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明細書 :機械電気変換素子、機械電気変換装置及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5305304号 (P5305304)
登録日 平成25年7月5日(2013.7.5)
発行日 平成25年10月2日(2013.10.2)
発明の名称または考案の名称 機械電気変換素子、機械電気変換装置及びその製造方法
国際特許分類 H04R  19/01        (2006.01)
H04R  31/00        (2006.01)
FI H04R 19/01
H04R 31/00 C
請求項の数または発明の数 31
全頁数 70
出願番号 特願2010-507250 (P2010-507250)
出願日 平成21年4月7日(2009.4.7)
国際出願番号 PCT/JP2009/057145
国際公開番号 WO2009/125773
国際公開日 平成21年10月15日(2009.10.15)
優先権出願番号 2008099674
2008271288
優先日 平成20年4月7日(2008.4.7)
平成20年10月21日(2008.10.21)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成23年1月17日(2011.1.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
発明者または考案者 【氏名】蔭山 健介
個別代理人の代理人 【識別番号】100083806、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 秀和
【識別番号】100108914、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
審査官 【審査官】武田 裕司
参考文献・文献 特表2002-534933(JP,A)
特開2007-298297(JP,A)
特開平04-336799(JP,A)
特公昭43-026262(JP,B1)
調査した分野 H04R 19/01
H04R 31/00
特許請求の範囲 【請求項1】
無負荷時において平坦な振動面を有する振動電極と、
前記振動電極の下面に設けられた振動層絶縁層と、
前記振動電極に対向したエレクトレット層と、
前記エレクトレット層の下面に接した背面電極とを備え、
前記振動層絶縁層の下面及び前記エレクトレット層の上面の間に接触点となる複数の凸部を有し、前記複数の凸部を介して 前記振動層絶縁層の下面と前記エレクトレット層の上面とが接触することにより、前記振動層絶縁層と前記エレクトレット層との間に10nm~100μmのマイクロギャップ部を定義し、前記複数の凸部による凹凸と負荷時の撓みを含めた前記振動電極の中心線平均粗さRaが、前記振動電極の前記下面と前記エレクトレット層の上面との間で定義される巨視的なギャップ幅の1/10以下であり、前記振動電極の撓みと前記マイクロギャップでの前記接触点の変形により、前記振動電極が振動することを特徴とする機械電気変換素子。
【請求項2】
無負荷時において平坦な振動面を有する振動電極と、
前記振動電極に対向したエレクトレット層と、
前記エレクトレット層の上面に接合されたエレクトレット絶縁層と、
前記エレクトレット層の下面に接した背面電極とを備え、
前記振動電極の下面及び前記エレクトレット絶縁層の上面の間に接触点となる複数の凸部を有し、前記複数の凸部を介して 前記振動電極の下面と前記エレクトレット絶縁層の上面とが接触することにより、前記振動電極と前記エレクトレット絶縁層との間に10nm~100μmのマイクロギャップ部を定義し、前記複数の凸部による凹凸と負荷時の撓みを含めた前記振動電極の中心線平均粗さRaが、前記振動電極の下面と前記エレクトレット層の前記上面との間で定義される巨視的なギャップ幅の1/10以下であり、前記振動電極の撓みと前記マイクロギャップでの前記接触点の変形により、前記振動電極が振動することを特徴とする機械電気変換素子。
【請求項3】
無負荷時において平坦な振動面を有する振動電極と、
前記振動電極の下面に設けられた振動層絶縁層と、
前記振動電極に対向したエレクトレット層と、
前記エレクトレット層の上面に接合されたエレクトレット絶縁層と、
前記エレクトレット層の下面に接した背面電極とを備え、
前記振動層絶縁層の下面及び前記エレクトレット絶縁層の上面の間に接触点となる複数の凸部を有し、前記複数の凸部を介して 前記振動層絶縁層の下面と前記エレクトレット絶縁層の上面とが接触することにより、前記振動層絶縁層と前記エレクトレット絶縁層との間に10nm~100μmのマイクロギャップ部を定義し、前記複数の凸部による凹凸と負荷時の撓みを含めた前記振動電極の中心線平均粗さRaが、前記振動電極の前記下面と前記エレクトレット層の前記上面との間で定義される巨視的なギャップ幅の1/10以下であり、前記振動電極の撓みと前記マイクロギャップでの前記接触点の変形により、前記振動電極が振動することを特徴とする機械電気変換素子。
【請求項4】
前記複数の凸部は、前記振動層絶縁層の下面にスペーサとして設けられた複数の突起であり、前記マイクロギャップ部が前記複数の突起の高さにより制御されることを特徴とする請求項1又は3に記載の機械電気変換素子。
【請求項5】
前記複数の凸部は、前記エレクトレット絶縁層の上面にスペーサとして設けられた複数の突起であり、前記マイクロギャップ部が前記複数の突起の高さにより制御されることを特徴とする請求項2又は3に記載の機械電気変換素子。
【請求項6】
前記複数の凸部は、前記振動層絶縁層と前記エレクトレット層との間にスペーサとして設けられた複数の微粒子であり、前記マイクロギャップ部が前記複数の微粒子の粒径により制御されることを特徴とする請求項1に記載の機械電気変換素子。
【請求項7】
前記複数の凸部は、前記振動電極と前記エレクトレット絶縁層との間にスペーサとして設けられた複数の微粒子であり、前記マイクロギャップ部が前記複数の微粒子の粒径により制御されることを特徴とする請求項2に記載の機械電気変換素子。
【請求項8】
前記複数の凸部は、前記振動層絶縁層と前記エレクトレット絶縁層との間にスペーサとして設けられた複数の微粒子であり、前記マイクロギャップ部が前記複数の微粒子の粒径により制御されることを特徴とする請求項3に記載の機械電気変換素子。
【請求項9】
前記複数の凸部は、前記振動層絶縁層と前記エレクトレット絶縁層との間に間に設けられた複数の貫通孔を有するスペーサ層の非貫通部分であり、前記マイクロギャップ部が前記スペーサ層複数の非貫通部分の厚さにより制御されることを特徴とする請求項3に記載の機械電気変換素子。
【請求項10】
前記振動層絶縁層と前記エレクトレット層との間の周辺部に、前記マイクロギャップ部を囲むスペーサリングを更に備えることを特徴とする請求項1又は6に記載の機械電気変換素子。
【請求項11】
前記振動電極と前記エレクトレット絶縁層との間の周辺部に、前記マイクロギャップ部を囲むスペーサリングを更に備えることを特徴とする請求項2又は7に記載の機械電気変換素子。
【請求項12】
前記振動層絶縁層と前記エレクトレット絶縁層との間の周辺部に、前記マイクロギャップ部を囲むスペーサリングを更に備えることを特徴とする請求項3又は8に記載の機械電気変換素子。
【請求項13】
前記振動電極の上面に、音響インピーダンスの整合性を高めるための整合層を更に備えることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の機械電気変換素子。
【請求項14】
前記エレクトレット層は、強誘電体の単結晶若しくは多結晶、又は結晶性高分子のいずれかであることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の機械電気変換素子。
【請求項15】
振動層絶縁層上に振動電極を積層して振動層を構成する工程と、
前記振動層を裏返し、前記振動層絶縁層上にスペーサを設ける工程と、
前記スペーサを介して前記振動層絶縁層上にエレクトレット絶縁層を積層する工程と、
背面電極を有するエレクトレット層を用意する工程と、
前記背面電極を有するエレクトレット層と、前記振動層の上に前記スペーサを介してエレクトレット絶縁層を積層した構造物とを、前記エレクトレット絶縁層と前記エレクトレット層が接するようにしてケースに組み込む工程
とを含み、
前記振動層絶縁層の下面及び前記エレクトレット絶縁層の上面の間に接触点となる複数の凸部を設ける工程を更に含み、
前記複数の凸部を介して 前記振動層絶縁層の下面と前記エレクトレット絶縁層の上面とが接触することにより、前記振動層絶縁層と前記エレクトレット絶縁層との間に10nm~100μmのマイクロギャップ部を定義し、前記複数の凸部による凹凸と負荷時の撓みを含めた前記振動電極の中心線平均粗さRaが、前記振動電極の前記下面と前記エレクトレット層の前記上面との間で定義される巨視的なギャップ幅の1/10以下であり、前記振動電極の撓みと前記マイクロギャップでの前記接触点の変形により、前記振動電極が振動することを特徴とする機械電気変換素子の製造方法。
【請求項16】
振動電極と、
前記振動電極との間にエレメント空間を設けるように対向したエレクトレット層と、
前記エレクトレット層の下面に接した背面電極と、
前記エレメント空間の内部を上下方向に分離するように挿入され、前記エレメント空間の内部に、それぞれの間隔が10nm~40μmのマイクロギャップを複数積層するギャップ絶縁層と、
前記振動電極と前記背面電極との間に電気的に接続された増幅回路
とを備え、前記複数のマイクロギャップをそれぞれ定義する面のそれぞれの実効的な表面粗さが、前記エレメント空間のギャップ幅の1/10以下であることを特徴とするフィルム状機械電気変換装置。
【請求項17】
前記ギャップ絶縁層を複数枚備えることを特徴とする請求項16に記載のフィルム状機械電気変換装置。
【請求項18】
前記振動電極の下面に設けられた振動電極絶縁フィルムを更に備えることを特徴とする請求項16又は17に記載のフィルム状機械電気変換装置。
【請求項19】
前記エレクトレット層の上面に接合されたエレクトレット絶縁フィルムを更に備えることを特徴とする請求項16~18のいずれか1項に記載のフィルム状機械電気変換装置。
【請求項20】
増幅回路を備える基体と、
前記基体の下面に少なくとも一部を接し、前記増幅回路に電気的に接続された下側振動電極、前記下側振動電極との間に下側エレメント空間を設けるように対向した下側エレクトレット層、前記下側エレクトレット層の下面に接した下側背面電極、前記下側エレメント空間の内部を上下方向に分離するように挿入され、前記下側エレメント空間の内部にそれぞれの間隔が10nm~40μmの下側マイクロギャップを複数積層する下側ギャップ絶縁層を有するフィルム状下側エレメントと、
前記基体の上面に少なくとも一部を接し、前記増幅回路に電気的に接続された上側背面電極、前記上側背面電極の上面に接した上側エレクトレット層、前記上側エレクトレット層との間に上側エレメント空間を設けるように対向した上側振動電極、前記上側エレメント空間の内部を上下方向に分離するように挿入され、前記上側エレメント空間の内部にそれぞれの間隔が10nm~40μmの上側マイクロギャップを複数積層する上側ギャップ絶縁層を有するフィルム状上側エレメント とを備え、前記上側マイクロギャップ及び前記下側マイクロギャップをそれぞれ定義する面のそれぞれの実効的な表面粗さが、前記下側エレメント空間及び上側エレメント空間のそれぞれのギャップ幅の1/10以下であることを特徴とする機械電気変換装置。
【請求項21】
前記下側ギャップ絶縁層及び前記上側ギャップ絶縁層を、それぞれ複数枚備えることを特徴とする請求項20に記載の機械電気変換装置。
【請求項22】
増幅回路に接続された共通背面電極と、
前記共通背面電極の下面に接した下側エレクトレット層、下側エレクトレット層との間に下側エレメント空間を設けるように対向した下側振動電極、前記下側エレメント空間の内部を上下方向に分離するように挿入され、前記下側エレメント空間の内部にそれぞれの間隔が10nm~40μmの下側マイクロギャップを複数積層する下側ギャップ絶縁層を有する下側エレメントと、
前記共通背面電極上面に接した上側エレクトレット層、前記上側エレクトレット層との間に上側エレメント空間を設けるように対向した上側振動電極、前記上側エレメント空間の内部を上下方向に分離するように挿入され、前記上側エレメント空間の内部にそれぞれの間隔が10nm~40μmの上側マイクロギャップを複数積層する上側ギャップ絶縁層を有する上側エレメント とを備え、前記上側マイクロギャップ及び前記下側マイクロギャップをそれぞれ定義する面のそれぞれの実効的な表面粗さが、前記下側エレメント空間及び上側エレメント空間のそれぞれのギャップ幅の1/10以下であることを特徴とするフィルム状機械電気変換装置。
【請求項23】
振動電極と、
前記振動電極との間にエレメント空間を設けるように対向したエレクトレット層と、
前記エレクトレット層の下面に接した背面電極と、
前記エレメント空間の内部を上下方向に分離するように挿入され、前記エレメント空間の内部に、それぞれの間隔が10nm~40μmのマイクロギャップを複数積層するギャップ絶縁層 とを備えるエレメントの複数個を、各エレメントの振動電極及び各エレメントの背面電極がそれぞれ共通電位となるように互いに接続して共通のスペーサフィルム上に配列し、前記背面電極を共通の増幅回路に接続したフィルム状機械電気変換装置であって、
前記各エレメントにおいて、前記複数のマイクロギャップをそれぞれ定義する面のそれぞれの実効的な表面粗さが、前記エレメント空間のギャップ幅の1/10以下であることを特徴とするフィルム状機械電気変換装置。
【請求項24】
前記振動電極の平面パターンが前記背面電極の平面パターンとは異なることを特徴とする請求項23に記載のフィルム状機械電気変換装置。
【請求項25】
前記スペーサフィルム、前記振動電極、前記エレクトレット層、前記背面電極及び前記ギャップ絶縁層が、透明な材料からなることを特徴とする請求項23又は24に記載のフィルム状機械電気変換装置。
【請求項26】
増幅回路に接続され、マトリクス状に空隙部を有する内部電極膜と、
前記内部電極膜の下面に接した下側エレクトレット層と、
前記下側エレクトレット層との間に下側エレメント空間を設けるように対向し、前記内部電極膜の平面パターンとは異なる空隙部のパターンを有する下側外部電極膜と、
前記下側エレメント空間の内部を上下方向に分離するように挿入され、前記下側エレメント空間の内部に、それぞれの間隔が10nm~40μmの下側マイクロギャップを複数積層する下側ギャップ絶縁層と、
前記内部電極膜上面に接した上側エレクトレット層と、
前記上側エレクトレット層との間に上側エレメント空間を設けるように対向し、前記内部電極膜の平面パターンとは異なる空隙部のパターンを有する上側外部電極膜と、
前記上側エレメント空間の内部を上下方向に分離するように挿入され、前記上側エレメント空間の内部に、それぞれの間隔が10nm~40μmの上側マイクロギャップを複数積層する上側ギャップ絶縁層 とを備え、前記上側マイクロギャップ及び前記下側マイクロギャップをそれぞれ定義する面のそれぞれの実効的な表面粗さが、前記下側エレメント空間及び上側エレメント空間のそれぞれのギャップ幅の1/10以下であることを特徴とするフィルム状機械電気変換装置。
【請求項27】
前記内部電極膜、前記下側エレクトレット層、前記上側エレクトレット層、前記下側外部電極膜、前記上側外部電極膜、前記下側ギャップ絶縁層、前記内部電極膜上面に接した上側エレクトレット層、前記上側ギャップ絶縁層が、透明な材料からなることを特徴とする請求項26に記載のフィルム状機械電気変換装置。
【請求項28】
前記下側ギャップ絶縁層及び前記上側ギャップ絶縁層を、それぞれ複数枚備えることを特徴とする請求項22,26、27のいずれか1項に記載のフィルム状機械電気変換装置。
【請求項29】
垂直方向に走行する複数の垂直信号線と、
前記複数の垂直信号線と絶縁され、前記複数の垂直信号線に直交する方向に走行する複数の垂直選択信号配線と、
前記複数の垂直信号線、前記複数の垂直選択信号配線の上方に設けられ、前記複数の垂直信号線と前記複数の垂直選択信号配線が構成する格子のパターンの内部となる位置に、貫通孔をそれぞれ配列したスペーサフィルムと、
センサアレイ部の全面に設けられ、前記スペーサフィルムの上面に接した共通のエレクトレット層と、
前記貫通孔の内部のそれぞれにおいて、前記エレクトレット層の下面の一部に接するように、互いに独立して配列された背面電極と、
前記貫通孔の内部にそれぞれ独立して配列され、前記背面電極、前記複数の垂直信号線のいずれか、前記複数の垂直選択信号配線のいずれかにそれぞれ接続された増幅回路と、
前記貫通孔のそれぞれの上方に、互いに独立したエレメント空間を配列するように、前記エレクトレット層に対向した振動電極と、
前記エレメント空間のそれぞれの内部を上下方向に分離するように挿入され、前記エレメント空間のそれぞれの内部に、それぞれの間隔が10nm~40μmのマイクロギャップを複数積層するように設けられたギャップ絶縁層 とを備え、前記複数のマイクロギャップをそれぞれ定義する面のそれぞれの実効的な表面粗さが、前記エレメント空間のギャップ幅の1/10以下であることを特徴とするフィルム状機械電気変換装置。
【請求項30】
前記複数の垂直信号線、前記複数の垂直選択信号配線、前記スペーサフィルム、前記エレクトレット層、前記背面電極、前記振動電極、前記ギャップ絶縁層が、透明な材料からなることを特徴とする請求項29に記載のフィルム状機械電気変換装置。
【請求項31】
前記ギャップ絶縁層を複数枚備えることを特徴とする請求項29又は30に記載のフィルム状機械電気変換装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的振動を電気信号に変換する機械電気変換素子、機械電気変換装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などにおいては、省スペースのため、マイクロフォンの小型化が求められている。又、ギターなどの音響機器のピックアップマイクロフォンとして楽器に簡単取り付けできる小型のマイクロフォンが求められている。特に、携帯電話などを防水とするために、小型の防水マイクロフォンの需要がある。
【0003】
ポリカーボネートなどのある種の高分子化合物は、外部から高い電界を加えると、表面に誘導された電荷が、半永久的に保持されるという性質がある。ヘヴィサイトは、このような半永久的に電荷が保持された状態になっている材料を、「エレクトレット」と名付けた。振動層と一体のコイル(ボイスコイル)が磁界の中で動く構造のダイナミックマイクロフォンに対し、エレクトレットコンデンサマイクロフォン(ECM)は、振動層に近接して平行に、エレクトレットが配置されている。そして、振動層が音で振動するとエレクトレットとの距離が変動するので、エレクトレットの帯電状況が変化して音信号を電気の変動として取り出すことができる。しかしこの信号は非常に小さいので、マイクロフォンユニットに内蔵された電界効果トランジスタで増幅するようになっている。
【0004】
ECMの性能を向上させるためには、高分子フィルムのエレクトレット量(分極量)を増加させることが必要であるが、コロナ放電を使用して高分子をエレクトレット化する手法では、残留分極量は30μC/m程度が限界となっている。又、ECMの電極間の空間は極めて清浄であることが求められるため、ECMの製造はクリーンルームのような清浄な環境で行われる必要がある。
【0005】
一方、強誘電材料は、上記のエレクトレットフィルムより1万倍以上もの残留分極を有する材料が存在する。しかし、エレクトレットとして使用するためには、表面に吸着した荷電粒子の影響を取り除く必要がある等の問題がある。
【0006】
マイクロフォンの小型化を鑑み、半導体基板(シリコン基板)に直接マイクロフォンを実装する小型化が試みられている。例えば、半導体基板の中央部に、半導体基板を選択的に除去したメンブレン領域を備え、導電膜により、下部電極と引出し配線が設け、この下部電極を、メンブレン領域の内側に設けることにより、寄生容量を抑制し、高性能なECMを実現せんとした提案がある(特許文献1参照。)。特許文献1に記載のECMでは、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の端面は、半導体基板と重なるように設けることにより、振動層の共振周波数特性を制御している。
【0007】
一方、PPやPTFEフィルムを延伸・発泡させ、その後独立気泡内で放電を生じさせてエレクトレットとし、柔軟なマイクロフォンとして、音響機器のピックアップに使用されている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2006-074102号公報
【発明の概要】
【0009】
特許文献1に記載された半導体基板上に直接ECMを製造する手法においては、半導体基板を選択的に除去したメンブレン領域の撓みはエアギャップの10分の1以上となり、空気の絶縁破壊強度が低く、より強い音圧に耐えらない問題がある。特に、シリコン基板は衝撃に弱いため、シリコンマイクロフォン自体は小型であっても、緩衝層が必要となる。
【0010】
多孔質フィルムにより防水性を向上させることは可能だが,音の減衰が生じるため、感度が低下する。又、多孔質PPやPTFEの気泡内部でエレクトレット化させたフィルムは、100℃を超えると,エレクトレットが劣化するため、使用温度範囲が狭い。
【0011】
一方、圧電プローブとしてPZTを使用することも試みられているが、共振周波数でしか使用できないので、広い周波数帯域での使用が困難である。
【0012】
上記問題を鑑み、本発明は、柔軟で形状の自由度が高く、且つ、感度が高く、より強い音圧に耐えられ、しかも広い周波数帯域での使用可能な機械電気変換素子、機械電気変換装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、(イ)無負荷時において平坦な振動面を有する振動電極と、(ロ)振動電極の下面に設けられた振動層絶縁層と、(ハ)振動電極に対向したエレクトレット層と、(ニ)エレクトレット層の下面に接した背面電極とを備え、(ホ)振動層絶縁層とエレクトレット層との間に10nm~100μmのマイクロギャップ部を有し、負荷時の撓みを含めた振動電極の中心線平均粗さRaが、振動電極の下面とエレクトレット層の上面との間で定義されるギャップ幅の1/10以下である機械電気変換素子であることを要旨とする。
【0014】
本発明の第2の態様は、(イ)無負荷時において平坦な振動面を有する振動電極と、(ロ)振動電極に対向したエレクトレット層と、(ハ)エレクトレット層の上面に接合されたエレクトレット絶縁層と、(ニ)エレクトレット層の下面に接した背面電極とを備え、(ホ)振動電極とエレクトレット絶縁層との間に10nm~100μmのマイクロギャップ部を有し、負荷時の撓みを含めた振動電極の中心線平均粗さRaが、振動電極の下面とエレクトレット層の上面との間で定義されるギャップ幅の1/10以下である機械電気変換素子であることを要旨とする。
【0015】
本発明の第3の態様は、(イ)無負荷時において平坦な振動面を有する振動電極と、(ロ)振動電極の下面に設けられた振動層絶縁層と、(ハ)振動電極に対向したエレクトレット層と、(ニ)エレクトレット層の上面に接合されたエレクトレット絶縁層と、(ホ)エレクトレット層の下面に接した背面電極とを備え、(ヘ)振動層絶縁層とエレクトレット絶縁層との間に10nm~100μmのマイクロギャップ部を有し、負荷時の撓みを含めた振動電極の中心線平均粗さRaが、振動電極の下面とエレクトレット層の上面との間で定義されるギャップ幅の1/10以下である機械電気変換素子であることを要旨とする。
【0016】
本発明の第4の態様は、(イ)振動層絶縁層上に振動電極を積層して振動層を構成するする工程と、(ロ)振動層を裏返し、振動層絶縁層上にスペーサを設ける工程と、(ハ)スペーサを介して振動層絶縁層上にエレクトレット絶縁層を積層する工程と、(ニ)背面電極を有するエレクトレット層を用意する工程と、(ホ)背面電極を有するエレクトレット層と、振動層の上にスペーサを介してエレクトレット絶縁層を積層した構造物とを、エレクトレット絶縁層とエレクトレット層が接するようにしてケースに組み込む工程とを含む機械電気変換素子の製造方法であることを要旨とする。
【0017】
本発明の第5の態様は、(イ)振動電極と、振動電極との間にエレメント空間を設けるように対向したエレクトレット層と、エレクトレット層の下面に接した背面電極と、エレメント空間の内部を上下方向に分離するように挿入され、エレメント空間の内部に、それぞれの間隔が10nm~40μmのマイクロギャップを複数積層するギャップ絶縁層と、振動電極と背面電極との間に電気的に接続された増幅回路とを備えるフィルム状機械電気変換装置であることを要旨とする。この本発明の第5の態様に係るフィルム状機械電気変換装置においては、複数のマイクロギャップをそれぞれ定義する面のそれぞれの実効的な表面粗さが、エレメント空間のギャップ幅の1/10以下である。
【0018】
本発明の第6の態様は、(イ)増幅回路を備える基体と、(ロ)基体の下面に少なくとも一部を接し、増幅回路に電気的に接続された下側振動電極、下側振動電極との間に下側エレメント空間を設けるように対向した下側エレクトレット層、下側エレクトレット層の下面に接した下側背面電極、下側エレメント空間の内部を上下方向に分離するように挿入され、下側エレメント空間の内部にそれぞれの間隔が10nm~40μmの下側マイクロギャップを複数積層する下側ギャップ絶縁層を有するフィルム状下側エレメントと、(ハ)基体の上面に少なくとも一部を接し、増幅回路に電気的に接続された上側背面電極、上側背面電極の上面に接した上側エレクトレット層、上側エレクトレット層との間に上側エレメント空間を設けるように対向した上側振動電極、上側エレメント空間の内部を上下方向に分離するように挿入され、上側エレメント空間の内部にそれぞれの間隔が10nm~40μmの上側マイクロギャップを複数積層する上側ギャップ絶縁層を有するフィルム状上側エレメントとを備える機械電気変換装置であることを要旨とする。この本発明の第7の態様に係る機械電気変換装置においては、上側マイクロギャップ及び下側マイクロギャップをそれぞれ定義する面のそれぞれの実効的な表面粗さが、下側エレメント空間及び上側エレメント空間のそれぞれのギャップ幅の1/10以下である。
【0019】
本発明の第7の態様は、(イ)増幅回路に接続された共通背面電極と、(ロ)共通背面電極の下面に接した下側エレクトレット層、下側エレクトレット層との間に下側エレメント空間を設けるように対向した下側振動電極、下側エレメント空間の内部を上下方向に分離するように挿入され、下側エレメント空間の内部にそれぞれの間隔が10nm~40μmの下側マイクロギャップを複数積層する下側ギャップ絶縁層を有する下側エレメントと、(ハ)共通背面電極上面に接した上側エレクトレット層、上側エレクトレット層との間に上側エレメント空間を設けるように対向した上側振動電極、上側エレメント空間の内部を上下方向に分離するように挿入され、上側エレメント空間の内部にそれぞれの間隔が10nm~40μmの上側マイクロギャップを複数積層する上側ギャップ絶縁層を有する上側エレメントとを備えることを要旨とする。この本発明の第7の態様に係るフィルム状機械電気変換装置においては、上側マイクロギャップ及び下側マイクロギャップをそれぞれ定義する面のそれぞれの実効的な表面粗さが、下側エレメント空間及び上側エレメント空間のそれぞれのギャップ幅の1/10以下である。
【0020】
本発明の第8の態様は、振動電極と、振動電極との間にエレメント空間を設けるように対向したエレクトレット層と、エレクトレット層の下面に接した背面電極と、エレメント空間の内部を上下方向に分離するように挿入され、エレメント空間の内部に、それぞれの間隔が10nm~40μmのマイクロギャップを複数積層するギャップ絶縁層とを備えるエレメントを基礎(ユニット)としている。本発明の第8の態様に係るフィルム状機械電気変換装置では、このエレメントの複数個を、各エレメントの振動電極及び各エレメントの背面電極がそれぞれ共通電位となるように互いに接続して共通のスペーサフィルム上に配列し、背面電極を共通の増幅回路に接続している。そして、本発明の第8の態様に係るフィルム状機械電気変換装置の各エレメントにおいて、複数のマイクロギャップをそれぞれ定義する面のそれぞれの実効的な表面粗さが、エレメント空間のギャップ幅の1/10以下である。
【0021】
本発明の第9の態様は、増幅回路に接続され、マトリクス状に空隙部を有する内部電極膜と、内部電極膜の下面に接した下側エレクトレット層と、下側エレクトレット層との間に下側エレメント空間を設けるように対向し、内部電極膜の平面パターンとは異なる空隙部のパターンを有する下側外部電極膜と、下側エレメント空間の内部を上下方向に分離するように挿入され、下側エレメント空間の内部に、それぞれの間隔が10nm~40μmの下側マイクロギャップを複数積層する下側ギャップ絶縁層と、内部電極膜上面に接した上側エレクトレット層と、上側エレクトレット層との間に上側エレメント空間を設けるように対向し、内部電極膜の平面パターンとは異なる空隙部のパターンを有する上側外部電極膜と、上側エレメント空間の内部を上下方向に分離するように挿入され、上側エレメント空間の内部に、それぞれの間隔が10nm~40μmの上側マイクロギャップを複数積層する上側ギャップ絶縁層とを備えるフィルム状機械電気変換装置であることを要旨とする。この本発明の第9の態様に係るフィルム状機械電気変換装置においては、上側マイクロギャップ及び下側マイクロギャップをそれぞれ定義する面のそれぞれの実効的な表面粗さが、下側エレメント空間及び上側エレメント空間のそれぞれのギャップ幅の1/10以下である。
【0022】
本発明の第10の態様は、垂直方向に走行する複数の垂直信号線と、複数の垂直信号線と絶縁され、複数の垂直信号線に直交する方向に走行する複数の垂直選択信号配線と、複数の垂直信号線、複数の垂直選択信号配線の上方に設けられ、複数の垂直信号線と複数の垂直選択信号配線が構成する格子のパターンの内部となる位置に、貫通孔をそれぞれ配列したスペーサフィルムと、センサアレイ部の全面に設けられ、スペーサフィルムの上面に接した共通のエレクトレット層と、貫通孔の内部のそれぞれにおいて、エレクトレット層の下面の一部に接するように、互いに独立して配列された背面電極と、貫通孔の内部にそれぞれ独立して配列され、背面電極、複数の垂直信号線のいずれか、複数の垂直選択信号配線のいずれかにそれぞれ接続された増幅回路と、貫通孔のそれぞれの上方に、互いに独立したエレメント空間を配列するように、エレクトレット層に対向した振動電極と、エレメント空間のそれぞれの内部を上下方向に分離するように挿入され、エレメント空間のそれぞれの内部に、それぞれの間隔が10nm~40μmのマイクロギャップを複数積層するように設けられたギャップ絶縁層とを備えるフィルム状機械電気変換装置であることを要旨とする。この本発明の第10の態様に係るフィルム状機械電気変換装置においては、複数のマイクロギャップをそれぞれ定義する面のそれぞれの実効的な表面粗さが、エレメント空間のギャップ幅の1/10以下である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る機械電気変換素子(超音波プローブ)の概略構成を説明する模式的な断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態に係る機械電気変換素子のマイクロギャップ部の変形による振動を説明する模式的な断面図である。
【図3】図3は、振動層絶縁層とエレクトレット絶縁層の厚さの公差が±10%ある状況において、振動層絶縁層とエレクトレット絶縁層との間が、凝集したシリコーン粒子を介して接触してマイクロギャップを形成した状態を説明する模式的な断面図である。
【図4】図4は、第1の実施の形態に係る機械電気変換素子を送信用超音波プローブとして用いて、超音波を発生させ、シリコーンブロック中を伝播させ、シリコーンブロック中を伝播した超音波を、第1の実施の形態に係る機械電気変換素子を受信用超音波プローブとして用いて受信する構成を説明する模式的な断面図である。
【図5】図5は、図4に示す送信用超音波プローブと受信用超音波プローブとを用いて、超音波をシリコーンブロック中を伝播させたときの送受信特性を示す図である。
【図6】図6は、第1の比較例に係る機械電気変換素子を送信用超音波プローブとして用いて、超音波を発生させ、シリコーンブロック中を伝播させ、シリコーンブロック中を伝播した超音波を、第1の比較例に係る機械電気変換素子を受信用超音波プローブとして用いて受信する構成を説明する模式的な断面図である。
【図7】図7は、図5に示す第1の比較例に係る送信用超音波プローブと第1の比較例に係る受信用超音波プローブとを用いて、超音波をシリコーンブロック中を伝播させたときの送受信特性を示す図である。
【図8】図8は、第2の比較例に係る機械電気変換素子を送信用超音波プローブとして用いて、超音波を発生させ、シリコーンブロック中を伝播させ、シリコーンブロック中を伝播した超音波を、第2の比較例に係る機械電気変換素子を受信用超音波プローブとして用いて受信する構成を説明する模式的な断面図である。
【図9】図9は、図8に示す第2の比較例に係る送信用超音波プローブと第2の比較例に係る受信用超音波プローブとを用いて、超音波をシリコーンブロック中を伝播させたときの送受信特性を示す図である。
【図10】図10は、図4の第1の実施の形態に係る機械電気変換素子に正弦波信号(1波)を入力して送受信を行った結果を示す図である。
【図11】図11は、図8の第2の比較例に係る機械電気変換素子に正弦波信号(1波)を入力して送受信を行った結果を示す図である。
【図12】図12は、エレクトレット層の電荷保持特性を、振動電極の撓みによって測定する実験装置の断面図である。
【図13】図13は、図12に示すエレクトレット層の電荷保持特性を、振動電極の撓みによって示すx-y相関図である。
【図14】図14は、本発明の第1の実施の形態に係る機械電気変換素子(超音波プローブ)の製造方法を説明する模式的な工程断面図である。
【図15】図15は、本発明の第2の実施の形態に係る機械電気変換素子(ハイドロフォン)の概略構成を説明する模式的な断面図である。
【図16】図16は、本発明の第2の実施の形態に係る機械電気変換素子(ハイドロフォン)の製造方法を説明する模式的な工程断面図である。
【図17】図17は、本発明の第3の実施の形態に係る機械電気変換素子(超音波センサ)の概略構成を説明する模式的な断面図である。
【図18】図18は、本発明の第3の実施の形態に係る機械電気変換素子(超音波センサ)の製造方法を説明する模式的な工程断面図である。
【図19】図19は、本発明の第4の実施の形態に係る機械電気変換素子(MEMSマイクロフォン)の概略構成を説明する模式的な断面図である。
【図20】図20は、本発明の第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の概略構成を説明する模式的な断面図である。
【図21】図21は、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置のマイクロギャップの詳細な構造を説明する模式的な断面図である。
【図22】図22は、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の感度と周波数の関係を、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルムの積層枚数をn(n=5,10,40,100)をパラメータとして示す図である。
【図23】図23は、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の製造方法を説明するための模式的な工程断面図である(その1)。
【図24】図24は、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の製造方法を説明するための模式的な工程断面図である(その2)。
【図25】図25は、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の製造方法を説明するための模式的な工程断面図である(その3)。
【図26】図26は、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の製造方法を説明するための模式的な工程断面図である(その4)。
【図27】図27は、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の製造方法を説明するための模式的な工程断面図である(その5)。
【図28】図28は、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の製造方法を説明するための模式的な工程断面図である(その6)。
【図29】図29は、図23~図28に示したフィルム状機械電気変換装置の製造方法の概要(要部)を説明するための概念的な工程断面図である。
【図30】図30(a)は、振動層側から音圧Φを受ける場合のフィルム状機械電気変換装置(マイクロフォンA)の概略構成を説明する模式的な断面図で、図30(b)は、エレクトレット層側から音圧Φ2を受ける場合のフィルム状機械電気変換装置(マイクロフォンB)の概略構成を説明する模式的な断面図である。
【図31】図31は、図30(a)に示したマイクロフォンAと、図30(b)に示したマイクロフォンBとを利用した、本発明の第2の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の概略構成を説明する模式的な断面図である。
【図32】図32は、本発明の第7の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の概略構成を説明する模式的な断面図である。
【図33】図33は、測定対象の表面が曲面であるときに、その曲面形状にフィットするように、本発明の第8の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置を貼り付けた状態を説明する模式図である。
【図34】図34は、お椀状に変形させた第8の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置を用いて、測定対象から発信された超音波Φを収束させる様子を説明する模式図である。
【図35】図35は、単位ユニットをn枚(n=2)を積層して貼り合わせた、本発明の第9の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の概略構成を説明する模式的な断面図である。
【図36】図36は、第9の実施の形態に係る他のフィルム状機械電気変換装置の概略構成を説明する模式的な断面図で、単位ユニットをn枚(n≧3)を積層して貼り合わせた場合を示す。
【図37】図37は、受感部を多数のエレメントに分割した,本発明の第10の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の概略構成を説明する模式的な断面図である。
【図38】図38は、受感部を多数のエレメントに分割した,本発明の第11の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の配線構造の概略を説明する平面図である。
【図39】図39は、図38のA-A方向から見た断面図である。
【図40】図40は、第11の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の内部電極膜及び外部電極膜のパターンを説明する模式的な平面図である。
【図41】図41は、使用状況(被測定対象物の形状)に応じて、第11の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の一部を切断して、平面的な形状を変更する状況を説明する模式的な平面図である。
【図42】図42は、本発明の第12の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の全体を説明する模式的な平面図である。
【図43】図43は、図42に示した第12の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置のエレメントの一部の構造を説明する模式的な断面図である。
【図44】図44は、第12の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の各エレメントに内蔵された増幅回路の概略構成を説明する回路図である。
【図45】図45は、本発明の第13の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の概略構成を説明する模式的な断面図である。
【図46】図46は、本発明の第13の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置のマイクロギャップの構造を説明する模式的な断面図である。
【図47】図47は、本発明の第13の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置のマイクロギャップの構造を説明する模式的な断面図である。
【図48】図48は、本発明の第13の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の突起なしの場合の概略構成を説明する模式的な断面図である。
【図49】図49は、本発明の第13の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の、突起あり場合、突起なしの場合それぞれに1kHzの音響を照射した場合の出力電圧を示す図である。
【図50】図50は、本発明の他の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置のマイクロギャップの構造を説明する模式的な断面図である。
【図51】図51は、本発明の更に他の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置のマイクロギャップの構造を説明する模式的な断面図である。
【図52】図52は、本発明の更に他の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置のマイクロギャップの構造を説明する模式的な断面図である。
【図53】図53は、本発明の更に他の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置のマイクロギャップの構造を説明する模式的な断面図である。
【図54】図54は、本発明の更に他の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置のマイクロギャップの構造を説明する模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図面を参照して、本発明の第1~第13の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。又、第1~第13の実施の形態で例示的に記述した各層の厚さや寸法等も限定的に解釈すべきではなく、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものであり、設計指針と要求される特性や仕様に応じて、種々の値に決定されることが可能であることに留意すべきである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。

【0025】
又、以下に示す第1~第13の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。

【0026】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る機械電気変換素子は、無負荷時において平坦な振動面を有する振動層15と、振動層15の振動面に対向した平坦な第1主面及びこの第1主面に平行に対向する第2主面で定義され、分極方向を揃えたエレクトレット層13と、エレクトレット層13の第2主面に接した背面電極17と、振動層15と背面電極17との間に、接続された増幅手段(19、9)とを備える超音波プローブである。背面電極17とエレクトレット層13とは、金属学的に接合していてもよく、接着剤等により接着されていてもよく、或いは、機械的な圧力で単に接している状態でもよい。平面図や鳥瞰図の図示を省略しているが、図1に示す超音波プローブの振動層15、エレクトレット層13及び背面電極17は、例えば、それぞれ半径3~40mmの円板形状とすることが可能である。振動層15は、図1に示すように、導電体からなる振動電極15bと振動電極15bの下面の振動電極絶縁フィルム15aを備える。図示を省略しているが、振動層15は、必要に応じて振動電極15bの上面に絶縁層からなる整合層を設けて、媒体との音響インピーダンスの整合性を高めるようにしてもよい。

【0027】
無負荷時には、エレクトレット層13の第1主面は、振動層15の振動面に平行に対向している。ここで、増幅手段(19、9)は、背面電極17に接続された増幅回路19と、アンプ(FET)19に接続された外付け回路9を備える。図1は受信用超音波プローブを示すが、受信用超音波プローブにおいては、外付け回路9は、一方の端子を接地した直流電源Eと、この直流電源Eとアンプ(FET)19との間に接続されたバッファ抵抗Rと、バッファ抵抗Rとアンプ(FET)19との接続ノードに一方の電極を接続し、他方の電極を出力端子とする結合容量Cを備える。増幅手段(19、9)の出力端子となる結合容量Cの出力端子には、外部回路(図示省略)が接続され、外部回路によりマイクロフォンに接続される通信装置や記録装置に必要な信号処理がなされる。本発明の第1の実施の形態に係る機械電気変換素子の増幅手段(19、9)は、背面電極17と振動層15間の電位をアンプ(FET)19で増幅することにより、振動層15の振動面の変位に伴い、エレクトレット層13に誘導される電荷を測定している。一方、送信用超音波プローブにおいては、外付け回路9は、一方の端子を接地した直流電源Eと、この直流電源Eとアンプ(FET)19との間に接続されたバッファ抵抗Rと、バッファ抵抗Rとアンプ(FET)19との接続ノードに一方の電極を接続し、他方の電極を入力端子とする結合容量Cを備える。増幅手段(19、9)の入力端子となる結合容量Cの入力端子には、外部回路(図示省略)が接続され、外部回路から入力信号が入力され、背面電極17と振動層15間にアンプ(FET)19で増幅した入力信号を印加する。

【0028】
振動電極15bとエレクトレット層13の間が、巨視的な「ギャップ幅W」を定義している。Wgは0.1~100μmの範囲内である。振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット絶縁層14eとの間に定義される微視的な空気ギャップであるマイクロギャップとは、ギャップ幅が10nm~100μmでギャップ中の空気の絶縁破壊強度が5~200MV/mと巨視的なギャップ中よりも向上しているギャップである。巨視的なギャップ幅Wgの場合、空気の絶縁破壊強度は3MV/m程度である。但し、巨視的なギャップ幅Wg中は空気以外にフッ素系ガスなどの絶縁ガスを注入すること、或いは真空にすることにより更に絶縁破壊強度を向上できる。

【0029】
振動電極15bはエレクトレット層13の静電力により引き付けられて撓むが、これがマイクロギャップの絶縁破壊強度を低下させる。撓んだ状態での振動電極15bのギャップ側の面の凹凸を中心線平均粗さRaで表した場合、上記のような高い絶縁破壊強度を得るためには、中心線平均粗さRaはギャップ幅の10分の1以下でなければならない。ギャップ幅10分の1の根拠については、図12及び図13を用いて後述する。

【0030】
振動層15は、撓みがギャップ幅Wgの10分の1以下であり、振動電極15bが導電性に優れ、振動電極絶縁フィルム15aが電気絶縁性に優れていれば、どのような材料を使用してもかまわない。振動層15は、剛性が高い必要があるが、高い周波数に追随できるために軽量である方が好ましい。そのため、振動層15の振動電極15b、振動電極15bの下面の振動電極絶縁フィルム15a、振動電極15bの上面の整合層(図1では図示を省略した。)のいずれかに比剛性(弾性率)/密度)の値が大きい材料の方を用いることが好ましい。このため、振動層15としては、アルミニウムとその合金又は、マグネシウムとその合金を振動電極15bとして用い、振動電極絶縁フィルム15aとして4フッ化エチレン6フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP樹脂)層を貼り付けたものが採用可能である。或いは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を振動電極絶縁フィルム15aとして用い、この振動電極絶縁フィルム15a上にアルミニウムを蒸着して振動電極15bとしてもよい。或いは、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素セラミックス等を振動電極絶縁フィルム15aとして用い、この振動電極絶縁フィルム15a上にアルミニウムを蒸着又は、銀を焼付して振動電極15bとしてもよい。その他にも、従来のエレクトレットマイクロフォンの絶縁層に使用しているFEP樹脂やシリカ層を有するシリコン基板などを振動電極絶縁フィルム15aに用いることも可能であるが、この場合、撓みがギャップ幅の10分の1以下となるように厚さを増すことが必要であり、従来のエレクトレットマイクロフォンの設計思想とは大きく異なる。又、その他の絶縁性に優れた樹脂(シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ウレタン、ABS、軟質塩化ビニルなど)等を振動電極絶縁フィルム15aとして用い、この振動電極絶縁フィルム15a上に、接着、蒸着、焼付により振動電極15bを取り付け、振動層15とすることも可能である。この場合、振動電極15bか振動電極絶縁フィルム15aの厚さを増して、振動層15に必要な剛性を確保する。

【0031】
スペーサ41とエレクトレット絶縁層14eはいずれも電気絶縁性に優れた材料を使用する必要がある。具体的には、シリカ、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素などのセラミックス、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂(PETなどを含む)、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ウレタン、ABS、軟質塩化ビニルなどの樹脂が使用可能である。又、スペーサ41とエレクトレット絶縁層14eのいずれか又は、両方を弾性率が2GPa以下の材料を使用する。但し、振動層15側に振動電極絶縁フィルム15aがあり、その振動電極絶縁フィルム15aの弾性率が2GPa以下である場合は、スペーサ41とエレクトレット絶縁層14eの弾性率に制限はない。電気絶縁性に優れ弾性率が2GPa以下の材料には、具体的には、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)、軟質塩化ビニル樹脂などの樹脂がある。

【0032】
スペーサ41は、図1に示すような、粒径が10nm~100μmの微粒子の他、振動電極絶縁フィルム15aの下面、エレクトレット絶縁層14eの上面、振動電極絶縁フィルム15aを省略した場合は、振動電極15bの下面、エレクトレット絶縁層14eを省略した場合はエレクトレット層13上面のいずれかの表面、又は対向する両面側に、パルスレーザー照射、リソグラフィー、エッチング、プレスなどで形成させた高さ10nm~100μmの微小突起を設けてもよい。粒子や突起は、振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット絶縁層14eとの間、振動電極絶縁フィルム15aを省略した場合は、振動電極15bとエレクトレット絶縁層14eとの間、エレクトレット絶縁層14eを省略した場合は振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット層13との間、振動電極絶縁フィルム15a及びエレクトレット絶縁層14eの両方を省略した場合は振動電極15bとエレクトレット層13との間で支持部となり、これによりマイクロギャップが形成される。マイクロギャップを形成できればスペーサ41の形状はどのようなものでも構わないが、突起の接触点の曲率が大きい方が望ましい。又、最大高さ(Rmax)が10nm~100μmの表面粗さをもつ層を積層すれば、スペーサ41がなくてもマイクロギャップを形成できる。

【0033】
振動電極絶縁フィルム15a及びエレクトレット絶縁層14eは、上述のように10nm~100μmの突起を形成させるか、粒径が10nm~100μmの微粒子を表面に付着させた絶縁体の層である。必要に応じて複数の絶縁層を積層して、マイクロギャップ層の数を増やすことができる。又は、一部の絶縁層の表面にのみ突起の形成又は微粒子の付着を行い、残りは、密着させるか、乾燥接触させて表面粗さによりマイクロギャップを形成することも可能である。ギャップ幅が100μm以内に収まれば、絶縁フィルムの積層枚数が多い方が、音響のダンピング特性が向上する。又、絶縁層を厚くするとギャップ幅も大きくなるが、これにより振動電極15bの撓みによるマイクロギャップの絶縁破壊強度の低下を防ぐことができる。しかし、ギャップ幅の増大は、ギャップ中の電界強度の低下にもつながる。そのため、絶縁層の厚さ、マイクロギャップの構造などにより最適な積層枚数が決まる。

【0034】
エレクトレット層13は、ギャップに5~200MV/mの電界を発生させるだけの表面電位を有していなければならない。エレクトレット層13の代表例して以下の二種類が採用可能である:
(イ)コロナ放電により帯電させた絶縁層:
フッ素系樹脂又はシリカ表面にコロナ放電により電荷を帯電させてエレクトレット層13としたもの;
(ロ)加熱により帯電させた強誘電層:
強誘電層としては、強誘電体の単結晶若しくは多結晶、又は結晶性高分子が採用可能で、強誘電体としては、ペロブスカイト型化合物、タングステンブロンズ構造化合物、ビスマス系層状構造化合物、ウルツ鉱構造結晶、酸化亜鉛、水晶、ロッシェル塩、等が使用できる。例えば、チタン酸ジルコニウム酸鉛(PZT)、LiNbO3、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)などの分極方向が一方向に配向した強誘電体を加熱し、焦電効果により一時的に分極を低下させて表面電荷を除去し、再び室温に冷却することでエレクトレット層13としたもの。

【0035】
エレクトレット層13の厚さは例えば20~400μm程度、背面電極17の厚さは例えば10~100μm程度、振動層15の厚さは例えば10~100μm程度に選定することができるが、振動層15、エレクトレット層13及び背面電極17の具体的な厚さや半径は、設計指針と要求される性能や仕様に応じて決定すればよい。

【0036】
ホルダ89の下端面には、配線用開口を有する金属製円板からなるケース81の底板が接続されている。導電性(金属製)のケース81は、ケース本体と底板とをハンダ等で接続して構成してもよい。増幅回路19からの接地配線はケース81の底板とハンダで接続されている。増幅回路19は、背面電極17の中央部近傍に融着されたハンダ91を介して、背面電極17に電気的に接続されている。背面電極17及びエレクトレット層13には、背面電極17及びエレクトレット層13を貫通する貫通孔(図示省略。)が設けられているが、貫通孔は、エレクトレット層13と振動層15とのギャップ空間に、(必要に応じて)絶縁性の高い気体(絶縁ガス)を封入できるように、ハンダ等を用いて封じられている。絶縁ガスとしては、窒素、六フッ化硫黄などが採用可能である。絶縁ガスの他、シリコーンオイルなど絶縁流体をエレクトレット層13と振動層15とのギャップ空間を満たしても、絶縁破壊強度が増し、放電が生じにくくなる。その結果、放電により付着するエレクトレット層13の表面の電荷量を低減でき、感度が向上する。絶縁ガスや絶縁流体を満たす代わりに、エレクトレット層13と振動層15とのギャップ空間を真空状態としても、感度を向上させることができる。

【0037】
なお、振動層15、エレクトレット層13及び背面電極17はそれぞれ円板形状である必要はなく、楕円形、矩形等他の幾何学的形状でも構わないし、この場合、導電性(金属製)のケース81等他の部材も、振動層15、エレクトレット層13及び背面電極17の幾何学的形状に適合するように設計されることは勿論である。

【0038】
-マイクロギャップ中の空気の絶縁破壊強度-
空気ギャップを有する二つの電極に電位差を与えた場合、空気の絶縁破壊強度は、大気圧中では電極間距離が減少するに従い増加し、電極間距離が1~2μm程度で最大値を示すことが知られている。但し、電極の表面の突起の曲率が大きくなるに従い、電界が突起部に集中し、絶縁破壊強度は低下する。そのため、電極表面の凹凸を中心線平均粗さRaで表すとすると、図12及び図13を用いて後述するように、Raがギャップ幅の10分の1以下でなければならず、100分1以下が望ましい。

【0039】
従来のエレクトレットマイクロフォンはいずれも振動電極15bがエレクトレット層13の静電力により大きく撓んでいるが、振動電極15bの表面の中心線平均粗さRaは振動電極15bの撓みによる変形も含めた値である。そのため、従来のエレクトレットマイクロフォンの振動電極15bの中心線平均粗さRaはギャップ幅Wg(従来のエレクトレットマイクロフォンの場合、図1において、振動電極絶縁フィルム15a及びエレクトレット絶縁層14eの両方を省略した場合に相当し、エレクトレット層13と振動電極15bとの間の距離である。)の10分の1を越えてしまう。

【0040】
本発明の第1の実施の形態に係る機械電気変換素子においては、振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット絶縁層14eとの間のマイクロギャップの幅が、空気の絶縁破壊強度を決める。第1の実施の形態に係る機械電気変換素子の場合、振動電極絶縁フィルム15a及びエレクトレット絶縁層14eを挿入することによってギャップ幅Wgを広げて、振動電極絶縁フィルム15aの下面(振動電極絶縁フィルム15aを省略した場合は、振動電極15bの下面)の中心線平均粗さRa(スペーサ41を介した振動電極15bの撓みに起因した変動分を含む)がギャップ幅Wgの10分の1以下とすることができる。又、エレクトレット絶縁層14eの上面(エレクトレット絶縁層14eを省略した場合はエレクトレット層13の上面)の表面粗さも、同様にギャップ中の空気の絶縁破壊強度に影響を与え、エレクトレット絶縁層14eの上面の表面のRaもギャップ幅の10分の1以下でなければならず、100分1以下が望ましい。

【0041】
-受信感度-
本発明の第1の実施の形態に係る機械電気変換素子を超音波プローブとして用いた場合、振動層15の撓みとマイクロギャップでの接触点の変形により、振動層15が振動して、音響(超音波)の送受信を行う。超音波プローブの振動層15が音響(超音波)により振動した場合、エレクトレットコンデンサマイクロフォンと同様の原理により、ギャップの静電容量変化が電極間の電位差の変化となって出力ΔVoutが以下の式のように得られる:

ΔVout=ΔWgg ……(1)
g=Ve/Wg ……(2)

gはギャップ中の電界強度、ΔWgは振動層15の振幅で撓みによる振動と接触点の変形による振動の振幅の和となる。Wgはギャップ全体の幅、Veはエレクトレット層13の表面電位の大きさである。このとき、振動層15は、qdを単位電荷として、エレクトレット層13から静電力σeで引き付けられる:

σe=qdg=εgg2 ……(3)

εgは、絶縁層を含むギャップ全体の誘電率である。静電力σeにより振動層15はマイクロギャップ部の突起(微粒子を含む)を支点としてエレクトレット層13の静電力によりギャップ側に引き付けられ、静的に撓んでいることに注意が必要である。即ち静的に撓んだ状態での振動電極15bのギャップ側の面のRaがギャップ幅の10分の1以下となるように振動層15の剛性とマイクロギャップ部での接触点密度や配置を設計する必要がある。又、撓みによってマイクロギャップを構成する二つの層が突起とは別の位置で接触すると、接触点の増加により接触剛性が大きく低下することになるので、振動層15の剛性を高めるか突起の高さや密度を高くしてこれを避けなければならない。

【0042】
-振動層の撓みによる振動-
振動層の撓みによる振動は、従来のエレクトレットマイクロフォンでも同様に生じる。又、想定される最大の音圧による撓みが生じても、マイクロギャップを構成する二つの層が突起以外の位置で接触してはならない。

【0043】
-マイクロギャップ部の変形による振動-
図1に示した構造は例示であり、マイクロギャップは微粒子をスペーサ41として用いなくても実現可能である。乾燥接触によりマイクロギャップを形成させた場合のモデルとして、図2のように非常に平滑な振動電極絶縁フィルム15aの下面と、一定の半径rの微小突起をもつエレクトレット絶縁層14eの上面とが、乾燥接触している場合を考える。図2示すような一定の半径rの微小突起は、振動電極絶縁フィルム15aの下面に対しパルスレーザーを照射による局所的な熱変形を生じさせてもよく、振動電極絶縁フィルム15aを構成するフィルム全体を加熱してオリゴマーの析出や高分子の自己組織化をさせてもよく、或いは、プレスによる振動電極絶縁フィルム15aの加工などにより形成してもよい。

【0044】
図2のような一定の半径rの微小突起を振動電極絶縁フィルム15aの下面がもつモデルにおいては、接触圧力σは、σeと等しく、以下の式で表される:

σ=σe=(4/3)nS'r1/23/2 ……(4)
1/S'=((1-νd2)/S)+((1-νg2)/S) ……(5)

ここで、nは突起の面密度、wは面圧による振動電極絶縁フィルム15aの変位を表す。νdとνはそれぞれ振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット絶縁層14eのポアソン比を示し、SとSはそれぞれ振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット絶縁層14eの貯蔵弾性率を示す。ここで、貯蔵弾性率とは受信用超音波プローブが受信する音響の周波数帯域(20Hz~10GHz)での弾性変形に対する弾性率を示しており、周波数が高いほどS、Sはともに増加する傾向にあるので、使用する最大周波数における値とする。

【0045】
そして、振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット絶縁層14eの間のマイクロギャップにおける単位面積あたりのバネ定数である接触剛性(界面剛性)Kは、σをwに対して微分して得られる:

=2nS'(rw)1/2 ……(6)

≪S'であれば、振動電極絶縁フィルム15aの振幅はマイクロギャップ部の振動と一致し、Kに反比例する:

ΔWg=Δσd/Kg ……(7)

(1),(3),(5),(6),(7)式より、ΔVoutは以下のように表される:

ΔVout=Δσd(Eg/(6εgS'22r))1/3 ……(8)

(8)式より、受信感度を向上させるためには、ギャップ中の電界強度Egを増すとともに、マイクロギャップを挟み込んでいる二つの層のいずれか又は両方の貯蔵弾性率S,Sを低くし、突起の半径rを小さくするとともに突起の密度nを低く(間隔を広く)すればよい。但し、突起の半径rと密度nの低下は、振動電極絶縁フィルム15aの撓みを増すことになる。したがって、前述したように振動電極絶縁フィルム15aの中心線平均粗さRaがギャップ幅の10分の1以下で、撓みによりマイクロギャップ部の接触密度が増さないように注意する必要がある。

【0046】
-送信出力に及ぼす影響-
送信については、送信用超音波プローブに振幅ΔVinの電圧パルスを入力した場合、送信時の振動電極絶縁フィルム15aに発生する圧力Δσoutは、以下のように表される:

Δσout=εg((Ve+ΔVin)/Wg2-εg(Ve/Wg2
≒(2εggΔVin)/Wg2 ……(9)

振動電極絶縁フィルム15aの撓み、マイクロギャップ部の接触点の変形ともに、Δσoutに応じて変化し、振動電極絶縁フィルム15aの振動が生じて、音響が送信される。したがって、(9)式より、ギャップ幅Wgが狭くギャップの電界強度Egが高い方が送信音圧が大きくなり、送信出力が向上することが分かる。

【0047】
-音響のダンピング-
マイクロギャップのもう1つの利点として、超音波のダンピング(減衰)がある。マイクロギャップ部ではスペーサ41により接触していない境界部では、音響の反射が生じる。そのため、エレクトレット層13まで伝播する音響が大きく減衰する。エレクトレット層13まで音響が伝播すると、エレクトレット層13がひずみを生じて圧電効果による出力が受信出力に重なることになる。これは、エレクトレットプローブ(超音波プローブ)の性能を低下させるので、音響はギャップ部で可能な限り減衰させたい。マイクロギャップを有することにより、ギャップ部での音響の減衰は飛躍的に増加する。

【0048】
-超音波送受信特性-
図1に示した第1の実施の形態に係る機械電気変換素子を、空中超音波の超音波プローブ(空中超音波プローブ)に適用した場合を考える。振動層15は、振動電極絶縁フィルム15aとしての厚さ60μmのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムが、振動電極15bとしての厚さ1μm以下のAl電極層の下面に蒸着されており、Al電極層の振動電極絶縁フィルム15aに対する表面を鏡面に仕上げてある。又、表面電位が-2kVのエレクトレット層13の上には、厚さ10μmのPET樹脂層が、エレクトレット絶縁層14eとして積層され、エレクトレット絶縁層14eの上に直径5μmのシリコーン粒子が平均間隔500μmでスペーサ41として付着している。シリコーン粒子によりPET樹脂層間にマイクロギャップが形成され、約30MV/mの電界がエレクトレット層13から作用している。このとき、振動電極15bの撓みとシリコーン粒子の変形量の和は3.8μm以下であり、振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット絶縁層14e同士が接触することはない。又、マイクロギャップが5μm以下の場合、空気の絶縁破壊強度は60MV/m以上であるため、マイクロギャップ中の空気の絶縁破壊は生じない。 この超音波プローブの受信感度は20Hz~1MHzにおいて-50dB以上である。共振を利用した狭帯域の圧電空中超音波センサの受信感度は-40kHzにおいて-60dB程度が一般的であり、これよりはるかに高感度でしかも広帯域で受信が可能である。

【0049】
又、送信については1Vの電圧パルス入力に対して3.4nmの振動振幅が得られる。圧電プローブとしてチタン酸ジルコニウム酸鉛(PZT)を使用した場合、共振を利用すればこれより大きな振動振幅を得ることが可能であるが、共振周波数でしか使用できない。共振しない条件であれば、PZTでは0.3nm程度の振動振幅しか得られない。したがって、広い周波数帯域での送信においては本発明の超音波プローブの方がはるかに有利である。

【0050】
第1の実施の形態に係る機械電気変換素子を、水中や生体材料などの低音響インピーダンス材料を媒体とする超音波の超音波プローブに適用した場合を考える。

【0051】
図4に示すように、第1の実施の形態に係る送信用超音波プローブは、振動層(15p、15x)と、振動層(15p、15x)の振動面に対向したエレクトレット層13sと、エレクトレット層13sの第2主面に接した背面電極17sと、エレクトレット層13sの第1主面に接合されたエレクトレット絶縁層14xを備え、振動層絶縁層15xとエレクトレット絶縁層14xとの間にはスペーサ41sが挿入され、振動層絶縁層15xとエレクトレット絶縁層14xとの間に定義される「マイクロギャップ」の間隔を制御している。同様に、第1の実施の形態に係る受信用超音波プローブは、振動層(15q、15y)と、振動層(15q、15y)の振動面に対向したエレクトレット層13rと、エレクトレット層13rの第2主面に接した背面電極17rと、エレクトレット層13rの第1主面に接合されたエレクトレット絶縁層14yが設けられ、振動層絶縁層15yとエレクトレット絶縁層14yとの間にはスペーサ41rが挿入され、振動層絶縁層15yとエレクトレット絶縁層14yとの間に定義される「マイクロギャップ」の間隔を制御している。

【0052】
振動電極15p,15qは厚さ12μmのアルミニウムであり、振動電極15p,15qのギャップに対向する側の表面は、鏡面に仕上げてある。又、エレクトレット層13s,13rとしてPZTを用い、表面電位が-2kVとしている。エレクトレット層13sの上には、振動層絶縁層15x,エレクトレット絶縁層14xとして、厚さ12μmのFEP樹脂層がそれぞれ積層され、エレクトレット層13rの上には、振動層絶縁層15y及びエレクトレット絶縁層14yとして、厚さ12μmのFEP樹脂層がそれぞれ積層されている。振動層絶縁層15xとエレクトレット絶縁層14xとの間、及び振動層絶縁層15yとエレクトレット絶縁層14yとの間には、直径2μmのシリコーン粒子が、スペーサ41s,41rとして、平均間隔10μmでそれぞれ付着している。但し、シリコーン粒子は図3に示すように、面内方向に凝集しており、凝集体の平均間隔は100μmである。又、振動層絶縁層15x,15y及びエレクトレット絶縁層14x,14yとしてのFEP樹脂層の厚さの公差は±10%ある。そのため、図3のように、振動層絶縁層15x,15yとエレクトレット絶縁層14x,14yとの間では、凝集したシリコーン粒子の一部を介して接触してマイクロギャップを形成している。このとき、マイクロギャップ内には約70MV/mの電界がエレクトレット層13s,13rから作用している。

【0053】
図4に示すように、送信用超音波プローブに送信用増幅回路102sを介してステップ電圧を入力して超音波を発生させ、シリコーンブロック7中を伝播した超音波を、受信用超音波プローブで受信して、受信用増幅回路102rで増幅して検出した結果を図5に示す。

【0054】
これに対して、スペーサとしてのシリコーン粒子を使用しない第1の比較例に係る超音波プローブの構造を図6に示す。図6に示すように、第1の比較例に係る送信用超音波プローブは、振動層(15p、15x)と、振動層(15p、15x)の振動面に対向したエレクトレット層13sと、エレクトレット層13sの第2主面に接した背面電極17sと、エレクトレット層13sの第1主面に接合されたエレクトレット絶縁層14xを備え、振動層絶縁層15xとエレクトレット絶縁層14xとは巨視的には直接接触している。同様に、第1の比較例に係る受信用超音波プローブは、振動層(15q、15y)と、振動層(15q、15y)の振動面に対向したエレクトレット層13rと、エレクトレット層13rの第2主面に接した背面電極17rと、エレクトレット層13rの第1主面に接合されたエレクトレット絶縁層14yが設けられ、振動層絶縁層15yとエレクトレット絶縁層14yとは巨視的には直接接触している。エレクトレット層13s,13rとしては、図4に使用したエレクトレット層13s,13rと同じ形状の材質のPZTを用いている。

【0055】
図6に示すように、送信用超音波プローブに送信用増幅回路102sを介してステップ電圧を入力して超音波を発生させ、シリコーンブロック7中を伝播した超音波を、受信用超音波プローブで受信して、受信用増幅回路102rで増幅して検出した結果を図7に示す。スペーサとしてのシリコーン粒子を使用しない場合でも、振動層絶縁層15x,15y及びエレクトレット絶縁層14x,14yとしてのFEP樹脂層の厚さの公差は±10%あるので、図3から理解できるように、振動層絶縁層15xとエレクトレット絶縁層14xとの間、及び振動層絶縁層15yとエレクトレット絶縁層14yとの間には、微視的にはマイクロギャップが形成されている。

【0056】
スペーサとしてのシリコーン粒子を使用しないのに加え、振動層絶縁層及びエレクトレット絶縁層を使用しない第2の比較例に係る超音波プローブ(圧電プローブ)の構造を図8に示す。図8に示すように、第2の比較例に係る送信用圧電プローブ(送信用超音波プローブ)は、振動電極15pと、振動電極15pの振動面に対向したエレクトレット層13sと、エレクトレット層13sの第2主面に接した背面電極17sとを備えている。同様に、第2の比較例に係る受信用圧電プローブ(受信用超音波プローブ)は、振動電極15qと、振動電極15qの振動面に対向したエレクトレット層13rと、エレクトレット層13rの第2主面に接した背面電極17rとを備えている。エレクトレット層13s,13rとしては、図4及び図6に使用したエレクトレット層13s,13rと同じ形状の材質のPZTを用いている。図8に示すように、送信用圧電プローブ(送信用超音波プローブ)に送信用増幅回路102sを介してステップ電圧を入力して超音波を発生させ、シリコーンブロック7中を伝播した超音波を、受信用圧電プローブ(受信用超音波プローブ)で受信して、受信用増幅回路102rで増幅して検出した結果を図9に示す。

【0057】
図5,図7のいずれの結果も、送信用超音波プローブからシリコーンブロック7を伝播してきた超音波と、シリコーンブロック7中を反射により1往復してきた超音波を受信している。シリコーン粒子を使用しない場合でも、振動層絶縁層15x及びエレクトレット絶縁層14xとしてのFEP樹脂層には公差が±10%もあるため、振動電極15p、振動層絶縁層15x、エレクトレット絶縁層14x、エレクトレット層13sの各層間にマイクロギャップが形成されるはずである。しかし、図5,図7の結果を比較すれば明らかなように、図5のシリコーン粒子をスペーサ41s,41rとして用いてマイクロギャップを形成することにより、超音波の送受信感度が大きく増加している。このことから、マイクロギャップの接触点数及び接触部の直径を小さくすることが感度に大きな影響を与えていることが分かる。

【0058】
又、図4のエレクトレットプローブ(超音波プローブ)は、図8の圧電プローブと比較すると、測定感度に大きな差はないが、受信波形は入力したステップ電圧波形のように立ち上がりのみ鋭い波形となっており、共振もほとんど見られないことが分かる。

【0059】
又、図10は図4のエレクトレットプローブ(超音波プローブ)に正弦波信号(1波)を入力して送受信を行った結果である。図8の圧電プローブを用い、同様に正弦波信号により送受信した結果を図11に示す。

【0060】
図4のエレクトレットプローブ(超音波プローブ)は、広い周波数帯域で、入力信号に近い波形を送受信でき、その感度に大きな変化はない。しかし、図8の圧電プローブの場合、共振周波数付近の信号波形しか送受信できず、入力信号の周波数が共振周波数からずれるに従い、送受信感度も大きく低下する。このように、マイクロギャップを有するエレクトレットプローブ(超音波プローブ)により、広帯域で高い送受信感度をもった超音波プローブを得ることができる。

【0061】
図5,図7,図9~図11に示す結果は、シリコーンブロック7を媒体としたものであるが、シリコーンブロック7は水や人体と音響インピーダンスが近いため、これらを媒体とした場合でも同じような性能を得ることができる。医療用超音波プローブによる診断手法の1つに、マイクロバブルを生体に注入し、血流などを造影する手法がある。この手法は、超音波が照射された際のマイクロバブルの共振、崩壊、消失により発生した超音波を受信する方法である。しかし、マイクロバブルのサイズは均一でないため、マイクロバブルにより発生する超音波の周波数はばらつきがある。共振型の圧電プローブは特定の周波数しか受信できないため、マイクロバブルにより発生する超音波の受信感度が低下する。第1の実施の形態に係る超音波プローブによれば、様々な周波数の超音波を送受信することが可能になり、マイクロバブルのサイズが不均一でも、圧電プローブより多くの超音波を受信することが可能となり、造影効果が増す。

【0062】
-ギャップ幅10分の1の根拠-
振動電極15bの中心線平均粗さRaとギャップ幅Wの比率がエレクトレットの電荷保持特性に及ぼす影響を調べた実験結果を説明する。

【0063】
まず、図12に示すように、厚さ12.5μmのコロナ放電によりテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重含体(PFA)フィルム表面に負電荷をチャージしてエレクトレット層13とした。このとき、PFAフィルムの表面電位は、-1kVであった。そして、エレクトレット層13をアルミニウムからなる背面電極17の上にのせ、その上に幅1mmのスリットを設けた厚さ12.5μmのPFAフィルム65を積層し、更にその上に厚さ50μmのアルミニウムからなる振動電極15bをのせた。このとき、上下の振動電極15b及び背面電極17がコンデンサを構成し、幅1mmのスリットにより形成された空気ギャップ中にはエレクトレット層13によって電界が生じ、上部の振動電極15bが引き付けられて撓む。この状態で24時間保持した後、レーザー変位計により振動電極15bの撓みを測定した。

【0064】
測定結果を図13に示す。Xは水平方向の距離(スリット左端部でx=0)、yは垂直方向の距離(スリット左端部でy=0)である。図13に示すように、振動電極15bの最大撓みは、1.23μmであった。その後、振動電極15bを取り除き、エレクトレット層13の表面電位を測定したところ、-750Vに増加していた(表面電位の大きさが減少していた)。これは、振動電極15bの中心線平均粗さRa(この場合、振動電極15bの最大撓みに相当する)が大きすぎて電界集中が生じたため、放電によりエレクトレット層13の分極量が減少し、その表面電位の大きさが小さくなったためである。そして、再び振動電極15bをのせ、1週間保持したが、これ以上の表面電位の変化は認められなかった。したがって、この条件では、電界集中による表面電位の変化は生じないことになるが、このとき振動電極15bの中心線平均粗さRa(図12に示す実験では振動電極15bの最大撓み1.23μmに相当する)は振動電極15bの下面とエレクトレット層13の上面との間で定義されるギャップ幅(スリットの高さ12.5μm)の10分の1程度である。このことから、振動電極15bの中心線平均粗さRaを振動電極15bの下面とエレクトレット層13の上面との間で定義されるギャップ幅の10分の1以下に抑える必要があることが分かる。

【0065】
又、図12に示す実験は空気ギャップで行っているが、ギャップに絶縁フィルムなどを積層して構成する場合には、ギャップを構成している材質の誘電率が高いとギャップ中で電界集中を引き起こす可能性があることに注意すべきである。特に、マイクロギャップを形成している突起により、エレクトレット層13や振動電極15bの面方向(電界に大して垂直方向)に誘電率が変化するため、電界がマイクロギャプより突起部分に集中しやすくなる。これを防ぐためには、突起の誘電率を低くすればよい。具体的には、突起の比誘電率は10以下にすべきで、3以下が望ましい。

【0066】
分極量が非常に大きい(0.1C/m以上)強誘電体セラミックスをエレクトレット層13として使用する場合は、高分子からなるエレクトレット層13と比較して、同じように電界集中による放電が発生しても、分極量が低下する速度が小さい。したがって、ニオブ酸リチウム単結晶のような単結晶の強誘電体セラミックスをエレクトレット層13に使用する場合、振動電極15bの中心線平均粗さRaを振動電極15bの下面とエレクトレット層13の上面との間で定義されるギャップ幅の10分の1以上にできる。しかし、一方で強誘電体として多結晶セラミックスをエレクトレット層13に用いる場合、強誘電体そのものの絶縁特性(体積抵抗)が劣るので、強誘電体内部を流れる漏れ電流により、分極量が低下していく。そのため、多結晶の強誘電体セラミックスをエレクトレット層13として使用する場合は、高分子エレクトレット層13と同じく、振動電極15bの中心線平均粗さRaを振動電極15bの下面とエレクトレット層13の上面との間で定義されるギャップ幅の10分の1以下に抑える必要がある。

【0067】
又、図12に示す実験では、空気ギャップの電界の平均強度は、約60MV/mであるが、この電界強度を下げれば、電界集中による放電を防ぐことができる。しかし、一方で電界強度を下げると、マイクロフォンとしての感度を維持するためには振動電極15bの振幅を大きくする必要があり、周波数及び音圧の帯域が狭まることになる。又、電界強度を下げると送信出力の低下にもつながる。本発明の第1の実施の形態に係る機械電気変換素子は、マイクロギャップを利用することにより、ギャップ中の電界強度を高くすることが特徴であるため、電界強度を下げることにより電界集中による放電を防ぐことは避けるべきである。したがって、振動電極15bの中心線平均粗さRaを振動電極15bの下面とエレクトレット層13の上面との間で定義されるギャップ幅の10分の1以下に抑えることにより、電界集中による放電を防ぐ必要がある。

【0068】
<超音波プローブの製造方法>
図14を用いて、本発明の第1の実施の形態に係る機械電気変換素子(超音波プローブ)の製造方法を説明する。なお、以下に述べる機械電気変換素子(超音波プローブ)の製造方法は、一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲内であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により、実現可能であることは勿論である:
(イ)まず、振動電極絶縁フィルム15aとしてのPETフィルムに、振動電極15bとしてのAlを蒸着して、振動層15を構成する。この振動層15としてのAl蒸着したPETフィルムに、スペーサリング84として、図14(a)に示すように、PETフィルムのワッシャをのせる。スペーサリング84の厚さはスペーサ41となるシリコーン粒子より若干大きくする。スペーサリング84としてのPETワッシャは、後述する図14(e)に示す段階で、ケース81に組み込む際にマイクロギャップ部にエレクトレット層13の静電力以外の静的な応力が加わらないようにするためのものであるが、PETワッシャの厚さをスペーサ41としてのシリコーン粒子より大きくして、振動電極絶縁フィルム15aを支持することで、エレクトレット層13の静電力によりシリコーン粒子に加わる圧力を少なくすることもでき、それによりマイクロギャップ部の接触剛性を低下できる。この場合、PETワッシャにより支えられた振動電極絶縁フィルム15a全体の撓みは大きくなるが、振動電極絶縁フィルム15aがスペーサ41としてのシリコーン粒子に接触していれば、シリコーン粒子間のRaは、ギャップ幅の10分1以下とすることができる。

【0069】
(ロ)次に、スペーサ41となるシリコーン粒子を、分散剤により溶媒55中にコロイド状に分散させる。そして、図14(b)に示すように、溶媒55を振動層15を構成するPETフィルム上に滴下し、乾燥させ、スペーサ41としてのシリコーン粒子を塗布する。なお、図14(b)に示す方法とは異なり、振動層15を構成するFEPフィルムにあらかじめ表面処理を行い、微小突起(スペーサ41)を形成させておく方法でも構わない。

【0070】
(ハ)そして、図14(c)に示すように、スペーサリング84及びスペーサ41の上にエレクトレット絶縁層14eとしてのPETフィルムをのせる。振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット絶縁層14eとの間にマイクロギャップが定義され、振動電極絶縁フィルム15a、スペーサ41及びエレクトレット絶縁層14eの全体の厚さが巨視的なギャップ幅Wgとなる)。

【0071】
(ニ)これとは別に、図14(d)に示すように、背面電極17を有するエレクトレット層13を用意しておく。背面電極17とエレクトレット層13とは、金属学的に接合していてもよく、接着剤等により接着されていてもよく、或いは、機械的な圧力で単に接している状態でもよい。例えば、増幅回路19を実装した基板に背面電極17としての銅電極を設置し、背面電極17の上にエレクトレット層13としてFEPフィルムをのせ、コロナ放電によりFEPフィルム帯電させる。

【0072】
(ホ)そして、背面電極17を有するエレクトレット層13と、振動層15の上に、スペーサリング84及びスペーサ41を介してエレクトレット絶縁層14eを搭載した構造物を、図14(e)に示すように、ケース81に組み込む。なお、エレクトレット層13として強誘電体を用いる場合、例えばPZTを用いる場合は、帯電していないが、分極方向が揃っているPZTを上記の手順でエレクトレット層13としてケース81の内部に組み込み、組み立て終了後に、キュリー点直下に加熱して数秒~数分保持し、常温に冷却すれば、PZTの表面電荷が除去され、エレクトレット層13となる。キュリー点温度がハンダリフロー温度より高く、この超音波プローブを含む実装構造(製品)のリフロー処理をする場合、リフロー処理によりPZTはエレクトレット層13化する。

【0073】
本発明の第1の実施の形態に係る超音波プローブによれば、従来の超音波プローブより空中の送受信感度が高いので、距離測定などでの精度向上を期待できるが、更に、周波数変調を用いれば更に、精度の高い送受信が可能となる。具体的には、送信時に周波数を変化させることにより特定の信号パターンを送信する。すると、受信時に送信した信号パターンを抽出すればよいが、これをノイズでは生じないパターンとしておけば、ノイズが高い環境においてもノイズに埋もれた受信波形を識別することが可能となる。これは、広い周波数帯域を送受信できる本発明の超音波プローブならではの手法となる。更に広い周波数帯域を送受信できれば、図4のような立ち上がりだけが鋭い信号波形の送受信も可能となるが、複数の反射波が重なって受信される場合にそれらを区別しやすくなる。

【0074】
(第2の実施の形態)
図15に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る機械電気変換素子は、平坦な振動面を有する導電体からなる振動電極15bを備える振動層15と、振動層15の振動面に対向した平坦な第1主面及びこの第1主面に平行に対向する第2主面で定義され、分極方向を揃えたエレクトレット層13と、エレクトレット層13の第2主面に接した背面電極17と、振動層15と背面電極17との間に接続された増幅手段(19、9)とを備えるハイドロフォンである。第1の実施の形態で説明したとおり、背面電極17とエレクトレット層13とは、金属学的に接合していてもよく、接着剤等により接着されていてもよく、或いは、機械的な圧力で単に接している状態でもよい。振動層15は、図13に示すように、振動電極15bと振動電極15bの下面の振動電極絶縁フィルム15aを備える。エレクトレット層13の上面にはエレクトレット絶縁層14eが設けられ、振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット絶縁層14eとの間は、粒径が10nm~100μmの絶縁体の微粒子からなるスペーサ41が挿入され、振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット絶縁層14eとの間に定義される「マイクロギャップ」の間隔を制御している。図15に示すように、円板状のエレクトレット層13の下には、円筒状の絶縁体からなるホルダ89が設けられ、エレクトレット層13の周辺部を支持している。振動層15、エレクトレット層13、背面電極17と、増幅手段(19、9)の一部、及びホルダ89は、導電性(金属製)のケース81に収納されてハイドロフォンを構成している。

【0075】
第1の実施の形態に係る超音波プローブとは異なり、第2の実施の形態に係るハイドロフォンにおいては、振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット絶縁層14eとの間には、スペーサ41のみが配置され、図1のようなスペーサリング84が挿入されていない。一方、第2の実施の形態に係るハイドロフォンにおいては、図16(b)に示すように、振動電極15bの上に整合層16としてシリコーン層が塗布する。整合層16は、媒体との音響インピーダンスの整合性を高める機能の他、振動電極15bの保護層としての役割もある。

【0076】
増幅手段(19、9)は、背面電極17に接続されたアンプ(FET)19と、増幅回路19に接続された外付け回路(図示省略。)を備えるが、これらの増幅回路19や外付け回路は、背面電極17の下面側において樹脂層22で埋められている。更に、ケース81は、ねじ切りキャップ10にねじ込まれている。ねじ切りキャップ10によって、振動電極15b、振動電極絶縁フィルム15a、スペーサ41、エレクトレット絶縁層14e及びエレクトレット層13がケース81の上方に押し付けられ、この押し付け力により高い水圧にも耐えられるようになる。他は、第1の実施の形態に係る超音波プローブと実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。

【0077】
例えば、図15に示した構造において、エレクトレット層13の表面電位を-4.5kV、振動電極15bとしてのAl層の厚さを20μm、振動電極絶縁フィルム15a及びエレクトレット絶縁層14eとしてのPET層の厚さをそれぞれ10μm、スペーサ41としてのシリコーン粒子を直径2μmのPTFE粒子とし、粒子の平均間隔を60μmとすれば、マイクロギャップの電界は約150MV/m(絶縁破壊強度180MV/m以上)となる。 第2の実施の形態に係るハイドロフォンの受信感度は20Hz~1MHzにおいて-80dB以上である。又、PET層からなる振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット絶縁層14eとの間が接触するには2.5 MPa以上の静水圧(水深2500m相当)が必要となり、水深1000mまで感度の低下が6dB以下での使用が可能である。

【0078】
従来の圧電型ハイドロフォンは水深1000mまで使用可能なタイプは感度が-174dBが最高であり、第2の実施の形態に係るハイドロフォンによれば、従来の圧電型ハイドロフォンを大幅に上回る感度を得ることができる。

【0079】
<ハイドロフォンの製造方法>
図16を用いて、本発明の第2の実施の形態に係る機械電気変換素子(ハイドロフォン)の製造方法を説明する。なお、以下に述べる機械電気変換素子(ハイドロフォン)の製造方法は、一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲内であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により、実現可能であることは勿論である:
(イ)まず、第1の実施の形態に係る超音波プローブの製造方法と同様に、振動電極絶縁フィルム15aとしてのPETフィルムに、振動電極15bとしてのAlを蒸着して、振動層15を構成する。この振動層15としてのAl蒸着したPETフィルムの上に、シリコーン粒子を、コロイド状に分散した溶媒55を滴下し、乾燥させ、スペーサ41としてのシリコーン粒子を振動電極絶縁フィルム15aの上に塗布する。なお、振動電極絶縁フィルム15aとしてのFEPフィルムにあらかじめ表面処理を行い、微小突起(スペーサ41)を形成させておく方法でも構わない。図14(a)に示す第1の実施の形態に係る超音波プローブの製造方法とは異なり、スペーサリング84としてのPETフィルムのワッシャは用いない。そして、図16(a)に示すように、スペーサ41の上にエレクトレット絶縁層14eとしてのPETフィルムをのせる。振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット絶縁層14eとの間にマイクロギャップが定義され、振動電極絶縁フィルム15a、スペーサ41及びエレクトレット絶縁層14eの全体の厚さが巨視的なギャップ幅Wgとなる)。

【0080】
(ロ)これとは別に、図16(a)に示すように、背面電極17を有するエレクトレット層13を用意しておく。第1の実施の形態に係る超音波プローブの製造方法と同様に、背面電極17とエレクトレット層13とは、金属学的に接合していてもよく、接着剤等により接着されていてもよく、或いは、機械的な圧力で単に接している状態でもよい。例えば、増幅回路19を実装した基板に背面電極17としての銅電極を設置し、背面電極17の上にエレクトレット層13としてFEPフィルムをのせ、コロナ放電によりFEPフィルム帯電させる。

【0081】
(ホ)そして、背面電極17を有するエレクトレット層13と、振動層15の上にスペーサ41を介してエレクトレット絶縁層14eを搭載した構造物を積層して、図16(b)に示すようにケース81内に組み込む際。ケース81内に組み込む際に、背面電極17及びエレクトレット層13の下面側を樹脂層22で埋める。更に、ねじ切りキャップ10により、振動電極15b、振動電極絶縁フィルム15a、スペーサ41、エレクトレット絶縁層14e及びエレクトレット層13がケース81の上方に押し付けられる。更に、振動電極15bの上に整合層16としてシリコーン層を塗布する。なお、エレクトレット層13として強誘電体を用いる場合、例えばPZTを用いる場合は、帯電していないが、分極方向が揃っているPZTを上記の手順でエレクトレット層13としてケース81の内部に組み込み、組み立て終了後に、キュリー点直下に加熱して数秒~数分保持し、常温に冷却すれば、PZTの表面電荷が除去され、エレクトレット層13となる。

【0082】
(第3の実施の形態)
図17に示すように、本発明の第3の実施の形態に係る機械電気変換素子は、平坦な振動面を有する導電体からなる振動電極15bを備える振動層15と、振動層15の振動面に対向した平坦な第1主面及びこの第1主面に平行に対向する第2主面で定義され、分極方向を揃えたエレクトレット層13と、エレクトレット層13の第2主面に接した背面電極17と、振動層15と背面電極17との間に接続された増幅手段(19、9)とを備える超音波センサである。第1及び第2の実施の形態と同様に、背面電極17とエレクトレット層13とは、金属学的に接合していてもよく、接着剤等により接着されていてもよく、或いは、機械的な圧力で単に接している状態でもよい。平面図や鳥瞰図の図示を省略しているが、図17に示す超音波センサの振動層15、エレクトレット層13及び背面電極17は、例えば、それぞれ半径3~40mmの円板形状を採用することが可能である。振動層15は、図17に示すように、振動電極15bと振動電極15bの下面の振動電極絶縁フィルム15aを備える。第1及び第2の実施の形態と同様に、必要に応じて振動電極15bの上面に整合層を設けて、媒体との音響インピーダンスの整合性を高めるようにしてもよい。振動層15は、音響を受けることにより振動する。エレクトレット層13は、電荷を帯び、電界を外部に放出している層であり、例えば、コロナ放電により高分子フィルムを帯電させたり、強誘電体を加熱して表面電荷を除去して製造する。エレクトレット層13の上面にはエレクトレット絶縁層14eが設けられている点は、第1の実施の形態に係る機械電気変換素子と同様であるが、振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット絶縁層14eとの間は、直径0.05~1mmの孔を多数あけたスペーサ層8が挿入され、振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット絶縁層14eとの間に定義される「マイクロギャップ」の間隔を制御している。円板状のエレクトレット層13の下には、円筒状の絶縁体からなるホルダ89が設けられ、エレクトレット層13の周辺部を支持している。振動層15、エレクトレット層13、背面電極17と、増幅手段(19、9)の一部、及びホルダ89は、導電性(金属製)のケース81に収納されて超音波センサを構成している。増幅手段(19、9)は、背面電極17に接続されたアンプ(FET)19と、アンプ(FET)19に接続された外付け回路9を備え、背面電極17と振動層15間の電位をアンプ(FET)19で増幅することにより、振動層15の振動面の変位に伴い、エレクトレット層13に誘導される電荷を測定している。他は、第1及び第2の実施の形態に係る機械電気変換素子と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。

【0083】
本発明の第3の実施の形態に係る機械電気変換素子(超音波センサ)においては、直径0.05~1mmの孔を多数あけたスペーサ層8を、振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット絶縁層14eとの間に挿入しているのでは、マイクロギャップ部での接触点の変形による振動はほとんど期待できず、打ち抜き加工をした孔の上部での撓みによる振動のみとなるため、電界強度を大きくすることができず送信には不向きとなる。しかし、受信のみであれば十分な感度が得られる。例えば、上記の条件で、エレクトレット層13の表面電位が1kVの場合、感度は-45dBとなる。

【0084】
<超音波センサの製造方法>
図18を用いて、本発明の第3の実施の形態に係る機械電気変換素子(超音波センサ)の製造方法を説明する。なお、以下に述べる機械電気変換素子(超音波センサ)の製造方法は、一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲内であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により、実現可能であることは勿論である:
(イ)まず、振動電極絶縁フィルム15aとして、厚さ40μmのPETフィルムに、振動電極15bとしてのAlを蒸着して、振動層15を構成する。一方、厚さ10μmのPETフィルムにエッチング、プレス、レーザーのいずれかの打ち抜き加工により直径50~700μmの孔を多数あけて、スペーサ層8を形成する。このスペーサ層8を、図18(a)に示ように、振動層15としてのAl蒸着したPETフィルムの上に積層する。

【0085】
(ロ)これとは別に、図18(b)に示すように、背面電極17を有するエレクトレット層13を用意しておく。第1及び第2の実施の形態と同様に、背面電極17とエレクトレット層13とは、金属学的に接合していてもよく、接着剤等により接着されていてもよく、或いは、機械的な圧力で単に接している状態でもよい。例えば、増幅回路19を実装した基板に背面電極17としての銅電極を設置し、背面電極17の上にエレクトレット層13としてFEPフィルムをのせ、コロナ放電によりFEPフィルム帯電させる。

【0086】
(ハ)そして、背面電極17を有するエレクトレット層13と、振動層15の上に、スペーサ層8を介してエレクトレット絶縁層14eを搭載した構造物を、図18(c)に示すように、ケース81に組み込む。なお、エレクトレット層13として強誘電体を用いる場合、例えばPZTを用いる場合は、帯電していないが、分極方向が揃っているPZTを上記の手順でエレクトレット層13としてケース81の内部に組み込み、組み立て終了後に、キュリー点直下に加熱して数秒~数分保持し、常温に冷却すれば、PZTの表面電荷が除去され、エレクトレット層13となる。キュリー点温度がハンダリフロー温度より高く、この超音波センサを含む実装構造(製品)のリフロー処理をする場合、リフロー処理によりPZTはエレクトレット層13化する。

【0087】
上記のように、本発明の第3の実施の形態に係る機械電気変換素子(超音波センサ)の製造方法は、製造方法が簡単なため、製造コストの低減が可能である。

【0088】
(第4の実施の形態)
図19に示すように、本発明の第4の実施の形態に係る機械電気変換素子は、平坦な振動面を有する導電体を備える振動層(48、47)と、振動層(48、47)の振動面に対向した平坦な第1主面及びこの第1主面に平行に対向する第2主面で定義され、分極方向を揃えたエレクトレット層13と、エレクトレット層13の第2主面に接した背面電極となる金属薄膜層及びこの金属薄膜層に接続された増幅手段となる集積回路と備えた半導体集積回路43と、半導体集積回路43を表面に集積化した半導体基板42とを備えるMEMSマイクロフォンである。

【0089】
振動層(48、47)は、図19に示すように、振動電極48と振動電極48の下面の振動層絶縁層47を備える。エレクトレット層13は、半導体集積回路43の上に設けられた層間絶縁膜及びパッシベーション膜としてのシリコン酸化膜である。コロナ放電により、このシリコン酸化膜を帯電させてエレクトレット層13にしている。第1~第3の実施の形態と同様に、半導体集積回路43中に設けられた背面電極となる金属薄膜層とエレクトレット層13とは、金属学的に接合していてもよく、接着剤等により接着されていてもよく、或いは、機械的な圧力で単に接している状態でもよい。しかし、半導体集積回路の多層配線技術を鑑みれば、半導体集積回路43中に設けられた背面電極となる金属薄膜層とエレクトレット層13とは、容易に金属学的な接合構造が実現可能である。振動層絶縁層47としてPETフィルムが用いられ、振動層絶縁層47の表面には、インクジェットによりポリイミドなどの絶縁性に優れた高分子を印刷して突起45を形成している。振動層絶縁層47の表面に設けられた突起45が振動層絶縁層47とエレクトレット層13との間に定義される「マイクロギャップ」の間隔を制御している。

【0090】
振動電極48とエレクトレット層13の間が、巨視的な「ギャップ幅Wg」を定義している。振動電極48はエレクトレット層13の静電力により引き付けられて撓むが、撓んだ状態での振動電極48のギャップ側の面の凹凸を中心線平均粗さRaがギャップ幅の10分の1以下になるように設計されている。

【0091】
このため、第4の実施の形態に係るMEMSマイクロフォンは、特許文献1に記載されたマイクロフォンと感度は同等であるが、製造方法が簡単であり、より強い音圧に耐えられる。

【0092】
(第5の実施の形態)
図20に示すように、本発明の第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、振動電極15bと、振動電極15bとの間にエレメント空間を設けるように対向したエレクトレット層13と、エレクトレット層13の下面に接した背面電極17と、エレメント空間の内部を上下方向に分離するように挿入され、エレメント空間の内部に、それぞれの間隔が10nm~40μmのマイクロギャップを複数積層するギャップ絶縁層14a,14b,14cと、振動電極15bと背面電極17との間に電気的に接続された増幅回路(半導体チップ)19とを備える。振動層15は、無負荷時において平坦な振動面を有する。

【0093】
第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置においては、複数のマイクロギャップをそれぞれ定義する面のそれぞれの実効的な表面粗さが、エレメント空間のギャップ幅Wgの1/10以下である。ここで、エレメント空間のギャップ幅Wgは、従来のエレクトレットマイクロフォンの場合、図20において、振動電極絶縁フィルム15a及び複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…のすべてを省略した場合に相当するものであり、エレクトレット層13と振動電極15bとの間の距離に対応する。したがって、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置においては、振動層15の振動面に設けられた第1層のギャップ絶縁層14a,第2層のギャップ絶縁層14b及び第3層のギャップ絶縁層14cの積層構造で、エレメント空間のギャップ幅Wgが定義される。高分子フィルムは、このエレメント空間を介して振動電極15bに対向する平坦な第1主面及びこの第1主面に平行に対向する第2主面で定義されるフィルムであるが、分極方向が揃えられている。

【0094】
本発明の第6~第13の実施の形態においても同様であるが、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置にける「マイクロギャップを定義する面の実効的な表面粗さRaeff」とは:
(イ)振動電極絶縁フィルム15aと第3層のギャップ絶縁層14cとの間においていずれかの膜に設けられた凸部の中心線平均粗さRa又は振動電極絶縁フィルム15aと第3層のギャップ絶縁層14cとの間に挿入された微粒子が凸部を構成しているとみなした場合(図2参照。)の中心線平均粗さRa(振動電極絶縁フィルム15aを省略した場合は、振動電極15bと第3層のギャップ絶縁層14cとの間においていずれかの膜に設けられた凸部の中心線平均粗さRa又は振動電極15bと第3層のギャップ絶縁層14cとの間に挿入された微粒子が凸部を構成しているとみなした場合の中心線平均粗さRa)、
(ロ)第3層のギャップ絶縁層14cと第2層のギャップ絶縁層14bとの間においていずれかの膜に設けられた凸部の中心線平均粗さRa又は第3層のギャップ絶縁層14cと第2層のギャップ絶縁層14bとの間に挿入された微粒子が凸部を構成しているとみなした場合の中心線平均粗さRa、
(ハ)第2層のギャップ絶縁層14bと第1層のギャップ絶縁層14bとの間においていずれかの膜に設けられた凸部の中心線平均粗さRa又は第2層のギャップ絶縁層14bと第1層のギャップ絶縁層14bとの間に挿入された微粒子が凸部を構成しているとみなした場合の中心線平均粗さRa、
(ニ)第1層のギャップ絶縁層14bとエレクトレット絶縁フィルムとの間においていずれかの膜に設けられた凸部の中心線平均粗さRa又は第1層のギャップ絶縁層14bとエレクトレット絶縁フィルムとの間に挿入された微粒子が凸部を構成しているとみなした場合の中心線平均粗さRa(エレクトレット絶縁フィルムを省略した場合は第1層のギャップ絶縁層14bと高分子フィルムとの間においていずれかの膜に設けられた凸部の中心線平均粗さRa又は第1層のギャップ絶縁層14bと高分子フィルムとの間に挿入された微粒子が凸部を構成しているとみなした場合の中心線平均粗さRa)、を意味する。

【0095】
振動層15、第1層のギャップ絶縁層14a、第2層のギャップ絶縁層14b、第3層のギャップ絶縁層14cの厚さは、0.1~100μm程度、好ましくは1~40μm程度、更に好ましくは1~12μm程度に設定すればよい。

【0096】
高分子フィルムの厚さは、コロナ放電により製造されるエレクトレットの場合は1~50μm程度、好ましくは1~25μm程度、更に好ましくは5~12μm程度に設定すればよい。又、強誘電体のエレクトレットの場合は、1μm~10mm,好ましくは5μm~2mm程度、更に好ましくは50~500μm程度に設定すればよいが、柔軟性を期待する場合は厚さ60μm以下が好ましい。

【0097】
図21に示すように、第1層のギャップ絶縁層14aと高分子フィルムとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第1スペーサ41aが挿入され、第1層のギャップ絶縁層14aと第2層のギャップ絶縁層14bとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第2スペーサ41bが挿入され、第2層のギャップ絶縁層14bと第3層のギャップ絶縁層14cとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第3スペーサ41cが挿入され、振動電極15bと第3層のギャップ絶縁層14cとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第4スペーサ41dが挿入され、振動電極15bと高分子フィルムとの間に定義されるギャップの間隔を制御している。このように、振動電極絶縁フィルム15aと高分子フィルムとの間に、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなるスペーサ41a,41b,41c,41d,…を介して複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…を積層して挿入することにより、振動電極絶縁フィルム15aと第3層のギャップ絶縁層14cとの間、第3層のギャップ絶縁層14cと第2層のギャップ絶縁層14bとの間、第2層のギャップ絶縁層14bと第1層のギャップ絶縁層14bとの間、第1層のギャップ絶縁層14bと高分子フィルムとの間に、それぞれ微視的な空気ギャップである「マイクロギャップ」を定義し、それぞれの間隔を制御している。背面電極17と高分子フィルムとは、金属学的に接合していてもよく、接着剤等により接着されていてもよく、或いは、機械的な圧力で単に接している状態でもよい。スペーサ41a,41b,41c,41d,…となる微粒子の粒径を100μm以下とすれば、それぞれのマイクロギャップを定義する面の実効的な表面粗さRaeffを、振動電極15bの下面と高分子フィルムの上面との間にマイクロギャップを収納するように定義されるエレメント空間のギャップ幅の1/10以下にすることができる(実効的な表面粗さRaeffには負荷時の撓みが含まれる。)。しかしながら、柔軟で形状の自由度が高いフィルム状機械電気変換装置を実現するためには、スペーサ41a,41b,41c,41d,…となる微粒子の粒径を10nm~10μmとすれば、全体の厚さがより薄くなるので好ましく、更に、10nm~5μmの範囲で、より10nmに近い粒径が望ましいことは勿論である。

【0098】
平面図や鳥瞰図による表現を省略しているが、図20に示すフィルム状機械電気変換装置の振動層15、複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…、高分子フィルム、及び背面電極17の平面形状は任意の形状が採用可能である。例えば、複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…、高分子フィルムは、それぞれ半径3~40mmの円板形状とすることが可能である。複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…、高分子フィルムを、円板形状とした場合は、振動層15及び背面電極17は、この半径3~40mmの円板形状から延長部を設けた楕円や蒲鉾型等の平面形状としてもよく、複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…及び高分子フィルムの直径よりも更に大きな直径を有する円形形状としてもよい。一方、複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…、高分子フィルムを、矩形とした場合は、振動層15及び背面電極17は、この半径3~40mmの矩形から延長部を設けた矩形の平面形状等が種々の平面形状が採用可能となる。振動層15は、図20に示すように、導電体からなる振動電極15bと振動電極15bの下面の振動電極絶縁フィルム15aを備える。振動電極15b及び背面電極17の厚さは、10nm~100μm、好ましくは10nm~20μm、更に好ましくは0.1~1μm程度に設定すればよい。

【0099】
振動層15の上面には、ポリ塩化ビニル(PVC)等の絶縁層からなる振動層保護膜16が設けられているが、振動層保護膜16は、媒体との音響インピーダンスの整合性を高める整合層として機能しているので、その厚さは、10~100μm程度の範囲で、特性に応じて変更して採用すればよい。

【0100】
図21に示すように、複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…を積層してマイクロギャップ層の数を増すことにより、ダンピング特性だけでなく、送受信感度が向上する。これは、振動電極15bの振幅はすべてのマイクロギャップ層での変形の総和となるためであり、ギャップ部を伝播する音響(超音波)が完全に減衰しない限り、マイクロギャップ層の数が多いほど、送受信感度は向上する。複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…を積層することにより、変形量の増大によりカバーできるため、複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…のそれぞれには、フッ素樹脂等の高弾性率の層が使用可能となる。フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重含体(PFA)が代表的であるが、フッ素樹脂の他、PET樹脂(3GPa)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂(4GPa)、ポリイミド樹脂(3~7GPa)等が使用可能である。しかし、複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…の積層数を増すためにギャップ全体の幅を広げることは、ギャップ中の電界強度の低下につながることに注意する必要がある。

【0101】
送信用フィルム状機械電気変換装置においては、増幅回路19は入力された電気信号を増幅して、振動電極15bと背面電極17間に印加する。一方、受信用フィルム状機械電気変換装置においては、増幅回路19は、振動電極15bと背面電極17間に、振動電極15bの変位に伴い誘導される電荷を増幅して測定する。送信用フィルム状機械電気変換装置においては、振動層15は、振動電極15bと背面電極17間に増幅回路19を介して電気信号を入力することにより振動する。一方、受信用フィルム状機械電気変換装置においては、振動層15は、外部から音響を受けることにより振動する。

【0102】
高分子フィルムは、電荷を帯び、電界を外部に放出している層であり、例えば、コロナ放電により高分子フィルムを帯電させたり、強誘電体を加熱して表面電荷を除去して製造する。図示を省略しているが、高分子フィルムの上面にはエレクトレット絶縁フィルムを設け、エレクトレット絶縁フィルムの上に第1スペーサ41aを配置するようにしてもよい。図20に示すように、複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…及び高分子フィルムは箱形の絶縁容器(12b,12d)の内部に収納され、振動層15がこの絶縁容器(12b,12d)の蓋部をなし、背面電極17がこの絶縁容器(12b,12d)の底板をなしている。更に、複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…及び高分子フィルムが、絶縁容器(12b,12d)の内部に収納された構造が、増幅回路19とともに、絶縁材料からなるスペーサフィルム12aを底板とする絶縁容器(12a,12b,12c)に収納されている。振動層15は、この絶縁容器(12a,12b,12c)の蓋部をなしている。絶縁容器(12a,12b,12c)の底部には、導電性(金属製)のシールド導電体膜11bが設けられ、シールド導電体膜11bの底部には、シールド導電体保護膜11aが設けられている。シールド導電体保護膜11aとシールド導電体膜11bとでシールド板11を構成している。スペーサフィルム12a及びシールド導電体保護膜11aの厚さは、5~150μm程度、好ましくは50~100μm程度の値に設定可能である。

【0103】
例えば、高分子フィルム、ギャップ絶縁層14a,14b,14c,及び振動電極絶縁フィルム15aをPFAフィルムとするときは、それぞれの厚さ10μm程度とすることが可能であり、振動電極15b及び背面電極17をAlフィルムとするときは、その厚さを10μm程度とすることが可能である。又、振動層保護膜16をPVCフィルムとするときは、その厚さを50μm程度、スペーサフィルム12a及びシールド導電体保護膜11aをPVCフィルムとするときは、スペーサフィルム12a及びシールド導電体保護膜11aのそれぞれの厚さを100μm程度に設定可能である。図20において、箱型の絶縁容器(12a,12b,12d,12e)の側板として機能する側壁フィルム12b、12dの厚さは、高分子フィルムの厚さ及びギャップ絶縁層14a,14b,14c,…の枚数やそれぞれの厚さを考慮して設計すればよいが、絶縁容器(12a,12b,12d,12e)をフレキシブルにするためには、ほぼ100μm程度の厚さが好ましい。

【0104】
無負荷時には、高分子フィルムの第1主面は、振動層15の振動面に平行に対向している。ここで、増幅手段は、背面電極17に接続されたアンプ(FET)を集積化した増幅回路19と、増幅回路19に接続された外付け回路(図示省略)を備える。図20は受信用フィルム状機械電気変換装置を示すが、受信用フィルム状機械電気変換装置においては、外付け回路は、一方の端子を接地した直流電源Eと、この直流電源Eと増幅回路19との間に接続されたバッファ抵抗Rと、バッファ抵抗Rと増幅回路19との接続ノードに一方の電極を接続し、他方の電極を出力端子とする結合容量Cを備える。増幅回路19の出力端子となる結合容量Cの出力端子には、外部回路(図示省略)が接続され、外部回路によりマイクロフォンに接続される通信装置や記録装置に必要な信号処理がなされる。第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の増幅回路19は、背面電極17と振動層15間の電位を増幅回路19で増幅することにより、振動層15の振動面の変位に伴い、高分子フィルムに誘導される電荷を測定している。一方、送信用フィルム状機械電気変換装置においては、外付け回路は、一方の端子を接地した直流電源Eと、この直流電源Eと増幅回路19との間に接続されたバッファ抵抗Rと、バッファ抵抗Rと増幅回路19との接続ノードに一方の電極を接続し、他方の電極を入力端子とする結合容量Cを備える。増幅回路19の入力端子となる結合容量Cの入力端子には、外部回路(図示省略)が接続され、外部回路から入力信号が入力され、背面電極17と振動層15間に増幅回路19で増幅した入力信号を印加する。

【0105】
振動電極15bと高分子フィルムの間が、巨視的な「エレメント空間のギャップ幅Wg」を定義している。Wgは0.1~1000μmの範囲内である。振動電極絶縁フィルム15aと第3層のギャップ絶縁層14cとの間(振動電極絶縁フィルム15aを省略した場合は、振動電極15bと第3層のギャップ絶縁層14cとの間)、第3層のギャップ絶縁層14cと第2層のギャップ絶縁層14bとの間、第2層のギャップ絶縁層14bと第1層のギャップ絶縁層14bとの間、第1層のギャップ絶縁層14bとエレクトレット絶縁フィルムとの間(エレクトレット絶縁フィルムを省略した場合は第1層のギャップ絶縁層14bと高分子フィルムとの間)の間にそれぞれ定義される微視的な空気ギャップであるマイクロギャップとは、ギャップ幅が10nm~40μmでギャップ中の空気の絶縁破壊強度が5~200MV/mと巨視的なギャップ中よりも向上しているギャップである。巨視的なエレメント空間のギャップ幅Wgの場合、空気の絶縁破壊強度は3MV/m程度である。但し、巨視的なエレメント空間のギャップ幅Wg中は空気以外にフッ素系ガスなどの絶縁ガスを注入すること、或いは真空にすることにより更に絶縁破壊強度を向上できる。

【0106】
振動電極15bは高分子フィルムの静電力により引き付けられて撓むが、これがマイクロギャップの絶縁破壊強度を低下させる。上記のような高い絶縁破壊強度を得るためには、マイクロギャップを定義する面の実効的な表面粗さRaeffは、図12及び13を用いて説明したとおり、エレメント空間のギャップ幅の10分の1以下でなければならない。

【0107】
振動層15は、振動電極絶縁フィルム15a若しくは振動電極15bの撓みがエレメント空間のギャップ幅Wgの10分の1以下であり、振動電極15bが導電性に優れ、振動電極絶縁フィルム15aが電気絶縁性に優れていれば、どのような材料を使用してもかまわない。振動層15は、剛性が高い必要があるが、高い周波数に追随できるために軽量である方が好ましい。そのため、振動層15の振動電極15b、振動電極15bの下面の振動電極絶縁フィルム15a、振動電極15bの上面の整合層(図20では図示を省略した。)のいずれかに比剛性(=(弾性率)/密度)の値が大きい材料の方を用いることが好ましい。このため、振動層15としては、アルミニウム(Al)とその合金、又は、マグネシウム(Mg)とその合金を振動電極15bとして用い、振動電極絶縁フィルム15aとしてFEP層を貼り付けたものが採用可能である。或いは、PET、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を振動電極絶縁フィルム15aとして用い、この振動電極絶縁フィルム15a上にアルミニウムを蒸着して振動電極15bとしてもよい。或いは、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素セラミックス等を振動電極絶縁フィルム15aとして用い、この振動電極絶縁フィルム15a上にアルミニウムを蒸着又は、銀を焼付して振動電極15bとしてもよい。その他にも、従来のエレクトレットマイクロフォンの絶縁層に使用しているFEP樹脂やシリカ層を有するシリコン基板などを振動電極絶縁フィルム15aに用いることも可能であるが、この場合、撓みがエレメント空間のギャップ幅の10分の1以下となるように厚さを増すことが必要であり、従来のエレクトレットマイクロフォンの設計思想とは大きく異なる。又、その他の絶縁性に優れた樹脂(シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ウレタン、ABS、軟質塩化ビニルなど)等を振動電極絶縁フィルム15aとして用い、この振動電極絶縁フィルム15a上に、接着、蒸着、焼付により振動電極15bを取り付け、振動層15とすることも可能である。この場合、振動電極15bか振動電極絶縁フィルム15aの厚さを増して、振動層15に必要な剛性を確保する。

【0108】
スペーサ41a,41b,41c,41d,…は、電気絶縁性に優れた材料を使用する必要がある。具体的には、シリカ、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素などのセラミックス、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂(PETなどを含む)、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ウレタン、ABS、軟質塩化ビニルなどの樹脂が使用可能である。又、スペーサ41a,41b,41c,41d,…は、弾性率が2GPa以下の材料を使用する。但し、振動層15側に振動電極絶縁フィルム15aがあり、その振動電極絶縁フィルム15aの弾性率が2GPa以下である場合は、スペーサ41a,41b,41c,41d,…の弾性率に制限はない。電気絶縁性に優れ弾性率が2GPa以下の材料には、具体的には、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ウレタン、ABS、軟質塩化ビニルなどの樹脂がある。

【0109】
スペーサ41a,41b,41c,41d,…は、図21に示すような、粒径が10nm~40μmの微粒子の他、図2に示すように第3層のギャップ絶縁層14cの上面に高さ10nm~40μmの微小突起としてスペーサ41を設けてもよい。スペーサ41は、パルスレーザー照射、リソグラフィー、エッチング、プレス等の手法で、第3層のギャップ絶縁層14cの上面形成させることが可能である。或いは、振動電極絶縁フィルム15aの下面、若しくは振動電極絶縁フィルム15aを省略した場合は、振動電極15bの下面に高さ10nm~40μmの微小突起を設けてもよい。同様に、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなるスペーサ41dの代わりに、第3層のギャップ絶縁層14cの下面に、高さ10nm~40μmの微小突起を設けてもよい。更に、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなるスペーサ41b,41cの代わりに、第2層のギャップ絶縁層14bの下面又は上面の少なくとも一方に、高さ10nm~40μmの微小突起を設けてもよく、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなるスペーサ41a,41bの代わりに、第1層のギャップ絶縁層14bの下面又は上面の少なくとも一方に、高さ10nm~40μmの微小突起を設けてもよい。更に、エレクトレット絶縁フィルムを高分子フィルムの上面に有する場合はエレクトレット絶縁フィルムの上面、エレクトレット絶縁フィルムを省略した場合は高分子フィルム上面に、高さ10nm~40μmの微小突起を設けてもよい。柔軟で形状の自由度が高いフィルム状機械電気変換装置を実現するためには、微小突起の高さは、10nm~10μmとすれば全体の厚さがより薄くなるので好ましく、更に好ましくは、10nm~5μmの範囲でより10nmに近い高さが好ましい。

【0110】
粒子や突起は、振動電極絶縁フィルム15aと第3層のギャップ絶縁層14cとの間(振動電極絶縁フィルム15aを省略した場合は、振動電極15bと第3層のギャップ絶縁層14cとの間)、第3層のギャップ絶縁層14cと第2層のギャップ絶縁層14bとの間、第2層のギャップ絶縁層14bと第1層のギャップ絶縁層14bとの間、第1層のギャップ絶縁層14bとエレクトレット絶縁フィルムとの間(エレクトレット絶縁フィルムを省略した場合は第1層のギャップ絶縁層14bと高分子フィルムとの間)で、それぞれ、支持部となり、これによりマイクロギャップが形成される。マイクロギャップを形成できればスペーサ41a,41b,41c,41d,…の形状はどのようなものでも構わないが、突起の接触点の曲率が大きい方が望ましい。又、図3のように最大高さ(Rmax)が10nm~40μmの表面粗さをもつ層を積層すれば、スペーサ41a,41b,41c,41d,…がなくてもマイクロギャップを形成できる。

【0111】
振動電極絶縁フィルム15a、第1層のギャップ絶縁層14a、第2層のギャップ絶縁層14b、第3層のギャップ絶縁層14c及び図示を省略したエレクトレット絶縁フィルムは、上述のように10nm~40μmの突起を形成させるか、粒径が10nm~40μmの微粒子を表面に付着させた絶縁体の層である。図20及び図21では、 第1層のギャップ絶縁層14a,第2層のギャップ絶縁層14b及び第3層のギャップ絶縁層14cの3枚の絶縁層を積層した場合を例示しているが、必要に応じて更に多くの絶縁層を追加して、マイクロギャップ層の数を増やすことができる。又は、一部の絶縁層の表面にのみ突起の形成又は微粒子の付着を行い、残りは、密着させるか、乾燥接触させて表面粗さによりマイクロギャップを形成することも可能である。ギャップ幅が1000μm以内に収まれば、絶縁フィルムの積層枚数が多い方が、音響のダンピング特性が向上する。又、絶縁層を厚くするとギャップ幅も大きくなるが、これにより振動電極15bの撓みによるマイクロギャップの絶縁破壊強度の低下を防ぐことができる。しかし、ギャップ幅の増大は、ギャップ中の電界強度の低下にもつながる。そのため、絶縁層の厚さ、マイクロギャップの構造などにより最適な積層枚数が決まる。

【0112】
高分子フィルムは、ギャップに5~200MV/mの電界を発生させるだけの表面電位を有していなければならない。高分子フィルムの代表例としては、本発明の第1の実施の形態に係る機械電気変換素子で説明したコロナ放電により帯電させた絶縁層や
加熱により帯電させた強誘電層等が使用可能である。高分子フィルムの厚さは例えば,コロナ放電により帯電させたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムの場合、10~50μm程度、強誘電体としてPZTを使用する場合、0.5~2mm程度に選定することができ,背面電極17,振動層15の厚さは例えば,Al蒸着PETフィルムの場合、1~100μm程度に選定することができるが、振動層15、高分子フィルム及び背面電極17の具体的な厚さや半径は、設計指針と要求される性能や仕様に応じて決定すればよい。

【0113】
増幅回路19は、背面電極17の左側端部近傍において、回路基板18の上に搭載(マウント)されている。回路基板18にはスルーホール(ビア)が設けられ、スルーホール(ビア)を介して、増幅回路19は、背面電極17の左側端部近傍に融着されたハンダを介して、背面電極17に電気的に接続されている。図示を省略しているが、増幅回路19からの接地配線はシールド板11のシールド導電体膜11bとハンダで接続されている。

【0114】
背面電極17、複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…、及び高分子フィルムには、背面電極17、複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…、及び高分子フィルムを貫通する貫通孔(図示省略。)が設けられているが、貫通孔は、高分子フィルムと振動層15とのギャップ空間に、(必要に応じて)絶縁性の高い気体(絶縁ガス)を封入できるように、ハンダ等を用いて封じられている。絶縁ガスとしては、窒素、六フッ化硫黄などが採用可能である。絶縁ガスの他、シリコーンオイルなど絶縁流体を高分子フィルムと振動層15との間に複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…が形成するギャップ空間を満たしても、絶縁破壊強度が増し、放電が生じにくくなる。その結果、放電により付着する高分子フィルムの表面の電荷量を低減でき、感度が向上する。絶縁ガスや絶縁流体を満たす代わりに、高分子フィルムと振動層15とのギャップ空間を真空状態としても、感度を向上させることができる。

【0115】
なお、振動層15、高分子フィルム及び背面電極17はそれぞれ円板形状である必要はなく、楕円形、矩形等他の幾何学的形状でも構わないし、この場合、シールド板11等他の部材も、振動層15、高分子フィルム及び背面電極17の幾何学的形状に適合するように設計されることは勿論である。

【0116】
-マイクロギャップ中の空気の絶縁破壊強度-
空気ギャップを有する二つの電極に電位差を与えた場合、空気の絶縁破壊強度は、大気圧中では電極間距離が減少するに従い増加し、電極間距離が1~2μm程度で最大値を示すことが知られている。但し、電極の表面の突起の曲率が大きくなるに従い、電界が突起部に集中し、絶縁破壊強度は低下する。そのため、電極表面の凹凸を中心線平均粗さRaで表すとすると、Raがエレメント空間のギャップ幅の10分の1以下でなければならず、100分1以下が望ましい。

【0117】
従来のエレクトレットマイクロフォンはいずれも振動電極がエレクトレット層の静電力により大きく撓んでいるが、振動電極の表面の中心線平均粗さRaは振動電極の撓みによる変形も含めた値である。そのため、従来のエレクトレットマイクロフォンの振動電極の中心線平均粗さRaはエレメント空間のギャップ幅Wg(既に説明したとおり、従来のエレクトレットマイクロフォンの場合、図20において、振動電極絶縁フィルム15a及び複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…のすべてを省略した場合に相当し、高分子フィルムと振動電極15bとの間の距離である。)の10分の1を越えてしまう。

【0118】
第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置においては、振動電極絶縁フィルム15aと第3層のギャップ絶縁層14cとの間(振動電極絶縁フィルム15aを省略した場合は、振動電極15bと第3層のギャップ絶縁層14cとの間)、第3層のギャップ絶縁層14cと第2層のギャップ絶縁層14bとの間、第2層のギャップ絶縁層14bと第1層のギャップ絶縁層14bとの間、第1層のギャップ絶縁層14bとエレクトレット絶縁フィルムとの間(エレクトレット絶縁フィルムを省略した場合は第1層のギャップ絶縁層14bと高分子フィルムとの間)とのそれぞれの間のマイクロギャップの幅が、空気の絶縁破壊強度を決める。

【0119】
第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の場合、振動電極絶縁フィルム15a及び複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…を挿入することによってエレメント空間のギャップ幅Wgを広げて、振動電極絶縁フィルム15aの下面(振動電極絶縁フィルム15aを省略した場合は、振動電極15bの下面)の中心線平均粗さRa(スペーサ41a,41b,41c,41d,…を介した振動電極15bの撓みに起因した変動分を含む)がエレメント空間のギャップ幅Wgの10分の1以下とすることができる。又、複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…の上面及び下面、エレクトレット絶縁フィルムの上面(エレクトレット絶縁フィルムを省略した場合は高分子フィルムの上面)の表面粗さも、同様にギャップ中の空気の絶縁破壊強度に影響を与え、エレクトレット絶縁フィルムの上面の表面のRaもエレメント空間のギャップ幅の10分の1以下でなければならず、100分1以下が望ましい。

【0120】
このように、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、空気の絶縁破壊強度が高く、耐圧性が非常に高い。したがって、図20に示すように、受圧面に振動層保護膜16を備えていれば、従来のフィルム状機械電気変換装置のようにケースに格納する必要はなく、必要なところに貼り付けるだけで使用可能である。又、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は防水性が高い構造を容易に実現できるので、防水マイクロフォンとしても使用できる。更に、流体や生体中の10Hz以上の圧力変動を検知する圧力センサとしても使用できる。通常のフィルム状機械電気変換装置は耐圧性が低いため,マイク素子をケースに納めて受圧面を保護しているが,第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は振動層保護膜16などを使用して振動電極15bの表面が損傷しないように保護されているので、指などで受圧面を直接叩いても感度が劣化することはない。

【0121】
-受信感度-
第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置を超音波プローブとして用いた場合、振動層15の撓みとマイクロギャップでの接触点の変形により、振動層15が振動して、音響(超音波)の送受信を行う。フィルム状機械電気変換装置の振動層15が音響(超音波)により振動した場合、エレクトレットコンデンサマイクロフォンと同様の原理により、ギャップの静電容量変化が電極間の電位差の変化となって出力ΔVoutが、第1の実施の形態において説明した(1)、(2)式で与えられる。このとき、振動層15は、qdを単位電荷として、高分子フィルムから、第1の実施の形態において説明した(3)式で与えられる。静電力σeで引き付けられる。静電力σeにより振動層15はマイクロギャップの突起(微粒子を含む)を支点として高分子フィルムの静電力によりギャップ側に引き付けられ、静的に撓んでいることに注意が必要である。即ち静的に撓んだ状態での振動電極15bのギャップ側の面のRaがエレメント空間のギャップ幅の10分の1以下となるように振動層15の剛性とマイクロギャップでの接触点密度や配置を設計する必要がある。又、撓みによってマイクロギャップを構成する複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…が突起とは別の位置で接触すると、接触点の増加により接触剛性が大きく低下することになるので、振動層15の剛性を高めるか突起の高さや密度を高くしてこれを避けなければならない。

【0122】
-振動層の撓みによる振動-
振動層の撓みによる振動は、従来のエレクトレットマイクロフォンでも同様に生じる。又、想定される最大の音圧による撓みが生じても、マイクロギャップを構成する二つの層が突起以外の位置で接触してはならない。

【0123】
-マイクロギャップの変形による振動-
図20に示した構造は例示であり、マイクロギャップは微粒子をスペーサ41a,41b,41c,41d,…として用いなくても実現可能である。第1の実施の形態の説明におけるエレクトレット絶縁層14eを、第5の実施の形態では第3層のギャップ絶縁層14cに置き換えて説明すれば、乾燥接触によりマイクロギャップを形成させた場合のモデルとして、図2に示す一定の半径rの微小突起は、振動電極絶縁フィルム15aと第3層のギャップ絶縁層14c(第1の実施の形態の説明におけるエレクトレット絶縁層14e)との間において、いずれかの膜に設けられた凸部の中心線平均粗さRaとみなすことが可能であり、或いは、振動電極絶縁フィルム15aと第3層のギャップ絶縁層14cとの間に挿入された微粒子が凸部を構成しているとみなすことが可能であるので、振動電極絶縁フィルム15aと第3層のギャップ絶縁層14cとの間に設けられる「マイクロギャップを定義する面の実効的な表面粗さRaeff」の定義の基礎となる模式図である。図2示すような一定の半径rの微小突起は、第3層のギャップ絶縁層14cの上面に対しパルスレーザーを照射による局所的な熱変形を生じさせてもよく、第3層のギャップ絶縁層14cを構成するフィルム全体を加熱してオリゴマーの析出や高分子の自己組織化をさせてもよく、或いは、プレスによる第3層のギャップ絶縁層14cの加工などにより形成してもよい。

【0124】
第1の実施の形態において説明したとおり、シリコーン粒子は図3に示すように、面内方向に凝集しており、凝集体の平均間隔は100μmである。又、振動電極絶縁フィルム15a及び第3層のギャップ絶縁層14c(第1の実施の形態の説明におけるエレクトレット絶縁層14e)としての樹脂層の厚さの公差は±10%ある場合が多い。そのため、図3のように、振動電極絶縁フィルム15aと第3層のギャップ絶縁層14cとの間では、凝集したシリコーン粒子の一部を介して接触してマイクロギャップを形成している。このとき、マイクロギャップ内には約70MV/mの電界が高分子フィルムから作用している。

【0125】
第1の実施の形態において説明したとおり、図2のような一定の半径rの微小突起を第3層のギャップ絶縁層14cの上面がもつモデルにおいては、接触圧力σは、(4),(5)式で表される。そして、振動電極絶縁フィルム15aと第3層のギャップ絶縁層14cの間のマイクロギャップにおける単位面積あたりのバネ定数である接触剛性(界面剛性)Kは、第1の実施の形態において説明した(6)式で与えられるので、K≪S'であれば、振動電極絶縁フィルム15aの振幅ΔWgは(7)式で与えられる。よって、第1の実施の形態と同様に(1),(3),(5),(6),(7)式より、出力ΔVoutは(8)式で表される。(8)式より、受信感度を向上させるためには、ギャップ中の電界強度Egを増すとともに、マイクロギャップを挟み込んでいる二つの層のいずれか又は両方の貯蔵弾性率S,Sを低くし、突起の半径rを小さくするとともに突起の密度nを低く(間隔を広く)すればよい。但し、突起の半径rと密度nの低下は、振動電極絶縁フィルム15aの撓みを増すことになる。したがって、前述したようにマイクロギャップを定義する面の実効的な表面粗さRaeffがエレメント空間のギャップ幅の10分の1以下で、撓みによりマイクロギャップの接触密度が増さないように注意する必要がある。

【0126】
-フィルム状機械電気変換装置の出力に及ぼす影響-
フィルム状機械電気変換装置については、送信用フィルム状機械電気変換装置に振幅ΔVinの電圧パルスを入力した場合、フィルム状機械電気変換装置時の振動電極絶縁フィルム15aに発生する圧力Δσoutは、第1の実施の形態において説明した(9)式で与えられる。振動電極絶縁フィルム15aの撓み、マイクロギャップの接触点の変形ともに、(9)式のΔσoutに応じて変化し、振動電極絶縁フィルム15aの振動が生じて、音響がフィルム状機械電気変換装置される。したがって、(9)式より、エレメント空間のギャップ幅Wgが狭くギャップの電界強度Egが高い方がフィルム状機械電気変換装置音圧が大きくなり、フィルム状機械電気変換装置出力が向上することが分かる。

【0127】
-音響のダンピング-
マイクロギャップのもう1つの利点として、超音波のダンピング(減衰)がある。マイクロギャップではスペーサ41a,41b,41c,41d,…により接触していない境界部では、音響の反射が生じる。そのため、高分子フィルムまで伝播する音響が大きく減衰する。高分子フィルムまで音響が伝播すると、高分子フィルムがひずみを生じて圧電効果による出力が受信出力に重なることになる。これは、エレクトレットプローブ(フィルム状機械電気変換装置)の性能を低下させるので、音響はギャップ部で可能な限り減衰させたい。マイクロギャップを有することにより、ギャップ部での音響の減衰は飛躍的に増加する。

【0128】
図22は、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の感度(dB)と周波数(Hz)の関係を、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルムの積層枚数n(n=5,10,40,100)をパラメータとして示す図である。図22の測定対象となったフィルム状機械電気変換装置は、厚さ12μmのテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)フィルムをコロナ放電によりエレクトレット化して高分子フィルムとし、高分子フィルムの上に、ギャップ絶縁層14a,14b,14c,…として、厚さ10μmのHDPEフィルムをn枚積層してギャップを形成し、Alホイルを振動電極15b及び背面電極17とし、受圧面を径30mmの円形としたものである。

【0129】
図22から分かるように、ギャップ絶縁層14a,14b,14c,…として、HDPEフィルムをn=40枚積層した場合、感度は-32dB程度である。一般的なエレクトレットコンデンサマイクロフォンの感度は、-60~-45dBであるので、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、一般的なエレクトレットコンデンサマイクロフォンより、はるかに高感度であることが分かる。

【0130】
<第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の製造方法>
図23~図28を用いて、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の製造方法を説明する。なお、以下に述べるフィルム状機械電気変換装置の製造方法は、一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲内であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により、実現可能であることは勿論である:
(a)まず、PVCフィルム等のシールド導電体保護膜11aの上にシールド導電体膜11bとなるアルミニウム(Al)を蒸着し、シールド板11を構成する。このシールド板11を、絶縁材料からなるスペーサフィルム12aの裏面に貼り付ける。更に、スペーサフィルム12aの上面にAlフィルムを貼り付けた後、パターニングして背面電極17を形成する。背面電極17の一部には、図23に示すように、浅い溝部17gを設けておく。そして、図23に示すように、この背面電極17の上面の一部に高分子フィルムとしてテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重含体(PFA)フィルムを貼り付ける。背面電極17と高分子フィルムとは、金属学的に接合していてもよく、接着剤等により接着されていてもよく、或いは、機械的な圧力で単に接している状態でもよい。背面電極17の上に高分子フィルムを形成した後、図24に示すように、コロナ放電により高分子フィルムを帯電させる。

【0131】
(b)そして、図25に示すように、絶縁材料からなるスペーサフィルム12aを底板として、箱の側板として機能する側壁フィルム12b、12dを高分子フィルムの周りに配置し、箱型の絶縁容器(12a,12b,12d,12e)を組み立てる。この際、庇12eを有する絶縁層12dを背面電極17の一部に設けた浅い溝部17gに嵌め込む。

【0132】
(c)この箱型の絶縁容器(12a,12b,12d,12e)の内部に、図26に示すように、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなるスペーサ41a,41b,41c,41d,…を介して複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…を積層した積層構造を収納する。スペーサ41a,41b,41c,41d,…となる絶縁体の微粒子の粒径を10nm~10μmとすれば、全体の厚さがより薄くなるので好ましく、更に、10nm~5μmの範囲で、より10nmに近い粒径が望ましいことは勿論である。複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…からなる積層構造は、例えば、以下のような手順の繰り返しで作製可能である。即ち、別途用意した積層用容器の内部に、スペーサ41a,41b,41c,41d,…となるシリコーン粒子を、分散剤により溶媒55中にコロイド状に分散しておき、第1層のギャップ絶縁層14aを収納後、溶媒55を第1層のギャップ絶縁層14a上に滴下し、乾燥させ、スペーサ41a,41bとしてのシリコーン粒子を塗布する。次に、第2層のギャップ絶縁層14bを積層用容器に収納後、溶媒55を第2層のギャップ絶縁層14b上に滴下し、乾燥させ、スペーサ41cとしてのシリコーン粒子を塗布する。更に、第3層のギャップ絶縁層14cを積層用容器に収納後、溶媒55を第3層のギャップ絶縁層14c上に滴下し、乾燥させ、スペーサ41dとしてのシリコーン粒子を塗布する。…。なお、この他、複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…のそれぞれに、あらかじめ表面処理を行い、微小突起(スペーサ41a,41b,41c,41d,…)を形成させておく方法でも構わない。

【0133】
更に,ギャップ絶縁層14aのエレクトレットに対向する面をコロナ放電により帯電させれば(極性は対向するエレクトレットの極性と同じにする),エレクトレットと積層する際の放電を防ぐとともに,エレクトレットの電荷の減衰を少なくすることができる。

【0134】
(d)一方、振動電極絶縁フィルム15aとしてのPFAフィルムに、振動電極15bとしてのAlを蒸着して、振動層15を作製する。更に、振動電極15bの上に、PVCフィルムからなる振動層保護膜16を貼り付けた積層構造を、図27に示すように、絶縁容器(12a,12b,12d,12e)の上蓋として被せる。なお、振動層15としてのAl蒸着したPFAフィルムの上に、シリコーン粒子を、コロイド状に分散した溶媒を滴下し、乾燥させ、スペーサ41dとしてのシリコーン粒子を振動電極絶縁フィルム15aの上に塗布した後、図27に示すように、絶縁容器(12a,12b,12d,12e)の上蓋として被せるようにしてもよい。更に、振動電極絶縁フィルム15aとしてのPFAフィルムにあらかじめ表面処理を行い、微小突起を形成させておく方法でも構わない。

【0135】
(e)更に、別途、ボールグリッドアレイ等のように、接続部を基板の底部に有する回路基板18の上に、増幅回路(FET)を集積化した増幅回路19を搭載(マウント)して、増幅回路の実装構造(パッケージ)を用意する。増幅回路19に集積化された増幅回路の電極は、回路基板18の表面及び内部に埋め込まれた内部配線やスルーホール(ビア)を介して、回路基板18の裏面のハンダボール等の接続電極に電気的に接続されている。この増幅回路の実装構造(パッケージ)を図28に示すように、箱型の絶縁容器(12a,12b,12d,12e)の庇12eの下に収納する。箱型の絶縁容器(12a,12b,12d,12e)の庇12eの下に実装構造(パッケージ)が収納されたら、図20に示すように、庇12eの下に絶縁層12cを挿入して、実装構造(パッケージ)の格納部分に蓋をすれば、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置が完成する。

【0136】
図23~図28に示した第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の製造方法の要部をまとめると、図29に示すようになる。即ち、(イ)まず、図29(a)に示すように、この背面電極17pの上面に高分子フィルムとしてPFAフィルムを貼り付ける。(ロ)そして、背面電極17pの上に高分子フィルムを形成した後、図29(b)に示すように、コロナ放電等により高分子フィルムを帯電させる。(ハ)一方、振動電極絶縁フィルムとしてのPFAフィルムの裏面に、振動電極としてのAlを蒸着した振動層15sを用意し、このPFAフィルムの上に、振動層15sの上にスペーサ(図示省略)を介して複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…を積層する。(ニ)そして、背面電極17pを有する高分子フィルムと、振動層15sの上にスペーサ(図示省略)を介して複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…を搭載した構造物を、図29(c)に示すような積層関係になるようにして、図20に示した絶縁容器(12a,12b,12d,12e)のような、所定の箱内に組み込むという簡単な工程で、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置が完成する。

【0137】
なお、高分子フィルムとして強誘電体を用いる場合、例えばPZTを用いる場合は、帯電していないが、分極方向が揃っているPZTを上記の手順で高分子フィルムとして箱型の絶縁容器(12a,12b,12d,12e)の内部に組み込み、組み立て終了後に、キュリー点直下に加熱して数秒~数分保持し、常温に冷却すれば、PZTの表面電荷が除去され、高分子フィルムとなる。キュリー点温度がハンダリフロー温度より高く、このフィルム状機械電気変換装置を含む実装構造(製品)のリフロー処理をする場合、リフロー処理によりPZTは高分子フィルム化する。

【0138】
第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置によれば、従来のフィルム状機械電気変換装置より空中の送受信感度が高いので、距離測定などでの精度向上を期待できるが、更に、周波数変調を用いれば更に、精度の高い送受信が可能となる。具体的には、フィルム状機械電気変換装置時に周波数を変化させることにより特定の信号パターンをフィルム状機械電気変換装置する。すると、受信時に機械電気変換した信号パターンを抽出すればよいが、これをノイズでは生じないパターンとしておけば、ノイズが高い環境においてもノイズに埋もれた受信波形を識別することが可能となる。これは、広い周波数帯域を送受信できる本発明のフィルム状機械電気変換装置ならではの手法となる。

【0139】
以上説明したとおり、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、エレクトレット層13として高分子フィルムを用いる場合には、柔軟で受圧面の形状に制約がないため,設置する場所に応じた形状とし、変形させることが可能である。又、増幅回路19を除き(増幅回路19は厚さ60μm以下にすれば、変形量は小さいものの変形可能になる。),すべて薄いフィルムにより形成されているため,柔軟に変形が可能である。エレクトレット層13として強誘電体を用いる場合は、強誘電体を60μm以下の厚さのフィルムに加工すれば、柔軟性が得られるが、高分子フィルムに比すれば、その変形量は小さく、60μm以上の厚さでは柔軟性は期待できない。更に,マイクロギャップは、図21に示すように、粒径が10nm~40μmの絶縁体からなる多数の微粒子(又は微小突起)からなるスペーサ41a,41b,41c,41d,…により支えられているため,受圧面の形状は任意に設計可能である。例えば携帯電話のフィルム状機械電気変換装置として使用する場合、ボタンなどの間に第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置を貼り付けることもできる。但し、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置を変形させたときに,高分子フィルム、ギャップ、振動電極15bの各層がわずかにずれることが懸念される。このずれの全体量は変形量とフィルム状機械電気変換装置の厚さ及び面積に依存するが,各層を構成するギャップ絶縁層14a,14b,14c,…ごとのずれ量はフィルム厚さにも依存する。そして,ギャップ絶縁層14a,14b,14c,…のそれぞれの厚さをtとすると,変形によるギャップ絶縁層14a,14b,14c,…ごとのずれ量は最大2πtとなるが,このずれ量はマイクロギャップを構成する微小突起の間隔より小さくなければならない。微小突起の間隔は、フィルム状機械電気変換装置の最大許容音圧(耐圧)により決まるが,このフィルム状機械電気変換装置は図20のように受圧面に外力が直接加わるため,少なくとも1気圧以上の耐圧性が必要である。このことから考えて,微小突起の間隔は500μm以下であり,フィルム状機械電気変換装置を構成するギャップ絶縁層14a,14b,14c,…の厚さはいずれも80μm以下であることが必要である。

【0140】
又、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の受圧面の面積が小さすぎると静電容量が不足して、感度が低下してしまう。必要な面積は、ギャップ厚さや高分子フィルムの厚さと誘電率に依存するが、少なくとも1mm以上必要で,10mm以上が望ましい。又、受圧面の面積が大きすぎると、ギャップ絶縁層14a,14b,14c,…が音によりばたついて出力のばらつきが増加する。更に、積層しているギャップ絶縁層14a,14b,14c,…のずれの増大によりギャップ絶縁層14a,14b,14c,…間の空気ギャップ幅が増大して放電を生じてしまい,感度が劣化する。受圧面の面積の上限は、フィルム状機械電気変換装置を構成するギャップ絶縁層14a,14b,14c,…の厚さや測定する音の周波数帯域に依存するが,少なくとも100cm以下であることが必要で,10cm以下が望ましい。

【0141】
(第6の実施の形態)
図20に示した本発明の第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、高分子フィルム13bとして高分子フィルムを使用すれば、図30(b)にマイクロフォンBとして示すように、高分子フィルム13b側から音圧Φ2を受けても振動はギャップ絶縁層14p,14q,14r,…までほとんど減衰せずに伝わる。そのため,背面電極17b側を受圧面としても感度は、図30(a)に示すマイクロフォンAのように、振動層15u側から音圧Φ1を受ける場合と、ほとんど変わらない。

【0142】
本発明の第6の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、図30(a)に示すマイクロフォンAと、図30(b)に示すマイクロフォンBとを利用した、両面で受信可能なフィルム状機械電気変換装置である。図30(a)に示すように、第1の受圧素子M1としてのマイクロフォンAは、無負荷時において平坦な振動面を有する振動層15uと、振動層15uの振動面に、第1層のギャップ絶縁層14a,第2層のギャップ絶縁層14b及び第3層のギャップ絶縁層14cの積層構造で厚みを定義したギャップ部を介して対向した平坦な第1主面及びこの第1主面に平行に対向する第2主面で定義され、分極方向を揃えた高分子フィルム13aと、高分子フィルム13aの第2主面に接した背面電極17aと、振動層15uと背面電極17aとの間に接続された増幅手段(図示省略)とを備える。第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の説明で図21に示したのと同様に、第1層のギャップ絶縁層14aと高分子フィルム13aとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第1スペーサが挿入され、第1層のギャップ絶縁層14aと第2層のギャップ絶縁層14bとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第2スペーサが挿入され、第2層のギャップ絶縁層14bと第3層のギャップ絶縁層14cとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第3スペーサが挿入され、振動電極15bと第3層のギャップ絶縁層14cとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第4スペーサが挿入され、振動電極15bと高分子フィルム13aとの間に定義されるギャップの間隔を制御している。このように、振動層15uと高分子フィルム13aとの間に、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなるスペーサを介して複数のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…を積層して挿入することにより、振動層15uと第3層のギャップ絶縁層14cとの間、第3層のギャップ絶縁層14cと第2層のギャップ絶縁層14bとの間、第2層のギャップ絶縁層14bと第1層のギャップ絶縁層14bとの間、第1層のギャップ絶縁層14bと高分子フィルム13aとの間に、それぞれマイクロギャップを定義し、それにより、振動層15uと高分子フィルム13aとの間の巨視的なエレメント空間のギャップ幅Wgを制御している。第1から第4スペーサとなる微粒子の粒径を100μm以下とすれば、それぞれのマイクロギャップを定義する面の実効的な表面粗さRaeffを、振動層15u、15vの下面と高分子フィルム13a,13bの上面との間にマイクロギャップを収納するように定義されるエレメント空間のギャップ幅の1/10以下にすることができる(実効的な表面粗さRaeffには負荷時の撓みが含まれる。)。しかしながら、柔軟で形状の自由度が高いフィルム状機械電気変換装置を実現するためには、第1から第4スペーサとなる微粒子の粒径を10nm~10μmとすれば、全体の厚さがより薄くなるので好ましく、更に、10nm~5μmの範囲で、より10nmに近い粒径が望ましいことは勿論である。第1の受圧素子M1(マイクロフォンA)は、背面電極17a側が出力端子となる。

【0143】
一方、図30(b)に示すように、第2の受圧素子M2としてのマイクロフォンBは、無負荷時において平坦な振動面を有する振動層15vと、振動層15vの振動面に、第1層のギャップ絶縁層14p,第2層のギャップ絶縁層14q及び第3層のギャップ絶縁層14rの積層構造で厚みを定義したギャップ部を介して対向した平坦な第1主面及びこの第1主面に平行に対向する第2主面で定義され、分極方向を揃えた高分子フィルム13bと、高分子フィルム13bの第2主面に接した背面電極17bと、振動層15vと背面電極17bとの間に接続された増幅手段(図示省略)とを備える。マイクロフォンAと同様に、振動層15vと高分子フィルム13bとの間に、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなるスペーサを介して複数のギャップ絶縁層14p,14q,14r,…を積層して挿入することにより、振動層15vと第3層のギャップ絶縁層14rとの間、第3層のギャップ絶縁層14rと第2層のギャップ絶縁層14qとの間、第2層のギャップ絶縁層14qと第1層のギャップ絶縁層14pとの間、第1層のギャップ絶縁層14pと高分子フィルム13bとの間に、それぞれマイクロギャップを定義し、それにより、振動層15vと高分子フィルム13bとの間の巨視的なエレメント空間のギャップ幅Wgを制御している。第2の受圧素子M2(マイクロフォンB)は、音声を受ける側が第1の受圧素子M1(マイクロフォンA)とは、逆になるので、振動層15v側が出力端子となる。

【0144】
図30(a)に示すマイクロフォンA(第1の受圧素子M1)と、図30(b)に示すマイクロフォンB(第2の受圧素子M2)は、すべて薄いフィルムにより形成されているため,柔軟に変形が可能である。

【0145】
図31は、第6の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の具体例として、ノイズキャンセリングフォンを示す。図31に示すように、第6の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、半導体チップ(FETアンプ)19を内蔵した基体(マイクロフォン基板)21と、基体(マイクロフォン基板)21の左上コーナ部に、コーナ部の曲率にあわせて曲げて貼り付けられた第1の受圧素子M1(マイクロフォンA)と、基体(マイクロフォン基板)21の左下コーナ部に、コーナ部の曲率にあわせて曲げて貼り付けられた第2の受圧素子M(マイクロフォンB)とを備える。第1の受圧素子M1及び第2の受圧素子Mは、ともに、柔軟で受圧面の形状に制約がないため,設置する場所に応じた形状とし、変形させることが可能であるので、図31に示すように、基体(マイクロフォン基板)21の左上コーナ部に、背面電極17aが基体(マイクロフォン基板)21に接するようにして、第1の受圧素子M1(マイクロフォンA)を曲げて貼り付け、基体(マイクロフォン基板)21の左下コーナ部に、振動層15vが接するようにして、第2の受圧素子M(マイクロフォンB)を曲げて貼り付けることが可能である。

【0146】
このように、第6の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置(ノイズキャンセリングフォン)では、音声を受ける側が互いに、表裏が逆になる第1の受圧素子M1及び第1の受圧素子Mを基体(マイクロフォン基板)21の表面に貼り付け、第1の受圧素子M1及び第2の受圧素子Mからの出力を同一の半導体チップ(FETアンプ)19で取り込むことができる。

【0147】
図31に示すように、背面電極17aを基体(マイクロフォン基板)21に接するようにして第1の受圧素子M1を貼り付け、振動層15vが接するようにして第2の受圧素子Mを貼り付けることにより、第1の受圧素子M1及び第2の受圧素子Mの信号の極性が反転するため,ノイズN1,N2,N3が除去される。これにより,第6の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置(ノイズキャンセリングフォン)の回路の簡略化が可能になる。

【0148】
第6の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置においては、第1の受圧素子M1及び第2の受圧素子Mから半導体チップ(FETアンプ)19までの伝送経路における浮遊容量の増大が懸念されるが,前述したように、第1の受圧素子M1及び第2の受圧素子Mは、それぞれ形状が自由であることを利用して受圧面の面積を大きくとり,第1の受圧素子M1及び第2の受圧素子Mの静電容量を十分に大きくすればよい。

【0149】
(第7の実施の形態)
第6の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置においては、第1の受圧素子M1及び第2の受圧素子Mから半導体チップ(FETアンプ)19までの伝送経路における浮遊容量の増大が懸念された。このため、第6の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置では、第1の受圧素子M1及び第2の受圧素子Mが、それぞれ形状が自由であることを利用して受圧面の面積を大きくとり,第1の受圧素子M1及び第2の受圧素子Mの静電容量を十分に大きくする手法を採用した。本発明の第7の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置では、両面で受信可能なフィルム状機械電気変換装置において、浮遊容量を補償可能なように、静電容量を増す他の手法を説明する。

【0150】
即ち、本発明の第7の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、図32に示すように、信号を入出力する共通電極17cの上下に、それぞれ、上側高分子フィルム13a及び下側高分子フィルム13bを、それぞれの極性が互いに逆向きになるようにして、貼り合わせている。

【0151】
共通電極17cの上に設けられる第1の受圧素子M1は、無負荷時において平坦な振動面を有する上側振動層15と、上側振動層15の振動面に、第1層の上側ギャップ絶縁層14a,第2層の上側ギャップ絶縁層14b及び第3層の上側ギャップ絶縁層14cの積層構造で厚みを定義したギャップ部を介して対向したエレクトレット絶縁層14e、エレクトレット絶縁層14eに対向した平坦な第1主面及びこの第1主面に平行に対向する第2主面で定義され、分極方向を揃えた上側高分子フィルム13aと、上側高分子フィルム13aの第2主面に接した共通電極17cとを備える。上側振動層15は、図32に示すように、導電体からなる上側振動電極15bと上側振動電極15bの下面の振動電極絶縁フィルム15aとを備える。第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の説明において、図21に示したのと同様に、第1層の上側ギャップ絶縁層14aとエレクトレット絶縁層14eとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第1スペーサが挿入され、第1層の上側ギャップ絶縁層14aと第2層の上側ギャップ絶縁層14bとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第2スペーサが挿入され、第2層の上側ギャップ絶縁層14bと第3層の上側ギャップ絶縁層14cとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第3スペーサが挿入され、振動電極15bと第3層の上側ギャップ絶縁層14cとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第4スペーサが挿入され、振動電極15bと上側高分子フィルム13aとの間に定義されるギャップの間隔を制御している。このように、上側振動層15と上側高分子フィルム13aとの間に、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなるスペーサを介して複数の上側ギャップ絶縁層14a,14b,14c,…を積層して挿入することにより、上側振動層15と第3層の上側ギャップ絶縁層14cとの間、第3層の上側ギャップ絶縁層14cと第2層の上側ギャップ絶縁層14bとの間、第2層の上側ギャップ絶縁層14bと第1層の上側ギャップ絶縁層14aとの間、第1層の上側ギャップ絶縁層14aと上側高分子フィルム13aとの間に、それぞれマイクロギャップを定義し、それにより、上側振動層15と上側高分子フィルム13aとの間の巨視的なエレメント空間のギャップ幅Wgを制御している。 第1から第4スペーサとなる微粒子の粒径を100μm以下とすれば、それぞれのマイクロギャップを定義する面の実効的な表面粗さRaeffを、上側振動層15の下面と上側高分子フィルム13aの上面との間にマイクロギャップを収納するように定義されるエレメント空間のギャップ幅の1/10以下にすることができる(実効的な表面粗さRaeffには負荷時の撓みが含まれる。)。しかしながら、柔軟で形状の自由度が高いフィルム状機械電気変換装置を実現するためには、第1から第4スペーサとなる微粒子の粒径を10nm~10μmとすれば、全体の厚さがより薄くなるので好ましく、更に、10nm~5μmの範囲で、より10nmに近い粒径が望ましいことは勿論である。

【0152】
共通電極17cの下に設けられる第2の受圧素子M2は、シールド導電体膜11bと、シールド導電体膜11bの振動面に、第1層の下側ギャップ絶縁層14p,第2層の下側ギャップ絶縁層14q及び第3層の下側ギャップ絶縁層14rの積層構造で厚みを定義したギャップ部を介して対向した平坦な第1主面及びこの第1主面に平行に対向する第2主面で定義され、分極方向を揃えた下側高分子フィルム13bと、下側高分子フィルム13bの第2主面に接した共通電極17cとを備える。シールド導電体膜11bは、第2の受圧素子M2の無負荷時において平坦な振動面を有する振動層として機能している。第1の受圧素子M1と同様に、シールド導電体膜11bと下側高分子フィルム13bとの間に、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなるスペーサを介して複数の下側ギャップ絶縁層14p,14q,14r,…を積層して挿入することにより、シールド導電体膜11bと第3層の下側ギャップ絶縁層14rとの間、第3層の下側ギャップ絶縁層14rと第2層の下側ギャップ絶縁層14qとの間、第2層の下側ギャップ絶縁層14qと第1層の下側ギャップ絶縁層14pとの間、第1層の下側ギャップ絶縁層14pと下側高分子フィルム13bとの間に、それぞれマイクロギャップを定義し、それにより、シールド導電体膜11bと下側高分子フィルム13bとの間の巨視的なエレメント空間のギャップ幅Wgを制御している。第1の受圧素子M1及び第2の受圧素子M2は、共通電極17cを共通の出力端子としている。

【0153】
第1から第4スペーサとなる微粒子の粒径を100μm以下とすれば、それぞれのマイクロギャップを定義する面の実効的な表面粗さRaeffを、下側高分子フィルム13bの下面とシールド導電体膜11bの上面との間にマイクロギャップを収納するように定義されるエレメント空間のギャップ幅の1/10以下にすることができる(実効的な表面粗さRaeffには負荷時の撓みが含まれる。)。しかしながら、柔軟で形状の自由度が高いフィルム状機械電気変換装置を実現するためには、スペーサとなる微粒子の粒径を10nm~10μmとすれば、全体の厚さがより薄くなるので好ましく、更に、10nm~5μmの範囲で、より10nmに近い粒径が望ましいことは勿論である。

【0154】
図32に示すように、複数の上側ギャップ絶縁層14a,14b,14c,…、エレクトレット絶縁層14e及び上側高分子フィルム13aは、共通電極17cを底板とする箱形の絶縁容器(12k,12l)の内部に収納され、上側振動層15がこの絶縁容器(12k,12l)の蓋部をなしている。一方、下側高分子フィルム13b及び複数の下側ギャップ絶縁層14p,14q,14r,…は、共通電極17cを天井板とする箱形の絶縁容器(12k,12m,12o)の内部に収納され、シールド導電体膜11bがこの絶縁容器(12k,12m,12o)の底板をなしている。

【0155】
半導体チップ(FETアンプ)19は、図32において、共通電極17cの下面の左側端部近傍において、回路基板18を介して搭載(マウント)されている。回路基板18にはスルーホール(ビア)が設けられ、スルーホール(ビア)を介して、増幅回路19は、共通電極17cの左側端部近傍に融着されたハンダを介して、共通電極17cに電気的に接続されている。図示を省略しているが、増幅回路19からの接地配線はシールド導電体膜11bとハンダで接続されている。増幅回路19に集積化された増幅回路の電極は、回路基板18の表面及び内部に埋め込まれた内部配線やスルーホール(ビア)を介して、回路基板18の裏面のハンダボール等の接続電極に電気的に接続されている。この増幅回路19の実装構造(パッケージ)を図32に示すように、箱型の絶縁容器(12k,12m,12o)の下部に設けられた収納部に収納する。実装構造(パッケージ)が収納されたら、図32に示すように、絶縁層12nで収納部の下面に蓋をすれば、第7の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置が完成する。

【0156】
図32に示すように、第7の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置では、信号を入出力する共通電極17cの上下に上側高分子フィルム13a及び下側高分子フィルム13bの極性を逆向きに貼り合わせ、更に複数の上側ギャップ絶縁層14a,14b,14c,…、複数の下側ギャップ絶縁層14p,14q,14r,…、上側振動電極15b及びシールド導電体膜11bを積層しており,静電容量が図20に示した第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の2倍となる。

【0157】
第7の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置(ノイズキャンセリングフォン)では、音声を受ける側が互いに逆方向になるように、第1の受圧素子M1及び第1の受圧素子Mを共通電極17c両面にそれぞれ貼り付け、第1の受圧素子M1及び第2の受圧素子Mからの出力を同一の増幅回路19で取り込むことができるので、第1の受圧素子M1及び第2の受圧素子Mの信号の極性が反転し、ノイズを除去できる。これにより,第7の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置(ノイズキャンセリングフォン)の回路の簡略化が可能になる。

【0158】
なお、第7の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の第2の受圧素子M2が、エレクトレット絶縁フィルム及び振動電極絶縁フィルムを省略しているが、第1の受圧素子M1と同様に、エレクトレット絶縁フィルム及び振動電極絶縁フィルムを備えるようにしてもよい。又、共通電極17cと上側高分子フィルム13a、或いは共通電極17cと下側高分子フィルム13bとは、金属学的に接合していてもよく、接着剤等により接着されていてもよく、或いは、機械的な圧力で単に接している状態でもよい。

【0159】
(第8の実施の形態)
第5~第7の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、マイクロフォンだけではなく、音響の送信も可能であるため、図20や図32の構造のままで音響プローブ(超音波プローブ)としても使用可能である。又、第5及び第7の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、すべて薄いフィルムにより形成可能であるため、柔軟に変形が可能である。

【0160】
このため、例えば、図33のように測定対象1aの表面が曲面であったとしても、それにフィットするように、第8の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置2aを貼り付けて、音響(超音波)Φを送受信することが可能である。例えば、第8の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置2aを電子聴診器として用いれば、測定対象1aとしての人体と電子聴診器(フィルム状機械電気変換装置)2aとを密着させることができるので聴診器2aの接触状態による受信感度のばらつきが低減する。又、この聴診器2aで超音波Φの送受信も行うことができ、体内組織の音速や減衰率を測定することにより、打診や触診を兼ねることもできる。

【0161】
又、図34のように、第8の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置2bを、お椀状に変形させれば、測定対象1bから発信された超音波Φを収束させることができる。これは水を接触媒体にして超音波測定を行う水浸法と呼ばれる手法で圧電素子を用いて行われている。しかし、空中超音波の送受信では、受信感度が低いため、強い超音波を発生させる必要があり、圧電素子は強い共振により超音波を発生させている。この場合、図31のような構造の素子を製造することができない。

【0162】
しかし、第8の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置2bは、図22に示したように、感度が100kHz程度まで維持されるため、共振を利用しなくても空中超音波の送受信が可能である。

【0163】
(第9の実施の形態)
第8の実施の形態の説明でも述べたように、第5~第7の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、マイクロフォンだけではなく、音響の送信も可能であるため、図20や図32の構造のままで、空中超音波の送受信する音響プローブ(超音波プローブ)としても使用可能である。しかし、圧電素子より誘電率が低いため、受圧面の面積が同じ圧電超音波プローブと比較すると、静電容量が小さいことが問題となる。

【0164】
本発明の第9の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、これを解決するために、図35に示すように、複数の高分子フィルム13a,13bを積層して、コンデンサマイクロフォンや超音波プローブを実現する。

【0165】
図35は、図32に示した第7の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置と要部が、実質的に同一な構造であるが、共通電極17cの上に設けられる第1の受圧素子M1は、上側振動層(第1の振動層)15uと、上側振動層(第1の振動層)15uの振動面に、複数の上側ギャップ絶縁層(第1のギャップ絶縁層)14a,14b,14c,…の積層構造で厚みが定義されたギャップ部を介して、対向した上側エレクトレット層(第1のエレクトレット層)13aと、上側エレクトレット層(第1のエレクトレット層)13aに接した共通電極17cとを備える(上側振動層15uは、図32に示すように、導電体からなる上側振動電極15bと上側振動電極15bの下面の振動電極絶縁フィルム15aとを備える。)。共通電極17cの下に設けられる第2の受圧素子M2は、下側振動層(第2の振動層)15vと、下側振動層(第2の振動層)15vの振動面に、複数の下側ギャップ絶縁層(第2のギャップ絶縁層)14p,14q,14r,…の積層構造で厚みが定義されたギャップ部を介して、対向した下側エレクトレット層(第2のエレクトレット層)13bと、下側エレクトレット層13bに接した共通電極17cとを備える。第1の受圧素子M1及び第2の受圧素子M2は、共通電極17cを出力端子としている。

【0166】
図35のように信号を入出力する共通電極17cの上下に第1の高分子フィルム13aと第2の高分子フィルム13bとを、極性が逆向きになるように貼り合わせ、更に、複数の第1のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…、複数の第2のギャップ絶縁層14p,14q,14r,…、第1の振動層15u、第2の振動層15vを積層することにより,図20に示した第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の構造と比較して同じ受圧面で2倍の静電容量を得ることができる。

【0167】
空中超音波送受信用の圧電超音波プローブは径10mmの場合、2000pF程度の静電容量がある。これに対して、図35の構造で電極層、ギャップ層を構成するフィルムの厚さをいずれも5μm、高分子フィルムのフィルムの厚さを10μmとし、高分子フィルム層とギャップ層の比誘電率が3の場合、図35に示す第9の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の厚さは70μmで、静電容量は200pFである。

【0168】
更に、図36に示すように、複数の高分子フィルム13a,13b,13c,13d,…を必要ユニット数(=n:nは2以上の整数)を積層して貼り合わせれば、大幅に静電容量を増すことができる。図36では、図35に示した第1の受圧素子M1及び第2の受圧素子M2の積層構造の下に、第3の受圧素子M3、第4の受圧素子M4,…を積層している。

【0169】
即ち、図36では、第1の共通電極17cの上に設けられる第1の受圧素子M1は、第1の振動層15uと、第1の振動層15uの振動面に、複数の第1のギャップ絶縁層14a,14b,14c,…の積層構造で厚みが定義されたギャップ部を介して、対向した第1の高分子フィルム13aと、第1の高分子フィルム13aに接した背面電極となる第1の共通電極17cとを備える。第1の共通電極17cの下に設けられる第2の受圧素子M2は、振動層(第2の共通電極)15vと、振動層(第2の共通電極)15vの振動面に、複数の第2のギャップ絶縁層14p,14q,14r,…の積層構造で厚みが定義されたギャップ部を介して、対向した第2の高分子フィルム13bと、第2の高分子フィルム13bに接した背面電極となる第1の共通電極17cとを備える。第1の受圧素子M1及び第2の受圧素子M2は、第1の共通電極17cを出力端子としている。

【0170】
第2の受圧素子M2の下には、振動電極となる第2の共通電極膜15vと、第2の共通電極膜15vの振動面に、複数の第3のギャップ絶縁層14s,14t,14u,…の積層構造で厚みが定義されたギャップ部を介して、対向した第3の高分子フィルム13cと、第3の高分子フィルム13cに接した背面電極となる第3の共通電極膜17dとを備える第3の受圧素子M3が設けられている。第3の共通電極膜17dの下に設けられる第4の受圧素子M4は、振動層(第4の共通電極)15wと、振動層(第4の共通電極)15wの振動面に、複数の第4のギャップ絶縁層14v,14w,14x,…の積層構造で厚みが定義されたギャップ部を介して、対向した第4の高分子フィルム13dと、第4の高分子フィルム13dに接した背面電極となる第3の共通電極膜17dとを備える。第3の受圧素子M3及び第4の受圧素子M4は、第3の共通電極膜17dを共通の出力端子としている。第4の受圧素子M4の下に、……。

【0171】
このようにして、図36においてユニット数n=10枚積層すれば、圧電超音波プローブと同じ静電容量となる。又、空中超音波送受信用の圧電超音波プローブは、保護ケースに収められており、その厚さは10mm程度が一般的である。一方、第9の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置においては、ユニット数n=10枚積層した場合であってもその全体の厚さは、700μm程度であり,大幅に薄いフィルム状機械電気変換装置を得ることができる。又、式(8)等を用いて、第5の実施の形態で説明したとおり、第9の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、送受信感度が高く、しかも広帯域となる。

【0172】
(第10の実施の形態)
第5の実施の形態で説明したとおり、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の受圧面の面積が小さすぎると静電容量が不足して、感度が低下してしまう。ギャップ厚さや高分子フィルムの厚さと誘電率に依存するが、受圧面の面積は、少なくとも1mm以上必要である、一方、受圧面の面積が大きすぎると、ギャップ絶縁層14a,14b,14c,…が音によりばたついて出力のばらつきが増加する。更に,積層しているギャップ絶縁層14a,14b,14c,…のずれの増大によりギャップ絶縁層14a,14b,14c,…間の空気ギャップ幅が増大して放電を生じてしまい、感度が劣化するので、ギャップ絶縁層14a,14b,14c,…の厚さや測定する音の周波数帯域に依存するが、受圧面の面積は少なくとも100cm以下であることが好ましい。しかし、図37に示す第10の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置のように、フィルム状機械電気変換装置の受感部を多数のエレメントMij-1, Mij, Mij+1,…(i=1~m;j=1~n:m,nはそれぞれ2以上の正の整数である。)に分割し、エレメントMij-1, Mij, Mij+1,…間はフィルムがずれないように接着した場合は、エレメントMij-1, Mij, Mij+1,…の1つの受圧面の面積が上記の範囲であれば、フィルム状機械電気変換装置フィルム全体の面積の上限は、上記の限りではない。

【0173】
図37に示すように、本発明の第10の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、無負荷時において平坦な振動面を有する振動電極15mと、振動電極15mの振動面に、第1層のギャップ絶縁層141、第2層のギャップ絶縁層142及び第3層のギャップ絶縁層143の積層構造で厚みを定義したギャップ部を介して対向した平坦な第1主面及びこの第1主面に平行に対向する第2主面で定義され、分極方向を揃えた高分子フィルム13mと、高分子フィルム13mの第2主面に接した背面電極17mとを備える。振動電極15mの上には、振動電極15mを保護する振動層保護膜34が設けられている。第1層のギャップ絶縁層141、第2層のギャップ絶縁層142、第3層のギャップ絶縁層143及び高分子フィルム13mの厚さは、1~50μm程度、好ましくは1~25μm程度、更に好ましくは5~12μm程度に設定すればよい。

【0174】
図37の中央のエレメントMijに着目して説明すれば、本発明の第10の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置を構成するエレメントMijは、第1層のギャップ絶縁層141ijと高分子フィルム13mとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第1スペーサ(図示省略)が挿入され、第1層のギャップ絶縁層141ijと第2層のギャップ絶縁層142ijとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第2スペーサ(図示省略)が挿入され、第2層のギャップ絶縁層142ijと第3層のギャップ絶縁層143ijとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第3スペーサ(図示省略)が挿入され、振動電極15mと高分子フィルム13mとの間に定義されるギャップの間隔を制御している。第3層のギャップ絶縁層143ijと振動電極15mとは密着しており、第3層のギャップ絶縁層143ijは、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の振動電極絶縁フィルムと等価な機能をなしている。このように、振動電極15mと高分子フィルム13mとの間に、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなるスペーサ(図示省略)を介して複数のギャップ絶縁層141ij,142ij,143ij,…を積層して挿入することにより、第3層のギャップ絶縁層143ijと第2層のギャップ絶縁層142ijとの間、第2層のギャップ絶縁層142ijと第1層のギャップ絶縁層141ijとの間、第1層のギャップ絶縁層141ijと高分子フィルム13mとの間に、それぞれマイクロギャップを定義し、エレメントMijにおけるそれぞれの間隔を制御している。

【0175】
第1~第3スペーサとなる微粒子の粒径を100μm以下とすれば、それぞれのマイクロギャップを定義する面の実効的な表面粗さRaeffを、第3層のギャップ絶縁層143ijの下面と高分子フィルム13mの上面との間に、それぞれのエレメント毎に定義されるエレメント空間のギャップ幅の1/10以下にすることができる(実効的な表面粗さRaeffには負荷時の撓みが含まれる。)。しかしながら、柔軟で形状の自由度が高いフィルム状機械電気変換装置を実現するためには、第1~第3スペーサとなる微粒子の粒径を10nm~10μmとすれば、全体の厚さがより薄くなるので好ましく、更に、10nm~5μmの範囲で、より10nmに近い粒径が望ましいことは勿論である。背面電極17mと高分子フィルム13mとは、金属学的に接合していてもよく、接着剤等により接着されていてもよく、或いは、機械的な圧力で単に接している状態でもよい。

【0176】
高分子フィルム13mの底面には、絶縁材料からなるスペーサフィルム31が貼り付けられ、スペーサフィルム31の底面には、導電性(金属製)のシールド導電体膜32が設けられ、シールド導電体膜32の底面には、シールド導電体保護膜33が設けられている。シールド導電体保護膜33とシールド導電体膜32とでシールド板を構成している。スペーサフィルム31及びシールド導電体保護膜33の厚さは、5~150μm程度、好ましくは50~100μm程度の値に設定可能である。図37の背面電極17mの下方の左側端部近傍に示すように、スペーサフィルム31の一部に設けられた空洞部には、増幅回路19が収納されている。増幅回路19は、背面電極17mの左側端部近傍において、回路基板18の上に搭載(マウント)されている。回路基板18にはスルーホール(ビア)が設けられ、スルーホール(ビア)を介して、増幅回路19は、背面電極17mの左側端部近傍に融着されたハンダを介して、背面電極17mに電気的に接続されている。図示を省略しているが、増幅回路19からの接地配線はシールド導電体膜32とハンダで接続されている。送信用フィルム状機械電気変換装置においては、増幅回路19は入力された電気信号を増幅して、振動電極15mと背面電極17m間に印加する。一方、受信用フィルム状機械電気変換装置においては、増幅回路19は、振動電極15mと背面電極17m間に、振動電極15mの変位に伴い誘導される電荷を増幅して測定する。送信用フィルム状機械電気変換装置においては、振動電極15mは、振動電極15mと背面電極17m間に増幅回路19を介して電気信号を入力することにより振動する。一方、受信用フィルム状機械電気変換装置においては、振動電極15mは、外部から音響を受けることにより振動する。

【0177】
例えば、図37において、厚さ100μmのPVCフィルムを振動層保護膜34とし、厚さ10μmのAl膜を振動電極15m、背面電極17m及びシールド導電体膜32とし、厚さ50μmのPTFEフィルムをスペーサフィルム31とし、厚さ10μmのPFAフィルムを高分子フィルム13mとし、厚さ5μmの3枚のPFAフィルムをそれぞれ第1層のギャップ絶縁層141、第2層のギャップ絶縁層142及び第3層のギャップ絶縁層143とすることができる。第3層のギャップ絶縁層143に振動電極15mをAl蒸着することにより、振動電極15mと第3層のギャップ絶縁層143とが密着する。同様に、高分子フィルム13mに背面電極17mをAl蒸着することにより、高分子フィルム13mと背面電極17mとが密着し、スペーサフィルム31にシールド導電体膜32をAl蒸着することにより、スペーサフィルム31とシールド導電体膜32とが密着する。

【0178】
図37に示す第10の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置において、エレメントMij-1とエレメントMijとの間、エレメントMijとエレメントMij+1との間は熱圧着などで接着しているので、エレメントMij-1, Mij, Mij+1,…の部分よりも厚さが薄くなっている。高分子フィルム13mは、エレメントMij-1, Mij, Mij+1,…に相当する領域上部で針電極によるコロナ放電を生じさせて高分子フィルム13mを帯電させ,エレメントMij-1, Mij, Mij+1,…にそれぞれ、エレクトレッ領域を生じさせる。

【0179】
又、第10の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の場合、エレメントMij-1, Mij, Mij+1,…の高分子フィルム13mとして、PZTやLiNbO3のような強誘電体を使用することも可能である。しかし、その場合、柔軟性は低下し、エレメントMij-1とエレメントMijとの間、エレメントMijとエレメントMij+1との間等、エレメント間でのみ変形可能となる。

【0180】
(第11の実施の形態)
図38~図40に示すように、信号を出力する内部電極膜17nと、シールドとして機能する外部電極膜15p,15qに対し、それぞれマトリクス状にL字型の空隙部を配列したパターニングを施すことにより、2次元的に配置されたエレメントMij-1, Mij, Mij+1,…(i=1~m;j=1~n:m,nはそれぞれ2以上の正の整数である。)間にエレメント分離領域Jrs-1, Jrs, Jrs+1,…(r,sは、配線のトポロジーで決まる整数である。)が生じる。図40に示すように、内部電極膜17nのパターンと、外部電極膜15p,15qのパターンとでは、L字型の空隙部の方向及び位置が互いに異なるが、信号を出力する内部電極膜17nには増幅回路19が接続され、シールドとして機能する外部電極膜15p,15qは接地されている。

【0181】
エレメント分離領域Jrs-1, Jrs, Jrs+1,…を設けることにより、薄膜を積層した際に、エレメントMij-1, Mij, Mij+1,…のそれぞれにおいて、垂直方向に配列された金属配線間の浮遊容量を低減できる。又、高分子フィルムのみからなるエレメント分離領域Jrs-1, Jrs, Jrs+1,…において、エレメントMij-1, Mij, Mij+1,…をそれぞれ積層構造により構成する複数の薄膜間を接着しやすくなる。

【0182】
図39は、図38のA-A方向から見た断面図であり、エレメントM21, M22, M23を例示的に示すが、エレメントM21の左側の高分子フィルムのみからなるエレメント分離領域J11、エレメントM21とエレメントM22との間の高分子フィルムのみからなるエレメント分離領域J32、エレメントM22とエレメントM23との間の高分子フィルムのみからなるエレメント分離領域J34、エレメントM23の右側の高分子フィルムのみからなるエレメント分離領域J36は、熱圧着などで接着可能となるので、エレメントM21, M22, M23,…の部分よりも厚さが薄くなっている。

【0183】
図39の断面図に示すように、本発明の第11の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、それぞれのエレメントM21, M22, M23,…の構造は、図32に示した第7の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置、或いは図35に示した第9の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置と類似しており、共通背面電極として機能する内部電極膜17nの上に設けられるエレメントMij-1, Mij, Mij+1,…のそれぞれの上側エレメントは、無負荷時において平坦な振動面を有する上側振動電極15pと、上側振動電極15pの振動面に、第1層の上側ギャップ絶縁層141p、第2層の上側ギャップ絶縁層142p及び第3層の上側ギャップ絶縁層143pの積層構造で厚みを定義したギャップ部を介して対向した平坦な第1主面及びこの第1主面に平行に対向する第2主面で定義され、分極方向を揃えた上側高分子フィルム13pと、上側高分子フィルム13pの第2主面に接した背面電極として機能する内部電極膜17nとを備える。上側振動電極15pの上には、上側振動電極15pを保護する上側振動層保護膜34pが設けられている。

【0184】
一方、内部電極膜17nの下に設けられるエレメントM21, M22, M23,…のそれぞれの下側エレメントは、無負荷時において平坦な振動面を有する下側振動電極15qと、下側振動電極15qの振動面に、第1層の下側ギャップ絶縁層141q、第2層の下側ギャップ絶縁層142q及び第3層の下側ギャップ絶縁層143qの積層構造で厚みを定義したギャップ部を介して対向した平坦な第1主面及びこの第1主面に平行に対向する第2主面で定義され、分極方向を揃えた下側高分子フィルム13qと、下側高分子フィルム13qの第2主面に接した背面電極として機能する内部電極膜17nとを備える。下側振動電極15qの下には、下側振動電極15qを保護する下側振動層保護膜34qが設けられている。第1層の上側ギャップ絶縁層141p、第2層の上側ギャップ絶縁層142p、第3層の上側ギャップ絶縁層143p及び上側高分子フィルム13pの厚さは、1~50μm程度、好ましくは1~25μm程度、更に好ましくは5~12μm程度に設定すればよく、第1層の下側ギャップ絶縁層141q、第2層の下側ギャップ絶縁層142q、第3層の下側ギャップ絶縁層143q及び下側高分子フィルム13qの厚さは、1~50μm程度、好ましくは1~25μm程度、更に好ましくは5~12μm程度に設定すればよい。

【0185】
図39の中央のエレメントM22に着目して説明すれば、本発明の第11の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置を構成するエレメントM22は、第1層の上側ギャップ絶縁層141p22と上側高分子フィルム13pとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第1スペーサ(図示省略)が挿入され、第1層の上側ギャップ絶縁層141p22(図39においては、エレメントM22の内部構造を示す22の添え字を省略しているが、図37と同様な関係である。)と第2層の上側ギャップ絶縁層142p22との間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第2スペーサ(図示省略)が挿入され、第2層の上側ギャップ絶縁層142p22と第3層の上側ギャップ絶縁層143p22との間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第3スペーサ(図示省略)が挿入され、上側振動電極15pと上側高分子フィルム13pとの間に定義されるギャップの間隔を制御している。第3層の上側ギャップ絶縁層143p22と上側振動電極15pとは密着しており、第3層の上側ギャップ絶縁層143p22は、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の振動電極絶縁フィルムと等価な機能をなしている。このように、上側振動電極15pと上側高分子フィルム13pとの間に、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなるスペーサ(図示省略)を介して複数の上側ギャップ絶縁層141p22,142p22,143p22,…を積層して挿入することにより、第3層の上側ギャップ絶縁層143p22と第2層の上側ギャップ絶縁層142p22との間、第2層の上側ギャップ絶縁層142p22と第1層の上側ギャップ絶縁層141p22との間、第1層の上側ギャップ絶縁層141p22と上側高分子フィルム13pとの間に、それぞれマイクロギャップを定義し、エレメントM22におけるそれぞれの間隔を制御している。

【0186】
第1~第3スペーサとなる微粒子の粒径を100μm以下とすれば、それぞれのマイクロギャップを定義する面の実効的な表面粗さRaeffを、第3層の上側ギャップ絶縁層143p22の下面と上側高分子フィルム13pの上面との間に、それぞれのエレメント毎に定義されるエレメント空間のギャップ幅の1/10以下にすることができる(実効的な表面粗さRaeffには負荷時の撓みが含まれる。)。しかしながら、柔軟で形状の自由度が高いフィルム状機械電気変換装置を実現するためには、第1~第3スペーサとなる微粒子の粒径を10nm~10μmとすれば、全体の厚さがより薄くなるので好ましく、更に、10nm~5μmの範囲で、より10nmに近い粒径が望ましいことは勿論である。

【0187】
同様に、第1層の下側ギャップ絶縁層141q22と下側高分子フィルム13qとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第1スペーサ(図示省略)が挿入され、第1層の下側ギャップ絶縁層141q22と第2層の下側ギャップ絶縁層142q22との間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第2スペーサ(図示省略)が挿入され、第2層の下側ギャップ絶縁層142q22と第3層の下側ギャップ絶縁層143q22との間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第3スペーサ(図示省略)が挿入され、下側振動電極15qと下側高分子フィルム13qとの間に定義されるギャップの間隔を制御している。第3層の下側ギャップ絶縁層143q22と下側振動電極15qとは密着しており、第3層の下側ギャップ絶縁層143q22は、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の振動電極絶縁フィルムと等価な機能をなしている。このように、下側振動電極15qと下側高分子フィルム13qとの間に、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなるスペーサ(図示省略)を介して複数の下側ギャップ絶縁層141q22,142q22,143q22,…を積層して挿入することにより、第3層の下側ギャップ絶縁層143q22と第2層の下側ギャップ絶縁層142q22との間、第2層の下側ギャップ絶縁層142q22と第1層の下側ギャップ絶縁層141q22との間、第1層の下側ギャップ絶縁層141q22と下側高分子フィルム13qとの間に、それぞれマイクロギャップを定義し、エレメントM22におけるそれぞれの間隔を制御している。

【0188】
第1~第3スペーサとなる微粒子の粒径を100μm以下とすれば、それぞれのマイクロギャップを定義する面の実効的な表面粗さRaeffを、下側高分子フィルム13qの下面と第3層の下側ギャップ絶縁層143q22の上面との間に、それぞれのエレメント毎に定義されるエレメント空間のギャップ幅の1/10以下にすることができる(実効的な表面粗さRaeffには負荷時の撓みが含まれる。)。しかしながら、柔軟で形状の自由度が高いフィルム状機械電気変換装置を実現するためには、第1~第3スペーサとなる微粒子の粒径を10nm~10μmとすれば、全体の厚さがより薄くなるので好ましく、更に、10nm~5μmの範囲で、より10nmに近い粒径が望ましいことは勿論である。内部電極膜17nと上側高分子フィルム13pとは、或いは、内部電極膜17nと下側高分子フィルム13qとは、金属学的に接合していてもよく、接着剤等により接着されていてもよく、或いは、機械的な圧力で単に接している状態でもよい。

【0189】
第11の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置においては、このフィルム状機械電気変換装置を変形させずに平面状態で使用する場合、フィルム状機械電気変換装置を構成するフィルムのずれを懸念する必要はない。そのため,エレメントM22-1, M22, M22+1,…の接着を省略し、高分子フィルムのみからなるエレメント分離領域Jrs-1, Jrs, Jrs+1,…において、高分子フィルム13p,13qによる静電力だけでフィルムを吸着させて使用することができる。

【0190】
図38~図40に示す第11の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、エレメントM22-1, M22, M22+1,…の各電極層15p,15q,17nが、それぞれ2次元方向で何らかの形で導通していれば,フィルム状機械電気変換装置間の一部を切断してもフィルム状機械電気変換装置として動作する。したがって、図38~図40のような構造で大面積のフィルム状機械電気変換装置フィルムを製造した後、使用状況(被測定対象物の形状)に応じて図41(a)のようにエレメント間を切断して平面的な形状を変更することが可能である。そして,使用箇所(被測定対象物)に接着する際に、図41(b)のように切断面を絶縁接着材51によりシーリングすれば、被測定対象物の形状に適合した任意の平面形状に加工して、フィルム状機械電気変換装置を使用することができる。

【0191】
(第12の実施の形態)
図38~図40に示す2次元的に配列されたエレメントMij-1, Mij, Mij+1,…の内部電極膜17nを、ランダムアクセス可能なように、切り離して、多数のフィルム状機械電気変換装置アレイを構成すれば、音圧分布が測定可能な2次元センサ(音響イメージセンサ)としてのフィルム状機械電気変換装置ができる。

【0192】
本発明の第12の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置(音響イメージセンサ)は、図42に示すように、センサアレイ部71と周辺回路部(72,73,74,75,77)とを同一の高分子フィルム上に集積化している。センサアレイ部71には、2次元マトリクス状に多数のエレメントXij(i=1~m;j=1~n:m,nはそれぞれ整数である。)が配列されており、方形状の音圧分布測定領域を構成している。そして、このセンサアレイ部71の左辺部にはタイミング発生回路74を介して垂直シフトレジスタ(垂直走査回路)73が、下辺部には水平シフトレジスタ(水平走査回路)72が設けられ、センサアレイ部71の右辺部の下辺側にはバイアス発生回路77が設けられている。図42では、i行j列のエレメントXijにのみ、その内部構造を例示しているが、それぞれのエレメントX11~X1m;X21~X2m;…;Xi1~Xim;…;Xn1~Xnmは、i行j列のエレメントXijと同様に、音圧検出素子D11~D1m;D21~D2m;…;Di1~Dim; …;Dn1~Dnm及び増幅回路(電荷読み出し用バッファアンプ)A11~A1m;A21~A2m;…;Ai1~Aim;…;An1~Anmを備える。音圧検出素子Dij(i=1~m;j=1~n:m,nはそれぞれ整数である。)は、図43に示すように、振動電極15mと、振動電極15mの振動面に、第1層のギャップ絶縁層141、第2層のギャップ絶縁層142及び第3層のギャップ絶縁層143の積層構造で厚みを定義したギャップ部を介して対向した平坦な第1主面及びこの第1主面に平行に対向する第2主面で定義され、分極方向を揃えた高分子フィルム13mと、高分子フィルム13mの第2主面に、エレメントXij-1, Xij, Xij+1,…の配列に対応して、個別に設けられた背面電極17ij-1, 17ij, 17ij+1,…とを備える。振動電極15mの上には、振動電極15mを保護する振動層保護膜34が設けられている。

【0193】
図42に示すタイミング発生回路74及びタイミング発生回路74により駆動される垂直シフトレジスタ(垂直走査回路)73、並びに水平シフトレジスタ(水平走査回路)72によってセンサアレイ部71内のエレメントXijが順次走査され、エレメント信号の読み出しが実行される。即ち、本発明の第12の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置では、センサアレイ部71を各エレメント行X11~X1m;X21~X2m;…;Xi1~Xim;…;Xn1~Xnm単位で垂直方向に走査することにより、各エレメント行X11~X1m;X21~X2m;…;Xi1~Xim;…;Xn1~Xnmのエレメント信号を各エレメント列X11~Xn1;X12~Xn2;…;X1j~Xnj;…;X1m~Xnm毎に設けられた垂直信号線Bj-1, Bj, Bj+1,…(簡単化のために図42では、センサアレイ部71のj列目の垂直信号線Bjのみを図示を省略している。)によってエレメント信号を読み出す構成となっている。

【0194】
図42に示したように、センサアレイ部71のj列目の垂直信号線Bjには、共通の負荷となる定電流トランジスタTLNjが接続され,例えばi行j列目の増幅回路Aijと,定電流トランジスタTLNjとによって,ソースフォロワ回路が形成され、ソースフォロワ回路の出力Voutjがj列目のカラム処理回路に読み出される。図示を省略しているが、他の列の垂直信号線B1,B2,・・・・・,Bj-1,Bj+1,・・・・・,Bmにも同様に、共通の負荷となる定電流トランジスタTLN1,TLN2,・・・・・,TLNj-1,TLNj+1,・・・・・,TLNmがそれぞれ接続されてソースフォロワ回路が形成され、ソースフォロワ回路の出力Vout1,Vout2,・・・・・,Voutj-1,Voutj+1,・・・・・,Voutmが、それぞれの列のカラム処理回路に読み出される。

【0195】
各エレメントX11~X1m;X21~X2m;…;Xi1~Xim;…;Xn1~Xnmからの信号読み出しをするように、センサアレイ部71の下段(出力側)には、信号処理部75が設けられている。センサアレイ部71から垂直信号線Bj-1, Bj, Bj+1,…を介して読み出されたエレメント列X11~Xn1のエレメント信号は、この信号処理部75の第1列カラム処理回路に順次入力され、信号処理が施される。同様に、エレメント列X12~Xn2のエレメント信号は、この信号処理部75の第2列カラム処理回路に順次入力され、エレメント固有ノイズの除去処理が施され、…、エレメント列X1j~Xnjのエレメント信号は、この信号処理部75の第j列カラム処理回路に順次入力され、信号処理が施される。又、エレメント列X1m~Xnmのエレメント信号は、この信号処理部75の第m列カラム処理回路に順次入力され、信号処理が施される。

【0196】
図43の中央のエレメントXij(音圧検出素子Dij)に着目して断面構造を説明すれば、本発明の第12の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置(音響イメージセンサ)を構成する音圧検出素子Dijは、第1層のギャップ絶縁層141ijと高分子フィルム13mとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第1スペーサ(図示省略)が挿入され、第1層のギャップ絶縁層141ijと第2層のギャップ絶縁層142ijとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第2スペーサ(図示省略)が挿入され、第2層のギャップ絶縁層142ijと第3層のギャップ絶縁層143ijとの間は、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなる第3スペーサ(図示省略)が挿入され、振動電極15mと高分子フィルム13mとの間に定義されるギャップの間隔を制御している。第3層のギャップ絶縁層143ijと振動電極15mとは密着しており、第3層のギャップ絶縁層143ijは、第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置(音響イメージセンサ)の振動電極絶縁フィルムと等価な機能をなしている。このように、振動電極15mと高分子フィルム13mとの間に、粒径が10nm~40μmの絶縁体の微粒子からなるスペーサ(図示省略)を介して複数のギャップ絶縁層141ij,142ij,143ij,…を積層して挿入することにより、第3層のギャップ絶縁層143ijと第2層のギャップ絶縁層142ijとの間、第2層のギャップ絶縁層142ijと第1層のギャップ絶縁層141ijとの間、第1層のギャップ絶縁層141ijと高分子フィルム13mとの間に、それぞれマイクロギャップを定義し、音圧検出素子Dijにおけるそれぞれの間隔を制御している。

【0197】
第1~第3スペーサとなる微粒子の粒径を100μm以下とすれば、それぞれのマイクロギャップを定義する面の実効的な表面粗さRaeffを、第3層のギャップ絶縁層143ijの下面と高分子フィルム13mの上面との間に、それぞれのエレメント毎に定義されるエレメント空間のギャップ幅の1/10以下にすることができる(実効的な表面粗さRaeffには負荷時の撓みが含まれる。)。しかしながら、柔軟で形状の自由度が高いフィルム状機械電気変換装置を実現するためには、第1~第3スペーサとなる微粒子の粒径を10nm~10μmとすれば、全体の厚さがより薄くなるので好ましく、更に、10nm~5μmの範囲で、より10nmに近い粒径が望ましいことは勿論である。互いに分離して設けられた背面電極17ij-1, 17ij, 17ij+1,…のそれぞれと、高分子フィルム13mとは、金属学的に接合していてもよく、接着剤等により接着されていてもよく、或いは、機械的な圧力で単に接している状態でもよい。

【0198】
高分子フィルム13mの底面には、絶縁材料からなるスペーサフィルム31が貼り付けられ、エレメントXij-1, Xij, Xij+1,…の配列に対応して、スペーサフィルム31には、順に空洞部が設けられ、空洞部にはそれぞれ、増幅回路(電荷読み出し用バッファアンプ)Aij-1, Aij, Aij+1,…が収納されている。増幅回路Aij-1, Aij, Aij+1,…は、エレメントXij-1, Xij, Xij+1,…のそれぞれの背面電極17ij-1, 17ij, 17ij+1,…の下面に接合(搭載)された回路基板18ij-1, 18ij, 18ij+1,…の上に搭載(マウント)されている。回路基板18ij-118ij, 18ij+1,…のそれぞれにはスルーホール(ビア)が設けられ、それぞれのスルーホール(ビア)を介して、増幅回路Aij-1, Aij, Aij+1,…は、背面電極17ij-1, 17ij, 17ij+1,…に融着されたハンダボール等の接続手段を介して、背面電極17ij-1, 17ij, 17ij+1,…に、それぞれ独立して電気的に接続されている。

【0199】
スペーサフィルム31の底面には、導電性(金属製)のシールド導電体膜32が設けられ、シールド導電体膜32の底面には、シールド導電体保護膜33が設けられている。シールド導電体保護膜33を介して、紙面に垂直方向に垂直信号線Bj-1, Bj, Bj+1,…が、走行し、垂直信号線Bj-1, Bj, Bj+1,…のそれぞれは、対応する列の増幅回路Aij-1, Aij, Aij+1,…に接続されている。垂直信号線Bj-1, Bj, Bj+1,…を被覆するように、シールド導電体保護膜33の下面には層間絶縁膜38が設けられ、この層間絶縁膜38を介して、増幅回路Aij-1, Aij, Aij+1,…に直交するように、リセット信号配線Riが設けられている。断面図上では、図示を省略しているが、紙面の奥に。増幅回路Aij-1, Aij, Aij+1,…に直交するように、垂直選択信号配線Siが走行している(図42参照。)。リセット信号配線Ri及び図示を省略した垂直選択信号配線Siを被覆するように、層間絶縁膜38の下面にはパッシベーション膜39が設けられている。

【0200】
図44は、スペーサフィルム31の空洞部にエレメントXij-1, Xij, Xij+1,…の配列に対応して配置される増幅回路Aijの例を示す。図44に示すように、背面電極17ijにはハンダボール等で融着した金属配線を介して、増幅回路Aijを構成する信号読み出しトランジスタ(増幅トランジスタ)TAijのゲート電極と、リセットトランジスタTRijのソース電極が接続されている。リセットトランジスタTRijのドレイン電極及び信号読み出しトランジスタ(増幅トランジスタ)TAijのドレイン電極は、それぞれ電源VDDに接続され、信号読み出しトランジスタ(増幅トランジスタ)TAijのソース電極はエレメント選択用のスイッチングトランジスタTSijのドレイン電極に接続されている。リセットトランジスタTRijのリセットゲート電極に対し、リセット信号配線Riの電位をハイ(H)レベル(Ri=“1”)にして、背面電極17ijに蓄積された電荷をそれぞれ吐き出し、背面電極17ijに蓄積された電荷をリセットする。エレメント選択用のスイッチングトランジスタTSijのソース電極は、j列の垂直信号線Bjに接続され、ゲート電極にはi行の水平ラインの垂直選択信号配線Siの信号タイミング発生回路74に駆動されて垂直シフトレジスタ(垂直走査回路)73から与えられる。

【0201】
図44に示す垂直信号線Bjの場合、増幅回路Aijのエレメント選択用のスイッチングトランジスタTSijのゲート電極にi行の垂直選択信号配線Siをハイレベル(Si=“1”)にする信号を印加してスイッチングトランジスタTSijを導通させ、且つ、定電流トランジスタTLNjのゲート電極に、バイアス発生回路77から一定電圧Vbを印加することにより、信号読み出しトランジスタ(増幅トランジスタ)TAijで増幅された背面電極17ijに蓄積された電荷をソースフォロワ回路の出力Voutjとしてセンサアレイ部71の外に読み出す。

【0202】
図43のように,独立したエレメントXij-1, Xij, Xij+1,…の下部に増幅回路Aij-1, Aij, Aij+1,…を設置し、出力を取り出せば,各エレメントXij-1, Xij, Xij+1,…の音圧検出素子Dij-1, Dij, Dij+1,…からの出力が得られ、音圧分布を知ることができる。

【0203】
又、第12の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置を圧力センサとして使用すれば、10Hz以上の圧力変動分布を測定可能である。これは、例えば木材のような材質分布をもつ材料の振動特性を把握する際に、振動の反射と伝播を可視化することができ、有用な検査ツールとなる。

【0204】
なお、第12の実施の形態の説明においては、2次元アレイ(エリアセンサ)について例示的に説明したが、図42に示した2次元マトリクスにおいて、j=m=1として、複数のエレメントを1次元に配列してもよいことは、上記開示の内容から、容易に理解できるはずである。

【0205】
(第13の実施の形態)
本発明の第13の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置のマイクロギャップは、図45に示すように、独立気泡62bを含む高分子フィルム61b(図46参照。)が、振動電極15bとエレクトレット層13との間に定義されるエレメント空間に挿入されることにより構成される。

【0206】
図45に示すように、本発明の第13の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、振動電極15bと、振動電極15bとの間にエレメント空間を設けるように対向したエレクトレット層13と、エレクトレット層13の下面に接した背面電極17と、エレクトレット層13の上面に設けられたエレクトレット絶縁層64と、振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット絶縁層64との間に設けられた独立気泡62bを含む高分子フィルム61bと、振動電極15bと背面電極17との間に電気的に接続された増幅回路(半導体チップ)19とを備える。振動層15は、無負荷時において平坦な振動面を有する。エレクトレット絶縁層64の上面には複数の突起63が設けられ、高分子フィルム61bは複数の突起63を介してエレクトレット絶縁層64の上面に設けられている。複数の突起63の間隔は、例えば1~3mm程度,複数の突起63の例えば高さ5~20μm,複数の突起63のそれぞれの曲率は、例えば15~35mm程度とすればよい。なお、振動電極絶縁フィルム15aとエレクトレット絶縁層64との間には、図47に示すような、独立気泡62aを含む高分子フィルム61aを挿入してもよい。

【0207】
図45に示すように、独立気泡62bを含む高分子フィルム61bは箱形の絶縁容器(12b,12d)の内部に収納され、振動層15がこの絶縁容器(12b,12d)の蓋部をなし、背面電極17がこの絶縁容器(12b,12d)の底板をなしている。更に、独立気泡62bを含む高分子フィルム61bが、絶縁容器(12b,12d)の内部に収納された構造が、増幅回路19とともに、絶縁材料からなるスペーサフィルム12aを底板とする絶縁容器(12a,12b,12c)に収納されている。振動層15は、この絶縁容器(12a,12b,12c)の蓋部をなしている。絶縁容器(12a,12b,12c)の底部には、導電性(金属製)のシールド導電体膜11bが設けられ、シールド導電体膜11bの底部には、シールド導電体保護膜11aが設けられている。シールド導電体保護膜11aとシールド導電体膜11bとでシールド板11を構成している。スペーサフィルム12a及びシールド導電体保護膜11aの厚さは、5~150μm程度、好ましくは50~100μm程度の値に設定可能である。増幅回路19は、背面電極17の左側端部近傍において、回路基板18の上に搭載(マウント)されている。回路基板18にはスルーホール(ビア)が設けられ、スルーホール(ビア)を介して、増幅回路19は、背面電極17の左側端部近傍に融着されたハンダを介して、背面電極17に電気的に接続されている。図示を省略しているが、増幅回路19からの接地配線はシールド板11のシールド導電体膜11bとハンダで接続されている。

【0208】
図46及び図47に示すような、独立気泡62b,62aを含む高分子フィルム61b,61aのサイズは微粒子の粒径や突起の高さと同じく、電界Eの方向に10nm~40μmの大きさで区切られた空気ギャップを構成するような大きさ及びトポロジーが好ましい。特に、図46に示したタイプは、高分子フィルム61bとしてのPPフィルムを延伸処理することによって、電界Eの方向となる垂直方向は1μm程度、水平方向は100μm程度の独立気泡62bが発泡して、多孔質フィルムとなる。電界Eの方向に10nm~40μmの大きさで区切られた空気ギャップを構成していれば、水平方向(エレクトレットからの電界Eに対して垂直方向)は連続した空間をなすような独立気泡のトポロジーでも構わない。

【0209】
通常、フィルムを突起63の上に積層し静電力がフィルム面に作用すると、フィルムが撓むが、図46及び図47に示すように、独立気泡62b,62aを多く含む高分子フィルム61b,61aのような多孔質体は、突起63に接触している面は大きく撓むものの、撓みは高分子フィルム61b,61a内部で吸収され、突起63に接触していない面はほとんど撓まない。これを利用すれば、振動電極15bの中心線平均粗さRaを振動電極15bの下面とエレクトレット層13の上面との間で定義されるギャップ幅の10分の1以下に抑えながら、突起63によるマイクロフォンの変形を大きくすることが可能となる。このような独立気泡62b,62aを含む多孔質体はポリプロピレン(PP)などの熱可塑性プラスチックに発泡材を添加し、溶融して発砲させ、延伸加工することにより製造できる。

【0210】
第13の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の製造方法は、基本的には、図23~図28に示した第5の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置の製造方法と同様である。即ち:
(a)まず、PVCフィルム等のシールド導電体保護膜11aの上にシールド導電体膜11bとなるアルミニウム(Al)を蒸着し、シールド板11を構成する。このシールド板11を、絶縁材料からなるスペーサフィルム12aの裏面に貼り付ける。更に、スペーサフィルム12aの上面にAlフィルムを貼り付けた後、パターニングして背面電極17を形成する。背面電極17の一部には、図23に示すように、浅い溝部17gを設けておく。そして、図23に示すように、この背面電極17の上面の一部に厚さ25μmのPTFEフィルムを貼り付ける。背面電極17の上にPTFEフィルムを形成した後、図24に示すように、コロナ放電によりPTFEフィルムを帯電させる。

【0211】
(b)そして、図25に示すように、絶縁材料からなるスペーサフィルム12aを底板として、箱の側板として機能する側壁フィルム12b、12dをPTFEフィルムの周りに配置し、箱型の絶縁容器(12a,12b,12d,12e)を組み立てる。この際、庇12eを有する絶縁層12dを背面電極17の一部に設けた浅い溝部17gに嵌め込む。

【0212】
(c)この箱型の絶縁容器(12a,12b,12d,12e)の内部に、厚さ25μmの別のPTFEフィルムをエレクトレット層13の上にエレクトレット絶縁層64として積層する。そして、エレクトレット絶縁層64上面に、スプレーコーティングにより窒化ホウ素の微粒子からなる複数の突起63を形成する。複数の突起63の間隔は、例えば2mm程度,複数の突起63のそれぞれの高さは例えば10μm程度,複数の突起63のそれぞれの曲率は例えば25mm程度とすればよい。そして、図26に示したのと同様に、エレクトレット絶縁層64の上に、複数の突起63を介して、厚さ50μm程度のPTFEフィルム61bを積層した積層構造を収納する。

【0213】
(d)一方、振動電極絶縁フィルム15aとしてのPFAフィルムに、振動電極15bとしてのAlを蒸着して、振動層15を作製する。更に、振動電極15bの上に、PVCフィルムからなる振動層保護膜16を貼り付けた積層構造を、図27に示したのと同様に、絶縁容器(12a,12b,12d,12e)の上蓋として被せる。

【0214】
(e)更に、別途、ボールグリッドアレイ等のように、接続部を基板の底部に有する回路基板18の上に、増幅回路(FET)を集積化した増幅回路19を搭載(マウント)して、増幅回路の実装構造(パッケージ)を用意する。増幅回路19に集積化された増幅回路の電極は、回路基板18の表面及び内部に埋め込まれた内部配線やスルーホール(ビア)を介して、回路基板18の裏面のハンダボール等の接続電極に電気的に接続されている。この増幅回路の実装構造(パッケージ)を図28に示したのと同様に、箱型の絶縁容器(12a,12b,12d,12e)の庇12eの下に収納する。箱型の絶縁容器(12a,12b,12d,12e)の庇12eの下に実装構造(パッケージ)が収納されたら、図20に示したのと同様に、庇12eの下に絶縁層12cを挿入して、実装構造(パッケージ)の格納部分に蓋をすれば、図45に示すような、第13の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置が完成する。

【0215】
なお、上記の(a)~(c)とほぼ同様に、独立気泡62bを含む高分子フィルム61bとして、2軸延伸加工された発泡PPフィルム(厚さ50μm)を用い、これにAlを蒸着して振動電極15bとして準備した後、PTFEフィルム(厚さ25μm)にコロナ放電により負電荷をチャージしてエレクトレット層13とし、別のPTFEフィルム(厚さ25μm)をエレクトレット層13の上にエレクトレット絶縁層64として積層し、高分子フィルム61bを積層すれば、図48に示すような、突起なしのフィルム状機械電気変換装置を製造することができる。

【0216】
図49の破線は、図48に示した突起なしのフィルム状機械電気変換装置の場合、図49の実線は、図45に示した複数の突起63ありのフィルム状機械電気変換装置の場合(突起間隔2mm,突起高さ10μm,突起の曲率25mm)において、それぞれのフィルム状機械電気変換装置に1kHzの音響を照射した場合の出力電圧である。図45に示した複数の突起63ありのフィルム状機械電気変換装置により出力電圧が大幅に向上しており、複数の突起63による変形が出力電圧の大幅な向上に寄与していることが分かる。

【0217】
第13の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置においては、ギャップ幅は75μmであり、複数の突起63のそれぞれの高さを10μmとした場合は、その10分の1を越えているが、高分子フィルム61b内で突起63による撓みが吸収されるため、振動電極15bの中心線平均粗さRaはギャップ幅の10分の1以下に抑えられている。

【0218】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1~第13の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な態様や代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。

【0219】
例えば、マイクロギャップの形態としては、第1~第13の実施の形態に示したもの以外に、図50~54に示したようなものが採用可能である。即ち、図50に示すように、微細なナノ粒子を凝集させた構造でもよく、図50に示す構造にすれば、接触点の直径を極めて小さくすることができる。又、図51に示すように、フィルムの表面粗さによりマイクロギャップを形成した構造でもよく、図51に示す構造にすれば、他の手法より簡便にマイクロギャップを形成できる。しかし、図51に示す構造では、接触点の平均間隔を制御することが困難となる。

【0220】
更に、図52に示すように、ミクロンサイズの粒子の表面にナノ粒子を凝集させた構造でもよく、図52に示す構造にすれば、ギャップ幅をミクロンサイズに広げつつ図50と同じ効果が期待できる。更に、図53に示すように、研磨、エッチングなどにより表面粗さを周期的に変化させた構造でもよく、図53に示す構造にすれば、図51より接触点の平均間隔の制御が容易となる。

【0221】
更に、図54に示すように、プレスにより10μm~の1mm間隔でフィルムに突起を形成し、その上に微粒子を塗布した構造でもよい。図54に示す構造によれば、容易に接触点間隔を広くとることができる。

【0222】
第5の実施の形態の図20、或いは、第7の実施の形態の図32などのフィルム状機械電気変換装置において,透明電極と透明高分子フィルムを使用することにより透明なフィルム状機械電気変換装置を製造できる。例えば、振動層保護膜16、振動電極絶縁フィルム15aやスペーサフィルム12aとしてポリエチレン樹脂などの汎用透明樹脂、高分子フィルム及びギャップ絶縁層14a,14b,14c,としてPFAなどのフッ素透明樹脂、振動電極15b及び背面電極17として、錫(Sn)
をドープした酸化インジウム(In)膜(ITO)、インジウム(In)をドープした酸化亜鉛(ZnO)膜(IZO)、ガリウム(Ga)をドープした酸化亜鉛膜(GZO)、酸化錫(SnO)、導電性高分子膜等の透明電極材料を用いれば,透明フィルム状機械電気変換装置となる。又、柔軟性が劣化するが、高分子フィルムとして、LiNbO,LiTaO,PLZTのような透明な強誘電体を用いることも可能である。

【0223】
同様に、図43に断面構造を示した第12の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置(音響イメージセンサ)に、透明電極と透明高分子フィルムを適用すれば、透明なフィルム状機械電気変換装置(音響イメージセンサ)となる。透明なフィルム状機械電気変換装置(音響イメージセンサ)を実現するためには、増幅回路Aij-1, Aij, Aij+1,…をフィルム状機械電気変換装置(音響イメージセンサ)外縁部に設置し、各エレメントXij-1, Xij, Xij+1,…の内部電極膜(背面電極)17ij-1, 17ij, 17ij+1,…と、対応する増幅回路Aij-1, Aij, Aij+1,…までを導通させるように配線パターンをつくる必要がある。

【0224】
又、第12の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、既に述べたように音響の送受信も可能であるので、例えば、第12の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置をタッチパネルに応用することができる。タッチパネルには様々な方式があるが,次世代のタッチパネルではパネルに指を接触させたとき、その位置を検出するだけでなく、指が接触したことを振動などによって伝えることが求められている。図43に示した第12の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置をタッチパネルに使用すれば、各エレメントXij-1, Xij, Xij+1,…に電気パルス信号を送り,各エレメントXij-1, Xij, Xij+1,…に微小な振動を生じさせ、それによるパネルの振動を再びフィルム状機械電気変換装置(音響イメージセンサ)で測定すれば、指が接触した際のパネルの局所的な振動分布の変化を検出でき,接触を検知できる。更に、その際に各エレメントXij-1, Xij, Xij+1,…に別の電気パルス信号を送り、指が感じることができる大きさの振動を生じさせれば、指が接触したことが伝えられる。指が接触したことを伝える方法としては、圧電素子を用いてパネル上に表面弾性波を発生させる方法があるが、タッチパネルに水滴やゴミなどが付着していると伝播状態が変化するため、正確に振動を伝えられない。又、パネルの取付状態によっても表面弾性波の伝播状態は変化するので、製造時にパネルを製品に組み込む際に注意が必要である。これと比較して図43に示した第12の実施の形態に係るフィルム状機械電気変換装置は、指が触れた場所だけを振動させるので、水滴やゴミ、取付状態の影響はない。

【0225】
なお、第1~第13の実施の形態において、スペーサとなる絶縁体の微粒子の粒径や突起の高さは、10nm~40μmが好ましいと述べたが、窓ガラスに貼り付ける等の柔軟性や形状の自由度が要求されない目的であれば、スペーサとなる絶縁体の微粒子の粒径や突起の高さは、10nm~100μm程度でも構わない。

【0226】
このように、本発明はここでは記載していない様々な態様や実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。

【0227】
本発明の機械電気変換素子及びこの機械電気変換素子を用いた機械電気変換装置は、柔軟で形状の自由度が高く、且つ、感度が高く、より強い音圧に耐えられ、しかも広い周波数帯域で機械的振動を電気信号に変換の可能なので、携帯電話、音響機器、ハイドロフォン,発電素子等の技術分野に利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
37
【図39】
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【図40】
39
【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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