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明細書 :温度制御装置、及び温度素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5822448号 (P5822448)
公開番号 特開2012-055293 (P2012-055293A)
登録日 平成27年10月16日(2015.10.16)
発行日 平成27年11月24日(2015.11.24)
公開日 平成24年3月22日(2012.3.22)
発明の名称または考案の名称 温度制御装置、及び温度素子
国際特許分類 C12M   1/38        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
C12M   1/34        (2006.01)
FI C12M 1/38 Z
C12M 1/00 A
C12M 1/34 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 24
出願番号 特願2010-204833 (P2010-204833)
出願日 平成22年9月13日(2010.9.13)
審査請求日 平成25年7月22日(2013.7.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
発明者または考案者 【氏名】山口 栄雄
【氏名】浅井 宏俊
個別代理人の代理人 【識別番号】100106002、【弁理士】、【氏名又は名称】正林 真之
【識別番号】100120891、【弁理士】、【氏名又は名称】林 一好
審査官 【審査官】高山 敏充
参考文献・文献 電気化学会第77回大会 講演要旨集,2010年 3月26日,pp.451,PS21
Electrochemical and Solid-State Letters,2008年,Vol. 11, No. 4,pp.H103-H106
調査した分野 C12M 1/00-3/10
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
対象物を加熱又は冷却する温度制御装置において、
ペルチェ効果により前記対象物を加熱又は冷却する、複数の温度素子と、
前記温度素子に対する通電制御を行う制御部と
を備え、
前記複数の温度素子の各々は、
相互に離間して配置される第1p型半導体及び第1n型半導体の組と、
前記対象物を装着する装着部を有し、前記第1p型半導体とは第1の面で、前記第1n型半導体とは前記第1の面に対向する第2の面で各々に接合する接合部位と、
前記第1p型半導体に接合され、前記制御部により電圧が印加される第1p側電極部位と、
前記第1n型半導体に接合され、前記制御部により電圧が印加される第1n側電極部位と、
を有し、
前記複数の温度素子の各々の前記第1p側電極部位と前記第1n側電極部位の少なくとも一方が、別の温度素子の前記第1n側電極部位又は前記第1p側電極部位と接続されることによって、前記複数の温度素子の直列接続が構成されており、
前記制御部は、前記直列接続の両端に異なる電圧を印加する第1制御を実行し、その結果、前記複数の温度素子の各々において、前記第1p型半導体と前記第1n型半導体との間に電位差が生じた場合、前記接合部位は、前記第1p型半導体と前記第1n型半導体との一方から他方へ電流を流すと共に熱を伝搬することで、前記ペルチェ効果を生じさせ、
前記複数の温度素子の少なくとも一部は、さらに、
第2p型半導体及び第2n型半導体の組と、
前記第2p型半導体に接合され、前記制御部により電圧が印加される第2p側電極部位と、
前記第2n型半導体に接合され、前記制御部により電圧が印加される第2n側電極部位と、
を有し、
前記接合部位は、前記第2p型半導体とは、前記第1の面及び第2の面とは異なる第3の面で、前記第2n型半導体とは、前記第3の面に対向する第4の面で各々に接合し、
前記制御部は、前記第1制御とは独立して、さらに、前記複数の温度素子の少なくとも一部の各々に対して、前記第2p側電極部位と前記第2n側電極部位とに異なる電圧を印加する第2制御を実行し、
その結果、前記第2p型半導体と前記第2n型半導体との間に電位差が生じた場合、前記接合部位は、前記第2p型半導体と前記第2n型半導体との一方から他方へ電流を流すと共に熱を伝搬することで、前記ペルチェ効果を生じさせる、
温度制御装置。
【請求項2】
前記温度素子の直列接続は、複数存在し、
前記制御部は、複数の前記直列接続の各々を単位として、他の単位とは独立して、前記第1制御及び前記第2制御を実行する、
請求項1に記載の温度制御装置。
【請求項3】
前記対象物は、DNA(Deoxyribonucleic acid)検体収容に用いられる所定の容器であり、
前記装着部は、前記容器を装着すべく加工が施された
請求項1又は2に記載の温度制御装置。
【請求項4】
前記温度素子の前記第1p側電極部位及び前記第1n側電極部位並びに前記第2p側電極部位及び前記第2n側電極部位のうち少なくとも一方を冷却する冷却部
をさらに備える請求項1乃至3の何れか1項に記載の温度制御装置。
【請求項5】
前記温度制御装置は、携帯型の装置である
請求項1乃至4の何れか1項に記載の温度制御装置。
【請求項6】
ペルチェ効果により対象物を加熱又は冷却する温度素子において、
相互に離間して配置される第1p型半導体及び第1n型半導体の組と、
相互に離間して配置される第2p型半導体及び第2n型半導体の組と、
前記対象物を装着する装着部を有し、第1の面で前記第1p型半導体と、前記第1の面と対向する第2の面で前記第1n型半導体と、前記第1の面及び前記第2の面と異なる第3の面で前記第2p型半導体と、前記第3の面と対向する第4の面で第2n型半導体と、それぞれ接合する接合部位と、
前記第1p型半導体に接合され、外部から電圧が印加される第1p側電極部位と、
前記第1n型半導体に接合され、外部から電圧が印加される第1n側電極部位と、
前記第2p型半導体に接合され、外部から電圧が印加される第2p側電極部位と、
前記第2n型半導体に接合され、外部から電圧が印加される第2n側電極部位と、
を備え、
前記第1p側電極部位と前記第1n側電極部位との間に異なる電圧が外部から印加される第1制御が実行されて、前記第1p型半導体と前記第1n型半導体との間に電位差が生じた場合、前記接合部位は、前記第1p型半導体と前記第1n型半導体との一方から他方へ電流を流すと共に熱を伝搬することで、前記ペルチェ効果を生じさせると共に、
前記第2p側電極部位と前記第2n側電極部位との間に異なる電圧が外部から印加される第2制御が、前記第1制御とは独立して実行されて、前記第2p型半導体と前記第2n型半導体との間に電位差が生じた場合、前記接合部位は、前記第2p型半導体と前記第2n型半導体との一方から他方へ電流を流すと共に熱を伝搬することで、前記ペルチェ効果を生じさせる、
温度素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA検体を増幅するPCR法に適用可能な温度制御装置、及び温度素子に関する。特に、PCR法におけるDNA検体に対する温度制御の高応答性を実現可能な温度制御装置、及び温度素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、DNA(Deoxyribonucleic acid、デオキシリボ核酸)を増幅する手法として、PCR法(Polymerase chain Reaction、ポリメラーゼ連鎖反応法)が知られている。PCR法は、DNA検体に対して、当該DNA検体と反応させるプライマ、酵素、及びデオキシリボヌクレオシド三リン酸を加えた反応溶液を、温度目標値の時間推移の所定パターンにしたがって加熱又は冷却する処理を繰り返すことによって、DNAを増幅する手法である。
【0003】
このようなPCR法によりDNAを増幅する従来のDNA増幅装置においては、DNA検体(反応溶液)を加熱又は冷却するために、ペルチェ効果を有する素子(以下、「ペルチェ素子」と称する)が利用されている(特許文献1,2参照)。ペルチェ効果とは、異なる導体、例えばp型半導体とn型半導体との接合に対して電流を流した場合に、その接合部で熱の吸収が発生する現象をいう。
【0004】
図1は、従来のペルチェ素子1の概略構成を示す断面図である。
【0005】
従来のペルチェ素子1は、図1中下方から順に、放熱板21Bと、電圧が印加される電極板23P,23Nと、電極板23Pに接合されるp型半導体24P及び電極板23Nに接合されるn型半導体24Nの組と、この組に接合される電極板22Aと、放熱板21Aとが積層されて構成される。
【0006】
なお、特許文献2においては、電極板23P,23Nに相当する金属板a11,a12と、p型半導体24P及びn型半導体24Nの組に相当するp型半導体a4及びn型半導体a3の組と、電極板22Aに相当する金属板a2とからなるものを、ペルチェ素子と称している(特許文献2の図6参照)。しかしながら、特許文献2でいうペルチェ素子により加熱又は冷却される被温度制御対象は、熱伝導板12,22等を介在して配設されている(特許文献2の図1参照)。即ち、図1において、被温度制御対象は容器31であり、この容器31と電極板22Aとの間に放熱板21Aが介在していることと、特許文献2において、被温度制御対象(容器31に相当)と金属板a2との間に熱伝導板12,22等を介在していることとは等価である。換言すると、特許文献2における熱伝導板12,22等は、図1の放熱板21Aに相当する。同様に、特許文献2における放熱フィン51,52の下面部は、図1の放熱板21Bに相当する。以上まとめると、特許文献2には、図1の従来のペルチェ素子1をそのまま用いて、被温度制御対象に対する温度制御が実行されることが単に開示されているに過ぎない。
【0007】
以下、説明の簡略上、従来のペルチェ素子1の図1中上方の面側の部位、即ち、放熱板21A及び電極板22Aをまとめて、「A面部位」と称する。一方、ペルチェ素子1の図1中下方の面側の部位、即ち、放熱板21B及び電極板23P,23Nをまとめて、「B面部位」と称する。また、電極板23Nを基準として、電極板23Nが高電位になり、電極板23Pが低電位になるように電圧が印加されることを、以下、「従来のペルチェ素子1にプラス電圧が印加される」と表現する。逆に、電極板23Nが低電位になり、電極板23Pが高電位になるように電圧が印加されることを、以下、「従来のペルチェ素子1にマイナス電圧が印加される」と表現する。
【0008】
例えば図1に示すように、DNA検体(反応溶液)が収容された容器31が、従来のペルチェ素子1のA面部位側に、より具体的には、放熱板21Aの表面上に配置されているとする。
【0009】
この場合、従来のペルチェ素子1にプラス電圧が印加されると、電流が、電極板23Nから電極板23Pに向けて流れる。具体的には、電流が、電極板23N、n型半導体24N、電極板22A、p型半導体24P、及び電極板23Pの順に流れる。その結果、A面部位が吸熱部となり、B面部位が発熱部となる。具体的には、従来のペルチェ素子1に印加されたプラス電圧によって、電極板23Nから電極板23Pに向けて流れる電流の値に応じて、A面部位が低温となりB面部位が高温となるような温度差△Tが生ずる。これにより、容器31の熱がA面部位に吸熱され、容器31が冷却される。
【0010】
これに対して、従来のペルチェ素子1にマイナス電圧が印加されると、電流が、プラス電圧が印加された場合とは逆方向に流れる。具体的には、電流が、電極板23P、p型半導体24P、電極板22A、n型半導体24N、及び電極板23Nの順に流れる。その結果、プラス電圧が印加された場合とは逆に、A面部位が発熱部となり、B面部位が吸熱部となる。具体的には、従来のペルチェ素子1に印加されたマイナス電圧の電圧値によって、電極板23Pから電極板23Nに向けて流れる電流の値に応じて、A面部位が高温となりB面部位が低温となるような温度差△Tが生ずる。これにより、A面部位から発せられた熱が容器31に伝搬され、容器31が加熱される。
【0011】
したがって、電極板23Nと電極板23Pとの間に流れる電流の値を、温度目標値の時間推移の所定パターンに対応するように可変制御することによって、PCR法におけるDNA検体に対する温度制御が実現可能になる。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】特開2006-223292号公報
【特許文献2】特開2007-198718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1や2を含む従来のDNA増幅装置を利用した場合、PCR法における温度目標値の時間推移の所定パターンに対して、DNA検体(反応溶液)の温度が十分に追従して推移しない。即ち、特許文献1や2を含む従来のDNA増幅装置では、PCR法におけるDNA検体(反応溶液)に対する温度制御の応答性が十分に得られない。
【0014】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、PCR法におけるDNA検体に対する温度制御の高応答性を実現することを目的とする。
なお、本明細書において、「高応答性」という用語は、応答速度が高速になるという意味で用いるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の温度制御装置(例えば実施形態におけるDNA増幅装置51)は、
対象物(例えば実施形態におけるプラスチックチューブ82)を加熱又は冷却する温度制御装置において、
ペルチェ効果により前記対象物を加熱又は冷却する、複数の温度素子(例えば実施形態における温度素子61-1,61-2)と、
前記温度素子に対する通電制御を行う制御部(例えば実施形態における温度制御部62)と
を備え、
前記複数の温度素子の各々は、
相互に離間して配置される第1p型半導体(例えば実施形態におけるp型半導体72P)及び第1n型半導体(例えば実施形態におけるn型半導体72N)の組と、
前記対象物を装着する装着部(例えば実施形態における装着部81)を有し、前記第1p型半導体とは第1の面で、前記第2n型半導体とは前記第1の面に対向する第2の面で各々に接合する接合部位(例えば実施形態における金属製ウェル71)と、
前記第1p型半導体に接合され、前記制御部により電圧が印加される第1p側電極部位(例えば実施形態における電極兼放熱板73P)と、
前記第1n型半導体に接合され、前記制御部により電圧が印加される第1n側電極部位(例えば実施形態における電極兼放熱板73N)と、
を有し、
前記複数の温度素子の各々の前記第1p側電極部位と前記第1n側電極部位の少なくとも一方が、別の温度素子の前記第1n側電極部位又は前記第1p側電極部位と接続されることによって、前記複数の温度素子の直列接続が構成されており、
前記制御部は、前記直列接続の両端に異なる電圧を印加する第1制御(例えば実施形態におけるメイン温度制御)を実行し、その結果、前記複数の温度素子の各々において、前記第1p型半導体と前記第1n型半導体との間に電位差が生じた場合、前記接合部位は、前記第1p型半導体と前記第1n型半導体との一方から他方へ電流を流すと共に熱を伝搬することで、前記ペルチェ効果を生じさせ、
前記複数の温度素子の少なくとも一部(例えば実施形態における温度素子61-2)は、さらに、
第2p型半導体(例えば実施形態におけるp型半導体172P)及び第2n型半導体(例えば実施形態におけるn型半導体172N)の組と、
前記第2p型半導体に接合され、前記制御部により電圧が印加される第2p側電極部位(例えば実施形態における電極兼放熱板173P)と、
前記第2n型半導体に接合され、前記制御部により電圧が印加される第2n側電極部位(例えば実施形態における電極兼放熱板173N)と、
を有し、
前記接合部位は、前記第2p型半導体とは、前記第及び第2の面とは異なる第3の面で、前記第2n型半導体とは、前記第3の面に対向する第4の面で各々に接合し、
前記制御部は、前記第1制御とは独立して、さらに、前記複数の温度素子の少なくとも一部の各々に対して、前記第2p側電極部位と前記第2n側電極部位とに異なる電圧を印加する第2制御(例えば実施形態におけるサブ温度制御)を実行し、
その結果、前記第2p型半導体と前記第2n型半導体との間に電位差が生じた場合、前記接合部位は、前記第2p型半導体と前記第2n型半導体との一方から他方へ電流を流すと共に熱を伝搬することで、前記ペルチェ効果を生じさせる、
温度制御装置であることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、温度素子に設けられた接合部位は、p型半導体とn型半導体と直接接合し、p型半導体とn型半導体の一方から他方へ電流を流すと共に熱を伝搬することで、ペルチェ効果を生じさせる機能を有している。この接合部位には装着部が設けられており、DNA検体を収容した所定の容器を当該装着部に直接装着することができる。したがって、DNA検体は、温度制御系にとって遅れ要素となるもの(例えば図1の従来のペルチェ素子1の放熱板21A)を介在せずに、接合部位により直接加熱又は冷却される。その結果、従来のペルチェ素子1を採用した場合と比較して、温度制御の高応答性が実現する。
【0017】
さらに、直列接続された複数の温度素子に対して一斉に温度を制御する第1制御とは独立して、複数の温度素子の少なくとも一部の各々に対して個別に温度を制御する第2制御が実行される。
これにより、複数の温度素子間のバラつきの影響を吸収して、複数の温度素子の各々の温度変化を略同一にすることが可能になる。
【0018】
この場合、前記対象物は、DNA(Deoxyribonucleic acid)検体収容に用いられる所定の容器であり、前記装着部には、前記容器が装着されることになる。
【0019】
この発明をPCR法に適用することで、その温度目標値の時間推移の所定パターンに対して、DNA検体の温度を追従させて推移させることが可能になる。即ち、PCR法におけるDNA検体に対する温度制御の高応答性が実現可能になる。
【0020】
また、この場合、前記温度素子の前記第1p側電極部位及び前記第1n側電極部位並びに前記第2p側電極部位及び前記第2n側電極部位のうち少なくとも一方を冷却する冷却部(例えば実施形態における水冷部63)をさらに備えるようにしてもよい。
【0021】
さらにまた、この場合、前記温度制御装置は、携帯型の装置であるようにしてもよい。携帯型の装置とは、人間が自在に持ち運び可能に構成された装置をいう。
【0022】
本発明の温度素子(例えば実施形態における温度素子61)は、
ペルチェ効果により対象物(例えば実施形態におけるプラスチックチューブ82)を加熱又は冷却する温度素子において、
相互に離間して配置される第1p型半導体(例えば実施形態におけるp型半導体72P)及び第1n型半導体(例えば実施形態におけるn型半導体72N)の組と、
相互に離間して配置される第2p型半導体(例えば実施形態におけるp型半導体172P)及び第2n型半導体(例えば実施形態におけるn型半導体172N)の組と、
前記対象物を装着する装着部(例えば実施形態における装着部81)を有し、第1の面で前記第1p型半導体と、前記第1の面と対向する第2の面で前記第1n型半導体と、前記第1の面及び前記第2の面と異なる第3の面で前記第2p型半導体と、前記第3の面と対向する第4の面で第2n型半導体と、それぞれ接合する接合部位(例えば実施形態における金属製ウェル71)と、
前記第1p型半導体に接合され、外部から電圧が印加される第1p側電極部位(例えば実施形態における電極兼放熱板73P)と、
前記第1n型半導体に接合され、外部から電圧が印加される第1n側電極部位(例えば実施形態における電極兼放熱板73N)と、
前記第2p型半導体に接合され、外部から電圧が印加される第2p側電極部位(例えば実施形態における電極兼放熱板173P)と、
前記第2n型半導体に接合され、外部から電圧が印加される第2n側電極部位(例えば実施形態における電極兼放熱板173N)と、
を備え、
前記第1p側電極部位と前記第2n側電極部位との間に異なる電圧が外部から印加される第1制御(例えば実施形態におけるメイン温度制御)が実行されて、前記第1p型半導体と前記第1n型半導体との間に電位差が生じた場合、前記接合部位は、前記第1p型半導体と前記第1n型半導体との一方から他方へ電流を流すと共に熱を伝搬することで、前記ペルチェ効果を生じさせると共に、
前記第2p側電極部位と前記第2n側電極部位との間に異なる電圧が外部から印加される第2制御(例えば実施形態におけるサブ温度制御)が、前記第1制御とは独立して実行されて、前記第2p型半導体と前記第2n型半導体との間に電位差が生じた場合、前記接合部位は、前記第2p型半導体と前記第2n型半導体との一方から他方へ電流を流すと共に熱を伝搬することで、前記ペルチェ効果を生じさせる
温度素子であることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、温度素子に設けられた接合部位は、p型半導体とn型半導体と直接接合し、p型半導体とn型半導体の一方から他方へ電流を流すと共に熱を伝搬することで、ペルチェ効果を生じさせる機能を有している。この接合部位には装着部が設けられており、冷却又は加熱の対象物を当該装着部に直接装着することができる。したがって、当該対象物は、温度制御系にとって遅れ要素となるもの(例えば図1の従来のペルチェ素子1の放熱板21A)を介在せずに、接合部位により直接加熱又は冷却される。その結果、従来のペルチェ素子1を採用した場合と比較して、温度制御の高応答性が実現する。したがって、本発明に係る温度素子をPCR法に適用することで、即ち、当該対象物としてDNA検体を収容可能な所定の容器を採用することで、PCR法における温度目標値の時間推移の所定パターンに対して、DNA検体の温度を追従させて推移させることが可能になる。即ち、PCR法におけるDNA検体に対する温度制御の高応答性が実現可能になる。
【0024】
さらに、このような温度素子を直列接続して用いた場合には、直列接続された複数の温度素子に対して一斉に温度を制御する第1制御と、複数の温度素子の少なくとも一部の各々に対して個別に温度を制御する第2制御との相互に独立した実行が可能になる。これにより、複数の温度素子間のバラつきの影響を吸収して、複数の温度素子の各々の温度変化を略同一にすることが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、PCR法におけるDNA検体に対する温度制御の高応答性が実現可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来のペルチェ素子の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るDNA増幅装置の概略構成を示す上面図である。
【図3】図2のDNA増幅装置の温度素子の金属製ウェルの概略構成を示す斜視図である。
【図4】図2のDNA増幅装置の温度素子であって、p型半導体及びn型半導体の2組が並列に配置される場合の温度素子の概略構成を示す上面図である。
【図5】図4の温度素子の概略構成の斜視図である。
【図6】図4の温度素子の概略構成であって、図5とは異なる構成の斜視図である。
【図7】図2のDNA増幅装置の温度素子であって、p型半導体及びn型半導体の2組が直列に配置される場合の温度素子の概略構成を示す上面図である。
【図8】図7の温度素子の概略構成の斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るDNA増幅装置の概略構成であって、図2とは異なる概略構成を示す上面図である。
【図10】同一条件によるPCR法の試験を行うに際し、図9に示す直列接続された2つの温度素子の各々に対して温度制御を行った結果を示す図である。
【図11】同一条件のPCR法の試験を、図1の従来のペルチェ素子を備える従来のDNA増幅装置を用いて実現した場合と、図2のDNA増幅装置を用いて実現した場合との比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。

【0028】
図2は、本発明の一実施形態に係るDNA増幅装置51の概略構成を示す上面図である。

【0029】
DNA増幅装置51は、温度素子61と、温度制御部62と、水冷部63とを備える。温度素子61は、ペルチェ効果により対象物を冷却又は加熱すべく、金属製ウェル71と、p型半導体72P及びn型半導体72Nの組と、電極兼放熱板73P,73Nと、水管74P,74Nとを備える。

【0030】
図2に示すように、電極兼放熱板73Pには水管74Pが、電極兼放熱板73Nには水管74Nが、それぞれ接続されている。水冷部63は、水管74P,74Nの各々に水を流すことで、電極兼放熱板73P,73Nの各々を冷却して一定温度に保つ。即ち、電極兼放熱板73P,73Nは、図1の従来のペルチェ素子1の放熱板21Bと同様の機能(以下、「放熱板機能」と称する)を有している。

【0031】
さらに、電極兼放熱板73P,73Nの各々は、温度制御部62と電気的に接続されており、温度制御部62により電圧が印加される。即ち、電極兼放熱板73Pは、図1の従来のペルチェ素子1の電極板23Pと同様の機能を有し、電極兼放熱板73Nは、図1の従来のペルチェ素子1の電極板23Nと同様の機能を有している。なお、以下、これらの機能を「電圧被印加機能」と称する。詳細については後述するが、電極兼放熱板73P,73Nに印加される電圧の極性(電流の極性)及び電流値が温度制御部62により制御されることによって、温度素子61を用いた温度制御が実現される。

【0032】
電極兼放熱板73P,73Nは、放熱板機能及び電圧被印加機能を有していれば、その素材や構造等は任意でよい。ただし、放熱板機能及び電圧被印加機能をより発揮すべく、電極兼放熱板73P,73Nの素材としては、熱伝導率が高く、かつ、電気抵抗が小さい素材が好適である。本実施形態では、このような素材として銅(Cu)が採用されている。

【0033】
電極兼放熱板73Pにはp型半導体72Pの一端が接合されている一方で、電極兼放熱板73Nにはn型半導体72Nの一端が接合されている。即ち、p型半導体72Pは、図1の従来のペルチェ素子1のp型半導体24Pと同様の機能を有し、n型半導体72Nは、図1の従来のペルチェ素子1のn型半導体24Nと同様の機能を有している。

【0034】
p型半導体72P及びn型半導体72Nの組は、ペルチェ効果を奏すれば、その素材や構造等は任意でよい。ただし、本実施形態では、p型半導体72P及びn型半導体72Nの組の素材として、より大きなペルチェ効果が得られるビスマステルが採用されている。

【0035】
p型半導体72Pの他端は、金属製ウェル71の側面71aに直接接合されている一方で、n型半導体72Nの他端は、金属製ウェル71の側面71aに対向する側面71bに直接接合されている。

【0036】
ここで、本明細書において「直接接合」又は「直接装着」という用語は、温度制御系にとって遅れ要素となるもの(例えば図1の従来のペルチェ素子1の放熱板21A)を介在しない接合又は装着を意味する。したがって、当然ながら、p型半導体72P及びn型半導体72Nの組と、金属製ウェル71との間には、両者を接合する目的の素材が介在する場合があり得る。具体的には例えば、本実施形態では、p型半導体72P及びn型半導体72Nの組は、その表面がニッケルでメッキされ、さらに、GaIn等の低融点合金によって、金属製ウェル71と接合される。即ち、本実施形態では、両者を接合する目的の素材として、メッキ用のニッケルと、低融点合金とが採用されている。なお、本実施形態の接合手法は例示に過ぎず、その他例えば、ニッケル以外の金属でメッキする接合手法、二重にメッキする接合手法、低融点合金として他の材料を採用する接合手法、低融点合金の代わりに半田付けにより接合する接合手法等、各種各様の接合手法を採用することが可能である。

【0037】
換言すると、金属製ウェル71は、p型半導体72P及びn型半導体72Nの組を直接接合する機能、即ち、図1の従来のペルチェ素子1の電極板22Aと同様の機能を有している。即ち、当該機能とは、p型半導体72Pとn型半導体72Nとの一方から他方へ、電流を流すと共に熱を伝搬することで、ペルチェ効果を生じさせる機能である。なお、以下、当該効果を、「ブリッジ兼電極機能」と称する。

【0038】
金属製ウェル71は、ブリッジ兼電極機能を有していれば、その素材や構造等は任意でよい。ただし、金属製ウェル71は、ブリッジ兼電極機能をより発揮するために、電気抵抗が小さい素材が採用されると好適であり、例えば銅(Cu)やアルミニウム(Al)が採用されると好適である。なお、ここでいうアルミニウムとは、純アルミニウムのみならず、アルミニウム合金も含んでいる。本実施形態では、所定のアルミニウム合金が採用されている。

【0039】
ここで注目すべき点は、金属製ウェル71の上面71uには、加熱又は冷却の対象物を直接装着する装着部81が設けられている点である。

【0040】
図3は、このような装着部81を有する金属製ウェル71の概略構成を示す図である。具体的には、図3Aは、装着部81に直接装着される対象物の一例であるプラスチックチューブ82の概略構成を示す側面図である。図3Bは、このようなプラスチックチューブ82を直接装着可能な装着部81を有する金属製ウェル71の概略構成を示す斜視図である。なお、図3に示す各種寸法(mmが記載されている箇所)は、本実施形態で採用されている寸法であって例示にしか過ぎない。

【0041】
本実施形態では、温度素子61はDNA増幅装置51に備えられているため、温度素子61により加熱又は冷却される対象物は、正確にいうと、DNA検体(反応溶液)である。しかしながら、DNA検体(反応溶液)は、直接的な加熱又は冷却が困難であるので、図3Aに示すようなプラスチックチューブ82に収容されて加熱又は冷却される。したがって、以下の説明では、加熱又は冷却の対象物は、DNA検体(反応溶液)収容に用いられるプラスチックチューブ82であるとする。

【0042】
図3Bに示すように、このようなプラスチックチューブ82の下側部分(図3A中12mmという寸法が記載されている部分)の形状に合わせた凹部が、装着部81として、金属製ウェル71の上面71uの中央から内部下方に形成されている。換言すると、装着部81は、プラスチックチューブ82を装着すべく加工が施されている。

【0043】
このように、本実施形態では、DNA検体(反応溶液)収容に用いられるプラスチックチューブ82は、装着部81に直接装着される。このことは、図1の従来のペルチェ素子1を例えとして用いているならば、容器31がプラスチックチューブ82に相当し、電極板22Aがブリッジ兼電極機能を有していることを考慮すると、容器31が放熱板21Aを介在せずに電極板22Aの内部に直接装着されるのと等価であることを意味する。

【0044】
即ち、図1の従来のペルチェ素子1を用いて容器31を加熱又は冷却する場合、容器31は、放熱板21Aを介在して、ブリッジ兼電極機能を有する電極板22Aと熱の授受を行うことになる。したがって、従来のペルチェ素子1を用いて容器31を加熱又は冷却するための温度制御系では、セラミック等で形成される放熱板21Aは遅れ要素となる。この遅れ要素の分だけ、図1の従来のペルチェ素子1を用いた温度制御の応答性は悪化することになる。

【0045】
これに対して、本実施形態の温度制御系、即ち、温度素子61を用いてプラスチックチューブ82を加熱又は冷却する温度制御系では、プラスチックチューブ82は、従来の放熱板21Aのような遅れ要素となるものを介在せずに、ブリッジ兼電極機能を有する金属製ウェル71と直接熱を授受することができる。したがって、遅れ要素が無い分だけ、本実施形態の温度制御の応答性は、図1の従来のペルチェ素子1を用いた場合と比較して高いものになる。なお、このような効果の詳細については、図11を参照して後述する。

【0046】
次に、以上のDNA増幅装置51の動作について説明する。

【0047】
上述のごとく、機能的な視点では、本実施形態の電極兼放熱板73P,73Nは、放熱板機能及び電圧被印加機能を有するので、図1の従来のペルチェ素子1の放熱板21B及び電極板23P,23Nに相当する。したがって、電極兼放熱板73P,73Nは、従来のペルチェ素子1のB面部位と同じ振る舞いをする。そこで、以下、電極兼放熱板73P,73Nを、本実施形態の温度素子61における「B面部位」と適宜称する。

【0048】
一方、機能的な視点では、金属製ウェル71は、ブリッジ兼電極機能を有するので、上述のごとく、図1の従来のペルチェ素子1の電極板22Aに相当する。したがって、金属製ウェル71は、従来のペルチェ素子1のA面部位と同じ振る舞いをする。そこで以下、金属製ウェル71を、本実施形態の温度素子61における「A面部位」と適宜称する。ここで、注意すべき点は、本実施形態の温度素子61におけるA面部位には、従来のペルチェ素子1におけるA面部位の放熱板21Aのような、温度制御系にとって遅れ要素となるものは存在しない点である。

【0049】
また、本実施形態では、電極兼放熱板73Nの側を基準として、電極兼放熱板73Nが高電位になり、電極兼放熱板73Pが低電位になるように、温度制御部62により電圧が印加されることを、以下、「温度素子61にプラス電圧が印加される」と表現する。逆に、電極兼放熱板73Nが低電位になり、電極兼放熱板73Pが高電位になるように、温度制御部62により電圧が印加されることを、以下、「温度素子61にマイナス電圧が印加される」と表現する。

【0050】
この場合、温度制御部62により、温度素子61にプラス電圧が印加されると、電流が、図2中右方から左方に流れる。具体的には、電流が、電極兼放熱板73N、n型半導体72N、金属製ウェル71、p型半導体72P、及び電極兼放熱板73Pの順に流れる。その結果、A面部位である金属製ウェル71が吸熱部となる。即ち、A面部位である金属製ウェル71に直接装着されたプラスチックチューブ82(図3)から発せられた熱は、金属製ウェル71に直接吸熱され、これにより、プラスチックチューブ82が冷却される。

【0051】
詳細には、温度素子61に印加されたプラス電圧により流れる電流の値(絶対値)に応じて、A面部位である金属製ウェル71が低温となり、B面部位である電極兼放熱板73P,73Nが高温となるような温度差△Tが生ずる。

【0052】
ここで、A面部位が低温とは、絶対的な意味で低温というのではなく、B面部位の温度に対して相対的に低温という意味である。即ち、上述したように、B面部位である電極兼放熱板73P,73Nは、水冷部63により水冷されて一定温度を保っている。以下、このようなB面部位である電極兼放熱板73P,73N側の一定温度を、「基準温度」と称する。したがって、A面部位である金属製ウェル71は、基準温度よりも温度差△Tだけ低い温度になるように冷却される。

【0053】
この温度差△Tは、一定のリミットは存在するものの、温度素子61に印加されるプラス電圧により流れる電流の値(絶対値)が高くなるほど大きくなる。したがって、温度制御部62は、このような電流の値(絶対値)を徐々に大きくすることによって、温度差△Tを徐々に大きくしていくこと、即ち、A面部位である金属製ウェル71の温度を徐々に降下させることができる。この場合、プラスチックチューブ82は金属製ウェル71により直接冷却されるので、従来の図1の放熱板21Aのような遅れ要素を介して冷却される場合と比較して、温度制御の応答性は高いものになる。即ち、本実施形態では温度制御の目標値は電流値として温度制御部62により与えられるので、温度制御の目標値に対する対象物(プラスチックチューブ82)の温度降下の追従性は高いものになる。

【0054】
その後、温度制御部62により出力電圧の極性が反転された場合、即ち、温度素子61にマイナス電圧が印加された場合、電流が、プラス電圧が印加された場合とは逆方向の図2中左方から右方に流れる。具体的には、電流が、電極兼放熱板73P、p型半導体72P、金属製ウェル71、n型半導体72N、及び電極兼放熱板73Nの順に流れる。その結果、A面部位である金属製ウェル71は、今度は発熱部となる。即ち、A面部位である金属製ウェル71から発せられた熱は、プラスチックチューブ82に対して直接伝播され、これにより、プラスチックチューブ82が加熱される。

【0055】
詳細には、温度素子61にマイナス電圧が印加されると、A面部位である金属製ウェル71は、基準温度よりも温度差△Tだけ高い温度になるように加熱される。この温度差△Tは、一定のリミットは存在するものの、温度素子61に印加されるマイナス電圧によって流れる電流の値(絶対値)が高くなるほど大きくなる。したがって、温度制御部62は、このような電流の値(絶対値)を徐々に大きくすることによって、温度差△Tを徐々に大きくしていくこと、即ち、A面部位である金属製ウェル71の温度を徐々に上昇させることができる。この場合、プラスチックチューブ82は金属製ウェル71により直接加熱されるので、従来の図1の放熱板21Aのような遅れ要素を介して加熱される場合と比較して、温度制御の応答性は高いものになる。即ち、ここでは温度制御の目標値が電流値として温度制御部62により与えられるので、温度制御の目標値に対する対象物(プラスチックチューブ82)の温度上昇の追従性は高いものになる。

【0056】
このように、温度制御部62は、出力電圧の極性(電流の極性)及び電流値を変化させることで、温度素子61を用いたプラスチックチューブ82に対する温度制御を実行することが可能になる。したがって、温度目標値の時間推移の所定パターンとして、出力電流の時間推移の所定パターンが温度制御部62に与えられることにより、PCR法が容易に実現可能になる。即ち、プラスチックチューブ82に収納されたDNA検体(反応溶液)が、当該所定パターンにしたがって変化する温度素子61の熱サイクルにより加熱又は冷却され、その結果、DNAが増幅する。

【0057】
なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。

【0058】
例えば、p型半導体及びn型半導体の組の個数は、図2の実施形態ではp型半導体72P及びn型半導体72nの組といった1組だけとされていたが、これに限定されず、複数組とすることができる。

【0059】
例えば、図4乃至図8に示すように、p型半導体72P1及びn型半導体72N1の第1組と、p型半導体72P2及びn型半導体72N2の第2組といった2組を採用することもできる。

【0060】
図4は、このような第1組及び第2組が並列に配置される場合の温度素子61の概略構成を示す上面図である。図5は、当該温度素子61の概略構成の斜視図である。図6は、当該温度素子61の概略構成であって、図5とは異なる構成の斜視図である。ただし、図5及び図6においては、電極兼放熱板73P,73Nの図示は省略されている。なお、図5と図6との構成を個々に区別する必要がある場合、図5の構成の温度素子61を特に「温度素子61a」と称し、図6の構成の温度素子61を特に「温度素子61b」と称する。

【0061】
図4に示すように、第1組のp型半導体72P1及び第2組のp型半導体72P2は、一端が電極兼放熱板73Pに接合され、他端が金属製ウェル71の側面71aに接合される。一方、第1組のn型半導体72N1及び第2組のn型半導体72N2は、一端が電極兼放熱板73Nに接合され、他端が金属製ウェル71の側面71bに接合される。

【0062】
このような第1組と第2組との配置の関係は、並列であれば特に限定されず、例えば図5の温度素子61aにおいては垂直方向に第1組と第2組とがそれぞれ配置され、例えば図6の温度素子61bにおいては水平方向に第1組と第2組とがそれぞれ配置される。また、組の並列数は、図4乃至図6に示す第1組及び第2組の2組に特に限定されず、3組以上であってもよい。

【0063】
図7は、このような第1組及び第2組が直列に配置される場合の温度素子61の概略構成を示す上面図である。図8は、当該温度素子61の概略構成を示す斜視図である。ただし、図8においては、電極兼放熱板73P,73N,73PNの図示は省略されている。

【0064】
これらの第1組と第2組とを直列に接合する場合、第1組と第2組との各々の電流が、他組の電流と混在せずに、相互に独立して流れる必要がある。このため、図7や図8に示すように、金属製ウェル71の側面71aから側面71bに至って、金属製ウェル71を分断するように絶縁物91が挿入される。これにより、金属製ウェル71は、2つの領域101,102に区分される。

【0065】
図7や図8の実施形態では、第1組は領域101に接合され、第2組は領域102に接合される。具体的には、第1組については、n型半導体72N1が、金属製ウェル71の側面71aの領域101側に接合され、p型半導体72P1が、金属製ウェル71の側面71bの領域101側に接合される。これとは逆に、第2組については、p型半導体72P2が、金属製ウェル71の側面71aの領域102側に接合され、n型半導体72N2が、金属製ウェル71の側面71bの領域102側に接合される。

【0066】
この場合、第1組のn型半導体72N1及び第2組のp型半導体72P2に対して電圧が印加されるので、第1組のn型半導体72N1に対して電極兼放熱板73Nが接合され、第2組のp型半導体72P2に対して電極兼放熱板73Pが接合される。また、第1組と第2組とを直列に接合すべく、即ち、第1組のp型半導体72P1と第2組のn型半導体72N2の一方から他方へ電流を流すべく、第1組のp型半導体72P1及び第2組のn型半導体72N2に対して、電極兼放熱板73PNが接合される。

【0067】
これらの第1組と第2組との配置の関係は、電気的に絶縁されている領域101,102の金属製ウェル71内の形成位置に依存する。例えば図8の例では、左右方向に領域101,102がそれぞれ形成されているので、水平方向に第1組と第2組とがそれぞれ配置される。例えば図示はしないが、上下方向に領域101,102がそれぞれ形成されている場合には、垂直方向に第1組と第2組とがそれぞれ配置される。換言すると、領域101,102の金属製ウェル71内での形成位置を任意に変更することで、それに応じて、第1組と第2組との配置の関係も任意に変更することができる。

【0068】
また、組の直列数は、図7や図8に示す第1組及び第2組の2組に特に限定されず、3組以上であってもよい。ただし、この場合、金属製ウェル71には、電気的に絶縁されている領域が組数分だけ形成される。そして、複数の領域毎に、側面71aにp型半導体72Pを接合して側面71bにn型半導体72Nを接合する組と、側面71aにn型半導体72Nを接合して側面71bにp型半導体72Pを接合する組とが交互に配置される。そして、側面71aに接合された所定の組のn型半導体72Nに対して電極兼放熱板73Nが接合され、側面71aに接合された別の組のp型半導体72Pに対して電極兼放熱板73Pが接合される。また、電極兼放熱板73PNのような複数の組を直列に接合するための電極兼放熱板も1つ以上設けられる。

【0069】
以上、本発明の実施形態として、p型半導体及びn型半導体の組の視点で幾つかの実施形態について説明した。当然ながら、その他の視点でも、本発明は様々な実施形態を取ることが可能である。

【0070】
例えば、温度素子61の基準温度を維持するための電極兼放熱板の冷却手法は、図2の実施形態では水冷部63による水冷式の手法が採用されていたが、これに限定されず、その他例えば、水以外の液体を使用した冷却手法を採用してもよいし、空冷式の手法を採用してもよい。

【0071】
また例えば、温度素子61により冷却又は加熱される対象物は、図2の実施形態ではプラスチックチューブ82、より正確にはそれに収納されたDNA検体(反応溶液)とされていたが、金属製ウェル71の装着部81に直接装着可能な物体であれば特に限定されない。換言すると、金属製ウェル71の装着部81の形状や個数は、図3の例に特に限定されず、冷却又は加熱の対象物体に応じて任意に変更することが可能である。ただし、この場合、装着部81は、対象物の形状に対応した加工が施されて、金属製ウェル71内に形成されていると、対象物に対する加熱又は冷却の応答性がさらに一段と高まるので好適である。

【0072】
また例えば、複数のプラスチックチューブ82を加熱又は冷却すべく、複数の金属製ウェル71を接続してもよいし、或いはまた、金属製ウェル71に形成させる装着部81の数を複数にしてもよい。即ち、図2の実施形態では温度素子61の個数は1つとされていたが、これに限定されず、その他例えば、各金属製ウェル71を1以上含む温度素子61を複数用意し、複数の温度素子61を連結して用いることもできる。

【0073】
具体的には例えば、図9に示すように、温度素子61-1と温度素子61-2とを直列に接続することもできる。

【0074】
図9は、2つの温度素子61-1,61-2が直列に接続される場合の本発明の一実施形態に係るDNA増幅装置51の概略構成を示す上面図である。

【0075】
DNA増幅装置51は、2つの温度素子61-1,61-2と、温度制御部62と、水冷部63とを備える。

【0076】
2つの温度素子61-1,61-2の各々は、ペルチェ効果により対象物を冷却又は加熱すべく、金属製ウェル71と、p型半導体72P及びn型半導体72Nの組と、電極兼放熱板73P,73Nと、水管74P,74Nと備える。
ここまでの2つの温度素子61-1,61-2の各構成は、図2の実施形態の温度素子61と基本的に同様である。よって、これらの構成については、その説明は省略する。

【0077】
温度素子61-2はさらに、p型半導体172P及びn型半導体172Nの組と、電極兼放熱板173P,173Nと、水管174P,174Nとを備える。

【0078】
電極兼放熱板173Pには水管174Pが、電極兼放熱板73Nには水管174Nが、それぞれ接続されている。
水冷部63は、水管174P,174Nの各々に水を流すことで、電極兼放熱板173P,173Nの各々を冷却して一定温度に保つ。
即ち、電極兼放熱板173P,173Nは、図1の従来のペルチェ素子1の放熱板21Bと同様の機能を有している。

【0079】
温度制御部62は、メイン制御部62aと、サブ制御部62bとを備える。

【0080】
メイン制御部62aは、直列接続された温度素子61-1,61-2の各々を用いた温度制御を行う。
詳細には、温度素子61-1の電極兼放熱板73Nと温度素子61-2の電極兼放熱板73Pとは電気的に直接接続されている。そして、温度素子61-1の電極兼放熱板73Pと、温度素子61-2の電極兼放熱板73Nの各々の間には、温度制御部62が電気的に接続されている。
したがって、温度制御部62は、電極兼放熱板73P,73Nに印加する電圧の極性(電流の極性)及び電流値を制御することによって、温度素子61-1,61-2の各々を用いた温度制御を行うことができる。このようなメイン制御部62aにより行われる温度制御を、以下、「メイン温度制御」と呼ぶ。
このように、温度制御部62は、メイン温度制御を行うことにより、温度素子61-1と温度素子61-2の各々の加熱又は冷却を同時に行うことができる。

【0081】
ここで、温度素子61-2において、p型半導体72Pとn型半導体72Nとの組は、メイン温度制御が行われる場合の電流が流れる経路になる。そこで、以下、p型半導体72Pとp型半導体72Nとの組を、「メイン半導体組」と呼ぶ。即ち、メイン制御部62aは、複数のメイン半導体組の直列接続に流れる電流を制御することによって、メイン温度制御を実行する。

【0082】
これに対して、サブ制御部62bは、p型半導体172Pとn型半導体172Nとの組に流れる電流を制御することによって、温度素子61-2を用いた温度制御を、メイン温度制御とは独立かつ並行して行うことができる。
このようなサブ制御部62bにより行われる温度制御を、以下、「サブ温度制御」と呼ぶ。
また、温度素子61-2において、p型半導体172Pとn型半導体172Nとの組は、サブ制御部62bによってサブ温度制御が行われる場合の電流が流れる経路になる。そこで、以下、p型半導体172Pとp型半導体172Nとの組を、「サブ半導体組」と呼ぶ。

【0083】
詳細には、温度素子61-2において、p型半導体172Pの一端は、金属製ウェル71の側面71a及び側面71bに直交する側面71cに直接接合されている一方で、n型半導体172Nの一端は、金属製ウェル71の側面71cに対向する側面71dに直接接合されている。
また、p型半導体172Pの他端は電極兼放熱板173Pに直接接合されている一方で、n型半導体172Nの他端は電極兼放熱板173Nに直接接合されている。
そして、温度素子61-2の電極兼放熱板173P,173Nの各々の間には、サブ制御部62bが電気的に接続されている。
したがって、サブ制御部62bが、電極兼放熱板173P,173Nに印加する電圧の極性(電流の極性)及び電流値を制御することによって、サブ温度制御として、温度素子61-2を用いた温度制御を、メイン温度制御とは独立かつ並行に行うことができる。即ち、サブ制御部62aは、サブ温度制御を行うことにより、メイン温度制御とは独立かつ並行に、温度素子61-2の加熱又は冷却を行うことができる。

【0084】
ここで、メイン制御部62aによるメイン制御のみが行われ、サブ制御部62bによるサブ制御が禁止されている状態を想定する。
この状態では、温度素子61-1と温度素子61-2との目標温度が同一であった場合であっても、温度素子61-1と温度素子61-2とが異なる温度となる場合がある。
メイン制御部62aの入出力電流だけに着目すると、複数のメイン半導体組の直列接続に流れる電流は同一極性の同一電流値となっているようにみえるが、実際には、各温度素子61-1,61-2間の個体差や臨界抵抗値等の相違により、各温度素子61-1,61-2の各々に流れている電流の電流値が異なっているからである。
そこで、本実施形態では、サブ制御部62bが、サブ温度制御を行うことで、即ち、メイン温度制御により流れる電流とは独立かつ並行に温度素子61-2に流れる電流を制御し、その結果として、温度素子61-1,61-2の各々に流れている電流の電流値を略一致させる。
このように、メイン制御部62aによるメイン制御のみならず、サブ制御部62bによるサブ制御によって温度素子61-2に流れる電流を微調整することで、各温度素子61-1,61-2の各々に流れている電流の電流値を略一致させ、その結果、温度素子61-1と温度素子61-2との温度を略一致させることが可能になる。なお、このような効果の詳細について、図10を参照して説明する。

【0085】
図10は、同一条件によるPCR法の試験を行うに際し、図9に示す直列接続された2つの温度素子61-1,61-2の各々に対して温度制御を行った結果を示す図である。

【0086】
図10Aは、サブ制御部62bによるサブ制御が禁止されている状態で、メイン制御部62aによるメイン制御のみが行われた場合における、温度素子61-1,61-2の各々におけるDNA検体(反応溶液)の温度の時系列変化を示す図である。
図10Bは、メイン制御部62aによるメイン制御と、サブ制御部62bによるサブ制御とが組み合わされて行われた場合における、温度素子61-1,61-2の各々におけるDNA検体(反応溶液)の温度の時系列変化を示す図である。
図10において、縦軸は温度(度)を示し、横軸は時間(秒)を示している。

【0087】
この図10(A)及び図10(B)の各々の両試験について、PCR法における温度目標値の温度推移のパターンは、次の(A)乃至(B)のとおりである。
(A)最初に、温度目標値を123度として、123度まで加熱させて、123度で保持させる。
この期間が、図10(A)においては期間201aであり、図10(B)においては期間202aである。
(B)次に、温度目標値を37度に切り替えて、37度まで冷却させて、37度で保持させる。
この期間が、図10(A)においては期間201bであり、図10(B)においては期間202bである。

【0088】
また、この試験条件は次の(a)乃至(c)のとおりである。
(a)両試験とも、0.2mlの標準品のプラスチックチューブ82、及び、穴径が9.6mmの装着部81を2つ有する金属製ウェル71が用いられた。
(b)DNA検体(反応溶液)の温度は、両試験とも、同一の熱電対をプラスチックチューブ82内に挿入することで測定された。
(c)メイン制御部62aの定格電流は±30Aであり、サブ制御部62bの定格電流は±10Aである。

【0089】
サブ制御部62bによるサブ制御が禁止されている状態で、メイン制御部62aによるメイン制御のみが行われた場合には、図10(A)の期間201a及び201bの何れにおいても、温度素子61-1,61-2の各温度は一致していない。
具体的には、温度素子61-1については、温度目標値の温度推移のパターンに対して、DNA検体(反応溶液)の温度がほぼ追従して変化できているのに対して、温度素子61-2については、追従して変化できていない。
即ち、温度目標値のパターンの(A)における「123度で保持させる」という目標に対して、図10(A)の期間201aでは、温度素子61-2は98度であり、当該温度目標値である123度に到達していない。以下同様に、温度目標値のパターンの(B)における「37度で保持させる」という目標に対して、図10(A)の期間201bでは、温度素子61-2は22度であり、当該温度目標値である37度に到達していない。

【0090】
これに対して、メイン制御部62aによるメイン制御と、サブ制御部62bによるサブ制御とが組み合わされて行われた場合には、図10(B)に示すとおり、図10Bの期間202a及び202bの何れにおいても、温度素子61-1,61-2の各温度は略一致している。
具体的には、温度素子61-1,61-2の両者とも、温度目標値の温度推移のパターンに対して、DNA検体(反応溶液)の温度がほぼ追従して変化できている。

【0091】
以上、図2を参照して1つの温度素子61を含む場合の、図9及び図10を参照して2つの温度素子61-1,61-2を含む場合の、それぞれのDNA増幅装置51について説明したが、DNA増幅装置51に含まれる温度素子61の個数は、これらの例に特に限定されない。
例えば、直線状にM個の温度素子61を直列接続することができる。
この場合には、メイン温度制御として、直列接続された方向に電流を流す温度制御を採用することによって、M個の温度素子61全体の温度制御(粗調整の温度制御)を実現できる。
一方、サブ温度制御として、直列接続された方向と略垂直方向に、M個の温度素子61の個々に電流をそれぞれ独立して流す温度制御を採用することによって、M個の温度素子61の各々に対する個別の温度制御(微調整の温度制御)を、メイン制御とは独立かつ並行に実現できる。
なお、M個の温度素子61のうち所定の1つを基準素子とすれば、基準素子に対するサブ温度制御は省略可能である。即ち、図9の例とは、M=2として、温度素子61-1を基準素子とした例であることを意味している。
また、サブ温度制御の単位は、1つの温度素子61である必要はなく、2以上の温度素子61であってもよい。
このように、M個の温度素子61を直列接続し、メイン温度制御とサブ温度制御とを適切に組み合わせることによって、M個の温度素子間のバラつきの影響を吸収して、複数の温度素子の各々の温度変化を略同一にすることが可能になる。
なお、メイン温度制御とサブ温度制御とを適切に組み合わせることによって、逆に、複数の温度素子61の各々に対して、相異なる温度目標値を設定して、個別に温度制御することも容易に可能になる。

【0092】
さらに、M個の温度素子61の直列接続は、N個存在してもよい。
この場合、制御部62は、N個の直列接続の各々を単位として、他の単位とは独立して、メイン温度制御及びサブ温度制御を実行することができる。
換言すると、温度素子61は、N行M列の行列状に配置することができる。この場合、電流を流す方向を、行方向と列方向とに区分することができる。この場合、制御部62は、例えば行方向に流れる電流の制御としてメイン温度制御を行い、列方向に流れる電流の制御としてサブ温度制御を行うこともできる。このようにして、行方向と列方向との各々に対する個別の温度制御が相互に独立して実行可能になる。
この場合も、メイン温度制御とサブ温度制御とを適切に組み合わせることによって、M個の温度素子間のバラつきの影響を吸収して、複数の温度素子の各々の温度変化を略同一にすることが可能になる。
なお、メイン温度制御とサブ温度制御とを適切に組み合わせることによって、逆に、複数の温度素子61の各々に対して、相異なる温度目標値を設定して、個別に温度制御することも容易に可能になる。

【0093】
また、N行M列の行列状に配置され、メイン温度制御及びサブ温度制御が施される対象は、温度素子61である必要は特になく、ペルチェ効果を奏することが可能な任意の温度素子を採用することができる。

【0094】
本発明は、このような各種各様の実施形態によらず、例えば次の(1)乃至(4)のような効果を奏することが可能である。この(1)乃至(4)に開示する構成が本願発明に係る温度制御装置を実現させることになる。

【0095】
(1)本発明に係る温度素子61に設けられた金属製ウェル71は、p型半導体72Pとn型半導体72nとを直接接合し、p型半導体72Pとn型半導体72nの一方から他方へ電流を流すと共に熱を伝搬することで、ペルチェ効果を生じさせる機能を有している。この金属製ウェル71には、冷却又は加熱の対象物を直接装着可能な装着部81が設けられている。したがって、当該対象物は、温度制御系にとって遅れ要素となるもの(例えば図1の従来のペルチェ素子1の放熱板21A)を介在せずに金属製ウェル71により直接加熱又は冷却される。即ち、金属製ウェル71は、p型半導体72Pとn型半導体72nとの一方から他方へ流れる電流と共に伝搬される熱の経路になっている。したがって、当該経路を伝搬する熱が対象物に直接供給されることによって、当該対象物が加熱され、また、当該対象物から発生られた熱が当該経路に直接供給されることによって、当該対象物が冷却される。その結果、従来のペルチェ素子1を採用した場合と比較して、温度制御の高応答性が実現する。

【0096】
(2)本発明に係る温度素子61は、その構造から、従来と比較して一桁近く温度精度を向上させることが可能になる。即ち、図1の従来のペルチェ素子1は、説明の簡略上、p型半導体24P及びn型半導体24Nの組を1組だけ有する構造とされたが、PCR法に適用する従来のペルチェ素子は、このような組を複数組有し、その複数組を直列に繋げる構造を有している。このため、従来のペルチェ素子では、p型半導体又はn型半導体と放熱板との各界面(接触面)の電気抵抗及び熱抵抗が揃っておらず、このことが、位相がズレて熱応答性を鈍らせる要因となっていた。これに対して、本発明に係る温度素子61は、図4乃至図8を用いて上述したように、その構造から、p型半導体72P又はn型半導体72Nと金属製ウェル71との界面の数が極めて少ないため、熱応答性を鈍らせる影響度合が従来と比較して遥かに低くなる。その結果、従来と比較して一桁近い温度精度の向上が可能になる。

【0097】
(3)ペルチェ効果による熱応答性は、電流が大きいほど高くなることが原理的に知られている。ここで、本発明に係る温度素子61は、図1の従来のペルチェ素子1を含む従来のペルチェ素子と比較して、p型半導体72Pとn型半導体72Nとの組数を減少させ、1組当たりの金属製ウェル71との界面の面積(接触面積)を増大させたため、より一段と大きな電流を取り扱うことが可能である。このため、本発明に係る温度素子61に対して大きな電流を流すことによって、さらに一段と熱応答性が高くなる。

【0098】
(4)さらに、本発明に係る温度素子61を複数個用意して、これら複数の温度素子61を直列接続することができる。この場合、本発明に係る制御部62は、直列接続された複数の温度素子61に対して一斉に温度を制御するメイン温度制御と、複数の温度素子61の少なくとも一部の各々に対して個別に温度を制御するサブ温度制御との相互に独立した実行が可能になる。
これにより、複数の温度素子61間のバラつきの影響を吸収して、複数の温度素子61の各々の温度変化を略同一にすることが可能になる。
逆に、複数の温度素子61の各々に対して、相異なる温度目標値を設定して、個別に温度制御することも容易に可能になる。

【0099】
このような各種各様の効果を奏する温度素子61をPCR法に適用することで、即ち、当該対象物としてDNA検体収容に用いられるプラスチックチューブ82を採用することで、PCR法における温度目標値の時間推移の所定パターンに対して、DNA検体の温度を追従して変化させることが可能になる。即ち、図11に示すように、PCR法におけるDNA検体の温度制御の高応答性が実現可能になる。その結果、1工程に要する時間が短縮され、処理効率の向上や省電力性の向上が達成可能になる。

【0100】
図11は、同一条件によるPCR法の試験を、従来のペルチェ素子1を備える従来のDNA増幅装置を用いて行った場合と、本発明に係る温度素子61を備えるDNA増幅装置51を用いて行った場合との比較を示す図である。

【0101】
図11Aは、従来のペルチェ素子1を備える従来のDNA増幅装置を用いてPCR法の試験を行った場合における、DNA検体(反応溶液)の温度の時系列変化を示す図である。図11Bは、本発明に係る温度素子61を備えるDNA増幅装置51を用いてPCR法の試験を行った場合における、DNA検体(反応溶液)の温度の時系列変化を示す図である。図11において、縦軸は温度(度)を示し、横軸は時間(秒)を示している。

【0102】
この両試験におけるPCR法における温度目標値の時間推移のパターンは、次の(A)乃至(C)のとおりである。
(A)最初に、温度目標値を94度として、94度まで加熱させて、94度で30秒間保持させる。
この期間が、図11Aにおいては期間301aであり、図11Bにおいては期間301bである。
(B)次に、温度目標値を55度に切り替えて、55度まで冷却させて、55度で30秒間保持させる。
この期間が、図11Aにおいては期間302aであり、図11Bにおいては期間302bである。
(C)次に、温度目標値を72度に切り替えて、72度まで加熱させて、72度で60秒間保持させる。
この期間が、図11Aにおいては期間303aであり、図11Bにおいては期間303bである。

【0103】
また、この試験条件は次の(a)乃至(c)のとおりである。
(a)両試験とも、0.2mlの標準品のプラスチックチューブ82、及び、穴径が9.6mmの装着部81を2つ有する金属製ウェル71が用いられた。ただし、従来のペルチェ素子1を採用した試験では、金属製ウェル71は、放熱板21Aの表面上の所定位置、即ち図1に示す容器31の描画位置に配置された。即ち、従来のペルチェ素子1を採用した試験では、金属製ウェル71は、ブリッジ兼電極機能を発揮せずに、単にプラスチックチューブ82を装着する装着部としての機能のみを発揮する。
(b)DNA検体(反応溶液)の温度は、両試験とも、同一の熱電対をプラスチックチューブ82内に挿入することで測定された。
(c)なお、本発明に係る温度素子61を備えるDNA増幅装置51を用いたPCR法の試験において、温度制御部62の出力電流は次のとおりとなった。即ち、図11Bの期間301bのうち、加熱期間(94度まで温度を上昇させている期間)は19.6Aであり、温度保持期間(94度で保持させている期間)は10.4Aであった。図11Bの期間302bのうち、冷却期間(55度まで温度を下降させている期間)は18.1Aであり、温度保持期間(55度で保持させている期間)は5.4Aであった。図11Bの期間303bのうち、加熱期間(72度まで温度を上昇させている期間)は18.5Aであり、温度保持期間(72度で保持させている期間)は7.3Aであった。

【0104】
従来のペルチェ素子1を備える従来のDNA増幅装置を用いてPCR法の試験を行った場合には、図11Aの期間301a乃至303aの何れにおいても波形が鈍っていることから明らかなように、温度目標値の時間推移のパターンに対して、DNA検体(反応溶液)の温度が追従して変化していない。即ち、DNA検体(反応溶液)の温度が、温度目標値(期間301aにおいては94度、期間302aおいては55度、期間303aにおいては72度)に到達するまでに遅れが生じている。その結果、温度目標値の時間推移のパターンの(A)における「94度で30秒間保持させる」という目標に対して、図11Aの期間301aでは、94度±0.5度以内の時間が26秒と当該目標が達成できていない。以下同様に、温度目標値の時間推移のパターンの(B)における「55度で30秒間保持させる」という目標に対して、図11Aの期間302aでは、55度±0.5度以内の時間が20秒と当該目標が達成できていない。温度目標値の時間推移のパターンの(C)における「72度で60秒間保持させる」という目標に対して、図11Aの期間302aでは、72度±0.5度以内の時間が56秒と当該目標が達成できていない。

【0105】
このように、従来のペルチェ素子1を備える従来のDNA増幅装置では、温度目標値の時間推移のパターンに対してDNA検体(反応溶液)の温度が追従できない理由は次のとおりである。即ち、上述したように、従来のペルチェ素子1のA面部位での温度変化、即ち、ブリッジ兼電極機能を有する電極板22Aでの温度変化は、遅れ要素となる放熱板21A(図1参照)を介在して、金属製ウェル71に装着されたプラスチックチューブ82に伝達されるからである。

【0106】
これに対して、本発明に係る温度素子61を備えるDNA増幅装置51を用いてPCR法の試験を行った場合には、図11Bの期間301b乃至303bの何れにおいても波形が急峻になっていることから明らかなように、温度目標値の時間推移のパターンに対して、DNA検体(反応溶液)の温度がほぼ追従して変化している。即ち、DNA検体(反応溶液)の温度が、温度目標値(期間301bにおいては94度、期間302bにおいては55度、期間303bcにおいては72度)に到達するまでに遅れがほぼ生じていない。その結果、温度目標値の時間推移のパターンの(A)における「94度で30秒間保持させる」という目標に対して、図11Bの期間301bでは、94度±0.5度以内の時間が30秒と当該目標が達成できている。以下同様に、温度目標値の時間推移のパターンの(B)における「55度で30秒間保持させる」という目標に対して、図11Bの期間302bでは、55度±0.5度以内の時間が30秒と当該目標が達成できている。温度目標値の時間推移のパターンの(C)における「72度で60秒間保持させる」という目標に対して、図11Aの期間303bでは、72度±0.5度以内の時間が60秒と当該目標が達成できている。
さらに言えば、±0.5度という目標が達成されただけではなく、それよりも遥かに高精度の±0.01度が達成できている点にも注目すべきである。さらにまた、図11Bの期間304bの分だけ、PCR法の試験のトータル時間が短縮されている。

【0107】
なお、図11Bにおいて、温度上昇又は下降時においてプロット点の間隔が空いているのは、温度勾配が急峻になったため、即ち、温度制御の応答性が向上して短時間で温度上昇又は下降ができるようになったためである。また、一定温度の時のプロット線幅が細く見えるのは、温度制御の精度が向上し、ブレが小さくなったためである。なお、金属製ウェル71として、図3Bに示す寸法のサイズよりも肉薄にしたサイズ、即ち容積を小さくしたものを採用したことも、温度精度の向上の一因になっていると推測される。

【0108】
このようにして本発明に係る温度素子61を備えるDNA増幅装置51では、温度目標値の時間推移のパターンに対してDNA検体(反応溶液)の温度が追従できるようになる理由は次のとおりである。即ち、上述したように、金属製ウェル71自体がブリッジ兼電極機能を有していてA面部位として動作するため、A面部位での温度変化が、放熱板21Aのような遅れ要素となるものを一切介在せずに、プラスチックチューブ82に直接伝達されるからである。
【符号の説明】
【0109】
51 DNA増幅装置
61,61a,61b 温度素子
62 温度制御部
62a メイン制御部
62b サブ制御部
63 水冷部
71 金属製ウェル
72P,72P1,72P2 p型半導体
72N,72N1,72N2 n型半導体
73P,73N,73PN 電極兼放熱板
74P,74N 水管
81 装着部
91 絶縁体
101,102 領域
172P p型半導体
172N n型半導体
173P,173N 電極兼放熱板
174P,174N 水管
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10