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明細書 :イオンセンサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4853885号 (P4853885)
登録日 平成23年11月4日(2011.11.4)
発行日 平成24年1月11日(2012.1.11)
発明の名称または考案の名称 イオンセンサ
国際特許分類 G01N  27/333       (2006.01)
G01N  27/416       (2006.01)
FI G01N 27/30 331E
G01N 27/46 351B
請求項の数または発明の数 8
全頁数 16
出願番号 特願2010-548538 (P2010-548538)
出願日 平成22年1月28日(2010.1.28)
国際出願番号 PCT/JP2010/051087
国際公開番号 WO2010/087383
国際公開日 平成22年8月5日(2010.8.5)
優先権出願番号 2009019940
優先日 平成21年1月30日(2009.1.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年7月25日(2011.7.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】塚田 啓二
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100080621、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 寿一郎
審査官 【審査官】黒田 浩一
参考文献・文献 特開2008-145123(JP,A)
特開平9-96620(JP,A)
実開昭63-156065(JP,U)
調査した分野 G01N 27/26-27/49
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
第一電極板と、
前記第一電極板に対向して配置され、一つあるいは多数個の開口部を有する第二電極板と、
前記第一電極板と前記第二電極板との間に介装されるとともに、前記第二電極板が有する前記開口部の一側を塞いで、さらに当該開口部一側の端部から前記開口部の内壁面を介して前記第二電極板の外側面に亘って連続して形成されるイオン感応膜と、
被測定溶液のイオン濃度を測定する際に、前記開口部内及び前記第二電極板の外側面に形成されたイオン感応膜のみが前記被測定溶液と接触するように第二電極板を支持するセンサ支持体と、を備え、
前記第一電極板と前記第二電極板との間に介装されたイオン感応膜の厚さと、前記第二電極板の外側面に形成されたイオン感応膜の厚さとが異なるように構成して、前記第一電極板と前記第二電極板との間の電位差を測定することを特徴とするイオンセンサ。
【請求項2】
前記第二電極板が有する一つあるいは多数個の開口部の総面積を、前記第一電極板における前記第二電極板との対向面の面積の半分以上としたことを特徴とする請求項1に記載のイオンセンサ。
【請求項3】
前記第一電極板と前記第二電極板の間に介装された前記イオン感応膜の厚さを、前記第二電極板の外側面に形成された前記イオン感応膜の厚さの少なくても倍以上としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のイオンセンサ。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のイオンセンサを、共通の前記センサ支持体に複数個配設するとともに、当該複数個のイオンセンサがそれぞれ有する各第二電極板間を配線することにより電位が共通となるようにしたこと、あるいは前記各第二電極板を連続した電極板により一体的に形成したことを特徴とするイオンセンサ。
【請求項5】
請求項3に記載のイオンセンサを、共通の前記センサ支持体に複数個配設するとともに、当該複数個のイオンセンサがそれぞれ有する各第二電極板間を配線することにより電位が共通となるようにしたこと、あるいは前記各第二電極板を連続した電極板により一体的に形成したことを特徴とするイオンセンサ。
【請求項6】
前記第一電極板及び前記第二電極板のそれぞれと前記イオン感応膜との間に導電性高分子膜を設けたことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項5の何れか一項に記載のイオンセンサ。
【請求項7】
前記第一電極板及び前記第二電極板のそれぞれと前記イオン感応膜との間に導電性高分子膜を設けたことを特徴とする請求項3に記載のイオンセンサ。
【請求項8】
前記第一電極板及び前記第二電極板のそれぞれと前記イオン感応膜との間に導電性高分子膜を設けたことを特徴とする請求項4に記載のイオンセンサ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液中のイオン濃度を測定するイオンセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
溶液中のイオン濃度を計測するイオンセンサとしてイオン選択性電極があげられ、これは電気化学の分野でも重要かつ広く知られている。20世紀初期からガラスをpH感応膜としたpH電極が知られており、現在では非常に広く使われている。また、イオン感応物質をPVC(ポリ塩化ビニル)などの高分子と可塑剤とともに分散した液膜型イオン選択性電極などが1960年代から使われている。このイオン選択性電極は血液中のKやNaのイオン濃度測定をするセンサとして臨床検査用分析機器などに使われている。これらのイオンセンサについては多くの文献で報告されている(非特許文献1参照)。
【0003】
イオン選択性電極50は、図10に示すように、被測定溶液51にイオン感応膜52を介して接し、イオン選択性電極50内部には基準の内部溶液53があり、電位を計測する電極54が内部に設けられている。内部電極としてはAg/AgCl電極が使われている。
また、内部溶液をなくして直接Ag/AgCl電極にイオン感応膜を形成したイオン選択性電極としてcoated wireが報告されている(非特許文献2参照)。
【0004】
また、内部溶液を固体化してすべてシート状にしたドライケミストリーがあり、たとえば富士写真フィルム株式会社の富士ドライケム(ドライケムは登録商標)などが報告されている(特許文献1参照)。
【0005】
さらにイオンセンサの小型化の試みが多くなされており、FET(電界効果型トランジスタ)のゲートの上にイオン感応膜を形成したISFET(イオン感応性電界型トランジスタ)が報告されている。これにより、各種イオン感応膜を一つのセンサ基板に集積化して多項目のイオンを同時計測できるマルチセンサなどが報告されている(非特許文献3参照)。
【0006】
また、特に近年ではcoated wireなどの完全個体型のイオンセンサにおける不安定性を改善するために、導電性高分子膜をイオン感応膜と複合化したイオンセンサが多く報告されている(非特許文献4)。これは電極材料とイオン感応膜との間でイオンと電子を変換するもので、長期的な電位を安定化するのに効果があることが報告されている。導電性高分子膜にはpolypyrroleや、polythiophene、polyaniline、poly(3,4-ethylenedioxythiophene):PEDOT、poly(3-octylthiophene):POTなどが知られていて、銀や、金、白金、グラシーカーボンなどの電極材料との接触電位を安定化している。ここで、この導電性高分子膜の使い方としては、電極材料とイオン感応膜の間に形成する方法や、イオン感応膜の中に混ぜて用いる方法などがある。
【0007】
これらのイオンセンサは溶液中の測定対象のイオン濃度によって変化するイオン感応膜の電位を測定するものであるが、電位計測にはかならず基準の電位が必要となり、図10のように電位差計55を介して接続される参照電極56が使われる。このため、イオンセンサの小型化には参照電極の小型化が課題となり、参照電極を小型化したものがいくつか報告されてきた(非特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開平7-35747号公報
【0009】

【非特許文献1】「Electrochemical Sensors」Eric Bakker and Yu Oin,Anal.Chem.Vol.78(2006) pp.3965-3983
【非特許文献2】「Coated wire ion-selctive electrodes」 R.W.Cattrall and H.Freiser,Anal.Chem.,Vol.43(1971)pp.1905-1906
【非特許文献3】「Long-life multiple-ISFETs with polymeric gates」 K.Tsukada,M.Sebata,Y.Miyahara,and H.Miyagi,Sensors and Actuators,Vol.18(1989)pp.329-336
【非特許文献4】「Conducting Polymer-Based Solid-State Ion-Selective Electrodes」 Johan Bobacka,Electroanalysis,Vol.18(2006)pp.7-18
【非特許文献5】「Evaluation of miniaturized solid state reference electrodes on a silicon based component」D.Desmond,et.Al.,Sensors and Actuators,B44(1997)pp.389-396
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
イオンセンサを小型化するためには、上述したように参照電極も一緒に小型化する必要があった。しかし、参照電極として現在信頼性よく使われているものは、内部電極としてAg/AgCl電極を用い、被測定溶液と参照電極の内部溶液とが微量にイオン交換できるように多孔質のセラミック57(図10参照)やピンホールを用いた液間接続の構造を有するものである。このように参照電極は内部溶液を保持する構造が必要なため、小型化の例として高分子材料によって液間接続を小型化したものやMEMS構造などがとられていた。
【0011】
しかし、上述したような内部溶液を有する参照電極においては、現在のところ信頼性のあるものがなく、また量産化を行うには難しい構造であった。このため、イオンセンサと参照電極を含めた全体が、小型化できないという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、参照電極及び内部溶液が不要であり、小型化が可能であるイオンセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
第一電極板と、
前記第一電極板に対向して配置され、一つあるいは多数個の開口部を有する第二電極板と、
前記第一電極板と前記第二電極板との間に介装されるとともに、前記第二電極板が有する前記開口部の一側を塞いで、さらに当該開口部一側の端部から前記開口部の内壁面を介して前記第二電極板の外側面に亘って連続して形成されるイオン感応膜と、
被測定溶液のイオン濃度を測定する際に、前記開口部内及び前記第二電極板の外側面に形成されたイオン感応膜のみが前記被測定溶液と接触するように第二電極板を支持するセンサ支持体と、を備え、
前記第一電極板と前記第二電極板との間に介装されたイオン感応膜の厚さと、前記第二電極板の外側面に形成されたイオン感応膜の厚さとが異なるように構成して、前記第一電極板と前記第二電極板との間の電位差を測定するイオンセンサである。
【0014】
本発明は、前記第二電極板が有する一つあるいは多数個の開口部の総面積を、前記第一電極板における前記第二電極板との対向面の面積の半分以上としたイオンセンサである。
【0015】
本発明は、前記第一電極板と前記第二電極板の間に介装された前記イオン感応膜の厚さを、前記第二電極板の外側面に形成された前記イオン感応膜の厚さの少なくても倍以上としたイオンセンサである。
【0016】
本発明は、前記イオンセンサを、共通の前記センサ支持体に複数個配設するとともに、当該複数個のイオンセンサがそれぞれ有する各第二電極板間を配線することにより電位が共通となるようにしたこと、あるいは前記各第二電極板を連続した電極板により一体的に形成したイオンセンサである。
【0017】
本発明は、前記第一電極板及び前記第二電極板のそれぞれと前記イオン感応膜との間に導電性高分子膜を設けたイオンセンサである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、2つの電極板上に形成されたイオン感応膜を被測定溶液に接触させた際に、2つの電極板上でのイオン感応膜の厚さの違いにより、2つの電極板間で電位差が生じるので、この電位差を測定することにより、従来イオンセンサに必要であった参照電極及び内部溶液を使わずに、溶液中のイオン濃度を計測することが可能となる。
【0019】
本発明によれば、第二電極板の一つあるいは多数個の開口部の総面積を、第一電極板における第二電極板との対向面の面積の半分以上としているので、第二電極板が有する開口部内のイオン感応膜において溶液に接触している部分の面積が大きくなる。これにより第一電極板と第二電極板との間の電位差を大きくすることができ、測定イオン濃度変化によるイオンセンサ出力であるセンサ感度を大きくすることができる。
【0020】
本発明によれば、第一電極板と第二電極板の間に介装されるイオン感応膜の厚さを、被測定溶液と接触する側の第二電極板上に形成したイオン感応膜の厚さの少なくても倍以上としている。これにより、第一電極板と第二電極板との間の電位差を大きくすることができ、測定イオン濃度変化によるイオンセンサ出力であるセンサ感度を大きくすることができる。
【0021】
本発明によれば、複数のイオンセンサを一つのセンサ支持体に実装することができるので、測定イオン毎にセンサを複数設置することが可能となり、溶液中の多種類のイオンを同時計測することが可能となる。また、第二電極板を配線あるいは連続体として共通化することにより各イオンセンサの配線を減らすことが可能となる。
【0022】
本発明によれば、前記第一電極板及び前記第二電極板のそれぞれと前記イオン感応膜との間に導電性高分子膜を設けたことにより、電極板とイオン感応膜との間の電位を安定化させることができるので、電極板間の電位を高SN比で計測が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態であるイオンセンサの基本構造を示す概略断面図である。
【図2】イオンセンサの先端の構造を示す概略断面図である。
【図3】イオンセンサのカリウムイオン濃度変化に対するセンサ出力変化のグラフを示す図である。
【図4】イオンセンサの第二電極板の開口部の直径を変化させた時の、カリウムイオン濃度変化に対するセンサ出力変化のグラフを示す図である。
【図5】イオンセンサの第二電極板の外側面に形成したイオン感応膜の厚みを変化させた時の、カリウムイオン濃度変化に対するセンサ出力変化のグラフを示す図である。
【図6】図1における第二電極板において開口部を複数設けた場合を示す概略図である。
【図7】本発明の第二の実施形態である複数の開口部を有した第二電極板を設けたイオンセンサの先端の構造を示す概略断面図である。
【図8】本発明の第三の実施形態である複数のイオンセンサを集積化したイオンセンサの基本構造を示す概略断面図である。
【図9】本発明の第四の実施形態である第一電極板とイオン感応膜及び、第二電極板とイオン感応膜の間に導電性高分子膜を形成したイオンセンサの基本構造を示す概略断面図である。
【図10】従来のイオンセンサを示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1-1 第一電極板
1-2 第一電極板
1-3 第一電極板
2-1 イオン感応膜
2-2 イオン感応膜
2-3 イオン感応膜
3-1 第二電極板
3-2 第二電極板
3-3 第二電極板
4-1 センサ支持体
4-2 センサ支持体
5-1 配線
5-2 配線
5-3 配線
5-4 配線
6-1 半田
6-2 半田
6-3 半田
6-4 半田
6-5 半田
7-1 電位差計
7-2 電位差計
7-3 電位差計
8、18、28 開口部
9 被測定溶液
9-1 導電性高分子膜
9-2 導電性高分子膜
10、20、30、40 イオンセンサ

【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、添付する図面を参照して詳細に説明する。
また、同様の用途及び機能を有する部材には同符号を付してその説明を省略する。
【実施例1】
【0026】
次に、本発明の実施例1に係るイオンセンサの構成について図1、図2を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるイオンセンサの基本構造を示す概略断面図である。図2は、イオンセンサの先端の構造を示す概略断面図である。
イオンセンサ10は、被測定溶液9中に存在する所定のイオンのイオン濃度を測定するセンサであり、図1に示すように、第一電極板1-1、第二電極板3-1、イオン感応膜2-1及びセンサ支持体4-1を主に具備している。
【実施例1】
【0027】
第一電極板1-1は、円板状の電極であり、銀板の表面を塩化銀にしたAg/AgCl電極である。
【実施例1】
【0028】
第二電極板3-1は、円板状の電極であり、第一電極板1-1に対向して配置され、その中央部に円形状の貫通孔である一つの開口部8を有する。第二電極板3-1は、銀板の表面を塩化銀にしたAg/AgCl電極である。
なお、開口部の開口数や開口部の形状は、特に限定するものではなく、例えば多数個の開口部を設けたり、また、円形状以外の形状にしたりして、開口部を適宜構成とすることが可能である。
また、上記第一電極板1-1及び第二電極板3-1の電極材料としては、Ag/AgCl電極に特に限定するものではなく、例えば白金、金、グラシーカーボンなどを用いることができる。
【実施例1】
【0029】
イオン感応膜2-1は、被測定溶液9と接触した際に溶液中の測定イオン濃度に応じて電位差が生じる膜である。イオン感応膜2-1は、図2に示すように、第一電極板1-1と第二電極板3-1との間に介装されるとともに、第二電極板3-1が有する開口部8の一側を塞いで、さらに当該開口部8一側の端部から開口部8の内壁面を介して第二電極板3-1の外側面11に亘って連続して形成される。また、第一電極板1-1と第二電極板3-1との間に介装されたイオン感応膜2-1であるイオン感応膜内層2-1(a)の厚さt1と、第二電極板3-1の外側面11に形成されたイオン感応膜外層2-1(b)の厚さt2とが、異なる厚さとなるように構成されている。本実施例においては、イオン感応膜外層2-1(b)の厚さt2よりもイオン感応膜内層2-1(a)の厚さt1が厚くなっている。
【実施例1】
【0030】
センサ支持体4-1は、被測定溶液9のイオン濃度を測定する際に、開口部8内及び第二電極板3-1の外側面11に形成されたイオン感応膜2-1のみが被測定溶液9と接触するように第二電極板3-1を支持するものであり、その一端に開口部12を有する円筒状部材である。また、センサ支持体4-1は、開口部8内及び第二電極板3-1の外側面11に形成されたイオン感応膜外層2-1(b)のみを被測定溶液9に接触可能とするものであり、第一電極板1-1等のその他の部分がセンサ支持体4-1内に収納されて被測定溶液9に接触しないように保護するための保護部材である。
なお、センサ支持体は、本実施例のように円筒状部材に限定するものではなく、例えばシート状のセンサ支持体であってもかまわない。
【実施例1】
【0031】
次に、イオンセンサ10の製作工程について図1、図2を用いて説明する。
図1に示すように、第一電極板1-1と第二電極板3-1との間には、所定厚さt1のイオン感応膜2-1(イオン感応膜内層2-1(a))が介装されている。第一電極板1-1の大きさとしては、その直径D1を2.5mmとした。また、第二電極板3-1の大きさとしては、その直径を6mmとして開口部8の直径(穴径)D2を2.5mmとした。
なお、これらの電極板の大きさや形状は、特に限定されるものでなく、本発明に係るイオンセンサの機能を発揮することが可能である構成条件において、自由な形状を適宜選択することができる。
【実施例1】
【0032】
また、イオン感応膜2-1としては、カリウムイオンに応答する膜として、ポリ塩化ビニル(PVC)と、可塑剤としてアジピン酸ジオクチル(DOA)と、カリウムイオン感応物質であるバリノマイシンを溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)に混合溶解して、溶媒を蒸発させて固化したものを用いた。これらの重量比としてはバリノマイシンを2%、PVCを31%、可塑剤を67%とした。もちろん、これらの重量比に関しては適宜重量比を変化させることができるとともに、さらに添加剤としてテトラフェニルほう酸カリウムなどを添加して他のイオンに対する選択性を変えることもできる。また、測定イオンとしては本実施例におけるカリウムイオンだけでなく、ナトリウムや塩素、カルシウム等、様々なイオンに応じる各種イオン感応膜の材料を適用することで、適宜変更することができる。
【実施例1】
【0033】
カリウムイオン用のイオン感応膜2-1は、いくつかの製作工程を経て図2に示す断面視の形状になる。具体的には、まず、THFを蒸発させて成膜した膜の厚さt1が200μmであるイオン感応膜(イオン感応膜内層2-1(a)となる部分)をあらかじめ円形に切り取り、このイオン感応膜の一側の表面に少量のTHFにつけて、それを第一電極板1-1の一側にのせて乾燥させ接着した。さらに円形状の開口部8を有した第二電極板3-1をイオン感応膜(イオン感応膜内層2-1(a))の他側に、第一電極板1-1にイオン感応膜2-1を接着した方法と同様にして貼り付けた。また、第二電極板3-1は、その他側を円筒状であるセンサ支持体4-1の内部の底部に接着して、第二電極板3-1の開口部8及びその周縁部をセンサ支持体4-1の開口部12から臨むようにすることで、被測定溶液9に接触させる部分以外はセンサ支持体4-1外部に面して配置されないようにしている。ここで、センサ支持体4-1の材料としては、イオン感応膜2-1の主材料であるPVCを用いた。センサ支持体4-1に第二電極板3-1を接着した後、第二電極板3-1の開口部8から臨むイオン感応膜内層2-1(a)と、開口部8の内壁面と、第二電極板3-1の外側面11における開口部8周縁部と、センサ支持体4-1の開口部12の内壁面とにより形成されている凹部分に、上述したTHFで溶解している状態のイオン感応膜溶液を滴下して乾燥させて、図2に示すように、イオン感応膜2-1において被測定溶液9と接触する部分となるイオン感応膜外層2-1(b)を形成した。このイオン感応膜外層2-1(b)の厚さt2としては13μmとした。このように幾つかの工程を経て、前半の工程にて形成したイオン感応膜内層2-1(a)と後半の工程にて形成したイオン感応膜外層2-1(b)とが連続した一体的なイオン感応膜構造であるイオン感応膜2-1を形成することができる。すなわち、第一電極板1-1と第二電極板3-1との間にイオン感応膜内層2-1(a)が介装されるとともに、イオン感応膜内層2-1(a)が第二電極板3-1が有する開口部8の一側を塞いで、さらに、イオン感応膜外層2-1(b)が開口部8一側の端部から開口部8の内壁面を介して第二電極板3-1の外側面11に亘って連続して形成される。このような構造により、被測定溶液9のイオン濃度測定時において、センサ支持体4-1の開口部12近傍に形成されたイオン感応膜2-1におけるイオン感応膜外層2-1(b)の外側面が被測定溶液9に接触する部分となる。
【実施例1】
【0034】
また、第一電極板1-1の他側と第二電極板3-1の一端には、それぞれ半田6-1と半田6-2によって配線5-1と配線5-2とが接続されており、第一電極板1-1と第二電極板3-1の間には、電位差計7-1が接続されている。これにより、第一電極板1-1と第二電極板3-1の間の電位差は、電位差計7-1により測定可能となる。この電位差計7-1により測定した電位差(センサ出力変化)によって被測定溶液9中に含まれるカリウムイオンのイオン濃度を計測することができる。
【実施例1】
【0035】
次に、以上のように構成したイオンセンサ10の動作原理について詳細に説明する。
被測定溶液9中のカリウムイオンのイオン濃度を測定する際に、被測定溶液9と接触する第二電極板3-1の外側面11に形成されたイオン感応膜外層2-1(b)により、第二電極板3-1と被測定溶液9の間には、溶液中の測定イオン濃度に応じたイオン感応膜外層2-1(b)の電位差が生じている。
一方、第二電極板3-1には開口部8が設けられているので、イオン濃度測定時において開口部8の内部に形成されたイオン感応膜外層2-1(b)に被測定溶液9が接触し、当該被測定溶液9はイオン感応膜外層2-1(b)及びイオン感応膜内層2-1(a)を介して第一電極板1-1と面することになる。このため、溶液中の測定イオン濃度に応じたイオン感応膜内層2-1(a)の電位差は、第一電極板1-1と溶液間の電位差となる。ここで、第一電極板1-1と第二電極板3-1の間に介装されるイオン感応膜内層2-1(a)の厚さt1と、第二電極板3-1の外側面11上のイオン感応膜外層2-1(b)の厚さt2とは異なる厚さであるとともに、イオン感応膜内層2-1(a)の厚さt1は第二電極板3-1の外側面11上のイオン感応膜外層2-1(b)の厚さt2より厚くなっている。この2つの電極板1-1、3-1上でのイオン感応膜2-1の厚さの違いにより、2つの電極板1-1、3-1間で電位差が生じる。この電位差を測定する(イオンセンサ10の出力変化(mV)を測定する)ことにより、溶液中のイオン濃度を計測することが可能となる。すなわち、従来イオンセンサに必要であった参照電極及び内部溶液を使わずに、溶液中のイオン濃度を計測することが可能となる。
【実施例1】
【0036】
(イオン濃度の測定例)
図3は本発明に係る実施例1におけるイオンセンサ10を用いてカリウムイオン濃度によるセンサ出力変化(mV)を示した図である。被測定溶液9としては、トリス-ホウ酸緩衝液中に異なるKCl濃度を溶解してカリウムイオン濃度が10-5mol/lから10-1mol/lまでのものを用いた。図3からわかるように10-5mol/lでは少し感度が落ちているが、10-4mol/l以上のカリウムイオン濃度に対しては、直線性が良く、センサ感度として36mV/decadeが得られた。このように本発明に係るイオンセンサ10が、参照電極や内部溶液を使わずにイオンセンサとして適用可能であることが分かった。
【実施例2】
【0037】
次に、本発明に係るイオンセンサの別実施例について図6、図7を用いて説明する。
なお、本実施例にて説明するイオンセンサ20を構成する第一電極板1-1、イオン感応膜2-1、センサ支持体4-1のそれぞれについては実施例1と同様のものであるためそれらの説明を省略し、実施例1にて説明したイオンセンサ10の第二電極板3-1の別形態である第二電極板3-2についてのみ説明する。
【実施例2】
【0038】
第二電極板3-2は、図6に示すように、円形状の板状の電極であり、実施例1における第二電極板3-1と同じ外形であり、円形状の貫通孔である開口部18を、複数個有している。また、実施例1にて説明した開口部8の替わりに複数個の開口部18を形成した第二電極板3-2を用いて、実施例1と同様にして、図7に示すイオンセンサ20を構成した。
このように、実施例1の第二電極板3-1の替わりに複数個の開口部18を有する第二電極板3-2を適用することにより、例えば柔軟性を有するイオン感応膜などを電極板間に介装する場合においても、イオン感応膜の下側部分の保持が容易になり、イオンセンサとしての機械的強度が増すことができる。
なお、開口部18の形状としては複数個の円でも、格子状のものでもよく、任意の形状をとることができる。
【実施例2】
【0039】
以上のように、
第一電極板1-1と、
前記第一電極板1-1に対向して配置され、一つの開口部8を有する第二電極板3-1あるいは多数個の開口部18を有する第二電極板3-2と、
前記第一電極板1-1と前記第二電極板3-1あるいは前記第二電極板3-2との間に介装されるとともに、前記第二電極板3-1(3-2)が有する前記開口部8(18)の一側を塞いで、さらに当該開口部8(18)一側の端部から前記開口部8(18)の内壁面を介して第二電極板3-1あるいは第二電極板3-2の外側面11に亘って連続して形成されるイオン感応膜2-1と、
被測定溶液9のイオン濃度を測定する際に、前記開口部8(18)内及び前記第二電極板3-1(3-2)の外側面11に形成されたイオン感応膜2-1のみが前記被測定溶液9と接触するように第二電極板3-1(3-2)を支持するセンサ支持体4-1と、を備え、
前記第一電極板1-1と前記第二電極板3-1(3-2)との間に介装されたイオン感応膜2-1の厚さt1と、前記第二電極板3-1(3-2)の外側面11に形成されたイオン感応膜2-1の厚さt2とを異なるように構成して、前記第一電極板1-1と前記第二電極板3-1(3-2)との間の電位差を測定するイオンセンサ10(20)を構成したことにより、2つの電極板1-1、3-1(あるいは、1-1、3-2)上に形成されたイオン感応膜2-1を被測定溶液9に接触させた際に、2つの電極板1-1、3-1(あるいは、1-1、3-2)上でのイオン感応膜2-1の厚さの違いにより、2つの電極板1-1、3-1(あるいは、1-1、3-2)間で電位差が生じるので、この電位差を測定することにより、従来イオンセンサに必要であった参照電極及び内部溶液を使わずに、溶液中のイオン濃度を計測することが可能となる。また、参照電極及び内部溶液を必要としないため、イオンセンサの小型化が可能であるとともに、測定溶液としては少量で良いため、微小検体の測定も容易になる。
【実施例2】
【0040】
次に、上記実施例に係るイオンセンサにおいて感度を向上させる方法について説明する。
図4は第一電極板1-1の面積(第二電極板3-1に対向する面の面積)に対する第二電極板3-1の開口部8の面積比を変えた時のイオンセンサ10の感度変化を示したものであり、第一電極板1-1の直径D1が2.5mmである場合において、図4中の4本の感度曲線のそれぞれが、図4中に示す開口部8の各直径(D2:1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm)に対応していることを示している。すなわち、開口部8の開口径である直径D2としては最も大きいものが2.5mmで、最も小さいものが1.0mmとして第二電極板3-1を作製してそれぞれをイオンセンサ10の第二電極板として適用して、前述した所定のカリウムイオン濃度の被測定溶液9の測定を行い、それぞれを比較した。測定結果としては、直径D2が2.5mmのものは感度が36mV/decadeであるが、径が小さくなるほど感度が小さくなり、直径D2が1.0mmのものでは感度が3mV/decadeしかなかった。このような結果から面積比が大きいほど感度を大きくすることができることが分かる。すなわち、第二電極板3-1の開口部8の直径はできるだけ大きいことが好適である。さらに、図4において、D2が1.5mm(面積比:0.36)の場合では、イオンセンサの感度として十分でなく、D2が2.0mm(面積比:0.64)の場合では、イオンセンサの感度として十分であり、これらの結果より、第二電極板3-1の開口部8の面積は第一電極板1-1の面積(第一電極板1-1における第二電極板3-1との対向面の面積)の半分より大きいことがより好ましい。
なお、上述した実施例2における第二電極板3-2の開口部18のように多数個開口部が設けられている場合においても、第一電極板1-1の面積に対する第二電極板3-2の開口部18の面積比を大きくするほど感度を大きくすることができる。すなわち、第二電極板3-2の複数個の開口部18の各直径はできるだけ大きいことが好適であり、第二電極板3-2の開口部18の総面積は第一電極板1-1の面積(第一電極板1-1における第二電極板3-2との対向面の面積)の半分より大きいことがより好ましい。
【実施例2】
【0041】
このように、前記第二電極板3-1が有する一つの開口部8(あるいは前記第二電極板3-2が有する多数個の開口部18)の総面積を、前記第一電極板1-1における前記第二電極板3-1(3-2)との対向面の面積の半分以上としたイオンセンサ10(20)を構成したことにより、第二電極板3-1(3-2)が有する開口部8(18)内のイオン感応膜2-1において被測定溶液9に接触している部分の面積が大きくなる。これにより第一電極板1-1と第二電極板3-1(3-2)との間の電位差を大きくすることができ、測定イオン濃度変化によるイオンセンサ出力であるセンサ感度を大きくすることができる。
【実施例2】
【0042】
次に、上記実施例に係るイオンセンサにおいて感度を向上させる別の方法について説明する。
図5はイオンセンサ10における第一電極板1-1と前記第二電極板3-1の間に介装されたイオン感応膜2-1(イオン感応膜内層2-1(a))の厚さをt1として、被測定溶液9と接触する側の第二電極板3-1の外側面11上に形成したイオン感応膜2-1(イオン感応膜外層2-1(b))の厚さをt2とした場合において、t1を固定してt2を変化させた時の感度の変化を示している。ここでt1は200μmで一定にした。t2としては13μm、40μm、120μmの厚さを有するイオンセンサを作製して、前述した所定のカリウムイオン濃度の被測定溶液9の測定を行い、それぞれを比較した。ここで、前記第一電極板1-1の直径D1としては2.5mm、前記第二電極板3-1の直径としては6mmで開口部8の直径D2(開口径)が2.5mmのものを用いた。図5に示すように、t2が13μmである場合では感度は36mV/decadeであるが、t2が厚くなるほど感度が小さくなり、t2が120μmでは19mV/decadeであった。このようにt1に対してt2の膜厚を薄くするほど感度が大きくなることが分かる。このような結果より、上記実施例に係るイオンセンサにおいて、感度を向上させるには、第一電極板1-1と前記第二電極板3-1の間に介装されたイオン感応膜内層2-1(a)の厚さt1に対して、前記被測定溶液9と接触する側の第二電極板3-1の外側面11に形成したイオン感応膜外層2-1(b)の厚さt2を小さくすることがあげられる。さらに、図5において、t2が120μmm(t1/t2=1.7)の場合では、イオンセンサの感度として十分でなく、t2が40μmm(t1/t2=5.0)の場合では、イオンセンサの感度として十分である。これらの結果より、前記第一電極板1-1と前記第二電極板3-1の間に介装されたイオン感応膜内層2-1(a)の厚さt1を、前記第二電極板3-1の外側面11に形成されたイオン感応膜外層2-1(b)の厚さt2の少なくても倍以上とすること、すなわち、t1/t2>2とすることがより好ましい。
【実施例2】
【0043】
このように、前記第一電極板1-1と前記第二電極板3-1の間に介装されたイオン感応膜内層2-1(a)の厚さt1を、前記第二電極板3-1の外側面11に形成されたイオン感応膜外層2-1(b)の厚さt2の少なくても倍以上としたイオンセンサを構成したことにより、第一電極板1-1と第二電極板3-1との間の電位差を大きくすることができ、測定イオン濃度変化によるイオンセンサ出力であるセンサ感度を大きくすることができる。
【実施例3】
【0044】
次に、本発明に係るイオンセンサの別実施例について図8を用いて説明する。
イオンセンサ30は、被測定溶液9中に存在する所定のイオンのイオン濃度を測定するセンサであり、図8に示すように、第一電極板1-2、1-3、第二電極板3-3、イオン感応膜2-2、2-3及びセンサ支持体4-2を主に具備している。
【実施例3】
【0045】
第一電極板1-2、1-3は、円板状の電極であり、銀板の表面を塩化銀にしたAg/AgCl電極である。
【実施例3】
【0046】
第二電極板3-3は、円板状の電極であり、第一電極板1-2、1-3に対向して配置され、所定位置に円形状の貫通孔である2つの開口部28・28を有する。第二電極板3-3は、銀板の表面を塩化銀にしたAg/AgCl電極である。
なお、開口部の開口数や開口部の形状は、特に上記に限定するものではなく、例えばさらに多数個の開口部を設けたり、また、円形状以外の形状にしたりして、開口部を適宜構成とすることが可能である。
【実施例3】
【0047】
イオン感応膜2-2、2-3は、被測定溶液9と接触した際に溶液中の測定イオン濃度に応じて電位差が生じる膜である。イオン感応膜2-2、2-3は、図8に示すように、第一電極板1-2、1-3と第二電極板3-3との間に介装されるとともに、第二電極板3-3が有する開口部28・28の一側を塞いで、さらに当該開口部28・28一側の端部から開口部28・28の内壁面を介して第二電極板3-3の外側面31に亘って連続して形成される。また、第一電極板1-2、1-3と第二電極板3-3との間に介装されたイオン感応膜2-2、2-3であるイオン感応膜内層2-2(a)、2-3(a)の厚さt3、t5と、第二電極板3-3の外側面31に形成されたイオン感応膜外層2-2(b)、2-3(b)の厚さt4、t6とが、異なる厚さとなるように構成されている。本実施例においては、厚さt3と厚さt5とが同一であり、かつ厚さt4と厚さt6とが同一である。また、イオン感応膜外層2-2(b)、2-3(b)の厚さt4、t6よりもイオン感応膜内層2-2(a)、2-3(a)の厚さt3、t5が厚くなっている。
【実施例3】
【0048】
センサ支持体4-2は、被測定溶液9のイオン濃度を測定する際に、開口部28・28内及び第二電極板3-3の外側面31に形成されたイオン感応膜2-2、2-3のみが被測定溶液9と接触するように第二電極板3-3を支持するものであり、一端に2つの開口部32・32を有する円筒状部材である。また、センサ支持体4-2は、開口部28・28内及び第二電極板3-3の外側面31に形成されたイオン感応膜外層2-2(b)、2-3(b)のみを被測定溶液9に接触可能とするものであり、第一電極板1-2、1-3等のその他の部分がセンサ支持体4-2内に収容され被測定溶液9に接触しないように保護するための保護部材である。
なお、センサ支持体は、本実施例のように円筒状部材に限定するものではなく、例えばシート状のセンサ支持体であってもかまわない。
【実施例3】
【0049】
次に、イオンセンサ30の製作工程について図8を用いて説明する。
図8に示すように、イオンセンサ30は、ひとつのセンサ支持体4-2に2つのイオンセンサ素子を集積化したもの(マルチイオンセンサ。ここでいうイオンセンサ素子とは、第一電極板と第二電極板とイオン感応膜との一組のユニットのことをいう。)である。図8に示す左側のイオンセンサ素子には実施例1と同じカリウムイオンに応答するイオン感応膜2-2を形成している。また図8に示す右側のイオンセンサ素子にはナトリウムイオンに応答するイオン感応膜2-3を形成している。このイオン感応膜2-3における膜の組成としては、カリウムイオン用のイオン感応膜2-2と同じPVCと可塑剤DOAを用いており、イオン感応物質としてビス(12-クラウン-4)を用いている。その重量比としてはビス(12-クラウン-4)を7%、PVCを27%、DOAを66%とした。ここで、第二電極板3-3は両方(図8で示す左右)のイオンセンサ素子に共通して用いられている。
また、第一電極板1-2、1-3の他側と第二電極板3-3の一端には、それぞれ半田6-3、半田6-4及び半田6-5によって配線5-3、配線5-4及び配線5-1とが接続されており、第二電極板3-3と、第一電極板1-2、電極板1-3との間にそれぞれ電位差計7-2と電位差計7-3とが接続されている。これにより、第一電極板1-2と第二電極板3-3の間の電位差、及び、第一電極板1-3と第二電極板3-3の間の電位差は、電位差計7-2、7-3により測定可能となる。この電位差計7-2、7-3により測定した電位差(センサ出力変化)によって、イオンセンサ30は被測定溶液9中に含まれるカリウムイオン及びナトリウムイオンの各イオン濃度を計測することができる。このように2つのイオンセンサ素子において第二電極板3-3を共通化することにより配線数を減らすことができる。すなわち、複数個のイオンセンサを集積化しても配線数は、イオンセンサ一個では2本必要であったものが、そのままイオンセンサ数でかけた数ではなく、イオンセンサ数を足した数になる。これにより、イオンセンサ30ではイオンセンサ素子個々に独立して配線する場合に比べて大幅に配線数を減らすことができる。また、イオンセンサ30は、イオンセンサを個々に独立して形成しないですむため、製造上容易な構造とすることができる。
なお、本実施例においては、連続した1つの第二電極板3-3により第二電極板を一体的に形成したが、例えば、複数の第一電極板に対応して、第二電極板を個々配設して、この第二電極板間をそれぞれ配線して、第二電極板における電位が共通となるように構成してもかまわない。この場合においても、イオンセンサ全体の構成として大幅に配線数を減らすことができる。
【実施例3】
【0050】
このように、上述したイオンセンサ(イオンセンサ素子)を、共通の前記センサ支持体4-2に複数個配設するとともに、当該複数個のイオンセンサ(イオンセンサ素子)がそれぞれ有する各第二電極板間を配線することにより電位が共通となるようにしたこと、あるいは前記各第二電極板を連続した第二電極板3-3により一体的に形成したイオンセンサ30を構成したことにより、複数のイオンセンサを一つのセンサ支持体4-2に実装することができるので、測定イオン毎にセンサを複数設置することが可能となり、溶液中の多種類のイオンを同時計測することが可能となる。また、第二電極板を配線あるいは連続体として共通化することにより各イオンセンサの配線を減らすことが可能となる。
【実施例4】
【0051】
次に、本発明に係るイオンセンサの別実施例について図9を用いて説明する。
図9は、本発明の第四の実施形態であるイオンセンサの基本構造を示す概略断面図である。本実施例に係るイオンセンサ40は、図9に示すように、基本的には図1で示すイオンセンサ10と同じ構造をしており、イオンセンサ10と共通する部分については、説明を省略し、イオンセンサ10と異なる部分である導電性高分子膜について説明する。
【実施例4】
【0052】
イオンセンサ40は、実施例1に係るイオンセンサ10の第一電極板1-1とイオン感応膜2-1との界面及び第二電極板3-1とイオン感応膜2-1との界面のそれぞれに、導電性高分子膜9-1、9-2をそれぞれ設けたものである。すなわち、導電性高分子膜9-1は、イオンセンサ10における第一電極板1-1とイオン感応膜2-1との間に所定の厚さで形成されている。また、導電性高分子膜9-2は、イオンセンサ10における第二電極板3-1とイオン感応膜2-1の間に所定の厚さで形成されている。ここで、これら導電性高分子膜9-1と導電性高分子膜9-2は、どちらも同じ組成であり、poly(3,4-ethylenedioxythiophene)を1mLに0.1Mのpoly(4-styrenesulfonate)の溶液100μLの混合比で調整した材料を用いて成膜した。この導電性高分子膜9-1、9-2をイオンセンサ10におけるイオン感応膜2-1と第一電極板1-1、イオン感応膜2-1と第二電極板3-1のそれぞれの間に形成することにより、電極板1-1、3-1とイオン感応膜2-1間の接触電位を安定化させ、イオンセンサ40の出力を長期的に安定にすることができる。
【実施例4】
【0053】
このように、前記第一電極板1-1及び前記第二電極板3-1のそれぞれと前記イオン感応膜2-1との間に導電性高分子膜9-1、9-2を設けたイオンセンサ40を構成したことにより、導電性高分子膜9-1、9-2により電極材料である第一電極板及び第二電極板とイオン感応膜との間でイオンと電子を変換することで接触電位を安定化し、電極板とイオン感応膜との間の電位を安定化させることができるので、イオンセンサ40は電極板間の電位を高SN比で計測することが可能となる。
【実施例4】
【0054】
また、上述した円筒状のセンサ支持体4-1、4-2の替わりに、シート状のセンサ支持体を適用することにより、センサ設置箇所の省スペース化が図れる。
このように、本発明は、前記センサ支持体の形状が、シート状であるイオンセンサであることにより、換言すれば、前記イオンセンサを配置するセンサ支持体の形状をシート状にすることで、センサ設置箇所の省スペース化が図れる。
【実施例4】
【0055】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例・設計変更などをその技術的範囲内に包含することは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、溶液中のイオン濃度を測定するイオンセンサに関する。従来の血液中の電解質濃度を測定する臨床用血液分析装置や、産業や環境などの溶液中のイオン濃度を測定装置とするとして使われる。また上記イオンセンサは、参照電極が必要でないためセンサの小型化や集積化に優れている。このため、従来のイオンセンサでは困難であった、生体中などの局所的なイオン濃度をモニタリングするなどのマイクロセンサとして使用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
8
【図10】
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