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明細書 :マイクロ流体チップ及びそれを用いたマイクロ流体システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-238447 (P2013-238447A)
公開日 平成25年11月28日(2013.11.28)
発明の名称または考案の名称 マイクロ流体チップ及びそれを用いたマイクロ流体システム
国際特許分類 G01N  35/08        (2006.01)
G01N  37/00        (2006.01)
B01J  19/12        (2006.01)
B01J  19/00        (2006.01)
B81B   1/00        (2006.01)
FI G01N 35/08 A
G01N 37/00 101
B01J 19/12 Z
B01J 19/00 321
B81B 1/00
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2012-110473 (P2012-110473)
出願日 平成24年5月14日(2012.5.14)
発明者または考案者 【氏名】二井 信行
出願人 【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100083806、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 秀和
【識別番号】100100712、【弁理士】、【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
【識別番号】100095500、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 正和
【識別番号】100101247、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 俊一
【識別番号】100098327、【弁理士】、【氏名又は名称】高松 俊雄
審査請求 未請求
テーマコード 2G058
3C081
4G075
Fターム 2G058DA07
3C081BA23
3C081DA22
3C081EA26
4G075AA13
4G075AA39
4G075BB10
4G075CA32
4G075DA02
4G075EB50
4G075ED13
4G075FA12
4G075FB02
4G075FB11
4G075FC20
要約 【課題】マイクロ流路の形状変更時に複数の棒状体をそれぞれ単体で確実に移動させることができるマイクロ流体チップを提供する。
【解決手段】基板2と、基板2上に接着されずに長手方向側面が対向するように一列に配置された複数の棒状体301,…,331;351,…,381からなる第1、第2の側壁部とを備え、第1、第2の側壁部は、棒状体の幅方向側面が互いに対向するように基板上に離間して配置され、幅方向側面間にマイクロ流路が形成されたマイクロ流体チップにおいて、複数の棒状体の長手方向側面間の隙間に封止剤8が配置され、封止剤8は、マイクロ流路を流れる培養液に溶解せず、反応しない性質と、棒状体に接触する部分に付加される物理的エネルギーによって部分的に粘度が低下する性質を有するマイクロ流体チップを特徴とする。
【選択図】 図4
特許請求の範囲 【請求項1】
基板と、
前記基板上に接着されずに長手方向側面が対向するようにそれぞれ一列に配置された複数の棒状体からなる第1、第2の側壁部とを備え、
前記第1、第2の側壁部は、前記棒状体の幅方向側面が互いに対向するように前記基板上に離間して配置され、前記幅方向側面間にマイクロ流路が形成され、
前記複数の棒状体の長手方向側面間の隙間に封止剤が充填され、
前記封止剤は、前記マイクロ流路を流れる液体に溶解せず、反応しない性質と、前記棒状体に接触する部分に付加される物理的エネルギーによって部分的に粘度が低下する性質を有し、
前記複数の棒状体の少なくとも一部を前記棒状体の長手方向に移動させることで前記マイクロ流路の形状を変形させるようにしたことを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に接着されずに長手方向側面が対向するように一列に配置された複数の棒状体からなる側壁部とを備え、
前記基板には、前記基板に垂直に壁部が形成されており、
前記側壁部は、前記棒状体の幅方向側面が前記壁部に対向するように前記基板上に配置され、前記壁部と前記棒状体の前記幅方向側面間にマイクロ流路が形成され、
前記複数の棒状体の長手方向側面間の隙間に封止剤が充填され、
前記封止剤は、前記マイクロ流路を流れる液体に溶解せず、反応しない性質と、前記棒状体に接触する部分に付加される物理的エネルギーによって部分的に粘度が低下する性質を有し、
前記複数の棒状体の少なくとも一部を前記棒状体の長手方向に移動させることで前記マイクロ流路の形状を変形させるようにしたことを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項3】
前記封止剤が精製炭化水素であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項4】
前記封止剤がチクソトロピー性を持つ炭化水素であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項5】
前記封止剤が炭化水素に光を吸収して熱に変換する微粒子を混合させた材料であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の前記マイクロ流体チップと、
前記棒状体の個々に当接して該棒状体を長手方向に移動させるプローブと、
前記プローブを移動させる駆動手段と、
物理的エネルギーを個々の棒状体に接触する封止剤に限定的に付加して当該接触部分の封止剤の粘度を低下させる物理的エネルギー付加手段と、
を備えたことを特徴とするマイクロ流体システム。
【請求項7】
前記物理的エネルギーが熱、振動、若しくは光であることを特徴とする請求項6に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項8】
前記物理的エネルギー付加手段は、前記プローブを介して前記棒状体に物理的エネルギーを付加することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のマイクロ流体システム。
【請求項9】
前記物理的エネルギー付加手段は、前記プローブに隣接して設けられ、当該プローブの接触する前記棒状体に接触する封止剤に部分的に物理的エネルギーを付加することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のマイクロ流体システム。
【請求項10】
前記プローブは、先端に前記棒状体に当接する当接部を有し、該当接部には、前記棒状体との間の摩擦係数を高めるための凹凸が形成されていることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載のマイクロ流体システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体チップ及びそれを用いたマイクロ流体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体チップによる微小流体下の細胞培養は、培地内物質の濃度勾配や流速の時間・空間的制御が容易であるため、生体医工学・生命科学のツールとして期待されている。
【0003】
ところが、従来、マイクロ流体チップを作製し、実際にマイクロ流路に培養液を循環させる際に培養液の流れに不具合が生じる箇所が見つかった場合、マイクロ流路の形状等の微調整を行うことができなかった。そのため、必要な形状のマイクロ流路を持つマイクロ流体チップを再度作製する必要があった(特許文献1参照)。また従来、マイクロ流路内で細胞を増殖した場合、マイクロ流路内の培養環境を維持するために薬液をマイクロ流路内に流すなどして細胞をまびく手法が用いられていた。そのため、マイクロ流路内の細胞の増殖に併せてマイクロ流路のレイアウト変更等ができることが求められていた。さらに、従来、マイクロ流路内では、液体のみを流すことができ、高分子ゲル等の粘度の高い流体や気泡を流すことは困難であった。そのため、細胞の培養条件に併せて、細胞を培養するその場でマイクロ流路の形状を変更できるマイクロ流体チップが求められていた。
【0004】
そこで、本願出願人は、特願2011-58299号において、マイクロ流路の形状を変更可能なマイクロ流体チップ及びそれを用いたマイクロ流体システムを提案している。この提案におけるマイクロ流体チップは、基板と、該基板上に長手方向側面で接するように一列に配置された複数の棒状体からなる第1、第2の側壁部を備え、第1、第2の側壁部が、棒状体の幅方向側面が互いに対向するように基板上に離間して配置され、幅方向側面間にマイクロ流路が形成され、複数の棒状体を長手方向に移動させることでマイクロ流路の形状を変更可能にしたものである。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2008-8891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記提案技術をさらに発展させたものであり、マイクロ流路の形状変更時に複数の棒状体をそれぞれ単体でスムーズかつ確実に移動させることができ、マイクロ流路の形状変更の自由度が高いマイクロ流体チップ及びそれを用いたマイクロ流体システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの特徴は、基板と、前記基板上に接着されずに長手方向側面が対向するようにそれぞれ一列に配置された複数の棒状体からなる第1、第2の側壁部とを備え、前記第1、第2の側壁部は、前記棒状体の幅方向側面が互いに対向するように前記基板上に離間して配置され、前記幅方向側面間にマイクロ流路が形成され、前記複数の棒状体の長手方向側面間の隙間に封止剤が充填され、前記封止剤は、前記マイクロ流路を流れる液体に溶解せず、反応しない性質と、前記棒状体に接触する部分に付加される物理的エネルギーによって部分的に粘度が低下する性質を有し、前記複数の棒状体の少なくとも一部を前記棒状体の長手方向に移動させることで前記マイクロ流路の形状を変形させるようにしたマイクロ流体チップである。
【0008】
本発明の別の特徴は、基板と、前記基板上に接着されずに長手方向側面が対向するように一列に配置された複数の棒状体からなる側壁部を備え、前記基板には、前記基板に垂直に壁部が形成されており、前記側壁部は、前記棒状体の幅方向側面が前記壁部に対向するように前記基板上に配置され、前記壁部と前記棒状体の前記幅方向側面間にマイクロ流路が形成され、前記複数の棒状体の長手方向側面間の隙間に封止剤が充填され、前記封止剤は、前記マイクロ流路を流れる液体に溶解せず、反応しない性質と、前記棒状体に接触する部分に付加される物理的エネルギーによって部分的に粘度が低下する性質を有し、前記複数の棒状体の少なくとも一部を前記棒状体の長手方向に移動させることで前記マイクロ流路の形状を変形させるようにしたマイクロ流体チップである。
【0009】
本発明のさらに別の特徴は、上記のいずれかのマイクロ流体チップと、前記棒状体の個々に当接して該棒状体を長手方向に移動させるプローブと、前記プローブを移動させる駆動手段と、物理的エネルギーを個々の棒状体に接触する封止剤に限定的に付加して当該接触部分の封止剤の粘度を低下させる物理的エネルギー付加手段と、を備えたマイクロ流体システムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マイクロ流路の形状変更時に複数の棒状体それぞれを必要な距離だけスムーズに移動させることができ、マイクロ流路の形状変更の自由度が高いマイクロ流体チップ及びそれを用いたマイクロ流体システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の1つの実施形態のマイクロ流体システムにおけるマイクロ流体チップの斜視図である。
【図2】上記マイクロ流体チップの組み立て図である。
【図3】上記マイクロ流体チップの上面図である。
【図4】上記マイクロ流体チップの断面図である。
【図5】上記マイクロ流体チップの封止剤の温度-粘度特性のグラフ。
【図6】上記マイクロ流体チップの変形例の断面図である。
【図7】上記実施形態のマイクロ流体システムにおける側壁駆動用デバイスの概略図である。
【図8】上記実施形態のマイクロ流体システムにおける側壁駆動用デバイスの制御装置の機能ブロック図である。
【図9】上記側壁駆動用デバイスのプローブ部分の側面図である。
【図10】上記プローブの先端部の断面拡大図である。
【図11】上記実施形態のマイクロ流体システムにおけるプローブ操作桿の側面図である。
【図12】本発明の別の実施形態のマイクロ流体チップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。尚、図中同一の機能又は類似の機能を有するものについては、同一又は類似の符号を付して示している。

【0013】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態のマイクロ流体チップ1とマイクロ流体システム10について説明する。

【0014】
[マイクロ流体チップの実施形態]
図1に示すように、第1の実施形態のマイクロ流体チップ1は、基板2と、基板2上において長手方向側面が対向するように並列に配置された複数の棒状体301,…,331;351,…,381からなる側壁部31,32とを備えている。図2に示すように側壁部31,32は、棒状体301,…,331;351,…,381の幅方向側面35,36が互いに対向するように基板2上に離間して配置されている。図3に示すように幅方向側面35,36間にマイクロ流路10が形成されている。複数の棒状体301,…,331;351,…,381の少なくとも一部を棒状体301,…,331;351,…,381の長手方向に移動させることでマイクロ流路10の形状を変化させることができる。

【0015】
マイクロ流体チップ1は、側壁部31,32のそれぞれの一部と接しつつ、マイクロ流路10上に配置されるカバー体5をさらに有してもよい。カバー体5を配置することで、棒状体301,…,331;351,…,381を長手方向に押し込んだ際に跳ね上がることを防止することができる。またカバー体5を配置することで、マイクロ流路10内の乾燥を防ぐことができる。

【0016】
棒状体301,…,331;351,…,381の断面形状は特に制限されないが、図4に示すように長方形とすることができる。材質は細胞培養に悪影響を与えないものであれば特に制限されないが、熱が伝導しやすい銅やシリコン単結晶等の金属が好適である。寸法はマイクロ流路10が形成されるものであれば特に制限はない。本実施形態では、棒状体301,…,331;351,…,381として、金メッキされた1辺が約0.3mm、長さ約7mmの正四角柱形状の金属製ピンを用いている。

【0017】
図4に示すように、複数の棒状体301,…,331;351,…,381の長手方向側面間の隙間には封止剤8が充填されている。この封止剤8は、マイクロ流路10を流れる液体(培養液)が複数の棒状体301,…,307の間隙から漏れ出すことを防止する。また封止剤8は、棒状体301,…,331;351,…,381それぞれを動かす際の潤滑剤としても機能する。

【0018】
この封止剤8は、マイクロ流路10を流れる培養液に溶け出すことや、マイクロ流路10を流れる培養液と化学反応を起こさないように、水不溶性で化学的に安定であり、毒性が無い材料で構成されるべきである。また、封止剤8は、マイクロ流体チップ1の使用温度において固化しない材料のものを採用する。封止剤8が常温で固化して収縮し、ひび割れなどが生じないようにするためである。さらに、封止剤8は、加熱、加振(超音波振動など)、光線照射など物理的エネルギーが付加されることで粘度が低下する性質を有するものである。

【0019】
このような封止剤8の基剤としては精製された炭化水素、特にワセリンを採用できる。ワセリンは、レオロジー性を有した材料であり、かつ、水やエタノールに対しても殆ど溶けることがなく、化学的にも安定しており、マイクロ流体チップ1の使用温度で固化することもない。また、ワセリンは、加熱により粘度が大きく下がる性質を有している。よって、棒状体301,…,331;351,…,381のいずれかを加熱した場合、その加熱した棒状体に隣接した部分だけその粘度が下がるため、その両隣に位置する棒状体に影響を与えることなく加熱した棒状体だけをスムーズにスライド移動させることができる。

【0020】
また、ワセリンは、せん断により粘度が下がるため、特定の棒状体を超音波加振すれば、加振した棒状体に隣接した部分だけその粘度が下がるため、その両隣に位置する棒状体に影響を与えることなく加振した棒状体だけをスムーズにスライド移動させることができる。

【0021】
さらに、ワセリンに炭化ジルコニウム等の光・熱変換機能をもつ物質の微粒子を混合分散させた材料は、光照射を受けて光・熱変換物質の微粒子が発熱してワセリン自体の粘度を低下させる。そこで、プローブ65に光放射手段を備えさせ、あるいはプローブ65と共に移動する光放射手段を並設し、その光放射手段に光を放射させる機構を設けることによって、対象となる棒状体をスライド移動させる時に、光放射手段にて光を放射させれば、対象となる棒状体に接触している封止剤が部分的に発熱して粘度を下げるようになり、両隣に位置する棒状体には影響を与えることなく、移動対象となる棒状体だけをスムーズにスライド移動させることができる。

【0022】
本実施形態では、封止剤8として、基剤としてホワイトワセリンを採用し、このワセリンにシャープメルト特性を有する材料を混合したものを採用する。これにより、特定の温度以上になれば急激に粘度を下げることができる。

【0023】
また封止剤8として、ワセリンに光・熱変換物質の微粒子を混合分散させた材料のように、精製炭化水素に光を吸収して熱に変換する微粒子を混合分散させ、光照射により粘度が下がる特性のものを採用することもできる。

【0024】
さらに、封止剤8として、ワセリンのような炭化水素をベースに潤滑剤(例えば、真空グリース、具体的にはApiezon-L(アペエゾン社製))を添加することによって、チクソトロピー性を付与した材料を採用することもできる。これにより、特定の棒状体に、高速でかつ同棒状体のスライド移動幅にくらべて十分小さい振幅の振動を付加することにより、それに接触する部分の封止剤8の粘度が低下し、その特定の棒状体の移動がスムーズに行えるようにすることができる。尚、この振動の周波数や振幅は、チクソトロピー性を発揮させ得るものであれば、特に限定されない。

【0025】
図5のグラフは、ホワイトワセリン(日興リカ株式会社製、サンホワイトP-1)C1、特定の温度でシャープメルト特性を示すワックス(出光興産製、CPAO)C2、上記ホワイトワセリンにワックスを8:1の重量比で混合分散させた材料C3の粘度-温度特性を測定したものである。この図5のグラフより、ワセリン単体の粘度の温度変化に比べて、ワックス混合のワセリンの方がすぐれたシャープメルト特性を示すことが分かる。尚、上記ワックス単体では、常温で固化して収縮し、ひび割れなどが生じるため、利用できない。

【0026】
マイクロ流体チップ1としては、図6に示すように、断面が円形状の棒状体301a,…,331a;351a,…,381aを用いてもよい。断面を円形状とすることで、基板2と棒状体301a,…,331a;351a,…,381aの接触面積が狭くなることで、基板2と棒状体301a,…,331a;351a,…,381aの摩擦抵抗が減り棒状体301a,…,331a;351a,…,381aを動かしやすくなる。この場合も液漏れなどを防止するため、棒状体301a,…,331a;351a,…,381a間に封止剤8が配置されている。

【0027】
[マイクロ流体システムの実施形態]
以下、マイクロ流体チップ1の複数の棒状体301,…,331;351,…,381を移動させることでマイクロ流路10の形状を変形させるマイクロ流体システムについて述べる。図7は、側壁駆動用デバイス60(XYZ軸駆動システム)の斜視図であり、図8は、側壁駆動用デバイス60の制御装置66の機能ブロック図である。

【0028】
図7に示すように、マイクロ流体システムは、マイクロ流体チップ1と、複数の棒状体301,…,331;351,…,381を移動させる側壁駆動用デバイス60と、この側壁駆動用デバイス60を制御する制御装置66とを備えている。側壁駆動用デバイス60は、マイクロ流体チップ1が配置されるステージ61と、マイクロ流体チップ1をステージ61上に固定する固定手段63,64と、ステージの上方にマイクロ流体チップ1に対向して配置されるプローブ65と、プローブ65に接続されプローブ65をXYZ軸方向に駆動する駆動装置73とを備えている。

【0029】
駆動装置73は、プローブ65をX軸、Y軸、Z軸それぞれの方向に駆動する駆動部75,76,77で構成されている。

【0030】
プローブ65は、駆動装置73によってXYZ軸3方向に駆動される。そこで、棒状体301,…,331;351,…,381のいずれかの上面にプローブ65の先端が当接するように位置調整をした状態でX軸方向(棒状体の長手方向)に駆動することで当該棒状体をX軸方向に移動させることができる。

【0031】
図9に示すように、このプローブ65は、直径の異なる複数の円柱が同軸上で接続された構造であり、実施形態のマイクロ流路チップ1の大きさに対応して、先端から順に直径が0.30mmの小径部65a、直径が1.3mmの中径部65b、直径4.0mmの大径部65cを有し、大径部65cで制御装置66に接続されている。尚、このプローブ65の寸法等はこれによって駆動する棒状体の寸法等によって適切に決められるものであり、上の数値に限定されるものではない。

【0032】
小径部65aは、棒状体301,…,331;351,…,381に当接し、駆動装置73に誘導されて棒状体301,…,331;351,…,381を移動させる部位であり、先端に当接部65dを備えている。この当接部65dは、図10に示すように、中心軸から側面に向かってほぼ45度の角度で斜面状に形成されており、その斜面には微細な複数の凹凸65eが形成されている。この複数の凹凸65eは、棒状体301,…,331;351,…,381にプローブ65の先端が当接した時に、棒状体301,…,331;351,…,381との間での摩擦係数を高めるために設けられている。よって、当接部65dの先端の斜面に摩擦係数を高める構成があればよく、凹凸65eに限定されるものではない。

【0033】
制御装置66は、制御部71と、操作部72と、駆動装置73と、物理的エネルギー付加部74とを備えている。この物理的エネルギー付加部74は側壁駆動用デバイス60のプローブ65にリード線79にて接続され、プローブ65に物理的エネルギーを供給して発熱させ、振動を起こさせ、あるいは光放射させる等を行う。

【0034】
制御部71は、操作部72からの入力信号を受けて駆動部73に駆動信号を送出する処理や、物理的エネルギー付加部74に信号を送出する処理など、側壁駆動用デバイス60の全制御を司る。

【0035】
操作部72は、ユーザの操作に応じてX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に駆動装置73を移動させる入力信号を制御部71に送出する。この操作部72は、例えば、図11に示すような、操作桿81を用いることができる。この操作桿81は、XY方向操作部82と、XY方向操作部82の上方に取り付けられたZ方向操作部83とを備えている。そして、XY方向操作部82を前後左右に動かすことでプローブ65をXY方向に移動させることができ、Z方向操作部83を前方に倒すとプローブ65を下げることができ、Z方向操作部83を後方に倒すとプローブ65を上方に上げることができる。尚、操作桿81は、操作部72としての一例であり、これに限定されるものではない。

【0036】
駆動装置73は、X軸駆動部75、Y軸駆動部76、Z軸駆動部77を備えている。この駆動装置73は、制御部71からの駆動信号を受けてX,Y,Zの3軸方向にプローブ65を移動させる。尚、図7においては、X軸方向の支柱にX軸駆動部75が可動に配置され、X軸駆動部75にY軸方向の支柱が固定され、このY軸方向の支柱にY軸駆動部76が可動に配置され、Y軸駆動部76にZ軸方向の支柱が固定され、Z軸方向の支柱にZ軸駆動部77が可動に配置された構成とされているが、X,Y,Zの3軸方向に駆動可能であればこの駆動機構の構成が限定されることはない。

【0037】
物理的エネルギー付加部74は、制御部71からの信号を受けて、加熱、加振、光線照射などの物理的エネルギーをプローブ65を介して棒状体301,…,331;351,…,381に付加し、当接している棒状体に接触している部分の封止剤8の粘度を熱伝導、振動あるいは光線照射によって低下させ、当該棒状体の移動をしやすくする。

【0038】
次に、マイクロ流体システムでマイクロ流路10の形状を変更する場合について述べる。プローブ65は、物理的エネルギー付加部74によって加熱されるものとする。ユーザは操作部72でプローブ65のX,Y軸位置を操作し、移動させる所望の棒状体301,…,331;351,…,381の上方にプローブ65を位置させる。そして、ユーザは、Z軸方向にプローブ65を移動させ、プローブ65の当接部65dを所望の棒状体301,…,331;351,…,381に当接させる。

【0039】
プローブ65が棒状体301,…,331;351,…,381に当接すると、プローブ65の熱が棒状体301,…,331;351,…,381に伝わり、棒状体301,…,331;351,…,381の熱が加熱されている棒状体301,…,331;351,…,381の近傍に位置する封止剤8に伝わる。加熱されている棒状体301,…,331;351,…,381の近傍に位置する封止剤8は加熱によって粘度が低下する。そして、ユーザは、操作部72でプローブ65をX軸方向に所定の距離だけ移動させると、当接部65dの摩擦力によって棒状体301,…,331;351,…,381が長手方向に同様に移動する。必要とする複数の棒状体301,…,331;351,…,381に対してこの作業を繰り返すことにより、マイクロ流路10の形状を変更することができる。

【0040】
本実施形態のマイクロ流体チップ1及び当該マイクロ流体チップ1を用いたマイクロ流体システムによれば、棒状体301,…,331;351,…,381間に封止剤8を配置することで、マイクロ流路10を流れる培養液が棒状体301,…,331;351,…,381間から漏れ出すことも防止できる。

【0041】
封止剤8として水不溶で化学的に安定であり、毒性が無い性質をもつ材料を使用することにより、マイクロ流路10を流れる培養液に封止剤8が溶け出し、培養に悪影響をもたらすことがない。また、封止剤8が水不溶の性質を持つことにより棒状体301,…,331;351,…,381間に隙間ができることを防止できる。また、封止剤8としてマイクロ流体チップ1の使用温度において固化しない性質を持つ材料を使用することにより、封止剤8が固化して収縮し、ひび割れなどが生じることがない。

【0042】
また、封止剤8として物理的エネルギーを受けて粘度が低下する材料を使用することにより、複数の棒状体301,…,331;351,…,381のうちの所定の棒状体から伝わった物理的エネルギーによって当該所定の棒状体に接触している部分の封止剤8の粘度が低下し、当該所定の棒状体を移動させたときに隣接する他の棒状体が一緒に移動することを防止できる。

【0043】
そして、マイクロ流体システムにおいて、物理的エネルギー付加部74を設けることにより、所定の棒状体を移動させるときに当該棒状体に物理的エネルギーを付加することができ、マイクロ流路10の形状を任意の形状にスムーズに変更できることとなる。

【0044】
封止剤8としてシャープメルト性を有する材料を混入したワセリンを使用すれば、加熱によって粘度が低下する速度が早いため、棒状体301,…,331;351,…,381の移動を素早く行うことができる。また、封止剤8としてワセリンに光・熱変換物質の微粒子を混合分散させた材料を使用すれば、光照射によって光・熱変換物質の微粒子が発熱してワセリンの粘度を低下させ、棒状体301,…,331;351,…,381の移動を素早く行うことができる。

【0045】
[第2の実施形態]
図1に示した第1の実施形態のマイクロ流体チップ1では、側壁部31,32の端部35,36を互いに対向させることによりマイクロ流路10を形成した。その他にも、図12に示すように、基板2に垂直に壁部21を形成し、その壁部21に側壁部31の端部35を対向して配置し、壁部21と側壁部31の間にマイクロ流路10を形成するマイクロ流体チップ1Aを構成してもよい。

【0046】
すなわち、基板2と、基板2上に接着されずに長手方向側面で接するように一列に配置された複数の棒状体301,…,331からなる側壁部31とを備え、基板2には基板2に垂直に壁部21が形成されたマイクロ流体チップ1Aが提供される。側壁部31は、棒状体301,…,331の幅方向側面が壁部21に対向するように基板2上に配置され、壁部21と棒状体301,…,331の幅方向側面間にマイクロ流路10が形成されている。複数の棒状体301,…,331の少なくとも一部を棒状体301,…,331の長手方向に移動させることでマイクロ流路10の形状を変化させることができる。尚、側壁部31の一部と接しつつ、マイクロ流路上に配置されるカバー体5をさらに有してもよい。そして、このような第2の実施形態のマイクロ流路チップ1に対しても、上で説明したマイクロ流体デバイスを適用することができる。

【0047】
以上、本発明を実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。

【0048】
例えば、上述した実施形態においては、物理的エネルギーをプローブ65に付加し、プローブ65から棒状体301,…,331;351,…,381を介して封止剤8に物理的エネルギーが伝わる構成としているが、棒状体301,…,331;351,…,381のうちの所定の棒状体に対して物理的エネルギーを直接に付加する構成としてもよい。この場合、加熱用、超音波振動加振用あるいは光放射用の物理的エネルギー付加部74をプローブと並設し、その物理的エネルギー付加部74を駆動する駆動装置を、プローブ65を移動させるための駆動装置73とは別途設ける。

【0049】
このようにプローブ65を介さずに物理的エネルギーを棒状体301,…,331;351,…,381の所定のものに、あるいは封止剤8の所定の部分に直接に付加する構成とした場合、プローブ65が物理的エネルギーを伝達する必要がないため、プローブ65の選択肢が広がることとなる。また、棒状体301,…,331;351,…,381に対して物理的エネルギーを付加する構成の場合、物理的エネルギーとして加熱や加振を使用するときに好適である。尚、物理的エネルギーとして光線照射を使用する場合には、棒状体301,…,331;351,…,381の材料として、光を伝達するガラスやアクリルを使用するのが好適である。

【0050】
また、物理的エネルギーとして加熱、加振(超音波振動など)、光線照射などを述べたがその他の物理的エネルギーでもよく、棒状体301,…,331;351,…,381から、あるいは封止剤8から培養液に伝達されることで培養液に影響を及ぼさない物理的エネルギーであれば特に限定されるものではない。

【0051】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0052】
1,1A マイクロ流体チップ
2 基板
5 カバー体
8 封止剤
10 マイクロ流路
31,32 側壁部
60 側壁駆動用デバイス
61 ステージ
63,64 固定手段
65 プローブ
65a 小径部
65b 中径部
65c 大径部
65d 当接部
65e 凹凸
66 制御装置
71 制御部
72 操作部
73 駆動装置
74 物理的エネルギー付加部
75 X軸駆動部
76 Y軸駆動部
77 Z軸駆動部
81 操作桿
82 XY方向操作部
83 Z方向操作部
301,…,331;351,…,381 棒状体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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