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明細書 :天然繊維強化樹脂ストランドの製造方法及び製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5862109号 (P5862109)
公開番号 特開2013-039809 (P2013-039809A)
登録日 平成28年1月8日(2016.1.8)
発行日 平成28年2月16日(2016.2.16)
公開日 平成25年2月28日(2013.2.28)
発明の名称または考案の名称 天然繊維強化樹脂ストランドの製造方法及び製造装置
国際特許分類 B29B  15/14        (2006.01)
B29B  11/16        (2006.01)
B29B  11/08        (2006.01)
B29K 105/10        (2006.01)
FI B29B 15/14
B29B 11/16
B29B 11/08
B29K 105:10
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2011-179799 (P2011-179799)
出願日 平成23年8月19日(2011.8.19)
審査請求日 平成26年8月11日(2014.8.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】合田 公一
【氏名】野田 淳二
【氏名】キム ヒョンボム
個別代理人の代理人 【識別番号】100093687、【弁理士】、【氏名又は名称】富崎 元成
【識別番号】100106770、【弁理士】、【氏名又は名称】円城寺 貞夫
【識別番号】100139789、【弁理士】、【氏名又は名称】町田 光信
審査官 【審査官】山本 雄一
参考文献・文献 国際公開第2009/069607(WO,A1)
特開平07-251437(JP,A)
特開平10-113925(JP,A)
特開平05-169445(JP,A)
特開2007-296721(JP,A)
特許第3114311(JP,B2)
欧州特許第02014433(EP,B1)
調査した分野 B29B 11/00-11/16
B29B 15/08-15/14
特許請求の範囲 【請求項1】
天然繊維撚糸を複数本合わせた撚糸束に溶融樹脂を被覆した後に撚糸繊維間に樹脂を含浸させる天然繊維強化樹脂ストランドの製造方法であって、
撚糸束を被覆される溶融樹脂の温度近くまで予熱する予熱工程と、
予熱された前記撚糸束に溶融樹脂を被覆する樹脂被覆工程と、
樹脂が被覆された前記撚糸束の繊維間に樹脂を含浸させる樹脂含浸工程と、
からなり、前記樹脂含浸工程においては筒状ヒーター内に軸方向に梯子状に複数本配設されたピンに樹脂が被覆された前記撚糸束がジグザグ状に掛けわたされて進み、前記筒状ヒーター内で樹脂の溶融温度近くの温度に保持された撚糸束が、前記樹脂が被覆された状態で前記複数本配設されたピンの上下で摺擦されることにより撚糸束の繊維間に樹脂が含浸されるものであり、樹脂溶融温度の上下10℃の範囲内の温度で樹脂の含浸が行われるようにしたことを特徴とする天然繊維強化樹脂ストランドの製造方法。
【請求項2】
天然繊維撚糸を複数本合わせた撚糸束に溶融樹脂を被覆し撚糸繊維間に樹脂を含浸させる天然繊維強化樹脂ストランドの製造装置であって、
撚糸束を通過させる予熱パイプを備え、撚糸束を被覆される溶融樹脂の温度近くまで予熱する予熱部と、
溶融樹脂を供給して予熱された前記撚糸束に溶融樹脂を被覆する樹脂被覆部と、
温度制御手段を有する筒状ヒーター内に軸方向に複数本のピンが梯子状に配設されてなる樹脂含浸部と、
からなり、前記樹脂含浸部においては樹脂が被覆された前記撚糸束が前記複数本のピンにジグザグ状に掛けわたされて進み、前記筒状ヒーター内で樹脂の溶融温度近くの温度に保持された撚糸束が、前記樹脂が被覆された状態で前記複数本のピンの上下で摺擦されることにより撚糸束の繊維間に樹脂が含浸されるものであり、樹脂溶融温度の上下10℃の範囲内の温度で樹脂の含浸が行われるようにしたことを特徴とする天然繊維強化樹脂ストランドの製造装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、天然繊維強化樹脂ストランドの製造方法及び製造装置に関し、特に押出し成形機に樹脂被覆装置を取り付けた電線被覆システムに対して樹脂含浸を付与した簡易な射出成形用の天然繊維強化樹脂ストランドの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(FRP)は強度、耐熱性、耐食性に優れており、自動車、航空機をはじめ、種々の産業用、民生用機器における構造部材として利用されている。代表的なものとして、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)が多く利用されているが、これは製造過程でエネルギー消費量が多く、廃棄時の環境負荷が高いということが問題視される。一方で、高強度植物系繊維を強化材とした天然繊維強化樹脂、いわゆるグリーンコンポジットが環境負荷の面から注目され、利用されている。
【0003】
一般に射出成形用の繊維強化樹脂ストランドは、天然繊維を樹脂とともに押出成形機に投入し、混練過程を経て押出されたストランドを形成し、これを切断したペレットが射出成形に用いられる。繊維強化樹脂に関して、樹脂に埋め込まれた短繊維が繊維軸に沿って負荷される時に連続繊維に負荷をかけて生じる応力と同等なレベルに達することができる最小長さが臨界繊維長となるが、押出成形機内でのスクリュー回転時に生じるせん断力により繊維が切断され、臨界長さを上回る長繊維状複合材料の作製は困難であった。そのため、電線被覆システムを利用したガラス繊維などの連続繊維フィラメントによる長繊維ペレット作製装置が開発されてきた。繊維強化樹脂ストランド、ペレットの製造技術に関して、下記の文献に開示されている。
【0004】
特許文献1には、フィラメントヤーンをレジンバス(樹脂槽)に浸漬させ、ローラー、ピン等を介して繊維間に樹脂を浸透させることが開示されている。この方法は周りが全て樹脂であるため、樹脂が繊維間に浸透し易くなるが、ローラー数またはピン数が増えるにつれて余分な樹脂が大量に必要になり、樹脂の損失につながる。また、一度樹脂の成分を決めると、それ以降は槽内の成分を制御できないという難点がある。
【0005】
特許文献2には、長尺の強化用繊維束をクロスヘッド内で溶融樹脂中に浸漬させ繊維束内に樹脂を含浸させ、クロスヘッド外に引き出した後に強化繊維束に撚りを与えつつ繊維間に樹脂を含浸させる繊維強化樹脂ストランドの製造方法について開示されている。この製造方法での強化繊維としてはガラス繊維を用いたものであり、天然繊維の撚糸を強化繊維として用いたものに適用されるものではなく、この製造方法により天然繊維の撚糸を強化繊維としたものに対し樹脂を十分に含浸させることはできない。
【0006】
非特許文献1には、天然繊維を強化繊維として、押出成形機を用いて繊維強化樹脂ストランドを作製するに際して、繊維の撚りを緩めて繊維の空隙内に樹脂を浸透させることにより繊維間への樹脂の含浸を高めることが示されている。この方法によれば、天然繊維撚糸を解撚する装置は撚糸1本につき一台をそれぞれ備えることになり、装置全体を廉価で構成することができない。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】実開平5-22563号公報
【特許文献2】特許第3114311号公報
【0008】

【非特許文献1】神戸製鋼技報/Vol.51,No.2,2001,pp62-66「長繊維ペレット製造装置 天然複合材(エココンポジット)への応用」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
繊維強化樹脂の強度を高める上で、射出成形用繊維強化樹脂ストランドの製造過程において、強化繊維に樹脂を十分に含浸させることが求められる。天然繊維の撚糸を強化繊維とするものでは、ガラス繊維等の人工繊維を強化繊維とする場合のような工程によっては繊維間に樹脂を十分に含浸させられるものではなく、天然繊維を強化繊維とした場合に有効な手法が求められる。
【0010】
天然繊維撚糸を押出成形機に投与せず、電線被覆システムにならって撚糸を溶融樹脂中に撚糸を通し連続的に引き抜く工程をとることにより撚糸が樹脂で被覆されたストランドが形成され、これを切断することにより繊維強化樹脂ペレットが得られる。このようなシステムでは、樹脂が撚糸回りを被覆するのみであり、撚糸内に全く含浸されず、繊維間に空隙が残るものとなり、繊維強化樹脂ペレットとして十分な強度が与えられない。繊維強化樹脂ペレットとして十分な強度を与える上では、繊維間の空間を埋めるように樹脂を十分に含浸させることが必要となる。
【0011】
このように天然繊維を強化繊維とした繊維強化樹脂あるいはその形成材料としての射出成形用繊維強化樹脂ストランドの製造に際し、強化繊維としての天然繊維撚糸に樹脂を十分に含浸させることが求められるが、そのための有効な方法、またそのための簡易な装置を構成することに関して、従来において提案されていなかったものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述した課題を解決すべくなしたものであって、本発明による天然繊維強化樹脂ストランドの製造方法は、天然繊維撚糸を複数本合わせた撚糸束に溶融樹脂を被覆した後に撚糸繊維間に樹脂を含浸させる天然繊維強化樹脂ストランドの製造方法であって、 撚糸束を被覆される溶融樹脂の温度近くまで予熱する予熱工程と、予熱された前記撚糸束に溶融樹脂を被覆する樹脂被覆工程と、樹脂が被覆された前記撚糸束の繊維間に樹脂を含浸させる樹脂含浸工程と、からなり、前記樹脂含浸工程においては筒状ヒーター内に軸方向に梯子状に複数本配設されたピンに樹脂が被覆された前記撚糸束がジグザグ状に掛けわたされて進み、前記筒状ヒーター内で樹脂の溶融温度近くの温度に保持された撚糸束が、前記樹脂が被覆された状態で前記複数本配設されたピンの上下で摺擦されることにより撚糸束の繊維間に樹脂が含浸されるものであり、樹脂溶融温度の上下10℃の範囲内の温度で樹脂の含浸が行われるようにしたものである。
【0013】
また、本発明による天然繊維強化樹脂ストランドの製造装置は、天然繊維撚糸を複数本合わせた撚糸束に溶融樹脂を被覆し撚糸繊維間に樹脂を含浸させる天然繊維強化樹脂ストランドの製造装置であって、撚糸束を通過させる予熱パイプを備え、撚糸束を被覆される溶融樹脂の温度近くまで予熱する予熱部と、溶融樹脂を供給して予熱された前記撚糸束に溶融樹脂を被覆する樹脂被覆部と、温度制御手段を有する筒状ヒーター内に軸方向に複数本のピンが梯子状に配設されてなる樹脂含浸部と、からなり、前記樹脂含浸部においては樹脂が被覆された前記撚糸束が前記複数本のピンにジグザグ状に掛けわたされて進み、前記筒状ヒーター内で樹脂の溶融温度近くの温度に保持された撚糸束が、前記樹脂が被覆された状態で前記複数本のピンの上下で摺擦されることにより撚糸束の繊維間に樹脂が含浸されるものであり、樹脂溶融温度の上下10℃の範囲内の温度で樹脂の含浸が行われるようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、天然繊維強化樹脂ストランドの製造の際に、天然繊維の撚糸束に被覆される樹脂の溶融温度近くまで撚糸束を予熱し、また、工程樹脂含浸工程において、筒状ヒーター内に軸方向に梯子状に複数本配設されたピンを樹脂が被覆された前記撚糸束がジグザグ状に掛けわたされて進み、前記樹脂が被覆された撚糸束が前記筒状ヒーター内で樹脂の溶融温度近くの温度に保持された状態で前記ピンの上下で摺擦されることにより、繊維間への樹脂の含浸が十分良好になされる。それにより天然繊維強化樹脂ペレット、また、それを切断して得られるペレットの強度が高められる。天然撚糸束を連続的に解撚するための装置を新たに付加するような必要はなく、繊維強化樹脂トスランドの製造装置全体として煩雑にすることなく、廉価な装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明による天然繊維強化樹脂ストランドの製造装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、図1の天然繊維強化樹脂ストランドの製造装置における樹脂含浸部の構成を示す図である。
【図3】図3は、樹脂含浸工程での温度を変えた時の生成されたストランドから得られたペレットについて測定された応力-歪み特性を示すグラフである。
【図4】図4は、予熱工程及び樹脂含浸工程を付与して作製された繊維強化樹脂ストランドの断面写真であり、(b)は(a)の一部の拡大写真である。
【図5】図5は、予熱工程、樹脂含浸工程を付与しないで作製された繊維強化樹脂ストランドの断面写真であり、(b)は(a)の一部の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による射出成形用天然繊維強化樹脂ストランドの製造方法、製造装置の好ましい形態について説明する。
〔天然繊維強化樹脂ストランドの製造装置〕
図1は、天然繊維強化樹脂ストランドの製造装置の全体的構成を示し、この装置は撚糸束に樹脂を被覆し、繊維間に樹脂を含浸させて撚りを与えたストランドを形成するものである。

【0017】
天然繊維強化樹脂ストランドの製造装置は、天然繊維撚糸束に樹脂を被覆する樹脂被覆部A、樹脂が被覆される天然繊維撚糸束を予熱する予熱部B、天然繊維撚糸に樹脂が被覆されたものに対して繊維間に樹脂を含浸させる樹脂含浸部C、冷却部Dを備えており、天然繊維の撚糸供給源は撚糸Fの供給体を複数備え、複数本の撚糸Fの撚糸束が予熱部B、樹脂被覆部A、樹脂含浸部C、冷却部Dを順次通過するように構成される。

【0018】
樹脂被覆部Aは天然繊維撚糸束が通過する間に溶融樹脂MRを被覆するためのクロスヘッドダイ1と、クロスヘッドダイ1に溶融樹脂を供給する押出機2とを有している。クロスヘッドダイ1の天然繊維撚糸束の入口側には予熱部Bの予熱管4を取り付ける取付部3が付設されている。クロスヘッドダイ1の出口外側には樹脂で被覆された撚糸を整形するための整形ダイ(図示せず)を付設するのがよい。押出機2としては、簡易型の一軸押出機が用いられる。

【0019】
予熱パイプ4はクロスヘッドダイ1への取付部3に取付けられ、予熱パイプ4自体を加熱した状態で内側を通過する撚糸束を予熱する。予熱パイプ4をアルミニウム等の熱伝導率の高い材質のものとし、取付部3を介してクロスヘッドダイ1の余熱を伝え温度を高めるようにすることができるが、予熱パイプ4を加熱するための独自の熱源を備える形態としてもよい。

【0020】
樹脂含浸部Cは、図2に示すように、クロスヘッドダイ1の出口側に取り付けられた筒状ヒーター5内に多数のピンPを、樹脂を被覆された撚糸束が通過する方向に間隔をおいて梯子状に配設されて構成される。クロスヘッドダイ1の出口外側に成形ダイが設置されているものでは、成形ダイに続いて樹脂含浸部Cが配設される。樹脂を被覆された撚糸束は図2に示すように、ピンPを交互に迂回しジグザグ状に掛けわたされて筒状ヒーター5内を進むようにされる。樹脂が被覆された撚糸は下流側から加えられる引張り力により張力が与えられ、ピンの上下で擦られることにより接触圧が作用して樹脂の含浸がなされる。樹脂含浸工程においては、樹脂を被覆された撚糸束を所定温度に保持することが生成したストランドの特性向上のために重要であり、そのため筒状ヒーターによる加熱温度の制御手段を有するものとする。

【0021】
図1で、樹脂含浸部Cを通過して樹脂が被覆された撚糸束は繊維間に樹脂が含浸した状態になり、その後に一対の逆方向に回転する撚りローラー6で撚りを与えられ、冷却部Dにおいて冷却されて天然繊維強化樹脂ストランドSTが形成される。10は複数本の撚糸Fの束を予熱部Bに供給する給送ローラー、20はストランドSTの引抜きローラーである。形成されたストランドSTはスプール(図支せず)に巻き取り、所定長さ巻き取った後に切断する形態としてもよいが、引き抜きローラー20を通過した後にストランドSTを切断するカッターを備えてペレットを作製する形態としてもよい。また、ペレットの作製上撚りローラー6はなくても可能であり、状況に応じて省いてもよい。

【0022】
〔ストランドの製造工程〕
図1に示される天然繊維強化樹脂ストランドの製造装置によるストランドの製造工程について説明する。天然繊維撚糸Fとしてはラミー撚糸を用いる例について説明するが、フラックス、ヘンプ、ジュート、ケフナなどの他の天然繊維を用いてもよい。撚糸を被覆する樹脂としてはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性材料を用いる。

【0023】
撚糸供給源としては、ラミー撚糸F(トスコ社製;単糸16番手)の供給体を複数備え、図示の例では6本のラミー撚糸を合わせて1本の撚糸束とし、給送ローラー10を経て予熱部Bの予熱パイプ4、樹脂被覆部Aのクロスヘッドダイ1、樹脂含浸部Cの筒状ヒーター5内を挿通される。この挿通を行うために、撚糸束の先端を先導針に取り付けて挿通を行うようにし、また、筒状ヒーター5は縦方向に分割されて開かれるようにしておき、撚糸束を図2のように梯子状のピンPにジグザグ状に掛けわたした後に筒状ヒーター5を閉じるようにするのがよい。撚糸束はさらに撚りローラー6、冷却部Dを経て、引抜きローラー20間に挟持されるように挿通される。

【0024】
予熱部Bにおいては、予熱パイプ4内を通過する撚糸束に被覆される樹脂の溶融温度近くまで撚糸束を予熱する。撚糸束が溶融樹脂の温度(195℃程度)より格段に低い温度であると、樹脂被覆部Aで溶融樹脂が撚糸束に接触した時点で固化することになり、良好な被覆がなされなくなる。また、この予熱パイプの長さは300mm程度とし、最初の段階から温度を急激に上昇させるのではなく、漸次温度を上昇させて予熱終了段階で樹脂溶融温度近くに達するようにするのがよい。

【0025】
撚糸束が挿通された後、押出機2から溶融樹脂MRをクロスヘッドダイ1側に供給し、引抜きローラー20を回転駆動して、予熱部Cを通過した撚糸束にクロスヘッド1内で樹脂を被覆しつつ、撚糸束を引出しでいく。樹脂としてポリプロピレン(プライムポリマー社製)、相溶化剤としてMAPP(マレイン酸変性ポリプロピレン;化薬アクゾー社製)を用いた例で示すと、押出機2でのシリンダー部の温度が190℃、樹脂出口部の温度が195℃、クロスヘッドダイ1の温度が190℃、スクリュースピードは7.0rpmの程度である。クロスヘッドダイ1で樹脂を被覆された撚糸は樹脂含浸部Cにおいて梯子状のピンPで上下を摺擦され接触圧が作用し樹脂が撚糸繊維間に含浸していく。

【0026】
繊維間に十分に樹脂を含浸させるには、筒状ヒーター5の長さ、ピンPの数を適当なものにすることが必要である。6本のラミー撚糸からなる撚糸束、樹脂としてポリプロピレンの場合について例示すると、筒状ヒーター5の長さが1000mm、ピンPの間隔が40mm、ピン数が22本とするのが適切である。実際にこのようにした含浸部の形態で、15~16番目のピンを通過する時にほぼ複合化に至ることが確認されている。ただし、撚糸径が異なると、この状況は変化し得る。

【0027】
樹脂含浸部での樹脂含浸工程においては、樹脂が被覆された撚糸束を所定温度に保持することが生成されたストランドの特性を向上させる上で重要である。樹脂含浸工程における温度条件を変えて、30wt%ラミー撚糸/ポリプロピレンの繊維強化樹脂を生成し2mmの長さに切断して得られたペレットについて引っ張り試験を行い応力-歪み特性を測定した結果を図3に示す。この結果で、樹脂溶融温度195℃の場合で樹脂含浸を行ったものは引張強度が特に高くなるが、205℃以上の高温では引張強度が低下する。

【0028】
これはオーバーヒートによりラミー繊維の劣化が生じたためと考えられる。また、含浸工程での温度が185℃以下に低下するとやはり引張強度が低下する。このように樹脂含浸部Cではでは樹脂を被覆された撚糸束が通過する筒状ヒーターでの加熱により樹脂溶融温度近くの温度(樹脂溶融温度を中心として10℃の範囲内の温度)にまで高めた状態で含浸が行われるようにするのがよい。

【0029】
図4は、本発明による予熱工程及び樹脂含浸工程を付与して作製された繊維強化樹脂ストランドの断面写真であり、(b)は(a)の囲い部の拡大写真である。繊維内部の筋はルーメン(内腔)を表しており、繊維間に樹脂が含浸されていることが示される。図5は、予熱工程、樹脂含浸工程を付与しないで作製された繊維強化樹脂ストランドの断面写真であり、(b)は(a)の囲い部の拡大写真である。この場合、撚糸内の繊維間に樹脂が全く含浸されず、繊維間に空隙が見られる。

【0030】
このように、本発明による天然繊維強化樹脂ストランドの製造においては、天然繊維の撚糸束に被覆される樹脂の溶融温度近くまで撚糸束を予熱し、また、工程樹脂含浸工程において、筒状ヒーター内に軸方向に梯子状に複数本配設されたピンを樹脂が被覆された前記撚糸束がジグザグ状に掛けわたされて進み、前記樹脂が被覆された撚糸束が前記筒状ヒーター内で樹脂の溶融温度近くの温度に保持された状態で前記ピンの上下で摺擦されることにより、繊維間への樹脂の含浸がなされるものであり、撚糸束の繊維間に樹脂の含浸が良好になされる。

【0031】
複数本の撚糸束に樹脂を被覆し樹脂を含浸して形成されるストランドとしては棒状のものとして説明しているが、撚糸束を横一線に並べたものとし、樹脂を被覆した状態で平たいテープ状となるものとしてもよい。このようなテープ状の繊維強化樹脂体の場合、樹脂被覆、含浸後に撚りを与えることはしない。
【符号の説明】
【0032】
1 クロスヘッドダイ
2 押出機
3 取付部
4 予熱パイプ
5 筒状ヒーター
6 撚りローラー
10 給送ローラー
20 引抜きローラー
A 樹脂被覆部
B 予熱部
C 樹脂含浸部
D 冷却部
F 撚糸
ST ストランド
MR 溶融樹脂
P ピン
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4