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明細書 :コジェネレーション高温ガス炉システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5704526号 (P5704526)
公開番号 特開2012-057986 (P2012-057986A)
登録日 平成27年3月6日(2015.3.6)
発行日 平成27年4月22日(2015.4.22)
公開日 平成24年3月22日(2012.3.22)
発明の名称または考案の名称 コジェネレーション高温ガス炉システム
国際特許分類 G21D   3/12        (2006.01)
G21D   5/02        (2006.01)
G21D   3/00        (2006.01)
G21D   3/08        (2006.01)
FI G21D 3/12 F
G21D 5/02 GDT
G21D 3/00 A
G21D 3/08 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2010-199218 (P2010-199218)
出願日 平成22年9月6日(2010.9.6)
審査請求日 平成25年7月25日(2013.7.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】佐藤 博之
【氏名】ヤン ジングロン
【氏名】橘 幸男
【氏名】国富 一彦
【氏名】日野 竜太郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100100549、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 嘉之
【識別番号】100090516、【弁理士】、【氏名又は名称】松倉 秀実
【識別番号】100113608、【弁理士】、【氏名又は名称】平川 明
審査官 【審査官】田邉 英治
参考文献・文献 特開昭51-071409(JP,A)
特表2005-506539(JP,A)
特開2007-107907(JP,A)
特開平08-068341(JP,A)
国際公開第2009/048129(WO,A1)
特表2011-524957(JP,A)
調査した分野 G21D 1/00- 9/00
特許請求の範囲 【請求項1】
原子炉の熱を、熱利用系とタービン発電系で消費するコジェネレーション高温ガス炉システムであって、
前記原子炉、前記熱利用系へ熱を供給する熱交換器、及び前記タービン発電系の順に、原子炉の冷却材であるガスが循環する冷却材循環経路と、
前記タービン発電系に流入するガスの温度が第一の制御目標値を保つように、前記原子炉と前記熱交換器をバイパスするバイパス経路を流れるガスの流量を調整する第一の制御手段と、
前記原子炉から流出するガスの温度が一定な第二の制御目標値を保つように、前記冷却材循環経路内のガスのインベントリを調整する第二の制御手段と、を備える、
コジェネレーション高温ガス炉システム。
【請求項2】
前記熱利用系および前記タービン発電系が消費する熱量が、前記原子炉が出力する熱量と均衡するように、前記熱利用系および前記タービン発電系のうち何れか一方の消費熱量の変動に応じて何れか他方の消費熱量を調整する第三の制御手段を更に備える、
請求項1に記載のコジェネレーション高温ガス炉システム。
【請求項3】
前記第二の制御手段は、前記タービン発電系の電気出力と前記冷却材循環経路のガスの圧力との相関関係を規定したマップに従うように前記冷却材循環経路内のガスのインベントリを調整して、前記原子炉から流出するガスの温度を前記第二の制御目標値に保つ、
請求項1または2に記載のコジェネレーション高温ガス炉システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、コジェネレーション高温ガス炉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高温ガス炉を熱源とし、熱、電気および水素を併産可能なコジェネレーションシステムは、実用化に向けた研究開発が日本や米国を始め世界各国で進められている。また、カザフスタンなどの開発途上国においても導入が検討されている(例えば、特許文献1-3を参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】JAEA's VHTR for Hydrogen and Electricity Cogeneration: GTHTR300C, Nuclear Engineering and Technology, Vol.39, No.1, pp. 9-20, 2007.
【非特許文献2】Next Generation Nuclear Plant Pre-Conceptual Design Report, INL/EXT-07-12967, pp. 38, 40-41, 2007.
【非特許文献3】Examination on Small-Sized Cogeneration HTGR for Developing Countries, JAEA-Technology 2008-019, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽光発電や風力発電といった自然エネルギーを利用する電源が急速に普及している先進国や、電力網の整備が進んでいない開発途上国の発電所は、電力や熱需要の変動に迅速に追従した運転を行なう必要に迫られている。しかし、高温ガス炉は、熱容量が大きいため、原子炉内の温度変化が緩慢であることから原子炉出口温度を迅速に変更できない。また、急激に原子炉の温度を変化させる場合に、炉内構造物で発生する熱応力が問題となる。加えて、タービンに流入するガスの温度変動は、タービンのエネルギー変換効率の低下を招く虞がある。
【0005】
そこで、本願は、負荷追従時においても、原子炉の熱出力および温度を一定にして炉内構造物の熱応力の発生を低減し且つタービン発電系の高い発電効率を維持することが可能な、コジェネレーション高温ガス炉システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、原子炉および熱利用系をバイパスする冷却材のバイパス流量および冷却材のインベントリを制御することにより、負荷追従時においても、原子炉の熱出力および温度を一定とする定格出力運転を維持しつつ、タービン発電系の運転条件を一定に保つことにした。これにより、炉内構造物の熱応力の発生が低減し且つタービン発電系の高い発電効率を維持することができる。
【0007】
詳細には、原子炉の熱を、熱利用系とタービン発電系で消費するコジェネレーション高温ガス炉システムであって、前記原子炉、前記熱利用系へ熱を供給する熱交換器、及び前記タービン発電系の順に、原子炉の冷却材であるガスが循環する冷却材循環経路と、前記タービン発電系に流入するガスの温度が第一の制御目標値を保つように、前記原子炉と前記熱交換器をバイパスするバイパス経路を流れるガスの流量を調整する第一の制御手段と、前記原子炉から流出するガスの温度が第二の制御目標値を保つように、前記冷却材循環経路内のガスのインベントリを調整する第二の制御手段と、を備える。
【0008】
このコジェネレーション高温ガス炉システムにおいては、タービン発電系に流入するガスの温度が第一の制御手段によって一定に制御され、原子炉から流出するガスの温度が第二の制御手段によって一定に制御される。ここで、第一の制御目標値は、タービン発電系に流入するガスの温度の制御目標値であり、例えば、タービン発電系の発電効率が最も高くなる値である。また、第二の制御目標値は、原子炉から流出するガスの温度の制御目標値であり、例えば、原子炉が定格出力で運転している際の原子炉出口温度である。
【0009】
このコジェネレーション高温ガス炉システムによれば、原子炉の出力を保ったままの状態で、熱利用系における熱需要や電力系統における電力需要の変動に追従しても、原子炉の出口温度とタービンの入口温度が一定に保たれることで、炉内構造物の過渡的な熱応力の発生やガスタービン発電系の発電効率の低下を防ぐことができる。
【0010】
なお、前記コジェネレーション高温ガス炉システムは、前記熱利用系および前記タービン発電系が消費する熱量が、前記原子炉が出力する熱量と均衡するように、前記熱利用系および前記タービン発電系のうち何れか一方の消費熱量の変動に応じて何れか他方の消費熱量を調整する第三の制御手段を更に備えるものであってもよい。
【0011】
コジェネレーション高温ガス炉システムがこのような第三の制御手段を備えていれば、原子炉の熱が熱利用系とタービン発電系によって過不足なく消費されるので、冷却材循環経路を循環する冷却材が過熱しない。
【0012】
また、前記第二の制御手段は、前記タービン発電系の電気出力と前記冷却材循環経路のガスの圧力との相関関係を規定したマップに従うように前記冷却材循環経路内のガスのインベントリを調整して、前記原子炉から流出するガスの温度を前記第二の制御目標値に保つようにしてもよい。このマップは、負荷変動に追従して第一の制御手段によるバイパス経路の流量調整が行なわれても、原子炉から流出する冷却材の温度が一定になるように、電気出力とガスの圧力との相関関係を規定したものであり、例えば、負荷変動に追従する場合でも原子炉を通過するガスの質量流量が一定になるように相関関係を規定している。
【0013】
第二の制御手段がインベントリをこのようなマップに基づいて調整すれば、負荷変動に対する追従性が改善されるので、第一の制御手段によるバイパス経路の流量調整が行なわれても、原子炉から流出するガスの温度の過渡的な変動を抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るコジェネレーション高温ガス炉システムであれば、原子炉の熱出力および温度を一定にして炉内構造物の熱応力の発生を低減し且つタービン発電系の高い発電効率を維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第一実施形態に係るコジェネレーション高温ガス炉システムの構成図である。
【図2】コジェネレーション高温ガス炉システムの各プロセス値の変化やICV-1、BCV-1の動作の流れを示す図である。
【図3】熱利用系とガスタービン発電系の熱負荷が変動した場合の、コジェネレーション高温ガス炉システムのプロセス値の変化を示したグラフである。
【図4】第二実施形態に係るコジェネレーション高温ガス炉システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本願発明の一態
様であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。

【0017】
図1は、第一実施形態に係るコジェネレーション高温ガス炉システム(以下、高温ガス炉システム1という)の構成を示す。高温ガス炉システム1は、核分裂により冷却材(以下、一次冷却材という)を加熱する原子炉2、原子炉2の熱の一部を利用する熱利用系3、及び原子炉2の熱エネルギーで発電するタービン発電系4を備える。熱利用系3は、一次冷却系5と二次冷却系6との間で熱交換を行うプロセス熱交換器7を介して、原子炉2の熱の一部を得る。熱利用系3としては、例えば、水素製造プロセス若しくはその他の各種プロセスを適用できる。

【0018】
なお、本願でいうコジェネレーションとは、原子炉の熱を熱利用系とタービン発電系へ同時に供給することをいう。また、本願でいう高温ガス炉とは、ガスを冷却材とし、冷却材の原子炉出口温度が700℃以上の原子炉をいう。

【0019】
原子炉2は、黒鉛を減速材とするガス冷却炉であり、被覆燃料粒子内の二酸化ウランを核分裂させて熱を発生する。原子炉2は、熱や放射線に対する安定性が高く、化学的にも不活性で取り扱いが容易なヘリウムガスによって冷却される。

【0020】
原子炉2の出力は、炉心を構成する数十から数百体の燃料体の中に分散配置された数十体の制御棒を上下に動かすと変動する。高温ガス炉システム1が定格運転中においては、原子炉出力制御系が、原子炉2を出た一次冷却材の温度(以下、原子炉出口温度という)及び中性子計装の計測量に基づいて各制御棒の位置を自動的に調整することにより、原子炉2の出力を一定に保つ。

【0021】
プロセス熱交換器7は、一次冷却系5の原子炉2の出口側に設置される熱交換器である。プロセス熱交換器7は、例えば、二次冷却系の冷却材(以下、二次冷却材という)がヘリウムガスであれば中間熱交換器を適用し、二次冷却材が水であれば蒸気発生器を適用することができる。中間熱交換器としては、例えば、一次冷却材が胴側を流れ、二次冷却材が管側を流れるヘリカルコイル型の熱交換器などがある。

【0022】
ガスタービン発電系4は、タービン8、発電機9、圧縮機10、再生熱交換器11、及び冷却器12を備える。タービン8は、一次冷却材を作動流体とする閉サイクルガスタービンであり、原子炉2から流れる高温で高圧の一次冷却材が膨張する際にタービン翼が得る回転力により、交流の発電機9とターボ型の圧縮機10を駆動する。一次冷却材は、タービン8を通過する過程で約半分程度の圧力まで降圧する。発電機9から出力される電力は、大部分が主変圧器で適当な電圧に昇圧された後に電力系統へ送られ、一部が所内変圧器で適当な電圧に降圧された後に所内で消費される。タービン8から排気される一次冷却材は、圧縮機10の圧縮効率を高めるために冷却器12で冷却された後に、圧縮機10で約2倍程度の圧力まで昇圧される。圧縮機10で昇圧された一次冷却材は、システム全体の熱効率を高めるために再生熱交換器11でタービン8の排気によって加熱された後に、原子炉2へ再び送られる。なお、ガスタービン発電系4は、タービン8、圧縮機10、再生熱交換器11あるいは冷却器12を複数備えていてもよい。

【0023】
高温ガス炉システム1は、上述した機器の他に、ヘリウムガス純化系、炉心冷却系、燃料破損検出系、放射性廃棄物処理系、燃料取扱系、放射線モニタ系、建屋換気系、ユーティリティ系といった各種の系統を備え、且つ、重要度に応じて多重化されることにより、原子炉施設およびその周辺の安全が十分に確保されている。

【0024】
ところで、高温ガス炉システム1は、熱利用系3へ熱を供給すると共に、電力系統へ電力を供給するコジェネレーション型のシステムである。よって、熱利用系3の熱需要ある
いは電力系統の電力需要の変化に対応できるシステム構成が必要である。これに対応する方策としては、例えば、熱利用系3の熱需要あるいは電力系統の電力需要の変化に応じて原子炉2の出力を変更することが考えられる。しかし、熱容量の大きさに起因する原子炉2の緩慢な温度特性や、炉内構造物に発生する熱応力の影響などに鑑みると、原子炉2の出力は一定に保たれることが望ましい。

【0025】
そこで、高温ガス炉システム1は、熱利用系3の熱需要あるいは電力系統の電力需要が変化しても、原子炉2の出力、タービン8に流入する一次冷却材の温度(以下、タービン入口温度という)、及び熱利用系3とガスタービン発電系4が消費する熱の総量を一定に保つことができるよう、インベントリ調整弁ICV-1およびバイパス流量調節弁BCV-1を一次冷却系5に設けている。ICV-1の先には、一次冷却材を回収したり注入するヘリウムガスを蓄えるヘリウムガスの貯蔵設備が設けられている。

【0026】
なお、ここでいう電力系統の電力需要の変化とは、比較的緩慢な日負荷変動や季節負荷変動を意図しており、系統事故等に起因する電力負荷の系統脱落といった急峻な電力需要の変動は意図していない。ICV-1およびBCV-1は、熱利用系3の熱需要あるいは電力系統の電力需要が緩慢に変化しながらガスタービン発電系4と熱利用系3のヒートバランスが変更される場合に、原子炉2の出力およびタービン8に流入する一次冷却材の温度(以下、タービン入口温度という)を所定の制御目標値に保つ目的で設置される。この制御目標値は、ガスタービン発電系4の発電効率が最も高くなるときのタービン入口温度である。

【0027】
ICV-1は、電力需要に応じて一次冷却材のインベントリを調整する弁であり、発電機9の出力を上げる場合には一次冷却系5内にヘリウムガスを注入し、発電機9の出力を下げる場合には一次冷却系5内の冷却材を排出する。一次冷却系5内にヘリウムガスが注入されると、一次冷却材の質量流量が増加する。また、一次冷却系5内の冷却材が排出されると、一次冷却材の質量流量が減少する。よって、一次冷却材のインベントリを電力需要に応じて調整することにより、原子炉2を通過する一次冷却材の質量流量が一定に保たれ、原子炉2の出口温度が所定の制御目標値に保たれる。この制御目標値は、原子炉2が定格出力で運転しているときの原子炉出口温度である。

【0028】
また、BCV-1は、原子炉2およびプロセス熱交換器7をバイパスする経路にある開度調整可能な弁であり、タービン入口温度が一定になるように、原子炉2およびプロセス熱交換器7をバイパスする一次冷却材の流量を調整する。BCV-1は、一次冷却系5の流量の4分の1程度の容量を有する。熱利用系3における熱需要が減少すると、プロセス熱交換器7の交換熱量が減少する。BCV-1が無いと、プロセス熱交換器7の交換熱量が減少した場合に、プロセス熱交換器7を出た一次冷却材の温度が上昇してタービン入口温度が上昇する。そこで、BCV-1は、タービン入口温度が設定値を上回る場合は開動作し、タービン入口温度が設定値を下回る場合は閉動作する。BCV-1が開くと、プロセス熱交換器7を出た一次冷却材よりも温度の低い、再生熱交換器11を出た原子炉2へ流入する低温の一次冷却材の一部が、プロセス熱交換器7を出たタービン8へ流入する高温の一次冷却材に注入される。よって、BCV-1を開くことにより、タービン入口温度が下がり、タービン入口温度が設定値に近づく。BCV-1を閉じるとその逆のことが起こる。

【0029】
ところで、発電機9が並列される電力系統には、高温ガス炉システム1以外の発電所の交流発電機が多数並列されている。そして、電力系統における電力の需給バランスは、電力系統の実周波数が既定の周波数(日本国内であれば、50Hzまたは60Hz)を維持するように、給電指令所が火力発電所や水力発電所に対して行なうボイラーの燃焼量や水車の水量の調整によって保たれる。従って、高温ガス炉システム1で原子炉2の出力や熱
利用系3の熱需要が変動した場合に生ずる発電機9の出力変動は、電力系統における発電所間の相互調整作用により、高温ガス炉システム1以外の発電所へ吸収される。

【0030】
よって、高温ガス炉システム1は、例えば、給電指令所から電力需要に伴う発電機9の出力上昇の要請を受けた場合、自身の支配下にある熱利用系3の熱需要を減らすことにより発電機9の出力を上昇させ、電力需要に応えるわけであるが、その場合、以下のような現象が生じる。

【0031】
すなわち、高温ガス炉システム1では、電力需要の増大に対応して熱利用系3の熱需要を減らすと、タービン入口温度が上昇しないようにBCV-1が開動作する。熱利用系3における熱需要は、熱利用系3の運転状態を変更することにより調整され、例えば、熱利用系3が水素製造プロセスを司るものであれば、水素の製造量を増減することにより調整される。熱利用系3の運転状態は、遠隔信号などによって自動的に変更されてもよいし、運転員による手動操作で変更されてもよい。

【0032】
ここで、原子炉出力制御系は、原子炉出口温度を主要な入力信号とし、中性子計装の出力を補助的な入力信号として、制御棒の位置を調整している。従って、BCV-1が開動作した場合に、一次冷却材のインベントリが固定されていると、原子炉2を通過する一次冷却材の流量の低下に伴う原子炉出口温度の上昇を抑制するべく、原子炉出力制御系による制御棒の挿入が行なわれて原子炉2の出力が降下する虞がある。換言すると、一次冷却材のインベントリが固定されていると、BCV-1が開動作した場合に、熱利用系3の熱需要の減少に伴う余剰熱量によって発電機9の出力が上昇している間に、原子炉出力制御系による制御が行われて原子炉2の出力が降下してしまう虞がある。よって、ICV-1が無いと、熱利用系3の熱需要あるいは電力系統の電力需要が変化する場合に、原子炉2の出力を一定に保てない場合がある。

【0033】
そこで、この高温ガス炉システム1では、BCV-1の開度変更に伴って変動する、原子炉2を通過する一次冷却材の質量流量の変動量を補償するべく、ICV-1で一次冷却材の量を調整して、原子炉2を通過する一次冷却材の質量流量の一定化を図っている。高温ガス炉システム1の各プロセス値の変化やICV-1、BCV-1の動作の流れを図2に示す。BCV-1の開度が変更されても原子炉2を通過する一次冷却材の質量流量が一定であれば原子炉出口温度は変化しないので、原子炉出力制御系による原子炉2の出力変更も行なわれない。

【0034】
ここで、ICV-1の制御は、原子炉2を通過する一次冷却材の質量流量を一定にすることで原子炉2の出力の安定化を図ることを目的としているが、原子炉2の出力制御に比べてICV-1による制御は緩慢である。そこで、ICV-1は、一次冷却系5の系統圧力が、発電機9の出力と一次冷却系5の系統圧力との相関関係を規定したマップと、電力計から得られる発電機9の実電気出力あるいは目標電気出力との関係に基づいて特定される系統圧力になるよう、ヘリウムガスの充填や排出を行う。ヘリウムガスは、圧力と密度が比例関係にある理想的な気体である。ICV-1は、発電機9の出力が上がる場合に一次冷却系5内にヘリウムガスを注入し、発電機9の出力が下がる場合に一次冷却系5内の冷却材を排出する。

【0035】
この高温ガス炉システム1によれば、ICV-1およびBCV-1の動作を組み合わせた制御方式を用いているため、タービン8のエネルギー変換効率を高いまま維持した状態で迅速に負荷追従を行うことが可能となる。すなわち、本制御方式によれば、電力系統の電力需要あるいは熱利用系3の熱需要に応じた負荷追従運転時においても、熱利用系3とガスタービン発電系4が消費する熱の総量を一定に保ち、原子炉2の出力を一定に維持することができる。本制御方式は、原子炉2を通過する一次冷却材の質量流量を一定に維持
するので、原子炉出力制御系による制御棒を用いた原子炉出力の変更が無く、原子炉出口温度を一定に保持することが可能である。更に、本制御方式を用いることにより、タービン入口温度およびタービン8の前後の圧力比を含めたガスタービン発電系4の運転条件を一定に保持することが可能である。

【0036】
負荷追従時においても制御棒の位置が変更されずに原子炉2の定格出力運転が維持され、原子炉出口温度が一定に保たれるため、炉内構造物に対する熱応力の発生を低減可能である。さらに、タービン入口温度やタービン8の前後の圧力比等のガスタービン発電系4の運転条件が保持されることから、タービン8や圧縮機10の空力性能について最適条件を維持することが可能である。すなわち、負荷追従運転時において、高い発電効率を維持することができることから、高い経済性を得ることができる。

【0037】
熱利用系3とガスタービン発電系4の熱負荷が変動した場合の、高温ガス炉システム1のプロセス値の変化のシミュレーション結果を図3のグラフに示す。図3は、定格熱出力が0.6GWtの原子炉2が100%で運転しており、定格熱消費量が170MWtの熱利用系3が100%で運転しており、その結果、定格電気出力が280MWeのガスタービン発電系4が64%で運転している場合(以下、状態1という)において、給電指令所から100%の電力を出力されたい旨の要請があった場合のプロセス値の変化を示している。

【0038】
高温ガス炉システム1は、状態1において、電源制御装置を介した給電指令所からの指令信号或いは電話を介して、給電指令所から電気出力の上昇の命令を受けると、発電機9の目標電気出力(100%)とマップとに基づいて決定される系統圧力になるよう、ICV-1による一次冷却系5のインベントリの調整(ヘリウムガスの一次冷却系5への注入)を開始すると共に、熱利用系3の停止操作を開始する。

【0039】
ICV-1による一次冷却系5のインベントリ調整とBCV-1によるバイパス流量の調整により、原子炉2を流れる一次冷却材の質量流量は330kg/sに保たれたまま、タービン8に流入する一次冷却材の質量流量や圧力は増加する。

【0040】
熱利用系3の熱需要を7分程度で170MWから0MWへ到達させた場合(以下、状態2という)でも、原子炉出口温度はほとんど950℃のままに維持され、タービン入口温度も850℃のままに維持されている。状態2において、発電機9の電気出力は、定格の280MWeになる。また、一次冷却系5の系統圧力は5MPaから7MPaに上昇する。

【0041】
なお、給電指令所からの命令が解除されて発電機9の電気出力を降下させることが可能になった場合、或いは、給電指令所から電源制限命令があって電気出力を降下させる必要が生じた場合、高温ガス炉システム1は、発電機9の目標電気出力とマップとに基づいて決定される系統圧力になるよう、ICV-1による一次冷却系5のインベントリの調整(一次冷却材の排出)を開始すると共に、熱利用系3の起動操作を開始する。この結果、熱利用系3の起動によってプロセス熱交換器7における熱交換が始まり、タービン入口温度が一定になるようにBCV-1が閉動作し始める。そして、ICV-1による一次冷却系5のインベントリの調整が完了する頃には、BCV-1も完全に閉まることになる。

【0042】
図4は、第二実施形態に係る高温ガス炉システム101の構成を示す。この高温ガス炉システム101は、最適な負荷追従運転のため、複数のインベントリ調整弁やバイパス流量調節弁を追加したシステム構成としている。以下、第二実施形態に係る高温ガス炉システム101について、第一実施形態に係る高温ガス炉システム1との相違点を中心に説明する。

【0043】
第二実施形態に係る高温ガス炉システム101は、既述したICV-1やBCV-1の他、ICV-2~4、BCV-2~5を備える。ICV-2,3は、ICV-1の代替用として使用される弁であり、圧縮機10の吸込側と吐出側の圧力差を利用して一次冷却系5内の一次冷却材のインベントリを調整する。ICV-2~4は、ICV-1と同様に、一次冷却系5内にある一次冷却材のインベントリを調整して、原子炉2を通過する一次冷却材の質量流量の一定化を図るものである。

【0044】
ICV-2は、ヘリウム貯蔵タンク13A,Bに貯蔵されたヘリウムガスを、再生熱交換器11と冷却器12との間の一次冷却系5配管へ注入する弁である。ヘリウム貯蔵タンク13A,Bは、一方が高圧で他方が低圧になっている。ICV-2は、ヘリウム貯蔵タンク13A,Bのうち高圧の方のタンクの経路を開くことで、一次冷却系のインベントリを増やす。

【0045】
ICV-3は、圧縮機10と再生熱交換器11との間の一次冷却系5配管から一次冷却材を排出する弁である。ICV-3は、ヘリウム貯蔵タンク13A,Bのうち低圧の方のタンクの経路を開くことで、一次冷却系のインベントリを減らす。

【0046】
ICV-4は、ICV-1の代替用として使用される弁であり、タービン8と再生熱交換器11との間にある分岐配管を介して、一次冷却系5のインベントリを調整する。一次冷却系5内へヘリウムガスを注入する場合に、タービン8の下流側にあるICV-4であれば、タービン8の上流側にあるICV-1に比べて低圧でヘリウムガスを注入できる。

【0047】
BCV-2は、原子炉2をバイパスする経路にある開度調整可能な弁であり、プロセス熱交換器7に流入する一次冷却材の温度を調整する。原子炉2を出た一次冷却材に、原子炉2に入る前の低温の一次冷却材を注入することにより、プロセス熱交換器7に流入する一次冷却材の温度を下げることができる。このため、ICV-1やBCV-1が作動して原子炉出口温度が変動しても、プロセス熱交換器7における熱交換量を安定させることができる。原子炉出口温度は、原子炉出力制御系による制御棒の位置調整によって一定に保たれるものの、原子炉2の熱容量が大きいため、その変動は比較的緩慢である。この点、プロセス熱交換器7に流入する一次冷却材の温度をBCV-2で調整すれば、原子炉出口温度の変動に対して鋭敏に追従できる。

【0048】
BCV-3は、圧縮機10の出口側と冷却器12の入口側とを繋ぐ経路にある開度調整可能な弁である。BCV-3は、圧縮機10を出た一次冷却材の一部を冷却器12で冷やした後、再び圧縮機10へ吸込ませることにより、圧縮機10の負荷を調整するものであり、タービン8の回転数が一定になるように弁開度を調整することで、タービン8の調速機(ガバナ)として機能する。例えば、電力系統の事故などでタービントリップが起きた場合、発電機9の遮断器が開放されてパワーロードアンバランス状態になることにより、原子炉2がスクラムすると同時にタービン8がオーバースピードになり得るが、BCV-3がただちに閉じられることで圧縮機10の負荷が増大し、タービン8の回転数が抑制される。また、発電機9を電力系統へ並入する場合に、BCV-3の開度を調整することで、タービン8の回転数を電力系統の周波数に揃速できる。また、電力系統に周波数変動があった場合に、タービン8が規定の回転数を保つようにBCV-3が動作するため、各発電所のタービン制御装置と協調して系統周波数の安定化に寄与することができる。

【0049】
なお、発電機9の極数を2極とし且つ発電機9を並列する電力系統の周波数を60Hzとしているため、タービン8の定格回転数は、毎分3600回転としている。しかし、発電機9を並列する電力系統の周波数が50Hzであれば、タービン8の定格回転数は、毎分3000回転となる。但し、圧縮機10とタービン8、或いはタービン8と発電機9と
の間に変速機が設けられている場合、タービン8の回転数の制御目標値は変速機の変速比に応じて決定できる。

【0050】
BCV-4は、圧縮機10の出口側とタービン8の入口側とを繋ぐ経路にある開度調整可能な弁である。BCV-4は、圧縮機10を出た一次冷却材の一部をタービン8へ吸込ませることにより、タービン入口温度を補助的に調整するものである。BCV-4は、BCV-1とほぼ同様の機能を奏するが、BCV-1によってタービン8へ送り込まれる一次冷却材が再生熱交換器11によって加熱されているのに対し、BCV-4によってタービン8へ送り込まれる一次冷却材は再生熱交換器11によって加熱される前のものである。よって、タービン入口温度の調整に寄与することができる。

【0051】
BCV-5は、圧縮機10を出た一次冷却材の一部を、タービン8と再生熱交換器11とを繋ぐ経路へ流す開度調整可能な弁である。BCV-5は、タービン8を出た再生熱交換器11に流入する一次冷却材の温度を調整するものである。

【0052】
この高温ガス炉システム101によれば、熱利用系3の熱需要や電力系統の電力需要の変動に対応して、原子炉2およびプロセス熱交換器7のバイパス流量と原子炉2の質量流量を変える場合に、プロセス熱交換器7や再生熱交換器11に流入する一次冷却材の温度を安定させることができるため、各プロセス値を大きく変動させることなく安定的な負荷追従運転をすることができる。

【0053】
なお、本願で開示する高温ガス炉システムは、原子炉および熱利用系をバイパスする冷却材のバイパス流量および冷却材のインベントリを制御することが可能であれば如何なる態様であってもよく、上記各実施形態に係る高温ガス炉システム1,101が有するICV-1~4やBCV-1~5のような調整弁によって制御されるものに限られるものではない。例えば、ICV-1~4に代わって、一次冷却系5の何れかの箇所から分岐する配管に接続された圧縮機や真空ポンプなどの機器類により、一次冷却系5内のインベントリを調整するものであってもよい。

【0054】
また、本願で開示する高温ガス炉システムのガスタービン発電系は、横置き式のみならず、縦置き式であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1,101・・・高温ガス炉システム
2・・・原子炉
3・・・熱利用系
4・・・タービン発電系
5・・・一次冷却系
6・・・二次冷却系
7・・・プロセス熱交換器
8・・・タービン
9・・・発電機
10・・・圧縮機
11・・・再生熱交換器
12・・・冷却器
13A,B・・・ヘリウム貯蔵タンク
ICV-1~4・・・インベントリ調整弁
BCV-1~5・・・バイパス流量調節弁
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
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