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明細書 :水素製造装置および水素製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4936454号 (P4936454)
公開番号 特開2007-314408 (P2007-314408A)
登録日 平成24年3月2日(2012.3.2)
発行日 平成24年5月23日(2012.5.23)
公開日 平成19年12月6日(2007.12.6)
発明の名称または考案の名称 水素製造装置および水素製造方法
国際特許分類 C01B   3/02        (2006.01)
C01B   7/13        (2006.01)
B01D  61/36        (2006.01)
B01D  61/44        (2006.01)
FI C01B 3/02 D
C01B 7/13
B01D 61/36
B01D 61/44 500
請求項の数または発明の数 4
全頁数 17
出願番号 特願2007-070979 (P2007-070979)
出願日 平成19年3月19日(2007.3.19)
優先権出願番号 2006125305
優先日 平成18年4月28日(2006.4.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年6月1日(2009.6.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】福井 裕
【氏名】島崎 正則
【氏名】西林 俊樹
【氏名】小貫 薫
【氏名】久保 真治
【氏名】金川 昭宏
個別代理人の代理人 【識別番号】100112737、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 考晴
【識別番号】100118913、【弁理士】、【氏名又は名称】上田 邦生
審査官 【審査官】安齋 美佐子
参考文献・文献 特開2004-107115(JP,A)
特開2005-289736(JP,A)
特開2005-289740(JP,A)
Frederick F. Stewart,Evaluation and Characterization of Membranes for HI/H2O/I2 Water Separation for the S-I Cycle,US DOE REP,2005年 9月 1日,Report Number INL/EXT-05-00723,p.1-10
調査した分野 C01B 3/02
C01B 7/13-7/14
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ヨウ素、二酸化硫黄および水から硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を生成するブンゼン反応装置と、
前記ブンゼン反応装置によって得られたヨウ化水素水溶液を濃縮した後にヨウ化水素を分解し、製品としての水素と前記ブンゼン反応装置へ供給するヨウ素とを得るヨウ化水素濃縮分解装置と、
前記ブンゼン反応装置によって得られた硫酸水溶液を濃縮した後に硫酸を分解し、酸素と前記ブンゼン反応装置へ供給する二酸化硫黄とを得る硫酸濃縮分解装置と、を備え、
前記ヨウ化水素濃縮分解装置には、ヨウ化水素水溶液を水選択透過膜によって水分膜分離する水分膜分離装置が設けられた、水素製造装置において、
前記水分膜分離装置の上流側には、ヨウ素を析出させ除去するヨウ素除去装置が設けられ、
前記水分膜分離装置には、前記水選択透過膜によって処理されるヨウ化水素水溶液に対して、蒸発潜熱分の熱を供給する熱供給器が設けられ
該熱供給器の熱源として海水を用いることを特徴とする水素製造装置。
【請求項2】
ヨウ素、二酸化硫黄および水から硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を生成するブンゼン反応装置と、
前記ブンゼン反応装置によって得られたヨウ化水素水溶液を濃縮した後にヨウ化水素を分解し、製品としての水素と前記ブンゼン反応装置へ供給するヨウ素とを得るヨウ化水素濃縮分解装置と、
前記ブンゼン反応装置によって得られた硫酸水溶液を濃縮した後に硫酸を分解し、酸素と前記ブンゼン反応装置へ供給する二酸化硫黄とを得る硫酸濃縮分解装置と、を備え、
前記ヨウ化水素濃縮分解装置には、ヨウ化水素水溶液を水選択透過膜によって水分膜分離する水分膜分離装置が設けられた、水素製造装置において、
前記水分膜分離装置の上流側には、ヨウ化水素水溶液を濃縮するとともに、該ヨウ化水素水溶液中のヨウ素を除去する電気透析器が設けられ、
前記水分膜分離装置には、前記水選択透過膜によって処理されるヨウ化水素水溶液に対して、蒸発潜熱分の熱を供給する熱供給器が設けられ
該熱供給器の熱源として海水を用いることを特徴とする水素製造装置。
【請求項3】
ヨウ素、二酸化硫黄および水から硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を生成するブンゼン反応工程と、
前記ブンゼン反応工程によって得られたヨウ化水素水溶液を濃縮した後にヨウ化水素を分解し、製品としての水素と前記ブンゼン反応工程へ供給するヨウ素とを得るヨウ化水素濃縮分解工程と、
前記ブンゼン反応工程によって得られた硫酸水溶液を濃縮した後に硫酸を分解し、酸素と前記ブンゼン反応工程へ供給する二酸化硫黄とを得る硫酸濃縮分解工程と、を備え、
前記ヨウ化水素濃縮分解工程には、ヨウ化水素水溶液を水選択透過膜によって水分膜分離する水分膜分離工程が設けられた、水素製造方法において、
前記水分膜分離工程の上流側には、ヨウ素を析出させ除去するヨウ素除去工程が設けられ、
前記水分膜分離工程には、前記水選択透過膜によって処理されるヨウ化水素水溶液に対して、蒸発潜熱分の熱を供給する熱供給工程が設けられ
該熱供給工程の熱源として海水を用いることを特徴とする水素製造方法。
【請求項4】
ヨウ素、二酸化硫黄および水から硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を生成するブンゼン反応工程と、
前記ブンゼン反応工程によって得られたヨウ化水素水溶液を濃縮した後にヨウ化水素を分解し、製品としての水素と前記ブンゼン反応工程へ供給するヨウ素とを得るヨウ化水素濃縮分解工程と、
前記ブンゼン反応工程によって得られた硫酸水溶液を濃縮した後に硫酸を分解し、酸素と前記ブンゼン反応工程へ供給する二酸化硫黄とを得る硫酸濃縮分解工程と、を備え、
前記ヨウ化水素濃縮分解工程には、ヨウ化水素水溶液を水選択透過膜によって水分膜分離する水分膜分離工程が設けられた、水素製造方法において、
前記水分膜分離工程の上流側には、ヨウ化水素水溶液を濃縮する工程と、該ヨウ化水素水溶液中のヨウ素を除去する工程が設けられ、
前記水分膜分離工程には、前記水選択透過膜によって処理されるヨウ化水素水溶液に対して、蒸発潜熱分の熱を供給する熱供給工程が設けられ
該熱供給工程の熱源として海水を用いることを特徴とする水素製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨウ素および二酸化硫黄を用いて水を熱分解することにより水素を製造する水素製造装置および水素製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水を熱分解することによって水素を製造する方法として、IS(Iodine Sulfur)法が知られている(特許文献1参照)。IS法は、以下の3つの工程から構成されている。
I ブンゼン反応工程
ヨウ素、二酸化硫黄および水から硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を生成する。
II ヨウ化水素濃縮分解工程
ブンゼン反応工程によって得られたヨウ化水素水溶液を濃縮した後に、ヨウ化水素を分解し、製品としての水素とブンゼン反応工程へ供給するヨウ素とを得る。
III 硫酸濃縮分解工程
ブンゼン反応装置によって得られた硫酸水溶液を濃縮した後に、硫酸を分解し、酸素とブンゼン反応工程へ供給する二酸化硫黄とを得る。この工程で得られる二酸化硫黄は、硫酸の分解により生成する三酸化硫黄をさらに三酸化硫黄分解工程によって分解することにより得られる。
上記I~IIIの3つの工程はそれぞれが接続され、閉サイクルとされている。
【0003】
ブンゼン反応は発熱反応であるが、ヨウ化水素濃縮分解工程におけるヨウ化水素の分解反応、硫酸濃縮分解工程における硫酸の分解反応および硫酸の分解によって生成した三酸化硫黄の分解反応は吸熱反応とされる。したがって、IS法を実現する場合には、ヨウ化水素濃縮分解工程および硫酸濃縮分解工程に熱エネルギーを投入する必要がある。
【0004】
ヨウ化水素濃縮分解工程においてヨウ化水素水溶液を濃縮する際に、ヨウ化水素と水とが共沸するので、単なる蒸留法では共沸点を超えてヨウ化水素を濃縮することが困難となる。そこで、ヨウ化水素水溶液を循環操作して共沸条件の下で濃縮する手法が行われる。しかし、循環操作を行えば、循環操作しない場合に比べて余分な熱エネルギーが必要となり、結果として投入エネルギーの低下を実現することができない。
このような蒸留法の問題を解決するために、特許文献1には、ヨウ化水素の濃縮工程において、ヨウ化水素水溶液を水選択透過膜によって透過処理し、室温下で透過水を蒸発させることにより高温熱エネルギー使用量を軽減する技術が提案されている。つまり、透過処理に必要なエネルギーを周囲環境より供給される低温熱エネルギーを使用してヨウ化水素水溶液を脱水濃縮処理し、得られた濃縮水溶液を熱化学分解して水素を得る技術が提案されている。

【特許文献1】特開2004-107115号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載の技術は、室温にて水選択透過膜を適用するので、水分膜分離効率が低下するという問題がある。なぜなら、室温にて濃縮を行った場合には、ヨウ素が固化して析出し、析出したヨウ素によって水選択透過膜が塞がれるため水分膜分離効率が低下するからである。また、蒸発潜熱によって下がった温度を室温の熱源により水素製造プロセス温度である約100℃まで昇温させることは不可能であるため、多くの熱エネルギーを投入することとなる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、有効に水選択透過膜を適用してヨウ化水素水溶液を濃縮し、水素製造効率を向上させた水素製造装置及び水素製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の水素製造装置及び水素製造方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の参考例としての発明にかかる水素製造装置は、ヨウ素、二酸化硫黄および水から硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を生成するブンゼン反応装置と、前記ブンゼン反応装置によって得られたヨウ化水素水溶液を濃縮した後にヨウ化水素を分解し、製品としての水素と前記ブンゼン反応装置へ供給するヨウ素とを得るヨウ化水素濃縮分解装置と、前記ブンゼン反応装置によって得られた硫酸水溶液を濃縮した後に硫酸を分解し、酸素と前記ブンゼン反応装置へ供給する二酸化硫黄とを得る硫酸濃縮分解装置と、を備え、前記ヨウ化水素濃縮分解装置には、ヨウ化水素水溶液を水選択透過膜によって水分膜分離する水分膜分離装置が設けられた、水素製造装置において、前記水分膜分離装置には、前記水選択透過膜によって処理されるヨウ化水素水溶液に対して、ヨウ素が析出する温度以上を維持するための熱を供給する熱供給器が設けられていることを特徴とする。
【0008】
水分膜分離装置により、ヨウ化水素水溶液中の水分を膜分離することにより、ヨウ化水素水溶液を濃縮することとしたので、水とヨウ化水素との共沸条件によって濃縮の進行が妨げられることがない。したがって、蒸留法による共沸条件の下で濃縮する場合に比べて余分な熱エネルギーを必要としない。
また、室温で操作した場合には、水が水蒸気となる蒸発潜熱によって温度が下がり、ヨウ化水素水溶液中のヨウ素が析出する可能性がある。そうすると、析出したヨウ素が水選択透過膜を塞ぐこととなり、ヨウ化水素水溶液の水分膜分離効率が低下する。そこで、熱供給器によって、ヨウ素が析出する温度以上を維持するための熱を水分膜分離装置に供給することで、ヨウ素の析出を防いで濃縮を進行させることができる。
【0009】
さらに、上記水素製造装置は、前記熱供給器の熱源として、当該水素製造装置内の排熱を用いることを特徴とする。
【0010】
熱供給器の熱源として、当該水素製造装置内の排熱を用いることとしたので、別途新たに熱源を設ける必要がない。したがって、水分膜分離装置に投入される熱エネルギーを低減することができる。これにより、蒸留法によって共沸条件の下で濃縮した場合に比べてヨウ化水素濃縮工程に投入される熱エネルギーを大幅に削減することができる。
用いられる排熱としては、例えば硫酸濃縮分解装置やヨウ化水素濃縮分解装置における排熱が用いられる。
【0011】
また、本発明の水素製造装置は、ヨウ素、二酸化硫黄および水から硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を生成するブンゼン反応装置と、前記ブンゼン反応装置によって得られたヨウ化水素水溶液を濃縮した後にヨウ化水素を分解し、製品としての水素と前記ブンゼン反応装置へ供給するヨウ素とを得るヨウ化水素濃縮分解装置と、前記ブンゼン反応装置によって得られた硫酸水溶液を濃縮した後に硫酸を分解し、酸素と前記ブンゼン反応装置へ供給する二酸化硫黄とを得る硫酸濃縮分解装置と、を備え、前記ヨウ化水素濃縮分解装置には、ヨウ化水素水溶液を水選択透過膜によって水分膜分離する水分膜分離装置が設けられた、水素製造装置において、前記水分膜分離装置の上流側には、ヨウ素を析出させ除去するヨウ素除去装置が設けられ、前記水分膜分離装置には、前記水選択透過膜によって処理されるヨウ化水素水溶液に対して、蒸発潜熱分の熱を供給する熱供給器が設けられ、該熱供給器の熱源として海水を用いることを特徴とする。
【0012】
ヨウ素除去装置により、水選択透過膜によって水分膜分離する前のヨウ化水素水溶液の温度を下げて、あらかじめヨウ素を析出させて除去することとしたので、水分膜分離の段階で仮に室温まで溶液温度が低下したとしてもヨウ素が析出することがない。したがって、水選択膜透過膜による水分膜分離の進行が妨げられることがない。これによって、ヨウ化水素水溶液の水分膜分離効率を低下させることなく室温で濃縮を行うことができる。
また、室温で濃縮を進行させることができるので、水分膜分離装置に投入される熱エネルギーを低減することができる。
【0013】
また、本発明の水素製造装置は、ヨウ素、二酸化硫黄および水から硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を生成するブンゼン反応装置と、前記ブンゼン反応装置によって得られたヨウ化水素水溶液を濃縮した後にヨウ化水素を分解し、製品としての水素と前記ブンゼン反応装置へ供給するヨウ素とを得るヨウ化水素濃縮分解装置と、前記ブンゼン反応装置によって得られた硫酸水溶液を濃縮した後に硫酸を分解し、酸素と前記ブンゼン反応装置へ供給する二酸化硫黄とを得る硫酸濃縮分解装置と、を備え、前記ヨウ化水素濃縮分解装置には、ヨウ化水素水溶液を水選択透過膜によって水分膜分離する水分膜分離装置が設けられた、水素製造装置において、前記水分膜分離装置の上流側には、ヨウ化水素水溶液を濃縮するとともに、該ヨウ化水素水溶液中のヨウ素を除去する電気透析器が設けられ、前記水分膜分離装置には、前記水選択透過膜によって処理されるヨウ化水素水溶液に対して、蒸発潜熱分の熱を供給する熱供給器が設けられ、該熱供給器の熱源として海水を用いることを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、水分膜分離装置の上流側に設けた電気透析器により、水選択透過膜によって水分膜分離する前のヨウ化水素水溶液が濃縮されるとともに、ヨウ化水素水溶液中のヨウ素が除去される。したがって、水分膜分離装置において、さらに濃縮を進行させることができる。また、ヨウ化水素水溶液中のヨウ素が除去されているので、水分膜分離の段階で仮に室温まで溶液温度が低下したとしてもヨウ素が析出することがない。したがって、水選択膜透過膜による水分膜分離の進行が妨げられることがない。これにより、ヨウ化水素水溶液の水分膜分離効率を低下させることなく室温で濃縮を行うことができる。その結果、水分膜分離装置に投入される熱エネルギーを低減することができる。
また、電気透析器の作用により、ヨウ素が液体状態で生成されるので、除去したヨウ素を液体状態のままリサイクル溶液として用いることができる。このように、リサイクル溶液中には固化したヨウ素が存在しないので、リサイクル溶液を容易に利用することが可能となる。
【0015】
さらに、上記水素製造装置は、前記熱供給器の熱源として、海水を用いることを特徴とする。
【0016】
熱供給器の熱源として、海水を用いることとしたので、別途新たに熱源を設ける必要がない。したがって、水分膜分離装置に投入される熱エネルギーを大幅に削減することができる。
【0017】
また、本発明の参考例としての発明の水素製造装置は、前記水分膜分離装置の下流側には、ヨウ化水素水溶液の共沸濃度を超えてヨウ化水素水溶液を濃縮する電気透析器が設けられていることを特徴とする。
【0018】
水分膜分離装置の下流側に、電気透析器を設けることとしたので、水分膜分離だけではヨウ化水素水溶液の濃度が上がらない場合であっても、共沸濃度を超えてヨウ化水素水溶液を濃縮することができる。
【0019】
また、本発明の参考例としての発明の水素製造装置は、前記水分膜分離装置の下流側には、共沸濃度を超えた濃度のヨウ化水素水溶液をさらに濃縮する蒸留塔が設けられていることを特徴とする。
【0020】
水分膜分離装置、又は、水分膜分離装置および電気透析器により、ヨウ化水素水溶液の共沸点を越えさせ、その後は蒸留塔により、共沸組成を超えた濃度のヨウ化水素水溶液をさらに濃縮することとしたので、共沸条件の下で蒸留法により濃縮する場合に比べて余分な熱エネルギーを必要としない。つまり、ヨウ化水素濃縮工程に投入する熱エネルギーを可及的に低減することができる。
【0021】
さらに、本発明の参考例としての発明の水素製造装置は、前記蒸留塔の熱源として、当該水素製造装置内の排熱を用いることを特徴とする。
【0022】
蒸留塔の熱源として、当該水素製造装置内の排熱を用いることとしたので、別途新たに熱源を設ける必要がない。したがって、蒸留塔に投入される熱エネルギーを低減することができる。これにより、蒸留法によって共沸条件の下で濃縮する場合に比べて大幅に投入熱エネルギーを削減することができる。
用いられる排熱としては、例えば硫酸濃縮分解装置やヨウ化水素濃縮分解装置における排熱が用いられる。
【0023】
また、本発明の参考例としての発明の水素製造方法は、ヨウ素、二酸化硫黄および水から硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を生成するブンゼン反応工程と、前記ブンゼン反応工程によって得られたヨウ化水素水溶液を濃縮した後にヨウ化水素を分解し、製品としての水素と前記ブンゼン反応工程へ供給するヨウ素とを得るヨウ化水素濃縮分解工程と、前記ブンゼン反応工程によって得られた硫酸水溶液を濃縮した後に硫酸を分解し、酸素と前記ブンゼン反応工程へ供給する二酸化硫黄とを得る硫酸濃縮分解工程と、を備え、前記ヨウ化水素濃縮分解工程には、ヨウ化水素水溶液を水選択透過膜によって水分膜分離する水分膜分離工程が設けられた、水素製造方法において、前記水分膜分離工程には、前記水選択透過膜によって処理されるヨウ化水素水溶液に対して、ヨウ素が析出する温度以上を維持するための熱を供給する熱供給工程が設けられていることを特徴とする。
【0024】
水分膜分離工程により、ヨウ化水素水溶液中の水分を膜分離することにより、ヨウ化水素水溶液を濃縮することとしたので、水とヨウ化水素との共沸条件によって濃縮の進行が妨げられることがない。したがって、蒸留法による共沸条件の下で濃縮する場合に比べて余分な熱エネルギーを必要としない。
また、室温で操作した場合には、水が水蒸気となる蒸発潜熱によって温度が下がり、ヨウ化水素水溶液中のヨウ素が析出する可能性がある。そうすると、析出したヨウ素が水選択透過膜を塞ぐこととなり、ヨウ化水素水溶液の水分膜分離効率が低下する。そこで、熱供給工程によって、ヨウ素が析出する温度以上を維持するための熱を水分膜分離工程に供給することで、ヨウ素の析出を防いで濃縮を進行させることができる。
【0025】
また、本発明の水素製造方法は、ヨウ素、二酸化硫黄および水から硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を生成するブンゼン反応工程と、前記ブンゼン反応工程によって得られたヨウ化水素水溶液を濃縮した後にヨウ化水素を分解し、製品としての水素と前記ブンゼン反応工程へ供給するヨウ素とを得るヨウ化水素濃縮分解工程と、前記ブンゼン反応工程によって得られた硫酸水溶液を濃縮した後に硫酸を分解し、酸素と前記ブンゼン反応工程へ供給する二酸化硫黄とを得る硫酸濃縮分解工程と、を備え、前記ヨウ化水素濃縮分解工程には、ヨウ化水素水溶液を水選択透過膜によって水分膜分離する水分膜分離工程が設けられた、水素製造方法において、前記水分膜分離工程の上流側には、ヨウ素を析出させ除去するヨウ素除去工程が設けられ、前記水分膜分離工程には、前記水選択透過膜によって処理されるヨウ化水素水溶液に対して、蒸発潜熱分の熱を供給する熱供給工程が設けられ、該熱供給工程の熱源として海水を用いることを特徴とする。
【0026】
ヨウ素除去工程により、水分膜分離工程によって水分膜分離する前のヨウ化水素水溶液の温度を下げて、あらかじめヨウ素を析出させて除去することとしたので、水分膜分離の段階で仮に室温まで溶液温度が低下したとしてもヨウ素が析出することがない。したがって、水選択膜透過膜による水分膜分離の進行を妨げられることがない。これによって、ヨウ化水素水溶液の水分膜分離効率を低下させることなく室温で濃縮を行うことができる。
また、室温で濃縮を進行させることができるので、水分膜分離工程に投入される熱エネルギーを低減することができる。
【0027】
また、本発明の水素製造方法は、ヨウ素、二酸化硫黄および水から硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を生成するブンゼン反応工程と、前記ブンゼン反応工程によって得られたヨウ化水素水溶液を濃縮した後にヨウ化水素を分解し、製品としての水素と前記ブンゼン反応工程へ供給するヨウ素とを得るヨウ化水素濃縮分解工程と、前記ブンゼン反応工程によって得られた硫酸水溶液を濃縮した後に硫酸を分解し、酸素と前記ブンゼン反応工程へ供給する二酸化硫黄とを得る硫酸濃縮分解工程と、を備え、前記ヨウ化水素濃縮分解工程には、ヨウ化水素水溶液を水選択透過膜によって水分膜分離する水分膜分離工程が設けられた、水素製造方法において、前記水分膜分離工程の上流側には、ヨウ化水素水溶液を濃縮する工程と、該ヨウ化水素水溶液中のヨウ素を除去する工程が設けられ、前記水分膜分離工程には、前記水選択透過膜によって処理されるヨウ化水素水溶液に対して、蒸発潜熱分の熱を供給する熱供給工程が設けられ、該熱供給工程の熱源として海水を用いることを特徴とする。
【0028】
このような構成によれば、水分膜分離工程の上流側において、水選択透過膜によって水分膜分離する前のヨウ化水素水溶液が濃縮されるとともに、ヨウ化水素水溶液中のヨウ素が除去される。したがって、水分膜分離工程において、さらに濃縮を進行させることができる。また、ヨウ化水素水溶液中のヨウ素が除去されているので、水分膜分離の段階で仮に室温まで溶液温度が低下したとしてもヨウ素が析出することがない。したがって、水選択膜透過膜による水分膜分離の進行が妨げられることがない。これにより、ヨウ化水素水溶液の水分膜分離効率を低下させることなく室温で濃縮を行うことができる。その結果、水分膜分離工程に投入される熱エネルギーを低減することができる。
また、電気透析工程において、ヨウ素が液体状態で生成されるので、除去したヨウ素を液体状態のままリサイクル溶液として用いることができる。このように、リサイクル溶液中には固化したヨウ素が存在しないので、リサイクル溶液を容易に利用することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、熱供給器により、ヨウ素が析出する温度以上を維持するための熱を水分膜分離装置に供給し、ヨウ素の析出を防ぐこととしたので、水選択透過膜による水分膜分離効率を向上させてヨウ化水素水溶液を濃縮することができる。
また、ヨウ素除去装置により、あらかじめヨウ素を除去し、室温にて水選択透過膜を適用した場合にヨウ素が析出するのを回避することとしたので、水分膜分離効率を向上させて室温にて濃縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
一参考実施形態]
以下、本発明の参考例としての一参考実施形態について、図1~図4を用いて説明する。
図1には、水素製造装置1の概略構成が示されている。
水素製造装置1は、原料である水を熱分解によって分解し、製品である水素(さらには酸素)を製造するものである。水素製造装置1は、IS(Iodine Sulfur)法を採用しており、ブンゼン反応装置2と、ヨウ化水素濃縮分解装置3と、硫酸濃縮分解装置4とを備えている。
【0031】
ヨウ化水素濃縮分解装置3および硫酸濃縮分解装置4へ供給される熱源としては、図示しない高温ガス炉の核熱が用いられる。すなわち、中間熱交換器10を介して得られる二次ヘリウムガスの顕熱を利用する。
中間熱交換器10は、高温ガス炉の核熱によって高温とされた一次ヘリウムガスと、水素製造装置1側に熱を与える二次ヘリウムガスとの間で熱交換を行わせるものである。中間熱交換器10には、一次ヘリウムガスが流れる一次側配管10aと、二次ヘリウムガスが流れる二次側配管10bとが接続されている。二次側配管10bを流れる二次ヘリウムガスは、中間熱交換器10において約880℃まで加熱され、その圧力は約4MPaとされる。
中間熱交換器10において加熱された二次ヘリウムガスは、後述する三酸化硫黄分解器17、硫酸分解器15及びヨウ化水素分解器11との間で熱交換を行う。
【0032】
ブンゼン反応装置2は、ブンゼン反応器5と、二相分離器7とを備えている。
ブンゼン反応器5には、原料である水(HO)と、ヨウ化水素濃縮分解装置3から供給されるヨウ素(I)と、硫酸濃縮分解装置4から供給される二酸化硫黄(SO)が供給される。ブンゼン反応器5では、例えば0.1MPa(ゲージ圧),100℃の条件下で、下式によるブンゼン反応が行われ、ヨウ化水素水溶液および硫酸水溶液が生成される。なお、ブンゼン反応は発熱反応であるため、外部からエネルギーが投入されることはない。
SO(g)+I(L)+2HO→HSO(aq)+2HI(aq) ・・・(1)
二相分離器7では、ブンゼン反応器5において得られた硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を分離する。二相分離器7内は、例えば0.1MPa(ゲージ圧),100℃の条件とされる。二相分離器7において分離されたヨウ化水素水溶液および硫酸水溶液は、それぞれ、ヨウ化水素濃縮分解装置3および硫酸濃縮分解装置4へと導かれる。
【0033】
ヨウ化水素濃縮分解装置3は、ヨウ化水素精製濃縮器9と、ヨウ化水素分解器11とを備えている。
ヨウ化水素精製濃縮器9は、例えば1MPa(ゲージ圧),100~234℃の条件下で、ヨウ化水素水溶液を精製するとともに、ヨウ化水素水溶液を濃縮する。ヨウ化水素は、ヨウ化水素精製濃縮器9において気化され、ヨウ化水素分解器11へと導かれる。ヨウ化水素精製濃縮器9には、精製濃縮過程に必要な熱エネルギーが投入される。
【0034】
ヨウ化水素分解器11は、例えば1MPa(ゲージ圧),450℃の条件下で、下式によるヨウ化水素の分解を行う。
2HI(g)→H(g)+I(g) ・・・(2)
上記ヨウ化水素分解反応は吸熱反応とされ、したがって、熱エネルギーが投入される。つまり、中間熱交換器10において加熱された二次ヘリウムガスが流通するガス配管13との熱交換によって(2)式のヨウ化水素分解反応が進行する。
ヨウ化水素分解器11において分解された水素は、製品として取り出される。また、ヨウ化水素分解器11において分解されたヨウ素は、ブンゼン反応器5へと導かれる。未反応のヨウ化水素は、ヨウ化水素精製濃縮器9へと返送される。
【0035】
硫酸濃縮分解装置4は、硫酸精製濃縮器14と、硫酸分解器15と、三酸化硫黄分解器17とを備えている。
硫酸精製濃縮器14は、例えば0.1MPa(ゲージ圧),100~391℃の条件下で、硫酸を精製するとともに、硫酸水溶液を濃縮する。硫酸精製濃縮器14には、精製濃縮過程に必要な熱エネルギーが投入される。硫酸精製濃縮器14において硫酸水溶液から分離された水は、ブンゼン反応器5へと送られる。硫酸精製濃縮器14において精製濃縮された硫酸(液体)は、硫酸分解器15へと導かれる。
【0036】
硫酸分解器15は、例えば2MPa(ゲージ圧),391~527℃の条件下で、下式による硫酸の分解を行う。
SO(L)→H0(g)+SO(g) ・・・(3)
上記硫酸分解反応は吸熱反応とされ、したがって、熱エネルギーが投入される。つまり、中間熱交換器10において加熱された二次ヘリウムガスが流通するガス配管19との熱交換によって(3)式の硫酸分解反応が進行する。
硫酸分解器15において分解された三酸化硫黄と水蒸気は、三酸化硫黄分解器17へと導かれる。
【0037】
三酸化硫黄分解器17は、例えば2MPa(ゲージ圧),527~850℃の条件下で、下式による三酸化硫黄の分解を行う。
SO(g)→SO(g)+1/2O(g) ・・・(4)
上記三酸化硫黄分解反応は吸熱反応とされ、したがって、熱エネルギーが投入される。つまり、中間熱交換器10において加熱された二次ヘリウムガスが流通するガス配管20との熱交換によって(4)式の三酸化硫黄分解反応が進行する。図1に示されているように、三酸化硫黄分解器17には最も高い温度を導くために、中間熱交換器10において加熱された二次ヘリウムガスは最初に三酸化硫黄分解器17に導かれるようになっている。三酸化硫黄分解器17において熱交換を終えた二次ヘリウムガスは、硫酸分解器15及びヨウ化水素分解器11において熱交換を行う。
三酸化硫黄分解器17において生成した酸素は、製品として系外に取り出される。また、三酸化硫黄分解器17において生成した二酸化硫黄は、少量の水蒸気とともに、ブンゼン反応器5へと導かれる。
【0038】
このように、本実施形態にかかる水素製造装置1によれば、原料として水をブンゼン反応装置2へ投入することにより、製品としての水素がヨウ化水素濃縮分解装置3から、酸素が硫酸濃縮分解装置4から得ることができる。
【0039】
図2には、ヨウ化水素濃縮分解装置3のヨウ化水素精製濃縮器9が示されている。
ヨウ化水素精製濃縮器9は、ブンゼン反応装置2から供給されたヨウ化水素水溶液を水分膜分離によって濃縮する水分膜分離装置6と、この水分膜分離装置6へ熱を供給する熱供給器26と、水分膜分離装置6の下流側に配置された蒸留塔24とを主として備えている。
【0040】
水分膜分離装置6は、ブンゼン反応装置2から供給されたヨウ化水素水溶液中の水分を膜分離し、その透過水に乾燥ガスを流通させて湿りガスとして取り除くことでヨウ化水素水溶液を濃縮する。
このとき、熱供給器26により、ヨウ素が析出する温度以上を維持するための熱を水分膜分離装置6へ供給する。熱供給器26の熱源は、例えばヨウ化水素濃縮装置3や硫酸濃縮分解装置4といったISプロセス排熱が用いられる。
なお、ブンゼン反応装置2から供給されたヨウ化水素水溶液には、ブンゼン反応装置2において未反応とされたヨウ素(I)も含まれている。
【0041】
水分膜分離装置6によって、共沸濃度である16mol%(HI-H0)程度を超える濃度(例えば19mol%(HI-H0))まで濃縮されたヨウ化水素水溶液は、蒸留塔24へと送られる。蒸留塔24に送られたヨウ化水素水溶液は、蒸留法によりさらに濃縮され、ヨウ化水素濃縮液(又はガス)となってヨウ化水素分解器11(図1参照)に送られる。このとき、ヨウ化水素水溶液は共沸濃度を超えているので、水とヨウ化水素との共沸条件によって蒸留法による濃縮の進行が妨げられることはない。また、蒸留法によって生じた水は、リサイクル溶液としてブンゼン反応器5(図1参照)に送られ、原料の水として再利用される。蒸留塔24の熱源は、例えばヨウ化水素濃縮装置3や硫酸濃縮分解装置4といったISプロセス排熱が用いられる。
なお、水分膜分離装置6による水分膜分離によってヨウ化水素水溶液が十分に濃縮される場合には、蒸留塔24を省略して、直接ヨウ化水素分解器11に送ることとしてもよい。
【0042】
図3には、上述の水分膜分離装置6の詳細が示されている。
水分膜分離装置6は、水選択透過膜8によってヨウ化水素水溶液供給室21と透過室23とに仕切られている。
本実施形態では、水選択透過膜8として固体高分子イオン交換膜であるナフィオン膜(「ナフィオン」はデュポン株式会社の登録商標)を用いた。ナフィオン膜は、蒸気や液相から容易に水を吸収する性質をもち、主に水を透過しヨウ化水素をほとんど透過しない。
ブンゼン反応装置2から供給されたヨウ化水素水溶液を水分膜分離装置6のヨウ化水素水溶液供給室21に供給し、水選択透過膜8によって水分膜分離させる。水選択透過膜8を透過した水は、透過室23に乾燥ガスを流通させることで蒸発させ、湿りガスとして排気する。これにより、ヨウ化水素水溶液は濃縮され、ヨウ化水素濃縮液(又はガス)となって蒸留塔24に送られる。
【0043】
図4には、Iのヨウ化水素溶液(HI-I)中のIの溶解度が示されている。
同図から、ヨウ化水素溶液の温度が下がると、Iの溶解度が下がり、さらにヨウ素が析出することがわかる。例えば、Iが80wt%の濃度のヨウ化水素溶液の場合、95℃付近でヨウ素が析出する。
本実施形態の場合、HIが11wt%、Iが81wt%、H0が8wt%の水溶液なので、例えば90℃程度まで温度が低下するとヨウ素が析出する。つまり、特許文献1のように室温で水分膜分離の操作をした場合には、水が水蒸気となる蒸発潜熱によってヨウ化水素水溶液の温度が下がるため、ヨウ化水素水溶液中のヨウ素が析出する。
したがって、本実施形態では、ヨウ素が析出する温度以上を維持するための熱(例えば、110℃程度)を水分膜分離装置6に供給する。
【0044】
このように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
熱供給器26によって、ヨウ素が析出する温度以上を維持するための熱を水分膜分離装置6に供給することとしたので、ヨウ素の析出を防いで濃縮を進行させることができる。
さらに、熱供給器26で用いる熱をISプロセス排熱を用いることとしたので、熱エネルギーを削減することができる。
【0045】
また、水分膜分離装置6内の水選択透過膜8を適用して、ヨウ化水素水溶液中の水分を膜分離することにより、ヨウ化水素水溶液を濃縮することとしたので、水とヨウ化水素との共沸条件によって濃縮の進行が妨げられることがない。したがって、蒸留法による共沸条件の下で濃縮する場合に比べて余分な熱エネルギーを必要としない。
【0046】
さらに、水分膜分離装置6によって共沸濃度である16mol%(HI-H0)程度を超えた濃度まで濃縮することにより、その後はISプロセス排熱を熱源とする蒸留塔24で、共沸条件によって進行を妨げられることなくさらに濃縮させることができる。したがって、水分膜分離装置6によって同一の濃度範囲を濃縮した場合に比べて、水分膜分離装置6に投入する熱エネルギーを低減することができる。また、共沸条件の下で蒸留法により同一の濃度範囲を濃縮する場合に比べて投入する熱エネルギーを大幅に削減することができる。つまりヨウ化水素濃縮工程に投入する熱エネルギーを可及的に低減することができ、結果として水素製造効率を向上させることができる。
【0047】
[第実施形態]
次に、本発明の第実施形態について、図5を用いて説明する。
なお、本実施形態は、一参考実施形態に対して、水分膜分離装置6周りの構成が異なる。したがって、一参考実施形態と異なる点についてのみ説明し、その他については一参考実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
図5に示すように、水分膜分離装置6の上流側には、ヨウ素除去装置28が配置されている。
ヨウ素除去装置28は、容器の底面から上方に立設する壁体25によって、前室27と後室29とに分けられている。
ブンゼン反応装置2から供給されたヨウ化水素水溶液を、ヨウ素除去装置28の前室27へと供給する。ヨウ化水素水溶液を冷却水によって室温程度まで冷やすことにより、水溶液中のヨウ素を固化させて前室27に析出させる。なお、冷却水は、図5に破線矢印で示すように、ヨウ素除去装置28の図において上方から注入し、リサイクル溶液とは異なる流路を通って図において下方から取り出される。
【0048】
析出したヨウ素は下方へと沈降し、上澄みのみが壁体25を越えて後室29へと移るので、後室29内の水溶液は、析出したヨウ素が除去されたヨウ化水素水溶液となる。後室29内のヨウ化水素水溶液は、水分膜分離装置6へと送られる。また、析出したヨウ素は、前室27の下方から一部の水溶液とともに取り出され、図示しないポンプによってブンゼン反応器5(図1参照)に送られて原料の水とヨウ素として再利用される。
なお、ヨウ素除去装置28の熱源として海水を用いてヨウ素を析出させることができる場合には、冷却水として海水を用いる。
【0049】
水分膜分離装置6では、析出したヨウ素をあらかじめ除去したヨウ化水素水溶液を水分膜分離によって濃縮する。例えばヨウ化水素水溶液を室温程度に冷やすことによって析出したヨウ素を除去した水溶液は、室温にて水分膜分離を行ってもヨウ素が析出することがないので、室温にて濃縮を進行させることができる。
【0050】
しかし、水分膜分離の際に水が水蒸気となる蒸発潜熱によって、ヨウ化水素水溶液が室温以下に冷却されてしまうおそれがある。そこで、ヨウ化水素水溶液の温度を室温程度に維持するために、蒸発潜熱分の熱エネルギーを熱供給器26によって供給する。本実施形態の場合、蒸発潜熱分の熱エネルギーを供給することで足りるので、熱供給器26の熱源は、海水が用いられる。
【0051】
このように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
ヨウ素除去装置28によって、あらかじめヨウ化水素水溶液中のヨウ素を除去することとしたので、水分膜分離の段階でヨウ素が析出することなく室温にて濃縮を進行させることができる。
また、水が水蒸気になる蒸発潜熱分の熱を海水の熱源を用いて供給することとしたので、熱供給器26で用いる熱エネルギーを削減することができる。
これにより、蒸留法によって共沸条件の下で濃縮した場合に比べて投入する熱エネルギーを大幅に削減することができる。つまりヨウ化水素濃縮工程に投入する熱エネルギーを可及的に低減することができ、結果として水素製造効率を向上させることができる。
【0052】
なお、上述した一参考実施形態および第実施形態は、以下のように変形することができる。すなわち、図6に示すように、水分膜分離装置6と蒸留塔24との間に、電気透析器22を配置する。
水分膜分離装置6によって水分膜分離するだけではヨウ化水素水溶液の濃度が上がらない場合には、補助的に電気透析器22を使用することによって、共沸濃度を超えてヨウ化水素水溶液を濃縮する。共沸濃度を超える濃度まで濃縮されたヨウ化水素水溶液は、その後蒸留塔24へと送られてさらに濃縮される。
なお、電気透析器22によって、ヨウ化水素水溶液が十分に濃縮される場合には、蒸留塔24を省略して、直接ヨウ化水素分解器11に送ることとしてもよい。
【0053】
このように、水分膜分離装置6だけでは共沸濃度である16mol%(HI-H0)程度を超える濃度までヨウ化水素水溶液の濃度が上がらない場合であっても、電気透析器22によって共沸濃度を超えて濃縮させ、その後はISプロセス排熱を熱源とする蒸留塔24で、共沸条件によって進行を妨げられることなくさらに濃縮させることができる。
これにより、水分膜分離装置6によって同一の濃度範囲を濃縮した場合に比べて、水分膜分離装置6に投入する熱エネルギーを大幅に削減することができる。つまりヨウ化水素濃縮工程に投入する熱エネルギーを可及的に低減することができ、結果として水素製造効率を向上することができる。
【0054】
[第実施形態]
次に、本発明の第実施形態に係る水素製造装置30について、図7および図8を参照して説明する。
本実施形態に係る水素製造装置30は、図7に示すように、ヨウ化水素精製濃縮器9が、第実施形態のヨウ素除去装置28に替えて、水分膜分離装置6の上流側に電気透析器32を備えている点で、第実施形態と異なる。
以下、第実施形態に係る水素製造装置と構成を共通する箇所には、同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
電気透析器32は、ブンゼン反応装置2から供給されたヨウ化水素水溶液を濃縮するとともに、ヨウ化水素水溶液中のヨウ素を除去する。
具体的に、図8に電気透析器32の詳細を示して説明する。
電気透析器32は、陽極室Aと陰極室Bとを仕切る陽イオン交換膜34と、陽極室Aに設置される陽極36と、陰極室Bに設置される陰極38とを備えている。
電気透析器32は、陽極36と、陰極38との間に電圧をかけることにより、ヨウ化水素水溶液を電気分解するようになっている。
【0056】
陽イオン交換膜34は、陽極室A側の陽イオンを、陰極室B側へ選択的に透過するようになっている。
陽極36では、電気分解の際に酸化反応が起こり、陰極38では、電気分解の際に還元反応が起こるようになっている。
なお、一参考実施形態において述べたように、ブンゼン反応装置2から供給されるヨウ化水素水溶液には、ブンゼン反応装置2において未反応とされたヨウ素(I)も含まれているので、図8において、電気透析器32に供給されるヨウ化水素水溶液は、HI-I-HO混合液となっている。
【0057】
陽極室Aおよび陰極室Bには、それぞれHI-I-HO混合液が供給される。陽極36と陰極38との間に電圧をかけると、HI-I-HO混合液が電気分解されて、陽イオン交換膜34により分離される。陽極36では、イオン化したHIのIがIに酸化され、陰極38では、IがIに還元される。このとき、陽極室Aの溶液(以下、単に「陽極液」という。)中のイオン化したHIのHが、陽イオン交換膜34を透過して、陰極室Bの溶液(以下、単に「陰極液」という。)へ移動する。このHは、陰極液においてIと結合することにより、HIとなる。その結果、陽極液においては、HI成分が希釈され、I成分が濃縮される。一方、陰極液においては、HI成分が濃縮され、I成分が希釈される。
【0058】
すなわち、陰極室Bにおいては、ヨウ化水素水溶液中のヨウ化水素の濃度を高められるとともに、ヨウ素が除去されるようになっている。このヨウ化水素水溶液は、水分膜分離装置6へ送られる。
また、陽極室Aにおいては、ヨウ素が液体状態で生成されるようになっている。このヨウ素は、一部の水溶液とともに液体状態のまま取り出されて、図示しないポンプによってブンゼン反応器5(図1参照)に送られる。
【0059】
図7に戻り、水分膜分離装置6は、電気透析器32にて濃縮されたヨウ化水素水溶液を、水分膜分離によってさらに濃縮する。水分膜分離装置6によって濃縮されたヨウ化水素水溶液は、その後、蒸留塔24へと送られて、さらに濃縮される。
この場合に、蒸留塔24に送られるヨウ化水素水溶液が、共沸濃度を超えて濃縮されていればよい。例えば、電気透析器32により、ヨウ化水素水溶液を共沸濃度を超える濃度まで濃縮することとしてもよく、あるいは、水分膜分離装置6により、ヨウ化水素水溶液を共沸濃度を超える濃度まで濃縮することとしてもよい。
【0060】
このように構成された本実施形態に係る水素製造装置30の作用について説明する。
ブンゼン反応装置2から送られるヨウ化水素水溶液は、先ず、電気透析器32に供給される。電気透析器32では、図8に示す陰極室Bにおいて、ヨウ化水素水溶液が、濃縮されるとともにヨウ素が除去される。このヨウ化水素水溶液は、電気透析器32から取り出されて、水分膜分離装置6へと送られる。一方、陽極室Aにおいて、液体状態のヨウ素が生成される。このヨウ素は、一部の水溶液とともに取り出され、図示しないポンプによって、ブンゼン反応器5(図1参照)にリサイクル溶液として送られて、原料の水とヨウ素として再利用される。この場合に、リサイクル溶液には、ヨウ素が液体状態で含まれるので、リサイクル溶液には固化したヨウ素が存在しない。したがって、リサイクル溶液の利用が容易となる。
【0061】
電気透析器32から水分膜分離装置6に送られたヨウ化水素水溶液は、水分膜分離によってさらに濃縮される。このヨウ化水素水溶液は、濃縮されるとともに、ヨウ素が除去されているので、室温にて水分膜分離を行ったとしてもヨウ素が析出することがない。したがって、室温にてさらに濃縮を進行させることができる。
【0062】
水分膜分離装置6により、濃縮されたヨウ化水素水溶液は、蒸留塔24に送られる。
このヨウ化水素水溶液は、電気透析器32および水分膜分離装置6を通過することにより、共沸濃度を超えて濃縮されているので、蒸留塔24において、共沸条件によって進行を妨げられることなく、さらに濃縮することができる。
なお、水分膜分離装置6から蒸留塔24に送られるヨウ化水素水溶液が、十分に濃縮されている場合には、蒸留塔24に代えて、公知の気液分離器等を代用することとしてもよい。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係るヨウ素製造装置30によれば、水分膜分離装置6による水分膜分離の段階でヨウ素が析出しないので、水分膜分離装置6の作動温度を低下させることができる。したがって、ヨウ化水素濃縮工程に投入する熱エネルギーを可及的に低減させることができ、結果として水素製造効率を向上させることができる。
さらに、電気透析器32の作用により、ヨウ化水素水溶液から除去したヨウ素を、液体状態のままリサイクル溶液として用いることができるので、リサイクル溶液を容易に利用することが可能となる。
【0064】
なお、上述した各実施形態では、圧力や温度の条件を具体的に示したが、これらはあくまでも一例であって、本発明がこれらの数値に限定されるものではない。
また、水分膜分離装置6の下流側に設置する蒸留塔24は、本実施形態のように1つに限定されるものではなく、2以上であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一参考実施形態にかかる水素製造装置を示した概略構成図である。
【図2】本発明の一参考実施形態にかかる水素製造装置の水分膜分離装置周りを示した概略図である。
【図3】水分膜分離装置の概略図である。
【図4】ヨウ化水素溶液中のIの溶解度を濃度と温度の関係で示した図である。
【図5】本発明の第実施形態にかかる水素製造装置の水分膜分離装置周りを示した概略図である。
【図6】本発明の上記各実施形態の変形例について、水分膜分離装置周りを示した概略図である。
【図7】本発明の第実施形態にかかる水素製造装置のヨウ化水素精製濃縮器を示す該略図である。
【図8】図7のヨウ化水素精製濃縮器の電気透析器を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 水素製造装置
2 ブンゼン反応装置
3 ヨウ化水素濃縮分解装置
4 硫酸濃縮分解装置
6 水分膜分離装置
8 水選択透過膜
22 電気透析器
24 蒸留塔
26 熱供給器
28 ヨウ素除去装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7