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明細書 :粗大結晶粒組織を有する高温クリープ強度に優れたフェライト系酸化物分散強化型鋼の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4192249号 (P4192249)
公開番号 特開2006-176878 (P2006-176878A)
登録日 平成20年10月3日(2008.10.3)
発行日 平成20年12月10日(2008.12.10)
公開日 平成18年7月6日(2006.7.6)
発明の名称または考案の名称 粗大結晶粒組織を有する高温クリープ強度に優れたフェライト系酸化物分散強化型鋼の製造方法
国際特許分類 C22C  33/02        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
B22F   3/20        (2006.01)
B22F   3/24        (2006.01)
C22C  38/00        (2006.01)
C22C  38/28        (2006.01)
C21D   6/00        (2006.01)
G21B   1/11        (2006.01)
G21B   1/17        (2006.01)
FI C22C 33/02 103B
B22F 1/00 E
B22F 3/20 A
B22F 3/24 B
C22C 38/00 302Z
C22C 38/28
C21D 6/00 101K
G21B 1/00 D
請求項の数または発明の数 1
全頁数 12
出願番号 特願2005-360303 (P2005-360303)
分割の表示 特願2002-231781 (P2002-231781)の分割、【原出願日】平成14年8月8日(2002.8.8)
出願日 平成17年12月14日(2005.12.14)
審査請求日 平成17年12月14日(2005.12.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人 日本原子力研究開発機構
【識別番号】000130259
【氏名又は名称】株式会社コベルコ科研
発明者または考案者 【氏名】大塚 智史
【氏名】鵜飼 重治
【氏名】皆藤 威二
【氏名】藤原 優行
個別代理人の代理人 【識別番号】100096862、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 千春
審査官 【審査官】米田 健志
調査した分野 B22F 1/00~8/00
特許請求の範囲 【請求項1】
元素粉末または合金粉末とY23粉末を混合して機械的合金化処理を行ない、熱間押出しにより固化した後、最終熱処理としてAc3変態点以上への加熱保持とそれに続くフェライト形成臨界速度以下での徐冷熱処理を施すことにより、質量%で、Cが0.05~0.25%、Crが8.0~12.0%、Wが0.1~4.0%、Tiが0.1~1.0%、Y23が0.1~0.5%、残部がFeおよび不可避不純物からなるY23粒子を分散させたフェライト系酸化物分散強化型鋼を製造する方法であって、鋼中の過剰酸素量(鋼中の酸素量からY23中の酸素量を差し引いた値)が
0.67Ti-2.7C+0.45>Ex.O>0.67Ti-2.7C+0.35
(式中、Ex.O:鋼中の過剰酸素量、質量%
Ti:鋼中のTi含有量、質量%
C:鋼中のC含有量、質量%)
となるように機械的合金化処理に際して混合する原料粉末としてFe23粉末を追加的に添加することを特徴とする粗大結晶粒組織を有する高温クリープ強度に優れたフェライト系酸化物分散強化型鋼の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高温クリープ強度に優れたフェライト系酸化物分散強化型鋼の製造方法に関し、さらに詳しくは、鋼中の過剰酸素量を調整して粗大結晶粒組織をもたらすことにより、優れた高温クリープ強度を付与することができるフェライト系酸化物分散強化型鋼の製造方法に関するものである。
【0002】
本発明のフェライト系酸化物分散強化型鋼は、特に高温での強度が求められる高速増殖炉燃料被覆管用材料、核融合炉第一壁材料、火力発電用材料等に好ましく利用できる。
【背景技術】
【0003】
優れた高温強度と耐中性子照射特性が要求される原子炉、特に高速炉の構成部材には、従来よりオーステナイト系ステンレス鋼が用いられてきたが、耐スエリング特性などの耐照射特性に限界がある。一方、フェライト系ステンレス鋼は耐照射特性に優れるものの、高温強度が低い欠点がある。
【0004】
そこで、耐照射特性と高温強度特性に優れた材料として、フェライト系鋼中に微細な酸化物粒子を分散させたフェライト系酸化物分散強化型鋼が提案されている。またこのフェライト系酸化物分散強化型鋼の強度を向上させるためには、鋼中にTiを添加して酸化物分散粒子をさらに微細分散化させることが有効であることも知られている。
【0005】
特に、フェライト系酸化物分散強化型鋼の高温クリープ強度の改善には、粒界すべりを抑制するため結晶粒の大粒径化および等軸晶化を図ることが有効である。かような粗大結晶粒組織を得る方法として、Ac3変態点以上に加熱保持する熱処理により十分なα→γ変態量を確保してα相からγ相へ相変態させることによりオーステナイト化し、その後に、γ相からα相へ相変態させてフェライト組織が得られるように十分遅い速度、すなわちフェライト形成臨界速度以下で徐冷する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】

【特許文献1】特開平11-343526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、フェライト系酸化物分散強化型鋼にTiを添加した場合には、Tiがマトリックス中のCと結合して炭化物を形成する結果、マトリックス中のC濃度が低下し、焼ならし熱処理時に十分なα→γ変態量が確保できないという問題がある。
【0008】
すなわち、上述したように、粗大結晶粒組織を得るためのフェライト系酸化物分散強化型鋼の熱処理は、Ac3変態点以上に加熱保持する熱処理を施すことによってγ相とした後、フェライト形成臨界速度以下で徐冷するものであるが、Tiはマトリックス中のγ相生成元素であるCと親和力が強いため、TiとCとが結合して炭化物を形成し、その結果マトリックス中のC濃度が低下すると、Ac3変態点以上で熱処理してもγ相の単相とならず、未変態のα相が残留する。そのため、γ相からフェライト形成臨界速度以下、例えば100℃/時間以下で徐冷しても残留α相の存在によりγ相から変態したα相は細粒組織となってしまう。かような細粒組織は、高温強度の改善には寄与しない。
【0009】
そこで本発明は、フェライト系酸化物分散強化型鋼にTiを添加した場合でも、TiとCとの結合を抑制してマトリックス中のC濃度を維持し熱処理時に十分なα→γ変態を確保することにより、高温クリープ強度の改善に有効な粗大化した結晶粒組織を有するフェライト系酸化物分散強化型鋼を製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、元素粉末または合金粉末とY23粉末を混合して機械的合金化処理を行ない、熱間押出しにより固化した後、最終熱処理としてAc3変態点以上への加熱保持とそれに続くフェライト形成臨界速度以下での徐冷熱処理を施すことにより、Cが0.05~0.25%、Crが8.0~12.0%、Wが0.1~4.0%、Tiが0.1~1.0%、Y23が0.1~0.5%、残部がFeおよび不可避不純物からなるY23粒子を分散させたフェライト系酸化物分散強化型鋼を製造する方法であって、鋼中の過剰酸素量(鋼中の酸素量からY23中の酸素量を差し引いた値)が
0.67Ti-2.7C+0.45>Ex.O>0.67Ti-2.7C+0.35
(式中、Ex.O:鋼中の過剰酸素量、質量%
Ti:鋼中のTi含有量、質量%
C:鋼中のC含有量、質量%)
となるように機械的合金化処理に際して混合する原料粉末としてFe23粉末を追加的に添加することを特徴とする粗大結晶粒組織を有する高温クリープ強度に優れたフェライト系酸化物分散強化型鋼の製造方法である。(なお、以下の本明細書中の記載において「%」はいずれも「重量%」を表すものとする。)
【発明の効果】
【0011】
上述したごとき本発明によれば、原料粉末として不安定酸化物であるFe23粉末を追加的に添加して鋼中の過剰酸素量を所定の範囲とすることにより、TiはCと結合して炭化物を形成せずに、過剰酸素と結合して酸化物を形成するため、マトリックス中のC濃度を低下させることがない。この結果、Ac3変態点以上での熱処理時に十分なα→γ変態が生じてγ単相とすることができ、さらにそれに続くフェライト形成臨界速度以下で徐冷する熱処理を行うことにより粗大化結晶粒組織を有するα相を形成することができ、高温クリープ強度の向上をもたらすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明のフェライト系酸化物分散強化型鋼の化学成分およびその限定理由について説明する。
【0013】
Crは、耐食性の確保に重要な元素であり、8.0%未満となると耐食性の悪化が著しくなる。また12.0%を超えると、靱性および延性の低下が懸念される。この理由から、Cr含有量は8.0~12.0%とする。
【0014】
Cの含有量は以下の理由から決定される。本発明は、一旦Ac3変態点以上の熱処理を施すことによるα→γ変態とそれに続く徐冷熱処理により、等軸かつ粗大な結晶粒組織を得るものである。すなわち、等方的かつ粗大な結晶粒組織を得るためには、熱処理によりα→γ変態を生じさせることが不可欠である。
Cr含有量が8.0~12.0%の場合に、α→γ変態を生じさせるためには、Cを0.05%以上含有させる必要がある。このα→γ変態は1000~1150℃×0.5~1時間の熱処理により生じる。C含有量が高くなるほど炭化物(M236、M6C等)の析出量が多くなり高温強度が高くなるが、0.25%より多量に含有すると加工性が悪くなる。この理由から、C含有量は0.05~0.25%とする。
【0015】
Wは、合金中に固溶し高温強度を向上させる重要な元素であり、0.1%以上添加する。W含有量を多くすれば、固溶強化作用、炭化物(M236、M6C等)析出強化作用、金属間化合物析出強化作用により、クリープ破断強度が向上するが、4.0%を超えるとδフェライト量が多くなり、かえって強度も低下する。この理由から、W含有量は0.1~4.0%とする。
【0016】
Tiは、Y23の分散強化に重要な役割を果たし、Y23と反応してY2Ti27またはY2TiO5 という複合酸化物を形成して、酸化物粒子を微細化させる働きがある。この作用はTi含有量が1.0%を超えると飽和する傾向があり、0.1%未満では微細化作用が小さい。この理由から、Ti含有量は0.1~1.0%とする。
【0017】
23は、分散強化により高温強度を向上させる重要な添加物である。この含有量が0.1%未満の場合には、分散強化の効果が小さく強度が低い。一方、0.5%を超えて含有すると、硬化が著しく加工性に問題が生じる。この理由から、Y23の含有量は0.1~0.5%とする。
【0018】
本発明によるフェライト系酸化物分散強化型鋼の製造方法は、金属元素粉末または合金粉末さらには酸化物粉末といった原料粉末を目標組成となるように調合し、いわゆる機械的合金化処理(メカニカルアロイング)によって合金化する。この合金化粉末を押出用カプセルに充填した後、脱気、密封して熱間押出しを行って固化し、例えば押出棒材とする。
【0019】
得られた熱間押出棒材は、最終熱処理として、Ac3変態点以上での加熱保持とそれに続くフェライト形成臨界速度以下での徐冷熱処理を施す。徐冷熱処理は通常は炉内で徐々に冷却する炉冷熱処理とすることができ、フェライト形成臨界速度以下の冷却速度は、一般的には100℃/時間以下、好ましくは50℃/時間以下とすることができる。
本発明のフェライト系酸化物分散強化型鋼の場合、Ac3変態点は約900~1200℃程度であり、C量が0.13%の場合にはAc3変態点は約950℃である。
【0020】
本発明においては、鋼中のTiがCと結合して炭化物を形成し、マトリックス中のC濃度が低下しないようにする手段として、機械的合金化処理に際して混合する原料粉末として、不安定酸化物であるFe23粉末を追加的に混合して鋼中の過剰酸素量を増加させる方法も採用することができる。この場合、TiはFe23由来の鋼中の過剰酸素と結合して酸化物を形成し、Cと結合して炭化物を形成することがないから、マトリックス中のC濃度の低下を抑制することができる。
【0021】
Fe23粉末の混合量は、鋼中の過剰酸素量が
0.67Ti-2.7C+0.45>Ex.O>0.67Ti-2.7C+0.35
(式中、Ex.O:鋼中の過剰酸素量(%)
Ti:鋼中のTi含有量(%)
C:鋼中のC含有量(%)
となるようにする。かような過剰酸素量の上限および下限の設定理由を以下に説明する。
【0022】
表1は、フェライト系酸化物分散強化型鋼試作材の目標組成と成分の特徴をまとめて示している。
【0023】
【表1】
JP0004192249B2_000002t.gif

【0024】
各試作材とも、元素粉末あるいは合金粉末と酸化物粉末を目標組成に調合し、高エネルギーアトライター中に装入後、99.99%のAr雰囲気中で撹拌して機械的合金化処理を行った。アトライターの回転数は約220rpm、撹拌時間は約48hrとした。得られた合金化粉末を軟鋼製カプセルに充填後、高温真空脱気して約1150~1200℃、7~8:1の押出比で熱間押出しを行い、熱間押出棒材を得た。
【0025】
表1中、試作材MM13とT14が基本組成であり、T3はT14の組成にFe23を添加することにより過剰酸素量を増加させた試料、T4はTi添加量を増加させた試料、T5はTi添加量を増加させるとともにFe23を添加して過剰酸素量を増加させた試料である。
【0026】
上記で得られた各試作材(熱間押出棒材)の成分分析結果を表2にまとめて示す。
ここで、過剰酸素量とは、化学成分の分析結果における試作材中の酸素量から分散酸化物(Y23)中の酸素量を差し引いた値である。
【0027】
【表2】
JP0004192249B2_000003t.gif

【0028】
これらの試作材について、最終熱処理として、熱処理(Ac3変態点以上での加熱保持:1050℃×1hr)とそれに続く炉冷熱処理(フェライト形成臨界速度以下での徐冷熱処理:37℃/hrの速度で1050℃から600℃まで徐冷)を施した。
【0029】
熱処理後の各試作材の金相組織の光学顕微鏡写真を図1(T14、MM13、T3、T4)と図2(T5)に示す。これらを観察してわかるように、炉冷熱処理により結晶粒が十分成長している試料と成長していない試料がある。結晶粒成長が生じているT3は、基本組成にFe23を添加した試料である。T3においては、鋼中のTiと化学結合する過剰酸素量が十分に存在するため、炭化物TiCの形成によるマトリックス中のC濃度の減少を抑えられる結果、熱処理時におけるα→γ変態、その後の炉冷熱処理での結晶粒成長が効果的に生じると考えられる。
【0030】
一方、結晶粒成長の少ないT4とT5は、基本組成よりTi添加量を増量させた試料(T4)、およびFe23を添加しているがTi添加量も増量させた試料(T5)である。これらの試料においては、多量のTiがCと化学結合して炭化物を形成するためマトリックス中のC濃度が極度に減少してしまうか(T4)、あるいはFe23を添加しても多量のTiとCとの化学結合を阻止するほどに十分の過剰酸素量が存在していない(T5)と考えられる。
【0031】
なお、MM13とT14はいずれも基本組成であり組成的には同等のものであるが、MM13(過剰酸素量:0.137%)は結晶粒が成長しており、T14(過剰酸素量:0.110%)は結晶粒成長が少なくなっている。この理由は、組成が同じであっても機械的合金化処理やその後の熱処理等の過程で、鋼中に混入する酸素量が微妙に相違し、MM13は鋼中のTiと化学結合するに十分な過剰酸素量が存在したたためと考えられる。
【0032】
図3のグラフは、各試作材のTi含有量と過剰酸素量との関係を示している。このグラフから、Ex.O>0.61Ti[Ex.O:過剰酸素量(%)、Ti:鋼中のTi含有量(%)]の関係を満たしている試作材MM13、T3については、炉冷熱処理により結晶粒の粗大化が生じていることがわかる。
【0033】
以上の結果はすべて鋼中の炭素量が約0.13%の場合の結果である。上記のEx.O>0.61Tiをモル量に単位換算すると
Ex.O′(mol/g)>1.86Ti′≒2Ti′(mol/g)
となり、鋼中のすべてのTiがTiO2を形成できるだけの過剰酸素量が存在した場合(マトリックス中の残存C量が0.13%以上の場合)には、結晶粒の粗大化が生じると考えられる。
【0034】
上述の結果から、本発明のフェライト系酸化物分散強化型鋼では、TiO2およびTiCの形成を考慮したマトリックス中の残存C量が0.13%(1.08×10-4mol/g)以上であれば、熱処理時に十分なα→γ変態が生じて炉冷熱処理により結晶粒の粗大化が生じると考えられる。TiO2およびTiCの形成を考慮したマトリックス中の残存C量(C′r mol/g)は次式のように表わされる。
【0035】
C′r=C′-(Ti′-0.5Ex.O′)
ここで、C′r(mol/g):TiO2およびTiCの形成を考慮したマトリックス中の残存C量
C′(mol/g):鋼中のC含有量
Ti′(mol/g):鋼中のTi含有量
Ex.O′(mol/g):鋼中の過剰酸素量
である。
【0036】
よって、結晶粒粗大化の条件式は下式となる。
C′r=C′-(Ti′-0.5Ex.O′)≧1.08×10-4
単位を mol/g から%に変換して整理すると上式は
Ex.O>0.67Ti-2.7C+0.35
となる。
【0037】
過剰酸素は金属Ti、Y23と結合して微細な複合酸化物を形成するとともに、マトリックス中のCとTiの結合を抑制して、マトリックス中に十分なC量を確保する重要な元素である。しかし、0.67Ti-2.7C+0.45以上の過剰酸素は、分散粒子の微細高密度化を著しく阻害する。また、過剰な酸素の混入は靱性の著しい低下を引き起こすとともに、少量のSi、Mn等と介在物を形成しやすくなるため、過剰酸素量の上限値を0.67Ti-2.7C+0.45とする。
【0038】
図4のグラフは、上述した結晶粒粗大化の条件式の上限と下限の範囲を斜線部分で表し、各試作材の実測値をプロットしたものである。条件式はC量を0.13%として計算しているが、結晶粒が成長した試作材MM13、T3はすべて斜線範囲内に位置し、結晶粒が成長しなかった試作材T14、T5、T4はすべて斜線範囲外に位置しており、この条件式が妥当であることを示している。なお、図4のグラフ中で試作材番号が記されていないプロットについても、斜線範囲内に位置する試作材では結晶粒の粗大化が生じており、斜線範囲外に位置するものでは結晶粒の粗大化が生じていないことが確認されている。
【0039】
以上詳述した理由により、本発明において、機械的合金化処理に際して混合する原料粉末としてFe23粉末を追加的に混合して鋼中の過剰酸素量を増加させ場合には、鋼中の過剰酸素量が結晶粗大化の条件式
0.67Ti-2.7C+0.45>Ex.O>0.67Ti-2.7C+0.35
となるようにFe23粉末を添加する。
【試験例】
【0040】
〈高温クリープ破断試験〉
試作材T3に対して、本発明による熱処理、すなわち、熱処理(Ac3変態点以上での加熱保持:1050℃×1hr)とそれに続く炉冷熱処理(フェライト形成臨界速度以下での徐冷熱処理:37℃/hrの速度で1050℃から600℃まで徐冷)を施して、結晶粒を粗大化させた試料(T3(FC材))を準備した。
【0041】
これとは別に、試作材T14、T3に対して、焼ならし熱処理(1050℃×1hr・空冷(AC))とそれに続く焼戻し熱処理(780℃×1hr・空冷(AC))を施して、結晶粒が微細となっている試料(T14(NT材)、T3(NT材))を準備した。
【0042】
これらの試料について、試験温度700℃で単軸クリープ破断試験を行った結果を図5のグラフに示す。Fe23粉末を追加的に混合して過剰酸素量を増加さ せるとともに、炉冷熱処理で結晶粒を粗大化させたT3(FC材)が、その他の試作材に比べて高温クリープ強度が向上していることが図5のグラフからわかる。
【0043】
以上説明したところからわかるように本発明によれば、フェライト系酸化物分散強化型鋼にTiを添加した場合でも、TiとCとの結合を抑制してマトリックス中のC濃度を維持し熱処理時に十分なα→γ変態を確保することができ、これにより粗大化した結晶粒を生成できる結果、優れた高温クリープ強度を有するフェライト系酸化物分散強化型鋼を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】試作材T14、MM13、T3、T4の光学顕微鏡金相写真。
【図2】試作材T5の光学顕微鏡金相写真。
【図3】各試作材のTi含有量と過剰酸素量(Ex.O)との関係を示すグラフ。
【図4】図3のグラフに結晶粗大化の条件式を満たす領域を斜線部分で示したグラフ。
【図5】試作材T14、T3の700℃における高温クリープ破断試験を示すグラフ。
図面
【図3】
0
【図4】
1
【図5】
2
【図1】
3
【図2】
4