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明細書 :プラスチックまたはプラスチック複合材料の処理方法及び処理装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5904487号 (P5904487)
公開番号 特開2013-146649 (P2013-146649A)
登録日 平成28年3月25日(2016.3.25)
発行日 平成28年4月13日(2016.4.13)
公開日 平成25年8月1日(2013.8.1)
発明の名称または考案の名称 プラスチックまたはプラスチック複合材料の処理方法及び処理装置
国際特許分類 B01J  23/26        (2006.01)
C08J  11/16        (2006.01)
FI B01J 23/26 ZABM
C08J 11/16
請求項の数または発明の数 3
全頁数 14
出願番号 特願2012-006925 (P2012-006925)
出願日 平成24年1月17日(2012.1.17)
審査請求日 平成27年1月13日(2015.1.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】水口 仁
【氏名】高橋 宏雄
審査官 【審査官】山田 貴之
参考文献・文献 特開2005-139440(JP,A)
特開2008-221088(JP,A)
特開2010-214359(JP,A)
特開2009-220009(JP,A)
特開2012-211223(JP,A)
調査した分野 B01J 23/26
B29B 17/00
B01J 21/00-38/74
特許請求の範囲 【請求項1】
被処理物であるプラスチックまたはプラスチック複合材料の表面に、多孔体の表面に半導体を担持した触媒担持ハニカムを接触させ、酸素存在下において、前記半導体が真性電気伝導領域となる温度で被処理物とともに前記触媒担持ハニカムを加熱することにより、プラスチックまたはプラスチック複合材料のポリマーを分解することを特徴とするプラスチックまたはプラスチック複合材料の処理方法。
【請求項2】
被処理物であるプラスチックまたはプラスチック複合材料板の表面に、多孔体の表面に半導体を担持した触媒担持ハニカムを接触させた状態で、前記被処理物と前記触媒坦持ハニカムを前記半導体が真性電気伝導領域となる温度に加熱する加熱炉と、該加熱炉内にエアを供給するエアの供給機構と、を備えることを特徴とするプラスチックまたはプラスチック複合材料の処理装置。
【請求項3】
前記処理装置の前記加熱炉の後段に、多孔体の表面に前記半導体を担持した前記触媒担持ハニカムを備え、前記半導体が真性電気伝導領域となる温度に前記触媒坦持ハニカムが加熱されることにより、前記加熱炉からの被処理気体を分解、浄化するVOC浄化装置を連結することを特徴とする請求項2に記載のプラスチックまたはプラスチック複合材料の処理装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチック(FRP)、モールド・モータ等のプラスチック複合品(以下、プラスチック複合材料という)からポリマー母体を選択的に酸化分解し、繊維強化物あるいはモールド物を回収すること、ならびに廃ポリマー等の一般のプラスチック製品を効率的にかつ確実に分解処理することを可能とする、プラスチックまたはプラスチック複合材料の処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者の1人は、有機物、ポリマー、ガス体等の被処理物を分解する方法として、半導体を真性電気伝導領域(以下、真性領域と略記)となる温度に加熱して電子・正孔キャリアーを大量に発生させ、被処理物を酸化力の強い正孔に接触させ、酸素の存在下において被処理物を完全分解する処理方法について提案した(特許文献1)。詳細に述べると、分解反応は以下の3つの素過程から構成される(非特許文献1、2)。第一過程は、温度上昇と共に半導体内に指数関数的に生成される大量キャリアーの生成過程である。電子・正孔キャリアーの内、強力な酸化力を持つ正孔が被処理物であるポリマーに接触すると、ポリマーから結合電子を引き抜き、ポリマー内にカチオン・ラジカルを生成する。この不安定なラジカルはポリマー中を伝播してポリマー全体を不安定化し、巨大分子であるポリマーを次々と裁断して小分子化する(ラジカル開裂と小分子化:第二過程)。最終過程は小分子化された分子と空気中の酸素との燃焼反応であり、水と二酸化炭素に完全分解される(完全燃焼)。
【0003】
本発明者は、上記の分解作用を利用して、有機物、ポリマー、ガス体等を分解する方法として、ポリマー用混錬機に酸化チタン等の半導体粉末とポリマーの混合物を投入し、混錬機中を移動させながら混合物を加熱することによりポリマーを分解する方法、ヒートローラに酸化チタン等の半導体粉末とポリマーの混合物を供給し、ヒートローラ間に混合物を巻き込むようにしてポリマーを分解する方法等を提案した(特許文献1)。
また、有害ガス等の気体を浄化する方法として、酸化チタン等の酸化物半導体の流動床にガスを導き浄化する方法(特許文献1)やハニカム構造等の多孔性基材に半導体(酸化物半導体)を担持した基板と、発熱体とを一体化させた構造体(以下、この構造体を「触媒ユニット」という)を用いて処理気体を分解する方法を提案した(特許文献2)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許4517146号
【特許文献2】特開2010-214359号公報
【0005】

【非特許文献1】J. Mizuguchi and T. Shinbara: Disposal ofused optical disks utilizing thermally-excited holes in titanium dioxide athigh temperatures: A complete decomposition of polycarbonate, J. Appl. Phys. 96,3514-3519 (2004).
【非特許文献2】T. Shinbara, T. Makino and J.Mizuguchi:Complete decomposition of polymers by means of thermally generatedholes at high temperatures in titanium dioxide and its decomposition mechanism,J. Appl. Phys 98,044909 1-5 (2005).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリマー等の被処理物を半導体粉末で分解する従来方法においては、半導体が被処理物に対しできるだけ有効に作用するよう、被処理物と同等程度の十分な量の半導体粉末を作用させていた。このため、大量の半導体粉末を必要とすること、さらに、大量の粉末を加熱する電力も大きな問題点であった。
【0007】
また、少量の被処理物を処理する場合には、被処理物と半導体との接触、ならびに、これらと酸素(空気)との接触も十分であるのでポリマーの完全分解を容易に達成できる。しかし、被処理物を大量に処理するような場合には、反応炉の下部に位置する“半導体/ポリマー”は空気層から離れるため、十分な攪拌を行っても酸素の供給が不十分となり、小分子化されたポリマーのフラグメントの完全燃焼は難しい。この結果、小分子化されたガスが大量に吹き上がり、異臭を発生する。さらに、この不完全燃焼ガスが粉体の攪拌によりバルクから空気中に放出されると、空気中の酸素と反応して発火し、煤をともなった黒煙が舞い上がることもあった。
【0008】
また、繊維強化プラスチックやモールドモータのようなプラスチック複合製品を分解処理する場合、従来方法では、被処理物を適当な大きさに破砕しこれに半導体粉末を加えて混合物として分解処理している。したがって、分解処理後には、被処理物の残留物と半導体粉末との分離が難しく、篩等で所望の素子の分離を行うといった煩雑さがあった。また、半導体粉末に分解後の残留物の粉体が混入するため、半導体粉末の分解効率が下がり、半導体の入れ替えを頻繁に行う必要があった。被処理物の残留物が混入した半導体をリサイクルすることは困難であり、産業廃棄物となるということも問題であった。
【0009】
本発明は、プラスチック複合材料からポリマー母体を選択的に酸化分解し、繊維強化物あるいはモールド物を回収すること、また廃ポリマー等のプラスチック製品を効率的にかつ確実に分解処理することを可能とする、プラスチックまたはプラスチック複合材料の処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るプラスチックまたはプラスチック複合材料の処理方法は、被処理物であるプラスチックまたはプラスチック複合材料の表面に、多孔体の表面に半導体を担持した触媒担持ハニカムを接触させ、酸素存在下において、前記半導体が真性電気伝導領域となる温度で被処理物とともに前記触媒担持ハニカムを加熱することにより、プラスチックまたはプラスチック複合材料のポリマーを分解することを特徴とする。
【0011】
図1に、本発明におけるプラスチックまたはプラスチック複合材料の分解作用を示す。
本発明に係る分解作用は、(1)半導体を真性領域にまで加熱することにより、正孔キャリアーを大量に生成させる、(2)半導体と被処理物との界面において正孔キャリアーの作用により被処理物のポリマーが酸化されてカチオン・ラジカルが生成され、ラジカルがポリマー鎖の中を伝播し、ポリマー鎖全体を不安定化し、巨大ポリマー分子を裁断して小分子ラジカルを生成する(ラジカル開裂:ラジカルの自己増殖)、(3)小分子化されたフラグメントが空気中の酸素と反応して水と二酸化炭素に完全分解(完全燃焼)される作用からなる。
【0012】
ポリマー内にいったんラジカルが生成されると巨大ポリマー分子は不安定となり、小分子のラジカルへと次々に裁断化される(ラジカル自己増殖作用:ラジカル開裂)。ひとたび、ラジカルが生成されると、ラジカル開裂はポリマーの温度が上がっているので自発的に進行し、半導体が常にポリマーと接触している必要はない。つまり、熱励起により生成した正孔の酸化作用は、ポリマーのラジカル開裂を誘起する開始剤となるラジカル種を生成させることである。したがって、半導体は、被処理物であるプラスチックまたはプラスチック複合材料の表面にのみ接触させることによって、ポリマー全体を分解する作用を誘起することができる。すなわち、半導体は被処理物を処理開始する当初において被処理物の表面に接触するのみで十分である。
【0013】
光ディスク基板材料であるポリカーボネートを半導体粉末と共に加熱するとポリカーボネートが完全分解される例を示す。パスツール管に粒状のポリカーボネート1gを入れ、空気中500℃で30分加熱するとポリカーボネートは約200℃で融解し液体となり、その後沸騰し、最後は炭化する。これに対し、パスツール管に1gのポリカーボネートと3gの酸化チタン(TiO2)粉末の混合物を、先と同様に空気中500℃で30分加熱すると、ポリカーボネートは消失し、純白のTiO2のみが残存した。この時のガスを質量分析計で分析したのが図2である。空気の成分である窒素(28番)と酸素(32番)のピークの他に、水(H2O:18番)と二酸化炭素(CO2:44番)が観測されている。更に、40番のピークはCaであり、これはポリカーボネートの中に含まれている滑剤のカルシウム石鹸のCaである。この実験は分子量が25000もあるポリカーボネートが空気中、TiO2の存在下で一瞬にして水と炭酸ガスに分解されることを示している。
【0014】
これに対し、同様の実験を空気中ではなく真空中で行った結果を図3に示す。この質量スペクトルには多くのフラグメントが認められ、ポリカーボネートが裁断化(小分子化)されていることは明らかであるが、空気中で行った実験結果とは異なっている。この結果は、空気を導入するとこれらのフラグメントが消失し、水と炭酸ガスのピークとなることを示している。つまり、ポリカーボネートを水と炭酸ガスに分解するには酸素が不可欠であり、フラグメント分子は酸素と反応して完全燃焼すること明らかになった。この分解過程は図1で示したメカニズムにより進行している。
【0015】
本発明における被処理物としては、繊維強化プラスチックや、金属部品あるいは電子部品、回路基板等を内包したプラスチック複合品の他に、強化繊維等を内包していない廃ポリマー等のポリマーのみからなるプラスチック品も対象となる。本発明方法によれば、被処理物を破砕することなく原形のまま処理できるから、繊維強化プラスチックのようなプラスチック複合品では、被処理物のポリマー部分が選択的に分解除去され、強化繊維や金属部品といった内包物がそのまま回収される。被処理物を分解処理する温度は350℃~500℃であり、強化繊維や金属部品等の内包物に影響を与えることはない。被処理物に内包されていた炭素繊維やガラス繊維は破断されずに回収されるから、強化繊維等として再利用することができ、回収された金属部品等は分別して安全に廃棄処理することができる。
【0016】
本発明方法において分解対象となる被処理物のポリマーの種類も、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を問わず、限定されない。
例として、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂、ポリアミド、ポリイミド、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、石油樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリブテン、フッ素樹脂、ポリアクリレート等の熱可塑性ポリマーがあり、フェノール樹脂、ウレタンフォーム、ポリウレタン、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂等の熱硬化性ポリマーがある。熱硬化性ポリマーを使用している被処理物を分解する場合は、熱可塑性ポリマーを分解する場合よりも分解温度を多少高く設定する。
【0017】
本発明における半導体の作用は、熱励起により正孔キャリアーを大量に生成し、正孔キャリアーの酸化作用をポリマーに及ぼしてポリマー内にラジカルを生じさせることにある。本発明で使用できる半導体は高温、酸素雰囲気で安定な半導体で、主として酸化物半導体である。この他、CdSやSiCのような半導体も当然のことながら含まれる。酸化物半導体の例として、BeO、CaO、CuO、Cu2O、SrO2、BaO、MgO、NiO、CeO2、MnO、GeO、PbO、TiO、VO、ZnO、FeO、PdO、Cu2O、Ag2O、TiO2、Tl2O、MoO2、PbO2、IrO2、RuO2、Ti2O3、ZrO2、Y2O3、Cr2O3、ZrO2、WO3、UO2、MoO3、WO2、SnO2、Co3O4、Sb2O3、Mn3O4、Ta2O5、V2O5、Nb2O5、MnO3、Fe2O3、Y2O2S、MgFe2O4、NiFe2O4、ZnFe2O4、ZnCo2O4、MgCr2O4、FeCrO4、CoCrO4、CoCrO4、ZnCr2O4、CoAl2O4、NiAl2O4等がある
【0018】
半導体を被処理物の表面に接触させる方法として、被処理物の表面にあらかじめ半導体を付着させる方法が利用できる。半導体を付着させる際には、被処理物であるプラスチック複合材料の表面に薄く(10μm程度でよい)付着させるのみでよく、驚くべきことに厚さが2、3cmを超えるようなプラスチック複合材料の分解処理においても、被処理物の表面にのみ半導体を付着させることで完全に分解できる。
【0019】
被処理物の表面に半導体を付着させる方法としては、半導体粉末の懸濁液に被処理物をディップして表面コーティングする方法、あるいは被処理物に懸濁液をスプレーして表面コーティングする方法が利用できる。ディップ法では形状が複雑は被処理物体や、壷のような物体の内側にも塗布することができ有効である。懸濁液にはバインダーとしてのポリマーや分散性を向上させる分散剤を含んでいると、被処理物の表面に薄くかつ均一に、半導体粉末のコーティング層を形成することができる。ポリマーは溶剤に溶解する熱可塑性ポリマーでポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂、ポリアミド、ポリイミド、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、石油樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリブテン、フッ素樹脂、ポリアクリレートやニトロセルロース等も有効である。
【0020】
被処理物の表面に半導体を接触させる方法は、上記方法に限らず、例えば、被処理物の表面に半導体の粉体を載せるだけでもよい。板状のポリカーボネートの表面に、部分的に酸化物半導体(酸化クロム)を載せ、500℃程度に加熱してポリカーボネ-トの分解の様子をみたところ、ポリカーボネート板がすべて分解されることを確認している。
【0021】
さらに他の方法として、セラミクス等からなる多孔体(たとえば、ハニカム状支持体)の表面に半導体(主として酸化物半導体)を担持した基板(以下、「触媒担持ハニカム」という)の上に被処理物を載せて処理する、あるいは触媒担持ハニカムにより被処理物を挟むようにして被処理物を処理することも可能である。この場合、被処理物は触媒担持ハニカムに担持されている半導体に接触することにより分解処理される。
このように、半導体はなんらかの方法により被処理物の表面に接触する状態が得られればよい。半導体粉末を含む粘着テープを被処理物に貼付することや、被処理物の表面に粘着剤をスプレーし、半導体粉体を付着させる方法も可能である。
【0022】
本発明に係る処理方法においては、ポリマー中に生成されたラジカルの増殖作用により、小分子となったポリマーのフラグメントが酸素と反応して完全分解される。ポリマー中においてラジカルが自己増殖する作用はきわめて迅速(約20ミリ秒)であり、フラグメント分子は一瞬にして酸素と反応する。したがって、ポリマーの分解時には十分な酸素を供給する必要がある。酸素の供給が不十分であるとフラグメント分子は完全燃焼できず、被処理物から放出される。フラグメント分子は異臭を発するばかりでなく、反応炉と空気の界面で酸素と反応して発火することもある。被処理物が強化繊維や金属部品等の内包物を有する場合は、内部構造が複雑になるため被処理物の内部への酸素の供給が不十分になりこのような問題が生じやすくなる。
【0023】
被処理物への酸素欠乏状態で発生する異臭や発火を防ぐ手段として、炉内に置かれた被処理物の周囲に、前述した「触媒担持ハニカム」を配置し、この触媒担持ハニカムを通して空気(あるいは酸素)を流すことにより被処理物から放出されるフラグメント・ガスをただちに水と二酸化炭素に分解する方法が有効である。
必要なら、触媒担持ハニカムと発熱体から構成される「触媒ユニット」を配置し、所望の温度を自在に確保するようにすることもできる。触媒担持ハニカムあるいは触媒ユニットを用いると酸素の供給も十分に行えるので、フラグメント・ガスは完全分解され、異臭は一掃され、発火することもなく、被処理物の分解処理は安定に進行する。被処理物の分解反応が終了すると、反応熱が放出されないため電気炉に投入するパワーが上昇するので、反応の終点を容易に知ることができる。
【0024】
触媒担持ハニカムあるいは触媒ユニットは、被処理物であるプラスチック複合材料の形状や大きさ等により適宜配置すればよい。被処理物と触媒担持ハニカムあるいは触媒ユニットとを離間させて配置してもよいし、接触させて配置してもよい。
前述した触媒担持ハニカム上に被処理物を載せて分解処理する方法の場合は、被処理物から放出されるフラグメント・ガスを水と二酸化炭素に分解する触媒担持ハニカムの作用を併せて利用できるという利点もある。
【0025】
被処理物の処理装置の後段に、触媒担持ハニカムと発熱体から構成される触媒ユニットを複数段積層した揮発性有機化合物(VOC)の浄化装置を連結する方法も有効である。つまり、被処理物の処理装置で発生するフラグメント・ガスを次段に連結される浄化装置でただちに浄化するシステムである。浄化装置は半導体(触媒)による気体の浄化方法を利用する装置(特許文献2)であり、触媒ユニットの半導体(主として酸化物半導体)を真性領域の温度にまで加熱し、被処理気体(ここではフラグメント・ガス)を触媒担持ハニカムに通過させることにより、これに含まれる有機物や有毒ガスを分解浄化する。被処理物の処理装置にこの浄化装置を連結することにより、被処理物を分解処理する際に生じる有機物や有毒ガスを無害化し、有機物や有毒ガスが処理装置から外部に排出されることを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るプラスチックまたはプラスチック複合材料の処理方法及び処理装置によれば、プラスチックまたはプラスチック複合材料を構成するポリマーを効率的に分解処理することができ、被処理物が強化繊維あるいは金属部品等の内包物を有する場合には、これらの内包物を容易に回収して、再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】半導体(酸化チタン)の熱活性を利用した分解メカニズムを示す図である。
【図2】酸化チタン存在下、空気中におけるポリカーボネート分解のガス分析結果を示すグラフである。
【図3】酸化チタン存在下、真空中におけるポリカーボネート分解のガス分析結果を示すグラフである。
【図4】被処理物であるCFRP(a)と、CFRPの表面に半導体を付着させた被処理物(b)の斜視図である。
【図5】被処理物を分解処理する処理装置の構成を示す図である。
【図6】分解処理に使用したカーボン・ファイバー強化プラスチック(CFRP)の平面写真である。
【図7】CFRP内に充填されていた炭素繊維の織布の写真である。
【図8】処理装置の他の構成例を示す図である。
【図9】モールドモータを分解処理して回収したコイルの写真である。
【図10】回収したコイルを開いた状態を示す写真である。
【図11】モールドモータの回路基板を分解処理して得られたガラス・エポキシ基板の写真である。
【図12】処理装置に浄化装置を連結した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の処理例)
以下では、炭素繊維の織布を強化繊維として使用した繊維強化プラスチック(CFRP)を被処理物として分解処理する方法例について説明する。炭素繊維は450℃以上では酸素と反応して、二酸化炭素となりガス化する。このため、処理温度は400℃として実験を行った。

【0029】
図4(a)は、エポキシ樹脂11をポリマー母体とし、これを積層した炭素繊維の織布12に浸み込ませ、熱硬化させた板状のCFRPの概念図である。この被処理物10の表面に、まず、被処理物10の分解処理に使用する半導体として酸化クロムの被膜13を形成する。被処理物10を酸化クロムの粉体の懸濁液にディップし、引き上げることにより、被処理物10の表面に酸化クロムの被膜13を形成する。酸化クロムの被膜13の厚さは10μm程度で十分である。図4(b)は、酸化クロムの被膜13を形成した被処理物10aを示す。本実施形態においては被処理物10の分解に利用する半導体として酸化クロムを使用したが、酸化ニッケル、酸化鉄等の他の半導体を使用することも可能である。

【0030】
図5は、被処理物10aの分解処理に用いた処理装置の概略構成を示す。この処理装置は、加熱炉20内に、被処理物10aを厚さ方向に挟む配置に触媒ユニット22a、22bを配置し、触媒ユニット22aの下方に加熱機構としてのヒータ24を配置し、被処理物10aと触媒ユニット22a、22bとを包囲するようにヒータ25を配置したものである。
触媒ユニット22a、22bは、セラミックス等からなるブロック形状の多孔体の表面に半導体(たとえばCr2O3)を担持させた触媒担持ハニカムと、この触媒担持ハニカムを加熱する発熱体とを一体に形成したものである。図5では、発熱体を省略している。

【0031】
加熱炉20の下部にエアの供給機構26が設けられ、必要に応じて加熱炉20に導入されたエアはヒータ24によって加熱され、触媒ユニット22a、22bが冷却されることを防止する。被処理物10aは触媒ユニット22a、22bとともにヒータ24、25により、被膜13の酸化クロムが真性領域になる温度にまで加熱される。
なお、処理装置の他の構成として、加熱炉を所定の長さの横型炉とし、加熱炉内を、触媒ユニットの上に被処理物をのせ、あるいは触媒ユニットにより被処理物を囲む状態を保持しながら、搬送コンベアにより被処理物を通過させて分解処理する構成とすることもできる。このように連続的に被処理物を搬送しながら分解処理する方法によれば、大量の被処理物を効率的に処理することができる。

【0032】
酸化クロムの被膜13が施されたCFRP板は400℃に加熱することにより、被膜13の酸化クロムは大量に正孔キャリアーが生成される真性領域となる。生成された正孔キャリアーは、被膜13が接触する被処理物10aの界面でエポキシ樹脂11を酸化し、ポリマー中にカチオン・ラジカルを生成する。このラジカルは自己増殖しながら、被処理物10aのポリマー内を伝播し、ポリマーを次々と小分子化し、小分子となったポリマーのフラグメント分子は酸素と反応し、二酸化炭素と水に分解され、ポリマー全体が完全に分解される。

【0033】
前述したように、ポリマーが酸化されてポリマー中に生成されたラジカルの自己増殖が始まると、ポリマーの分解が一挙に進み、被処理物10aへの酸素の供給が不十分な場合には、被処理物10aから、フラグメント・ガスの放出に起因する臭気性のある白っぽい煙が発生する。この煙は、既に小分子化された分子集団であり、触媒ユニットで処理をしないと、炉内で酸素と反応して発火し、黒煙をあげることがある。この燃焼熱によって炉内は600℃を超える温度となる場合もあり、危険なばかりでなく、安定な分解反応の妨げとなる。

【0034】
触媒ユニット22a、22bは、多孔体の表面に半導体粒子が担持され、高温に加熱することにより、強力な酸化作用を有する。この触媒ユニット22a、22bの酸化作用により、被処理物10aから放出される放出物(放出ガス)はただちに酸化分解される。これによって、発火を抑え、加熱炉内において温度が暴走することを防止することができる。

【0035】
このように、触媒ユニット22a、22bは、被処理物10aを分解処理する際の加熱炉20内の処理環境を改善し、被処理物10aに十分に酸素を供給して被処理物10aの完全分解を促進させ、あわせて加熱炉20内で発火等が生じることを防止し、安全にかつ効率的に被処理物10aを分解処理する作用を有する。とくに、被処理物のポリマー部分の厚さが3cm以上といった大型のプラスチック複合品を処理するような場合には、触媒ユニットを被処理物の周囲を囲むように配置して処理する方法が有効である。

【0036】
図6は、上述した処理装置を用いて実際の分解処理に使用したCFRP板である。このCFRP板は、エポキシ樹脂をポリマーとして炭素繊維の織布をモールドしたもので、厚さは約4mmである。
図7は、このCFRP板の表面に半導体として酸化クロムをコーティングし、400℃の加熱炉で10分処理した状態を示す。図7は、CFRP板を分解処理した後、多孔体の触媒ユニットの上に炭素繊維の織布が残った状態を示している。CFRP板を構成していたポリマー(エポキシ樹脂)が内部の微細な繊維の隙間部分まで完全に分解されて除去され、炭素繊維の織布のみが残っている。

【0037】
半導体は被処理物の表面にわずかに付着させて被処理物を分解するから、処理後にエアブロー等により、使用した半導体を取り除くことは容易であり、仮に、半導体が炭素繊維に付着して残ったとしても炭素繊維の再利用の妨げになることはない。本方法では、あらかじめ被処理物を破砕して処理する必要がなく、被処理物を原形のまま分解処理することができるから、処理操作が簡単であり、プラスチック複合材料に内包されている内包物をそのまま回収することができる。

【0038】
(他の処理方法)
上記処理例では、被処理物の分解処理を安定して行うため触媒担持ハニカムと発熱体とを一体化した触媒ユニット22a、22bを使用した。加熱炉20のヒータ24、25のパワーが十分に大きく、触媒ユニット22a、22bの温度が被処理物10aの温度と同程度である場合には、触媒ユニット22a、22bのかわりに発熱体を省いた触媒担持ハニカムを用いることができる。

【0039】
また、ポリマーの種類にもよるが、被処理物の表面にポリマーの分解に利用する半導体の被膜を設けることなく、単に、多孔体の表面に半導体を担持させた触媒担持ハニカムに接触させて加熱するだけで十分に分解させることが可能である。ポリマー母体がエポキシ樹脂のような熱硬化型樹脂(3次元ポリマー)ではなく、比較的分解しやすい2次元的な熱可塑性ポリマーの場合にはとくに有効である。
触媒担持ハニカムに被処理物を接触させて、被処理物とともに触媒担持ハニカムを加熱すると、触媒担持ハニカムに担持された半導体の作用により、被処理物のポリマーのラジカル開裂が誘起されて被処理物が分解される。

【0040】
図8は、図5に示した処理装置を用いて被処理物を分解処理する際に、多孔体からなる基板(以下、「多孔体基板」という)の上に、表面に半導体の被膜13を施した被処理物10aをのせて分解処理する例を示す。この例では、被処理物10aの被膜13の半導体がヒータ24、25により真性領域になる温度に加熱されることにより、被処理物10aのポリマー中にカチオン・ラジカルが生成され、カチオン・ラジカルが自己増殖する作用によりポリマーが小分子化され、多孔体基板23を通過して空気が供給されて、ポリマーの小分子が完全燃焼し、被処理物13が分解処理される。このように、被処理物を分解処理する場合に、多孔体基板を使用して処理することも可能である。

【0041】
被処理物を処理する際に、被処理物の表面に分解用の半導体の被膜を設けるかわりに、多孔体基板の表面の被処理物を置く領域に半導体(粉体)をあらかじめ付着させ、あるいは半導体を含むポリマーシートを貼付しておいて分解処理することもできる。
また、触媒担持ハニカムあるいは多孔体基板の上に被処理物を載せて処理する際に、触媒担持ハニカムあるいは多孔体基板の上に半導体の粉体をあらかじめ付着させておき、その上に被処理物を載せることにより、被処理物に半導体を作用させて処理することも可能である。

【0042】
被処理物にディップ法等により半導体を付着させる場合は、被処理物をむらなく分解できるように、被処理物の表面に均一に半導体を付着させる。被処理物が比較的薄い板状のものであれば、被処理物の一方の面のみに半導体の被膜を形成して、被処理物全体を分解することも可能である。
また、被処理物を部分的に分解させるような場合、例えば、被処理物を部分的に分解して被処理物に開口部を設けるといった場合には、被処理物で開口させたい部分のみに半導体を付着させ、この部分をロッド・ヒーターあるいはレーザー等の手段で局所的に加熱すれば良い。基本的には加熱された部分のポリマーのみが分解されるが、深さ方向ばかりでなく、平面方向にも若干開口部が広がることがあるので、開口径を制御する必要がある場合は、ポリマーが分解される度合いを考慮して半導体を付着させる範囲を設定することが好ましい。

【0043】
(第2の処理例)
図9は、本方法によりモールドモータを分解して回収したコイル部分、図10は回収したコイルの連結部分を外してコイルを開いた状態を示す。
モールドモータでは、ローターと呼ばれる回転磁石とステイターと呼ばれるコイル部分は熱硬化性モールド樹脂で個別にモールドされている。このようなプラスチック複合材料についても、本発明方法を利用することによって、樹脂部分を完全に分解除去して、ローター、ステイター(コイル部分)のみを回収することができる。
この処理例では、モールドモータを酸化クロムの分散液にディップして、モールドモータの外面に酸化物半導体として酸化クロムの被膜を形成した後、この被処理物を400℃に加熱した加熱炉で分解処理した。処理時間は約20分である。

【0044】
取り出されたコイル部分を観察すると、コイルの線材の隙間部分や構成部材の微細な隙間部分から完全に樹脂が除去されており、本発明方法による分解除去方法がきわめて強力でかつ有効であることがわかる。このように樹脂部分が内部にわたって完全に分解されていることからも、ポリマーが酸化されて生じたラジカルがポリマーの中を伝播しながら自己増殖・フラグメント化を繰り返し、最終的には水と炭酸ガスに完全分解したことがわかる。

【0045】
(第3の処理例)
図11は、モールドモータに設けられていた樹脂基板(ガラス・エポキシ基板)を分解した例である。このガラス・エポキシ基板は、樹脂基板上に配線や電子部品が搭載されていたものである。本発明に係る処理方法によって分解処理したことにより、ガラス・エポキシ基板中にモールドされていたガラス繊維の織布と、基板に形成されていた導体部分が出現すると同時に、基板に搭載されていたICチップ等の電子部品の樹脂部分は完全に分解されていることが分かる。

【0046】
このように、プラスチック複合材料のポリマー部分を完全に分解し、ポリマー以外の内包物をそのまま残留させることにより、プラスチック複合材料の内包物を再利用することができる。さらに、内包物を分別して廃棄処理を行うことにより、従来は分別処理がほとんどなされていないプラスチック複合材料の廃棄処理をより安全にかつ効率的に行うことが出来る。

【0047】
(処理装置の他の構成例)
本発明に係る処理方法においては、プラスチックまたはプラスチック複合材料を処理する際に、分解処理する被処理物が大量にあるとフラグメント・ガス等の放出ガスが大量に発生する。放出ガスは前述した触媒ユニットを利用することで二酸化炭素と水に分解することができるが、場合によっては、触媒ユニットを使用しても放出ガスが分解されずに処理装置から排出される場合があり得る。また、被処理物を処理した際に有害ガスが発生するといったことが起こり得る。このような場合には、被処理物の処理装置の後段にVOC浄化装置(揮発性有機化合物の浄化装置)を連結し、分解されずに排出された放出ガスや有毒ガスを浄化するようにするとよい。

【0048】
図12は、前述した処理装置の加熱炉20の後段に連結ダクトを介してVOC浄化装置30を設置した例である。
VOC浄化装置30では、容器31の内部に触媒ユニット34a、34b、34cを被処理気体の通流方向に対して交差する向きに三段に配置している。各々の触媒ユニット34a、34b、34cは、多孔体(たとえば、ハニカム状支持体)の表面に半導体(主として酸化物半導体)を担持した触媒担持ハニカム32a、32b、32cと、これらを加熱する発熱体としてのヒータ33a、33b、33cとからなる。

【0049】
触媒ユニット34a、34b、34cは触媒担持ハニカム32a、32b、32cとヒータ33a、33b、33cとにより一体化され、任意の設置段数とすることができる。触媒ユニット34a、34b、34cは、ヒータ33a、33b、33cにより触媒担持ハニカム32a、32b、32cに担持された半導体が真性領域となる温度(350℃~500℃)に加熱することにより強力な酸化作用を備える。触媒担持ハニカム32a、32b、32cは多孔体として形成されているから、担持されている半導体と被処理気体とが接触しやすく、被処理気体に含まれる被処理物10aからの放出ガス等の有機化合物を確実に酸化分解することができる。
なお、浄化装置は、被処理物を処理する加熱炉20から排出されるガスの廃熱を触媒ユニット34a、34b、34cの加熱に利用する熱交換器を装備する構成とすることもできる。

【0050】
本実施形態のように、被処理物を分解処理する処理装置の後段に浄化装置を設置して処理装置から排出されるガスを浄化する構成とすれば、プラスチックまたはプラスチック複合材料を分解処理した際に有害ガスが排出されるといった問題を解消することができ、より安全に被処理物を分解処理することができる。
なお、本実施形態に示す浄化装置30は半導体を担持した触媒担持ハニカムを備える触媒ユニットを用いてガスを浄化する例として示したものであり、浄化容器31内における触媒ユニットの配置や触媒ユニットの設置段数、ヒータの配置等については適宜構成とすることができる。

【0051】
本発明に係る処理方法及び処理装置は、被処理物の大きさや形状、使用されているポリマーの種類、モールドされている内包物の材質や種類にはまったく係りなく分解処理することが可能であり、被処理物に応じて処理方法や処理装置を構成することができる。たとえば、大量に排出される基板類を分解処理するような場合は、処理炉内へ被処理物を連続搬送しながら分解処理するといった方法を採用することができ、大型のモールド物品を分解処理するような場合は、大型の処理炉を使用してバッチ処理によって分解処理する方法を採用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10、10a 被処理物
13 被膜
20 加熱炉
22a、22b 触媒ユニット
24、25 ヒータ(加熱機構)
26 エアの供給機構
30 浄化装置
32a、32b、32c 触媒担持ハニカム
34a、34b、34c 触媒ユニット





図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図8】
5
【図12】
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【図6】
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【図7】
8
【図9】
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【図10】
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【図11】
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