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明細書 :ポリオルガノシロキサン組成物およびその硬化体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5555956号 (P5555956)
登録日 平成26年6月13日(2014.6.13)
発行日 平成26年7月23日(2014.7.23)
発明の名称または考案の名称 ポリオルガノシロキサン組成物およびその硬化体
国際特許分類 C08L  83/06        (2006.01)
C08G  79/00        (2006.01)
C08K   5/057       (2006.01)
C08K   5/11        (2006.01)
C08K   5/07        (2006.01)
FI C08L 83/06
C08G 79/00
C08K 5/057
C08K 5/11
C08K 5/07
請求項の数または発明の数 13
全頁数 27
出願番号 特願2010-534696 (P2010-534696)
出願日 平成21年10月22日(2009.10.22)
国際出願番号 PCT/JP2009/005533
国際公開番号 WO2010/047109
国際公開日 平成22年4月29日(2010.4.29)
優先権出願番号 2008273370
優先日 平成20年10月23日(2008.10.23)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年9月24日(2012.9.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
発明者または考案者 【氏名】中村 修平
【氏名】長 広明
【氏名】芦田 恭典
【氏名】村上 泰
【氏名】清水 航
個別代理人の代理人 【識別番号】100110973、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 洋
審査官 【審査官】小森 勇
参考文献・文献 特開2008-120054(JP,A)
調査した分野 C08L 83/06
C08G 79/00
C08K 5/057
C08K 5/07
C08K 5/11
特許請求の範囲 【請求項1】
(A)1分子中の少なくとも一方の末端がシラノール変性したポリオルガノシロキサンと、
(B)上記ポリオルガノシロキサン1モルに対して0.01~2モルのチタニウムアルコキシドと、
(C)上記ポリオルガノシロキサン1モルに対して0.01~2モルのα-ヒドロキシカルボニル化合物若しくは0.01~2モルのヒドロキシカルボン酸エステルと、
を含むことを特徴とするポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項2】
前記0.01~2モルのヒドロキシカルボン酸エステルは、0.01~0.4モルのリンゴ酸エステルであることを特徴とする請求項1に記載のポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項3】
前記ヒドロキシカルボン酸エステルは、リンゴ酸エステル、乳酸エステルまたは酒石酸エステルであることを特徴とする請求項1に記載のポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項4】
前記α-ヒドロキシカルボニル化合物は、ヒドロキシアセトンであることを特徴とする請求項1に記載のポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項5】
前記チタニウムアルコキシドは、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシドまたはチタニウムテトラブトキシドであることを特徴とする請求項1に記載のポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項6】
前記ポリオルガノシロキサンと、前記チタニウムアルコキシドと、前記ヒドロキシアセトンとをモル比にて1:1:0.5の割合で含み、質量分率による分子量の平均値(Mw)が8000以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項7】
前記チタニウムアルコキシドは、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシドまたはチタニウムテトラブトキシドであることを特徴とする請求項6に記載のポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項8】
前記ポリオルガノシロキサンと、前記チタニウムアルコキシドと、前記ヒドロキシカルボン酸エステルとをモル比にて1:1:0.1の割合で含み、質量分率による分子量の平均値(Mw)が5000以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項9】
前記チタニウムアルコキシドは、チタニウムテトラエトキシドであることを特徴とする請求項8に記載のポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項10】
前記ポリオルガノシロキサンと、前記チタニウムアルコキシドと、前記ヒドロキシカルボン酸エステルとをモル比にて1:0.05:0.05の割合で含むことを特徴とする請求項1に記載のポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項11】
前記ヒドロキシカルボン酸エステルは、リンゴ酸エステル、乳酸エステルまたは酒石酸エステルであることを特徴とする請求項10に記載のポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項12】
請求項1、請求項3から請求項11のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサン組成物を硬化したポリオルガノシロキサン組成物硬化体。
【請求項13】
請求項2に記載のポリオルガノシロキサン組成物を硬化したポリオルガノシロキサン組成物硬化体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオルガノシロキサン組成物およびその硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリオルガノシロキサン組成物は、硬化した際に優れた耐候性および耐久性を発揮するので、接着剤やシーリング材に用いられている。近年では、ポリオルガノシロキサン組成物の硬化物は、より高い強度を要求される傾向にある。この要求に応えるべく、例えば、ポリオルガノシロキサン組成物中に無機あるいは有機化合物から成る充填材を混合させたものが知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
また、接着の対象となる材料も広がる傾向にあり、従来から接着が難しいポリブチレンテレフタレート、ハイインパクトポリスチロール、アクリル樹脂等に対しても良好に接着可能なポリオルガノシロキサン組成物として、ポリオルガノシロキサン、Si原子に結合した加水分解基を2個以上有するシラン化合物、およびビニル基含有ビスフェノールAとオルガノオキシ基を有するSi化合物との付加反応生成物とから成る組成物も知られている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平9-118827号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2000-265062号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のポリオルガノシロキサン組成物の硬化物には、次のような問題がある。特許文献1に開示されたポリオルガノシロキサン組成物は、その製造の際に充填材を混合する工程を必要とする。また、充填材を硬化物中において均一に分散させるために充填材の表面処理を施し、あるいは、高い強度を実現するためにより微細でかつ粒度分布の狭い微粒子を用いなければならず、高強度の硬化物を得るのが困難であった。
【0006】
また、特許文献2に開示されたポリオルガノシロキサン組成物は、環境ホルモンの一種として知られるビスフェノールA骨格を有する化合物を用いているため、環境汚染につながる可能性が高い。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、強度が高い硬化体を得ることができ、かつ環境に与える影響の小さなポリオルガノシロキサン組成物およびその硬化体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ポリオルガノシロキサンに、チタニウムアルコキシドと、α-ヒドロキシカルボニル化合物若しくはヒドロキシカルボン酸エステルを混合することにより、充填材を添加することなく硬化物の強度を高め、かつ環境に悪影響を与える危険性のある物質をできるだけ低減させたポリオルガノシロキサン組成物およびその硬化体を製造することに成功した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(A)1分子中の少なくとも一方の末端がシラノール変性したポリオルガノシロキサンと、
(B)上記ポリオルガノシロキサン1モルに対して0.01~2モルのチタニウムアルコキシドと、
(C)上記ポリオルガノシロキサン1モルに対して0.01~2モルのα-ヒドロキシカルボニル化合物若しくは0.01~2モルのヒドロキシカルボン酸エステルと、
を含むことを特徴とするポリオルガノシロキサン組成物である。
【0010】
また、本発明は、0.01~2モルのヒドロキシカルボン酸エステルを、0.01~0.4モルのリンゴ酸エステルとしたポリオルガノシロキサン組成物である。
【0011】
また、本発明は、ヒドロキシカルボン酸エステルを、リンゴ酸エステル、乳酸エステルまたは酒石酸エステルとしたポリオルガノシロキサン組成物である。
【0012】
また、本発明は、α-ヒドロキシカルボニル化合物を、ヒドロキシアセトンとしたポリオルガノシロキサン組成物である。
【0013】
また、本発明は、チタニウムアルコキシドを、特にチタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシドまたはチタニウムテトラブトキシドとしたポリオルガノシロキサン組成物である。
【0014】
また、本発明は、ポリオルガノシロキサンと、チタニウムアルコキシドと、α-ヒドロキシカルボニル化合物とをモル比にて1:1:0.5の割合で含み、質量分率による分子量の平均値(Mw)が8000以上としたポリオルガノシロキサン組成物である。
【0015】
また、本発明は、上記のチタニウムアルコキシドを、特にチタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシドまたはチタニウムテトラブトキシドとしたポリオルガノシロキサン組成物である。
【0016】
また、本発明は、ポリオルガノシロキサンと、チタニウムアルコキシドと、ヒドロキシカルボン酸エステルとをモル比にて1:1:0.1の割合で含み、質量分率による分子量の平均値(Mw)が5000以上としたポリオルガノシロキサン組成物である。
【0017】
また、本発明は、上記のチタニウムアルコキシドをチタニウムテトラエトキシドとしたポリオルガノシロキサン組成物である。
【0018】
また、本発明は、ポリオルガノシロキサンと、チタニウムアルコキシドと、ヒドロキシカルボン酸エステルとをモル比にて1:0.05:0.05の割合で含むポリオルガノシロキサン組成物である。
【0019】
また、本発明は、上記のヒドロキシカルボン酸エステルを、特にリンゴ酸エステル、乳酸エステルまたは酒石酸エステルとしたポリオルガノシロキサン組成物である。
【0020】
また、本発明は、上述のいずれかのポリオルガノシロキサン組成物を硬化したポリオルガノシロキサン組成物硬化体である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、強度が高い硬化体を得ることができ、かつ環境に与える影響の小さなポリオルガノシロキサン組成物およびその硬化体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、攪拌時間の経過に伴う分子量分布の変化を示す図である。
【図2】図2は、攪拌時間の経過に伴う分子量分布の変化を示す図である。
【図3】図3は、攪拌時間の経過に伴うFT-IRの変化を示す図である。
【図4】図4は、攪拌時間の経過に伴うFT-IRの変化を示す図である。
【図5】図5は、攪拌時間の経過に伴う分子量分布の変化を示す図である。
【図6】図6は、攪拌時間の経過に伴う分子量分布の変化を示す図である。
【図7】図7は、攪拌時間の経過に伴うFT-IRの変化を示す図である。
【図8】図8は、攪拌時間の経過に伴うFT-IRの変化を示す図である。
【図9】図9は、接着性能試験に用いる一方のアルミニウム板の平面図であって、端部接着領域を明示した図である。
【図10】図10は、2枚のアルミニウム板の各端部接着領域にポリオルガノシロキサン組成物を挟んで硬化させた状態の試験片の側面図である。
【図11】図11は、引張試験の試験状況を示す概念図である。
【図12】図12は、各種試験片の弾性率を示す図である。
【図13】図13は、各種試験片の破断点強度を示す図である。
【図14】図14は、各種試験片の破断点伸びを示す図である。
【図15】図15は、各種試験片の接着強度を示す図である。
【図16】図16は、各種試験片の弾性率を示す図である。
【図17】図17は、各種試験片の破断点強度を示す図である。
【図18】図18は、各種試験片の破断点伸びを示す図である。
【図19】図19は、各種試験片の接着強度を示す図である。
【図20】図20は、比較に用いたPDMS-TTE系において各種条件で作製した溶液の分子量分布の変化を示す図(A)およびFT-IRの変化を示す図(B)である。
【図21】図21は、比較に用いたPDMS-TTE系において攪拌時間を長くしあるいは放置時の温度を上げた場合の条件を加えて作製した溶液の分子量分布の変化を示す図(A)およびFT-IRの変化を示す図(B)である。
【図22】図22は、比較に用いたPDMS-TTE系において放置時間を長くしあるいは放置時の温度を上げた場合の条件を加えて作製した溶液の分子量分布の変化を示す図(A)およびFT-IRの変化を示す図(B)である。
【図23】図23は、PDMS-TTE-MA系において、各種条件で作製した溶液の分子量分布の変化を示す図(A)およびFT-IRの変化を示す図(B)である。
【図24】図24は、PDMS-TTE-MADb系において、各種条件で作製した溶液の分子量分布の変化を示す図(A)およびFT-IRの変化を示す図(B)である。
【図25】図25は、PDMS-TTE-EL系において、各種条件で作製した溶液の分子量分布の変化を示す図(A)およびFT-IRの変化を示す図(B)である。
【図26】図26は、PDMS-TTE-TAdE系において、各種条件で作製した溶液の分子量分布の変化を示す図(A)およびFT-IRの変化を示す図(B)である。
【図27】図27は、PDMS-TTnB-MA系において、各種条件で作製した溶液の分子量分布の変化を示す図(A)およびFT-IRの変化を示す図(B)である。
【図28】図28は、PDMS-TTIP-MA系において、各種条件で作製した溶液の分子量分布の変化を示す図(A)およびFT-IRの変化を示す図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明のポリオルガノシロキサン組成物およびその硬化体の好適な実施の形態について説明する。

【0024】
この実施の形態に係るポリオルガノシロキサン組成物は、
(A)1分子中の少なくとも一方の末端がシラノール変性したポリオルガノシロキサン(末端シラノール変性ポリオルガノシロキサン)と、
(B)上記ポリオルガノシロキサン1モルに対して0.01~2モルのチタニウムアルコキシドと、
(C)上記ポリオルガノシロキサン1モルに対して0.01~2モルのα-ヒドロキシカルボニル化合物若しくは0.01~2モルのヒドロキシカルボン酸エステルを含む。ここで、「組成物」とは、溶液、ゲル状物などの硬化前の状態の物を意味する。以下、上記(A)、(B)および(C)について説明する。

【0025】
(1.末端シラノール変性ポリオルガノシロキサン)
この実施の形態で使用可能な末端シラノール変性ポリオルガノシロキサンは、次の一般式(1)で表わされる。この式中、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基または炭素数6~10のアリール若しくはアリール置換炭化水素基である。上記炭素数1~20の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどの各官能基を好適な例としてあげることができる。また、炭素数4~10のシクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの各官能基を好適な例としてあげることができる。さらに、炭素数6~10のアリール基若しくはアリール置換炭化水素基としては、フェニル、トルイル、キシリル、エチルフェニル、ベンジル、フェネチルなどの各官能基を好適な例としてあげることができる。特に好ましい末端シラノール変性ポリオルガノシロキサンは、両末端シラノール変性ポリジメチルシロキサンである。

【0026】
【化1】
JP0005555956B2_000002t.gif

【0027】
末端シラノール変性ポリオルガノシロキサンの23℃における粘度は、10~100,000mPa・s、好ましくは20~50,000mPa・s、さらに好ましくは30~10,000mPa・sである。

【0028】
(2.チタニウムアルコキシド)
チタニウムアルコキシドとしては、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラプロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラブトキシド、チタニウムテトライソブトキシド、チタニウムテトライソプロペニルオキシドなどが挙げられる。また、これらのオリゴマーも使用することが出来る。チタニウムアルコキシドの特に好ましい例は、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、またはチタニウムテトラブトキシドである。

【0029】
チタニウムアルコキシドは、1モルのポリオルガノシロキサンに対して、0.01~2モルの範囲で組成物中に含まれるのが好ましい。チタニウムアルコキシドが少なすぎると、硬化しにくくなり、多すぎると、硬くなり、弾性を失いやすい。チタニウムアルコキシドは、ポリオルガノシロキサンと同モル存在するのが、より好ましい。

【0030】
(3.α-ヒドロキシカルボニル化合物若しくはヒドロキシカルボン酸エステル)
α-ヒドロキシカルボニル化合物としては、ヒドロキシアセトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-3-ブタノン(アセトイン)、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、2-ヒドロキシ-1,2-ジフェニルエタノン(ベンゾイン)などを例示できる。ヒドロキシカルボン酸エステルは、炭素数3~6のヒドロキシカルボン酸と炭素数1~20のアルコールとのエステル反応による生成物である。ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、グリセリン酸等のモノカルボン酸、リンゴ酸、酒石酸等のジカルボン酸、クエン酸等のトリカルボン酸を例示できる。アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、ter-ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の脂肪族飽和アルコールを例示できる。

【0031】
上記のα-ヒドロキシカルボニル化合物としては、特に、ヒドロキシアセトンが好ましい。ヒドロキシアセトンは、アセトンの一つのCHをCHOHに置換した構造を持つ。上記のヒドロキシカルボン酸エステルとしては、例えば、リンゴ酸エステル、乳酸エステル、酒石酸エステル、クエン酸エステル、グリコールモノエステル、グリセリンモノエステル、グリセリンジエステル、リシノール酸エステルを挙げることができる。特に、リンゴ酸エステル、乳酸エステル、酒石酸エステルが好ましく、その中でもさらに、リンゴ酸エステルが好ましい。リンゴ酸エステルとしては、特に、リンゴ酸ジアルキルエステルが好ましい。リンゴ酸ジアルキルエステルとしては、例えば、リンゴ酸ジメチルエステル、リンゴ酸ジエチルエステル、リンゴ酸ジプロピルエステル、リンゴ酸ジブチルエステル、リンゴ酸ジヘキシルエステル、アセチルリンゴ酸ジオクチルエステル、リンゴ酸モノエチルモノオクチルエステルなどが挙げられる。その中でも、特に、リンゴ酸ジエチルエステルおよびリンゴ酸ジブチルエステルが好ましい。

【0032】
α-ヒドロキシカルボニル化合物またはヒドロキシカルボン酸エステルは、1モルの末端シラノール変性ポリオルガノシロキサンに対して0.01~2モルの範囲で組成物中に含まれるのが好ましく、特に0.01~0.4モルの範囲で組成物中に含まれるのが好ましく、さらに好ましくは、0.02~0.1モルの範囲で組成物中に含まれる。

【0033】
次に、ポリオルガノシロキサンと、チタニウムアルコキシドと、α-ヒドロキシカルボニル化合物若しくはヒドロキシカルボン酸エステルの一例であるリンゴ酸エステルとを含むポリオルガノシロキサン組成物の好適な特性について説明する。

【0034】
分子量Mの分子がN個存在する場合において、Mwとは、質量分率による分子量の平均値((M・Nの総和)/(M・Nの総和))をいい、Mnとは、全質量を分子数で除した値((M・Nの総和)/(Nの総和))をいう。Mw/Mnは、分子量分布指数といい、分子量分布の広がりの目安となる値である。

【0035】
分子量分布指数(Mw/Mn)は、ポリオルガノシロキサン組成物の温度および/またはその温度に保持する時間に依存して変化させることができる。温度が高いほど、あるいはある温度に保持する時間が長いほど、Mw/Mnが大きくなる傾向がある。

【0036】
次に、ポリオルガノシロキサン組成物の製造方法について説明する。

【0037】
末端シラノール変性ポリオルガノシロキサンと、チタニウムアルコキシドと、α-ヒドロキシカルボニル化合物若しくはヒドロキシカルボン酸エステルとを所定モル比で容器内に投入して、30~120℃の範囲内の所定温度にて攪拌する。攪拌の雰囲気は、密閉雰囲気あるいは開放雰囲気のいずれかを選択することができる。また、開放雰囲気にて攪拌を行う場合には、窒素ガスあるいはアルゴンガス等を流して行うのが好ましい。温度と攪拌時間を調整し、攪拌途中でサンプリングした試料のMwおよびMnの両値を測定することにより、所望のMw、MnおよびMw/Mnのポリオルガノシロキサン組成物を得ることができる。
【実施例】
【0038】
1.MwおよびMnの調整実験
(1)ヒドロキシアセトンを用いた溶液の評価
乾燥窒素ガスを流して空気を乾燥窒素ガスで置換した状態のグローブボックス内にて、蓋付きガラス容器(容量:200mlのセパラブルフラスコ)中に、30℃における粘度が34mPa・sの両末端シラノール変性ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane: PDMS、信越化学工業株式会社製X-21-5841、以後、単に、PDMSという)40g、チタニウムテトラ-n-ブトキシド(Titanium Tetra n-Butoxide: TTnB、関東化学株式会社製)13.612g、ヒドロキシアセトン(HA:和光純薬株式会社製)1.482gの順に入れ、該ガラス容器の蓋を閉めた(モル比にて、PDMS:TTnB:HA=1:1:0.5)。この内容物を「HA系溶液」とした。次に、グローブボックス外に蓋を閉めた状態のガラス容器を取り出した。HA系溶液は、密封雰囲気下において、ガラス容器に乾燥窒素ガスを流しながら、プロペラ付きの攪拌棒を挿入し、30℃に保持されたオイルバスに浸し24時間攪拌した後、60℃に上げて24時間攪拌した。その後、乾燥窒素ガスを流しながら、撹拌棒を取り出し、撹拌子を該ガラス容器に入れ、その後乾燥窒素ガスにて該ガラス容器を封じた。該ガラス容器を別のマグネットスターラーへ移した。該マグネットスターラーは室温であるため、該ガラス容器を載せてから、撹拌子を回転させながら、さらに100℃に上げて24時間攪拌した。その後100℃で68時間保持した。その間55.5時間、乾燥窒素ガスを流した開放雰囲気で攪拌し、12.5時間密閉状態で攪拌した。以後、特筆しない限りプロペラ撹拌棒の回転速度は100rpmである。HA系溶液の攪拌時間の経過に伴うMw、Mn、Mw/Mnおよび粘度の変化を調べるため、攪拌の途中でサンプリングして、上記各値の測定に供した。MwおよびMnの測定には、GPC(東ソー株式会社製、HLC-8220GPC)を用い、「東ソー製GPCサポートプログラムver05.00」を用いて、波形分離した後のデータを用いた。以後、特筆しない限り、後述のMwおよびMnについても、上記と同じ装置を用いて測定し、上記と同じプログラムを用いてデータ処理した。粘度の測定には、粘度測定装置(東機産業株式会社製、VISCOMETER RE-85)を用いた。粘度の単位はすべてmPa・sである。以後、特筆しない限り、粘度は上記と同じ装置を用いて測定した。
【実施例】
【0039】
HAを用いた硬化体との比較のため、錫系触媒を用いた溶液を焼成した試料も作製した。錫系触媒には、ジラウリン酸ジブチル錫(東京化成工業株式会社製、C32644Sn)を用いた(以後、単に、Sn系触媒という)。Sn系触媒を用いた溶液の作製条件は次の通りである。蓋付きガラス容器(容量:200ml)に、PDMS40g、TTnB13.612g、Sn系触媒0.4g(PDMSに対して1wt%相当)をその順に入れ、蓋を閉めた。密封雰囲気下において、ガラス容器に乾燥窒素ガスを流しながら、プロペラ付きの攪拌棒を挿入し、30℃に保持されたオイルバスに浸し24時間攪拌した後、60℃に上げて24時間攪拌した。乾燥窒素ガスを流しながら、撹拌棒を取り出し、撹拌子を該ガラス容器に入れ、その後乾燥窒素ガスにて該ガラス容器を封じた。該ガラス容器をマグネットスターラーへ移した。該マグネットスターラーは室温であるため、密閉状態で撹拌子を回転させながら、100℃で24時間攪拌した。その後、100℃で72.5時間保持した。その間60.5時間、乾燥窒素ガスを流した開放雰囲気で攪拌し、12時間密閉状態で攪拌した。その後に密閉雰囲気に変えて100℃で12時間攪拌した。この溶液を、以後、「Sn-1」という。硬化体の作製条件は、HAを用いたものと同じ条件とした。
【実施例】
【0040】
【表1】
JP0005555956B2_000003t.gif
【実施例】
【0041】
表1、図1、および図2に、HA系溶液および比較溶液1の攪拌時間の経過に伴うMw、MnおよびMw/Mnの変化と、それらのGPC測定結果を示す。また、図3、図4に、HA系溶液および比較溶液1の攪拌時間の経過に伴うフーリエ変換赤外線分光分析装置(以後「FT-IR」という)による吸収スペクトルの変化を示す。表1および図1~図4中の「close」および「open」は、それぞれ、密封雰囲気下での攪拌および乾燥窒素ガスを流通した開放雰囲気下での攪拌を意味する。
【実施例】
【0042】
(2)DL-リンゴ酸ジエチルエステルを用いた溶液の評価
乾燥窒素ガスを流した状態のグローブボックス内にて、蓋付きガラス容器(容量:200ml)中に、PDMS40g、チタニウムテトラエトキシド(Tetraethoxytitanium: TTE、メルク社製)9.13g、DL-リンゴ酸ジエチルエステル(DL-malicacid diethyl ester: MA、東京化成工業株式会社製)1.52gを入れて、蓋を閉めた(モル比にて、PDMS:TTE:MA=1:1:0.2)。この内容物を「MA系溶液」とした。次に、グローブボックス外に蓋を閉めた状態のガラス容器を取り出した。MA系溶液は、密封雰囲気下において、ガラス容器に乾燥窒素ガスを流しながら、プロペラ付きの攪拌棒を挿入し、30℃に保持されたオイルバスに浸し、60℃に上げて48時間攪拌した。乾燥窒素ガスを流しながら、撹拌棒を取り出し、撹拌子を該ガラス容器に入れ、その後乾燥窒素ガスにて該ガラス容器を封じた。該ガラス容器を別のマグネットスターラーへ移した。該マグネットスターラーは室温であるため、該ガラス容器を載せてから、撹拌子を回転させながら、100℃に上げて密閉状態で48時間攪拌し、その後乾燥窒素ガスを流して17時間攪拌した。MA系溶液の攪拌時間の経過に伴うMw、Mn、Mw/Mnおよび粘度の変化を調べるため、攪拌の途中でサンプリングして、上記各値の測定に供した。
【実施例】
【0043】
MA系溶液との比較のため、MAを含まないPDMSとTTEの混合物(これを、「比較溶液2」とした。)を用意し、MA系溶液と同じ条件下で攪拌し、攪拌途中および攪拌終了直後にサンプリングし、各サンプルのMwおよびMnの両値を測定した。各サンプルのMwおよびMnの測定には、HA系溶液の場合と同じ測定機器を用いた。
【実施例】
【0044】
【表2】
JP0005555956B2_000004t.gif
【実施例】
【0045】
表2、図5および図6に、MA系溶液および比較溶液2の攪拌条件を変えた各サンプルのMw、MnおよびMw/Mnの変化と、それらのGPC測定結果を示す。表2中の「close」は、密封雰囲気下での攪拌を意味する。また、図7、図8に、MA系溶液および比較溶液2の攪拌時間の経過に伴うFT-IRによる吸収スペクトルの変化を示す。表2および図5~図8中の「close」および「open」は、それぞれ、密封雰囲気下での攪拌および乾燥窒素ガスを流通した開放雰囲気下での攪拌を意味する。
【実施例】
【0046】
2.実験1:ヒドロキシアセトンを用いた硬化体と錫系触媒を用いた硬化体の特性評価
(1)各硬化体の作製方法
乾燥窒素ガスを流した状態のグローブボックス内にて、蓋付きガラス容器(容量:200ml)中に、PDMS40g、TTnB13.612g、HA1.482gの順に入れ、蓋を閉めた(モル比にて、PDMS:TTnB:HA=1:1:0.5)。この内容物を2セット用意し、それぞれ「HA試料1」および「HA試料2」とした。次に、グローブボックス外に蓋を閉めた状態の2個のガラス容器を取り出した。
【実施例】
【0047】
HA試料1は、密封雰囲気下において、ガラス容器に乾燥窒素ガスを流しながら、プロペラ付きの攪拌棒を挿入し、30℃に保持されたオイルバスに浸し24時間攪拌した後、60℃に上げて24時間攪拌した。乾燥窒素ガスを流しながら、撹拌棒を取り出し、撹拌子を該ガラス容器に入れ、その後乾燥窒素ガスにて該ガラス容器を封じた。該ガラス容器を別のマグネットスターラーへ移した。該マグネットスターラーは室温であるため、該ガラス容器を載せてから、撹拌子を回転させながら、さらに100℃に上げて24時間攪拌後、100℃で68時間保持した。その間55.5時間、乾燥窒素ガスを流した開放雰囲気で攪拌し、12.5時間密閉状態で攪拌した。一方、HA試料2は、密封雰囲気下において、ガラス容器に乾燥窒素ガスを流しながら、プロペラ付きの攪拌棒を挿入し、30℃に保持されたオイルバスに浸し24時間攪拌した後、60℃に上げて24時間攪拌した。乾燥窒素ガスを流しながら、撹拌棒を取り出し、撹拌子を該ガラス容器に入れ、その後乾燥窒素ガスにて該ガラス容器を封じた。該ガラス容器を別のマグネットスターラーへ移した。該マグネットスターラーは室温であるため、該ガラス容器を載せてから、撹拌子を回転させながら、さらに100℃に上げて24時間攪拌後、乾燥窒素ガスを流した開放雰囲気下に変えて100℃で52時間撹拌した。HA試料1の攪拌終了直前の粘度、MwおよびMw/Mnは、それぞれ、4585mPa・s、18688および1.83であった。粘度は、30℃にて測定した値である。以後の粘度測定も同じ温度で行った。この攪拌後の溶液を「HA0.5-1」という。一方、HA試料2の攪拌終了直前の粘度、MwおよびMw/Mnは、それぞれ、359.7mPa・s、8633および1.74であった。この攪拌後の溶液を「HA0.5-2」という。
【実施例】
【0048】
次に、攪拌後の2種溶液を、それぞれ、内径95mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のシャーレに展開し、当該シャーレを温度30℃、湿度65%R.H.の雰囲気に24時間静置してから、60℃の恒温槽(ETTAS OFW-300、AS ONE株式会社製)に48時間入れ、室温まで自然冷却した。冷却後、各シャーレから、各シート状硬化体(95mm径×1.3mm厚)を取り出した。
【実施例】
【0049】
HAを用いた硬化体との比較のため、錫系触媒を用いた溶液を焼成した試料も作製した。錫系触媒には、ジラウリン酸ジブチル錫(東京化成工業株式会社製、C32644Sn)を用いた(以後、単に、Sn系触媒という)。Sn系触媒を用いた溶液の作製条件は次の通りである。蓋付きガラス容器(容量:200ml)に、PDMS40g、TTnB13.612g、Sn系触媒0.4g(PDMSに対して1wt%相当)をその順に入れ、蓋を閉めた。密封雰囲気下において、ガラス容器に乾燥窒素ガスを流しながら、プロペラ付きの攪拌棒を挿入し、30℃に保持されたオイルバスに浸し24時間攪拌した後、60℃に上げて24時間攪拌した。乾燥窒素ガスを流しながら、撹拌棒を取り出し、撹拌子を該ガラス容器に入れ、その後乾燥窒素ガスにて該ガラス容器を封じた。該ガラス容器をマグネットスターラーへ移した。該マグネットスターラーは室温であるため、密閉状態で撹拌子を回転させながら、100℃で24時間攪拌した。その後、100℃で72.5時間保持した。その間60.5時間、乾燥窒素ガスを流した開放雰囲気で攪拌し、12時間密閉状態で攪拌した。その後に密閉雰囲気に変えて100℃で12時間攪拌した。Sn系触媒を用いた攪拌後の溶液の粘度、MwおよびMw/Mnは、それぞれ、2417mPa・s、4663および1.39であった。この溶液を、以後、「Sn-1」という。硬化体の作製条件は、HAを用いたものと同じ条件とした。
【実施例】
【0050】
(2)引張特性評価
各シート状硬化体をダンベルで打ち抜き、引張試験用の試験片を作製し、オートグラフ(AGS-J:SHIMADZU)を用いてJISK6251に従って引張試験を行った。引張速度は500mm/minとした。以後、引張特性評価時の引張速度は、全て同一速度とした。
【実施例】
【0051】
【表3】
JP0005555956B2_000005t.gif
【実施例】
【0052】
表3に、HA0.5-1を硬化させた硬化体(HA0.5-1硬化体)、HA0.5-2を硬化させた硬化体(HA0.5-2硬化体)およびSn-1を硬化させた硬化体(Sn-1硬化体)の引張特性評価結果を示す。
【実施例】
【0053】
表3に示すように、HAを用いた硬化体は、Sn系触媒を用いた硬化体と比べて、破断点強度および破断点伸びに優れていることがわかった。また、HAを用いた2種硬化体を比較すると、弾性率、破断点強度および破断点伸びのいずれについてもほぼ同等の特性であった。
【実施例】
【0054】
(3)接着性能評価
図9~図11に、接着性能評価の方法を説明するための図を示す。
【実施例】
【0055】
幅20mm×長さ50mm×厚さ2mmのアルミニウム板を2枚用意した。図9に示すように、各アルミニウムの端部接着領域(幅20mm×長さ20mm、面積:400mm)を覆うように、ポリイミド製のテープを二枚重ねで貼り付けた(二枚重ねの厚さ:約240μm)。両方のアルミニウム板の端部接着領域にHA0.5-1を塗布し、恒温槽内にて60℃で30分間の仮焼成を行った。仮焼成後、HA0.5-1を塗布したアルミニウム板を恒温槽から取り出して、両端部接着領域をお互いに重ねた。その後、温度30℃、湿度65%R.H.中に24時間放置した。その後、60℃にて48時間と96時間の2通りの焼成時間にて本焼成を行った。これにより、図10に示す状態の試験片の作製を完了した。HA0.5-2およびSn-1についても、上述と同様に2枚のアルミニウム板に挟んだ形態の試験片を作製した。
【実施例】
【0056】
次に、図11に示すように、試験片の両端を反対方向に引っ張り、端部接着領域が破断したときの張力に基づき、接着力を求めた。接着力の測定は、オートグラフ(AGS-J, SHIMADZU)を用いて、5.0mm/minの引張速度で引張りせん断方式により実施した。以後、接着力の測定の条件は、特に言及しない限り同じ条件とした。また、接着力[N/mm2]は、引張力[N]を接着面積[mm2]で除して算出した。
【実施例】
【0057】
【表4】
JP0005555956B2_000006t.gif
【実施例】
【0058】
表4に、接着性能評価結果を示す。
【実施例】
【0059】
表4から明らかなように、HAを用いた硬化体(HA硬化体)とSn系触媒を用いた硬化体(Sn硬化体)を比較すると、HA硬化体の方が接着性能に優れることがわかった。また、いずれの硬化体も、本焼成時間が長い方(すなわち、96時間の焼成したもの)が接着性能に優れていた。さらに、2種類のHA硬化体の中で比較すると、同じ焼成時間の場合、Mwが大きい方(すなわち、HA0.5-1硬化体の方)が接着性能に優れていた。
【実施例】
【0060】
3.実験2:チタニウムアルコキシドの種類を変えて作製した硬化体の特性評価
(1)各硬化体の作製方法
(1.a)TTnB-HA系
乾燥窒素ガスを流した状態のグローブボックス内にて、蓋付きガラス容器(容量:200ml)中に、PDMS50g、TTnB17.015g、HA1.853gをその順に入れ、蓋を閉めた(モル比にて、PDMS:TTnB:HA=1:1:0.5)。この内容物を2セット用意し、それぞれ「HA試料3」および「HA試料4」とした。次に、グローブボックス外に蓋を閉めた状態の2個のガラス容器を取り出し、HA試料3は、密封雰囲気下において、ガラス容器に乾燥窒素ガスを流しながら、プロペラ付きの攪拌棒を挿入し、60℃に保持されたオイルバスに浸し24時間攪拌した。その後、乾燥窒素ガスを流しながら、撹拌棒を取り出し、撹拌子を該ガラス容器に入れた後、乾燥窒素ガスにて該ガラス容器を封じた。100℃に上げて72時間攪拌した後、100℃で92.5時間保持した。その間80時間、乾燥窒素ガスを流した開放雰囲気で攪拌し、12.5時間密閉状態で攪拌した。
【実施例】
【0061】
一方、HA試料4は、密封雰囲気下において、ガラス容器に乾燥窒素ガスを流しながら、プロペラ付きの攪拌棒を挿入し、60℃に保持されたオイルバスに浸し24時間攪拌した。乾燥窒素ガスを流しながら、撹拌棒を取り出し、撹拌子を該ガラス容器に入れ、その後乾燥窒素ガスにて該ガラス容器を封じた。該ガラス容器を別のマグネットスターラーへ移した。該マグネットスターラーは室温であるため、該ガラス容器を載せてから、撹拌子を回転させながら、100℃に上げて120時間攪拌した後、乾燥窒素ガスを流した開放雰囲気下に変えて100℃で97時間攪拌した。HA試料3の攪拌終了直前の粘度、MwおよびMw/Mnは、それぞれ、2908.5mPa・s、19748および1.85であった。この攪拌後の溶液を「HA0.5-TTnB-72」という。一方、HA試料4の攪拌終了直前の粘度、MwおよびMw/Mnは、それぞれ、10085mPa・s、22976および1.84であった。この攪拌後の溶液を「HA0.5-TTnB-120」という。
【実施例】
【0062】
次に、攪拌後の2種溶液を、それぞれ、実験1で用いたものと同型のシャーレに展開し、当該シャーレを温度30℃、湿度65%R.H.の雰囲気に24時間静置してから、60℃の恒温槽(実験1で使用したものと同じ恒温槽)に96時間および168時間入れ、室温まで自然冷却した。冷却後、各シャーレから、各シート状硬化体(95mm径×1.3mm厚)を取り出した。
【実施例】
【0063】
(1.b)TTE-HA系
乾燥窒素ガスを流した状態のグローブボックス内にて、蓋付きガラス容器(容量:200ml)中に、PDMS50g、TTE11.4075g、HA1.853gをその順に入れ、蓋を閉めた(モル比にて、PDMS:TTE:HA=1:1:0.5)。この内容物を「HA試料5」とした。次に、グローブボックス外に蓋を閉めた状態のガラス容器を取り出し、60℃に保持されたオイルバスに浸した。HA試料5は、密封雰囲気下において、ガラス容器に乾燥窒素ガスを流しながら、プロペラ付きの攪拌棒を挿入し、60℃で48時間攪拌後、乾燥窒素ガスを流しながら、撹拌棒を取り出し、撹拌子を該ガラス容器に入れ、その後乾燥窒素ガスにて該ガラス容器を封じた。該ガラス容器を別のマグネットスターラーへ移した。該マグネットスターラーは室温であるため、該ガラス容器を載せてから、撹拌子を回転させながら、100℃に上げて72時間攪拌した後、乾燥窒素ガスを流した開放雰囲気下に変えて100℃で16時間攪拌した。HA試料5は、最後に固化したため、粘度の測定はできなかった。当該HA試料5のMwおよびMw/Mnは、それぞれ、9940および1.78であった。なお、このサンプルについては、硬化体の作製には適さないので、以後の硬化体の作製およびその特性評価を行わなかった。
【実施例】
【0064】
(1.c)TTIP-HA系
乾燥窒素ガスを流した状態のグローブボックス内にて、蓋付きガラス容器(容量:200ml)中に、PDMS50g、チタニウムテトライソプロポキシド(Titanium tetraisopropoxide: TTIP(関東化学株式会社製)14.211g、HA1.853gをその順に入れ、そこに攪拌子を入れて蓋を閉めた(モル比にて、PDMS:TTIP:HA=1:1:0.5)。この内容物を「HA試料6」とした。次に、グローブボックス外に蓋を閉めた状態のガラス容器を取り出した。HA試料6は、密封雰囲気下において、ガラス容器に乾燥窒素ガスを流しながら、プロペラ付きの攪拌棒を挿入し、60℃に保持されたオイルバスに浸し120時間攪拌した。乾燥窒素ガスを流しながら、撹拌棒を取り出し、撹拌子を該ガラス容器に入れ、その後、乾燥窒素ガスにて該ガラス容器を封じた。該ガラス容器をマグネットスターラーへ移した。該マグネットスターラーは室温であるため、該ガラス容器を載せてから、撹拌子を回転させながら、100℃に上げて48時間攪拌した後、乾燥窒素ガスを流した開放雰囲気下に変えて100℃で18時間攪拌した。HA試料6の攪拌終了直前の粘度、MwおよびMw/Mnは、それぞれ、1985.3mPa・s、6602および1.54であった。この攪拌後の溶液を「HA0.5-TTIP-48」という。
【実施例】
【0065】
次に、攪拌後の溶液を、実験1で用いたものと同型のシャーレに展開し、当該シャーレを温度30℃、湿度65%R.H.の雰囲気に24時間静置してから、60℃の恒温槽(実験1で用いた恒温槽)に96時間および168時間入れ、室温まで自然冷却した。冷却後、各シャーレから、各シート状硬化体(95mm径×1.3mm厚)を取り出した。
【実施例】
【0066】
(1.d)TTnB-Sn系(比較材)
HAを用いた上記硬化体との比較のため、Sn系触媒を用いた溶液を焼成した試料も作製した。Sn系触媒を用いた溶液の作製条件は次の通りである。乾燥窒素ガスを流した状態のグローブボックス内にて、蓋付きガラス容器(容量:200ml)中に、PDMS40g、TTnB13.612g、Sn系触媒1.2g(PDMSに対して3wt%相当)をその順に入れ、蓋を閉めた。密封雰囲気下において、ガラス容器に乾燥窒素ガスを流しながら、プロペラ付きの攪拌棒を挿入し、60℃に保持されたオイルバスに浸し、24時間攪拌した。Sn系触媒を用いた攪拌後の溶液の粘度、MwおよびMw/Mnは、それぞれ19.2mPa・s、2956および1.51であった。この溶液を、以後、「Sn-TTnB」という。硬化体の作製条件は、HAを用いたものと同じ条件とした。
【実施例】
【0067】
(2)引張特性評価
各シート状硬化体をダンベルで打ち抜き、引張試験用の試験片を作製し、オートグラフ(AGS-J:SHIMADZU)を用いてJISK6251に従って引張試験を行った。
【実施例】
【0068】
図12~図14に、各種試験片の引張特性評価結果を示す。図12は各試験片の弾性率を、図13は各試験片の破断点強度を、図14は各試験片の破断点伸びを、それぞれ示す。これらの図中、「TTnB 72h 96h」は、上述の溶液「HA0.5-TTnB-72」を60℃-96時間の条件で焼成して得られた硬化体から切り出した試験片を示す。同様に、「TTnB 72h 168h」は溶液「HA0.5-TTnB-72」を60℃-168時間の条件で焼成して得られた硬化体から切り出した試験片を、「TTnB 120h 96h」は溶液「HA0.5-TTnB-120」を60℃-96時間の条件で焼成して得られた硬化体から切り出した試験片を、「TTnB 120h 168h」は溶液「HA0.5-TTnB-120」を60℃-168時間の条件で焼成して得られた硬化体から切り出した試験片を、「TTIP 48h 96h」は溶液「HA0.5-TTIP-48」を60℃-96時間の条件で焼成して得られた硬化体から切り出した試験片を、「TTIP 48h 168h」は溶液「HA0.5-TTIP-48」を60℃-168時間の条件で焼成して得られた硬化体から切り出した試験片を、「錫 3重量部 96h」は溶液「Sn-TTnB」を60℃-96時間の条件で焼成して得られた硬化体から切り出した試験片を、「錫 3重量部 168h」は溶液「Sn-TTnB」を60℃-168時間の条件で焼成して得られた硬化体から切り出した試験片を、それぞれ示す。
【実施例】
【0069】
図13に示すように、HAを用いたいずれの硬化体も、Sn系触媒を用いた硬化体よりも破断点強度が高かった。また、HAを用いた各種硬化体の中で比較すると、図12および図14に示すように、チタニウムアルコキシドとしてTTIPを用いたものは、TTnBを用いたものに比べて、弾性率が大きく、かつ破断点伸びが小さいこともわかった。
【実施例】
【0070】
(3)接着性能評価
TTnB-HA系、TTIP-HA系およびTTnB-Sn系の各種溶液を、前述の図9~図11に基づく前述と同じ評価方法を用いて、その接着性能を評価した。本焼成は、温度60℃で96時間および168時間の2通りの時間で行った。
【実施例】
【0071】
【表5】
JP0005555956B2_000007t.gif
【実施例】
【0072】
表5および図15に、接着性能評価結果を示す。図15において、「TTnB 72h 96h」は、上述の溶液「HA0.5-TTnB-72」を60℃-96時間の条件で焼成した接着硬化体を示す。同様に、「TTnB 72h 168h」は溶液「HA0.5-TTnB-72」を60℃-168時間の条件で焼成した接着硬化体を、「TTnB 120h 96h」は溶液「HA0.5-TTnB-120」を60℃-96時間の条件で焼成した接着硬化体を、「TTnB 120h 168h」は溶液「HA0.5-TTnB-120」を60℃-168時間の条件で焼成した接着硬化体を、「TTIP 48h 96h」は溶液「HA0.5-TTIP-48」を60℃-96時間の条件で焼成した接着硬化体を、「TTIP 48h 168h」は溶液「HA0.5-TTIP-48」を60℃-168時間の条件で焼成した接着硬化体を、「錫 3質量部 TTnB 96h」は溶液「Sn-TTnB」を60℃-96時間の条件で焼成した接着硬化体を、「錫 3質量部 TTnB 168h」は溶液「Sn-TTnB」を60℃-168時間の条件で焼成した接着硬化体を、それぞれ示す。
【実施例】
【0073】
表5から明らかなように、HAを用いた硬化体(HA硬化体)とSn系触媒を用いた硬化体(Sn硬化体)を比較すると、HA硬化体の方が接着性能に優れることがわかった。また、いずれの硬化体も、本焼成時間が長い方(すなわち、168時間の焼成したもの)が接着性能に優れていた。さらに、各種HA硬化体の中で比較すると、チタニウムアルコキシドにTTIPを用いた方が接着性能に優れていた。
【実施例】
【0074】
4.実験3:ヒドロキシアセトンの添加量および攪拌温度が硬化体に与える効果の検討
(1)各硬化体の作製方法
乾燥窒素ガスを流した状態のグローブボックス内にて、蓋付きガラス容器(容量:200ml)中に、PDMS50g、TTnB17.015g、HA3.706gの順に入れ、そこに攪拌子を入れて蓋を閉めた(モル比にて、PDMS:TTnB:HA=1:1:1)。この内容物を「HA試料7」とした。また、同様の手順にて、PDMS50g、TTnB17.015g、HA1.853gの順に入れ、蓋を閉めた(モル比にて、PDMS:TTnB:HA=1:1:0.5)。この内容物を2セット用意し、それぞれ「HA試料8」および「HA試料9」とした。次に、グローブボックス外に蓋を閉めた状態の3個のガラス容器を取り出した。HA試料7は、密封雰囲気下において、ガラス容器に乾燥窒素ガスを流しながら、プロペラ付きの攪拌棒を挿入し、24時間攪拌した。乾燥窒素ガスを流しながら、撹拌棒を取り出し、撹拌子を該ガラス容器に入れ、その後乾燥窒素ガスにて該ガラス容器を封じた。該ガラス容器を別のマグネットスターラーへ移した。該マグネットスターラーは室温であるため、該ガラス容器を載せてから、撹拌子を回転させながら、100℃に上げて48時間攪拌後、乾燥窒素ガスを流した開放雰囲気下に変えて、100℃で92.5時間保持した。その間76.5時間、乾燥窒素ガスを流した開放雰囲気で攪拌し、16時間密閉状態で攪拌した。
【実施例】
【0075】
一方、HA試料8は、密封雰囲気下において、60℃で24時間攪拌し、さらに100℃に上げて48時間攪拌後、窒素ガスを流した開放雰囲気下に変えて、100℃で66時間攪拌した。HA試料9は、密封雰囲気下において、60℃で72時間攪拌し、乾燥窒素ガスを流した開放雰囲気下に変えて、60℃のままで88時間攪拌した。
【実施例】
【0076】
HA試料7の攪拌終了直前の粘度、MwおよびMw/Mnは、それぞれ、4453.7mPa・s、32622および1.69であった。この攪拌後の溶液を「HA1-TTnB-100」という。HA試料8の攪拌終了直前の粘度、MwおよびMw/Mnは、それぞれ、10095mPa・s、16977および1.88であった。この攪拌後の溶液を「HA0.5-TTnB-100」という。さらに、HA試料9の攪拌終了直前の粘度、MwおよびMw/Mnは、それぞれ、102333.3mPa・s、3090および1.42であった。この攪拌後の溶液を「HA0.5-TTnB-60」という。粘度の測定およびMw等の測定には、実験1と同じ装置を用いた。
【実施例】
【0077】
次に、攪拌後の3種溶液を、それぞれ、実験1で用いたものと同型のシャーレに展開した。その後、105℃の恒温槽(実験1で用いたものと同一の恒温槽)に48時間入れ、室温まで自然冷却した。冷却後、各シャーレから、各シート状硬化体(95mm径×1.3mm厚)を取り出した。外観上、HA0.5-TTnB-60の硬化体は、赤ワインのような色であり、他の2種の硬化体の色(薄い黄色)と異なっていた。
【実施例】
【0078】
(2)引張特性評価
各シート状硬化体をダンベルで打ち抜き、引張試験用の試験片を作製し、オートグラフ(AGS-J:SHIMADZU)を用いてJISK6251に従って引張試験を行った。
【実施例】
【0079】
【表6】
JP0005555956B2_000008t.gif
【実施例】
【0080】
表6に、HA1-TTnB-100を硬化させた硬化体(HA-TTnB-100硬化体)、HA0.5-TTnB-100を硬化させた硬化体(HA0.5-TTnB-100硬化体)およびHA0.5-TTnB-60を硬化させた硬化体(HA0.5-TTnB-60硬化体)の引張特性評価結果を示す。
【実施例】
【0081】
表6に示すように、HAのモル比が0.5の方が、弾性率および破断点強度に優れていた。逆に、HAが多いと破断点伸びが極めて大きくなることがわかった。また、HAのモル比が0.5の2種硬化体同士を比較すると、60℃で攪拌した溶液を硬化させた硬化体の方が、100℃で攪拌した溶液を硬化させた硬化体よりも、弾性率が大きく、かつ破断点伸びが小さいことがわかった。
【実施例】
【0082】
(3)接着性能評価
HA1-TTnB-100、HA0.5-TTnB-100およびHA0.5-TTnB-60の各種溶液を、前述の図1~3に基づく前述と同じ評価方法を用いて、その接着性能を評価した。本焼成は、温度105℃で48時間および96時間の2通りの時間で行った。
【実施例】
【0083】
【表7】
JP0005555956B2_000009t.gif
【実施例】
【0084】
表7に、接着性能評価結果を示す。
【実施例】
【0085】
表7から明らかなように、HAのモル比0.5の溶液を硬化させた硬化体の方が、HAのモル比1.0の溶液を硬化させた硬化体よりも接着性能に優れることがわかった。また、いずれの硬化体も、本焼成時間が長い方(すなわち、96時間焼成したもの)が接着性能に優れていた。さらに、HAのモル比0.5の溶液を硬化させた2種の硬化体同士を比較すると、60℃にて攪拌した溶液を硬化させた硬化体の方が、100℃にて攪拌した溶液を硬化させた硬化体よりも接着性能に優れていた。
【実施例】
【0086】
5.実験4:DL-リンゴ酸ジエチルエステルを用いた硬化体と錫系触媒を用いた硬化体の特性評価
(1)各硬化体の作製方法
乾燥窒素ガスを流して空気を乾燥窒素ガスで置換したグローブボックス内にて、ガラス容器(容量:200mlのセパラブルフラスコ)中に、PDMS50g、TTE11.408g、MA0.95gを、その順に入れた(モル比にて、PDMS:TTE:MA=1:1:0.1)。この内容物を「MA系試料」とする。その後、該ガラス容器に蓋をし、グローブボックスから該ガラス容器を取り出した。密封雰囲気下において、ガラス容器に乾燥窒素ガスを流しながら、プロペラ付きの攪拌棒を挿入し、60℃に保持されたオイルバスに浸してから24時間撹拌後した。その後、乾燥窒素ガスを流しながら、撹拌棒を取り出し、撹拌子を該ガラス容器に入れ、その後乾燥窒素ガスにて該ガラス容器を封じた。該ガラス容器をマグネットスターラーへ移した。該マグネットスターラーは室温であるため、該ガラス容器を載せてから、撹拌子を回転させながら100℃に上げて48時間撹拌後、乾燥窒素ガスを流して14時間撹拌した。このように準備したMA系試料の30℃における粘度、MwおよびMw/Mnは、それぞれ、492.8mPa・s、5569、および1.44であった。
【実施例】
【0087】
上記MA系試料15gを実験1で用いたものと同型のシャーレに展開し、60℃の温度に保持された恒温槽に48時間入れて焼成した。その後、室温まで自然冷却した。冷却後、シャーレからシート状硬化体(95mm径×1.3mm厚)を取り出した。なお、MAを用いた上記硬化体との比較のため、実験1で用いたSn-1硬化体を評価に供した。
【実施例】
【0088】
(2)引張特性評価
各シート状硬化体をダンベルで打ち抜き、引張試験用の試験片を作製し、オートグラフ(AGS-J:SHIMADZU)を用いてJISK6251に従って引張試験を行った。
【実施例】
【0089】
【表8】
JP0005555956B2_000010t.gif
【実施例】
【0090】
表8および図16~図18に、MA系試料を硬化させた硬化体(MA系試料硬化体)およびSn-1硬化体の引張特性評価結果を示す。図16は各試験片の弾性率を、図17は各試験片の破断点強度を、図18は各試験片の破断点伸びを、それぞれ示す。これらの図中、「TTE-MA 60℃ 48h 焼成」は、MA系試料硬化体を、「錫 1質量部 60℃ 48h 焼成」は、Sn-1硬化体を、それぞれ示す。
【実施例】
【0091】
表8および図16~図18に示すように、MA系試料硬化体は、Sn系試料硬化体と比べて、柔らかく伸びやすいが、同等の破断点強度を有することがわかった。
【実施例】
【0092】
(3)接着性能評価
MA系試料を、前述の図9~図11に基づく前述と同じ評価方法を用いて、その接着性能を評価した。本焼成は、温度60℃で96時間保持する条件で行った。比較として、実験1で用いたSn-1もMA系試料と同じ条件で評価した。
【実施例】
【0093】
図19に、接着性能評価結果を示す。図19において、「TTE-MA 60℃ 96h 焼成」は、「MA系試料」を60℃-96時間の条件で焼成した接着硬化体を示す。同様に、「錫 1質量部 60℃ 96h 焼成」は、「Sn-1」を60℃-96時間の条件で焼成した接着硬化体を示す。
【実施例】
【0094】
その結果、Sn-1の接着強度が0.1523N/mmであるのに対して、MA系試料の接着強度は、0.23N/mmであった。このように、MAを用いた溶液をアルミニウム板間に挟んで接着した方が、錫系触媒を用いた溶液をアルミニウム板間に挟んで接着するよりも、接着性能に優れることがわかった。
【実施例】
【0095】
6.実験5:PDMSの高分子化への各種ヒドロキシカルボン酸エステルの添加効果
(1)PDMS-TTE-MA(モル比=1:0.05:0.05)系
乾燥窒素ガスを流した状態のグローブボックス内にて、予めTTE0.114g(PDMS1モルに対して0.05モル相当)と、MA0.095g(PDMS1モルに対して0.05モル相当)とをスクリュー管の中で温度25℃、30分間攪拌したものを用意しておき、そこに、30℃における粘度が34mPa・sの両末端シラノール変性ポリジメチルシロキサン(Mw=1000のPDMS)10gを投入して、スクリュー管の蓋を閉めた。スクリュー管内の溶液の温度が60℃になるように加熱しながら、スターラーを用いて撹拌を行った。2時間撹拌後に、シャーレに3gを展開し、温度25℃、湿度50%プラスマイナス10%R.H.の雰囲気下に保たれたボックス内にて0~336時間の範囲内の所定時間放置し、溶液の変化をGPCおよびFT-IRを用いて評価した。
【実施例】
【0096】
比較として、MAを加えずに、PDMS10gとTTE0.114gを上記条件で加熱、攪拌してからシャーレに展開し、所定時間放置した試料(PDMS-TTE系)も評価した。さらに、PDMS-TTE系において、スクリュー管の中における加熱温度と攪拌時間の効果を調べるため、スクリュー管の中で2時間攪拌後、引き続き70時間攪拌して総時間72時間経過後の試料と、その後100℃に加温して100℃で48時間攪拌した後の試料と、さらに150℃に加温して150℃で48時間攪拌した後の試料についても評価した。また、シャーレに展開後の条件を変化させたときの効果を調べるため、シャーレに展開後の温度を、25℃のみならず、100℃および150℃の2条件も採用した。
【実施例】
【0097】
図20は、比較に用いたPDMS-TTE系において、スクリュー管内で温度60℃-2時間攪拌後の溶液(60℃ close 2h)、攪拌後の溶液をシャーレに展開して温度25℃-48時間放置した後の溶液(25℃ RH50 48h)および攪拌後の溶液をシャーレに展開して温度25℃-168時間放置した後の溶液(25℃ RH50 168h)の分子量分布の変化を示す図(A)および赤外吸収スペクトルの変化を示す図(B)である。
【実施例】
【0098】
図21は、同じく比較に用いたPDMS-TTE系において、スクリュー管内で温度60℃-2時間攪拌後の溶液(60℃ close 2h)、スクリュー管内で温度60℃-72時間攪拌後の溶液(60℃ close 72h)、スクリュー管内で温度100℃-48時間攪拌後の溶液(100℃ close 48h)およびスクリュー管内で温度150℃-48時間攪拌後の溶液(150℃ close 48h)の分子量分布の変化を示す図(A)および赤外吸収スペクトルの変化を示す図(B)である。
【実施例】
【0099】
図22は、同じく比較に用いたPDMS-TTE系において、スクリュー管内で温度60℃-2時間攪拌後の溶液(60℃ close 2h)、攪拌後の溶液をシャーレに展開して温度25℃-336時間放置した後の溶液(25℃ RH50 336h)、攪拌後の溶液をシャーレに展開して温度100℃-336時間放置した後の溶液(100℃ 336h)および攪拌後の溶液をシャーレに展開して温度150℃-336時間放置した後の溶液(150℃ 336h)の分子量分布の変化を示す図(A)および赤外吸収スペクトルの変化を示す図(B)である。
【実施例】
【0100】
図20に示すように、温度60℃で2時間攪拌後、温度25℃で長時間放置しても高分子化は見られず、FT-IRの結果からもSi-OH結合量がほぼ一定に維持された状態であった。また、図21および図22に示すように、60℃における攪拌時間を長くし、あるいはその後にシャーレに展開して100℃まで加温しても高分子化は見られなかったが、攪拌後に温度を150℃に上げると高分子化が見受けられた。このことは、FT-IRの結果においてSi-OH結合が減少していることからも明らかであった。したがって、PDMS-TTE系の場合には、150℃以上に加温しないとPDMSが高分子化しないと考えられる。
【実施例】
【0101】
図23は、PDMS-TTE-MA系において、スクリュー管内で温度60℃-2時間攪拌後の溶液(60℃ close 2h)、攪拌後の溶液をシャーレに展開して温度25℃-48時間放置した後の溶液(25℃ RH50 48h)および攪拌後の溶液をシャーレに展開して温度25℃-168時間放置した後の溶液(25℃ RH50 168h)の分子量分布の変化を示す図(A)および赤外吸収スペクトルの変化を示す図(B)である。
【実施例】
【0102】
一方、PDMS-TTE-MA系の場合には、図23に示すように、攪拌後の溶液をシャーレに展開して、温度25℃にて放置する時間を168時間まで長くすると、PDMSの高分子化が見られた。このように、PDMS-TTE-MA系の場合には、高温に加熱しなくても、室温(25℃)で長時間放置すればPDMSが高分子化することから、低温硬化型の接着剤としての用途に、MAが有効に機能するものと考えられる。
【実施例】
【0103】
(2)PDMS-TTE-MADb(モル比=1:0.05:0.05)系
上述のPDMS-TTE-MA系のMAの代わりにDL-リンゴ酸ジブチルエステル(DL-malicacid dibutyl ester: MADb、東京化成工業株式会社製)を用いた。MADbの添加量は、0.123gであり、モル比にてPDMS:TTE:MADbが1:0.05:0.05となるようにした。その他の攪拌、シャーレ展開後の放置の各条件は、PDMS-TTE-MA系と同一とした。
【実施例】
【0104】
図24は、PDMS-TTE-MADb系において、スクリュー管内で温度60℃-2時間攪拌後の溶液(60℃ close 2h)、攪拌後の溶液をシャーレに展開して温度25℃-48時間放置した後の溶液(25℃ RH50 48h)および攪拌後の溶液をシャーレに展開して温度25℃-168時間放置した後の溶液(25℃ RH50 168h)の分子量分布の変化を示す図(A)および赤外吸収スペクトルの変化を示す図(B)である。
【実施例】
【0105】
PDMS-TTE-MADb系の場合には、図24に示すように、PDMS-TTE-MA系とほぼ同じ結果となった。すなわち、攪拌後の溶液をシャーレに展開して、温度25℃にて放置する時間を168時間まで長くすると、PDMSの高分子化が見られた。このように、PDMS-TTE-MADb系の場合にも、低温硬化型の接着剤としての用途に、MADbが有効に機能するものと考えられる。
【実施例】
【0106】
(3)PDMS-TTE-EL(モル比=1:0.05:0.05)系
上述のPDMS-TTE-MA系のMAの代わりに乳酸エチル(Ethyl lactate: EL、東京化成工業株式会社製)を用いた。ELの添加量は、0.059gであり、モル比にてPDMS:TTE:ELが1:0.05:0.05となるようにした。その他の攪拌、シャーレ展開後の放置の各条件は、PDMS-TTE-MA系と同一とした。
【実施例】
【0107】
図25は、PDMS-TTE-EL系において、スクリュー管内で温度60℃-2時間攪拌後の溶液(60℃ close 2h)、攪拌後の溶液をシャーレに展開して温度25℃-48時間放置した後の溶液(25℃ RH50 48h)および攪拌後の溶液をシャーレに展開して温度25℃-168時間放置した後の溶液(25℃ RH50 168h)の分子量分布の変化を示す図(A)および赤外吸収スペクトルの変化を示す図(B)である。
【実施例】
【0108】
PDMS-TTE-EL系の場合には、図25に示すように、25℃で48時間放置した段階でPDMSの高分子化が進んでおり、168時間放置したものと比べて高分子化の程度に大きな差は見られなかった。この結果から、PDMS-TTE-EL系は、前述のPDMS-TTE-MA系およびPDMS-TTE-MADb系よりも、室温にて短時間で高分子化が進行し、ELの添加により低温硬化型の接着剤として利用可能になると考えられる。
【実施例】
【0109】
(4)PDMS-TTE-TAdE(モル比=1:0.05:0.05)系
上述のPDMS-TTE-MA系のMAの代わりに酒石酸エチル(L-(+)-diethyl tartarate: TAdE、東京化成工業株式会社製)を用いた。TAdEの添加量は、0.103gであり、モル比にてPDMS:TTE:TAdEが1:0.05:0.05となるようにした。攪拌、シャーレ展開後の放置の各条件には、PDMS-TTE-MA系と同一の条件に加え、シャーレ展開後に温度25℃で放置時間を336時間にまで延長した条件も採用した。
【実施例】
【0110】
図26は、PDMS-TTE-TAdE系において、スクリュー管内で温度60℃-2時間攪拌後の溶液(60℃ close 2h)、攪拌後の溶液をシャーレに展開して温度25℃-48時間放置した後の溶液(25℃ RH50 48h)、攪拌後の溶液をシャーレに展開して温度25℃-168時間放置した後の溶液(25℃ RH50 168h)および攪拌後の溶液をシャーレに展開して温度25℃-336時間放置した後の溶液(25℃ RH50 336h)の分子量分布の変化を示す図(A)および赤外吸収スペクトルの変化を示す図(B)である。
【実施例】
【0111】
PDMS-TTE-TAdE系の場合には、図26に示すように、25℃で48時間放置した段階ではPDMSの高分子化があまり進んでいないが、168時間放置、336時間放置になるにつれて、高分子化がゆっくりと進行している結果が得られた。この結果から、PDMS-TTE-TAdE系は、前述のPDMS-TTE-EL系と対照的に、室温で高分子化が進むものの、その速度は比較的遅いと考えられる。
【実施例】
【0112】
(5)PDMS-TTnB-MA(モル比=1:0.05:0.05)系
上述のPDMS-TTE-MA系のTTEの代わりにTTnBを用いた。TTnBの添加量は、0.170gであり、モル比にてPDMS:TTnB:MAが1:0.05:0.05となるようにした。攪拌、シャーレ展開後の放置の各条件は、PDMS-TTE-MA系と同一の条件とした。
【実施例】
【0113】
図27は、PDMS-TTnB-MA系において、スクリュー管内で温度60℃-2時間攪拌後の溶液(60℃ close 2h)、攪拌後の溶液をシャーレに展開して温度25℃-48時間放置した後の溶液(25℃ RH50 48h)および攪拌後の溶液をシャーレに展開して温度25℃-168時間放置した後の溶液(25℃ RH50 168h)の分子量分布の変化を示す図(A)および赤外吸収スペクトルの変化を示す図(B)である。
【実施例】
【0114】
PDMS-TTnB-MA系の場合には、図27に示すように、攪拌後の溶液をシャーレに展開して、温度25℃にて放置する時間を168時間まで長くすると、PDMSの高分子化が見られ、PDMS-TTE-MA系に近い高分子化状況が見られた。PDMS-TTnB-MA系の場合には、PDMS-TTE-MA系と同様、高温に加熱しなくても、室温(25℃)で長時間放置すればPDMSが高分子化し、MAは低温硬化型の接着剤としての用途に寄与するものと考えられる。
【実施例】
【0115】
(6)PDMS-TTIP-MA(モル比=1:0.05:0.05)系
上述のPDMS-TTE-MA系のTTEの代わりにTTIPを用いた。TTIPの添加量は、0.142gであり、モル比にてPDMS:TTIP:MAが1:0.05:0.05となるようにした。攪拌、シャーレ展開後の放置の各条件は、PDMS-TTE-MA系と同一の条件とした。
【実施例】
【0116】
図28は、PDMS-TTIP-MA系において、スクリュー管内で温度60℃-2時間攪拌後の溶液(60℃ close 2h)、攪拌後の溶液をシャーレに展開して温度25℃-48時間放置した後の溶液(25℃ RH50 48h)および攪拌後の溶液をシャーレに展開して温度25℃-168時間放置した後の溶液(25℃ RH50 168h)の分子量分布の変化を示す図(A)および赤外吸収スペクトルの変化を示す図(B)である。
【実施例】
【0117】
PDMS-TTIP-MA系の場合には、図28に示すように、25℃で48時間放置した段階でPDMSの高分子化が進んでおり、168時間放置したものと比べて高分子化の程度に大きな差は見られなかった。この結果から、PDMS-TTIP-MA系は、前述のPDMS-TTE-MA系およびPDMS-TTnB-MA系よりも、室温にて短時間で高分子化が進行し、低温硬化型の接着剤としての用途に寄与するものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明のポリオルガノシロキサン組成物は、例えば、低温硬化可能なシリコーン接着剤として利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
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【図25】
24
【図26】
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【図27】
26
【図28】
27