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明細書 :無線通信システム及び無線送信機

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5608947号 (P5608947)
公開番号 特開2012-095155 (P2012-095155A)
登録日 平成26年9月12日(2014.9.12)
発行日 平成26年10月22日(2014.10.22)
公開日 平成24年5月17日(2012.5.17)
発明の名称または考案の名称 無線通信システム及び無線送信機
国際特許分類 H04B   1/04        (2006.01)
H02J  17/00        (2006.01)
H04B   7/06        (2006.01)
FI H04B 1/04 J
H02J 17/00 A
H02J 17/00 X
H04B 7/06
請求項の数または発明の数 6
全頁数 14
出願番号 特願2010-241533 (P2010-241533)
出願日 平成22年10月27日(2010.10.27)
審査請求日 平成25年10月25日(2013.10.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
発明者または考案者 【氏名】本城 和彦
【氏名】斉藤 昭
個別代理人の代理人 【識別番号】110000925、【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
審査官 【審査官】野元 久道
参考文献・文献 特開2006-309464(JP,A)
調査した分野 H04B 1/04
H02J 17/00
H04B 7/06
特許請求の範囲 【請求項1】
ワイヤレス送電装置と、
信号を生成する信号源と、
前記信号によって静電容量が変化されるバラクタと、
前記バラクタが給電点に接続され、前記ワイヤレス送電装置が発生する電磁波を受けて、前記信号によって変調された電波を発するアンテナと、
前記アンテナから発せられる電波を受信して、前記電波から前記信号源が出力する前記信号を復調する受信機と
よりなり、
前記アンテナと前記バラクタと前記信号源は送信機を構成し、
前記送信機は前記ワイヤレス送電装置に併設され、
前記受信機は前記ワイヤレス送電装置が発生する前記電磁波を受けて電力を生成するワイヤレス受電装置に併設される、
無線通信システム。
【請求項2】
ワイヤレス送電装置と、
信号を生成する信号源と、
前記信号によって静電容量が変化されるバラクタと、
前記ワイヤレス送電装置に併設され、前記バラクタが給電点に接続され、前記ワイヤレス送電装置が発生する電磁波を受けて、前記信号によって変調された電波を発するアンテナと、
前記アンテナから発せられる電波を受信して、前記電波から前記信号源が出力する前記信号を復調する受信機と
よりなる無線通信システム。
【請求項3】
ワイヤレス送電装置と、
デジタルデータストリームを第一のMIMOデータストリームと第二のMIMOデータストリームに変調するMIMO変調部と、
前記MIMO変調部が出力する前記第一のMIMOデータストリームによって静電容量が制御される第一バラクタと、
前記ワイヤレス送電装置に併設され、前記第一バラクタが給電点に接続されて前記ワイヤレス送電装置が発生する電磁波を受けて、前記第一のMIMOデータストリームによって変調された電波を発する第一アンテナと、
前記MIMO変調部が出力する前記第二のMIMOデータストリームによって静電容量が制御される第二バラクタと、
前記ワイヤレス送電装置に併設され、前記第二バラクタが給電点に接続されて前記ワイヤレス送電装置が発生する電磁波を受けて、前記第二のMIMOデータストリームによって変調された電波を発する第二アンテナと、
前記第一アンテナが発する電波を受信して前記第一のMIMOデータストリームを復調する第一受信機と、
前記第二アンテナが発する電波を受信して前記第二のMIMOデータストリームを復調する第二受信機と、
前記第一受信機及び前記第二受信機に接続されて前記第一のMIMOデータストリームと前記第二のMIMOデータストリームから前記デジタルデータストリームを復調するMIMO復調部と
よりなる無線通信システム。
【請求項4】
ワイヤレス送電装置と、
第一の信号を生成する第一信号源と、
前記第一の信号によって静電容量が変化される第一バラクタと、
前記ワイヤレス送電装置に併設され、前記第一バラクタが給電点に接続され、前記ワイヤレス送電装置が発生する電磁波を受けて、前記信号によって変調された第一の電波を発する第一アンテナと、
第二の信号を生成する第二信号源と、
前記第二の信号によって静電容量が変化される第二バラクタと、
前記ワイヤレス送電装置に併設され、前記第二バラクタが給電点に接続され、前記ワイヤレス送電装置が発生する電磁波を受けて、前記信号によって変調された第二の電波を発する第二アンテナと、
前記第二の電波を受信して、前記第二の電波から前記第二信号源が出力する前記第二の信号を復調する第一受信機と、
前記第一の電波を受信して、前記第一の電波から前記第一信号源が出力する前記第一の信号を復調する第二受信機と
よりなる無線通信システム。
【請求項5】
信号を生成する信号源と、
前記信号によって静電容量が変化されるバラクタと、
ワイヤレス送電装置に併設され、前記バラクタが給電点に接続され、前記ワイヤレス送電装置が発生する電磁波を受けて、前記信号によって変調された電波を発するアンテナ
よりなる無線送信機。
【請求項6】
デジタルデータストリームを第一のMIMOデータストリームと第二のMIMOデータストリームに変調するMIMO変調部と、
前記MIMO変調部が出力する前記第一のMIMOデータストリームによって静電容量が制御される第一バラクタと、
ワイヤレス送電装置に併設され、前記第一バラクタが給電点に接続されて前記ワイヤレス送電装置が発生する電磁波を受けて、前記第一のMIMOデータストリームによって変調された電波を発する第一アンテナと、
前記MIMO変調部が出力する前記第二のMIMOデータストリームによって静電容量が制御される第二バラクタと、
前記ワイヤレス送電装置に併設され、前記第二バラクタが給電点に接続されて前記ワイヤレス送電装置が発生する電磁波を受けて、前記第二のMIMOデータストリームによって変調された電波を発する第二アンテナと
よりなる無線送信機。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム及び無線送信機に関する。
より詳細には、ワイヤレス送電装置が発する電力伝送電磁波を用いる、無線通信システム及び、これに使用する無線送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電線を使わずに高い指向性の電磁波を用いて電力を伝送する、ワイヤレス給電の研究開発が多く見受けられる。とりわけ、携帯電話(携帯型無線端末)向けのワイヤレス給電に関しては業界団体も設立され、実用化される製品がまもなく市場に現れる段階に至っている。
ワイヤレス給電は、携帯型無線端末のような小型電子機器を対象にするだけに留まらない。より大型の負荷も対象に、強い電力を伝送するための技術開発が進められている。更に、ワイヤレス給電の技術は、大電力を効率良く伝送するだけに留まらず、より遠くの対象物に電力を供給する技術も研究されている。
ワイヤレス給電は、人工衛星から地上へ電力を伝送する手段として、或は災害時の電力網が壊滅的打撃を被った時における非常用電力伝送手段として等の様々な応用が期待されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2010-239781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地震等の災害発生時に、災害地へワイヤレス給電を行う状況を考える。ライフラインは寸断されているので、災害地に電力を送る必要が生じる。この時、送電する電力は大きいに越したことはないが、先ずは被災地にいる市民に対し、家族や勤務先等との連絡ができるようにする必要がある。つまり、通信手段に必要な電力が求められる。冷蔵庫や電子レンジ等の一般的な家電製品ではなく、非常用通信手段を稼働させることのできる、必要最低限の電力である。
ライフラインの寸断とは、電力供給手段の寸断であると共に、通信手段の寸断をも包含する。つまり、ワイヤレス給電と共に無線通信も同時に実現できることが好ましい。
【0005】
そこで、ワイヤレス送電装置に無線通信のための機能を付加することを考える。ところが、これまで周知の無線通信技術は、搬送波に変調を与える技術である。搬送波にAMやFM等の変調を与えて、得られた高周波信号を増幅する。これが従来の無線送信機の技術である。
ところが、搬送波に変調を加えることで、電力伝送効率は著しく低下する。更に、極めて強力なワイヤレス給電の電力を扱える、高周波増幅を行う能動素子を用意することは極めて困難である。つまり、ワイヤレス給電と従来の無線通信技術は、全くと言っていい程相容れない技術である。
【0006】
上記のような要求に対し、従来技術は例えば特許文献1に示されるように、ワイヤレス給電に使用する周波数とは異なる周波数で、別途独立した無線送信機を設けて対応していた。しかし、この場合は受信機にEMI(Electromagnetic interference:電磁波障害)防御のための強力なフィルタを設けなければならない等の弊害が存在する。
【0007】
本発明は係る課題を解決し、極めて簡素な部品構成で、ワイヤレス給電設備に無線通信の機能を追加することができる、新しい概念の無線通信システム及びこれに使用する無線送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の無線通信システムは、ワイヤレス送電装置と、信号を生成する信号源と、信号によって静電容量が変化されるバラクタと、ワイヤレス送電装置に併設され、バラクタが給電点に接続され、ワイヤレス送電装置が発生する電磁波を受けて、信号によって変調された電波を発するアンテナと、アンテナから発せられる電波を受信して、電波から信号源が出力する信号を復調する受信機とよりなる。
【0009】
本発明の無線通信システムでは、アンテナにバラクタを並列接続し、バラクタの静電容量を送信したい信号で変化させる。そして、電磁波発生装置が発生する電磁波を利用して、アンテナのインピーダンスを信号で変化させることで、電磁波に変調を加える。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、極めて簡素な部品構成で、ワイヤレス給電設備に無線通信の機能を追加することができる、新しい概念の無線通信システム及びこれに使用する無線送信機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一の実施形態である、無線通信システムの概略図である。
【図2】本発明の第一の実施形態で用いられる送信機の回路図である。
【図3】本発明の第二の実施形態で用いられる、MIMO送信機の概略図である。
【図4】本発明の第二の実施形態で用いられる、MIMO受信機の概略図である。
【図5】本発明の第三の実施形態である、無線通信システムの全体構成図である。
【図6】本発明の第四の実施形態である無線通信システムの送信機に用いられるアンテナの外観斜視図である。
【図7】本発明の第四の実施形態である無線通信システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[基本構成]
図1は、本発明の第一の実施形態である、無線通信システムの概略図である。
無線通信システム101は、電磁波発生装置ともいえるワイヤレス送電装置102と、ワイヤレス送電装置102の近傍に設けられる送信機109と、アンテナ114を伴う受信機113で構成される。ワイヤレス受電装置106は、厳密には無線通信システム101と直接的には関係しないが、ワイヤレス送電装置102に対応して設けられている。
ワイヤレス送電装置102は、高周波の電磁波を発生する。
電力源103は、高周波の交流電力を発生する。送電コイル104は電力源103から交流電流が流れることで、電力伝送電磁波105を発生する。電力伝送電磁波105の指向性を高めるため、電力源103が発生する交流電圧の周波数は高い方が良く、例えば1GHz以上であることが望ましい。

【0013】
ワイヤレス受電装置106は、ワイヤレス送電装置102が発する電磁波を受けて、電力に変換する装置であり、その実体は様々である。すなわち、電磁誘導方式であればコイルであり、電磁共振方式であればコイルとコンデンサの共振回路であり、或は電磁波がマイクロ波であれば周知のレクテナも利用可能である。
ワイヤレス受電装置106には、様々な負荷107が接続される。

【0014】
ワイヤレス送電装置102が発する電磁波は、どんなに周波数を高くして指向性を高めたとしても、送電コイル104の周囲には電磁波の漏れが発生してしまう。これ以降、ワイヤレス受電装置106に到達しない、この電磁波の漏れ成分を漏れ電磁波108と呼ぶ。

【0015】
送信機109は、信号源110とインピーダンス制御部111と、インピーダンス制御部111に接続されるダイポールアンテナ112よりなる。ダイポールアンテナ112はワイヤレス送電装置102から生じる漏れ電磁波108の及ぶ範囲に設置される。
信号源110から信号が発生すると、インピーダンス制御部111のインピーダンスが変化する。すると、ダイポールアンテナ112は漏れ電磁波108を変調する。したがって、ダイポールアンテナ112から信号源110の信号によって変調された電磁波、つまり電波が発生する。
受信機113は、この電波をアンテナ114で受信し、復調して、信号源110が発した信号を得る。

【0016】
図2(a)及び(b)は、送信機109の回路図である。
図2(a)は信号源110が交流信号である場合の、送信機109の回路図である。
信号源110から発生される交流信号はゼロボルトを中心に、正負両方向に電圧が変化する。
信号源110には直流バイアス電圧源201が直列接続されており、結果的に信号源110は脈流を発生する。
脈流は伝送ケーブル202を通じてバラクタ203に印加される。

【0017】
このバラクタ203は、ダイポールアンテナ112の給電部の両端に接続されている。
周知のように、可変容量ダイオード或はバリキャップとも呼ばれるバラクタ203は、負方向に電圧を印加すると静電容量が変化する。
バラクタ203には前述の通り、脈流が印加されるので、バラクタ203の静電容量は脈流によって変化する。
つまり、ダイポールアンテナ112の共振周波数が、脈流によって変化することとなる。

【0018】
ダイポールアンテナ112を構成するアンテナ導体の(差動)入力インピーダンスをZ、バラクタ203の容量をCとすると、アンテナとバラクタ203の合成入力インピーダンスZは概ね以下の式で表される。

【0019】
【数1】
JP0005608947B2_000002t.gif

【0020】
上記式の、インピーダンスの虚部を、無信号時にはゼロになるようにアンテナの長さを調節する。そして、例えば正弦波の低周波信号を印加すると、インピーダンスの虚部が正弦波信号によって正負に変化する。すると、位相φも正負に振れる。したがって、アンテナに与えられる電磁波によってアンテナに生じる誘起電流によって励起される散乱波の位相も入力信号によって変調されることとなり、位相変調(PM変調)された散乱波がアンテナから発せられることとなる。
また、入力インピーダンスの実部も変調されるので、散乱波は同じ信号によって振幅変調(AM変調)もされる。
インピーダンスの虚部をゼロに調節するということは、周知のアンテナの定在波比(SWR:Standing Wave Ratio)を極小にする調節である。

【0021】
図2(b)は信号源110がデジタル矩形波信号である場合の、送信機109の回路図である。
デジタル信号源204が発生する矩形波の交流信号は、ゼロボルトと所定の正方向の電圧との二値で変化する。
このような信号の場合、負方向に電圧が現れないので、図2(a)に示される直流バイアス電圧源201を省略することが可能である。

【0022】
図2(a)及び(b)の回路図を見て判るように、本実施形態の送信機109は、従来の無線送信機とはその構成が大幅に異なる。
先ず、搬送波を発生する搬送波発振器が存在しない。
次に、搬送波を変調する変調回路が存在しない。
そして、変調された搬送波を増幅する高周波増幅回路が存在しない。
つまり、従来の無線送信機に必須であったこれら構成要素を全く必要としない。
その代わり、アンテナにバラクタ203を並列接続し、バラクタ203の静電容量を信号で変化させているだけである。そして、搬送波発振器の代わりに、ワイヤレス送電装置102から漏れる漏れ電磁波108を利用して、アンテナのインピーダンスを信号で変化させることで、漏れ電磁波108に変調を加えている。これだけの構成で、漏れ電磁波108にPM変調とAM変調が施されるのである。

【0023】
本実施形態の送信機109は、便宜上「送信機」と名付けているが、その構成は能動的に電磁波を発生していない。信号によってインピーダンスが変化するアンテナを介在させて、漏れ電磁波108に変調を加えているのみである。更に、本実施形態の送信機109では、アンテナのインピーダンスの変化に伴い、アンテナの指向性も変化するので、送信機109は漏れ電磁波108を散乱させているともいえる。

【0024】
以上の説明で判るように、送信機109によって漏れ電磁波108にPM変調とAM変調が施されるので、受信機113は一般的なPM又はFMの受信機であるか、或はAM受信機であればよい。

【0025】
[MIMO送信]
図3は、本発明の第二の実施形態である、無線通信システムに用いられる送信機の概略図である。
MIMO送信機301は、第一の実施形態の送信機109を代替する。
MIMO送信機301は、周知のMIMO(Multi-Input Multi-Output)無線技術にてデータを無線送信する。
デジタルデータストリーム302は、シリアルのデータの流れである。その実体はコンピュータが扱うデータファイルであったり、A/D変換された音声データや動画データ等、様々である。
MIMO変調部303は、デジタルデータストリーム302にMIMO変調を行う。MIMO変調部303によって、デジタルデータストリーム302はスペクトラム拡散されて単位時間当たりのビットレートが低減された複数のMIMOストリームに変換される。図3では、三種類のMIMOストリームが生成される。
MIMO変調部303は、例えばASIC等の集積回路で構成される。

【0026】
MIMO変調部303から出力されるMIMOストリームは、そのままでは不平衡の信号である。不平衡・平衡変換部304a、304b及び304cは、不平衡の信号であるMIMOストリームを、平衡の信号に変換する。不平衡・平衡変換部304a、304b及び304cは、MIMOストリームの周波数に応じて適切な回路を構成することができる。
例えば、音声信号等の比較的低周波の信号である場合は、オペアンプ等で構成されるラインコンバータが利用可能である。
また、数MHz以上の高周波の信号である場合は、マッチングトランスやシュペルトップバラン等のバランが利用可能である。

【0027】
不平衡・平衡変換部304a、304b及び304cの出力端子はバラクタ203a、203b及び203cに接続され、それぞれダイポールアンテナ112a、112b及び112cの給電点に接続される。バラクタ203a、203b及び203cとダイポールアンテナ112a、112b及び112cについては前述の第一の実施形態と同様であるので、詳細は割愛する。
バラクタ203a、203b及び203cはそれぞれ、第一バラクタ、第二バラクタ、第三バラクタともいえる。

【0028】
図3を見て判るように、本発明の第二の実施形態のMIMO送信機301は、第一の実施形態の送信機109をMIMO変調部303の出力の数に応じて複数並べた構成であり、第一の実施形態の送信機109の応用である。
前述の通り、本実施形態のMIMO送信機301においても、搬送波発振器、変調回路、そして高周波増幅回路が存在しない。このことは、MIMO無線技術を実施する際に極めて有効である。つまり、本実施形態のMIMO送信機301は、MIMOのチャンネル数の搬送波発振器、変調回路及び高周波増幅回路を用意する必要がない、ということを意味する。

【0029】
現在、MIMO無線技術においては、無線LANの実用化が進められている。周知のように、無線LANは2GHz以上の極超短波を使用する。極超短波の回路設計はプリント基板の浮遊容量等を考慮しなければならず、また増幅回路に使用する能動素子も高価になりがちである。一般的に、極超短波の回路は設計が困難で、部品コストが高い。
本実施形態のMIMO送信機301は、このような回路設計を必要とせず、高価な回路素子も不要であるので、極めて低コストのMIMO通信システムを実現することができる。

【0030】
図4は、本発明の第二の実施形態の無線通信システムに用いられるMIMO受信機の概略図である。
MIMO受信機401は、第一の実施形態の受信機113を代替する。
MIMO受信機401は、図3のMIMO送信機301に対応する受信機である。MIMO受信機401は、MIMO送信機301に設けられているダイポールアンテナ112a、112b及び112cの数に対応する、第一受信機402、第二受信機403及び第三受信機404と、MIMO復調部405よりなる。
第一受信機402、第二受信機403及び第三受信機404は、それぞれ受信アンテナ406、407及び408を通じてMIMO送信機301の電波を受信して、MIMOストリームを復調する。MIMO復調部405はMIMOストリームを受けて、元のデジタルデータストリーム302を復調する。
受信アンテナ406、407及び408はそれぞれ、第一アンテナ、第二アンテナ及び第三アンテナともいえる。

【0031】
[双方向通信]
図5は、本発明の第三の実施形態である、無線通信システムの全体構成図である。
無線通信システム501は、情報処理装置であるパソコンが二つ存在し、このパソコンが相互にデータ通信を実施するために、第一の実施形態の送信機109が二つ(第一送信機503及び第二送信機506)、受信機113も二つ(第一受信機504及び第二受信機507)設けられており、それぞれパソコンに接続されている。
第一パソコン502には、第一送信機503と第一受信機504が接続されている。第一パソコン502が出力するデジタルデータストリームは第一送信機503によって無線送信される。
第二パソコン505には、第二送信機506と第二受信機507が接続されている。第二パソコン505が出力するデジタルデータストリームは第二送信機506によって無線送信される。
第一受信機504は、第二送信機506が送信する電波を受信し、電波から第二パソコン505が出力するデジタルデータストリームを復調して第一パソコン502に供給する。
第二受信機507は、第一送信機503が送信する電波を受信し、電波から第一パソコン502が出力するデジタルデータストリームを復調して第二パソコン505に供給する。
第一送信機503と第二送信機506の構成は同一であり、第一受信機504と第二受信機507の構成も同一である。

【0032】
第一送信機503及び第二送信機506に備わっている信号処理部508は、パソコンと共に第一の実施形態の送信機109の信号源110に対応する。信号処理部508は、パソコンが出力するデジタルデータストリームを、インピーダンス制御部111に対する制御信号に変換する。
すなわち、第一パソコン502と第一送信機503の信号処理部508は、第一信号源としての役割を果たし、第二パソコン505と第二送信機506の信号処理部508は、第二信号源としての役割を果たしている。

【0033】
第一送信機503は、ワイヤレス送電装置102の近傍の、ワイヤレス送電装置102から生じる漏れ電磁波108の及ぶ範囲に設置される。
第二送信機506は、ワイヤレス受電装置106の近傍の、ワイヤレス送電装置102から生じる漏れ電磁波511の及ぶ範囲に設置される。
つまり、ワイヤレス受電装置106の近傍にも、ワイヤレス送電装置102から生じる漏れ電磁波511が得られるので、この漏れ電磁波511を用いる送信機を設けることができる。このようにワイヤレス受電装置106の近傍にも第二送信機506と第二受信機507を設置することで、ワイヤレス送電装置102とワイヤレス受電装置106との間で、双方向無線通信を実現できる。
パソコンに双方向無線通信が実現できるので、ワイヤレス送電装置102と受信機113を組み合わせることで、周知のモデムを構成することができる。

【0034】
[反射器の制御]
図6は、本発明の第四の実施形態である無線通信システムの、送信機に用いられるアンテナの外観斜視図である。
図7は、本発明の第四の実施形態である無線通信システムの全体構成図である。なお、紙面の都合上、ワイヤレス送電装置102とワイヤレス受電装置106の記載を省略している。
無線通信システム701は、第三の実施形態の無線通信システム501と同様の、双方向無線通信を実現するシステムである。
本実施形態の無線通信システム701と第三の実施形態の無線通信システム501との最大の相違点は、第一送信機702に備わっている送信アンテナ601の構成と、第二受信機708から第二送信機709に出力される信号線の存在である。

【0035】
先ず、図6を参照して、送信アンテナ601の全体構成を説明する。
送信アンテナ601は、ダイポールアンテナ112に相当する前エレメント602a及び602bと、反射器を構成する第一反射エレメント603a及び603bと、第一反射エレメント603a及び603bに対して水平方向に傾斜角度を伴って設けられている第二反射エレメント604a及び604bと、これらエレメントを支持する支持体605で構成されている。
この送信アンテナ601は、いわば変形2エレメントアンテナともいえる。

【0036】
次に、図7を参照して、本発明の第四の実施形態の無線通信システム701の構成について説明する。
第一送信機702を構成する送信アンテナ601の、前エレメント602a及び602bは送信部703に接続されている。送信部703は第三の実施形態の信号処理部508及びインピーダンス制御部111に相当する。
第二受信機708に対して、前エレメント602a及び602bの後側には、第一反射エレメント603a及び603bと第二反射エレメント604a及び604bが設けられている。
第一反射エレメント603a及び603bの、ダイポールアンテナの給電端に相当する端部には、第一スイッチ704が接続されている。
第二反射エレメント604a及び604bの、ダイポールアンテナの給電端に相当する端部には、第二スイッチ705が接続されている。
第一スイッチ704はNOTゲート706を介して第一受信機707に接続され、第二スイッチ705は直接、第一受信機707に接続される。
このため、第一スイッチ704と第二スイッチ705は、第一受信機707が出力するスイッチ切替制御信号によって互いに排他的にオン・オフ制御されることになる。

【0037】
第一送信機702の送信部703は、通常のデータ通信の合間(インターバル)に電界強度データを計測するための指標信号を第二受信機708へ送信する。
第二受信機708は、受信アンテナ510を通じて第一送信機702が発する指標信号が搬送された電波を受信する。第二受信機708は指標信号を解釈すると、受信した電波の電界強度を内部で数値化し、電界強度データを第二送信機709の送信部710に送出する。
第二送信機709は、この電界強度データを第一受信機707へ送信する。

【0038】
第一受信機707は受信アンテナ509を通じて第二送信機709から受信した電波から電界強度データを復調した後、その電界強度データを内部の図示しないRAMに一時記憶した後、スイッチ切替制御信号を出力する。
スイッチ切替制御信号は、NOTゲート706を介して第一スイッチ704に送られると共に、NOTゲート706を介することなく直接第二スイッチ705に送られるので、第一スイッチ704と第二スイッチ705は排他的に切替制御される。
第一送信機702の送信部703は、この状態で再度電界強度データを計測するための指標信号を第二受信機708へ送信する。
第二受信機708は、第一送信機702が発する指標信号が搬送された電波を受信して、指標信号を解釈すると、受信した電波の電界強度を内部で数値化し、電界強度データを再度、第二送信機709に送出する。
第二送信機709は、この電界強度データを第一受信機707へ送信する。

【0039】
第一受信機707は第二送信機709から受信した電界強度データを内部の図示しないRAMに一時記憶した後、前回の電界強度データと比較して、電界強度データが強い方のスイッチ切替制御信号の状態を保持して、スイッチ切替制御信号を出力する。
こうして、第一反射エレメント603a及び603bと第二反射エレメント604a及び604bのうち、電界強度が強く得られる方の反射エレメントが選択され、安定度の高い無線通信を実現できる。

【0040】
本実施形態は以下のような応用例が可能である。
(1)第一乃至第三の実施形態では、送信機に使用するアンテナにダイポールアンテナを用いていたが、周知のグランドプレーン、ループアンテナ、ヘンテナ、八木宇田アンテナ、位相差給電アンテナ、板状アンテナ、パラボラアンテナ等、アンテナであればその種類は問わない。

【0041】
(2)第二の実施形態のMIMO送信機301に用いるアンテナに、第四の実施形態の送信アンテナ601を適用することもできる。

【0042】
本発明の第一から第四の実施形態では、無線通信システムを開示した。
これらの無線通信システムでは、アンテナにバラクタ203を並列接続し、バラクタ203の静電容量を信号で変化させる。そして、ワイヤレス送電装置102から漏れる漏れ電磁波108を利用して、アンテナのインピーダンスを信号で変化させることで、漏れ電磁波108に変調を加える。これだけの構成で、漏れ電磁波108にPM変調とAM変調が施されるので、極めて簡素な構成でワイヤレス給電設備に併設する無線通信システムを実現することができる。

【0043】
また、本発明は第二の実施形態で判るように、少ない部品点数でMIMO送信機を容易に実現できる。
更に、本発明は第三の実施形態で判るように、ワイヤレス給電設備のワイヤレス送電装置側とワイヤレス受電装置側とで双方向の無線通信システムを構築することができる。
更に、本発明は第四の実施形態で判るように、第三の実施形態で開示した双方向の無線通信システムの、送信機のアンテナにスイッチで切替制御されるリフレクタを設けることで、変化する通信状態に対して最適な電波伝搬環境を提供するので、安定した無線通信を実現することができる。

【0044】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【符号の説明】
【0045】
101…無線通信システム、102…ワイヤレス送電装置、103…電力源、104…送電コイル、105…電力伝送電磁波、106…ワイヤレス受電装置、107…負荷、108…電磁波、109…無線送信機、110…信号源、111…インピーダンス制御部、112…ダイポールアンテナ、113…受信機、114…アンテナ、201…直流バイアス電圧源、202…伝送ケーブル、203…バラクタ、204…デジタル信号源、301…MIMO送信機、302…デジタルデータストリーム、303…MIMO変調部、401…MIMO受信機、402…第一受信機、403…第二受信機、404…第三受信機、405…MIMO復調部、406…受信アンテナ、501…無線通信システム、502…第一パソコン、503…第一送信機、504…第一受信機、505…第二パソコン、506…第二送信機、507…第二受信機、508…信号処理部、509…受信アンテナ、510…受信アンテナ、511…電磁波、601…送信アンテナ、602a、602b…前エレメント、603a、603b…第一反射エレメント、604a、604b…第二反射エレメント、605…支持体、701…無線通信システム、702…第一送信機、703…送信部、704…第一スイッチ、705…第二スイッチ、706…NOTゲート、707…第一受信機、708…第二受信機、709…第二送信機、710…送信部
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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