N硫酸水溶液等が例示されるが特に限定されない。

【0055】
溶液中の環状オリゴマーの濃度は、0.001~100mmol/Lの範囲であることが好ましく、0.01~10.0mmolの範囲であることがより好ましい。上記の範囲であれば、良好な比表面積を得ることができるので好ましい。

【0056】
また、溶液中の加水分解性の金属化合物の濃度は、1~500mmol/Lの範囲であることが好ましく、20~50mmol/Lの範囲であることより好ましい。上記の範囲であれば、加水分解の速度を制御することができるので好ましい。

【0057】
また、溶液中の環状オリゴマーと加水分解性の金属化合物とのモル比は、環状オリゴマー/加水分解性の金属化合物のモル比が1.0以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましく、0.1以下であることがさらに好ましく、0.001~0.05であることが最も好ましい。上記の範囲であれば、細孔径と比表面積を良好な範囲で制御することができるので好ましい。

【0058】
溶液中における加水分解性の金属化合物の加水分解が進行するにつれて、溶液中に例えばゲル状の生成物が生じる。このゲル状の生成物は加水分解物である。以下の記載では、一実施態様として加水分解物がゲル状で得られた場合について述べるが、本発明は加水分解物がゲル状であるものに限定されない。加水分解を行う時間は、加水分解性の金属化合物の反応の様子、すなわちゲル状の生成物の生じ具合を観察しながら適宜設定すればよい。加水分解を行う時間の一例として1~48時間程度を挙げることができるが、特に限定されない。

【0059】
上記のように加水分解工程では、溶液に添加した加水分解性の金属化合物が加水分解を受ける。加水分解を受けた加水分解性の金属化合物は、水酸基を生じ、加水分解されて水酸基を生じた別の金属化合物と縮合反応して、[-金属元素-酸素原子-]という繰り返し単位を有する重合体を形成する。このとき、金属元素に配位可能な置換基を複数有する環状オリゴマーを溶液中に共存させておくことが本発明のポイントである。図1を参照しながら、このことを説明する。図1は、本発明のメソポーラス金属酸化物の作製方法を示す模式図である。

【0060】
図1(a)に、本発明で使用される環状オリゴマー1を模式的に示す。環状オリゴマー1は、複数のベンゼン環からなる環状構造12と、当該環状構造12の表面に、金属元素に配位可能な置換基11とを有する。1つの環状オリゴマー1には、金属元素に配位可能な置換基11が複数個含まれる。なお、図1(a)及び(b)では、1つの環状オリゴマー1が1分子の環状オリゴマーを表す。

【0061】
金属元素に配位可能な置換基11は、加水分解性の金属化合物と反応して、結合を生じさせる。これにより、環状オリゴマー1及び加水分解性の金属化合物からなる結合体が生じるが、加水分解性の金属化合物が2以上の加水分解性の置換基を有することにより、結合体に含まれる加水分解性の金属化合物は、さらに他の加水分解性の金属化合物との間で縮合することができる。縮合した加水分解性の金属化合物は、さらに他の加水分解性の金属化合物と縮合することができ、このような縮合反応を次々に繰り返すことにより、[-金属元素-酸素原子-]という繰り返し単位を有する縮合構造2が、環状オリゴマー1から伸張する(図1(b)を参照)。そして、伸張した縮合構造2が他の環状オリゴマー1と結合を生じると、[環状オリゴマー1-縮合構造2-別の環状オリゴマー1]という構造が生じる。

【0062】
また、このような構造に含まれる環状オリゴマー1は、金属元素に配位可能な置換基11を複数有するので、さらに別の加水分解性の金属化合物との間で結合を作ることが可能である。このため、溶液中で加水分解反応が進行するとともに、図1(b)に示すように、環状オリゴマー1の周囲に、縮合構造2からなる網目構造が密に形成される。既に述べたように、縮合構造2は加水分解性の金属化合物に含まれていた金属元素と酸素原子とからなるので、別の見方をすれば、このような構造は、図1(b)の右側に示すように、金属元素と酸素原子とからなる海構造2の中に、島状に環状オリゴマー1が存在する状態となる。加水分解工程の終了によって溶液中に得られたゲル状の生成物3は、このような状態で形成される。

【0063】
こうして得られたゲル状の生成物3は、後述する焼成工程において焼成されることにより、内部に含まれていた環状オリゴマー1が分解されて系外にガスとして放出されるとともに、海構造2が金属酸化物5へと変換される(図1(c))。これにより、複数の微細な空孔4を内部に有する金属酸化物5からなるメソポーラス金属酸化物6が形成される。つまり、本発明において環状オリゴマー1は、微細な空孔4を形成させるための鋳型として使用されたことになる。

【0064】
上記のように、本発明では、金属元素に配位可能な置換基11が加水分解性の金属化合物と強い結合を生じさせるので、加水分解速度の大きな加水分解性の遷移金属化合物を金属源として使用した場合であっても、微細な空孔4を有するメソポーラス金属酸化物6を良好に形成させることができる。これに対して、背景技術の項で述べたような従来の方法では、加水分解速度の大きな加水分解性の遷移金属化合物を金属源として使用すると、その大きな加水分解速度によって微細な空孔がつぶれてしまい、微細な空孔を有するメソポーラス金属酸化物を形成させることができない。

【0065】
また、本発明で使用される環状オリゴマーが複数のベンゼン環からなる環状オリゴマーであることにより、これらのベンゼン環に結合した、金属元素に配位可能な置換基の酸性度が大きくなって環状オリゴマーと加水分解性の金属化合物との結合の形成が促進されるとともに、環状オリゴマーが非重合性の有機分子としては比較的大きなサイズとなり、適度な大きさの空孔を有するメソポーラス金属酸化物を形成させることができる。

【0066】
[焼成工程]
次に、加水分解工程で得られたゲル状物を、焼成によりメソポーラス金属酸化物とする焼成工程について説明する。既に述べたように、この工程では、加熱により、ゲル状物に含まれる金属元素と酸素原子とからなるゲルを金属酸化物とするとともに、ゲル状物に含まれる環状オリゴマーを熱分解して系外に放出させ、生成する金属酸化物の内部に空孔を形成させる。

【0067】
焼成工程では、まず、必要に応じて、加水分解工程において溶液中に生じたゲル状物を溶液から分離させる。溶液中からゲル状物を分離させる方法としては、公知の方法を特に制限なく使用することができる。このような方法の例としては、静置により溶液中のゲル状物を沈降させ、その後、溶液の上澄みをデカンテーションによって除く方法、遠心分離によって溶液からゲル状物を分離させる方法、ろ過によって溶液からゲル状物を分離させる方法等が挙げられるが、限定されない。

【0068】
ゲル状物は、乾燥された後に焼成される。ゲル状物を乾燥させる方法としては、公知の方法を特に制限なく使用することができる。このような方法の例としては、減圧乾燥法、60~100℃にて3~8時間乾燥させる方法等が挙げられるが、限定されない。

【0069】
乾燥させたゲル状物を焼成させる条件は、金属元素と酸素原子とからなるゲルを金属酸化物に変換することができ、かつ、ゲル状物に含まれる環状オリゴマーを熱分解することのできる条件であれば特に限定されない。焼成条件の一例として、ゲル状物を200~600℃で5~10時間加熱する方法が挙げられる。ゲル状物を焼成することによって、目的とするメソポーラス金属酸化物が得られる。

【0070】
作製されたメソポーラス金属酸化物は、数nm~数十nmオーダーの微細な空孔を有するので、それ自身が触媒として好適に使用される他、分離剤、吸着剤、触媒担体としても好適に使用される。

【0071】
上記メソポーラス金属酸化物の作製方法で使用される、金属元素に配位可能な置換基を複数有し、複数のベンゼン環からなる環状オリゴマーは、メソポーラス金属酸化物形成のための補助剤であるともいえる。このため、金属元素に配位可能な置換基を複数有し、複数のベンゼン環からなる環状オリゴマーを主成分とするメソポーラス金属酸化物形成のための補助剤もまた、本発明の一つである。これについては、上記で詳細に説明したので、ここでの説明を省略する。

【0072】
また、金属元素に配位可能な置換基を複数有し、複数のベンゼン環からなる環状オリゴマーの、メソポーラス金属酸化物形成助剤としての使用方法もまた、本発明の一つである。これについても、上記で詳細に説明したので、ここでの説明を省略する。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0074】
[環状オリゴマーの合成]
環状オリゴマーとして、上記一般式(3)で表される化合物を合成した。
まず、50mLの反応容器内で、3-ブトキシフェノール20mL(120mmol、4eq.)をクロロホルム30mLに溶解させた後、トリフルオロ酢酸5mLを添加して撹拌した。氷浴で十分に冷却した後、1,5-ペンタンジアール(化学式:OHC(CHCHO)の50%水溶液6.0g(30mmol、1eq.)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、十分に撹拌し、次いで、油浴で48時間加熱還流した。得られた反応溶液を20倍量のメタノール中に投入して撹拌し、薄黄色の析出物を析出させた後、しばらく静置した。その後、上澄みを除去するとともに新たなメタノールを添加して再度撹拌した。上澄みの除去、メタノールの添加、及び撹拌のサイクルを3回繰り返した後、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで析出物をろ過し、得られた析出物をデシケーター内で乾燥することにより、6gの生成物を得た(収率52%)。なお、得られた生成物は、上記一般式(3)において、それぞれのベンゼン環における2個のRの一方が水素原子となり、他方がブチル基となる化合物である。したがって、得られた生成物は、1分子中に、12個のフェノール性水酸基と、12個のブトキシ基とを有する化合物となる。この化合物の構造は、H-NMR、FT-IR及びMALDI-TOF massスペクトルにより確認された。
【実施例】
【0075】
[メソポーラス酸化チタンの作製]
上記手順で得られた環状オリゴマー、テトライソプロポキシチタン(TIPT)、イソプロパノール(i-PrOH)、クロロホルム(CHCl)及び1N塩酸水溶液(HCl)を表1に示すモル比で混合した。なお、表1中、HOのモル比は、1NHCl水溶液に含まれる水のモル量に基づいて表示し、HClのモル比は、1NHCl水溶液に含まれる塩酸のモル量に基づいて表示した。また、クロロホルムは、環状オリゴマーの溶解を補助する目的で添加した。
混合溶液を静置し、溶液中に生成したゲル状物をろ別により分離した後、80℃で6時間乾燥させた。乾燥させたゲル状物を、空気中、450℃で7時間焼成し、表1に示す実施例1~3のメソポーラス酸化チタンを得た。なお、表1に示すように、実施例1~3のメソポーラス酸化チタンの原料の組成比は、モル比で、環状オリゴマー:TIPT:i-PrOH:CHCl:HO:HCl=x(x=0.01、0.1又は0.5):1:26:8.5:5.5:0.1とした。
【実施例】
【0076】
得られたメソポーラス酸化チタンは、XRDパターンの評価結果から、いずれもアナターゼ型の結晶構造を有することがわかった。また、環状オリゴマーと、焼成前のゲル状物とのそれぞれについて13C-NMRの測定を行ったところ、フェノール性水酸基の結合する炭素原子(芳香環炭素)のケミカルシフトが、TIPTとの反応に伴い約10.6ppm低磁場側へシフトしていた。このようなケミカルシフトの変化は、芳香環炭素がチタンの常磁性の影響を受けたことによりもたらされたものと考えられ、メソポーラス酸化チタンに含まれるフェノール性水酸基とTIPTとが反応して結合を生じたことを示すものと考えられる。
【実施例】
【0077】
作製した実施例1~3のメソポーラス酸化チタンについて、Micromeritics社製のTristar3000型装置を用いて窒素吸脱着量測定を行い、BET法により表面積を、BJH法により細孔径分布をそれぞれ評価した。その結果を表2に示す。また、この評価の際に得られた、実施例1~3のメソポーラス酸化チタンの吸脱着等温線を図2に、実施例1~3のメソポーラス酸化チタンの細孔径分布を示すプロットを図3に、それぞれ示す。
【実施例】
【0078】
【表1】
JP0005610341B2_000015t.gif
【実施例】
【0079】
【表2】
JP0005610341B2_000016t.gif
【実施例】
【0080】
環状オリゴマーのTIPTに対する添加量を0.01、0.1及び0.5mol%(それぞれ実施例1、2及び3に対応)と変化させると、メソポーラス酸化チタンの細孔径分布が、それぞれ、9.6、7.0及び6.8nmを頂点として狭い範囲で分散し、環状オリゴマーの添加量が増加するにつれて比表面積、細孔径ともに減少する傾向が見られた。なお、表2に記載した細孔径の数値は、上記細孔径分布における平均値である。
【実施例】
【0081】
また、図2に示すように、実施例1及び2では、ボトルネック型を示す明瞭なヒステリシスパターンが得られるが、実施例3では他の2つに比べてパターンが崩れている。これは、環状オリゴマーの分子サイズが酸化チタンに比べて大きいために、鋳型である環状オリゴマー間に存在する酸化チタン源が不足し、焼成時に細孔が崩壊したためと考えられる。また、図3に示すように、実施例1のメソポーラス酸化チタンでは、細孔の径が7.7nmを中心に狭い分布となっており、環状オリゴマーによる鋳型効果が強く示唆されている。しかし、環状オリゴマーの添加量が増えるにしたがって、メソポーラス酸化チタンにおける細孔の径が減少するとともに分布も広くなることがわかる。このような観点から、環状オリゴマー/加水分解性の金属化合物のモル比が0.5以下であると好ましく、0.1以下であるとさらに好ましいことがわかる。
【符号の説明】
【0082】
1 環状オリゴマー
11 金属元素に配位可能な置換基
12 複数のベンゼン環からなる環状構造
2 縮合構造
3 ゲル状の生成物
4 空孔
5 金属酸化物
6 メソポーラス金属酸化物
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2