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明細書 :神経活動を可視化するプローブ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5624469号 (P5624469)
登録日 平成26年10月3日(2014.10.3)
発行日 平成26年11月12日(2014.11.12)
発明の名称または考案の名称 神経活動を可視化するプローブ
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/66        (2006.01)
A01K  67/027       (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
FI C12N 15/00 A
C12Q 1/66 ZNA
A01K 67/027
G01N 33/50 Z
G01N 33/15 Z
G01N 21/78 C
請求項の数または発明の数 7
全頁数 28
出願番号 特願2010-524740 (P2010-524740)
出願日 平成21年8月12日(2009.8.12)
国際出願番号 PCT/JP2009/064225
国際公開番号 WO2010/018840
国際公開日 平成22年2月18日(2010.2.18)
優先権出願番号 2008207546
2009024382
優先日 平成20年8月12日(2008.8.12)
平成21年2月5日(2009.2.5)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成24年8月10日(2012.8.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】石本 哲也
【氏名】森 寿
【氏名】和泉 宏謙
個別代理人の代理人 【識別番号】100099623、【弁理士】、【氏名又は名称】奥山 尚一
【識別番号】100096769、【弁理士】、【氏名又は名称】有原 幸一
【識別番号】100107319、【弁理士】、【氏名又は名称】松島 鉄男
【識別番号】100114591、【弁理士】、【氏名又は名称】河村 英文
【識別番号】100118407、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 尚美
【識別番号】100125380、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 綾子
【識別番号】100125036、【弁理士】、【氏名又は名称】深川 英里
【識別番号】100142996、【弁理士】、【氏名又は名称】森本 聡二
【識別番号】100154298、【弁理士】、【氏名又は名称】角田 恭子
【識別番号】100162330、【弁理士】、【氏名又は名称】広瀬 幹規
審査官 【審査官】鳥居 敬司
参考文献・文献 バイオテクノロジージャーナル, 2006, Vol.6, No.2, p.225-228
Bioconjug. Chem., 2007, Vol.18, p.956-962
Nat. Biotechnol., 2000, Vol.18, p.313-316
日本農芸化学会2002年度大会講演要旨集, 2002, p.150
Cell, 1997, Vol.91, p.741-752
細胞工学, 2006, Vol.25, No.9, p.1028-1031
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00-1/70
A01K 67/00-67/04
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
WPIDS/WPIX(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
神経活動を可視化するための1分子又は2分子からなるプローブであって、
(1) 融合蛋白1(NLS-lucN末KID-GGGGSGGGGSGGGGS-KIX-lucC末)もしくは融合蛋白5(NLS-lucN末KID-lucC末)から選択される、1分子からなるプローブ、
(2) 融合蛋白26(NLS-lucN末-KGGRADPAFLYKVE-KID)と融合蛋白33(NLS-KIX-GGGGSGGGGSGGGGS-lucC末)との組み合わせ、
融合蛋白34(NLS-lucN末-GGGGSGGGGSKGGRADPAFLYKVE-KID)と融合蛋白33との組み合わせ、融合蛋白34と融合蛋白44(NLS-lucC末-GGGGSGGGGSGGGGS-KIX)との組み合わせ、
融合蛋白38(NLS-lucN末-KID)と融合蛋白25(NLS-KIX-KGGRADPAFLYKVE-lucC末)との組み合わせ、融合蛋白38と融合蛋白33との組み合わせ、融合蛋白38と融合蛋白44との組み合わせ、
融合蛋白42(NLS-lucN末-GGGGSGGGGSGGGGS-KID)と融合蛋白33との組み合わせ、融合蛋白42と融合蛋白44との組み合わせ、
融合蛋白30(NLS-KID-GGGGSGGGGSGGGGS-lucN末)と融合蛋白33との組み合わせ、
融合蛋白23(NLS-KID-KGGRADPAFLYKVE-lucC末)と融合蛋白28(NLS-lucN末-KGGRADPAFLYKVE-KIX)との組み合わせ、融合蛋白23と融合蛋白32(NLS-KIX-GGGGSGGGGSGGGGS-lucN末)との組み合わせ、融合蛋白23と融合蛋白36(NLS-lucN末-GGGGSGGGGSKGGRADPAFLYKVE-KIX)との組み合わせ、融合蛋白23と融合蛋白41(NLS-lucN末-KIX)との組み合わせ、融合蛋白23と融合蛋白45(NLS-lucN末-GGGGSGGGGSGGGGS-KIX)との組み合わせ、
融合蛋白27(NLS-lucC末-KGGRADPAFLYKVE-KID)と融合
蛋白36との組み合わせ、融合蛋白27と融合蛋白41との組み合わせ、融合蛋白27と
融合蛋白45との組み合わせ、
融合蛋白39(NLS-lucC末-KID)と融合蛋白36との組み合わせ、融合蛋白39と融合蛋白41との組み合わせ、融合蛋白39と融合蛋白45との組み合わせ、
融合蛋白43(NLS-lucC末-GGGGSGGGGSGGGGS-KID)と融合蛋白28との組み合わせ、融合蛋白43と融合蛋白36との組み合わせ、融合蛋白43と融合蛋白41との組み合わせ、融合蛋白43と融合蛋白45との組み合わせ、
融合蛋白31(NLS-KID-GGGGSGGGGSGGGGS-lucC末)と融合蛋白28との組み合わせ、融合蛋白31と融合蛋白36との組み合わせ、融合蛋白31と融合蛋白41との組み合わせ、融合蛋白31と融合蛋白45との組み合わせ、もしくは、融合蛋白31と融合蛋白32との組み合わせ、
から選択される、2分子からなるプローブ、または、
(3) 融合蛋白11(lucN末-KGGRADPAFLYKVE-Actin)と融合蛋白8(Actin-GGGGSGGGGSGGGGS-lucC末)との組み合わせ、融合蛋白11と融合蛋白10(lucC末-KGGRADPAFLYKVE-Actin)との組み合わせ、融合蛋白11と融合蛋白19(Actin-lucC末)との組み合わせ、融合蛋白11と融合蛋白21(Actin-GGGGSGGGGSGGGGS-lucC末)との組み合わせ、
融合蛋白16(Actin-GGGGSGGGGSKGGRADPAFLYKVE-lucN末)と融合蛋白8との組み合わせ、融合蛋白16と融合蛋白10との組み合わせ、融合蛋白16と融合蛋白19との組み合わせ、融合蛋白16と融合蛋白21との組み合わせ、
融合蛋白18(Actin-lucN末)と融合蛋白8との組み合わせ、融合蛋白18と融合蛋白10との組み合わせ、融合蛋白18と融合蛋白19との組み合わせ、融合蛋白18と融合蛋白21との組み合わせ、
融合蛋白20(Actin-GGGGSGGGGSGGGGS-lucN末)と融合蛋白8との組み合わせ、融合蛋白20と融合蛋白10との組み合わせ、融合蛋白20と融合蛋白19との組み合わせ、もしくは、融合蛋白20と融合蛋白21との組み合わせ、
から選択される、2分子からなるプローブ
のいずれか一以上から選択されるプローブ(上記において、lucN末は、配列番号1の1~1245番目の塩基によりコードされる、ルシフェラーゼのN末端側部分を意味し、lucC末は、配列番号1の1246~1653番目の塩基によりコードされる、ルシフェラーゼのC末端側部分を意味する)
【請求項2】
(1) 融合蛋白1もしくは融合蛋白5から選択される、1分子からなるプローブ、
(2) 融合蛋白31と融合蛋白28との組み合わせ、融合蛋白31と融合蛋白36と
の組み合わせ、融合蛋白31と融合蛋白41との組み合わせ、融合蛋白31と融合蛋白4
5との組み合わせ、もしくは、融合蛋白31と融合蛋白32との組み合わせ、
から選択される、2分子からなるプローブ、又は、
(3) 融合蛋白11と融合蛋白10との組み合わせ、融合蛋白11と融合蛋白21と
の組み合わせ、融合蛋白16と融合蛋白19との組み合わせ、融合蛋白16と融合蛋白2
1との組み合わせ、融合蛋白18と融合蛋白21との組み合わせ、もしくは、融合蛋白2
0と融合蛋白21との組み合わせ、
から選択される、2分子からなるプローブ
のいずれか一以上から選択される請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
神経活動を可視化するためのプローブをコードするDNAであって、
(1) 融合蛋白1(NLS-lucN末KID-GGGGSGGGGSGGGGS-KIX-lucC末)をコードする配列を含むDNA、もしくは融合蛋白5(NLS-lucN末KID-lucC末)をコードする配列を含むDNA、
(2) 融合蛋白26(NLS-lucN末-KGGRADPAFLYKVE-KID)をコードする配列と融合蛋白33(NLS-KIX-GGGGSGGGGSGGGGS-lucC末)をコードする配列とを含んでなるDNA、
融合蛋白34(NLS-lucN末-GGGGSGGGGSKGGRADPAFLYKVE-KID)をコードする配列と融合蛋白33をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白34をコードする配列と融合蛋白44(NLS-lucC末-GGGGSGGGGSGGGGS-KIX)をコードする配列とを含んでなるDNA、
融合蛋白38(NLS-lucN末-KID)をコードする配列と融合蛋白25(NLS-KIX-KGGRADPAFLYKVE-lucC末)をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白38をコードする配列と融合蛋白33をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白38をコードする配列と融合蛋白44をコードする配列とを含んでなるDNA、
融合蛋白42(NLS-lucN末-GGGGSGGGGSGGGGS-KID)をコードする配列と融合蛋白33をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白42をコードする配列と融合蛋白44をコードする配列とを含んでなるDNA、
融合蛋白30(NLS-KID-GGGGSGGGGSGGGGS-lucN末)をコードする配列と融合蛋白33をコードする配列とを含んでなるDNA、
融合蛋白23(NLS-KID-KGGRADPAFLYKVE-lucC末)をコードする配列と融合蛋白28(NLS-lucN末-KGGRADPAFLYKVE-KIX)をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白23をコードする配列と融合蛋白32(NLS-KIX-GGGGSGGGGSGGGGS-lucN末)をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白23をコードする配列と融合蛋白36(NLS-lucN末-GGGGSGGGGSKGGRADPAFLYKVE-KIX)をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白23をコードする配列と融合蛋白41(NLS-lucN末-KIX)をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白23をコードする配列と融合蛋白45(NLS-lucN末-GGGGSGGGGSGGGGS-KIX)をコードする配列とを含んでなるDNA、
融合蛋白27(NLS-lucC末-KGGRADPAFLYKVE-KID)をコードする配列と融合蛋白36をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白27をコードする配列と融合蛋白41をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白27をコードする配列と融合蛋白45をコードする配列とを含んでなるDNA、
融合蛋白39(NLS-lucC末-KID)をコードする配列と融合蛋白36をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白39をコードする配列と融合蛋白41をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白39をコードする配列と融合蛋白45をコードする配列とを含んでなるDNA、
融合蛋白43(NLS-lucC末-GGGGSGGGGSGGGGS-KID)をコードする配列と融合蛋白28をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白43をコードする配列と融合蛋白36をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白43をコードする配列と融合蛋白41をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白43をコードする配列と融合蛋白45をコードする配列とを含んでなるDNA、
融合蛋白31(NLS-KID-GGGGSGGGGSGGGGS-lucC末)をコードする配列と融合蛋白28をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白31をコードする配列と融合蛋白36をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白31をコードする配列と融合蛋白41をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白31をコードする配列と融合蛋白45をコードする配列とを含んでなるDNA、もしくは、融合蛋白31をコードする配列と融合蛋白32をコードする配列とを含んでなるDNA、又は、
(3) 融合蛋白11(lucN末-KGGRADPAFLYKVE-Actin)をコードする配列と融合蛋白8(Actin-GGGGSGGGGSGGGGS-lucC末)をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白11をコードする配列と融合蛋白10(lucC末-KGGRADPAFLYKVE-Actin)をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白11をコードする配列と融合蛋白19(Actin-lucC末)をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白11をコードする配列と融合蛋白21(Actin-GGGGSGGGGSGGGGS-lucC末)をコードする配列とを含んでなるDNA、
融合蛋白16(Actin-GGGGSGGGGSKGGRADPAFLYKVE-lucN末)をコードする配列と融合蛋白8をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白16をコードする配列と融合蛋白10をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白16をコードする配列と融合蛋白19をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白16をコードする配列と融合蛋白21をコードする配列とを含んでなるDNA、
融合蛋白18(Actin-lucN末)をコードする配列と融合蛋白8をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白18をコードする配列と融合蛋白10をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白18をコードする配列と融合蛋白19をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白18をコードする配列と融合蛋白21をコードする配列とを含んでなるDNA、
融合蛋白20(Actin-GGGGSGGGGSGGGGS-lucN末)をコードする配列と融合蛋白8をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白20をコードする配列と融合蛋白10をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白20をコードする配列と融合蛋白19をコードする配列とを含んでなるDNA、もしくは、融合蛋白20をコードする配列と融合蛋白21をコードする配列とを含んでなるDNA、
のいずれかから選択されるDNA(上記において、lucN末は、配列番号1の1~1245番目の塩基によりコードされる、ルシフェラーゼのN末端側部分を意味し、lucC末は、配列番号1の1246~1653番目の塩基によりコードされる、ルシフェラーゼのC末端側部分を意味する)
【請求項4】
(1) 融合蛋白1をコードする配列を含むDNA、もしくは融合蛋白5をコードする配列を含むDNA、
(2) 融合蛋白31をコードする配列と融合蛋白28をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白31をコードする配列と融合蛋白36をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白31をコードする配列と融合蛋白41をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白31をコードする配列と融合蛋白45をコードする配列とを含んでなるDNA、もしくは、融合蛋白31をコードする配列と融合蛋白32をコードする配列とを含んでなるDNA、又は、
(3) 融合蛋白11をコードする配列と融合蛋白10をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白11をコードする配列と融合蛋白21をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白16をコードする配列と融合蛋白19をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白16をコードする配列と融合蛋白21をコードする配列とを含んでなるDNA、融合蛋白18をコードする配列と融合蛋白21をコードする配列とを含んでなるDNA、もしくは、融合蛋白20をコードする配列と融合蛋白21をコードする配列とを含んでなるDNA、
のいずれかから選択されるDNAである、請求項3に記載のDNA。
【請求項5】
請求項1に記載のプローブを、神経細胞内に産生させるステップと、
ルシフェラーゼの発光を測定するステップと
を含む、神経活動の可視化方法。
【請求項6】
請求項3に記載のDNAが導入されたげっ歯類。
【請求項7】
請求項3に記載のDNAが導入されたげっ歯類を用いる記憶形成の神経活動を促進する
物質のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、神経活動を可視化するためのプローブおよび該プローブが組み込まれたトランスジェニック動物に関する。
【背景技術】
【0002】
脳の神経活動にかかわる分子は多種多様であるが、記憶に係わるものとしてcAMP応答要素結合蛋白質(cAMP response element binding protein:以下「CREB」と称する)が知られている。
CREBは転写制御因子であり、セリン133残基のリン酸化により活性化される。
活性化されたCREBは遺伝子のプロモーター領域に存在するCRE配列(TGACGTCA)に結合し、共役因子のCREB結合蛋白質(CREB-binding protein :以下、「CBP」と称する)の存在下に遺伝子発現を引き起こす。
CREBがリン酸化されると、CREBのKID(kinase inducible domein:リン酸化部位+CBP結合部位))のセリン113とCBPのKIX(CREB結合部位)のチロシン(Tyr)658の側鎖が水素結合し、CREBとCBPが安定な転写複合体を形成する。
また、アクチンは、細胞の形状制御やミオシンとの相互作用による細胞の運動性を担っているが、その重合・脱重合が、シナプス伝達の効率を双方向に変えていることが明らかとなり、記憶学習を始めとする神経活動との係わりあいが注目されている。
【0003】
一方、蛋白質相互作用を解析する方法として、スプリットルシフェラーゼ法が知られている(特許文献1および2)。

【特許文献1】特開2007-325546
【特許文献2】WO02/008766
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および2に記載のスプリットルシフェラーゼ法は、ホタルの発光蛋白質であるルシフェラーゼをN末端側部分、C末端側部分に2分割し、両者に蛋白質A、蛋白質Bを融合し、2つの融合蛋白質を細胞に発現させ、蛋白質A、Bが結合するとルシフェラーゼN末端、C末端が接近し、再び発光する2分子型である。この計測法では蛍光観察における自家蛍光に当たるノイズがなく、生きた動物内での計測に向いている。しかしこの方法は原法にのっとって単純に融合蛋白質を作るだけで、すべての蛋白質間相互作用が計測できるわけではなく、個別の蛋白質に対してその蛋白質のどのアミノ酸配列を用いるか、どのようにルシフェラーゼ蛋白質を融合するかについて詳細な検討が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、神経活動に関与する蛋白質間相互作用を詳細に研究するため、サイクリックAMP応答要素結合蛋白質(CREB)の活性化又はアクチンの重合を可視化することができるプローブを提供する。
このプローブは、CREBの活性化をモニターできる2分子型スプリットルシフェラーゼ、従来の2分子型スプリットルシフェラーゼ法を改良した1分子型スプリットルシフェラーゼ法、又はアクチンの重合を可視化する2分子型スプリットルシフェラーゼからなるプローブをいう。ここで、1分子型及び2分子型とは、蛋白質になった時点でそれぞれ、一つの分子又は二つの分子になっていることを意味する。
本発明の方法により、神経活動に関与する蛋白質間相互作用を可視化して観察することができる。具体的にはCREBの活性化を単一細胞レベルで、また、アクチンの重合を可視化して観察することが可能となり、さらに、1分子化によって生きた動物内で蛋白質間相互作用を観察するためのトランスジェニック動物の作製が容易となった。
【0006】
本発明の第一の態様は、神経活動を可視化するための1分子又は2分子からなるプローブであって、N末端側部分とC末端側部分に分割されたルシフェラーゼを含むプローブに関する。具体的には、下記の(1)~(3)のうちのいずれか一以上から選択される。
(1)1分子中に、サイクリックAMP応答要素結合蛋白質(CREB)のKIDドメイン、CREB結合蛋白質(CBP)のKIXドメイン、ルシフェラーゼのN末端部分(LucN)及びルシフェラーゼのC末端部分(LucC)を含むプローブ、
(2)(a)LucN及びKIDドメインを含む分子、ならびにLucC及びKIXドメインを含む分子の2分子からなるプローブ、若しくは
(b)LucN及びKIXドメインを含む分子、ならびにLucC及びKIDドメインを含む分子の2分子からなるプローブ、又は
(3)アクチン及びLucNを含む分子、ならびにアクチン及びLucNを含む分子の2分子からなるプローブ。
【0007】
これらのプローブは、核以降シグナル(NLS)を含んでもよく、特に、N末端側にNLSを含ませることができる。
【0008】
(1)のプローブは、1分子型のスプリットルシフェラーゼであり、LucN、LucC、KIXドメイン、KIDドメインを任意の順番で連結させることができ、例えば、N末端側から下記の順に連結させることができる。
LucN-KID-KIX-LucC
LucC-KID-KIX-LucN
LucN-KIX-KID-LucC
LucC-KIX-KID-LucC
【0009】
LucN、LucC、KIXドメイン、KIDドメインのそれぞれの間や、プローブ分子のN末端及び/又はC末端側に、さらにリンカー配列を含ませることができる。例えば、リンカー配列を、KIDドメインとKIXドメインの間に挿入することができる。
【0010】
このプローブの変形例として、KIXドメインを含まない1分子型スプリットルシフェラーゼであるプローブが挙げられる。このプローブは、N末端側からLucN-KID-LucC又はLucC-KID-LucNの順で連結させたものであり、KIDドメインの全体的な構造変化を検知することができる。
【0011】
(2)のプローブは、2分子型スプリットルシフェラーゼであり、(a)LucN及びKIDドメインを含む分子、ならびにLucC及びKIXドメインを含む分子の2分子からなるプローブ、又は、(b)LucN及びKIXドメインを含む分子、ならびにLucC及びKIDドメインを含む分子の2分子からなるプローブである。
【0012】
これらのプローブは、例えば、N末端からLucC-KIX及びLucN-KIDの順に連結した2分子型スプリットルシフェラーゼ、又は、LucC-KID及びLucN-KIXの順に連結した2分子型スプリットルシフェラーゼである。
LucN、LucC、KIXドメイン、KIDドメインのそれぞれの間や、各プローブ分子のN末端及び/又はC末端側に、さらにリンカー配列を含ませることができる。
【0013】
(3)のプローブは、2分子型スプリットルシフェラーゼであり、アクチン及びLucNを含む分子、ならびにアクチン及びLucNを含む分子の2分子からなるプローブである。例えば、N末端側から
アクチン-LucN及びアクチン-LucCの2分子型スプリットルシフェラーゼ
アクチン-LucN及びLucC-アクチンの2分子型スプリットルシフェラーゼ
LucN-アクチン及びLucC-アクチンの2分子型スプリットルシフェラーゼ
LucN-アクチン及びアクチン-LucCの2分子型スプリットルシフェラーゼ
が挙げられる。
【0014】
LucN、LucC、アクチンのそれぞれの間や、プローブ分子のN末端及び/又はC末端側に、さらにリンカー配列を含ませることができる。例えば、LucCとアクチン及び/又はLucNとアクチンの間にリンカーを含ませることができる。
【0015】
本発明の第二の態様は、神経活動を可視化するための蛋白質として1分子又は2分子のプローブをコードするDNAであって、N末端側部分とC末端側部分に分割されたルシフェラーゼをそれぞれコードする配列を含むDNAに関する。具体的には、下記の(1)~(3)のいずれか一から選択される。
(1)サイクリックAMP応答要素結合蛋白質(CREB)のKIDドメイン、CREB結合蛋白質(CBP)のKIXドメイン、ルシフェラーゼのN末端部分(LucN)及びルシフェラーゼのC末端部分(LucC)を1分子としてコードする配列を含むDNA、
(2)(a)LucN及びKIDドメインを含む分子をコードする配列、ならびにLucC及びKIXドメインを含む分子をコードする配列を含むDNA、若しくは、
(b)LucN及びKIXドメインを含む分子をコードする配列、ならびにLucC及びKIDドメインを含む分子をコードする配列を含むDNA、又は
(3)アクチン及びLucNを含む分子をコードする配列、ならびにアクチン及びLucNを含む分子をコードする配列を含んでなるDNA。
【0016】
これらのDNAは、核以降シグナル(NLS)をコードする配列を含んでもよい。特に、蛋白質のN末端側に対応する側にNLSをコードする配列を含ませることができる。さらに、これらのDNAは、スクリーニングのための薬剤耐性遺伝子のようなマーカー遺伝子、真核生物エンハンサープロモーター、ポリA付加シグナル配列を含んでもよい。
【0017】
(1)のDNAは、第一の態様の(1)のプローブをコードするDNAであり、(2)のDNAは第一の態様の(2)のプローブをコードするDNAであり、(3)のDNは第一の態様の(3)のプローブをコードするDNAである。(2)及び(3)のように2分子型スプリットルシフェラーゼをコードするDNAは、別個のベクターに担持され、それぞれのベクターから1分子ずつ2分子のプローブを生じてもよく、また、同一のベクターにIRES配列を挟んで2分子のプローブをコードするDNAを担持させてもよい。同一のベクターに2分子のプローブをコードするDNAを担持させる場合には、後述するトランスジェニック動物を作成する場合に好適である。
【0018】
本発明の第三の態様は、可視化方法であって、本願発明の1分子型又は2分子型のスプリットルシフェラーゼであるプローブを神経細胞内に産生させるステップと、ルシフェラーゼの発光を測定するステップとを含む。
プローブは、例えば、in vivo及びin vitroの神経細胞で産生させることができ、例えば、トランスジェニックにより生きている動物の神経細胞内に発現させることができる。
神経細胞が興奮することにより、本願発明のプローブの立体構造が変化し、ルシフェラーゼ活性が復活して発光する。神経細胞の興奮と発光は比例関係にあると考えられるため、興奮している神経細胞の数や部位、興奮状態などを定量的に測定することができる。この方法によれば、in vivo及びin vitroでの神経細胞の興奮を調べることができ、ルシフェラーゼの毒性が極めて低いことから、生きている動物における神経細胞の興奮をルシフェラーゼの発光により観測することができる。例えば、生きている動物において、記憶形成と神経活動を可視化して研究することができる。
【0019】
この可視化方法には、本発明のプローブをコードするDNAを導入されたげっ歯類、例えば、本発明のプローブをコードするDNAによるトランスジェニックマウスを用いることができる。
このようなげっ歯類を用いることによって、記憶形成などの神経活動を促進する物質のスクリーニングを行うことも可能である。
【発明の効果】
【0020】
CREBのポリペプチドからDNA結合ドメインや二量体形成ドメインなどを除去することによって、細胞の中でドミナントネガティブ分子として機能することがないため、内在性のCBPの活性を損なうことなく、神経活動に伴う発光を測定できる。また、核局在化ドメインをN末端に融合することにより、プローブ蛋白質が核に局在し、さらに、二分子型のスプリットルシフェラーゼを1分子化することで発光量が増大する。また、プローブの1分子化によってトランスジェニック動物作成に適した形となる。二分子型CREBプローブでは、KIDドメインのリン酸化に、より敏感に反応するトランスジェニック動物を作製することができる。
また、本発明のアクチンを連結した2分子型スプリットルシフェラーゼにより動物の体内で記憶形成などの神経活動に係わるアクチン重合を直接観察することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1の結果を示すグラフである。融合蛋白をHEK293細胞に導入後、細胞内cAMPを上昇させるフォスコリン(Forskolin)10μMを投与した場合における発光量を相対蛍光として示す。融合蛋白1の発光量が最も増大した。
【図2】実施例2の結果を示す。神経細胞に融合蛋白1を発現させ、刺激を与えた場合の発光量の推移を示す。0分で刺激を与え、そのまま光子の数を計測した。塩化カリウム(KCl)刺激によって発光強度が約6倍にまで上昇した。すなわち、KCl刺激によって数十分以内に、著しく発光量が増大した様子を表している。
【図3】実施例3の結果を示す。融合蛋白からKIXドメインを省いた場合(融合蛋白5)の神経細胞内でKClに対する反応を示す。
【図4】実施例4の結果を示すグラフである。神経細胞にスプリットルシフェラーゼとCREBのリン酸ドメインであるKIDとの融合蛋白を発現させ、各種刺激を与えた後の発光の増大を示す。 刺激直後の0分から1分までの発光量と、40分から41分までの発光量の比を取り、グラフの縦軸とした。コントロールに対して有意に増加したものは黒星印、50mMのKClに対して有意に増加したものは白星印がついている(t検定による)。
【図5】実施例5の結果を示すグラフである。野生型ルシフェラーゼは図4のようなKClに対する反応を示さないことから、図4の反応は挿入したKIDドメインに依存しておきていることを示す。
【図6】実施例7の結果を示すグラフである。アクチンの配列とスプリットルシフェラーゼの配列の組み合わせを示し、アクチンのN末端側にスプリットルシフェラーゼのN末端、C末端が融合されるような蛋白が最適であることを示す。なお、図6中のFRB-FKBPのスプリットルシフェラーゼはすでに報告のある融合蛋白である。
【図7】実施例8の結果を示すグラフである。IRES配列でスプリットルシフェラーゼとアクチンの融合蛋白を結合させ、HEK293細胞に発現させた場合のアクチン重合阻害剤濃度と発光の関係を示す。
【図8】実施例9の結果を示す写真である。重合阻害剤の濃度を振った際の、重合アクチンの染色像(ローダミンーファロイジンによる)である。
【図9】実施例10の結果を示すグラフである。IRESの前後を交換した場合の発光量の違いを示す。
【図10】実施例7の結果を示すグラフである。36通りのアクチンプローブの組み合わせの発光量の観察結果を示す。
【図11】実施例12の結果を示すグラフである。72通りの2分子型CREBプローブの組み合わせの発光量の観察結果を示す。
【図12】実施例13の結果を示すグラフである。融合蛋白31と融合蛋白45の組み合わせについて、フォルスコリンの有無での発光量の観察結果を示す。

【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<ルシフェラーゼ>
本発明に使用されるルシフェラーゼとして、任意の生物に由来するルシフェラーゼを使用することができる。例えば、ホタルルシフェラーゼやヒカリコメツキルシフェラーゼなど昆虫のルシフェラーゼ;ウミホタルルシフェラーゼ;ヤコウチュウルシフェラーゼ;発光プランクトン(Metridia pacifica)ルシフェラーゼ;ウミシイタケル(Renilla)属のルシフェラーゼ;ホタルイカルシフェラーゼ、それらの変異体などが挙げられる。好ましいものとして、ホタル由来のルシフェラーゼ(EC1.13.12.7)が挙げられ、さらに具体的には、配列番号1のPhotinus pyralis由来のルシフェラーゼが挙げられる。
【0023】
本発明に使用されるルシフェラーゼは、N末端側部分(LucN)とC末端側部分(LucC)の2つのドメインに分割される。分割されたルシフェラーゼのN末端およびC末端が、各々では蛍光を示さず、結合して再び活性を取り戻すようにするために、活性中心が2つに分割されるような分け方をする必要がある。ルシフェラーゼは、活性中心を含む広い間隔を挟んで、一つのβバレルと二つのβシートからなる大きなN末端ドメインとC末端部位の二つのドメインに折り畳まれていることが知られている。したがって、これらの二つのドメインが連結している柔軟な部位で分割すればよい。この分割はルシフェラーゼ遺伝子の蛋白質をコードしている塩基配列で行うことが好ましく、例として1245番目の塩基と1246番目の塩基の間での分割が挙げられる。
【0024】
<アクチン>
本発明に使用されるアクチンは、例えば、マウスβアクチンDNA(アクセッションナンバー:BC138614)でコードされる蛋白質が挙げられる。
【0025】
<KID>
本発明に使用されるKIDドメインは、例えば、マウスCREB遺伝子(アクセッションナンバー:BC021649)の蛋白質をコードする領域中の258塩基から438塩基のDNAおよび該DNAでコードされるポリペプチドが挙げられる。
【0026】
<KIX>
本発明に使用されるKIXドメインは、例えば、マウスCBP遺伝子(アクセッションナンバー:BC072594)の蛋白質をコードする領域中の1755塩基から1998塩基のDNAおよび該DNAでコードされるポリペプチドが挙げられる。
【0027】
<核移行シグナル(NLS)>
本発明に使用される核移行シグナルは、例えば、SV40の核移行シグナルが挙げられる。該移行シグナルのアミノ酸配列は以下のとおりである。
LMDPKKKRKVDPKKKRKVG (配列番号2)
【0028】
<リボソーム内部進入部位(IRES)>
本発明に使用されるIRESは、例えば、pIRES2-EGFP(クロンテック社)のプラスミド中のIRES配列(配列番号3)が挙げられる。
【0029】
<リンカー(Linker)>
本発明に使用されるリンカーとして、以下の配列のポリペプチドが挙げられる。
GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号4)
EAAAREAAARRAAAR(配列番号5)
【0030】
<プラスミドの構築>
複数DNAフラグメントを組み込む方法、例えば、インビトロゲン社のマルチサイトゲートウェイ(登録商標)システムが挙げられる。
マルチサイトゲートウェイシステムは、3つのプラスミド(ドナーベクターと称されるpDONR P4-P1R、pDONR221、pDONR P2R-P3)の中に、作ろうとする融合蛋白質の一部となるDNA配列や、遺伝子発現を調節するプロモーター領域を挿入する。
挿入の方法は次のとおりである。
【0031】
(1)挿入配列をPCRで増幅する際に、attB配列をPCR産物の両側に付加されるようにプライマーを設計する。
(2)ドナーベクターの中に2箇所存在するattP配列とPCR産物のattB配列が、BPクロナーゼと呼ばれる酵素によって反応し(BP反応)、ドナーベクターのattB配列にPCR産物がはさまれる形で挿入される。
(3)これらの反応は試験管内で進行する、この反応液内に含まれるプラスミドによってコンピテント大腸菌(TOP10:インビトロジェン)を形質転換させ、寒天培地上にコロニーを形成させる。
(4)その中の一つのコロニー中のプラスミドを次の工程で使用する。
(5)これらPCR産物を挿入したドナーベクターはエントリーベクターと呼ばれる。3つのエントリーベクターとデスティネーションベクター(pDEST R4-R3)を試験管内で混ぜ、LRクロナーゼと反応させることによって、エントリーベクターに挿入された3つのPCR産物が直列する形で、デスティネーションベクターに組み込まれる。その際、pDONR P4-P1R, pDONR221, pDONR P2R-P3の順番で組み込まれるので、目的の融合蛋白質を発現するプラスミドを正確に得ることができる。
(6)こうして最終的に得られたプラスミドにはアンピシリン耐性遺伝子、SV40真核生物エンハンサープロモーター、ポリA付加シグナル配列が存在する。
プラスミド精製にはキアゲン社QIA prep spin miniprep kitを用いることができる。
【0032】
なお、インビトロゲン社のマルチサイトゲートウェイシステムでプラスミドを構築し、融合蛋白質に特定のアミノ酸配列が付加される場合がある。例えば、アクチンの場合、アクチンの配列とルシフェラーゼN末端もしくはC末端の間にKGGRADPAFLYKVE(配列番号58)のアミノ酸配列が付加される。この特定のアミノ酸配列付加は、本発明の効果に影響しない。
【0033】
<プラスミドの構築2>
本発明において、プラスミドの構築に、部位特異的変異導入法を利用することもできる。具体的には、例えば、東洋紡社のKOD plus mutagenesis kitを使用すればよい。
【0034】
<ドナーベクター>
(a) pDONR P4-P1R
プロモーター配列もしくはプロモーター配列に核移行シグナルを連結したものを組み込んだものを使用できる。プロモーター配列は、プロメガ社のプラスミドpGL4.13にコードされているSV40エンハンサープロモーターを用いることができる。
【0035】
(b)pDONR221ドナーベクター
挿入したDNA配列は、例えば、以下のものである。
・アクチン
・ルシフェラーゼ(野生型)
・lucN末
・lucC末
・KID配列
・KIX配列
・lucN末-KID配列-linker配列
・lucN末-KIX配列-linker配列
・lucC末-KID配列-linker配列
・lucN末-KID配列
【0036】
複数の配列をpDONR221に挿入する場合は、あらかじめプラスミドpLITMUS28(ニューイングランドバイオラボ社)のマルチクローニングサイトの制限酵素サイトを利用して、それぞれの配列が連続となるように、pLITMUS28に挿入することができる。その後PCRによってそれら連続する配列を増幅し、pDONR221にBP反応によって挿入することができる。
ルシフェラーゼ(野生型)以外はすべて終止コドンを含んでいない。
【0037】
(c)pDONR P2R-P3ドナーベクター
挿入したDNA配列は以下のものを使用することができる。
アクチン
lucN末
lucC末
KID配列
KIX配列
すべての配列は終止コドンを含んでいる。
【0038】
pDONR P4-P1Rプラスミドに、BP反応を利用して対象となる配列を挿入する場合には、対象となるDNA配列に対応したforward primerの5'側に
attB4-forward配列:5'-GGGGACAACTTTGTATAGAAAAGTTGAA-3'(配列番号59)を
対象となるDNA配列に対応したreverse primerの3'側に
attB1-reverse配列:5'-GGGGACTGCTTTTTTGTACAAACTTGA-3’(配列番号60)を
を付加したプライマーセットを用いることができる。
【0039】
pDONR221プラスミドに、BP反応を利用して対象となる配列を挿入する場合には、対象となるDNA配列に対応したforward primerの5'側に
attB1-forward配列:5'-GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTT-3'(配列番号61)を
対象となるDNA配列に対応したreverse primerの3'側に
attB2-reverse配列:5'-GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTT-3'(配列番号62)を
を付加したプライマーセットを用いることができる。
【0040】
pDONR P2R-P3プラスミドに、BP反応を利用して対象となる配列を挿入する場合には、対象となるDNA配列に対応したforward primerの5'側に
attB2-forward配列:5'-GGGGACAGCTTTCTTGTACAAAGTGGAA-3'(配列番号63)を
5'対象となるDNA配列に対応したreverse primerの3'側に
attB3-reverse配列:5'-GGGGACAACTTTGTATAATAAAGTTGT-3'(配列番号64)を
を付加したプライマーセットを用いることができる。
【0041】
マルチサイトゲートウェイでのドナーベクター作成用プラスミドとして、pDONR221の代わりに、pENTR/D-TOPO(Invitrogen)を使用することができる。pENTR/D-TOPO(Invitrogen)はpDONR221と同じく、マルチサイトゲートウェイシステムにおいて、ドナーベクターを作製するためのプラスミドであるが、pDONR221と異なる点は、遺伝子の挿入方法である。pDONR221はBP反応を用いてPCR産物をプラスミドに組み込むのに対し、pENTR/D-TOPOはトポイソメラーゼによるDNA結合を利用してプラスミドにPCR産物を組み込む。したがって、pDONR221にPCR産物を組み込む際にはattB配列をプライマーの両端につける必要があるが、pENTR/D-TOPOでは平滑末端のPCR産物を直接組み込むことができる。
【0042】
<発光機能の確認>
本発明のプローブの発光能の確認は、例えば、CREBの場合、ヒト腎臓由来の細胞株であるHEK293細胞を培養し、培養開始2日後に融合蛋白質を遺伝子導入し、培養開始3日後に、CREBをリン酸化するフォルスコリンを培地に添加し、翌日、培養細胞を分離する。分離した細胞をプレートに移し、ルシフェリンを添加して発光量をルミノメーターで測定すればよい。
【0043】
<トランスジェニックマウス>
トランスジェニックマウスは以下の手順で作製することができる。
(1)発現を誘導するプロモーター、発現させようとする遺伝子、mRNAにポリアデニンを付加するpolyA signalの3つが直列に連なった直鎖状DNAを作製する。
(2)作製した直鎖状DNAを人工的に受精させた受精卵にマイクロインジェクションし、また別の偽妊娠させた母親の胎内に戻す。
(3)受精卵のうちでゲノムDNAに、インジェクションしたDNAが組み込まれたものがトランスジェニックマウスとして生まれる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
[参考例1]
<ルシフェラーゼ>
本発明に使用したルシフェラーゼは、プラスミドpGL4.13(プロメガ社)のホタルルシフェラーゼ遺伝子をコードする部分を以下のプライマーでPCR増幅した。
Forward primer 5'-ATGGAAGATGCCAAAAACATTAAGA-3'(配列番号6)
Reverse primer 5'-TTACACGGCGATCTTGCCGCCCTTC-3'(配列番号7)
【0045】
[参考例2]
<分割ルシフェラーゼ:lucN末>
lucN末は、ホタルルシフェラーゼの配列の1塩基目から25塩基目の配列Forward 5'-ATGGAAGATGCCAAAAACATTAAGA-3'(配列番号6)と、1221塩基から1245塩基までの配列5'-TACAAACGCTCTCATCGACAAGGAC-3'(配列番号8)の相補鎖であるReverse 5'-GTCCTTGTCGATGAGAGCGTTTGTA-3'(配列番号9)とをDNA配列に対応するPCRプライマーセットとして用い、1-1245の配列を増幅取得した。その際のPCRの鋳型配列は、プラスミドpGL4.13である。
【0046】
[参考例3]
<分割ルシフェラーゼ:lucC末>
lucC末は、ホタルルシフェラーゼの配列の1246塩基目から1270塩基目の配列5'-GGCTGGCTGCACAGCGGCGACATCG-3'(配列番号10)と、1629塩基から1653塩基までの配列5'-GAAGGGCGGCAAGATCGCCGTGTAA-3'(配列番号11)の相補鎖である 5'-TTACACGGCGATCTTGCCGCCCTTC-3'(配列番号7)をDNA配列に対応するPCRプライマーセットとして用い、1246-1653の配列を増幅取得した。その際のPCRの鋳型配列は、プラスミドpGL4.13である。
【0047】
[参考例4]
<アクチン>
アクチンの配列の1塩基目から25塩基目の配列Forward 5'-ATGGATGACGATATCGCTGCGCTGG-3'(配列番号12)と、1104塩基から1128塩基までの配列5'-CATCGTGCACCGCAAGTGCTTCTAG-3'(配列番号13)の相補鎖であるReverse 5'-CTAGAAGCACTTGCGGTGCACGATG-3'(配列番号14)をDNA配列に対応するPCRプライマーセットとして用い、1-1128の配列を増幅取得した。その際のPCRの鋳型配列は、RNeasy mini Kit(キアゲン社)によって成体のマウス(C57BL6)の大脳皮質からtotal RNAを精製し、Sper ScriptIIIkit(インビトロジェン)で逆転写反応を行ったcDNAである。
【0048】
[参考例5]
<KID配列>
CREBの蛋白質をコードする配列の258塩基目から282塩基目の配列Forward 5'-CAGATTTCAACTATTGCAGAAAGTG-3'(配列番号15)と、414塩基から438塩基までの配列5'-AGAAGAAAAGTCAGAAGAGGAGACT-3'(配列番号16)の相補鎖であるReverse 5'-AGTCTCCTCTTCTGACTTTTCTTCT-3'(配列番号17)をDNA配列に対応するPCRプライマーセットとして用い、258-438の配列を増幅取得した。その際のPCRの鋳型配列は、RNeasy mini Kit(キアゲン社)によって成体のマウス(C57BL6)の大脳皮質からtotalRNAを精製し、Sper ScriptIIIkit(インビトロジェン)で逆転写反応を行ったcDNAである。
【0049】
[参考例6]
<KIX配列>
CBPの蛋白質をコードする配列の1755塩基目から1779塩基目の配列Forward 5'- GGTGTTCGAAAAGGCTGGCATGAAC-3'(配列番号18)と、1974塩基から1998塩基までの配列5'-TAAAATACAAAAAGAACTAGAAGAA-3'(配列番号19)の相補鎖であるReverse 5'-TTCTTCTAGTTCTTTTTGTATTTTA-3’(配列番号20)をDNA配列に対応するPCRプライマーセットとして用い、1755-1998の配列を増幅取得した。その際のPCRの鋳型配列は、RNeasy mini Kit(キアゲン社)によって成体のマウス(C57BL6)の大脳皮質からtotalRNAを精製し、Sper ScriptIIIkit(インビトロジェン)で逆転写反応を行ったcDNAである。
【0050】
[参考例7]
<NLS>
核移行シグナル(NLS)の塩基配列は以下のとおりである。
CTTATGGATCCAAAAAAGAAGAGAAAGGTAGACCCTAAGAAAAAGAGGAAAGTTGGG(配列番号21)
上記配列と相補的な配列を一つの試験管内で混ぜ、95度に熱した後、1時間かけて37度までゆっくり温度を下げることで、ハイブリダイズさせた。ハイブリダイズした2本鎖DNAは平滑末端2本鎖DNAをクローニングするためのキットである、Zero blunt TOPO kit(インビトロジェン)でプラスミドに挿入されクローン化された。
核移行シグナルは、pDONR P4-P1Rにsv40エンハンサープロモーターが挿入されたプラスミドにさらに挿入した。SV40エンハンサープロモーターの416塩基目にあるHindIII制限酵素サイトを利用して、核移行シグナルの配列の1塩基目から25塩基目の配列Forward 5'-CTTATGGATCCAAAAAAGAAGAGAA-3'(配列番号22)と、33塩基から57塩基までの配列5'-CCCTAAGAAAAAGAGGAAAGTTGGG-3'(配列番号23)の相補鎖であるReverse 5'-CCCAACTTTCCTCTTTTTCTTAGGG-3'(配列番号24)をDNAに対応する配列部分として、さらに両方のプライマーの5'側にHindIIIサイトを付加し、PCRによって増幅した。その際の鋳型DNAは、Zero blunt TOPO kitによって作成されたプラスミドである。増幅した配列はHindIIIサイトに挿入された。
【0051】
[参考例8]
<IRES配列>
Clontechの"pIRES2-EGFP Vector"の配列(配列番号3)をIRES配列として用いた。
PCRで増幅する際は、Forward 5'-GATCCGCCCCTCTCCCTCCCCC-3'(配列番号25)と、Reverse 5'-GGTTGTGGCCATATTATCATCGTG-3'(配列番号26)をDNA配列に対応するプライマー部位として用いた。プラスミドに挿入する目的のPCRの際には、両方の5’側に制限酵素サイト(今回はEcoRIとBamHIを用いた)を付加してプラスミドの制限酵素サイトに挿入した。
【0052】
[参考例9]
<Linker配列>
Linkerの配列は以下のとおりである。
GGAGGTGGGGGTAGTGGGGGCGGAGGTAGCGGTGGCGGTGGTAGT(配列番号27)
上記配列と相補的な配列を一つの試験管内で混ぜ、95度に熱した後、1時間かけて37度までゆっくり温度を下げることで、ハイブリダイズさせた。ハイブリダイズした2本鎖DNAは平滑末端2本鎖DNAをクローニングするためのキットである、Zero blunt TOPO kit(インビトロジェン)でプラスミドに挿入されクローン化された。
PCRで増幅する際は
Forward 5'-GGAGGTGGGGGTAGTGGGGGC-3'(配列番号28)
Reverse 5'-ACTACCACCGCCACCGCTACC-3'(配列番号29)
をDNA配列に対応するプライマー部位として用いた。プラスミドに挿入する目的のPCRの際には、両方の5’側に制限酵素サイトを付加してプラスミドの制限酵素サイトに挿入した。
【0053】
[参考例10]
<SV40エンハンサープロモーター>
プラスミドpGL4.13(プロメガ社)のsv40エンハンサープロモーター部位をPCRで増幅して用いた。
SV40エンハンサープロモーターの配列の1塩基目から25塩基目の配列Forward 5'-GCGCAGCACCATGGCCTGAAATAAC-3'(配列番号30)と、395塩基から419塩基までの配列5'-AGGCCTAGGCTTTTGCAAAAAGCTT-3'(配列番号31)の相補鎖であるReverse 5'-AAGCTTTTTGCAAAAGCCTAGGCCT-3'(配列番号32)をDNA配列に対応するPCRプライマーセットとして用い、1-419の配列を増幅取得した。その際のPCRの鋳型配列は、プラスミドpGL4.13である。この配列はpDONR P4-P1Rに挿入したため、上記のDNA配列に対応するプライマーにattB4-forward, attB1-reverseの配列を付加したものでPCRを行った。
【0054】
プラスミドを構築する際は
pDONR P4-P1Rにsv40promoter-NLSを挿入、
pDONR221にlucN-KID-linker-KIX
pDONR P2R-P3にlucCを挿入したもの
を用いてmulti site gatewayにより最終的なプラスミドを作成した。
ただしpDONR221にlucN-KID-linker-KIXをBP反応にて挿入する前に、pLITMUS28(ニューイングランドバイオラボ)のマルチクローニングサイトの制限酵素サイトを利用して、それぞれの配列が連続となるように、pLITMUS28に挿入した。それぞれの制限酵素サイトは以下のとおりである。
(SpeI)-lucN-(EcoRI)-KID-(NcoI)-Linker-(AgeI)-KIX-(SacI)
カッコ内が制限酵素をあらわす。それぞれのインサートはPCRで増幅されるが、その際各配列のプライマーには制限酵素サイトの配列を5’側に付加した。増幅されたPCR断片とpLITMUS28を制限酵素で切断し、リガーゼによってプラスミドに挿入した。
pLITMUS28内でlucN-KID-linker-KIXの配列が完成したら、再度PCRによってlucN-KID-linker-KIX配列を増幅した。その際pDONR221挿入用のattB配列をプライマーの5’側に付加したものを用いてPCRを行い、その後BP反応でpDONR221に挿入した。
【0055】
[実施例1]
CREB蛋白質のリン酸化ドメインであるKID、KIDに結合することが知られているCBP蛋白質のKIXドメイン及びスプリットルシフェラーゼを下記の組み合わせで融合し、HEK細胞に導入した。フォルスコリンを投与して発光量の増大を観察した。
・融合蛋白1:NLS -lucN末KID-GGGGSGGGGSGGGGS-KIX-lucC末
・融合蛋白2:NLS -lucN末KID-EAAAREAAAREAAAR-KIX-lucC末
・融合蛋白3:NLS -lucN末KIX-EAAAREAAAREAAAR-KID-lucC末
・融合蛋白4:NLS -lucC末KID-GGGGSGGGGSGGGGS-KIX-lucN末
【0056】
発光の測定は以下のように行った。
HEK293をプラスチックディッシュ(ファルコン社の12well dish)で培養した。培地はダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に牛血清を10%となるように添加したものを1wellあたり1mL用い、37度、5%CO2、湿度100%の条件下でインキュベーター内において培養を行った。
上記融合蛋白質1~4をコードするプラスミドを作成し、培養開始2日目にそれらプラスミドをHEK293細胞に遺伝子導入した。遺伝子導入はリポフェクトアミン2000(インビトロジェン社)を用いて行った。Opti-MEM培地とプラスミドDNAを125μL:1μgとなるように混ぜ5分間室温でインキュベートした。それとは別にOpti-MEM培地とリポフェクトアミン2000を125μL:2μLとなるように混ぜ、同様に5分間室温でインキュベートした。両者を混ぜ、室温で20分インキュベートすることで、DNAとリポフェクトアミン2000の複合体が形成される。1well当たり250μLの混合液を、培地に滴下し、引き続き培養した。
培養開始3日後に培地中にフォルスコリンを最終濃度10μMとなるように添加し、さらに1日培養を続けた。培地を捨て、50μLのPBSを加えて、培養細胞をゴム製のセルスクレイパーでディッシュから剥がし、96wellプレートに移した。さらにルシフェリン(ブライトグロー:プロメガ)を50μL加えて、各wellの発光量をルミノメーター(TECAN社)で測定した。
図1に結果を示す。融合蛋白1~4及びネガティブコントロールのそれぞれにおいて、左側の棒グラフ(グレーで示す)は、フォルスコリン無添加の場合であり、右側の棒グラフ(黒塗りで示す)は、フォルスコリンを最終濃度10μMとなるように添加した場合である。その結果、融合蛋白1が最も強い発光量を示した。
【0057】
[実施例2]
妊娠18日目のラット胎児を妊娠ラットから取り出し、冷やしたPBS中で脳を取り出した。さらに大脳から海馬神経細胞を含む脳片を取り出した。取り出した海馬は、試験管中で蛋白質分解酵素である0.125%トリプシンと室温で20分間反応させることによって、細胞表面の接着因子を分解し、細胞間の接着性を弱めた。その後トリプシンを除去するため試験管を静置し、脳片が試験管の底に沈んだ後、上清のトリプシン溶液を吸い取り除去した。続いて試験管に10%血清を含むDMEM培地が加え、もう一度試験管を静置し、上清を取り除いた。脳片はプラスチックのスポイドで吸引排出を10回程度繰り返すことで個々の細胞に解離させた。その後プラスチックディッシュ上で培養した。培地などの条件は実施例1と同じである。
培養4日目に実施例1の融合蛋白1をコードするプラスミドを遺伝子導入した。遺伝子導入の方法はHEK293細胞の場合と同じくリポフェクトアミン2000を用いて行った。遺伝子導入の2日後、ルシフェラーゼの発光基質である0.5mMルシフェリンEF(プロメガ社)を含むOpti-MEM培地(インビトロジェン社)に交換し、発光測定機エクオリア(浜松ホトニクス)を用いて発光量を測定した。この装置は培養中の細胞をプラスチックディッシュごと暗箱に入れ、光子の発生数をカウントするものである。測定は1時間連続して行い、1分間ごとの発光量をグラフの縦軸にとった。測定開始直前にフォルスコリン、グルタミン酸、KClなどの刺激を行った。
フォルスコリンは細胞内のcAMPの量を増大させる働きがある。グルタミン酸は海馬神経細胞の主要な神経伝達物質であり、神経細胞を興奮させる。KClを細胞外液に加えると、細胞内外のイオンバランスが変化することで、神経細胞が脱分極する。それにより細胞内へのカルシウム流入など、神経細胞を興奮させることができる。
結果を図2に示す。KClを細胞外液に添加した場合に特に発光強度が上昇し、添加前と比較すると約6倍の発光強度まで上昇した。
【0058】
[実施例3]
実施例2と同様の実験系で、実施例1の融合蛋白質1をコードするプラスミドからリンカーとKIXドメインを省いた融合蛋白5(NLS-lucN末KID-lucC末)を神経細胞に発現させ、各種刺激に対する応答を測定した(図3)。
融合蛋白質からKIXドメインを省いても同様に神経細胞内でKClに対する反応を示す。しかしKIDドメインを省くとまったく発光を示さない(データは示さず)。このことからKCl刺激でKIDドメインの構造が変わり、ルシフェラーゼ活性を上昇させることがわかる。神経細胞への刺激でKIDドメインの構造が変わるであろうことはコンセンサスが得られていることである。
【0059】
[実施例4]
実施例2と同じ実験系で、融合蛋白5を発現させた神経細胞の各種刺激(50mMのKCl、50mMのKClとPKA inhibitor、50mMのKClとCaMK2 inhibitor、50mMのKClとPKC inhibitor、50mMのKClとCHX、10μMのフォルスコリン、100μMのグルタミン酸、50mMのKCl及びEGTA)に対する応答を確認した。結果を図4に示す。KClで神経細胞を刺激した際発光量が増大する。またEDTAにより発光増大がある程度抑えられるため、KCL刺激の後、神経細胞へのカルシウム流入が起きることが重要であることがわかる。
【0060】
[実施例5]
野生型のホタルルシフェラーゼを用いたコントロール実験である。実施例2と同じ実験系で、野生型のホタルルシフェラーゼ(プロメガ社)を神経細胞に遺伝子導入し、KClによる刺激を行った(図5)。
野生型ルシフェラーゼは図4のようなKClに対する反応を示さないことから、図4の反応は挿入したKIDドメインに依存しておきていることがわかる。
【0061】
[実施例6]
(1)マルチサイトゲートウェイシステムでプラスミドを構築し、アクチン配列(Actin)とルシフェラーゼC末端(lcuC末)またはルシフェラーゼN末端(lcuN末)を有する以下の融合蛋白質を得た。なお、以下の表記において、「KGGRADPAFLYKVE」(配列番号58)はマルチサイトゲートウェイシステムにより付加されたアミノ酸配列である。また、FKBPは、FK506 binding proteinを、FRBは、FKBP rapamycin binding domain(mTOR(mammalian target of rapamycin))をそれぞれ意味する。
・融合蛋白6:Actin-KGGRADPAFLYKVE-lucC末(Actin-lucC末)
・融合蛋白7:Actin-KGGRADPAFLYKVE-lucN末(Actin-lucN末)
・融合蛋白10:lucC末-KGGRADPAFLYKVE-Actin(lucC末-Actin)
・融合蛋白11:lucN末-KGGRADPAFLYKVE-Actin(lucN末-Actin)
・融合蛋白12:FRB-lucN末
・融合蛋白13:FKBP-lucC末
【0062】
(2)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白7を鋳型にして融合蛋白9を作製した。すなわち、ルシフェラーゼN末端の最後尾に結合するプライマーセットとして、リバースプライマーの5‘側にリンカーの配列の前半部分をコードする配列をつけたプライマー
5’-CGCCCCCACTACCCCCACCTCCGTCCTTGTCGATGAGAGCGTTTGTA-3’(配列番号33)
およびアクチンの最初の部分を認識するフォワードプライマーとリンカー配列の後半部分をコードする配列をつけたプライマー
5’-GAGGTAGCGGTGGCGGTGGTAGTATGGATGACGATATCGCTGCGCTGG-3’(配列番号34)
を用いて融合蛋白7のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型の融合蛋白はメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白9:Actin-GGGGSGGGGSGGGGS-lucN末
【0063】
(3)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白2を鋳型にして融合蛋白8を作製した。すなわち、ルシフェラーゼC末端の最後尾に結合するプライマーセットとして、リバースプライマーの5‘側にリンカーの配列の前半部分をコードする配列をつけたプライマー
5’-CGCCCCCACTACCCCCACCTCCGAAGGGCGGCAAGATCGCCGTG-3’ (配列番号35)
およびアクチンの最初の部分を認識するフォワードプライマーとリンカー配列の後半部分をコードする配列をつけたプライマー
5’-GAGGTAGCGGTGGCGGTGGTAGTATGGATGACGATATCGCTGCGCTGG-3’(配列番号34)
を用いて融合蛋白7のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型の融合蛋白はメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白8:Actin-GGGGSGGGGSGGGGS-lucC末
【0064】
(4)融合蛋白11を鋳型として融合蛋白16を作製した。すなわち、アクチン配列の最後尾とリンカー(GGGGSGGGGS)の前半部分をコードする配列を連結したリバースプライマー
5’- ACTACCCCCACCTCCGAAGCACTTGCGGTGCACGATG-3’(配列番号36)
および、融合蛋白質5のマルチサイトゲートウェイの結果生じたKGGRADPA部分をコードする配列と、リンカー(GGGGSGGGGS)の後半部分をコードした配列を連結したフォワードプライマー
5’-GGTGGCGGTGGTAGTAAGGGTGGGCGCGCCGAGCCAGCT-3’(配列番号37)
を用い、融合蛋白16のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型の融合蛋白はメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、リンカー配列GGGGSGGGGSKGGRADPAFLYKVE(配列番号65)を有する、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白16:Actin-GGGGSGGGGSKGGRADPAFLYKVE-lucN末
【0065】
(5)融合蛋白17は融合蛋白10を鋳型とし、融合蛋白14と同じプライマーセットを用いて作製した。
・融合蛋白17:Actin-GGGGSGGGGSKGGRADPAFLYKVE-lucC末
【0066】
(6)融合蛋白18は、融合蛋白11を鋳型として作製した。すなわち、アクチン配列の最後尾の配列をリバースプライマーとし、
5’-GAAGCACTTGCGGTGCACGATG-3’(配列番号38)
ルシフェラーゼN末端の最初の配列をフォワードプライマーとして使用し、
5’-ATGGAAGATGCCAAAAACATTAAGA-3’(配列番号39)
を用い、融合蛋白18のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型の融合蛋白はメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白18:Actin-lucN末
【0067】
(7)融合蛋白19は、融合蛋白10を鋳型として作製した。すなわち、アクチン配列の最後尾の配列をリバースプライマーとし、
5’-GAAGCACTTGCGGTGCACGATG-3’(配列番号38)
ルシフェラーゼC末端の最初の配列をフォワードプライマーとして使用し、
5’- GGCTGGCTGCACAGCGGCGACATCG-3’(配列番号40)
を用い、融合蛋白19のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型の融合蛋白はメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白19:Actin-lucC末
【0068】
(8)融合蛋白20は、融合蛋白11を鋳型として作製した。すなわち、アクチン配列の最後尾の配列とリンカー配列の前半部分を連結した配列をリバースプライマーとし、
5’- CCGCCCCCACTACCCCCACCTCCGAAGCACTTGCGGTGCACGATG-3’(配列番号41)
ルシフェラーゼN末端の最初の配列とリンカー部分の後半の配列を連結したものを、フォワードプライマーとして使用し、
5’- AGGTAGCGGTGGCGGTGGTAGTGGCTGGCTGCACAGCGGCGACATCG-3’(配列番号42)
を用い、融合蛋白20のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型の融合蛋白はメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白20:Actin-GGGGSGGGGSGGGGS-lucN末
【0069】
(9)融合蛋白21は、融合蛋白10を鋳型として作製した。すなわち、アクチン配列の最後尾の配列とリンカー配列の前半部分を連結した配列をリバースプライマーとし、
5’- CCGCCCCCACTACCCCCACCTCCGAAGCACTTGCGGTGCACGATG-3’(配列番号41)
ルシフェラーゼC末端の最初の配列とリンカー部分の後半の配列を連結したものを、フォワードプライマーとして使用し、
5’- AGGTAGCGGTGGCGGTGGTAGTGGCTGGCTGCACAGCGGCGACATCG -3’(配列番号42)
を用い、融合蛋白21のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型の融合蛋白はメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白21:Actin-GGGGSGGGGSGGGGS-lucC末
【0070】
[実施例7]
(1)アクチンとスプリットルシフェラーゼからなる融合蛋白質をHEK293T細胞に遺伝子導入した。
・融合蛋白6:Actin-lucC末
・融合蛋白7:Actin-lucN末
・融合蛋白8:Actin-Linker-lucC末
・融合蛋白9:Actin-Linker-lucN末
・融合蛋白10:lucC末-Actin
・融合蛋白11:lucN末-Actin
・融合蛋白12:FRB-lucN末
・融合蛋白13:FKBP-lucC末
融合蛋白12と13の組み合わせは、ポジティブコントロールである。
実施例1と同様に遺伝子導入後2日で細胞をかきとり、ルミノメーターで発光を計測した。その結果、アクチンのN末端側にスプリットルシフェラーゼのN末端、C末端が融合されるような蛋白質の組み合わせ(融合蛋白10及び11)が最適であることがわかった(図6)。
【0071】
(2)融合蛋白6~11および16~21から選んだ2種類のプラスミド(ルシフェラーゼN末端側とC末端側)をHEK293細胞に遺伝子導入し、発光量(10分当たりの観測光子数)を観察した。結果を図10に示す。
【0072】
[実施例8]
トランスジェニックマウス作成に適した形にするため、IRES配列で2つの融合蛋白質を結合させた融合蛋白13(lucN-Actin-IRES-lucC-actin)のプラスミドを構築した。これにより、lucC-ActinとlucN-Actinが一つのmRNAから翻訳され細胞中で発現する。遺伝子導入は実施例1と同様に行った。また、この実験ではアクチンの重合阻害剤であるラトランクリンAを発光計測の3時間前に培地中に加えた。また発光計測は発光測定機エクオリア(浜松ホトニクス)を用いた。
アクチン重合阻害剤を各種濃度で投与すると、濃度依存的に発光が減少していく様子が観察された(図7)。これは作成した蛋白質の発光がアクチンの重合を示す証拠となる。
【0073】
[実施例9]
HEK293T細胞をラトランクリンAで処理した後、4%パラホルムアルデヒドで固定し、F-Actin Visualization Biochem Kit(コスモバイオ)を用いて、重合アクチンのみを染色した。
重合阻害剤の濃度を振った際の、重合アクチンの染色像を確認した(ローダミンーファロイジンによる)。発光量の変化と同じく、濃度依存的に減少する(図8)。
【0074】
[実施例10]
pEGFP-N1プラスミド(クロンテック)の制限酵素サイトNheI, EcoRI, BamHI, NotIを利用して各配列を挿入した。NheI, EcoRI間にlucN末-アクチンもしくはlucC末-アクチンを挿入した。BamHI, NotI間も同様にlucN末-アクチンもしくはlucC末-アクチンを挿入した。EcoRI, BamHI間にIRES配列を挿入した。
・融合蛋白14:lucN末-Actin-IRES-lucC末-actin
・融合蛋白15:lucC末-Actin-IRES-lucN末-actin
IRESの前後を交換することで、発光量を増大させることができた(図9)。
【0075】
[実施例11]
<2分子型のKID-KIXの結合を計測するプローブ蛋白質スクリーニングのためのプラスミド作製>
(1)マルチサイトゲートウェイシステムでプラスミドを構築し、NLS,KID,KIXとルシフェラーゼC末端(lcuC末)またはルシフェラーゼN末端(lcuN末)を有する以下の融合蛋白質を得た。KGGRADPAFLYKVE(配列番号58)はマルチサイトゲートウェイでプラスミド構築する際に付加される配列である。
・融合蛋白22:NLS-KID-KGGRADPAFLYKVE-lucN末(NLS-KID-lucN末)
・融合蛋白23:NLS-KID-KGGRADPAFLYKVE-lucC末(NLS-KID-lucC末)
・融合蛋白24:NLS-KIX-KGGRADPAFLYKVE-lucN末(NLS-KIX-lucN末)
・融合蛋白25:NLS-KIX-KGGRADPAFLYKVE-lucC末(NLS-KIX-lucC末)
・融合蛋白26:NLS-lucN末-KGGRADPAFLYKVE-KID(NLS-lucN末-KID)
・融合蛋白27:NLS-lucC末-KGGRADPAFLYKVE-KID(NLS-lucC末-KID)
・融合蛋白28:NLS-lucN末-KGGRADPAFLYKVE-KIX(NLS-lucN末-KIX)
・融合蛋白29:NLS-lucC末-KGGRADPAFLYKVE-KIX(NLS-lucC末-KIX)
【0076】
(2)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白22を鋳型にして融合蛋白30を作製した。すなわち、KIDの最後尾に結合する配列の5‘側にリンカーの配列の前半部分をコードする配列をつけたリバースプライマー
5’- CGCCCCCACTACCCCCACCTCCAGTCTCCTCTTCTGACTTTTCTTCT -3’ (配列番号43)
およびlucN末の最初の部分を認識するプライマーにリンカー配列の後半部分をコードする配列をつけたフォワードプライマー
5’-GAGGTAGCGGTGGCGGTGGTAGTATGGAAGATGCCAAAAACATTAAG-3’((配列番号44)
を用いて融合蛋白22のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型のプラスミドはメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白30:NLS-KID-GGGGSGGGGSGGGGS-lucN末
【0077】
(3)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白23を鋳型にして融合蛋白31を作製した。すなわち、KIDの最後尾に配列の5‘側にリンカーの配列の前半部分をコードする配列をつけたリバースプライマー
5’- CGCCCCCACTACCCCCACCTCCAGTCTCCTCTTCTGACTTTTCTTCT -3’ (配列番号43)
およびlucC末の最初の部分を認識する配列にリンカー配列の後半部分をコードする配列をつけたフォワードプライマー
5’-GAGGTAGCGGTGGCGGTGGTAGTGGCTGGCTGCACAGCGGCGACATCG -3’ (配列番号45)
を用いて融合蛋白23のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型のプラスミドはメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白31:NLS-KID-GGGGSGGGGSGGGGS-lucC末
【0078】
(4)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白24を鋳型にして融合蛋白32を作製した。すなわち、KIXの最後尾に結合するプライマーの5‘側にリンカーの前半部分をコードする配列をつけたリバースプライマー
5’-CGCCCCCACTACCCCCACCTCCTTCTTCTAGTTCTTTTTGTATTTTA -3’ (配列番号46)
およびlucN末の最初の部分を認識する配列にリンカー配列の後半部分をコードする配列をつけたフォワードプライマー
5’- GAGGTAGCGGTGGCGGTGGTAGTATGGAAGATGCCAAAAACATTAAG -3’ (配列番号47)
を用いて融合蛋白24のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型のプラスミドはメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白32:NLS-KIX-GGGGSGGGGSGGGGS-lucN末
【0079】
(5)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白25を鋳型にして融合蛋白33を作製した。すなわち、KIXの最後尾に結合するプライマーの5‘側にリンカーの前半部分をコードする配列をつけたリバースプライマー
5’- CGCCCCCACTACCCCCACCTCCTTCTTCTAGTTCTTTTTGTATTTTA -3’ (配列番号46)
およびlucC末の最初の部分を認識する配列にリンカー配列の後半部分をコードする配列をつけたフォワードプライマー
5’- GAGGTAGCGGTGGCGGTGGTAGTGGCTGGCTGCACAGCGGCGACATCG -3’ (配列番号48)
を用いて融合蛋白25のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型のプラスミドはメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白33:NLS-KIX-GGGGSGGGGSGGGGS-lucC末
【0080】
(6)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白26を鋳型にして融合蛋白34を作製した。すなわち、lucN末の最後尾に結合するプライマーの5‘側にリンカーの配列の前半部分(GGGGS)をコードする配列をつけたリバースプライマー
5’- ACTACCCCCACCTCCGTCCTTGTCGATGAGAGCGTTTGTA -3’ (配列番号49)
および融合蛋白26におけるリンカーの最初の部分(KGGRADPA)に結合する配列にリンカーの後半部分(GGGGS)をコードする配列をつけたプライマー
5’- GGTGGCGGTGGTAGTAAGGGTGGGCGCGCCGAGCCAGCT -3’ (配列番号50)
を用いて融合蛋白26のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型のプラスミドはメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白34:NLS-lucN末-GGGGSGGGGSKGGRADPAFLYKVE-KID
【0081】
(7)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白27を鋳型にして融合蛋白35を作製した。すなわち、lucC末の最後尾に結合するプライマーの5‘側にリンカーの配列の前半部分(GGGGS)をコードする配列をつけたリバースプライマー
5’- ACTACCCCCACCTCCCACGGCGATCTTGCCGCCCTTC -3’ (配列番号51)
および融合蛋白27におけるリンカーの最初の部分(KGGRADPA)に結合する配列にリンカーの後半部分(GGGGS)をコードする配列をつけたプライマー
5’- GGTGGCGGTGGTAGTAAGGGTGGGCGCGCCGAGCCAGCT -3’ (配列番号50)
を用いて融合蛋白27のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型のプラスミドはメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白35:NLS-lucC末-GGGGSGGGGSKGGRADPAFLYKVE-KID
【0082】
(8)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白28を鋳型にして融合蛋白36を作製した。すなわち、lucN末の最後尾に結合するプライマーの5‘側にリンカーの配列の前半部分(GGGGS)をコードする配列をつけたリバースプライマー
5’- ACTACCCCCACCTCCGTCCTTGTCGATGAGAGCGTTTGTA -3’ (配列番号49)
および融合蛋白28におけるリンカーの最初の部分(KGGRADPA)に結合する配列にリンカーの後半部分(GGGGS)をコードする配列をつけたプライマー
5’- GGTGGCGGTGGTAGTAAGGGTGGGCGCGCCGAGCCAGCT -3’ (配列番号50)
を用いて融合蛋白28のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型のプラスミドはメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白36:NLS-lucN末-GGGGSGGGGSKGGRADPAFLYKVE-KIX
【0083】
(9)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白29を鋳型にして融合蛋白37を作製した。すなわち、lucC末の最後尾に結合するプライマーの5‘側にリンカーの配列の前半部分(GGGGS)をコードする配列をつけたリバースプライマー
5’- ACTACCCCCACCTCCCACGGCGATCTTGCCGCCCTTC -3’ (配列番号51)
および融合蛋白29におけるリンカーの最初の部分(KGGRADPA)に結合する配列にリンカーの後半部分(GGGGS)をコードする配列をつけたプライマー
5’- GGTGGCGGTGGTAGTAAGGGTGGGCGCGCCGAGCCAGCT -3’ (配列番号50)
を用いて融合蛋白29のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型のプラスミドはメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白37:NLS-lucC末-GGGGSGGGGSKGGRADPAFLYKVE-KIX
【0084】
(10)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白26を鋳型にして融合蛋白38を作製した。すなわち、lucN末の最後尾に結合するリバースプライマー
5’- GTCCTTGTCGATGAGAGCGTTTGTA-3’ (配列番号9)
およびKID配列の最初から24塩基に結合するフォワードプライマー
5’- CAGATTTCAACTATTGCAGAAAGTG -3’ (配列番号15)
を用いて融合蛋白26のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型のプラスミドはメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白38:NLS-lucN末-KID
【0085】
(11)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白27を鋳型にして融合蛋白39を作製した。すなわち、lucC末の最後尾に結合するリバースプライマー
5’- CACGGCGATCTTGCCGCCCTTC-3’ (配列番号52)
およびKID配列の最初から 24塩基に結合するフォワードプライマー
5’- CAGATTTCAACTATTGCAGAAAGTG -3’ (配列番号15)
を用いて融合蛋白27のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型のプラスミドはメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白39:NLS-lucC末-KID
【0086】
(12)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白29を鋳型にして融合蛋白40を作製した。すなわち、lucC末の最後尾に結合するリバースプライマー
5’- CACGGCGATCTTGCCGCCCTTC-3’(配列番号52)
およびKIX配列の最初から 24塩基に結合するフォワードプライマー
5’- GGTGTTCGAAAAGGCTGGCATGAAC -3’ (配列番号18)
を用いて融合蛋白29のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型のプラスミドはメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白40:NLS-lucC末-KIX
【0087】
(13)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白28を鋳型にして融合蛋白41を作製した。すなわち、lucN末の最後尾に結合するリバースプライマー
5’- GTCCTTGTCGATGAGAGCGTTTGTA -3’ (配列番号9)
およびKIX配列の最初から 24塩基に結合するフォワードプライマー
5’- GGTGTTCGAAAAGGCTGGCATGAAC -3’ (配列番号18)
を用いて融合蛋白28のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型のプラスミドはメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白41:NLS-lucN末-KIX
【0088】
(14)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白26を鋳型にして融合蛋白42を作製した。すなわち、lucN末の最後尾に結合する配列の5‘側にリンカーの配列の前半部分の配列をつけたリバースプライマー
5’-CGCCCCCACTACCCCCACCTCCGTCCTTGTCGATGAGAGCGTTTGTA -3’ (配列番号33)
およびKIDの最初の部分を認識するフォワードプライマーとリンカー配列の後半部分をコードする配列をつけたフォワードプライマー
5’- GAGGTAGCGGTGGCGGTGGTAGTCAGATTTCAACTATTGCAGAAAGTG -3’ (配列番号53)
を用いて融合蛋白26のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型のプラスミドはメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白42:NLS-lucN末-GGGGSGGGGSGGGGS-KID
【0089】
(15)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白27を鋳型にして融合蛋白43を作製した。すなわち、lucC末の最後尾に結合する配列の5‘側にリンカーの配列の前半部分の配列をつけたリバースプライマー
5’-CGCCCCCACTACCCCCACCTCCCACGGCGATCTTGCCGCCCTTC -3’(配列番号54)
およびKIDの最初の部分を認識するフォワードプライマーとリンカー配列の後半部分をコードする配列をつけたフォワードプライマー
5’- GAGGTAGCGGTGGCGGTGGTAGTCAGATTTCAACTATTGCAGAAAGTG -3’(配列番号53)
を用いて融合蛋白26のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型のプラスミドはメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白43:NLS-lucC末-GGGGSGGGGSGGGGS-KID
【0090】
(16)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白29を鋳型にして融合蛋白44を作製した。すなわち、lucC末の最後尾に結合する配列の5‘側にリンカーの配列の前半部分の配列をつけたリバースプライマー
5’-CGCCCCCACTACCCCCACCTCCCACGGCGATCTTGCCGCCCTTC -3’(配列番号54)
およびKIXの最初の部分を認識するフォワードプライマーとリンカー配列の後半部分をコードする配列をつけたフォワードプライマー
5’- GAGGTAGCGGTGGCGGTGGTAGTGGTGTTCGAAAAGGCTGGCATGAAC -3’(配列番号55)
を用いて融合蛋白29のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型のプラスミドはメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白44:NLS-lucC末-GGGGSGGGGSGGGGS-KIX
【0091】
(17)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白28を鋳型にしてプラスミド45を作製した。すなわち、lucN末の最後尾に結合する配列の5‘側にリンカーの配列の前半部分の配列をつけたリバースプライマー
5’-CGCCCCCACTACCCCCACCTCCGTCCTTGTCGATGAGAGCGTTTGTA -3’(配列番号33)
およびKIXの最初の部分を認識するフォワードプライマーとリンカー配列の後半部分をコードする配列をつけたフォワードプライマー
5’- GAGGTAGCGGTGGCGGTGGTAGTGGTGTTCGAAAAGGCTGGCATGAAC -3’(配列番号55)
を用いて融合蛋白28のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型のプラスミドはメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白45:NLS-lucN末-GGGGSGGGGSGGGGS-KIX
【0092】
(18)KOD plus mutagenesis kitを用い、融合蛋白31を鋳型にして融合蛋白46を作製した。KID配列の96塩基-120塩基までに結合する配列のうち、97番目のチミジンをグアニンに置換したフォワードプライマー
5’-TGCCTACAGGAAAATTTTGAATGAC-3’(配列番号56)
71塩基-95塩基までの配列に結合するリバースプライマー
5’-GGCCTCCTTGAAAGGATTTCCCTTC-3’( 配列番号57)
を用いて融合蛋白のプラスミドを鋳型としてPCRを行い、ついで鋳型のプラスミドはメチル化されたDNAだけを選択的に消化する酵素DpnIで分解する。さらにPCR産物の両端をライゲーションし、大腸菌でクローニングし、以下の融合白質を得た。
・融合蛋白46:NLS-KID(S33A)-GGGGSGGGGSGGGGS-lucC末
【0093】
[実施例12]
融合蛋白(22,26,30,34,38,42)と(25,29,33,37,40,44)の2群から1種類ずつプラスミドを選び、HEK293細胞に遺伝子導入し、発光量(10分当たりの観測光子数)を観察した。同様に(23,27,31,35,39,43)と(24,28,32,36,41,45)の組み合わせから1種類ずつ選び同様に発光量を計測した。結果を図11に示す。横軸は遺伝子導入したプラスミドの組み合わせを示し、縦軸は2分の露光時間当たりの観測光子数、つまり発光量を示す。
【0094】
[実施例13]
図11のうち最も発光量が大きかった融合蛋白質31と45の組み合わせをさらに解析した。31のKID配列のうちDNA配列にして180塩基対の97番目のチミジンをグアニンに置換することで、アミノ酸配列の33番目のセリンをアラニンに置換した融合蛋白質46を作製し、(31,45)(46,45)の組み合わせで、HEK293細胞に発現させた。フォルスコリンを最終濃度10μMになるように加え、30分後の発光を2分間測定した。フォルスコリンによって細胞内のcAMP濃度が上昇し、PKAが活性化されることによって、KIDの33番目のセリンがリン酸化され、KIXドメインと結合することが、確かめられた。また(46,45)の組み合わせではフォルスコリンを加えても発光が上昇しないことから、このプローブ蛋白質がKIDドメインの33番目のセリンのリン酸化を特異的に検知しているといえる。(図12)
【0095】
[実施例14]
<トランスジェニックマウス作成>
・プラスミド構築
Chicken b-Actin promoterとCMV(サイトメガロウイルス)-IE Enhancerを組み合わせた、CAGプロモーターを持ち、発現させる遺伝子を挿入可能な制限酵素サイトを有し、その後にrabbit beta-Globin polyAシグナルを付加したプラスミドpCAGGSを用いてトランスジェニックマウス作成用プラスミドを作った。またこのプラスミドはアンピシリン耐性遺伝子をコードする領域も含んでいる。このプラスミドはJournal of Biochemistry 2003年133巻423-427ページに報告されているものと同じものである。このプラスミドに、融合蛋白5に示される融合蛋白質をコードする配列を挿入した。さらにプロモーターとpolyA sugnalの両端に存在する制限酵素で処理することで、プロモーター、発現遺伝子、polyA signalを含む領域と、とアンピシリン耐性遺伝子を含む領域を分離した。プロモーター、発現遺伝子、polyA signalを含む領域はアガロースゲル電気泳動によって分離精製され、最終的に0.22μmフィルターを通して、2.5 ng/μlとなるようにマイクロインジェクションに用いた。
【0096】
・前核期胚採取とマイクロインジェクション
人工授精のため、雄マウス(C57BL/6J,10週齢)より精子を採取し、前培養を行った。
同じく人工授精のため、過排卵処理(PMSG,hCGを48時間間隔で5IU腹腔内投与)した雌マウス(C57BL/6J ,10週齢)より卵子を採取し、前培養を行った。卵子を含んだ培養液へ精子を入れ、体外受精を行った。5-6時間後に受精卵を洗浄し、前核を確認できる受精卵を選別した。調整したDNAを受精卵の雄性前核へマイクロインジェクションし、翌日まで培養を行った。正常に発生した受精卵を選別し、偽妊娠雌マウス(ICR,10週齢)の卵管へ移植を行った。得られた産仔個体の尾を用いて、導入した遺伝子を有するトランスジェニックマウスが存在することを、PCRおよびサザンブロッティングによって確認した。
導入遺伝子を有するトランスジェニックマウスは、例えば、迷路学習などにより、記憶形成により活性化する神経細胞の特定、活性化の時期、活性化強度などを、ルシフェラーゼの発光により観察することができる。また、導入遺伝子を有するトランスジェニックマウスに薬物を投与して、記憶形成の促進又は阻害を起こす薬物をスクリーニングすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明により、生きた動物の中での記憶形成や感覚などの神経活動をリアルタイムで計測できる。すなわち、脳機能と密接に結びついているCREBやアクチンの動態をリアルタイムで計測できることから、例えば、脳機能を制御する薬物をスクリーニングする際に、ある薬物がCREBやアクチンなど特定の蛋白質の活性にどういった影響を与えるか、同一の動物で長期間にわたって計測し続けることができる。また、学習記憶の形成時に、対象となる蛋白質がいつどこで活性化されるのか、長期にわたって同一の動物で調査することができ、学習記憶のメカニズム解明に役立つ。
また、アクチンは細胞分裂の際に重合して収縮環を形成する。本発明のプローブ配列を核ゲノムにコードする動物では、細胞分裂が盛んに起きている部位(成長している部位、腫瘍、がん組織)を特定することもができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図8】
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