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明細書 :高分子多段ナノワイヤー及びスターバースト型ナノ粒子並びにそれらの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4877806号 (P4877806)
公開番号 特開2008-223178 (P2008-223178A)
登録日 平成23年12月9日(2011.12.9)
発行日 平成24年2月15日(2012.2.15)
公開日 平成20年9月25日(2008.9.25)
発明の名称または考案の名称 高分子多段ナノワイヤー及びスターバースト型ナノ粒子並びにそれらの製造方法
国際特許分類 D01F   6/00        (2006.01)
B82B   1/00        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
FI D01F 6/00 A
B82B 1/00
B82B 3/00
請求項の数または発明の数 12
全頁数 11
出願番号 特願2007-064288 (P2007-064288)
出願日 平成19年3月14日(2007.3.14)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2006 American Chemical Society 2006年9月14日にWebで公開
審査請求日 平成21年12月14日(2009.12.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】杉本 雅樹
【氏名】吉川 正人
【氏名】関 修平
【氏名】佃 諭志
【氏名】田川 精一
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100080137、【弁理士】、【氏名又は名称】千葉 昭男
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100109276、【弁理士】、【氏名又は名称】岡本 芳明
【識別番号】100112634、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 美奈子
審査官 【審査官】家城 雅美
参考文献・文献 特開2004-076201(JP,A)
特表2004-532133(JP,A)
特開2003-082532(JP,A)
特開2007-039683(JP,A)
特開2005-303301(JP,A)
調査した分野 D01F1/00-6/96
B82B1/00
B82B3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
ポリメチルフェニレン、ポリカルボシラン及びポリヒドロキシスチレンから選択される2種類以上の高分子材料からなる直径が1nm~50nmである円筒状の高分子材料が2種類以上、直列に接続されていることを特徴とする高分子多段ナノワイヤー。
【請求項2】
ポリメチルフェニレン、ポリカルボシラン及びポリヒドロキシスチレンから選択される2種類以上の高分子材料からなる直径が1nm~50nmである円筒状の高分子材料が2種類以上、リング状に接続されていることを特徴とする高分子多段ナノワイヤー。
【請求項3】
ポリメチルフェニレン、ポリカルボシラン及びポリヒドロキシスチレンから選択される2種類以上の高分子材料からなる直径が1nm~50nmである円筒状の高分子材料が放射状に接続されていることを特徴とするスターバースト型ナノ粒子。
【請求項4】
基板上に、ポリメチルフェニレン、ポリカルボシラン及びポリヒドロキシスチレンから選択される2種類以上の異なる高分子材料を積層して高分子多層膜を形成する工程と、
前記高分子多層膜にイオンビームを照射することにより、前記照射の方向に、2種以上の高分子材料の円筒状架橋部分が直列に接続された円筒状の架橋部分と、それ以外の未架橋部分を形成する工程と、
前記未架橋部を溶媒により除去する工程と、を備えることを特徴とする高分子多段ナノワイヤーの製造方法。
【請求項5】
基板上に、ポリメチルフェニレン、ポリカルボシラン及びポリヒドロキシスチレンから選択される2種類以上の異なる高分子材料を積層して高分子多層膜を形成する工程と、
前記高分子多層膜に、5×10ions/cm2未満のイオンビームを照射することにより、前記照射の方向に、2種以上の高分子材料の円筒状架橋部分が直列に接続された円筒状の架橋部分と、それ以外の未架橋部分を形成する工程と、
前記未架橋部を溶媒により除去すると共に、特定の架橋部を選択的に凝集させて前記円筒状の架橋部分の両端をリング状に接続する工程と、を備えることを特徴とする高分子多段ナノワイヤーの製造方法。
【請求項6】
前記高分子多層膜の厚さを制御することによって、前記円筒状の架橋部分の長さを制御することを特徴とする請求項4又は5記載の高分子多段ナノワイヤーの製造方法。
【請求項7】
前記高分子材料の分子量を大きくすることによって、前記円筒状の架橋部分の直径を大きくすることを特徴とする請求項4又は5記載の高分子多段ナノワイヤーの製造方法。
【請求項8】
前記特定の架橋部を選択的に凝集させることは、非極性溶媒と極性溶媒との混合溶媒に浸すことによって行うことを特徴とする請求項5記載の高分子多段ナノワイヤーの製造方法。
【請求項9】
基板上に、ポリメチルフェニレン、ポリカルボシラン及びポリヒドロキシスチレンから選択される2種類以上の異なる高分子材料を積層して高分子多層膜を形成する工程と、
前記高分子多層膜にイオンビームを照射することにより、前記照射の方向に、複数の円筒状の架橋部分と、それ以外の未架橋部分を形成する工程と、
前記未架橋部を溶媒により除去すると共に、特定の架橋部を選択的に凝集させて複数の前記円筒状の架橋部分を放射状に接続する工程と、を備えることを特徴とするスターバースト型ナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
前記高分子多層膜の厚さを制御することによって、前記円筒状の架橋部分の長さを制御することを特徴とする請求項9記載のスターバースト型ナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
前記高分子材料の分子量を大きくすること、又は前記イオンビームのエネルギー付与率を大きくすることによって、前記円筒状の架橋部分の直径を大きくすることを特徴とする請求項9記載のスターバースト型ナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
前記特定の架橋部を選択的に凝集させることは、非極性溶媒と極性溶媒との混合溶媒に浸すことによって行うことを特徴とする請求項9記載のスターバースト型ナノ粒子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類以上の異なる高分子材料から成る高分子多段ナノワイヤー及び複数のナノワイヤーが放射状に結合したスターバースト型(星型)ナノ粒子、並びに、高分子多段ナノワイヤー及びスターバースト型ナノ粒子を、簡便・自由に設計・制御・作製する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年急速に発展するナノ構造材料は、IT分野、医療分野、環境分野などの幅広い分野における応用が期待されており、現在世界各国においてナノサイエンスの研究がなされている。その多くは、形成手法として、原子・分子の自己配列・組織化の利用といったボトムアップや、半導体リソグラフィに代表されるトップダウン的手法を利用したものである(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
ナノ構造材料として代表的なナノワイヤー(ナノファイバー)やナノチューブは、エレクトロスピニング法、超分子自己集積法、テンプレート重合紡糸法、バイオナノファイバー誘導形成法などにより製造される。しかし、ナノワイヤーの形成数、直径、長さ、あるいは形状等を任意に制御することは難しく、量産も困難であった。
【0004】
また、近年、半径が数~数十ナノメーターのナノワイヤーを作製する技術が研究・提供されつつある。しかし、これらの技術においても未だ一種類の物質による作製法に留まっているのが現状であり、複数の構成物質から構成されるナノワイヤーへの適用はなされていなかった。

【非特許文献1】図解よくわかるナノファイバー、本宮達也、日刊工業新聞社(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来技術において形成されるナノワイヤー(ナノファイバー)やナノチューブは1種類の物質から作製されており、複数の物質を組み合わせて長さ、直径等を精密に制御すると同時に、複数の物質の接続順や接続数を任意に制御することはできなかった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、2種類以上の異なる高分子材料から成る高分子多段ナノワイヤー及び複数のナノワイヤーが放射状に結合したスターバースト型(星型)ナノ粒子を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、高分子多段ナノワイヤー及びスターバースト型ナノ粒子を、簡便・自由に設計・制御・作製する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の高分子多段ナノワイヤーは、直径が1nm~50nmである円筒状の高分子材料が2種類以上、直列に接続されていること、又は直径が1nm~50nmである円筒状の高分子材料が2種類以上、リング状に接続されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のスターバースト型ナノ粒子は、直径が1nm~50nmである円筒状の高分子材料が放射状に接続されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の高分子多段ナノワイヤーの製造方法は、基板上に、異なる高分子材料を2種以上積層して高分子多層膜を形成する工程と、前記高分子多層膜にイオンビームを照射することにより、前記照射の方向に、2種以上の高分子材料の円筒状架橋部分が直列に接続された円筒状の架橋部分と、それ以外の未架橋部分を形成する工程と、前記未架橋部を溶媒により除去する工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の高分子多段ナノワイヤーの製造方法は、基板上に、異なる高分子材料を2種以上積層して高分子多層膜を形成する工程と、前記高分子多層膜にイオンビームを照射することにより、前記照射の方向に、2種以上の高分子材料の円筒状架橋部分が直列に接続された円筒状の架橋部分と、それ以外の未架橋部分を形成する工程と、前記未架橋部を溶媒により除去すると共に、特定の架橋部を選択的に凝集させて前記円筒状の架橋部分の両端をリング状に接続する工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
前記高分子多層膜の厚さを制御することによって、前記円筒状の架橋部分の長さを制御することができる。また、前記高分子材料の分子量を大きくすること、又は前記イオンビームのエネルギー付与率を大きくすることによって、前記円筒状の架橋部分の直径を大きくすることもできる。
【0013】
前記特定の架橋部を選択的に凝集させることは、親水性の架橋部であれば疎水性の溶媒で、疎水性の架橋部であれば親水性の溶媒に浸すことによって行うことができる。
【0014】
また、本発明のスターバースト型ナノ粒子の製造方法は、基板上に、異なる高分子材料を2種以上積層して高分子多層膜を形成する工程と、前記高分子多層膜にイオンビームを照射することにより、前記照射の方向に、複数の円筒状の架橋部分と、それ以外の未架橋部分を形成する工程と、前記未架橋部を溶媒により除去すると共に、特定の架橋部を選択的に凝集させて複数の前記円筒状の架橋部分を放射状に接続する工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
前記高分子多層膜の厚さを制御することによって、前記円筒状の架橋部分の長さを制御することができる。また、前記高分子材料の分子量を大きくすること、又は前記イオンビームのエネルギー付与率を大きくすることによって、前記円筒状の架橋部分の直径を大きくすることもできる。更に、前記特定の架橋部を選択的に凝集させることは、親水性の架橋部であれば疎水性の溶媒で、疎水性の架橋部であれば親水性の溶媒に浸すことによって行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、2種類以上の異なる高分子材料から成る高分子多段ナノワイヤー及び複数のナノワイヤーが放射状に結合したスターバースト型(星型)ナノ粒子を提供することができる。
【0017】
また、本発明によれば、2種類以上の異なる高分子材料を積層した多層膜を用いることにより、溶媒との相互作用を利用し、特定の架橋部の選択的凝集性から、高分子多段ナノワイヤー及び複数のナノワイヤーが放射状に結合したスターバースト型ナノ粒子の形状を設計・制御しつつ、製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明者らは、高分子単層薄膜中にイオンビームを照射すると、その飛跡に沿ってイオンのエネルギーが付与された円柱状の領内で高分子の架橋反応が引き起こされ、円柱状の架橋部となって溶媒に不溶となるため、未架橋部を溶媒で分離することにより、長さや直径が均一なナノワイヤーが形成されることを既に見出している。

【0019】
本発明者らは、更なる研究により、今回、親水性高分子材料と疎水性高分子材料を交互に積層して高分子多層膜を作製し、イオンビームを照射すると、親水性と疎水性の円筒架橋部を交互に直列接続した多段ナノワイヤーを形成することができ、これを特定の溶媒中で凝集させることにより、複数本のナノワイヤーが放射状に接続された星型形状(スターバースト型ナノ粒子)を形成することも可能であることを見出した。
【0020】
この際、積層する高分子層の順序や積層数を適切に選ぶことで、任意の数の円筒架橋部を直列に接続できると共に、積層する高分子材料の種類を選択することにより、選択した高分子材料に特有な機能を有する円筒架橋部を直列に接続した高分子多段ナノワイヤーを作製することが可能になることが分かった。
【0021】
また、本発明者らは、高分子材料の分子量が大きいほど、或いはイオンビームに対する架橋効率が高いほど円筒架橋部の直径が増大することを見出した。これを利用して、高分子多段ナノワイヤーの各円筒架橋部の直径を制御することが可能となる。更に、それぞれの高分子薄膜の厚さにより多段ナノワイヤーのそれぞれの円筒架橋部の長さを制御することも可能となる。
【0022】
即ち、高分子多段ナノワイヤーは、個々のイオンに対応して形成されるので、その数はイオンビームの線量(照射粒子数)に比例し、形成されたナノワイヤーの単位面積あたりの形成数が増大すれば、それぞれのワイヤー同士の平均距離が小さくなり、凝集により接続される高分子多段ナノワイヤー数が増加することが分かった。従って、イオンビームの照射量によりスターバースト型ナノ粒子に放射状に接続されるナノワイヤー数の制御が可能である。
【0023】
ナノワイヤーは、一般的に、(1)カーボンナノチューブのように構造そのものに特徴がある、(2)薄膜等に比べ表面積が数百倍となるためセンサーチップや触媒等の大幅な性能向上が期待できる、(3)従来のミクロフィルターでは除去不可能な100nmから1μmの粒子を除去できる、等の特長を有しているため、微細電極、電子ペーパーのようなIT分野、DDS、細菌防御フィルター等のバイオ分野、有害物質除去フィルター等の環境分野へ幅広く応用できる。
【0024】
本発明では、多段及びスターバースト構造において、このナノワイヤーを異なる機能を有する複数の物質から構成することが可能となるため、上記の特性を複数同時に満たす、たとえばフィルター機能+触媒機能など、多機能を有するナノワイヤーを単純な製造法で合成できるようになる。
【0025】
(高分子多段ナノワイヤーの製造方法)
図1及び図2を参照して、本発明に係る高分子多段ナノワイヤーの製造方法の一例を説明する。
【0026】
最初に、Si等の平滑基板1を用意し(図1工程a、図2a)、この平滑基板1上に、多層の高分子薄膜を作製する。多層の高分子薄膜の形成は、まず、高分子材料Aを溶かした溶媒をスピンコート、ディッピングなどの手法を用いてSi等の平滑基板1上に塗布して、高分子薄膜Aの第1層3を作製する。次に、上記の方法と同様にして、第1層3を溶解しない溶媒に第2層目の高分子材料Bを溶かし、第1層3の表面に同様な手法で高分子薄膜Bの第2層5を作製する。更に、高分子材料Cを溶かす溶媒を選び、同様にして、高分子薄膜Cの第3層7を積層していく(図1工程b、図2a参照)。
【0027】
なお、基板上にナノワイヤーの一端を固定しようとする揚合は、イオンビームが高分子多層薄膜を完全に貫通して基板まで到達するよう、高分子多層膜厚をイオンビームの飛程より小さくなるよう制御する。
【0028】
次に、第3層7の上方からイオンビーム照射により、円筒架橋部3a、5a、7a及び円筒架橋部以外の未架橋部3b、5b、7bを形成する(図1工程c、図2b)。照射量は、ワイヤーの直径に関係するために一概には言えないが、1×1012ions/cm以下であることが好ましい。1×1012ions/cmを越えるとワイヤー自体が重なり合って1本毎に分離できなくなる。照射後、円筒架橋部以外の未架橋部3b、5b、7bを溶媒9により洗浄して溶媒9中の溶質3c、5c、7cとして除去することにより直径が1nm~50nmである円筒状の高分子材料が2種類以上直列に接続された高分子多段ナノワイヤーが得られる(図1工程d、図2c)。この溶媒としては、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、キシレン等の非極性溶媒及びメクノール、イソプロピルアルコール等の極性溶媒を単独もしくは、混合したものが適用可能である。
【0029】
上記溶媒洗浄の際に、円筒架橋部5aが親水性であれば疎水性の溶媒で、あるいは、疎水性であれば親水性の溶媒に浸すことにより、凝集体5dとして凝集させて、円筒架橋部3aと円筒架橋部7aとを接続することができる(図1工程e、図2d)。
【0030】
(スターバースト型ナノ粒子の製造方法)
次に、図3及び図4を参照して、本発明に係る高分子多段ナノワイヤーの製造方法の一例を説明する。
【0031】
最初に、Si等の平滑基板11を用意し(図3工程a、図4a)、この平滑基板11上に、多層の高分子薄膜を作製する。多層の高分子薄膜の形成は、まず、高分子材料Aを溶かした溶媒をスピンコート、ディッピングなどの手法を用いてSi等の平滑基板11上に塗布して、高分子薄膜Aの第1層13を作製する。次に、上記の方法と同様にして、第1層13を溶解しない溶媒に第2層目の高分子材料Bを溶かし、第1層13の表面に同様な手法で高分子薄膜Bの第2層15を作製する。更に、高分子材料Cを溶かす溶媒を選び、同様にして、高分子薄膜Cの第3層17を積層していく(図3工程b、図4a参照)。
【0032】
なお、基板上にナノワイヤーの一端を固定しようとする揚合は、イオンビームが高分子多層薄膜を完全に貫通して基板まで到達するよう、高分子多層膜厚をイオンビームの飛程より小さくなるよう制御する。
【0033】
次に、第3層17の上方からイオンビーム照射により、円筒架橋部13a、15a、17a及び円筒架橋部以外の未架橋部13b、15b、17bを形成する(図3工程c、図4b)。照射量は、スターバースト型ナノ粒子を形成するためには、5×10ions/cm以上とすることが好ましい。照射後、円筒架橋部以外の未架橋部13b、15b、17bを溶媒19により洗浄して溶媒19中の溶質13c、15c、17cとして除去する(図3工程d、図4c)。この溶媒としては、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、キシレン等の非極性溶媒及びメノール、イソプロピルアルコール等の極性溶媒を単独もしくは、混合したものが適用可能である。

【0034】
上記溶媒洗浄の際に、円筒架橋部15aが親水性であれば疎水性の溶媒で、あるいは、疎水性であれば親水性の溶媒に浸すことにより、凝集体15dとして凝集させることにより、直径が1nm~50nmである円筒状の高分子材料が放射状に接続されたスターバースト型ナノ粒子が得られる(図3工程e、図4d)。
なお、上記照射において、5×10ions/cm未満とすると、直径が1nm~50nmである円筒状の高分子材料が2種類以上リング状に接続された高分子多段ナノワイヤーが得られるが、凝集に時間を掛けることにより、3本程度の円筒状の高分子材料からなるスターバースト型ナノ粒子を得ることもできる。
【実施例1】
【0035】
(高分子多段ナノワイヤーの作製)
まず、高分子薄膜Aとして有機ケイ素高分子材料であるポリメチルフェニルシラン(PMPS)を、高分子薄膜Bとして炭素・ケイ素高分子材料のポリカルボシラン(PCS)を、高分子薄膜Cとして側鎖に水酸基を持つ炭素骨格高分子のポリヒドロキシスチレン(PHS)を用い、PMPSとPCSをトルエンに、PHSをイソプロピルアルコールに溶かして5wt%溶液とした。
【0036】
次に、図2に示す平滑基板1としてシリコンウェハを用い、その表面にPMPSをスピンコート法により塗布し薄膜化して第1層3を形成した後、その上にPHSからなる第2層5を、さらにPCSからなる第3層7を同様に薄膜化して積層し、それぞれ、厚さ~1000nmの3層膜を形成した。得られた高分子多層膜基板を真空照射チェンバー内に設置し、サイクロトロンからのイオンビームを均一にスキャンしながら照射し、イオンビームの貫通飛跡に沿って円筒架橋部3a,5a,7aを形成した。更に、円筒架橋部以外の未架橋部3b,5b,7bを、トルエンとイソプロピルアルコールの2:1の混合溶媒を用いて除去すると同時に、PHSからなる円筒架橋部5aのみを凝集し、図2(d)で示すような中間部の円筒架橋部のみが凝集した多段ナノワイヤーを得た。
【実施例2】
【0037】
(スターバースト型ナノ粒子の作製)
次に、実施例1と同様にしてPMPS、PCS、PHSを用意し、図4に示す平滑基板11としてシリコンウェハを用い、その表面にPMPSをスピンコート法により塗布し薄膜化して第1層13を形成した後、その上にPHSからなる第2層15を、さらにPCSからなる第3層17を同様に薄膜化して積層し、それぞれ、厚さ~1000nmの3層膜を形成した。得られた高分子多層膜基板を真空照射チェンバー内に設置し、サイクロトロンからのイオンビームを均一にスキャンしながら照射し、イオンビームの貫通飛跡に沿って円筒架橋部13a,15a,17aを形成した。更に、円筒架橋部以外の未架橋部13b,15b,17bを、トルエンとイソプロピルアルコールの2:1の混合溶媒を用いて除去すると同時に、PHSからなる円筒架橋部15aのみを凝集させた。
【0038】
この場合、多段ナノワイヤーが相互に近接しているので、近接する多段ナノワイヤーが凝集により互いに接続され、図4(d)で示すような凝集部を中心として複数本のナノワイヤーが放射状に接続されたスターバースト型ナノ粒子が形成された。
【実施例3】
【0039】
(イオンビーム線量と多段高分子ナノワイヤーの形成数との関係)
照射するイオンビームの線量(照射粒子数)と多段高分子ナノワイヤーの形成数との関係について調べた。
【0040】
図5に、照射するイオンビームの線量を、低線量(1.1×10ions/cm)、中線量(5.3×10ions/cm)、高線量(1.0×1010ions/cm)と変化させた場合のナノ粒子の形状との関係を示す。
【0041】
図5に示すように、高線量になるほど、多数のナノワイヤーが放射状に接続されたスターバースト型ナノ粒子が形成できることが分かる。
【0042】
即ち、イオン照射による円筒架橋部から形成される多段ナノワイヤーは、個々のイオンに対応して形成され、その数はイオンビームの線量(照射粒子数)に比例し、形成されたナノワイヤーの単位面積あたりの形成数が増大すればするほど、それぞれのワイヤー同士の平均距離が小さくなって、凝集により接続される高分子多段ナノワイヤー数が増加し、より多数の円筒架橋部が接続されたスターバースト型ナノ粒子となることが判明した。
【0043】
なお、低線量の場合、図5中の矢印に示すように、円筒架橋部がリング状に接続されたリング型ナノ粒子が形成されることも分かった。
【実施例4】
【0044】
(分子量及びエネルギー付与率とナノワイヤー直径との関係)
多段ナノワイヤーの構成物質のひとつであるPCSに関して、分子量及びエネルギー付与率とナノワイヤー直径との関係を調べた。
結果を表1及び図6に示す。
【0045】
【表1】
JP0004877806B2_000002t.gif

【0046】
表1及び図6の結果より、エネルギー付与率が異なるNo.1とNo.2では、エネルギー付与率が大きいNo.1の方が、分子量が異なるNo.2とNo.3では、分子量が大きいNo.3の方が、ナノワイヤーの直径が大きくなっていることが判明した。
【産業上の利用の可能性】
【0047】
ナノワイヤーは、一般的に、(1)カーボンナノチューブのように構造そのものに特徴がある、(2)薄膜等に比べ表面積が数百倍となるためセンサーチップや触媒等の大幅な性能向上が期待できる、(3)従来のミクロフィルターでは除去不可能な100nmから1μmの粒子を除去できる、等の特長を有しているため、微細電極、電子ペーパーのようなIT分野、DDS、細菌防御フィルター等のバイオ分野、有害物質除去フィルター等の環境分野へ幅広く応用できる。
【符号の説明】
【0048】
本発明では、多段及びスターバースト構造において、このナノワイヤーを異なる機能を有する複数の物質から構成することが可能となるため、上記の特性を複数同時に満たす、たとえばフィルター機能+触媒機能など、多機能を有するナノワイヤーを単純な製造法で合成できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態に係る高分子多段ナノワイヤーの製造工程を示すフローチャートである。
【図2】本実施形態に係る高分子多段ナノワイヤーの製造工程を説明する模式図である。
【図3】本実施形態に係るスターバースト型ナノ粒子の製造工程を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態に係るスターバースト型ナノ粒子の製造工程を説明する模式図である。
【図5】イオンビーム線量と多段高分子ナノワイヤーの形成数との関係を示す顕微鏡写真である。
【図6】分子量及びエネルギー付与率とナノワイヤー直径との関係を示す顕微鏡写真である。
【0050】
・ 11 平滑基板
3,13 第1層
5,15 第2層
7,17 第3層
3a,5a,7a 円筒架橋部
3b,5b,7b 未架橋部
3c,5c,7c 溶質
5d 凝集体
9 溶媒
13a,15a,17a 円筒架橋部
13b,15b,17b 未架橋部
13c,15c,17c 溶質
15d 凝集体
19 溶媒
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5