TOP > 国内特許検索 > 高圧発生装置及びその圧力測定方法 > 明細書

明細書 :高圧発生装置及びその圧力測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5652865号 (P5652865)
公開番号 特開2012-078148 (P2012-078148A)
登録日 平成26年11月28日(2014.11.28)
発行日 平成27年1月14日(2015.1.14)
公開日 平成24年4月19日(2012.4.19)
発明の名称または考案の名称 高圧発生装置及びその圧力測定方法
国際特許分類 G01L   9/04        (2006.01)
G01L   5/00        (2006.01)
FI G01L 9/04
G01L 5/00 L
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願2010-222152 (P2010-222152)
出願日 平成22年9月30日(2010.9.30)
審査請求日 平成25年7月17日(2013.7.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
発明者または考案者 【氏名】米田 征司
個別代理人の代理人 【識別番号】100098626、【弁理士】、【氏名又は名称】黒田 壽
審査官 【審査官】公文代 康祐
参考文献・文献 特開平10-005572(JP,A)
特開2009-113044(JP,A)
特開平05-023573(JP,A)
特開昭54-076277(JP,A)
特開2010-053927(JP,A)
特開2002-239370(JP,A)
調査した分野 G01L 1/22
G01L 5/00
G01L 9/04
B01J 3/06
特許請求の範囲 【請求項1】
支持部材にそれぞれ支持された2つの加圧子間の加圧室内に試料及び圧力媒体を充填し、付勢手段によって該2つの加圧子に互いが近付く向きの付勢力を伝達することにより該圧力媒体を介して該加圧室内の試料に高圧を付与する高圧発生装置において、
前記2つの支持部材のうちの少なくとも一方の支持部材における加圧子を支持する加圧子支持箇所を中心に略対称位置にある複数箇所のひずみ量を測定するひずみ測定手段と、
該ひずみ測定手段が測定した前記複数箇所のひずみ量の平均値を、前記加圧室内の圧力を算出するための測定結果として出力する出力手段とを有することを特徴とする高圧発生装置。
【請求項2】
請求項1の高圧発生装置において、
前記加圧室内の目標圧力を取得する目標圧力取得手段と、
前記出力手段が出力した前記ひずみ測定手段の測定結果に基づいて、該目標圧力取得手段が取得した目標圧力に該加圧室内の圧力が近づくように、前記付勢手段による付勢力を制御する付勢力制御手段とを有することを特徴とする高圧発生装置。
【請求項3】
請求項2の高圧発生装置において、
温度検知手段を有し、
前記付勢力制御手段は、該温度検知手段が検知した温度に応じて、前記付勢手段による付勢力の制御量を補正することを特徴とする高圧発生装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の高圧発生装置において、
前記ひずみ測定手段は、ひずみ量に応じて電気抵抗が変化するひずみゲージを用いて前記少なくとも一方の支持部材のひずみ量を測定することを特徴とする高圧発生装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の高圧発生装置において、
前記ひずみ測定手段は、前記付勢手段による付勢力によって前記少なくとも一方の支持部材が撓むことにより伸びる又は縮む該支持部材の表面の伸縮量を測定することを特徴とする高圧発生装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の高圧発生装置において、
前記2つの加圧子としてダイヤモンドを用いることを特徴とする高圧発生装置。
【請求項7】
支持部材にそれぞれ支持された2つの加圧子間の加圧室内に試料及び圧力媒体を充填し、付勢手段によって該2つの加圧子に互いが近付く向きの付勢力を伝達することにより該圧力媒体を介して該加圧室内の試料に高圧を付与する高圧発生装置の圧力測定方法において、
前記高圧発生装置による高圧付与時に前記2つの支持部材の少なくとも一方における加圧子を支持する加圧子支持箇所を中心に略対称位置にある複数箇所に生じるひずみ量を計測し、計測した該複数箇所のひずみ量の平均値に基づいて前記加圧室内の圧力を測定することを特徴とする圧力測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧環境下における試料の状態変化について観察あるいは物性値測定等を行うために使用されるダイヤモンドアンビルセル等の高圧発生装置及びその圧力測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の高圧発生装置は、様々な技術分野における研究開発に利用されている。例えば、試料を高圧環境下に置くことで試料の結晶構造等を変化させることにより、その試料の物性を変化させ、新たな効能を発現させるなどの試験に使用される。特許文献1では、燃料電池やセンサー等への応用が期待される固体イオン伝導体の高圧状態における交流インピーダンス測定によるイオン伝導試験および透過赤外分光等の同時試験を行う場合が例示されている。
【0003】
高圧発生装置を使用した各種試験においては、高圧発生装置の加圧室内の圧力(試料に加わっている圧力)がどの程度なのかを正確に測定することが望まれる。高圧発生装置の圧力測定方法として信頼性が高いとされている方法としては、ルビー蛍光シフト法が知られている。ルビー蛍光シフト法とは、ルビーが圧力によってその蛍光スペクトルをシフトさせるという性質を利用し、ルビーの蛍光スペクトルを測定することで、加圧室内の圧力を把握するという方法である。具体的には、高圧発生装置の加圧室内へ試料とともに充填される圧力媒体内にルビー片を入れ、そのルビー片に外部から光を照射し、その蛍光スペクトルを外部で検出して、その検出結果から圧力を算出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ルビー蛍光シフト法は、測定のたびに高価なルビーを消費することになるため、1回の測定単価が高コストである。しかも、ルビー蛍光シフト法は、ルビーに光を照射するためのレーザー発振器や、ルビーの蛍光スペクトルを検出・測定するための装置など、高価な測定用設備が必要であり、設備コストが高い。加えて、ルビー蛍光シフト法は、微小なルビー片に外部から適切に光を当てないと適切な測定ができないため、ルビー片への光照射位置の調整が必要となる。この調整を適切に行うためには作業者の熟練した技術が必要である。このように、ルビー蛍光シフト法には、高圧発生装置の圧力測定を手軽に行うことができない事情が多数存在する。そのため、高圧発生装置を使用した各種試験を手軽に行うためには、もっと手軽に圧力測定できる方法が望まれている。
【0005】
また、ルビー蛍光シフト法は、加圧室内に試料及び圧力媒体と一緒にルビー片を入れる必要があるため、その試料に対する試験においてルビー片が邪魔をする場合がある。よって、加圧室内にルビー片を入れないで高圧発生装置の圧力測定を行う方法が望まれる。
【0006】
高圧発生装置であるダイヤモンドアンビルセルは、一般に、圧力調整用の螺旋を回して上下のアンビルセルを互いに近付く方向へ付勢する圧縮バネの付勢力を高めることにより、上下のアンビルセル間に形成される加圧室内の圧力を高める仕組みになっている。このような構成においては、螺旋の回転数と加圧室内の圧力との間にある程度の相関関係が存在するので、螺旋の回転数から加圧室内の圧力を概算することが可能である。この方法は、極めて安価で簡便な圧力測定方法ではあるが、螺旋機構それ自体及び螺旋機構と圧縮バネとの間の力伝達部の存在により概算値と加圧室内の実際の圧力との誤差が大きくなる場合がある。よって、もっと安定かつ高い精度に圧力測定を行うことが可能な圧力測定方法が望まれる。
【0007】
一方、上述した構成を有するダイヤモンドアンビルセルにおいては、圧縮バネの圧縮量(バネ長)を高い精度で測定できれば、螺旋の回転数から加圧室内の圧力を概算する上述した簡便な圧力測定方法よりも、安定かつ高い精度に圧力測定を行うことが可能である。しかしながら、ダイヤモンドアンビルセルの圧力調整範囲内での圧縮バネの圧縮量の変化は極めて微小であるため、これを安価な測定機器により高い精度で測定することは困難である。マイクロメータ等を用いて人間の手作業により圧縮バネの圧縮量を測定することである程度の高い測定精度を得ることは可能であるが、このような手作業での測定は圧力測定作業を煩雑化し、また、このような手作業での高精度な測定にはある程度の技術が必要となる。したがって、このような作業員の技術が必要となる手作業が不要で、安価に圧力測定できる方法が望まれる。
【0008】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、高圧発生装置の加圧室内の圧力測定を、加圧室内にルビー片を入れずに、ルビー蛍光シフト法よりも安価で手軽に行うことができ、かつ、必要な測定精度を安定かつ簡便に得ることができる高圧発生装置及びその圧力測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、支持部材にそれぞれ支持された2つの加圧子間の加圧室内に試料及び圧力媒体を充填し、付勢手段によって該2つの加圧子に互いが近付く向きの付勢力を伝達することにより該圧力媒体を介して該加圧室内の試料に高圧を付与する高圧発生装置において、前記2つの支持部材のうちの少なくとも一方の支持部材における加圧子を支持する加圧子支持箇所を中心に略対称位置にある複数箇所のひずみ量を測定するひずみ測定手段と、該ひずみ測定手段が測定した前記複数箇所のひずみ量の平均値を、前記加圧室内の圧力を算出するための測定結果として出力する出力手段とを有することを特徴とするものである。
この高圧発生装置では、出力手段から出力されるひずみ量の測定結果から、加圧子間の加圧室内に生じる圧力を算出することができる。したがって、圧力測定のために加圧室内にルビー片を入れる必要はない。このひずみ量は、付勢手段によって2つの加圧子に互いが近付く向きの付勢力が伝達されるとき、その付勢力によって支持部材に生じる微小なひずみ量である。このような微小なひずみ量は、安価に市販されているひずみゲージ等の安価なひずみ測定手段により高い精度で検出することができる。ひずみ測定手段を用いたひずみ量の測定作業においては、ルビー蛍光シフト法のように高価なルビーを消費することはなく、また設備コストも低廉である。更には、ルビー蛍光シフト法では必要であった光照射位置の調整技術や、マイクロメータ等を用いた高精度な測定技術など、その圧力測定の作業に際して熟練した技術が要求されることもない。そして、支持部材における加圧子を支持する加圧子支持箇所を中心に略対称位置にある複数箇所のひずみ量の平均値と加圧室内の圧力との間には、少なくとも圧力調整用の螺旋の回転数と加圧室内の圧力との相関関係よりも高い相関関係が存在することが、本発明者の研究により確認されている。よって、本高圧発生装置によれば、高圧発生装置の加圧室内の圧力測定を、ルビー蛍光シフト法よりも手軽に行うことができ、かつ、必要な測定精度を安定かつ簡便に得ることができる。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の高圧発生装置において、前記加圧室内の目標圧力を取得する目標圧力取得手段と、前記出力手段が出力した前記ひずみ測定手段の測定結果に基づいて、該目標圧力取得手段が取得した目標圧力に該加圧室内の圧力が近づくように、前記付勢手段による付勢力を制御する付勢力制御手段とを有することを特徴とするものである。
この高圧発生装置においては、付勢力制御手段により加圧室内の圧力が目標圧力へ自動調整されるので、加圧室内の圧力調整作業の作業者負担を軽減することができる。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項2の高圧発生装置において、温度検知手段を有し、前記付勢力制御手段は、該温度検知手段が検知した温度に応じて、前記付勢手段による付勢力の制御量を補正することを特徴とするものである。
支持部材(アンビルセル)のひずみ量や付勢手段(バネ)による付勢力には温度依存性があるため、温度が変化すると圧力測定誤差が生じ得る。本高圧発生装置によれば、温度に応じて付勢力制御手段による制御量が補正されるので、温度変化による圧力測定誤差が軽減される。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の高圧発生装置において、前記ひずみ測定手段は、ひずみ量に応じて電気抵抗が変化するひずみゲージを用いて前記少なくとも一方の支持部材のひずみ量を測定することを特徴とするものである。
高い測定精度で圧力測定を行うためには、僅かなひずみ量を高い分解能で計測できるひずみ測定手段が必要となる。ひずみ測定手段としては、例えば、ひずみ量に応じて起電力を発生させる圧電素子を利用するものが考えられる。このようなひずみ測定手段は、安価ではあるが、ひずみに応じて発生する圧電素子の起電力が小さいため、支持部材の僅かなひずみ量に対して高い分解能を得ることは困難である。加えて、圧電素子を利用したひずみ測定手段は、非線形性とヒステリシスの問題を解消することが難しい。また、支持部材を撮像し、その撮像画像を解析して支持部材のひずみ量を計測するようなひずみ測定手段も考えられるが、この手段を安価に実現することは難しい。これに対し、本高圧発生装置のように、ひずみ測定手段としてひずみゲージを用いる場合、ひずみ測定手段を安価に実現できるとともに、ひずみゲージに高い電圧を印加することで、支持部材の僅かなひずみ量に対して高い分解能を得ることが可能である。また、ひずみゲージは線形性に優れていて、ヒステリシスの問題も圧電素子と比較すると格段に少ないので、より高い精度の測定が可能である。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の高圧発生装置において、前記ひずみ測定手段は、前記付勢手段による付勢力によって前記少なくとも一方の支持部材が撓むことにより伸びる又は縮む該支持部材の表面の伸縮量を測定することを特徴とするものである。
ひずみ測定手段としては、付勢手段の付勢力により2つの支持部材が互いに近づく方向の圧縮ひずみ(垂直ひずみ)を測定するものも考えられる。しかしながら、この場合には、ひずみ測定手段に対して非常に高い圧縮力が加わることになるので、ひずみ測定手段に要求される耐久性や継続使用性等を確保することが難しい。これに対し、本高圧発生装置のように、ひずみ測定手段が支持部材の表面の伸縮量を測定するものである場合、ひずみ測定手段へ加わる力が小さいので、ひずみ測定手段に要求される耐久性や継続使用性等を確保しやすい。
【0014】
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の高圧発生装置において、前記2つの加圧子としてダイヤモンドを用いることを特徴とするものである。
本高圧発生装置においては、加圧子としてサファイアや炭化ケイ素を使う場合よりも、高い圧力を発生させることができる。
【0015】
また、請求項7の発明は、支持部材にそれぞれ支持された2つの加圧子間の加圧室内に試料及び圧力媒体を充填し、付勢手段によって該2つの加圧子に互いが近付く向きの付勢力を伝達することにより該圧力媒体を介して該加圧室内の試料に高圧を付与する高圧発生装置の圧力測定方法において、前記高圧発生装置による高圧付与時に前記2つの支持部材の少なくとも一方における加圧子を支持する加圧子支持箇所を中心に略対称位置にある複数箇所に生じるひずみ量を計測し、計測した該複数箇所のひずみ量の平均値に基づいて前記加圧室内の圧力を測定することを特徴とするものである。
この圧力測定方法では、高圧発生装置による高圧付与時に支持部材に生じるひずみ量の測定結果から加圧室内に生じる圧力を算出する。このひずみ量は、付勢手段によって2つの加圧子に互いが近付く向きの付勢力が伝達されるとき、その付勢力によって支持部材に生じる微小なひずみ量である。このような微小なひずみ量は、安価に市販されているひずみゲージ等の安価なひずみ測定手段により高い精度で検出することができる。ひずみ量の測定作業においては、ルビー蛍光シフト法のように高価なルビーを消費することはなく、また設備コストも低廉である。更には、ルビー蛍光シフト法では必要であった光照射位置の調整技術や、マイクロメータ等を用いた高精度な測定技術など、その圧力測定の作業に際して熟練した技術が要求されることもない。そして、支持部材における加圧子を支持する加圧子支持箇所を中心に略対称位置にある複数箇所のひずみ量の平均値と加圧室内の圧力との間には、少なくとも圧力調整用の螺旋の回転数と加圧室内の圧力との相関関係よりも高い相関関係が存在することが、本発明者の研究により確認されている。よって、本圧力測定方法によれば、高圧発生装置の加圧室内の圧力測定を、ルビー蛍光シフト法よりも手軽に行うことができ、かつ、必要な測定精度を安定かつ簡便に得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上、本発明によれば、高圧発生装置の加圧室内の圧力測定を、加圧室内にルビー片を入れずに、ルビー蛍光シフト法よりも安価で手軽に行うことができ、かつ、必要な測定精度を安定かつ簡便に得ることができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態におけるダイヤモンドアンビルセルの主要部を示す斜視図である。
【図2】同ダイヤモンドアンビルセルの側面図である。
【図3】同ダイヤモンドアンビルセルの加圧子部分を模式的に拡大した拡大図である。
【図4】実施形態に係る高圧物性測定システムの概要を示すブロック図である。
【図5】実験例の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を高圧発生装置としてのダイヤモンドアンビルセルに適用した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態におけるダイヤモンドアンビルセルの主要部を示す斜視図である。
図2は、このダイヤモンドアンビルセルの側面図である。
図3は、このダイヤモンドアンビルセルの加圧子部分を模式的に拡大した拡大図である。

【0019】
本実施形態におけるダイヤモンドアンビルセル10は、主に、支持部材である上ダイヤモンドアンビル11A及び下ダイヤモンドアンビル11B、これらに支持される加圧子である上ダイヤモンド12A及び下ダイヤモンド12B、付勢手段である圧縮バネ17を備えた圧力調整用ネジ16によって構成されている。このダイヤモンドアンビルセル10は、図3に示すように、上ダイヤモンド12A及び下ダイヤモンド12Bが対向するように上ダイヤモンドアンビル11A及び下ダイヤモンドアンビル11Bを配置する。上ダイヤモンド12A及び下ダイヤモンド12Bは、エポキシ系接着剤等の接着剤15により上ダイヤモンドアンビル11A及び下ダイヤモンドアンビル11Bにそれぞれ取り付けられている。両ダイヤモンド12A,12Bの間には、孔が形成されたガスケット13が挟み込まれるように配置される。ガスケット13は、両ダイヤモンド12A,12Bの間に挟持される前に、その姿勢を維持するためにシリコンゴム14等によって下ダイヤモンド12Bに仮止めするのがよい。ガスケット13の孔の内壁と両ダイヤモンド12A,12Bの先端面とに囲まれた空間が、加圧室Rとなる。

【0020】
図2に示すように、上ダイヤモンドアンビル11Aに設けられた2つのネジ受け部11aより圧力調整用ネジ16を挿入し、その圧力調整用ネジ16の先端部を下ダイヤモンドアンビル11Bの内部に設けられた不図示のネジ孔に係合させることで、上ダイヤモンドアンビル11A及び下ダイヤモンドアンビル11Bが連結される。この圧力調整用ネジ16を締める方向へ回すと、圧力調整用ネジ16の先端部が下ダイヤモンドアンビル11Bのネジ孔内を進行し、これにより圧力調整用ネジ16のネジ頭と上ダイヤモンドアンビル11Aのネジ受け部11aとの間に挟持される圧縮バネ17が圧縮される。この圧縮バネ17の復元力が両ダイヤモンド12A,12Bを互いに近付ける向きの付勢力となり、加圧室R内の圧力を高めるように作用する。本実施形態では、後述するように加圧室R内の圧力を自動制御するために、圧力調整用ネジ16のネジ頭にネジ駆動モータ3のモータ軸が取り付けられ、このネジ駆動モータ3の回転駆動を制御することにより圧力調整用ネジ16の回転方向や回転量などを調節できるようになっている。

【0021】
加圧室R内には、試験に用いる試料Sと圧力媒体Tが充填される。圧力媒体Tは、加圧室Rに加えられた圧力を試料Sに対して均一に伝達するために充填されるもので、試料Sの種類、試験内容などに応じて適宜選択される。圧力媒体Tは、例えば、液体でも、気体でも、ゲル状のものでもよい。

【0022】
また、本実施形態においては、図1に示すように、上ダイヤモンドアンビル11Aの上面にひずみ測定手段としての4つのひずみゲージ1A,1B,1C,1Dが取り付けられている。圧力調整用ネジ16を回して圧縮バネ17による付勢力により加圧室R内の圧力を高めていくと、これに応じて上ダイヤモンドアンビル11Aが撓む。上ダイヤモンドアンビル11Aは、一般に、高圧時でも圧縮バネ17による付勢力を加圧室に伝達できるように高い硬度を有するものであるが、それでも僅かながら撓む。このわずかな撓みによって上ダイヤモンドアンビル11Aの上面が伸縮するので、本実施形態では、その伸縮量をひずみゲージ1A,1B,1C,1Dにより測定する。具体的には、上ダイヤモンドアンビル11Aの上面の伸縮量に応じて変化するひずみゲージ1A,1B,1C,1Dの電気抵抗を測定する。このような上ダイヤモンドアンビル11Aのひずみ量は、後述するように、加圧室R内の圧力との間に高い相関関係が存在することが確認されている。よって、ひずみゲージ1A,1B,1C,1Dの測定結果から、加圧室R内の圧力を高い精度で把握することができる。

【0023】
図4は、本実施形態に係る高圧物性測定システムの概要を示すブロック図である。
本実施形態では、熱電材料として使用可能な試料Sを高圧環境下におき、その圧力を段階的に変化させてその結晶構造の変化を観測する試験を行う場合を例に挙げる。ただし、本発明は、この試験に限定されることはない。

【0024】
本高圧物性測定システムでは、ダイヤモンドアンビルセル10に設けた4つのひずみゲージ1A,1B,1C,1Dの測定結果が、ネジ駆動モータ3の駆動を制御する圧力制御部2に送られる。圧力制御部2は、その測定結果から把握される加圧室R内の圧力が、予め設定された目標圧力となるように、ネジ駆動モータ3の駆動を制御する。ネジ駆動モータ3が駆動すると、圧力調整用ネジ16が回転して圧縮バネ17の圧縮量を調整できる。圧縮バネ17の圧縮量と加圧室R内の圧力とは比例関係にあるので、ネジ駆動モータ3の駆動を制御することで、加圧室R内の圧力を調整することができる。

【0025】
圧力制御部2は、試験者が操作するパーソナルコンピュータからなる管理装置30に接続されている。試験者は、管理装置30を操作することで、圧力制御部2に対し、目標圧力、圧力調整の開始及び停止などの指示することができる。圧力制御部2は、管理装置30からの指示に従ってネジ駆動モータ3の駆動を制御し、加圧室R内の圧力を制御する。管理装置30の表示モニターには、圧力制御部2を介して出力されるひずみゲージ1A,1B,1C,1Dの測定結果に基づく圧力すなわち現在の加圧室R内の圧力などの必要な情報が表示される。

【0026】
また、管理装置30は、ダイヤモンドアンビルセル10の加圧室R内にセットされた試料SのX線解析を行うためのX線測定器20にも接続されている。試験者は、管理装置30を操作することで、X線測定器20に対し、測定条件、測定の開始及び停止などの指示することができる。X線測定器20は、管理装置30からの指示に従って動作し、測定を行う。具体的には、上ダイヤモンドアンビル11Aに設けられたX線透過窓を通じて上側からX線を加圧室R内に照射し、加圧室Rを通過したX線を下ダイヤモンドアンビル11Bに設けられたX線透過窓を通じて下側の受光部で受光する。その受光結果を解析することで、加圧室R内の試料Sの結晶構造を把握する。管理装置30の表示モニターには、X線測定器20の測定結果などの必要な情報が表示される。

【0027】
〔実験例〕
次に、ひずみゲージ1A,1B,1C,1Dの測定結果と加圧室内の圧力との相関関係を調べた実験例について説明する。
本実験例は、ダイヤモンドアンビルセル10として、easyLab社製ダイヤモンドアンビルセル(Diacell(登録商標)Bragg-S型)の上ダイヤモンドアンビル11Aの上面に、図1に示した4箇所に、ひずみゲージ1A,1B,1C,1Dを接着したものを用いた。ひずみゲージ1A,1B,1C,1Dとしては、共和電業社製ひずみゲージ(KFG-2-120-C1-11L3M2R)を用いた。また、ひずみゲージ1A,1B,1C,1Dから出力される電気信号を管理装置30へ送るためのセンサインタフェースとして、共和電業社製センサインタフェース(PCD-300B)を用いた。また、センサインタフェースとひずみゲージとを接続するアダプタとして、共和電業社製入力アダプタ(UI-16A)を使用した。また、ひずみゲージ1A,1B,1C,1Dの接着には、共和電業社製接着剤(CC-33A)を使用した。

【0028】
本実験例では、加圧室R内の圧力を次のように測定した。
まず、ガスケット13を設置する代わりに、銅板などの薄い金属板をダイヤモンド12A,12B間に挟んで実験を行う。圧縮バネ17のバネ定数は既知であることから、圧縮バネ17の圧縮量をマイクロメータによって手作業にて計測し、その圧縮量と圧縮バネ17のバネ定数とから金属板に加えられる加圧力を算出する。上下のダイヤモンド12A,12Bに挟持されることで金属板には凹みが形成されるので、その凹みの面積を測定し、算出した加圧力をその面積で割ったものを、加圧室R内の圧力とした。

【0029】
下記の表1は、本実験例の実験結果を表にまとめたものである。
図5は、この実験結果を、4つのひずみゲージ1A,1B,1C,1Dの平均値εを縦軸にとり、上述したように算出した加圧室R内の圧力Pを横軸にとったグラフにまとめたものである。
【表1】
JP0005652865B2_000002t.gif

【0030】
本実験例の実験結果より、図5のグラフに示すように、4つのひずみゲージ1A,1B,1C,1Dの平均値εと加圧室R内の圧力Pとの間には高い相関関係(比例関係)が存在することが判明した。この比例定数(グラフの傾き)は、圧縮バネ17のバネ定数や温度などの条件に変化がなければ一定値をとる。したがって、4つのひずみゲージ1A,1B,1C,1Dの平均値εを測定することで、加圧室R内の圧力Pを高い精度で特定することができる。

【0031】
なお、高圧環境下における試料Sの物性の温度依存性を観測する場合など、試験の内容によっては、試験の際に加圧室R内の温度を変化させることが想定される。例えば、試料Sの熱電特性を測定するために、加圧室R内に温度勾配を生じさせて試料Sの起電力を測定する場合などである。このような試験においては、その温度変化によって、微小ながら、圧縮バネ17のバネ定数が変化したり、上ダイヤモンドアンビル11Aのヤング率が変化したりするため、その温度変化前の比例定数をそのまま使用して、4つのひずみゲージ1A,1B,1C,1Dの平均値εから加圧室R内の圧力Pを算出すると、多少の誤差が生じる。そのため、この誤差が許容範囲を超える場合には補正が必要である。具体的には、例えば、加圧室R内の温度変化を伴う試験を実施する場合には、その温度変化に応じて、4つのひずみゲージ1A,1B,1C,1Dの平均値εから加圧室R内の圧力Pを算出する際に用いる比例定数を補正する。

【0032】
また、温度変化によって加圧室R内の実際の圧力も変化する。よって、加圧室R内の温度変化を伴う試験を実施する場合には、その温度変化に対し、必要に応じて加圧室R内の圧力Pが目標圧力となるように再調整することが好ましい。

【0033】
本実施形態においては、加圧室R内の圧力を圧力制御部2によって目標圧力に自動調整するシステムを例に挙げて説明したが、ひずみゲージ1A,1B,1C,1Dの測定結果に基づく加圧室R内の圧力値を表示モニターで確認しながら、試験者が圧力調整用ネジ16を手作業で回し、加圧室R内の圧力を目標圧力に調整することも、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1A,1B,1C,1D ひずみゲージ
2 圧力制御部
3 ネジ駆動モータ
10 ダイヤモンドアンビルセル
11A 上ダイヤモンドアンビル
11B 下ダイヤモンドアンビル
12A 上ダイヤモンド
12B 下ダイヤモンド
13 ガスケット
14 シリコンゴム
15 接着剤
16 圧力調整用ネジ
17 圧縮バネ
20 X線測定器
30 管理装置
【先行技術文献】
【0035】

【特許文献1】特開2007-24608号公報
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4