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明細書 :癒合強度評価装置の作動方法、及び癒合強度評価装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5585956号 (P5585956)
公開番号 特開2010-284518 (P2010-284518A)
登録日 平成26年8月1日(2014.8.1)
発行日 平成26年9月10日(2014.9.10)
公開日 平成22年12月24日(2010.12.24)
発明の名称または考案の名称 癒合強度評価装置の作動方法、及び癒合強度評価装置
国際特許分類 A61B   5/107       (2006.01)
A61B   5/117       (2006.01)
FI A61B 5/10 300B
A61B 5/10 320D
請求項の数または発明の数 14
全頁数 18
出願番号 特願2010-112637 (P2010-112637)
出願日 平成22年5月14日(2010.5.14)
優先権出願番号 2009117611
優先日 平成21年5月14日(2009.5.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年4月8日(2013.4.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
発明者または考案者 【氏名】五味 健二
個別代理人の代理人 【識別番号】100083806、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 秀和
【識別番号】100100712、【弁理士】、【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
【識別番号】100095500、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 正和
【識別番号】100101247、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 俊一
【識別番号】100098327、【弁理士】、【氏名又は名称】高松 俊雄
審査官 【審査官】冨永 昌彦
参考文献・文献 特開2005-152079(JP,A)
特開2008-302101(JP,A)
特開2005-152255(JP,A)
特開2006-280532(JP,A)
特開2008-119472(JP,A)
特開2007-209551(JP,A)
調査した分野 A61B 5/06 - 5/22
特許請求の範囲 【請求項1】
患部に含まれる骨折した骨に、創内に埋め込んだプレートをネジ留めして架橋する、あるいは創外でネジを架橋することによって前記骨の癒合を促す骨折治療の治療過程で前記骨の癒合強度を評価する癒合強度評価装置の作動方法であって、
前記患部に荷重をかけない状態で前記患部を撮影する第1の撮影工程と、
前記患部に荷重をかけた状態で前記患部を撮影する第2の撮影工程と、
前記第1の撮影工程で撮影された画像に基づいて前記患部の癒合部位を跨ぐ前記ネジ間の寸法及び前記患部の健全部位にある前記ネジ間の寸法を検出する第1の検出工程と、
前記第2の撮影工程で撮影された画像に基づいて前記患部の癒合部位を跨ぐ前記ネジ間の寸法及び前記患部の健全部位にある前記ネジ間の寸法を検出する第2の検出工程と、
前記第1の検出工程及び前記第2の検出工程で検出された前記ネジ間の寸法に基づいて前記患部の癒合部位のひずみ及び前記患部の健全部位のひずみを計算する計算工程と、
前記計算工程で計算された前記患部の癒合部位のひずみが前記患部の健全部位のひずみに近いほど前記骨の癒合強度が高いと評価する評価工程と、
前記評価工程で評価された前記骨の癒合強度を提示する提示工程と
を備えることを特徴とする癒合強度評価装置の作動方法。
【請求項2】
前記第1の検出工程では、前記第1の撮影工程で撮影された画像の中から前記患部の癒合部位を跨ぐサブセット領域と前記患部の健全部位にあるサブセット領域とがユーザによって指定されると、指定されたサブセット領域の図心に基づいて前記ネジ間の寸法を検出することを特徴とする請求項1記載の癒合強度評価装置の作動方法。
【請求項3】
前記第1の検出工程では、前記第1の撮影工程で撮影された画像に含まれる部位のうち他の部位と比較してひずみの大きい部位を前記患部の癒合部位として特定するとともに前記他の部位を前記患部の健全部位として特定し、特定した前記患部の癒合部位を跨ぐサブセット領域の図心と前記患部の健全部位にあるサブセット領域の図心とに基づいて前記ネジ間の寸法を検出することを特徴とする請求項1記載の癒合強度評価装置の作動方法。
【請求項4】
前記第2の検出工程では、前記サブセット領域にもっとも類似しているサブセット領域を前記第2の撮影工程で撮影された画像の中から画像相関法を用いたパターンマッチングによって探索し、探索したサブセット領域の図心に基づいて前記ネジ間の寸法を検出することを特徴とする請求項2又は3記載の癒合強度評価装置の作動方法。
【請求項5】
前記第2の検出工程では、エッジ検出または位相相関法を用いた画像処理によって前記第2の撮影工程で撮影された画像の中から前記ネジの位置を検出することを特徴とする請求項2又は3記載の癒合強度評価装置の作動方法。
【請求項6】
前記評価工程では、「前記健全部位のひずみ/前記癒合部位のひずみ」*100[%]によって前記骨の癒合強度を評価することを特徴とする請求項1記載の癒合強度評価装置の作動方法。
【請求項7】
前記評価工程では、前記患部の左右あるいはそれ以上それぞれについて前記骨の癒合強度を評価することを特徴とする請求項1記載の癒合強度評価装置の作動方法。
【請求項8】
前記第1の撮影工程及び前記第2の撮影工程では、単純X線によって前記患部を撮影することを特徴とする請求項1記載の癒合強度評価装置の作動方法。
【請求項9】
前記ネジを抜去した後は、前記ネジに代えて前記骨に開いたネジ穴を用いることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の癒合強度評価装置の作動方法。
【請求項10】
前記評価工程では、前記第1の撮影工程で撮影された画像と前記第2の撮影工程で撮影された画像の撮影倍率の変化を前記癒合部位のひずみと前記健全部位のひずみとに基づいてキャンセルしたうえで前記骨の癒合強度を評価することを特徴とする請求項1記載の癒合強度評価装置の作動方法。
【請求項11】
前記評価工程では、荷重前に撮影された画像を、荷重中に撮影された画像に対して、荷重が解放された状態と考えることで、前記撮影倍率の変化をx、荷重解放による前記癒合部位の寸法aの伸びをΔa、荷重解放による前記健全部位の寸法aの伸びをΔaとした場合、次式をn乗することで最右辺における分子及び分母の「1」の影響が無視できるようひずみεを拡大し、前記撮影倍率の変化をキャンセルすることを特徴とする請求項10記載の癒合強度評価装置の作動方法。
【数1】
JP0005585956B2_000006t.gif

【請求項12】
さらに、
前記癒合部位を境界とする2つの骨の交差角度θを画像処理によって求め、
前記患部にかかる荷重Wの荷重変化ΔWと前記交差角度θの角度変化Δθとから変化率Δθ/ΔWを算出し、
前記変化率Δθ/ΔWに基づいて前記骨の癒合強度を評価する
ことを特徴とする請求項1記載の癒合強度評価装置の作動方法。
【請求項13】
前記評価工程では、所定期間ごとに荷重前および荷重中の撮影を行い「前記患部の健全部位のひずみ」/「前記患部の癒合部位のひずみ」の値の増加傾向で癒合強度の増加を評価することを特徴とする請求項1記載の癒合強度評価装置の作動方法。
【請求項14】
患部に含まれる骨折した骨に、創内に埋め込んだプレートをネジ留めして架橋する、あるいは創外でネジを架橋することによって前記骨の癒合を促す骨折治療の治療過程で前記骨の癒合強度を評価する癒合強度評価装置であって、
前記患部に荷重をかけない状態で前記患部を撮影するとともに、前記患部に荷重をかけた状態で前記患部を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段によって前記患部に荷重をかけない状態で撮影された画像に基づいて前記患部の癒合部位を跨ぐ前記ネジ間の寸法及び前記患部の健全部位にある前記ネジ間の寸法を検出する第1の検出手段と、
前記撮影手段によって前記患部に荷重をかけた状態で撮影された画像に基づいて前記患部の癒合部位を跨ぐ前記ネジ間の寸法及び前記患部の健全部位にある前記ネジ間の寸法を検出する第2の検出手段と、
前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段によって検出された前記ネジ間の寸法に基づいて前記患部の癒合部位のひずみ及び前記患部の健全部位のひずみを計算する計算手段と、
前記計算手段によって計算された前記患部の癒合部位のひずみが前記患部の健全部位のひずみに近いほど前記骨の癒合強度が高いと評価する評価手段と、
前記評価手段によって評価された前記骨の癒合強度を提示する提示手段と
を備えることを特徴とする癒合強度評価装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、骨の癒合強度を評価する癒合強度評価方法及び癒合強度評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
骨折の治癒に対する診断および評価は、現在も主に単純X線写真と臨床症状とに基づいてなされている。単純X線写真とは、造影剤を使わない撮影によるX線写真を意味する。骨折治療における単純X線写真の重要性は失われることはないが、医師の経験に立脚した読影過程があるかぎり、単純X線写真のみから骨の癒合強度を正確に定義することは困難である(非特許文献1参照)。また、X線CT(Computed Tomography)あるいはMRI(magnetic resonance imaging)像による評価もやはり形態学的評価の一種であり(非特許文献2参照)、読影過程を回避できない。このような背景から、骨の癒合強度の客観的評価法が切望されてきた。ただし、骨折の治療方法が異なれば利用できる癒合強度評価法も異なるため、以降まずは骨折の治療方法について説明する。
【0003】
骨折の治療方法は、創外固定器による骨の固定と、内固定によるそれとに大別される。骨折した骨に皮膚を貫通させてネジをねじ込み、体外に露出したネジ端を固定器で固定し骨の癒合を促す方法が創外固定である。これに対し、骨折した骨に接するように金属プレートをネジ留めし、体内にプレートを残したまま皮膚を縫合する方法が内固定である。骨折の治癒には癒合強度に見合った外力によるリハビリが必要である。また、いずれの治療方法でも完治後に固定器あるいはプレートを抜去する。ゆえに、リハビリ時の負荷強度および固定器の抜去時期の決定には癒合強度に関する情報が要求される。ゆえに、これらに適応する癒合強度の客観的評価法が提案されてきた。
【0004】
例えば、創外固定した膝関節における骨片間の動きを創外固定器に取り付けたひずみゲージで観測し、ひずみの減少度合いで骨癒合の進行を評価する手法が知られている(非特許文献3参照)。また、治癒過程にある骨(以降、仮骨)のアコースティックエミッション特性を、創外固定器を通して観測することで骨癒合の進行を評価する手法が知られている(非特許文献4参照)。更に、光ファイバ中の光の強度に基づいて骨のひずみを測定し、ひずみの減少度合いで骨癒合の進行を評価する手法も知られている(特許文献1参照)。これらはいずれも創外固定を前提とした評価法である。
ところで、創外固定と内固定の優劣は最終的な機能予後と治癒期間との総合評価で判定されるべきであり、そのような観点で治療法を選択すると内固定を行う症例の方が圧倒的に多いことが知られている(非特許文献5、6参照)。内固定に適応する癒合強度の客観的評価法としては、例えば、超音波エコーをウエーブレット変換することで仮骨の硬さなどを定量評価する手法が知られている(非特許文献2参照)。また、骨の固有振動数から骨癒合の進行を評価する手法が知られている(非特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特表平11-509428号公報
【0006】

【非特許文献1】Watanabe, Y. and Hirasawa, Y., Current Advancement of Non-invasive Monitoring of the Fracture Repair, Pharma Medica, Vol. 16, No.12 (1998), pp. 53-58 (in Japanese).
【非特許文献2】Kawasaki, Y., et al., Influence of Solid Phase Distribution in Articular Cartilage on Ultrasonic Echo, Proceedings of the 2004 Annual Meeting of the Japan Society of Mechanical Engineers, (2004), pp.107-108 (in Japanese).
【非特許文献3】Charnley, J., Biomechanics in Orthopaedic Surgery, Biomechanics and Related Bio-Engineering Topics, (1965), pp. 99-110, Pergamom Press.
【非特許文献4】Watanabe, Y., Basic Study on the Evaluation of Biomechanical Properties of Callus by using Acoustic Emission, Journal of Kyoto Prefectural University of Medicine, Vol. 102, No.10 (1993), pp. 1101- 1116 (in Japanese).
【非特許文献5】Matsusita, T., “Internal Fixators”, igaku-shoin, http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=30098, (March, 28, 2009) (in Japanese).
【非特許文献6】Tanaka, T., “Internal Fixators”, igaku-shoin, p.3-12, (in Japanese).
【非特許文献7】Reports of Japan Scienceand Technology Corporation, “The success in development of diagnostic equipment for callus by using characteristic frequency”, http://www.jst.go.jp/pr/report/report115/, (March, 31, 2009) (in Japanese).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、仮骨の硬さあるいは骨の固有振動数と骨強度との相関関係を利用して癒合強度を評価する前記従来の評価法は、癒合した骨が正常な骨の力学的強度を再獲得したか否かを定義するものではない。すなわち、本来は、荷重を作用させた際の仮骨のひずみを観測することに重きを置くべきであり、そのような癒合強度の定量評価が望まれている。
【0008】
また、前記従来の評価法によると、ひずみゲージ、光ファイバ、高感度のマイクロフォンなどの特別な機器が必要になるという課題もある。そのため、医療費の高騰を招く可能性があり、医療現場で広く普及しにくいことが予想される。
【0009】
また、癒合強度の客観的評価法は患者に提供される医療であることを前提とし、患者に理解しやすい安心かつ安全な評価法とすべきであるが、前記従来の評価法によると特別な機器を装着して特別な測定をする必要があり、患者に新たな負担を強いることになる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、特別な機器を必要とすることなく、なおかつ荷重を作用させた際の仮骨のひずみを観測することに重きを置いた安心かつ安全な癒合強度評価方法及び癒合強度評価装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の特徴は、患部に含まれる骨折した骨に、創内に埋め込んだプレートをネジ留めして架橋する、あるいは創外でネジを架橋することによって前記骨の癒合を促す骨折治療の治療過程で前記骨の癒合強度を評価する癒合強度評価装置の作動方法において、前記患部に荷重をかけない状態で前記患部を撮影する第1の撮影工程と、前記患部に荷重をかけた状態で前記患部を撮影する第2の撮影工程と、前記第1の撮影工程で撮影された画像に基づいて前記患部の癒合部位を跨ぐ前記ネジ間の寸法及び前記患部の健全部位にある前記ネジ間の寸法を検出する第1の検出工程と、前記第2の撮影工程で撮影された画像に基づいて前記患部の癒合部位を跨ぐ前記ネジ間の寸法及び前記患部の健全部位にある前記ネジ間の寸法を検出する第2の検出工程と、前記第1の検出工程及び前記第2の検出工程で検出された前記ネジ間の寸法に基づいて前記患部の癒合部位のひずみ及び前記患部の健全部位のひずみを計算する計算工程と、前記計算工程で計算された前記患部の癒合部位のひずみが前記患部の健全部位のひずみに近いほど前記骨の癒合強度が高いと評価する評価工程と、前記評価工程で評価された前記骨の癒合強度を提示する提示工程とを備えたことである。なお、創内に埋め込んだプレートをネジ留めして架橋する方法は内固定器、創外でネジを架橋する方法は創外固定器による固定とそれぞれ呼ばれている(前記非特許文献6参照)。
【0012】
本発明の第2の特徴は、前記癒合強度評価装置の作動方法において、前記第1の検出工程で、前記第1の撮影工程で撮影された画像の中から前記患部の癒合部位を跨ぐサブセット領域と前記患部の健全部位にあるサブセット領域とがユーザによって指定されると、指定されたサブセット領域の図心に基づいて前記ネジ間の寸法を検出することである。
【0013】
本発明の第3の特徴は、前記癒合強度評価装置の作動方法において、前記第1の検出工程で、前記第1の撮影工程で撮影された画像に含まれる部位のうち他の部位と比較してひずみの大きい部位を前記患部の癒合部位として特定するとともに前記他の部位を前記患部の健全部位として特定し、特定した前記患部の癒合部位を跨ぐサブセット領域の図心と前記患部の健全部位にあるサブセット領域の図心とに基づいて前記ネジ間の寸法を検出することである。
【0014】
本発明の第4の特徴は、前記癒合強度評価装置の作動方法において、前記第2の検出工程で、前記サブセット領域にもっとも類似しているサブセット領域を前記第2の撮影工程で撮影された画像の中から画像相関法を用いたパターンマッチングによって探索し、探索したサブセット領域の図心に基づいて前記ネジ間の寸法を検出することである。
【0015】
本発明の第5の特徴は、前記癒合強度評価装置の作動方法において、前記第2の検出工程で、エッジ検出または位相相関法を用いた画像処理によって前記第2の撮影工程で撮影された画像の中から前記ネジの位置を検出することである。
【0016】
本発明の第6の特徴は、前記癒合強度評価装置の作動方法において、前記評価工程で、「前記健全部位のひずみ/前記癒合部位のひずみ」*100[%]によって前記骨の癒合強度を評価することである。
【0017】
本発明の第7の特徴は、前記癒合強度評価装置の作動方法において、前記評価工程で、前記患部の左右あるいはそれ以上それぞれについて前記骨の癒合強度を評価することである。
【0018】
本発明の第8の特徴は、前記癒合強度評価装置の作動方法において、前記第1の撮影工程及び前記第2の撮影工程で、単純X線によって前記患部を撮影することである。
【0019】
本発明の第9の特徴は、前記癒合強度評価装置の作動方法において、前記ネジを抜去した後は、前記ネジに代えて前記骨に開いたネジ穴を用いることである。
【0020】
本発明の第10の特徴は、前記癒合強度評価装置の作動方法において、前記評価工程で、前記第1の撮影工程で撮影された画像と前記第2の撮影工程で撮影された画像の撮影倍率の変化を前記癒合部位のひずみと前記健全部位のひずみとに基づいてキャンセルしたうえで前記骨の癒合強度を評価することである。
【0021】
本発明の第11の特徴は、前記癒合強度評価装置の作動方法において、前記評価工程で、荷重前に撮影された画像を、荷重中に撮影された画像に対して、荷重が解放された状態と考えることで、前記撮影倍率の変化をx、荷重解放による前記癒合部位の寸法aの伸びをΔa、荷重解放による前記健全部位の寸法aの伸びをΔaとした場合、次式をn乗することで最右辺における分子及び分母の「1」の影響が無視できるようひずみεを拡大し、前記撮影倍率の変化をキャンセルすることである。
【数2】
JP0005585956B2_000002t.gif

【0022】
本発明の第12の特徴は、前記癒合強度評価装置の作動方法において、さらに、前記癒合部位を境界とする2つの骨の交差角度θを画像処理によって求め、前記患部にかかる荷重Wの荷重変化ΔWと前記交差角度θの角度変化Δθとから変化率Δθ/ΔWを算出し、前記変化率Δθ/ΔWに基づいて前記骨の癒合強度を評価することである。
【0023】
本発明の第13の特徴は、前記癒合強度評価装置の作動方法において、前記評価工程で、所定期間ごとに荷重前および荷重中の撮影を行い「前記患部の健全部位のひずみ」/「前記患部の癒合部位のひずみ」の値の増加傾向で癒合強度の増加を評価することである。
【0025】
本発明の第1の特徴は、患部に含まれる骨折した骨に、創内に埋め込んだプレートをネジ留めして架橋する、あるいは創外でネジを架橋することによって前記骨の癒合を促す骨折治療の治療過程で前記骨の癒合強度を評価する癒合強度評価装置において、前記患部に荷重をかけない状態で前記患部を撮影するとともに、前記患部に荷重をかけた状態で前記患部を撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって前記患部に荷重をかけない状態で撮影された画像に基づいて前記患部の癒合部位を跨ぐ前記ネジ間の寸法及び前記患部の健全部位にある前記ネジ間の寸法を検出する第1の検出手段と、前記撮影手段によって前記患部に荷重をかけた状態で撮影された画像に基づいて前記患部の癒合部位を跨ぐ前記ネジ間の寸法及び前記患部の健全部位にある前記ネジ間の寸法を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段によって検出された前記ネジ間の寸法に基づいて前記患部の癒合部位のひずみ及び前記患部の健全部位のひずみを計算する計算手段と、前記計算手段によって計算された前記患部の癒合部位のひずみが前記患部の健全部位のひずみに近いほど,前記骨の癒合強度が高いと評価する評価手段と、前記評価手段によって評価された前記骨の癒合強度を提示する提示手段とを備えたことである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、特別な機器を必要とすることなく、なおかつ荷重を作用させた際の仮骨のひずみを観測することに重きを置いた安心かつ安全な癒合強度評価方法及び癒合強度評価装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1における癒合強度評価装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における被写体の説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1における被写体の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1における癒合強度評価方法を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1における癒合強度評価工程を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1における癒合強度評価方法を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1における癒合強度評価工程を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1における癒合強度評価方法を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1における癒合強度評価方法を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態1における癒合強度評価方法を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態2における癒合強度評価方法を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態3における癒合強度評価方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。特に内固定器による治療を例に挙げて説明するが、本発明は、創外固定器による治療にも全く問題なく適応することができる。

【0029】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における癒合強度評価装置は、図1に示すように、X線源10とイメージングプレート30と画像処理装置40と表示装置50とを備えている。X線源10は、医療機関で一般的に備えるレントゲン装置の光源部分であり、X線を被写体20に照射する。イメージングプレート30は、医療機関で一般的に備えるレントゲン装置の感光部であり、被写体20を透過したX線をデジタル画像に変換して画像処理装置40に出力する。イメージングプレート30としては、医療機関の一部で導入されているFPD(Flat Panel Detector)や、旧来のX線フィルムを読み込んで画像処理装置40にデジタル画像を出力するスキャナ等を採用することもできる。画像処理装置40は、イメージングプレート30からのデジタル画像に対して所定の画像処理を施して癒合強度を評価するパーソナルコンピュータ等である。表示装置50は、画像処理装置40からの各種データ(例えば癒合強度)を表示するディスプレイ等である。

【0030】
被写体20は、具体的には骨折している部分(患部)である。本実施の形態1では、図2に示すような下腿骨の骨折治療時の癒合強度定量化を例にとり、癒合強度値算出までの工程を説明する。骨21には、図3に示すように、骨折治癒促進の為のプレート22がネジ23によってネジ留めされている。本発明は、適切なリハビリの実施時期あるいはプレート22およびネジ23の抜去時期などを決定する際の客観的データを医師および患者に提供する。一般に、骨21が十分癒合していれば図3のような状態のまま運動を許可し、おおむね1年程度経過後プレート22およびネジ23を抜去する。ゆえに、ネジ23がねじ込まれた状態での癒合強度の定量化が重要であるゆえ、以下その方法を詳述する。プレート22およびネジ23の抜去後は、下記工程の「ネジ23」を「ネジ穴」に置き換えれば癒合強度の定量化が可能である。ネジ穴は自然にふさがるが完全にふさがるまでおおむね半年以上かかるため、この期間内継続して本発明を適用することができると考えられる。

【0031】
(癒合強度評価工程)
まず、患者をいすに座らせるなどして患部に荷重ができるだけ作用しないようにし、図4に示すように、癒合部位24と健全部位25の双方をできるだけ大きく、なおかつぼけないよう単純X線撮影する(図5、S1)。具体的には、図4中の矩形R1がX線写真のできあがり寸法となるように、それが困難であれば、できるだけ図4中の矩形R2ができあがり寸法となるように撮影する。実験の結果、拡大撮影すると鮮明さに欠ける傾向があった。撮影倍率(拡大率)と鮮明さのどちらをより重視すべきか予め検討しておくのが好ましい。

【0032】
なお、図4中の矩形R1ができあがり寸法となる場合は、後述する工程S4で「L1」を「L1’」に、「L2」を「L2’」に読み替える。また、後述する工程S41以降では、L1、L2を利用した場合、すなわち図4中の矩形R2ができあがり寸法となった場合について説明している。

【0033】
次に、患部が足であれば体重の1/3-1/4程度の荷重を患部にかけた状態で工程S1と同様のアングルで単純X線撮影する(図5、S2)。具体的には、錘で荷重をかけて撮影すればよい。工程S1およびS2双方のアングルが極端に一致していなくともよい。手間にならない範囲で同様に撮影する。

【0034】
次に、DICOMファイルから画像のみを抽出する(図5、S3)。DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)とは、医療分野で一般に使用されている画像ファイル形式である。DICOMファイルには画像のみならず画像に関するデータも含まれているため、DICOMファイルから画像のみ、すなわち輝度情報のみを抽出するようにしている。もちろん、DICOM以外の画像ファイル形式を採用した場合は、画像のみ抽出する工程S3が不要となる場合もある。

【0035】
最後に、癒合強度を評価する(図5、S4)。具体的には、画像処理技術を利用して、荷重前および荷重中の2枚の写真から図4に示す「L1寸法のひずみ」および「L2寸法のひずみ」を計算する。そして「L2のひずみ/L1のひずみ」を求めれば、それが癒合強度値を表す。以下、本工程S4を更に詳しく説明する。

【0036】
まず、荷重前の写真において、図6中の3つの矩形のように、ネジ23の右半分程度をサブセット領域S1~S3とする(図7、S41)。サブセット領域とは、パターンマッチングのために切り出す小さな領域をいう。パターンマッチは通常、サブセット同士で行う。これらサブセット領域S1~S3は画像相関ソフトの操作者(医師)に指定させる。具体的には、サブセット領域S1~S3の中にネジ23のおよそ右半分程度が完全に入っており、ネジ23以外の画像はあまり含まないよう指定させる。これさえ守られれば領域指定は任意でよい。画像相関ソフトとは、デジタル画像相関法などの画像処理技術を利用したソフトウエアであり、以下、単に「ソフトウエア」という。

【0037】
次に、ソフトウエアは、指定されたサブセット領域S1~S3それぞれの図心(ここでは対角線の交点)を求め、図6に示す荷重前における「L1寸法」および「L2寸法」がそれぞれ何ピクセルかを計算する(図7、S42)。この計算は1/100の桁まで計算する。1/100の桁まで計算するようにしたのは、一般に1/50ピクセル程度が画像処理による変位検出限界と考えられるためである。

【0038】
その後、ソフトウエアは、荷重後の写真の中から、先の3つのサブセット領域S1~S3にもっとも類似している3つのサブセット領域を探索する(図7、S43)。3つのサブセットのみマッチングさせればよいので、かなり非力なコンピュータでも処理できる。この場合の変位は±1ピクセル程度未満であると予測されるゆえ、まずは荷重前の各サブセット位置と同様の位置を荷重後の写真で指定して、そこから±1ピクセル程度を探索範囲に限定して3箇所各々サブピクセルオーダーの精度でパターンマッチングを行う。このように探索範囲を限定することで、異なるネジ23とマッチングする可能性をゼロにできる。画像相関法の中でも類似度法を用いれば、荷重前後で画像の明るさが異なっていても、その影響なくマッチングできる。X線写真は実験の結果、毎回全く同一の明るさで撮影することは困難なことがわかってきた。また、医師の読影のために、意図的に明るさを変化させることもある。ゆえに、明るさの変化の影響を原理上全く受けない類似度法が有効と予想できる。なお、ここでは、±1ピクセル程度を探索範囲とすることとしているが、小児の骨折の場合は±10ピクセル程度を探索範囲とする。小児の骨のヤング率は成人のそれに比して1/10程度になることがある為である。

【0039】
次に、ソフトウエアは、荷重後の写真の中で3つのサブセット位置を決定した後、荷重後における「L1寸法」および「L2寸法」がそれぞれ何ピクセルかを計算する(図7、S44)。この計算は1/100の桁まで計算する。

【0040】
次に、ソフトウエアは、工程S42およびS44の結果を利用して「L1寸法のひずみ」および「L2寸法のひずみ」を計算し、「L2のひずみ/L1のひずみ」*100[%]を求める(図7、S45)。この「L2のひずみ/L1のひずみ」*100[%]は、癒合部位右半分の癒合強度値を表す。例えば、癒合部位のひずみである「L1のひずみ」が、健全部位のひずみである「L2のひずみ」に等しければ癒合強度100%、癒合部位のひずみである「L1のひずみ」が、健全部位のひずみである「L2のひずみ」の2倍であれば癒合強度50%といった具合に患者にもきわめてわかりやすい結果が得られる。あるいは、所定期間(例えば1ヶ月)ごとに癒合率評価を行い、その値の変化の傾向から、治癒度合いを数値で評価できる。これは例えば、骨折部位と健全部位とでは物理的性質及び幾何学的形状が異なるため、完治時前に癒合強度が100%を越える可能性もあり得ることによる。

【0041】
次に、左半分にターゲットを変更して工程S41~S45までを繰り返す(図7、S46)。すなわち、ここでは治癒過程にありがちなケースとして、プレート22に近い右半分だけ効率的に癒合し、プレート22から遠い左半分の癒合が十分でない場合を想定している。この状態を写真から推定するためには熟練の勘が必要である。その状態でプレート22とネジ23を抜去すると再骨折し、再びプレートによる架橋手術が必要となる可能性が高くなるため、是非とも客観的にその半癒合状態を発見できることも望まれている。これに応えるために、先述まで右半分のみをターゲットにし、癒合強度を定量化してきた。ゆえに、以降は癒合部位の左半分に対して癒合強度を定量化するため、左半分にターゲットを変更して工程S41~S45までを繰り返す。

【0042】
以上の明快な解析結果を患者に見せる(図7、S47)。医師は患者の理解を促して不安を解消し、適切なリハビリ荷重や運動の許可などを指示できるほか、プレート22およびネジ23の適切な抜去時期を決定しやすくなる。

【0043】
なお、ここでは類似度法を用いてパターンマッチングする手法について説明したが、画像処理の手法はパターンマッチングに必ずしもこだわる必要は無い。例えば、エッジ検出でネジ23の位置を決定する方法も利用できる。エッジ検出の際はフィルタを利用してエッジを明確化すればよい。よく知られているフィルタにSobel、PrewittあるいはLaplacian等がある。その他、位相相関法および位相限定相関法を用いた画像処理も利用できる。どのような画像処理を用いるべきか予め検討しておくことが好ましい。

【0044】
ここで、撮影方法の工夫について更に詳しく説明する。まず、患者を寝かせるなどしてほぼ無荷重状態で図8に示す骨21のネジ穴23aをレントゲン撮影する。理想的には、図8の枠R3がレントゲン写真のできあがり寸法になるよう可能な限り拡大して撮影する。もし図8のように撮影することが不可能で、撮影倍率3倍が限度なら、図9のように特に構図は気にせず撮影する。次いで、骨折履歴部位24aが足にある場合は患者に錘を載せるなどして圧縮荷重をかけ、手間にならない程度の注意を払ってなるべく先と同様な像となるように撮影する。腕の骨折の場合は、壁などを押させた姿勢などで圧縮荷重をかける。

【0045】
次に、解析原理について更に詳しく説明する。既に説明した通り、デジタル画像相関法などの画像処理技術を利用して、荷重負荷によって発生する図8あるいは図9の「L2のひずみ/L1のひずみ」を計算する。L1=骨折履歴部位、L2=健全な部位ゆえ、この比によって治癒度合いを定量化できる。ここでは「ひずみ」を「伸びた寸法/元の寸法」と定義する。すなわち、「L2のひずみ/L1のひずみ」は0~の値をとり、「L2のひずみ/L1のひずみ」が大きいほど治癒度合いが高く、0に近いほど治癒度合いが低いといえる。

【0046】
次に、面外回転対策について説明する。本発明によれば、面外回転が生じた場合にも問題なく癒合強度を評価することができる。すなわち、図8あるいは図9で面外回転Aが生じた場合、L1およびL2の寸法は同じ比率で変化するため、「L2のひずみ/L1のひずみ」の値に影響はない。面外回転Bが生じた場合も、L1およびL2の寸法は変化しないため問題ない。

【0047】
次に、患者に与えるべき荷重の最低ラインについて説明する。図8あるいは図9に太線で示す3つのネジ穴23aの位置を画像処理で特定し、L1およびL2のひずみを計算する。画像処理の位置決め分解能は一般に1/10ピクセルで、限界は1/50ピクセル程度であり、ピントがあっているか等の画質に依存する。これをふまえて以下の値を仮定する。

【0048】
位置決め分解能=1/40ピクセル
成人の健全な骨のヤング率=20GPa
成人の治癒途上の骨のヤング率=10GPa
成人の脛骨およびひ骨の断面積=6cmおよび1.5cm
脛骨およびひ骨の荷重分担率=9:1
これらの値を用いて治癒度合い定量化実験時に必要な最低荷重を試算する。

【0049】
一般的に、イメージングプレートの1ピクセルは約100ミクロン四方だから、図8の場合、L1およびL2における写真上での寸法は268mmゆえ2680ピクセルである。1/40ピクセルの位置決め分解能だから、ひずみの分解能は(1/40)[pixels]/2680[pixels]=9.33μεである。9.33μεを健全な脛骨に発生させるに必要な荷重P〔kgf〕は数3の通りである。
【数3】
JP0005585956B2_000003t.gif

【0050】
ここで、左辺0.9は脛骨への荷重配分、Aは脛骨の断面積、Eはヤング率、εはひずみを表す。上記を解くと、P=12.7〔kgf〕となる。具体的には、患者に錘を載せる等して荷重を作用させる。

【0051】
図9の場合、L1およびL2における写真上での寸法は108mmゆえ1080ピクセルである。1/40ピクセルの位置決め分解能だから、ひずみの分解能は(1/40)/1080=23.1μεである。23.1μεを健全な脛骨に発生させるに必要な荷重P〔kgf〕は、先の2.48倍だから、P=31.5〔kgf〕となる。患者が成人で骨折履歴部位が足なら片足で立たせることで上記荷重を負荷可能と考えられる。ところで、検査対象が小児骨折ならばヤング率が約1/10になる可能性があり、要求荷重P’は3.15〔kgf〕 となる。例えば身長100cmの6歳児の体重を14.6kg(小児の年齢身長別標準体重の最低値)とすれば、やはり錘などで荷重を負荷できる。

【0052】
次に、サブセット領域の指定を自動化する技術について説明する。すなわち、前記の説明ではサブセット領域S1~S3を医師が指定することとしているが、画像処理装置40が自動的にサブセット領域S1~S3を特定することも可能である。この場合は、例えば図10中の補助線L10から右あるいは左半分だけを解析対象にしてもよい。このようにすれば、プレート22の近傍は癒合していても、プレート22から離れた部位の癒合は不完全といったケースにも対応でき、臨床的にきわめて有益と考えられる。具体的な自動化手順の一例を説明すると、まずはX線写真の中に白く写っているネジ23の位置を求める。次いで、例えば一番上と一番下のネジ23の中点を求め、その中点を通る直線を補助線L10とする。ここで、補助線の右あるいは左半分だけを解析対象とし、複数のネジ間についてひずみを計算し、他のネジ間と比較してひずみの大きいネジ間を癒合部位24として特定するとともに、前記他のネジ間を健全部位25として特定する。このようにすれば、自動的に癒合部位24が特定されるので、医師がサブセット領域S1~S3を指定した場合と同様の効果を得ることができる。

【0053】
以上のように、本実施の形態1によれば、特別な機器を必要とすることなく、なおかつ荷重を作用させた際の仮骨のひずみを観測することに重きを置いた安心かつ安全な癒合強度評価方法及び癒合強度評価装置を提供することができる。特に、本発明は、X線写真と画像処理のみによる癒合強度の定量評価技術として実現できる点で非常に実用的価値が高いと言える。すなわち、現在広く普及しているイメージングプレートを使用したX線写真撮影設備とパーソナルコンピュータしか用いず追加設備は全く不要なため、経済的負担が高まる医療現場において普及する可能性が高い。しかも、本発明によれば、医師は患者の理解を促して不安を解消し、適切なリハビリ荷重や運動の許可などを指示できるほか、プレートおよびネジの適切な抜去時期を決定しやすくなる効果がある。また、同じ骨の癒合部位と健全部位とを比較するようにしているので、骨強度の個人差の影響を受けることなく、精度よく癒合強度を評価することが可能である。更に、ネジだけでなくネジ穴を用いることもできるので、万一プレートの抜去時期を誤った場合にも癒合強度を評価できる点で有用である。加えて、サブセット領域の指定を自動化できるので、医師に新たな負担を強いることがないという効果もある。

【0054】
なお、ここでは癒合強度をパーセントで表示することとしているが、癒合強度の表示態様は患者に理解しやすい態様であればよく、他の表示態様を採用してもよい。例えば、癒合強度を示す「A」「B」「C」などのランクによって癒合強度を表示してもよいし、あるいは、癒合強度の遷移をグラフにして表示してもよい。

【0055】
また、ここでは癒合強度を表示することとしているが、癒合強度を表示することに代えて癒合強度を示す音声を出力するようにしてもよい。すなわち、患者に癒合強度を提示する構成である以上、同様の効果を得ることができる。

【0056】
また、ここでは医療機関で一般的に備えるレントゲン装置を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、X線CTやMRIを用いた場合でも、撮影した画像からネジまたはネジ穴の位置を解析して癒合部位のひずみと健全部位のひずみとを比較すれば、同様の効果を得ることができる。ただし、X線CTやMRIを用いた場合は患者の姿勢が制限されるので、患部に荷重をかける際に患者に姿勢を変えさせる場合は一般的なレントゲン装置が適していると言える。

【0057】
(実施の形態2)
ところで、荷重前と荷重中(荷重後を含む)の2枚の写真の撮影倍率は全く同じであるとは限らず、むしろ異なることが自然である。そこで、本実施の形態2では、2枚の写真の撮影倍率の変化をキャンセルしたうえで癒合強度を評価するための手法を採用している。以下、本実施の形態2を前記実施の形態1と異なる点のみ説明する。

【0058】
図11は、本発明の実施の形態2における癒合強度評価方法を示す図である。図11(a)は荷重前の写真を示し、図11(b)は荷重中の写真を示している。ここで、図11(a)から図11(b)へは不本意にも撮影倍率がx倍(荷重前=1、荷重中=x)に変化していると仮定し、荷重解放によるa寸法の伸びをΔa、荷重解放によるa寸法の伸びをΔaとして以下のひずみ比の計算を行う。ここでは、荷重前に撮影された画像を、荷重中に撮影された画像に対して、荷重が解放された状態ととらえている。
【数4】
JP0005585956B2_000004t.gif

【0059】
数4の最右辺を見ると、癒合強度であるひずみ比を得るには分子及び分母の「1」をそれぞれ消去するか、「1」の影響が無視できるようεを拡大すればよいことが分かる。後者の方法を以下に述べる。

【0060】
一般に、ひずみは0.1%以下の微少量であるため、εは無視できる。ゆえに、
【数5】
JP0005585956B2_000005t.gif

【0061】
となる。従って、数4をn乗することで分子及び分母の「1」の影響を自由にコントロールすることが可能となる。一般的に、荷重前と荷重中とで撮影倍率を同一にすることは、とりわけ被写体が人体の場合は困難である。ところが、上述の考え方を適用することで、撮影倍率xがいかに変化しようとも、その影響を受けることなく癒合強度を算出できる。

【0062】
以上のように、本実施の形態2によれば、荷重前と荷重後の2枚の写真の撮影倍率が異なる場合でも、その2枚の写真の撮影倍率の変化を癒合部位のひずみと健全部位のひずみとに基づいてキャンセルしたうえで癒合強度を評価することができる。その他、前記実施の形態1と同様の効果が得られることはもちろんである。

【0063】
(実施の形態3)
前記実施の形態1では、骨のひずみに基づいて癒合強度を評価することとしているが、癒合強度の評価方法はこれに限定されるものではない。以下、本実施の形態3を前記実施の形態1と異なる点のみ説明する。

【0064】
図12は、横軸を荷重W、縦軸を骨の角度θとして荷重と角度の関係を表した特性曲線を示す図である。この図に示されるように、荷重Wが増加するに従って骨の角度θも大きくなることが知られている。骨の角度θとは癒合部位24を境界とする2つの骨の交差角度であり、この交差角度は写真を画像処理することによって求めることができる。

【0065】
そこで、荷重変化ΔWと角度変化Δθとから変化率Δθ/ΔWを算出するようにしてもよい。この値が0に近いほど治癒度合いが高いといえる。

【0066】
以上のように、本実施の形態3によれば、癒合部位を境界とする2つの骨の交差角度の変化に基づいて癒合強度を評価することが可能である。その他、前記実施の形態1と同様の効果が得られることはもちろんである。

【0067】
なお、本発明は骨の癒合強度評価のみならず、構造物一般の強度あるいは劣化評価に広く利用できる。すなわち、例えば、橋梁上に自動車が渋滞している状態と、そうでない状態とで、特定の構造上重要な部材間のひずみ比を数年ごとに観測することで、劣化度合いが数値で管理でき、補強工事などの明確な指針とできる。この場合は、「健全」と仮定している部分と、「劣化している」と仮定している部分とで同様に劣化した場合は検出できない為、同時にいくつもの部材間をターゲットとし、ひずみ比の分布を得ることで、相対的に劣化の激しい箇所を発見し得るよう工夫する。

【0068】
同様の原理で、立体駐車場の劣化評価もできる。すなわち、入庫前および入庫中とで構造上重要な部材間のひずみを定期的に観測する。

【0069】
あるいは、例えば溶接修理前後で本法を適用することで、溶接修理で発生したひずみを評価することも可能である。

【0070】
さらに例えば、ねじの増し締め前後で本法を適用することで、増し締めで発生したひずみを評価することも可能である。

【0071】
さらには、航空機の安全管理にも応用できる。この場合は、就航後定期的に観測することで飛行による劣化を度合いを管理できる。

【0072】
いずれの場合も、撮影するだけでよいため、非破壊、非接触であり、撮影器具とPC以外特別な機材も要求せず、さらには測定対象物の運用を阻害することなく評価を行い得るため、コストも低廉となることが予測でき、きわめて社会的に有益である。
【符号の説明】
【0073】
10 X線源
20 被写体
21 骨
22 プレート
23 ネジ
23a ネジ穴
24 癒合部位
25 健全部位
30 イメージングプレート
40 画像処理装置
50 表示装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11