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明細書 :酸素及び窒素原子が活性な官能基を持つハイブリットドナー型抽出剤による3価及び4価アクチノイドの3価ランタノイドからの選択的分離法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4911538号 (P4911538)
登録日 平成24年1月27日(2012.1.27)
発行日 平成24年4月4日(2012.4.4)
発明の名称または考案の名称 酸素及び窒素原子が活性な官能基を持つハイブリットドナー型抽出剤による3価及び4価アクチノイドの3価ランタノイドからの選択的分離法
国際特許分類 G21C  19/46        (2006.01)
C09K   3/00        (2006.01)
FI G21C 19/46 K
C09K 3/00 108D
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2008-552126 (P2008-552126)
出願日 平成19年12月26日(2007.12.26)
国際出願番号 PCT/JP2007/074950
国際公開番号 WO2008/081814
国際公開日 平成20年7月10日(2008.7.10)
優先権出願番号 2006349646
優先日 平成18年12月26日(2006.12.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年6月28日(2010.6.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】矢板 毅
【氏名】塩飽 秀啓
【氏名】鈴木 伸一
【氏名】岡本 芳浩
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100089705、【弁理士】、【氏名又は名称】社本 一夫
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100080137、【弁理士】、【氏名又は名称】千葉 昭男
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100112634、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 美奈子
審査官 【審査官】山口 敦司
参考文献・文献 特開2002-243890(JP,A)
特開2005-214706(JP,A)
沼倉正彦,XAFSと紫外可視吸収光スペクトルによるアルコール溶液中でのランタノイド-1,10-フェナントロリン,日本化学会講演予稿集,日本,2006年 3月,第86回第1号,p.353
矢板毅,共鳴X線発光分光分析によるCm化合物の電子状態,放射化学討論会講演予稿集,日本,2006年10月,第50回,p.72
調査した分野 G21C 19/46
C09K 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
放射性核種を含む硝酸溶液から、酸素原子と窒素原子の両方が活性な官能基を持つハイブリットドナー型有機化合物である中性多座配位抽出剤を用いて、4価のプルトニウムおよび3価のアメリシウム、キュリウムを、3価ランタノイドから選択的に分離・回収することを特徴とする3価及び4価アクチノイドの分離回収方法。
【請求項2】
前記抽出剤が、
【化1】
JP0004911538B2_000005t.gif
(R1,2は、Cn2n+1、R39は、水素又はCn2n+1である。ただしnは整数を表す)
【化2】
JP0004911538B2_000006t.gif
(R1,2は、Cn2n+1、R39は、水素、又はCn2n+1である。ただしnは整数を表す)
又は、
【化3】
JP0004911538B2_000007t.gif
(R1は、Cn2n+1、R26は、水素、又はCn2n+1である。ただしnは整数を表す)
で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載の3価及び4価アクチノイドの分離回収方法。
【請求項3】
前記[化1]又は[化2]で表される化合物は、R12がメチル基、R39が水素の場合はクロロホルムに溶解して用い、R12がメチル基、R39がヘキシル基、オクチル基の場合は脂肪族系化合物に溶解して用い、前記[化3]で表される化合物は、R1がメチル基、R26が水素又はアルキル基の場合はクロロホルムに溶解して用い、R1がオクチルキ基、R26が水素又はアルキル基の場合は脂肪族系化合物に溶解して用いることを特徴とする請求項2記載の3価及び4価アクチノイドの分離回収方法。
【請求項4】
前記硝酸溶液中の放射性核種の濃度が、0.01M~4.0Mであることを特徴とする請求項1記載の3価及び4価アクチノイドの分離回収方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電により発生する使用済核燃料(SF)の硝酸溶液中に存在する4価アクチノイドのプルトニウム:Pu(IV)及び3価アクチノイドであるアメリシウム:Am(III),キュリウム:Cm(III)を,同様に硝酸溶液中に存在する3価ランタノイド:Ln(III)から選択的に分離回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プルトニウムを使用済核燃料(Nuclear Spent Fuels:SF)から分離回収する方法として、現在、PUREX法が実用化されている。この方法は、まず使用済核燃料物質を硝酸溶液に溶解し、この溶液からリン酸トリブチル(Tri-butyl phosphate:TBP)を含む有機溶媒を用いる溶媒抽出法により、ウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を核分裂生成物から分離し、その後ウラン(VI)からプルトニウム(IV)を分離する方法である。
【0003】
一方、アメリシウム(III)及びキュリウム(III)に関しては、プルトニウム(IV)のように再処理し再利用するのではなく、これまで高レベル廃棄物として取り扱われてきた。高レベル廃液からアメリシウム(III)やキュリウム(III)を含む超ウラン元素(Transuranics:TRU)を分離する方法としては、CMPO(カルバモイルメチルフォスフィンオキシド)やDIDPA(ジイソデシルリン酸)などを用いる溶媒抽出法などの湿式分離法がある。
【0004】
更に、発電炉からの使用済核燃料の溶解液を対象に、第1抽出段において、ウラン(VI)のみを分離回収し、第2抽出段において、残り全てのアクチノイド、即ち、ネプツニウム(V)、プルトニウム(IV)、アメリシウム(III)、キュリウム(III)を分離回収し、得られた2種類のアクチノイド溶液であるウラン(VI)含有溶液及びアクチノイド含有溶液を別々に脱硝し、溶解性の良い酸化物固体に変換して貯蔵し、その後の需要に備える方法がある(特許文献1参照)。

【特許文献1】特開2002-243890号公報
【特許文献2】特開2005-214706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のPUREX法では、プルトニウム(IV)を分離する場合にプルトニウム(IV)を有機相に抽出されないプルトニウム(III)に調整する必要があり、還元剤を使用してプルトニウム(IV)からプルトニウム(III)の原子価調整を行っていた。還元剤としては、例えば、原子価(II)の鉄、原子価(IV)のウラン(ウラナス)又はヒドロキシルアミン(NH2OH)が通常使用される。
【0006】
しかしながら、これらの還元剤は、硝酸から生成する亜硝酸によって酸化され易いため、硝酸の存在下では不安定である。この酸化反応を回避するためには、硝酸溶液にヒドラジン(NH2-NH2)のような亜硝酸分解剤を添加する必要がある。しかし、この種の試薬の使用は、使用済燃料のような硝酸溶液がテクネチウムを含む場合にはきわめて難しい。なぜなら、リン酸トリブチルは使用済核燃料溶解溶液中に存在するテクネチウムを大量に抽出する。このテクネチウムの存在は、亜硝酸によるヒドラジンの酸化分解を促進する。従って、Pu(IV)の還元剤を安定させるヒドラジンを消費してしまい、その結果、還元剤の酸化が進みプルトニウムの還元効率が低下し、水溶液中への逆抽出が阻止されるという問題がある。
【0007】
また、ヒドラジンの使用によってその分解生成物であるアジ化水素酸の役割が問題とされている。すなわち、揮発性が極めて高く且つ有機溶媒中に抽出されるアジ化水素酸は、不安定な又は爆発生の塩を形成し、アンモニア性化合物もアジ化水素酸ほどではないが同様の性質を示す。使用済核燃料再処理施設内での爆発の危険性が増加することは、明らかに工程管理並びに施設管理上望ましくない。
【0008】
更に、従来のPUREX法においては有機リン系化合物であるリン酸トリブチル(TBP)使用している。そのため、化合物の焼却処分においてリン(P)が残渣となり、結果的に二次廃棄物を発生してしまう。
【0009】
また、上述したTRUを分離する際に使用されるCMPOおよびDIDPAも、共に有機リン系配位子であるため、PUREX法の場合と同様に、化合物の焼却処分においてリン(P)が残渣となり、結果的に二次廃棄物を発生してしまうという問題がある。
【0010】
また、特許文献1に記載されているように、分離後のウラン含有溶液及びその他アクチノイド含有溶液を別々に脱硝、溶解性の良い酸化物固体に変換して貯蔵する方法においても、その他アクチノイド含有物からプルトニウムを分離するためには、従来のPUREX法と同様に、リン酸トリブチル(TBP)使用するため、上記と同様の問題がある。
【0011】
更に、TRUの分離においては、群分離(TRU分離+有用元素回収)などのプロセスが考案されている。しかし、3価のアクチノイドと同じ3価のランタノイドは、イオン半径や原子価が同じであり、同じ挙動を示すため、その化学的性質上分離が非常に困難である。核分裂生成物として廃棄物中に存在する3価ランタノイドは、アメリシウム(III)やキュリウム(III)の約15~20倍量も共存する。アメリシウムやキュリウムの高速増殖炉(FBR)や加速器駆動未臨界システム(ADS)での分離変換においては、中性子吸収断面積が大きいランタノイドが共存することはTRUの核変換効率の低減に直結する。そのため、アクチノイド/ランタノイド分離のために、新しい化合物の創製が必要とされている。
【0012】
ここで、アクチノイド/ランタノイド分離のために、これまで以下の1~6の化合物を用いる方法が知られている。
(1)D2EHPAとDTPAを用いる方法
有機リン系化合物であるジ-2-エチルヘキシルリン酸(D2EHPA)とジエチレントリアミン-N,N,N’,N’-5酢酸(DTPA)を含む有機溶媒を用いてランタノイドからアクチノイドを分離する方法である。しかし、この方法は、水溶液のpH依存性が大きく、pH調整に緩衝剤を必要とする。
(2)CYANEX301を用いる方法
有機リン系化合物であるジ(2,4,4-トリメチルフェニル)-ジチオリン酸(CYANEX301)を用いてアメリシウムとユーロピウムとを分離する方法である。しかし、CYANEX-301は、化学的に安定性が低く、分解生成物等の不純物の影響を除くために試薬純度を99%以上にする必要がある。
(3)TPTZを用いる方法
窒素ドナーを持つトリス-(2,4,6-(2-ピリジル))-1,3,5-トリアジン(TPTZ)及びジノニル-ナフタレンスルフォン酸(HDNNS)とを含む有機溶媒を用いてアメリシウム(III)とユーロピウム(III)とを分離する方法である。しかし、スルフォン酸基をもつHDNNSは界面活性剤であり、有機相と水相の分相性が非常に悪い。
(4)BTPを用いる方法
窒素ドナーを有するビスートリアジニル-ピリジン(BTP)の誘導体(正式名:2,6-ジ[5,6-アルキル-1,2,4-トリアジン-3-イル]ピリジン))を用いて、アメリシウムとユーロピウムとを分離する方法である。しかし、BTP等は放射線安定性や化学的安定性が低い。
(5)BMPPTおよびDPPHENを用いる方法
硫黄系化合物である4-ベンゾイル-2,4-ジヒドロ-5-メチル-2-フェニル-3H-ピラゾール-3-チオン(BMPPT)と窒素ドナー化合物である4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(DPPHEN)による協同効果を利用し、アメリシウムをユーロピウムから分離する方法である。しかし、BMPPTの化学的安定性が低く、さらに分離効果を高めるために協同効果試薬としてDPPHENが必要となる。
(6)TPENおよびD2EHPAを用いる方法
窒素ドナー系化合物であるN,N,N’,N’-テトラメチル-ピリジルエチレンジアミン(TPEN)と有機リン系化合物であるジ-2-エチルヘキシルリン酸(D2EHPA)とを混合して用い、アメリシウム(III)をユーロピウム(III)から分離する方法である。しかし、水相の液性をpH3以上に調整する必要があり、緩衝剤等の添加を必要とする。
【0013】
しかし、上記1,2,6の化合物においては、有機リン系化合物を用いるため、PUREX法の場合と同様に、化合物の焼却処分においてリン(P)が残渣となり、結果的に二次廃棄物を発生してしまうという問題がある。
【0014】
また、上記3,4,5に係る窒素ドナー化合物、硫黄ドナー化合物は、アメリシウム(III)とユーロピウム(III)の分離性を追及するため、化合物自体が複雑化しており、開発・合成コストが高く経済性が低い。さらに、水溶液の酸濃度をpH領域に調整する必要があり、再処理からの高レベル廃液を一次液としたときに、酸濃度の調整(希釈)により処理溶液が増大するため、プロセスの簡略化が見込めない。また、高レベル廃液を酸化物の形状にて一時貯蔵した場合でも、pH領域に調整することが困難であるとともにpH緩衝剤等の添加が必要となる。
【0015】
従来の使用済み燃料の処理では、再利用可能なウランおよびプルトニウムを分離回収し、これらを再利用する。またその残りの溶液である高レベル放射性廃棄物から長寿命α核種であるアメリシウム、キュリウムを分離・核変換技術を施し、この変換核種を他の核分裂生成物とともに地層処分を行うことが考えられている。
【0016】
しかしながら、この方法論では再処理と高レベル廃液処理という二大化学プラントを必要とし、廃棄物の生産に伴う環境負荷の問題、建設コストなど経済性の観点から問題がある。また、核分裂性のプルトニウム、ウランを単離することから核拡散性の観点でも問題がある。
【0017】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、有機リン系化合物を用いることなく簡易かつ低コストな方法で、4価アクチノイドのプルトニウム(IV)及び3価アクチノイドであるアメリシウム(III),キュリウム(III)を、3価ランタノイド(III)等の核分裂生成物から選択的に分離回収する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
即ち、本発明の3価及び4価アクチノイドの分離回収方法は、放射性核種を含む硝酸溶液から、酸素原子とキュリウム、アメリシウムに効果的に結合する芳香族性窒素原子の両方のドナー原子を持つハイブリットドナー型有機化合物である中性多座配位活性な官能基を有する抽出剤を用いて、プルトニウム(IV)およびアメリシウム(III)、キュリウム(III)を、ランタノイド(III)から選択的に分離・回収することを特徴とする。
【0019】
前記抽出剤は、
【0020】
【化1】
JP0004911538B2_000002t.gif

【0021】
(R1,2は、Cn2n+1、R39は、水素、又はCn2n+1である。ただしnは整数を表す)
で表されるN,N’-ジアルキル-N,N’-ジ(アルキル)フェニル(-アルキル)-2,6-ピリジンジカルボキシアミド(PDA)、
又は、
【0022】
【化2】
JP0004911538B2_000003t.gif

【0023】
(R1,2は、Cn2n+1、R39は、水素、又はCn2n+1である。ただしnは整数を表す)
で表されるN,N’-ジアルキル-N,N’-ジ(アルキル)フェニル(-アルキル)-1,3-イソキノリンジカルボキシアミド(iQDA)、
又は、
【0024】
【化3】
JP0004911538B2_000004t.gif

【0025】
(R1は、Cn2n+1、R26は、水素、又はCn2n+1である。ただしnは整数を表す)
で表されるN-アルキル-N-(アルキル)フェニル-1,10-フェナントロリン-2-カルボキシアミド(PTA)であることが好ましい。
【0026】
前記化合物のうちPDA又はiQDAは、R12がメチル基、R39が水素の場合はクロロホルムに溶解して用い、R12がメチル基でR39がヘキシル基、オクチル基の場合は脂肪族系化合物に溶解して用いることが好ましい。一方、PTAは、R1がメチル基でR26が水素の場合はクロロホルム等に溶解して用い、R1がオクチルキ基でR26が水素又はアルキル基の場合は脂肪族系化合物に溶解して用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の3価及び4価アクチノイドの分離回収方法によれば、有機リン系化合物を用いることなく、簡易かつ低コストな方法で、再処理と高レベル廃液処理の一体化を可能にするような、4価アクチノイドのプルトニウム(IV)及び3価アクチノイドであるアメリシウム(III),キュリウム(III)を、3価ランタノイド等の核分裂生成物から選択的に分離回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の3価及び4価アクチノイドの分離回収方法の一実施形態を示すフローチャートである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1に、本発明の3価及び4価アクチノイドの分離回収方法のフローチャートを示す。
【0030】
まず、軽水炉(BWR、PWR、APWR)、高速炉(FR)および高速増殖炉(FBR)の使用済燃料を硝酸溶液に溶解して、使用済燃料の溶解調製液を用意する(工程a)。使用済燃料の硝酸溶液の濃度範囲は、プルトニウム(VI)、アメリシウム(III)およびキュリウム(III)がランタノイド(III)を分離できる範囲として、特に0.01M~4.0Mの範囲が好ましい。
【0031】
なお、3価及び4価アクチノイドの濃度範囲としては、軽水炉燃料(50,000MWT/t、4年冷却)において、プルトニウム(IV):10~20mM、アメリシウム(III):0.5~0.6mM、キュリウム(III):0.06~0.07mMである。高速増殖炉(MOX燃料、150,000MWT/t、4年冷却、Pu富化度30wt%以下)の場合、プルトニウム(IV):100~200mM、アメリシウム(III):30~50mM、キュリウム(III):10~20mMである。
【0032】
次に、この使用済燃料の溶解調製液から、枝分かれしたアルキル基を有するモノアミド系化合物を用いてウラン(VI)を選択的分離する(工程b)(特許文献2参照)。
【0033】
次に、ウラン(VI)を高除染した硝酸溶液に、抽出剤としてPDA又はiQDA又はPTAを脂肪族系の溶媒に溶解して用いて、溶解液中に存在するプルトニウム(IV)、アメリシウム(III)およびキュリウム(III)を3価ランタノイドなどの核分裂生成物から抽出分離などにより回収する(工程c)。
【0034】
ここで、PDA又はiQDAは、R12がメチル基でR39が水素の場合はクロロホルムに溶解して用い、R12がメチル基でR39がヘキシル基、オクチル基の場合は脂肪族系化合物に溶解して用いる。一方、PTAは、R1がメチル基でR26が水素の場合はクロロホルム等に溶解して用い、R1がオクチルキ基でR26がアルキル基の場合は脂肪族系化合物に溶解して用いる。
【0035】
PDA、iQDA又はPTAの濃度としては、それぞれ0.1~0.5Mをクロロホルムもしくはドデカンなどの脂肪族炭化水素またはN,N-ジアルキルアミドなどへ溶解して用いる。多段式抽出装置としては、ミキサセトラ、パルスカラムおよび放射能濃度が高いことから、遠心抽出機を用いる。
【0036】
上記の抽出剤は、前述のPUREXにおけるリン酸トリブチルと比較して、それぞれ以下に示す利点を有する。
(i)このハイブリットドナー型有機化合物は、硝酸溶液からプルトニウム(IV)とアメリシウム(III)とを核分裂生成物から同時に分離回収できることから、核兵器への転用が技術的に難しくなり、核不拡散抵抗性を維持することができる。
(ii)これまでのウラン-プルトニウム分離のようにプルトニウム(IV)をPUREX法で用いられているリン酸トリブチルに非抽出のプルトニウム3価に調整する必要が無く、使用済み核燃料溶解液からプルトニウム(IV)およびアメリシウム(III)を選択的に分離回収することが出来る。そのため、プルトニウム(IV)の還元工程の削減ができ、工程の簡素化を達成できる。また、還元剤・安定剤を添加しないため、還元剤・安定剤添加に起因する二次、三次反応を考慮する必要が無い。
(iii)イオン半径および原子価が同じアメリシウム(III)および3価のランタノイドが共存する溶液から選択的にアメリシウムおよびプルトニウム(IV)のみを抽出することが出来るため、これまでの群分離におけるTRU分離工程が簡素化できる。プルトニウム(IV)とアメリシウム(III)を同時に分離回収できることは、さらなる処理を加えることなく分離変換技術に直接導入できるという利点がある。
(iv)ハイブリットドナー型有機化合物であるPDA、iQDA及びPTAは、炭素、水素、酸素、窒素から構成されており、焼却によるガス化により固体廃棄物を発生せず、廃棄物低減などの環境負荷低減につながる。
【0037】
更に、プルトニウム(IV)、アメリシウム(III)、キュリウム(III)を除いた廃液中には、核分裂生成物のみが含まれているため、そこから、長半減期で発熱性のSr/Csを分離し中間貯蔵する(工程d)。
【0038】
最後に、抽残液(低レベル核分裂生成物)をガラス固化する(工程e)。
【0039】
本発明では、放射性核種を含む広範囲の硝酸溶液から、溶媒抽出法を用いてプルトニウム(IV)とアメリシウム(III)を選択的に核分裂生成物から分離・回収するために、酸素原子と窒素原子の両方のドナー原子を持つハイブリットドナー型有機化合物である、PDA、iQDA又はPTAを抽出剤として用いることにより、
(1)従来のPUREX法のようにプルトニウム(IV)を単離する必要が無く、比放射能の大きなアメリシウム(III)やキュリウム(III)と同じフラクション・溶液として管理することで核兵器への転用が技術的に難しくなり、核不拡散抵抗性を維持することができる。
(2)従来のPUREX法のように、プルトニウム(IV)を分離する場合に還元剤などを添加する必要が無くなり、派生する2次、3次反応の潜在的危険性を排除できる。
(3)PDA、iQDAやPTAを用いることで、プルトニウム(IV)を含んだアクチノイドとランタノイドを一回の操作で分離することができる。このことより、これまでのTRU分離工程やアクチノイド-ランタノイド分離工程が削減でき、工程の簡素化が大幅に実現できた。
(4)これまでのPUREX法やTRU分離においては、それぞれ有機リン系化合物であるTBP、CMPOを利用しているため、化合物の焼却処分においてリン(P)が残渣となり、結果的に二次廃棄物を発生している。しかし、PDA、iQDAやPTAはその構成元素が、炭素、窒素、酸素、水素であり廃溶媒処理において完全に焼却処分可能であることから、2次的に発生していた固体廃棄物の低減につながり、環境負荷低減が期待できる。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
極微量のプルトニウム(IV)を含む硝酸水溶液から0.5M N,N’-ジメチル-N,N’-ジフェニル-2,6-ピリジンジカルボキシアミド(PDA)を含むクロロホルム溶液の抽出溶媒により、上記プルトニウム(IV)を抽出した。平衡時のプルトニウム(IV)の抽出分配比:DPuは、硝酸濃度3.0M時および5.0M時にそれぞれDPu=10.2および42.5であった。一方、硝酸濃度1.0M時には、DPu=0.14であり、1.0M以下の硝酸溶液を用いることで効率よくプルトニウム(IV)を逆抽出により回収できた。
(実施例2)
極微量のウランを含む硝酸水溶液から0.5M N,N’-ジメチル-N,N’-ジフェニル-2,6-ピリジンジカルボキシアミド(PDA)を含むクロロホルム溶液の抽出溶媒により上記ウランを抽出した。平衡時のウラン(VI)の抽出分配比:DUは、硝酸濃度3.0M時にDU=0.17であり、核燃料再処理に用いられている硝酸濃度領域において、ウラン(VI)が抽出されないことが明らかになった。
(実施例3)
極微量の3価アメリシウムおよび3価ユーロピウム:Euを含む硝酸水溶液から0.5M N,N’-ジメチル-N,N’-ジフェニル-2,6-ピリジンジカルボキシアミド(PDA)を含むクロロホルム溶液の抽出溶媒により上記アメリシウム(III)およびユーロピウム(III)を抽出した。平衡時のアメリシウム(III)およびユーロピウム(III)の抽出分配比:DAmおよびDEuは、硝酸濃度3.0M時にそれぞれDAm=1.3およびDEu=0.25であり、選択的にアメリシウムのみを分離回収できた。
(実施例4)
極微量の3価アメリシウムおよび3価ユーロピウム:Euを含む硝酸水溶液から0.5M N-オクチル-N-メチルフェニル-1,10-フェナントロリン-2-カルボキシアミド(PTA)を含むクロロホルム溶液の抽出溶媒により上記アメリシウム(III)およびユーロピウム(III)を抽出した。平衡時のアメリシウム(III)およびユーロピウム(III)の抽出分配比:DAmおよびDEuは、硝酸濃度1.0M時にそれぞれDAm=6およびDEu=0.3であり、選択的にアメリシウムのみを分離回収できた。
【産業上の利用の可能性】
【0041】
本発明は、主に核燃料サイクルの再処理及び高レベル廃棄物処理分野や、従来のPUREX法及びTRU分離を簡素化する技術として利用できる。また、高速増殖炉燃料のための燃料製造において、プルトニウム(IV)、アメリシウム(III)及びキュリウム(III)の混合燃料製造工程への移行が容易である。更に、FBR実用化戦略調査研究で提案されている先進湿式分離技術の代替技術として貢献できる。
図面
【図1】
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