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明細書 :アトピー性皮膚炎の検出方法および予防・治療剤のスクリーニング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5522717号 (P5522717)
公開番号 特開2010-096748 (P2010-096748A)
登録日 平成26年4月18日(2014.4.18)
発行日 平成26年6月18日(2014.6.18)
公開日 平成22年4月30日(2010.4.30)
発明の名称または考案の名称 アトピー性皮膚炎の検出方法および予防・治療剤のスクリーニング方法
国際特許分類 G01N  33/53        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
A61P  37/08        (2006.01)
A61P  17/02        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI G01N 33/53 ZNAQ
C12Q 1/02
C12Q 1/68 A
G01N 33/15 Z
G01N 33/53 D
G01N 33/53 M
G01N 33/50 Z
A61K 39/395 D
A61P 37/08
A61P 17/02
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 22
全頁数 28
出願番号 特願2009-174692 (P2009-174692)
出願日 平成21年7月27日(2009.7.27)
優先権出願番号 2008241295
優先日 平成20年9月19日(2008.9.19)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年8月9日(2011.8.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
発明者または考案者 【氏名】出原 賢治
【氏名】白石 裕士
【氏名】太田 昭一郎
【氏名】増岡 美穂
個別代理人の代理人 【識別番号】100092783、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 浩
【識別番号】100095360、【弁理士】、【氏名又は名称】片山 英二
【識別番号】100120134、【弁理士】、【氏名又は名称】大森 規雄
【識別番号】100149010、【弁理士】、【氏名又は名称】星川 亮
【識別番号】100104282、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 康仁
審査官 【審査官】草川 貴史
参考文献・文献 国際公開第02/052006(WO,A1)
特表平07-505528(JP,A)
特表2003-534558(JP,A)
特開2007-204483(JP,A)
特開2005-110602(JP,A)
国際公開第2008/012645(WO,A1)
特表2009-544302(JP,A)
国際公開第2008/076255(WO,A1)
特表2010-512744(JP,A)
特開2009-232812(JP,A)
特表2009-522562(JP,A)
Butcher JT, Norris RA, Hoffman S, Mjaatvedt CH, Markwald RR.,Periostin promotes atrioventricular mesenchyme matrix invasion and remodeling mediated by integrin signaling through Rho/PI 3-kinase.,Dev Biol. ,2007年 2月 1日,Vol.302, No.1,Page.256-266
Kuhn B, del Monte F, Hajjar RJ, Chang YS, Lebeche D, Arab S, Keating MT.,Periostin induces proliferation of differentiated cardiomyocytes and promotes cardiac repair.,Nat Med. ,2007年,Vol.13,No.8,Page.962-969
調査した分野 G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、アトピー性皮膚炎の検出方法。
【請求項2】
(i)被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と、(ii)正常生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量との比較を行うことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(i)被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が(ii)正常生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量よりも高いときに、アトピー性皮膚炎である、またはアトピー性皮膚炎が疑われると判断することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ペリオスチンを産生する能力を有する細胞を候補物質の存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニング方法。
【請求項5】
(i)ペリオスチンを産生する能力を有する細胞を候補物質の存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と、(ii)ペリオスチンを産生する能力を有する細胞を候補物質の非存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量との比較を行うことを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(i)ペリオスチンを産生する能力を有する細胞を候補物質の存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が(ii)ペリオスチンを産生する能力を有する細胞を候補物質の非存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量よりも低いときに、候補物質を選択することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
測定が免疫測定法によるものである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
生体試料が皮膚組織である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
インテグリンαVとペリオスチンとを、候補物質の存在下で接触させた場合における、インテグリンαVとペリオスチンとの結合量、thymic stromal lymphopoietin産生量または皮膚角化細胞の分化・増殖活性を測定することを含む、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニング方法。
【請求項10】
(i)候補物質の存在下でインテグリンαVとペリオスチンとを接触させた場合におけるインテグリンαVとペリオスチンとの結合量またはthymic stromal lymphopoietin産生量と、(ii)候補物質の非存在下でインテグリンαVとペリオスチンとを接触させた場合におけるインテグリンαVとペリオスチンとの結合量またはthymic stromal lymphopoietin産生量との比較を行うことを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(i)被検物質の存在下でインテグリンαVとペリオスチンとを接触させた場合におけるインテグリンαVとペリオスチンとの結合量またはthymic stromal lymphopoietin産生量が、(ii)被検物質の非存在下でインテグリンαVとペリオスチンとを接触させた場合におけるインテグリンαVとペリオスチンとの結合量またはthymic stromal lymphopoietin産生量よりも低いときに、候補物質を選択することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
インテグリンαVとペリオスチンとの接触がインテグリンαVを発現する細胞とペリオスチンとの接触である、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
インテグリンαVを発現する細胞が、インテグリンαVを細胞表面に発現する細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
インテグリンαVを発現する細胞が内因性インテグリンαV発現細胞である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
内因性インテグリンαV発現細胞が皮膚角化細胞である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(i)候補物質の存在下でインテグリンαVとペリオスチンとを接触させた場合における皮膚角化細胞の分化・増殖活性と、(ii)候補物質の非存在下でインテグリンαVとペリオスチンとを接触させた場合における皮膚角化細胞の分化・増殖活性との比較を行うことを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
(i)被検物質の存在下でインテグリンαVとペリオスチンとを接触させた場合における皮膚角化細胞の分化・増殖活性が、(ii)被検物質の非存在下でインテグリンαVとペリオスチンとを接触させた場合における皮膚角化細胞の分化・増殖活性よりも低いときに、候補物質を選択することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(i)ペリオスチンを認識する抗体、(ii) ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプライマー、および(iii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプローブからなる群から選択される少なくとも1つを含有する、アトピー性皮膚炎の検出薬。
【請求項19】
(i)ペリオスチンを認識する抗体、(ii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプライマー、および(iii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプローブからなる群から選択される少なくとも1つを含有する、アトピー性皮膚炎の検出用キット。
【請求項20】
(i)ペリオスチンを産生する能力を有する細胞、および/または(ii)インテグリンαVを発現する細胞を含む、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニング用キット。
【請求項21】
インテグリンαVを発現する細胞が、インテグリンαVを細胞表面に発現する細胞である、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
インテグリンαVとペリオスチンとの結合を阻害する抗インテグリンαV抗体を含む、アトピー性皮膚炎の予防・治療用医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アトピー性皮膚炎の検出方法および予防・治療剤のスクリーニング方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎は炎症を伴う皮疹を特徴とする皮膚科疾患であり、組織学的には表皮肥厚、角質増多、および線維化などを特徴とする。アトピー性皮膚炎の発生原因については明らかではないが、種々の化学物質による刺激や皮膚の擦過などの物理的刺激によりアトピー性皮膚炎が増悪することが知られている。日本において若年者のアトピー性皮膚炎の有病率は全人口の10数%に達する。
【0003】
アトピー性皮膚炎に対する予防・治療は、ステロイド剤および免疫抑制剤といった免疫機能調節薬、抗ヒスタミン薬および抗アレルギー薬といった抗掻痒薬、あるいは保湿剤などの使用が中心となっており、少なくとも現時点では、特定の分子を標的としてアトピー性皮膚炎の病態の改善を目指す治療剤は使用されていない。
【0004】
アトピー性皮膚炎の表皮肥厚、角質増多、および線維化に関連する分子を特定することができれば、特定した分子を利用してアトピー性皮膚炎を検出することが可能となる。
【0005】
また、アトピー性皮膚炎の病態の中で、表皮肥厚および角質増多は皮膚のバリアー破壊を引き起こすことでアトピー性皮膚炎の増悪につながるとともに、美容上の問題ともなる。このため、アトピー性皮膚炎の表皮肥厚、角質増多、または線維化に関連する分子を標的としてアトピー性皮膚炎の予防・治療剤を開発することができれば、アトピー性皮膚炎の患者にとって有用となる。
【0006】
ここで、特許文献1には、ペリオスチン遺伝子の発現レベルを指標として、アレルギー性疾患を検査することが記載されている。
【0007】
また、非特許文献1には、ペリオスチン(骨芽細胞特異因子2)が、IL-4またはIL-13による刺激に応答して線維芽細胞で産生され、気管支喘息患者の肺線維症に関与する可能性があることが示されている。
【0008】
非特許文献2~6には、ペリオスチンがインテグリンαVを介してシグナル伝達を行う可能性があることが示されている。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】WO2002/052006
【0010】

【非特許文献1】G. Takayama et al., J Allergy Clin Immunol, vol.118, 98-104, 2006
【非特許文献2】島崎ら, 細胞工学, Vol.27, No.6, Page.598-599, (2008.05.22)
【非特許文献3】Hiroi et al,. Endocr, Vol.55, No.1, Page.183-189, (J-STAGE), (2008)
【非特許文献4】WALLACE Darren P. et al., Am J Physiol, Vol.295, No.5, Pt.2, Page.F1463-F1471, (2008.11)
【非特許文献5】KUEHN Bernhard et al., Nat Med, Vol.13, No.8, Page.962-969, (2007.08.01)
【非特許文献6】BUTCHER Jonathan T. et al., Dev Biol, Vol.302, No.1, Page.256-266, (2007.02.01)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような状況の下、マーカーを利用したアトピー性皮膚炎の検出方法、およびアトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニング方法などが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、アトピー性皮膚炎患者由来の生体試料においてペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が高いこと、ペリオスチンをマーカーとして利用することでアトピー性皮膚炎を検出できること、また、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニングできること等の知見に基づき本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、以下のアトピー性皮膚炎の検出方法または診断方法、およびアトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニング方法などを提供する。
(1)生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、アトピー性皮膚炎の検出方法。
(2)(i)被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と、(ii)正常細胞におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量との比較を行うことを含む、上記(1)に記載の方法。
(3)(i)被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が(ii)正常細胞におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量よりも高いときに、アトピー性皮膚炎である、またはアトピー性皮膚炎が疑われると判断することを含む、上記(2)に記載の方法。
(4)ペリオスチンを産生する能力を有する細胞を候補物質の存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニング方法。
(5)(i)ペリオスチンを産生する能力を有する細胞を候補物質の存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と、(ii)ペリオスチンを産生する能力を有する細胞を候補物質の非存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量との比較を行うことを含む、上記(4)に記載の方法。
(6)(i)ペリオスチンを産生する能力を有する細胞を候補物質の存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が(ii)ペリオスチンを産生する能力を有する細胞を候補物質の非存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量よりも低いときに、候補物質を選択することを含む、上記(5)に記載の方法。
(7)測定が免疫測定法によるものである、上記(1)~(6)のいずれか1項に記載の方法。
(8)生体試料が皮膚組織である、上記(1)~(7)のいずれか1項に記載の方法。
(8a)ペリオスチンと候補物質を接触させて、ペリオスチンの活性の変化を検出することを含む、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニング方法。
(9)インテグリンαV3とペリオスチンとを、候補物質の存在下で接触させた場合における、インテグリンαV3とペリオスチンとの結合量、thymic stromal lymphopoietin産生量または皮膚角化細胞の分化・増殖活性を測定することを含む、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニング方法。
(10)(i)候補物質の存在下でインテグリンαV3とペリオスチンとを接触させた場合におけるインテグリンαV3とペリオスチンとの結合量またはthymic stromal lymphopoietin産生量と、(ii)候補物質の非存在下でインテグリンαV3とペリオスチンとを接触させた場合におけるインテグリンαV3とペリオスチンとの結合量またはthymic stromal lymphopoietin産生量との比較を行うことを含む、上記(9)に記載の方法。
(11)(i)被検物質の存在下でインテグリンαV3とペリオスチンとを接触させた場合におけるインテグリンαV3とペリオスチンとの結合量またはthymic stromal lymphopoietin産生量が、(ii)被検物質の非存在下でインテグリンαV3とペリオスチンとを接触させた場合におけるインテグリンαV3とペリオスチンとの結合量またはthymic stromal lymphopoietin産生量よりも低いときに、候補物質を選択することを含む、上記(10)に記載の方法。
(12)インテグリンαV3とペリオスチンとの接触がインテグリンαV3を発現する細胞とペリオスチンとの接触である、上記(9)~(11)のいずれか1項に記載の方法。
(13)インテグリンαV3を発現する細胞が、インテグリンαV3を細胞表面に発現する細胞である、上記(12)に記載の方法。
(14)インテグリンαV3を発現する細胞が内因性インテグリンαV3発現細胞である、上記(12)または(13)に記載の方法。
(15)内因性インテグリンαV3発現細胞が皮膚角化細胞である、上記(14)に記載の方法。
(16)(i)候補物質の存在下でインテグリンαV3とペリオスチンとを接触させた場合における皮膚角化細胞の分化・増殖活性と、(ii)候補物質の非存在下でインテグリンαV3とペリオスチンとを接触させた場合における皮膚角化細胞の分化・増殖活性との比較を行うことを含む、上記(9)に記載の方法。
(17)(i)被検物質の存在下でインテグリンαV3とペリオスチンとを接触させた場合における皮膚角化細胞の分化・増殖活性が、(ii)被検物質の非存在下でインテグリンαV3とペリオスチンとを接触させた場合における皮膚角化細胞の分化・増殖活性よりも低いときに、候補物質を選択することを含む、上記(16)\に記載の方法。
(18)(i)ペリオスチンを認識する抗体、(ii) ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプライマー、および(iii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプローブからなる群から選択される少なくとも1つを含有する、アトピー性皮膚炎の検出薬。
(18a)ペリオスチンを認識する抗体を含有する、アトピー性皮膚炎の検出薬。
(18b)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプライマーを含む、アトピー性皮膚炎の検出薬。
(18c)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプローブを含む、アトピー性皮膚炎の検出薬。
(19)(i)ペリオスチンを認識する抗体、(ii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプライマー、および(iii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプローブからなる群から選択される少なくとも1つを含有する、アトピー性皮膚炎の検出用キット。
(19a)ペリオスチンを認識する抗体を含有する、アトピー性皮膚炎の検出用キット。
(19b)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプライマーを含む、アトピー性皮膚炎の検出用キット。
(19c)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプローブを含む、アトピー性皮膚炎の検出用キット。
(20)(i)ペリオスチンを産生する能力を有する細胞、および/または(ii)インテグリンαV3を発現する細胞を含む、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニング用キット。
(20a)ペリオスチンを産生する能力を有する細胞を含む、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニング用キット。
(20b)インテグリンαV3を発現する細胞を含む、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニング用キット。
(21)インテグリンαV3を発現する細胞が、インテグリンαV3を細胞表面に発現する細胞である、上記(20)または(20b)に記載のキット。
(22)インテグリンαV3とペリオスチンとの結合を阻害する抗インテグリンαV抗体を含む、アトピー性皮膚炎の予防・治療用医薬組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、新規マーカーを利用したアトピー性皮膚炎の検出方法を提供する。本発明の好ましい態様によれば、検出結果を、アトピー性皮膚炎の確定診断の補助にできる等の利点がある。また。本発明は、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニング方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ヒト皮膚組織におけるペリオスチンの組織免疫染色の結果を示す写真である。(a)正常者、(b)アトピー性皮膚炎患者。
【図2】アトピー性皮膚炎モデルマウスの皮膚組織を示す写真である。(a)野生型マウス、(b)ペリオスチン欠損マウス。
【図3】マウス線維芽細胞を用いたマウス皮膚角化細胞培養系における皮膚角化細胞を示す写真である。(a)野生型マウス繊維芽細胞、(b)ペリオスチン欠損マウス繊維芽細胞。
【図4】マウス線維芽細胞を用いたマウス皮膚角化細胞培養系を示す模式図である。
【図5】マウス皮膚角化細胞培養系におけるthymic stromal lymphopoietin(TSLP)産生量の測定結果を示す図である。図5中、(-)は、培養液中にペリオスチン(periostin)、インターロイキン-13(IL-13)または抗インテグリンαV抗体(ab)が存在しない培養系であることを示し、(+) は、培養液中にペリオスチン(periostin)、インターロイキン-13(IL-13)または抗インテグリンαV抗体(ab)が存在する培養系であることを示す。
【図6】マウス皮膚角化細胞培養系における培養細胞の組織免疫染色の結果を示す写真である。(a)無添加、(b)ペリオスチン添加、(c)IL-13添加、(d)ペリオスチンおよびIL-13添加、(e)ペリオスチン、IL-13および抗インテグリンαV抗体添加。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。本願の優先権主張の基礎となる日本国特許出願である特願2008-241295号(出願日:2008年9月19日)の特許請求の範囲、明細書、および図面の開示内容を包含する。

【0017】
1.本発明の概要
本発明は、生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、アトピー性皮膚炎の検出方法または診断方法である。
本発明者らは、アトピー性皮膚炎の表皮肥厚、角質増多、または線維化に関連する分子を探索すべく鋭意検討を重ねた。その結果、アトピー性皮膚炎の患者は、皮膚組織などにおいてペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が高いことを見出した。

【0018】
具体的には、アトピー性皮膚炎患者由来の皮膚組織を用いて組織染色法によりペリオスチンタンパク質量を測定した。その結果、20検体のアトピー性皮膚炎患者由来皮膚組織の全てにおいてペリオスチンタンパク質量が高かった(図1(b))。一方、対照群として用いた5検体の正常皮膚組織ではペリオスチンタンパク質量がきわめて低かった(図1(a))。

【0019】
また、マウスの皮膚にダニアレルゲンを塗布してアトピー性皮膚炎を発症させたアトピー性皮膚炎モデルマウスを用いて実験を行った。その結果、野生型マウスにおいては、ダニアレルゲン塗布により表皮肥厚、線維化、および好酸球性炎症などのアトピー性皮膚炎に特徴的な組織学的変化が生じた(図2(a))。一方、ペリオスチン欠損マウスにおいては、これらのアトピー性皮膚炎に特徴的な組織学的変化が著明に軽減していた(図2(b))。

【0020】
さらに、マウス線維芽細胞2をコラーゲンゲル3と混合し、その上でマウス皮膚角化細胞1を培養する実験を行った(図4)。その結果、野生型マウス由来の線維芽細胞上では角化細胞が増殖・分化した(図3(a))。一方、ペリオスチン欠損マウス由来の線維芽細胞上では角化細胞の増殖・分化が阻害されていた(図3(b))。

【0021】
以上のように、アトピー性皮膚炎由来の組織においては、ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が高いことから、本発明者らは、ペリオスチンが、アトピー性皮膚炎を検出するためのマーカーとして有用であることを見出した。

【0022】
また、本発明は、ペリオスチンを産生する能力を有する細胞を候補物質の存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニング方法も提供する。

【0023】
上記のようにペリオスチン遺伝子は、アトピー性皮膚炎の患者由来の組織で発現レベルが増加し、患者由来の組織中のペリオスチンタンパク質レベルが高いので、患者に投与することにより組織でのペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を減少させる化合物またはその塩、例えば、発現を阻害する化合物またはその塩(ペプチド、タンパク質、合成化合物、もしくは抗ペリオスチン抗体、またはそれらの塩など)は、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤として使用し得る。

【0024】
さらに、ペリオスチンタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩も、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤として使用し得る。よって、本発明は、ペリオスチンと候補物質を接触させて、ペリオスチンの活性の変化を検出することを含む、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニング方法を提供する。

【0025】
2.ペリオスチン
ペリオスチン(periostin)は、骨芽細胞特異因子2とも呼ばれる、約90kDaのタンパク質である(OSF2;Horiuchi K,Amizuka N, Takeshita S,Takamatsu H, Katsuura M, Ozawa H, Toyama Y,Bonewald LF, Kudo A.;Identification and characterization of a novel protein, periostin, with restricted expression to periosteum and periodontal ligament and increased expression by transforming growth factor beta.J Bone Miner Res.1999 Jul;14(7):1239-49.)。ペリオスチンには、alternative splicingによるC末側の長さの違いで区別できるいくつかの転写物が存在することが知られている。ここで、配列番号1に、ヒトのペリオスチン遺伝子の全てのエクソンによる転写産物のDNA配列を示す(Accession No. D13666)。また、ヒトのペリオスチンのその他のsplicing variantのDNA配列の例を、配列番号3、5に示す(それぞれ、Accession Nos. AY918092、AY140646)。また、配列番号2、4、6に、それぞれ、配列番号1、3、5のポリヌクレオチドによってコードされるペリオスチンのアミノ酸配列を示す。

【0026】
本発明の好ましい態様では、配列番号2で表されるアミノ酸配列又はその配列から派生するvariant(例えば、配列番号2、4または6で表されるアミノ酸配列からなるペリオスチン)を含むペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定する。

【0027】
3.本発明のアトピー性皮膚炎の検出方法または診断方法
ペリオスチン遺伝子またはペリオスチンタンパク質量は、アトピー性皮膚炎の患者由来の組織で発現が増加しているので、被験者由来の生体試料におけるペリオスチンは、アトピー性皮膚炎を検出または診断するためのマーカーとして利用し得る。すなわち、本発明は、生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、アトピー性皮膚炎の検出方法を提供する。

【0028】
より具体的には、例えば、(i)被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と、(ii)正常細胞におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量との比較を行う。具体的には、ペリオスチンタンパク質量またはペリオスチンをコードするmRNA量を測定して比較する。

【0029】
発現レベルまたはタンパク質量の測定に用いる生体試料としては、例えば、被験者由来の、皮膚組織、または血液等を用いることができる。好ましくは、被験者由来の皮膚組織を用いる。皮膚組織、または血液等を採取する方法は、公知である。正常細胞は、例えば、アトピー性皮膚炎を患っていない者由来の細胞である。

【0030】
生体試料が皮膚組織等である場合には、発現レベルまたはタンパク質量の測定に利用するために、例えば、そのライセートを調製すること、またはmRNAを抽出することが好ましい。ライセートの調製およびmRNAの抽出は、公知の方法で行うことができ、例えば市販のキットを使用して行う。また、生体試料が、血液等の液状のものである場合には、例えば、緩衝液等で希釈してペリオスチンをコードするmRNA量の測定などに利用するのが好ましい。

【0031】
ペリオスチンタンパク質量の測定は、例えば、免疫測定法などにより行うことができる。好ましくは、免疫測定法で行う。免疫測定法としては、放射免疫測定法(RIA)、免疫蛍光測定法(FIA)、免疫発光測定法、酵素免疫測定法(例えば、Enzyme Immunoassay(EIA)、Enzyme-linked Immunosorbent assay (ELISA))、またはWestern blot法などが挙げられる。

【0032】
RIAで標識に用いる放射性物質としては、例えば、125I、131I、14C、3H、35S、または32Pを利用することができる。

【0033】
FIAで標識に用いる蛍光物質としては、例えば、Eu(ユーロピウム)、FITC、TMRITC、Cy3、PE、またはTexas-Redなどの蛍光物質を利用することができる。

【0034】
免疫発光測定法で標識に用いる発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等を用いることができる。

【0035】
酵素免疫測定法で標識に用いる酵素としては、例えば西洋わさびペルオキシターゼ(HRP)、アルカリホファターゼ(ALP)、グルコースオキシターゼ(GO)等を用いることができる。

【0036】
さらに、抗体または抗原と、これらの標識物質との結合にビオチン-アビジン系を用いることもできる。

【0037】
mRNA量の測定は、公知の方法、例えば、プローブとしてペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計されたプローブを用いるノーザンハイブリダイゼーション、あるいはプライマーとしてペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計されたプライマーを用いるPCR法を用いて行うことができる。「ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計されたプローブ」および「ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計されたプライマー」は、後述の「アトピー性皮膚炎の検出薬または診断薬」の項で説明するものと同様である。

【0038】
そして、例えば、前記(i)の場合のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が、前記(ii)の場合のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と比較して高い場合、例えば、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%以上高い場合にアトピー性皮膚炎である、あるいはアトピー性皮膚炎が疑われると判断できる。

【0039】
また、免疫組織化学により、ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定するようにしても良い。より具体的には、例えば、(i)被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と、(ii)正常細胞におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量との比較を行う。

【0040】
具体的には、免疫組織化学によりペリオスチンまたはペリオスチンをコードするmRNAを可視化し、ペリオスチンタンパク質量またはmRNA量を比較する。生体試料としては、皮膚組織などが挙げられる。免疫組織化学としては、具体的には、酵素標識抗体法、または蛍光抗体法などが挙げられる。酵素標識抗体法としては、例えば、直接法、間接法、アビジン・ビオチン化ペリオキシダーゼ複合体法(ABC法)、もしくはストレプトアビジン・ビオチン化抗体法(SAB)法などの標識抗体法、またはペルオキシダーゼ・抗ペルオキシダーゼ法(PAP法)などの非標識抗体法が挙げられる。

【0041】
蛍光抗体法としては、直接法、または間接法が挙げられる。

【0042】
標識に用いる酵素または蛍光物質としては、前記と同様のものが挙げられる。

【0043】
そして、例えば、(i)の場合のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が、(ii)の場合のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と比較して高い場合、例えば、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、または約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%以上高い場合にアトピー性皮膚炎である、あるいはアトピー性皮膚炎が疑われると判断できる。

【0044】
ここで、(i)被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と(ii)正常細胞におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量の差は、アトピー性皮膚炎の検出または診断の臨界値となるものであり、例えば次のように設定しても良い。

【0045】
先ず、2例以上のアトピー性皮膚炎患者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定し、その平均値(A)を求める。このとき、対象となる患者の例数は2例以上であり、例えば、5例以上、10例以上、50例以上、または100例以上である。一方、2例以上の健常者由来の細胞におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定し、その平均値(B)を求める。このとき、対象となる健常者の例数は2例以上であり、例えば、5例以上、10例以上、50例以上、または100例以上である。そして、求めた平均値AおよびBから[(A-B)/B]×100(%)を計算して、アトピー性皮膚炎由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量の平均値が健常者由来の細胞におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量の平均値と比較して何%高いかを求める。このようにして求めた値を、 (i)被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と(ii)正常細胞におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量の差(臨界値)として設定する。すなわち、(i)の場合のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が、(ii)の場合のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と比較して求めた差以上に高い場合(例えば、統計的に有意に高い場合)に、アトピー性皮膚炎である、またはアトピー性皮膚炎が疑われると判断できる。

【0046】
尚、本発明のアトピー性皮膚炎の検出方法または診断方法では、生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定するので、測定値を平均値(A)および(B)に組み入れて、対象となる患者の例数および対象となる健常者の例数を増やすのが好ましい。例数を増やすことにより、アトピー性皮膚炎の検出または診断の精度を高めることができる。また、求めた健常者由来の細胞におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量の平均値(B)を、「(ii)正常細胞におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量」としても良い。

【0047】
上記アトピー性皮膚炎の検出結果または診断結果は、例えばアトピー性皮膚炎の確定診断を行う場合の補助とすることができる。アトピー性皮膚炎の確定診断を行う場合には、上記検出結果に加えて、理学所見の結果、血清学的検査の結果、および組織学的検査などからなる群から選択される少なくとも1つと組み合わせて、総合的に判断するようにしても良い。

【0048】
4.アトピー性皮膚炎の検出薬または診断薬
本発明はアトピー性皮膚炎の検出薬または診断薬(以下、検出薬等とする。)を提供する。本発明の検出薬等は、(i)ペリオスチンを認識する抗体、(ii) ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計されたプライマー、および(iii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計されたプローブからなる群から選択される少なくとも1つを含有する。
本発明のある態様のアトピー性皮膚炎の検出薬等は、ペリオスチンを認識する抗体を含有する。抗体は、好ましくは、ペリオスチンを特異的に認識する抗体である。ペリオスチンを認識する抗体は、当業者に周知の技法を用いて得ることができる。ペリオスチンを認識する抗体は、ポリクローナル抗体、あるいはモノクローナル抗体(Milstein C, et al., 1983, Nature 305(5934): 537-40)である。例えば、ペリオスチンに対するポリクローナル抗体は、抗原(ペリオスチンまたはその部分ペプチド)を感作した哺乳動物の血液を取り出し、この血液から公知の方法により血清を分離する。ポリクローナル抗体としては、ポリクローナル抗体を含む血清を使用することができる。あるいは必要に応じてこの血清からポリクローナル抗体を含む画分をさらに単離することもできる。また、モノクローナル抗体を得るには、上記抗原を感作した哺乳動物から免疫細胞を取り出して骨髄腫細胞などと細胞融合させる。こうして得られたハイブリドーマをクローニングして、その培養物から抗体を回収しモノクローナル抗体とすることができる。

【0049】
本発明の別の態様のアトピー性皮膚炎の検出薬等は、ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計されたプライマーを含有する。プライマーとして、ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列(例えば、配列番号1,3,または5で表わされる塩基配列)から設計された、例えば、連続する少なくとも15塩基(例えば、15塩基以上、16塩基以上、17塩基以上、18塩基以上、19塩基以上、もしくは20塩基以上)、および/または連続する100塩基以下(例えば、100塩基以下、70塩基以下、60塩基以下、もしくは50塩基以下)、例えば、20塩基以上50塩基以下のポリヌクレオチドからなるプライマーを用いることができる。プライマーセットとして、フォワードプライマーとリバースプライマーの間の距離が、例えば、2500塩基以下、1500塩基以下、または500塩基以下となるように設計することができる。プライマーは、例えば、RT-PCR法などでペリオスチン遺伝子の発現レベルが検出できるように設計する。プライマーの設計は、公知の手法を用いて行なうことができる。このように設計したプライマーは、例えば、配列番号1,3,もしくは5またはその一部(例えば、配列番号1,3,または5のうちの連続する少なくとも15塩基)を含有するヌクレオチドである。必要に応じて、プライマーには、追加の配列を含めることも可能であり、例えば、タグ配列を付加することもできる。

【0050】
本発明のさらに別の態様のアトピー性皮膚炎の検出薬等は、ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計されたプローブを含有する。プローブとして、ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列(例えば、配列番号1,3,または5で表わされる塩基配列)から設計された、連続する少なくとも15塩基(例えば、15塩基以上、16塩基以上、17塩基以上、18塩基以上、19塩基以上、20塩基以上、21塩基以上、22塩基以上、23塩基以上、24塩基以上、25塩基以上、26塩基以上、27塩基以上、28塩基以上、29塩基以上、30塩基以上、35塩基以上、40塩基以上、45塩基以上、もしくは50塩基以上)、および/または、連続する2500塩基以下(例えば、2500塩基以下、1000塩基以下、500塩基以下、もしくは150塩基以下)、例えば、塩基長50~150bpのポリヌクレオチドからなるプローブを用いることができる。プローブは、例えば、ノーザンハイブリダイゼーション法などでペリオスチン遺伝子の発現レベルが検出できるように設計する。プローブの設計は、公知の手法を用いて行うことができる。このように設計したプローブは、例えば、配列番号1,3,もしくは5またはその一部(例えば、配列番号1,3,または5のうちの連続する少なくとも15塩基)を含有するヌクレオチドである。また、プローブは、例えば、放射性標識として32Pなどで標識することができる。また、必要に応じ、プローブを蛍光標識、発光標識または酵素標識などで標識することもできる。当業者であれば、用いた標識物質に適切な検出方法で、ペリオスチン遺伝子の発現レベルを検出することができる。更に、プローブをビオチン化したものを用いることもでき、これをアビジン蛍光色素で処理し蛍光検出することも可能である。

【0051】
本発明の検出薬等は、上記発明のアトピー性皮膚炎の検出方法または診断方法において使用することができる。

【0052】
5.本発明のアトピー性皮膚炎の検出用キットまたは診断用キット
本発明は、前記アトピー性皮膚炎の検出方法または診断方法に使用することができるキットを提供する。
本発明のキットは、ペリオスチンを認識する抗体、ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計されたプライマー、およびペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計されたプローブからなる群から選択される少なくとも1つを含有する。本発明のいくつかの態様のキットは、ペリオスチンを認識する抗体、ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計されたプライマー、またはペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計されたプローブを含有する。「ペリオスチンを認識する抗体」、「ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計されたプライマー」、および「ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列から設計されたプローブ」は、前記説明したのと同様である。
本発明のキットは、上記の他に、容器およびラベルを含んでいてもよい。容器上のまたは容器に伴うラベルには、キットがアトピー性皮膚炎の検出または診断に使用されることが示されていてもよい。また、他のアイテム、例えば、使用説明書等がさらに含まれていてもよい。

【0053】
6.本発明のスクリーニング方法
ペリオスチン遺伝子は、アトピー性皮膚炎の患者由来の組織で発現が増加しているので、投与したときに患者の組織でペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を減少させる化合物またはその塩、例えば、発現を阻害する化合物またはその塩は、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤として使用し得る。すなわち、本発明は、ペリオスチンを産生する能力を有する細胞を候補物質の存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を減少させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。

【0054】
より具体的には、例えば、(i)ペリオスチンを産生する能力を有する細胞を候補物質の存在下で培養した場合と、(ii)ペリオスチンを産生する能力を有する細胞を候補物質の非存在下で培養した場合との間でペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量の比較を行う。比較は、例えば、(i)と(ii)の場合における、ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定して、比較する。

【0055】
具体的には、(i)と(ii)の場合における、ペリオスチンタンパク質量またはペリオスチンをコードするmRNA量を測定して比較する。ペリオスチンを産生する能力を有する細胞としては、例えば、アトピー性皮膚炎患者由来の線維芽細胞、ダニ抗原塗布したマウスの線維芽細胞、あるいはペリオスチンをコードするDNAを含有するベクターで形質転換された細胞などが挙げられる。

【0056】
形質転換する細胞としては、例えば、CHO細胞、およびHEK293細胞などが挙げられる。形質転換された細胞の培養は、公知の方法で行うことができる。

【0057】
候補物質としては、例えば、抗体、ペプチド、タンパク質、合成化合物、またはそれらの塩などが挙げられる。

【0058】
ペリオスチンタンパク質量の測定は、例えば、前記した免疫測定法またはプロテインチップ法により行うことができる。

【0059】
mRNA量の測定は、公知の方法、例えば、プローブとして配列番号1,3,もしくは5またはその一部を含有するヌクレオチドを用いるノーザンハイブリダイゼーション、あるいはプライマーとして配列番号1,3,もしくは5またはそれらの一部を含有するヌクレオチドを用いるPCR法を用いて行うことができる。

【0060】
そして、例えば、(i)の場合のペリオスチンの発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を、(ii)の場合のペリオスチンの発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と比較して減少させる、例えば、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%以上減少させる候補物質を、ペリオスチン遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩として選択することができる。

【0061】
また、ペリオスチンタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩も、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤として使用し得る。よって、本発明は、ペリオスチンと候補物質を接触させて、ペリオスチンの活性の変化を検出することを含む、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニング方法を提供する。

【0062】
候補物質としては、例えば、抗体(例えば、抗ペリオスチン抗体)、ペプチド、タンパク質、合成化合物、またはそれらの塩などが挙げられる。

【0063】
「接触」とは、例えば、ペリオスチン遺伝子を発現する細胞またはその細胞抽出液と候補物質とを同一の反応系または培養系に存在させること、精製したペリオスチンと候補物質とを同一の反応系に存在させることなどが挙げられる。さらに具体的には、細胞培養器に候補物質を添加すること、細胞と候補物質とを混合すること、細胞を候補物質の存在下で培養すること、細胞抽出液と候補物質とを混合すること、精製したペリオスチンと候補物質とを混合することなどが挙げられる。

【0064】
「ペリオスチンの活性」とは、例えば、細胞接着を阻害する活性、皮膚角化細胞を活性化する活性、線維芽細胞を活性化する活性、細胞外マトリックスタンパク質と結合する活性、細胞表面分子と結合する活性、細胞増殖因子と結合する活性、または細胞遊走活性などが挙げられる。ペリオスチンの活性は、公知の方法を用いて検出することができる。例えば、細胞外マトリックスタンパク質と結合する活性は、フィブロネクチン、テネシンC,コラーゲンをコートしてペリオスチンを混合することで評価できる(J Allergy Clin Immunol, vol.118, 98-104, 2006)。また、皮膚角化細胞または線維芽細胞を活性化する活性については、細胞とペリオスチンを混合して細胞内のAkt分子のリン酸化により評価できる(Cancer Cell, vol.5, 329-339, 2004)。

【0065】
そして、ペリオスチンの活性を変化させる候補物質、例えば、ペリオスチンの活性を対照と比較して減少させる、例えば、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%以上減少させる候補物質を、ペリオスチンタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩として選択することができる。ここで、対照は、例えば、候補物質の非存在下でのペリオスチンの活性である。

【0066】
さらに、インテグリンαV3とペリオスチンとの結合量、thymic stromal lymphopoietin産生量または皮膚角化細胞の分化・増殖活性を低下させる化合物またはその塩も、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤として使用し得る。よって、本発明は、インテグリンαV3とペリオスチンとを、候補物質の存在下で接触させた場合における、インテグリンαV3とペリオスチンとの結合量、thymic stromal lymphopoietin産生量または皮膚角化細胞の分化・増殖活性を測定することを含む、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニング方法を提供する。

【0067】
ここで、「インテグリンαV3」とは、インテグリンαVとインテグリンβ3との複合体を意味する。

【0068】
本発明のいくつかの態様では、(i)候補物質の存在下でインテグリンαV3とペリオスチンとを接触させた場合におけるインテグリンαV3とペリオスチンとの結合量またはthymic stromal lymphopoietin産生量と、(ii)候補物質の非存在下でインテグリンαV3とペリオスチンとを接触させた場合におけるインテグリンαV3とペリオスチンとの結合量またはthymic stromal lymphopoietin産生量との比較を行う。ここで、「接触」とは、例えば、インテグリンαV3遺伝子を発現する細胞またはその細胞抽出液とペリオスチンとを同一の反応系または培養系に存在させること、精製したインテグリンαV3とペリオスチンとを同一の反応系に存在させることなどが挙げられる。さらに具体的には、細胞培養器にペリオスチンを添加すること、細胞とペリオスチンとを混合すること、細胞をペリオスチンの存在下で培養すること、細胞抽出液とペリオスチンとを混合すること、精製したインテグリンαV3とペリオスチンとを混合することなどが挙げられる。

【0069】
好ましくは、インテグリンαV3とペリオスチンとの接触を、インテグリンαV3を発現する細胞、特には、インテグリンαV3を細胞表面に発現する細胞とペリオスチンとを接触することにより行う。すなわち、(i)候補物質の存在下でインテグリンαV3を発現する細胞とペリオスチンとを接触させた場合におけるインテグリンαV3とペリオスチンとの結合量またはthymic stromal lymphopoietin産生量と、(ii)候補物質の非存在下でインテグリンαV3を発現する細胞とペリオスチンとを接触させた場合におけるインテグリンαV3とペリオスチンとの結合量またはthymic stromal lymphopoietin産生量との比較を行う。

【0070】
インテグリンαV3を発現する細胞、特には、インテグリンαV3を細胞表面に発現する細胞としては、内因性インテグリンαV3発現細胞またはインテグリンαV3をコードするDNAを含有するベクターで形質転換された細胞などが挙げられる。

【0071】
内因性インテグリンαV3発現細胞としては、例えば、皮膚角化細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞、腸管平滑筋細胞、子宮平滑筋細胞または活性化マクロファージ、破骨細胞、ある種のがん細胞などを挙げることができる。内因性インテグリンαV3発現細胞は、好ましくは、皮膚角化細胞である。内因性インテグリンαV3発現細胞は、上記例示した細胞を不死化した細胞でもよい。不死化細胞は、公知の方法で得ることができ、例えば、上記例示した細胞に、ウイルス(例、SV40およびHPV)を感染させて細胞を不死化する遺伝子を導入することにより得ることができる。不死化細胞の培養は、公知の方法で行うことができる。

【0072】
形質転換する細胞としては、微生物細胞または動物細胞(例、ヒト細胞、マウス細胞、ラット細胞など)が好ましく、例えば、マウス初代培養線維芽細胞、SW480細胞、NIH3T3細胞、HerLa細胞、HaCat細胞、MRC5細胞、CHO細胞、HEK293細胞などが挙げられる。本発明のさらに好ましい態様では、形質転換する細胞は、形質転換後に、インテグリンαV3とペリオスチンとの結合によりthymic stromal lymphopoietinを産生するような細胞であり、例えば、皮膚角化細胞、腸管上皮細胞(初代培養細胞、細胞株)などを挙げることができる。形質転換細胞の培養は、公知の方法で行うことができる。

【0073】
ここで、配列番号8に、インテグリンαV遺伝子のDNA配列を示す(Accession No. BC136442.1)。また、配列番号10に、インテグリンβ3遺伝子のDNA配列を示す(Accession No. BC127666.1)。配列番号9、11は、それぞれ、配列番号8、10によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を示す。

【0074】
本発明の別のいくつかの態様では、(i)候補物質の存在下でインテグリンαV3とペリオスチンとを接触させた場合における皮膚角化細胞の分化・増殖活性と、(ii)候補物質の非存在下でインテグリンαV3とペリオスチンとを接触させた場合における皮膚角化細胞の分化・増殖活性との比較を行う。ここで、「接触」とは、例えば、インテグリンαV3遺伝子を発現する細胞またはその細胞抽出液とペリオスチンとを同一の反応系または培養系に存在させることなどが挙げられる。さらに具体的には、細胞培養器にペリオスチンを添加すること、細胞とペリオスチンとを混合すること、細胞をペリオスチンの存在下で培養すること、細胞抽出液とペリオスチンとを混合することなどが挙げられる。

【0075】
候補物質としては、例えば、抗体、ペプチド、タンパク質、合成化合物、またはそれらの塩などが挙げられる。

【0076】
インテグリンαV3とペリオスチンとの結合量は、免疫沈降法、プルダウンアッセイ、BIAcoreを用いたアッセイ、ELISA(enzyme linked immune solvent assay)、ウエスタンブロットなどの免疫化学的方法により測定することができる。

【0077】
thymic stromal lymphopoietin(TSLP)産生量は、例えば、免疫測定法などにより行うことができる。免疫測定法としては、放射免疫測定法(RIA)、免疫蛍光測定法(FIA)、免疫発光測定法、酵素免疫測定法(例えば、Enzyme Immunoassay(EIA)、Enzyme-linked Immunosorbent assay (ELISA))、またはWestern blot法などが挙げられる。
あるいは、TSLPの産生量は、TSLPのmRNA量を測定することにより行うこともできる。mRNAの測定は、公知の方法、例えば、プローブとしてインテグリンαVまたはインテグリンβ3をコードする遺伝子の塩基配列から設計されたプローブをいるノーザンハイブリダイゼーション、あるいはプライマーとしてインテグリンαVまたはインテグリンβ3をコードする遺伝子の塩基配列から設計されたプライマーを用いるPCR法を用いて行うことができる。プローブおよびプライマーは公知の方法により設計できる。

【0078】
皮膚角化細胞の分化・増殖活性は、例えば、インテグリンαV3とペリオスチンとの接触に続き、放射ラベルしたチミジン(例えば、[3H]-TdR)を培養液中に添加し、さらに5~24時間、好ましくは8~16時間培養する。培養後のチミジンの取り込み量をシンチレーションカウンターで測定することにより、皮膚角化細胞の増殖活性を確認することができる。候補物質は、チミジンの添加前、添加時又は添加後に培養液に加えればよいが、チミジンの添加前、つまりインテグリンαV3とペリオスチンとの接触時に加えることが好ましい。

【0079】
そして、例えば、(i)の場合のインテグリンαV3とペリオスチンとの結合量を、(ii)の場合のインテグリンαV3とペリオスチンとの結合量と比較して減少させる、例えば、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%以上減少させる候補物質を、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤として選択することができる。

【0080】
あるいは、例えば、(i)の場合のTSLP産生量を、(ii)の場合のTSLP産生量と比較して減少させる、例えば、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%以上減少させる候補物質を、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤として選択することができる。

【0081】
あるいは、例えば、(i)の場合の皮膚角化細胞の分化・増殖活性を、(ii)の場合の皮膚角化細胞の分化・増殖活性と比較して減少させる、例えば、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%以上減少させる候補物質を、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤として選択することができる。

【0082】
7.本発明のスクリーニング用キット
本発明は、上記アトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニング方法に使用することができるキットを提供する。具体的には、前記キットは、ペリオスチンを産生する能力を有する細胞、および/またはインテグリンαV3を発現する細胞を含む。本発明のいつくかの態様のキットは、ペリオスチンを産生する能力を有する細胞、またはインテグリンαV3を発現する細胞を含む。「ペリオスチンを産生する能力を有する細胞」および「インテグリンαV3を発現する細胞」は、前記本発明のスクリーニング方法で説明した通りである。前記キットは、さらに、細胞培養用培地、培地に添加する抗生物質、血清(ウシ胎児血清等)などを含んでいても良い。
また、前記キットは、ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定するための成分を含んでいても良い。そのような成分として、例えば、ペリオスチン遺伝子の塩基配列またはその一部を含有するポリヌクレオチド、ペリオスチンタンパク質のアミノ酸配列を含むペプチドを認識する抗体などが挙げられる。これらのポリヌクレオチドおよび抗体は、前記と同様である。
あるいは、前記キットは、インテグリンαV3とペリオスチンとの結合量、thymic stromal lymphopoietin産生量または皮膚角化細胞の分化・増殖活性を測定するための成分を含んでいても良い。
前記キットは、上記の他に、容器およびラベルを含んでいてもよい。容器上のまたは容器に伴うラベルには、キットがアトピー性皮膚炎の予防・治療剤のスクリーニングに使用されることが示されていてもよい。また、他のアイテム、例えば、使用説明書等がさらに含まれていてもよい。

【0083】
8.本発明の医薬組成物
本発明は、上記本発明のスクリーニング方法により得られた化合物またはその塩を含む、アトピー性皮膚炎の予防・治療用医薬組成物を提供する。本発明のいくつかの態様の医薬組成物は、インテグリンαV3とペリオスチンとの結合を阻害する抗体を含む。好ましくは、インテグリンαV3とペリオスチンとの結合を阻害する抗体は、抗インテグリンαV抗体である。

【0084】
インテグリンαV3とペリオスチンとの結合を阻害する抗体は、市販のものを用いても良いし、公知の方法で製造するようにしても良い。市販のものとしては、例えば、BioLegendから入手できる抗インテグリンαV抗体を挙げることができる。

【0085】
本発明の医薬組成物は、本発明のスクリーニング方法により得られた化合物またはその塩を有効成分として含み、さらに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の形態で提供することが好ましい。
本発明の医薬組成物の適用の対象となる疾患は、アトピー性皮膚炎である。

【0086】
「薬学的に許容され得る担体」とは、賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等が挙げられる。そのような担体の一つ以上を用いることにより、注射剤、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤あるいはシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。これらの医薬組成物は、経口あるいは非経口的に投与することができる。非経口投与のためのその他の形態としては、1つ以上の活性物質を含み、常法により処方される注射剤などが含まれる。注射剤の場合には、生理食塩水又は市販の注射用蒸留水等の薬学的に許容される担体中に溶解または懸濁することにより製造することができる。

【0087】
本発明の医薬組成物の投与量は、患者の年齢、性別、体重及び症状、治療効果、投与方法、処理時間、あるいは医薬組成物に含有される活性成分である化合物またはその塩の種類などにより異なるが、例えば、活性成分が、抗インテグリンαV抗体である場合、通常成人一人当たり、一回につき100μgから1000mgの範囲で投与することができるが、この範囲に限定されるものではない。

【0088】
例えば抗インテグリンαV抗体を注射剤により投与する場合は、アトピー性皮膚炎に罹患しているヒト患者に対し、1回の投与において1kg体重あたり、10μg~100mgの量を、1日あたり1回~数回投与することができる。投与の形態としては、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射あるいは腹腔内注射などが挙げられるが、好ましくは静脈内注射である。また、注射剤は、場合により、非水性の希釈剤(例えばポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、エタノール等のアルコール類など)、懸濁剤あるいは乳濁剤として調製することもできる。そのような注射剤の無菌化は、フィルターによる濾過滅菌、殺菌剤の配合等により行うことができる。注射剤は、用時調製の形態として製造することができる。即ち、凍結乾燥法などによって無菌の固体組成物とし、使用前に無菌の注射用蒸留水または他の溶媒に溶解して使用することができる。

【0089】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0090】
(1)ウサギポリクローナル抗ペリオスチン抗体の作製
ペリオスチン(ヌクレオチド配列:配列番号1、Accession No.D13666;アミノ酸配列:配列番号2、Accession No. BAA02837)にV5エピトープ/Hisタグを付加させたリコンビナントタンパク質を昆虫細胞であるS2細胞において発現させた上で精製した。
【実施例1】
【0091】
具体的には、S2細胞の形質転換体は次のように作製した。pMT/Bip/V5-HisAプラスミド(Invitrogen,Carlsbad, CA)にペリオスチンの上記部分をコードするcDNAを挿入して、これをpMT/Bip/V5-HisA-periostinとした。S2細胞にpMT/Bip/V5-HisA-periostin及びハイグロマイシン耐性遺伝子を発現するプラスミドであるpCoHygro(Invitrogen)を公知の方法で共導入し、形質転換した。ハイグロマイシンにより形質転換体を選択し、安定形質転換体を得た。
【実施例1】
【0092】
そして、S2細胞の形質転換体では、V5エピトープ/Hisタグの結合したペリオスチンを発現させた。
【実施例1】
【0093】
リコンビナントタンパク質の精製は次のように行った。ペリオスチン遺伝子安定形質転換体S2細胞の培地に硫酸銅を加えることにより、リコンビナントタンパク質の発現を誘導した。これにより、リコンビナントタンパク質は培養上清中に発現分泌された。この培養上清をPBSに透析した後、ニッケルレジン(Ni-NTA Agarose, Qiagen, Hilden, Germany)と混合して、リコンビナントタンパク質をレジンに結合させた。レジンを洗浄して夾雑物を取り除き、イミダゾール含有緩衝液にてリコンビナンタンパク質を溶出した。溶出されたリコンビナントタンパク質をPBSに透析し、これを動物の免疫原とした。
【実施例1】
【0094】
次に、これらのリコンビナントタンパク質をCFA(完全フロイントアジュバント)(Sigma社製のFreund's Adjuvant, Complete)と混合してラビットに免疫し、その後血清を採取した。
【実施例1】
【0095】
具体的な手順は次の通りである。ラビットとして、New Zealand Whiteラビット, 雌、体重1.5-2 kg(ケービーティーオリエンタル、鳥栖)を用いた。
【実施例1】
【0096】
これらのラビットは、免疫原であるリコンビナントペリオスチンとCFAの混合物をラビット背部皮下数カ所に注射することにより免疫した。
【実施例1】
【0097】
免疫の5~7週後、免疫ラビットの耳静脈より注射針と注射器を用いて採血し、血清を得た。
【実施例1】
【0098】
最後に、血清からIgGを次のように精製した。すなわち、採取した血清に二倍量の50 mM酢酸ナトリウム(pH4.0)を加えた後、塩酸でpHを4.0に調整した。血清を攪拌しながら、血清の1/15量のカプリル酸を加え、30分攪拌した後、9200gで10分間遠心した。上清をPBSに透析して、精製IgGとした。
【実施例1】
【0099】
(2)ラットモノクローナル抗ペリオスチン抗体の作製
KLH(スカシガイヘモシアニン)結合ヒトペリオスチンペプチド(20-50 μg/ラット)またはS2リコンビナントペリオスチンタンパク(20-50 μg/ラット)をCFA(完全フロイントアジュバント)またはTiterMax Gold(化学合成アジュバント)と混合して一対の相互に結合したものを免疫原とした。
【実施例1】
【0100】
具体的な手順は次の通りである。Sigma社に依頼してFmoc法で作製したペリオスチンペプチド(CPVRKLQANKKVQGSRRRLR:配列番号7)にmaleimide基を持ったKLHを混合して結合させることによりKLH結合ヒトペリオスチンペプチドを作製した。
【実施例1】
【0101】
次に、S2リコンビナントペリオスチンタンパクは、次のように作製した。先ず、ペリオスチン遺伝子安定形質転換体S2細胞の培地に硫酸銅を加えることにより、リコンビナントペリオスチンタンパク質の発現を誘導した。これにより、リコンビナントペリオスチンは培養上清中に発現分泌された。この培養上清をPBSに透析した後、ニッケルレジン(Ni-NTA Agarose, Qiagen, Hilden, Germany)と混合して、リコンビナントペリオスチンをレジンに結合させた。レジンを洗浄して夾雑物を取り除き、イミダゾール含有緩衝液にてS2リコンビナントペリオスチンタンパクを溶出した。
【実施例1】
【0102】
CFAは、Sigma社製のFreund's Adjuvant, Completeを用いた。TiterMax Goldは、Funakoshi Co., Ltd.から購入した。そして、KLH結合ヒトペリオスチンペプチド溶液またはS2リコンビナントペリオスチンタンパク溶液1容に対して、CFAまたはTiterMax Goldを1容の割合で混合した。
【実施例1】
【0103】
次に、雌ラットの足蹠に免疫原として20-50μgのKLH結合ヒトペリオスチンペプチド溶液またはS2リコンビナントペリオスチンタンパク溶液とCFAまたはTiterMax Goldとの混合物を皮下注射し、10日~2週間後、再度ラットの足蹠に免疫原として20-50μgのKLH結合ヒトペリオスチンペプチド溶液またはS2リコンビナントペリオスチンタンパク溶液とCFAまたはTiterMax Goldとの混合物を皮下注射した。ここで、ラットは、Wisterラット、雌、6-8週齢(日本チャールズリバー、横浜)を用いた。
【実施例1】
【0104】
最終免疫より3-4日後、免疫したラットの膝窩・鼠径・腸骨リンパ節内の細胞と、ミエローマ細胞を1対1から10対1の割合で混合し、一般的な方法でポリエチレングリコールを加えて細胞融合させ、ハイブリドーマコロニーを選別した。
【実施例1】
【0105】
具体的には、細胞融合は次のように行った。混合したリンパ節細胞とミエローマ細胞を遠心して上清を除き、室温でポリエチレングリコール(PEG1500、Roche、Switzerland)1 mlに1分間かけて懸濁した後、37度で1分間攪拌した。血清不含培地1 mlを1分間かけて加え、その後血清不含培地10 mlを1分間かけて加えた。細胞を数回洗浄した後、96穴プレートに分注して37度5%CO2存在下で培養した。
【実施例1】
【0106】
選別の方法としては、細胞融合から7-14日後、抗原に使用したペプチドまたはタンパクを固相化し、融合細胞培養上清を一次抗体としたELISAの系にて行った。ELISAは具体的には、次のように行った。1μg/mlのペプチドまたはタンパクを96穴プレートに分注し、数時間固相化させた。固相化溶液を洗浄した後、融合細胞培養上清を各ウェルに加え、1時間室温に静置した。融合細胞培養上清を洗浄して、二次抗体としてペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ラットIgG抗体(GE Healthcare、Little Chalfont、UK)を加え1時間室温に静置した。二次抗体を洗浄後、ABTSペルオキシダーゼ基質(KPL、Gaithersburg、Maryland)を加えて発色させ、405 nmの吸光度を測定した。
【実施例1】
【0107】
そして、選別したハイブリドーマ細胞からIgGを次のように精製した。ハイブリドーマ細胞をICR-SCIDマウス、雌、6-8週齢(日本クレア、東京)の腹腔内に注射し、7-10日後に貯留した腹水を採取した。採取した腹水に二倍量の50 mM酢酸ナトリウム(pH4.0)を加えた後、塩酸でpHを4.0に調整した。血清を攪拌しながら、血清の1/15量のカプリル酸を加え、30分攪拌した後、9200gで10分間遠心した。上清をPBSに透析して、精製IgGとした。
【実施例1】
【0108】
(3)ペリオスチンの組織免疫染色
染色は、一般的なABC法と呼ばれる組織免疫染色法により行った。
生体試料としてパラフィン包埋皮膚組織を用いた。パラフィン包埋皮膚組織は、20人のアトピー性皮膚炎患者、および5人の正常者から、それぞれ採取し、作製しておいたものである。これに、脱パラフィン、内因性ペルオキシダーゼ活性の阻害、ブロッキングといった処理を施した。具体的には、これらの操作は次のように行った。組織をメタノール+3%H2O2で15-30分間処理した後、Protein Block Serum-Free(DAKO、Glostrup、Denmark)で5-10分間処理した。
【実施例1】
【0109】
上記作成したラビットポリクローナル抗ペリオスチン抗血清、あるいはラットモノクローナル抗ペリオスチン抗体を、それぞれ1000倍希釈あるいは10μg/mlの濃度で一次抗体として加えた。その後、HRP標識された一次抗体に対する抗体(Envision、DAKO社から購入)を二次抗体として加え、DAB(diaminobenzidine)(Sigma社)にて発色させた。
【実施例1】
【0110】
さらに、核染色、脱水、封入などの操作を行った。具体的には、これらの操作は次のように行った。100μlの一次抗体を組織上にのせ、室温で60分間静置した。一次抗体を洗浄した後、100μlの二次抗体を組織上にのせ、室温で60分間静置した。二次抗体を洗浄した後、DAB基質溶液中に組織スライドを浸して、1-20分間発色させた。ヘマトキシリンで核染色した後、公知の方法で脱水、封入した。
【実施例1】
【0111】
上記組織免疫染色により、ペリオスチンの発現部位が茶色に染まる。染色の結果、20人のアトピー性皮膚炎患者由来の皮膚組織全てにおいてペリオスチン遺伝子の発現レベルが高かった。例えば図1(b)の写真を見ると、アトピー性皮膚炎患者の真皮部分ではペリオスチンが強く発現していることが分かる。
【実施例1】
【0112】
一方、対照群として用いた5人の正常皮膚組織においてはいずれもペリオスチン遺伝子の発現レベルはきわめて低かった。例えば図1(a)の染色写真を見ると、正常者の皮膚組織ではほとんどペリオスチンの発現が見られないことが分かる。
【実施例1】
【0113】
(4)アトピー性皮膚炎モデルマウス
マウスの皮膚にダニアレルゲンを塗布してアトピー性皮膚炎を発症させるアトピー性皮膚炎モデルマウス実験を以下のように行った。
【実施例1】
【0114】
8~12週齢の野生型BALB/cマウス(日本クレア社)11匹と、8~12週齢のペリオスチン欠損BALB/cマウス(米国インデイアナ大学コンウエイ博士より供与、Periostin null mice exhibit dwarfism, incisor enamel defects, and an early-onset periodontal disease-like phenotypes, Mol Cell Biol, vol.25, 11131-11144, 2005)10匹を実験に用いた。先ず、マウスの耳にセロハンテープを貼って剥がす作業を左右の耳の表裏で各3回ずつ繰り返し、左右の耳の表裏からセロハンテープ(共和社製のパイロンセロハン粘着テープ)で優しく角層を剥がした(tape stripping)。角層を剥がした左右の耳の表裏に、ダニ抗原10mg/mlを25μmlずつ塗布した。ダニ抗原は次のように調製して用いた。すなわち、ダニ虫体を脱脂乾燥後、1gに対し10mlの50%グリセリン5%NaCl液を加え、4℃にて48時間振盪して抽出し、さらに遠心分離した後、濾過することでダニ抗原を調製した。左右の耳の表裏にダニ抗原を塗布する作業を1週間おきに行い、8回目の24時間後にマウスを解析した。すなわち、回収したマウスの皮膚組織をホルマリン固定した後、パラフィンで包埋し、スライドを作製した。スライドを脱パラフィン後、HE染色、マッソン・トリクローム染色、および組織免疫染色を行った。そして、染色したマウス皮膚組織を顕微鏡で観察した。
【実施例1】
【0115】
この結果、野生型マウスにおいては、ダニアレルゲン塗布により表皮肥厚、線維化、および好酸球性炎症などのアトピー性皮膚炎に特徴的な組織学的変化が生じた(図2(a))。一方、ペリオスチン欠損マウスにおいては、これらのアトピー性皮膚炎に特徴的な組織学的変化が著明に軽減していた(図2(b))。
【実施例1】
【0116】
(5)マウス皮膚角化細胞培養系
マウス線維芽細胞をコラーゲンゲルと混合し、その上でマウス皮膚角化細胞を培養する実験を以下のように行った。
【実施例1】
【0117】
タイプIコラーゲンゲル3(新田ゼラチン株式会社製のCellmatrix)2mlにマウス線維芽細胞(MEF)2 (periostin WT or KO) 2×106cellsを混和し、inner dish(Millicell)に入れて、37℃で30分培養し、ゲルを固めた。ゲルを固めたものの上に、生後2日の新生児の野生型BALB/cマウス(日本クレア社)、または生後2日のペリオスチン欠損BALB/cマウス(米国インデイアナ大学コンウエイ博士より供与、Periostin null mice exhibit dwarfism, incisor enamel defects, and an early-onset periodontal disease-like phenotypes, Mol Cell Biol, vol.25, 11131-11144, 2005)から採取したマウス皮膚角化細胞(mouse primary keratinocyte)1を2×106cellsまいた。DMEMにてperiostin 10μg/ml(コントロールとしてPBS)とした培養液4を、outer dishに1ml入れ、outer dishの中に、inner dishを入れて37℃で培養した(図4参照)。培養液は3、5日目に交換した。5日目、7日目に、inner dishを回収し、ホルマリン固定し、スライドを作製した。スライドを脱パラフィン後、HE染色、マッソン・トリクローム染色、および組織免疫染色を行い、顕微鏡観察を行った。
ここで、periostinは、次のようにして得た。pMT/Bip/V5-HisAプラスミドにペリオスチンcDNAを挿入し、ショウジョウバエS2細胞にpCoHygroプラスミドとともに形質転換させた。400 mg/mlのハイグロマイシン(Sigma-Aldrich)存在下で培養し、ペリオスチン安定細胞株を樹立した。ペリオスチン安定細胞株の培養上清を集め、Ni-NTAアガロース(Qiagen)に添加してペリオスチンを精製した。
【実施例1】
【0118】
この結果、野生型マウス由来の線維芽細胞上では角化細胞が正常に増殖・分化した(図3(a))。一方、ペリオスチン欠損マウス由来の線維芽細胞上では角化細胞の増殖・分化が阻害されていた(図3(b))。
【実施例1】
【0119】
以上、実施例に示した通り、ペリオスチン遺伝子は、アトピー性皮膚炎の患者由来の組織で発現が増加しているので、被験者由来の生体試料におけるペリオスチンは、アトピー性皮膚炎を検出または診断するためのマーカーとして利用し得る。
【実施例1】
【0120】
また、ペリオスチン遺伝子は、アトピー性皮膚炎の患者由来の組織で発現が増加しているので、ペリオスチン遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩は、アトピー性皮膚炎の予防・治療剤として使用し得る。
【実施例1】
【0121】
さらに、これらのことから、ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を指標として、アトピー性皮膚炎の予防・治療薬をスクリーニングできることも分かる。
【実施例2】
【0122】
タイプIコラーゲンゲル3(新田ゼラチン株式会社のCellmatrix)2mlをperiostin 10μg/mlとともに
inner dish (Millicell)に入れて、37℃で培養し、ゲルを固めた。ゲルを固めたものの上に、生後2日の新生児野生型BALB/cマウス(日本クレア社)から採取したマウス皮膚角化細胞を2×106 cellsまいた。DMEMにIL-13(Peprotech社) 10ng/ml、抗インテグリンαV抗体(BioLegend)10μg/ml、periostin(実施例1と同様の方法にて入手。) 10μg/mlを加えて培養液とし、この培養液をouter dishに1ml入れて37℃でマウス皮膚角化細胞を培養した。培養液は3、5日目に交換した。5日目の培養液中のthymic stromal lymphopoietin(TSLP)をELISA(R&D SystemsのQuantikine)にて測定した。7日目にinner dishを回収し、培養細胞をホルマリン固定し培養細胞のスライドを作成した。
並行してIL-13、抗インテグリンαV抗体及び/又はperiostinが存在しない系についても実験した。
【実施例2】
【0123】
結果を図5と図6に示す。
図5は、培養液中のTSLPのELISAでの測定結果を示すものである。図5から、IL-13 又はperiostinの存在により、TSLPの産生が高まり、両者が同時に存在することによりTSLPの産生は著しく高まるが、インテグリンとperiostinの結合を阻害する抗インテグリンαV抗体の添加により、TSLPの産生は著しく低下することが分かる。
図6はスライドの培養細胞をHE染色した結果を示す組織像写真である。図6(a)~(e)は、それぞれ、図5の一番左の棒グラフ~一番右の棒グラフに対応する。ペリオスチンとIL-13を加えると、皮膚角化細胞が増殖、分化していることがわかり(図6(d))、これに抗インテグリンαV抗体を加えると、その増殖、分化が抑制されることが分かる(図6(e))。
【実施例2】
【0124】
以上、実施例に示した通り、インテグリンαV3とペリオスチン結合量の低下、又はTSLP産生量の低下は、皮膚角化細胞の増殖・分化の抑制につながるので、インテグリンαV3とペリオスチン結合量又はTSLP産生量を低下させる化合物またはその塩は、アトピー性皮膚炎の予防・治療薬として使用し得る。特に、インテグリンαV3とペリオスチン結合を阻害する抗インテグリンαV抗体は、アトピー性皮膚炎の予防・治療薬として使用し得る。
【実施例2】
【0125】
また、これらのことから、インテグリンαV3とペリオスチン結合量、TSLP産生量の低下または皮膚角化細胞の増殖・分化を指標として、アトピー性皮膚炎の予防・治療薬をスクリーニングできることも分かる。
【符号の説明】
【0126】
1…皮膚角化細胞、2…繊維芽細胞、3…コラーゲンゲル、4…培養液。
【配列表フリ-テキスト】
【0127】
配列番号7:合成構築物
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5