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明細書 :ヘアードライヤ用のマルチノズル

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5958893号 (P5958893)
公開番号 特開2013-162830 (P2013-162830A)
登録日 平成28年7月1日(2016.7.1)
発行日 平成28年8月2日(2016.8.2)
公開日 平成25年8月22日(2013.8.22)
発明の名称または考案の名称 ヘアードライヤ用のマルチノズル
国際特許分類 A45D  20/12        (2006.01)
A45D  20/10        (2006.01)
FI A45D 20/12 J
A45D 20/10 101
請求項の数または発明の数 3
全頁数 14
出願番号 特願2012-026408 (P2012-026408)
出願日 平成24年2月9日(2012.2.9)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成23年8月27日、数理科学会発行の「第30回記念数理科学講演会 講演論文集No.30」に発表
審査請求日 平成27年2月2日(2015.2.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
発明者または考案者 【氏名】国吉 光
【氏名】野沢 大輔
【氏名】桜田 圭
個別代理人の代理人 【識別番号】100083806、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 秀和
【識別番号】100100712、【弁理士】、【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
【識別番号】100095500、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 正和
【識別番号】100101247、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 俊一
【識別番号】100098327、【弁理士】、【氏名又は名称】高松 俊雄
審査官 【審査官】栗山 卓也
参考文献・文献 登録実用新案第3011964(JP,U)
調査した分野 A45D 20/12
A45D 20/10
特許請求の範囲 【請求項1】
ヘアードライヤの噴出開口部に取り付けられ、加熱手段で加熱された温風を通過させる温風通過筒状部と、この温風通過筒状部を囲むように該温風通過筒状部の周囲に設けられ、取り込まれた外部の空気を前記加熱手段で加熱させることなく噴出開口部へ通過させる外気通過筒状部とを有する二重構造式ヘアードライヤ用のマルチノズルであって、
前記噴出開口部の中心に対して環状に配設され、前記噴出開口部から噴き出される温風を複数の噴出風として外部に噴出するように互いに平行に延出し、かつ前後の口径が同一である複数の筒状体と、
前記噴出開口部に取り付けられる前記複数の筒状体の基端部における筒状体の間の隙間を閉塞し、当該隙間からの温風の漏出を防止する閉塞部と、
前記複数の筒状体を囲むように前記噴出開口部と同じ直径をもって前記噴出開口部から延出し、基端部が前記噴出開口部に連結される外環筒体と
を有することを特徴とするヘアードライヤ用のマルチノズル。
【請求項2】
前記閉塞部は、
前記複数の筒状体の前記基端部における各筒状体の間の隙間に伸びて該隙間を閉塞する隙間閉塞部と、
この隙間閉塞部の最外周縁部からの温風の漏出を防止すべく該最外周縁部を前記噴出開口部に向けて立ち上げて、該最外周縁部を噴出開口部まで延出させて形成される周縁閉塞壁と、
この周縁閉塞壁と前記隙間閉塞板とで囲まれた噴出開口部に隣接する空間として形成され、噴出開口部からの風量を調整する風量調整部と
を有することを特徴とする請求項1記載のヘアードライヤ用のマルチノズル。
【請求項3】
前記筒状体の先端部は、外環筒体よりも外部に突出していることを特徴とする請求項1または2に記載のヘアードライヤ用のマルチノズル。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアードライヤからの温風が噴き出す噴出開口部に取り付けられるヘアードライヤ用のマルチノズルに関し、更に詳しくは、ヘアードライヤからの温風を頭髪を傷めることのない比較的低温の複数の噴出風として噴き出して頭髪を乾燥させるヘアードライヤ用のマルチノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、頭髪のケアに対する関心は、老若男女を問わず、幅広い世代に及んでいる。一般に、洗髪後に濡れた頭髪を自然乾燥させると、頭皮に水分が長時間付着していることになり、雑菌が増える原因となる。従って、ヘアードライヤなどで濡れた頭髪をすぐに乾燥させる方が頭皮には良いとされている。
【0003】
しかしながら、ヘアードライヤで濡れた頭髪を乾燥させる場合に、頭髪とヘアードライヤとの間の距離が短くなると、ヘアードライヤからの温風が頭髪の一部に集中して高温になり、頭髪に悪影響を与える。なお、ヘアードライヤで濡れた頭髪を乾燥させる場合には、ヘアードライヤからの温風が一部に集中しないようにヘアードライヤを左右に振りながら濡れた頭髪を乾燥させることが行われている。
【0004】
また、従来のヘアードライヤの温風が噴き出る噴出開口部は、先端に行くに連れて断面積が小さくなり、温風を頭髪の一部に集中させる構造になっている。更に、温風のみを頭髪に噴き付けると、頭髪を傷める原因となるので、ヘアードライヤにおいてヒータで暖められた温風を噴き出す以外に、ヒータで暖められていない外部の空気を吸引して、この外部の空気を温風とともに同時に噴き出す二重構造式ヘアードライヤもある。
【0005】
この二重構造式ヘアードライヤは、温風だけを噴き出すヘアードライヤに比較して、温風と外部の空気の混在した低い温度で濡れた頭髪を乾燥させることが可能である。しかしながら、実際の測定結果では、頭髪に当たる時の温度は、例えば約110゜Cのような比較的高温となり、この高温の温風で頭髪を傷めている。
【0006】
濡れた頭髪を乾燥させるために必要なヘアードライヤからの温風の温度は、一般に60゜C乃至70゜Cであり、80゜C以上の温度では頭髪に悪影響を与える。従って、頭髪を傷めないようにヘアードライヤからの温風の温度が低く、濡れた頭髪を短時間で広範囲に乾燥させ得るヘアードライヤの開発が要望されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特許第4420059号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、温風を複数の噴出風として噴き出して温風の分散および拡散を促し温風の低温化を図り頭髪を傷めないヘアードライヤ用のマルチノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するため、 請求項記載のヘアードライヤ用のマルチノズルは、ヘアードライヤの噴出開口部に取り付けられ、加熱手段で加熱された温風を通過させる温風通過筒状部と、この温風通過筒状部を囲むように該温風通過筒状部の周囲に設けられ、取り込まれた外部の空気を前記加熱手段で加熱させることなく噴出開口部へ通過させる外気通過筒状部とを有する二重構造式ヘアードライヤ用のマルチノズルであって、前記噴出開口部の中心に対して環状に配設され、前記噴出開口部から噴き出される温風を複数の噴出風として外部に噴出するように互いに平行に延出し、かつ前後の口径が同一である複数の筒状体と、前記噴出開口部に取り付けられる前記複数の筒状体の基端部における筒状体の間の隙間を閉塞し、当該隙間からの温風の漏出を防止する閉塞部と、前記複数の筒状体を囲むように前記噴出開口部と同じ直径をもって前記噴出開口部から延出し、基端部が前記噴出開口部に連結される外環筒体と有することを要旨とする。
換言すれば、加熱手段で加熱された温風を噴き出すために通過させる温風通過筒状部と、この温風通過筒状部を囲むように該温風通過筒状部の周囲に設けられ、加熱手段で加熱されていない外部の空気を前記温風通過筒状部との間に吸引して噴き出すために外部の空気を通過させる外気通過筒状部とを有する二重構造式ヘアードライヤの前記温風通過筒状部の噴出開口部に取り付けられ、該噴出開口部からの温風を受け入れて複数の噴出風として外部に噴き出すヘアードライヤ用のマルチノズルであって、前記噴出開口部の中心に対して環状に配設され、前記噴出開口部から噴き出される温風を受け入れて複数の噴出風として外部に噴出するように互いに平行に延出する複数の筒状体と、前記噴出開口部に取り付けられる前記複数の筒状体の基端部における前記複数の筒状体の間の隙間に前記噴出開口部からの温風が漏出することを防止するとともに前記噴出開口部からの温風を各筒状体に均等かつ円滑に分配するように前記複数の筒状体の間の隙間を閉塞する閉塞部と、前記複数の筒状体を囲むように前記噴出開口部と同じ直径をもって前記噴出開口部から延出し、基端部が前記噴出開口部に連結される外環筒体とを有することを要旨とする。
【0012】
請求項記載のヘアードライヤ用のマルチノズルでは、複数の筒状体を二重構造式ヘアードライヤの噴出開口部の中心に対して環状に配設し、噴出開口部から噴き出される温風を受け入れて複数の噴出風として外部に噴出するとともに複数の筒状体の周囲に噴き出される外部の空気を複数の筒状体から複数の噴出風として噴き出される温風に巻き込むように混ぜて低温化しながら、濡れた頭髪に向けて比較的低温の速い速度で熱の集中もなく、拡散された状態で風量の多い噴出風として広範囲に噴出し、濡れた頭髪を傷めることなくほぐしながら短時間で効率的に乾燥させることができる。
【0013】
請求項記載のヘアードライヤ用のマルチノズルは、前記閉塞部が、前記複数の筒状体の前記基端部における各筒状体の間の隙間に伸びて該隙間を閉塞する隙間閉塞部と、この隙間閉塞部の最外周縁部からの温風の漏出を防止すべく該最外周縁部を前記噴出開口部に向けて立ち上げて、該最外周縁部を噴出開口部まで延出させて形成される周縁閉塞壁と、この周縁閉塞壁と前記隙間閉塞板とで囲まれた噴出開口部に隣接する空間として形成され、噴出開口部からの風量を調整する風量調整部とを有することを要旨とする。
【0014】
請求項記載のヘアードライヤ用のマルチノズルでは、各筒状体の間の隙間に伸びて該隙間を閉塞する隙間閉塞部と該隙間閉塞部の最外周縁部を噴出開口部まで延出させて形成される周縁閉塞壁とで囲まれた噴出開口部に隣接する空間として風量調整部を形成しているため、噴出開口部からの温風を一時的に貯蔵し緩衝させて均一的に分散し、複数の筒状体の各々に対して均等に配分しながら各筒状体に送り出し、これにより複数の噴出風として頭髪に向けて比較的低温で熱の集中もなく、拡散された状態で風量の多い噴出風を広範囲に噴出し、濡れた頭髪を傷めることなくほぐしながら短時間で乾燥させている。
【0015】
請求項記載のヘアードライヤ用のマルチノズルは、前記外環筒体の長さが、前記複数の筒状体よりも短く、該複数の筒状体の前記基端部と反対側の自由端部は、外環筒体よりも外部に突出していることを要旨とする。
【0016】
請求項記載のヘアードライヤ用のマルチノズルでは、筒状体は外環筒体よりも外部に突出しているため、外環筒体から噴出される外部の空気と筒状体から噴出される温風の拡散が促進され、頭髪に当たる温風の温度は低下させることができるとともに高温度領域の割合も減少する。

【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の筒状体をヘアードライヤの噴出開口部の中心に対して環状に配設し、噴出開口部から噴き出される温風を受け入れて複数の噴出風として外部に噴出するので、頭髪に向けて噴出される温風は比較的低温の速い速度で熱の集中もなく、拡散された状態で風量の多い噴出風として広範囲に噴出し、頭髪を傷めることなくほぐしながら短時間で効率的に乾燥させることができる。
【0018】
また、本発明によれば、複数の筒状体を二重構造式ヘアードライヤの噴出開口部の中心に対して環状に配設し、噴出開口部から噴き出される温風を受け入れて複数の噴出風として外部に噴出するとともに複数の筒状体の周囲に噴き出される外部の空気を複数の筒状体から複数の噴出風として噴き出される温風に巻き込むように混ぜて低温化しながら濡れた頭髪に向けて比較的低温の速い速度で熱の集中もなく、拡散された状態で風量の多い噴出風として広範囲に噴出し、濡れた頭髪を傷めることなくほぐしながら短時間で効率的に乾燥させることができる。
【0019】
更に、本発明によれば、各筒状体の間の隙間に伸びて該隙間を閉塞する隙間閉塞部と該隙間閉塞部の最外周縁部を噴出開口部まで延出させて形成される周縁閉塞壁とで囲まれた噴出開口部に隣接する空間として風量調整部を形成しているので、噴出開口部からの風量を調整し、例えば温風を一時的に貯蔵し緩衝させて均一的に分散し、複数の筒状体の各々に対して均等に配分しながら各筒状体に送り出し、これにより複数の噴出風として頭髪に向けて比較的低温で熱の集中もなく、拡散された状態で風量の多い噴出風を広範囲に噴出し、濡れた頭髪を傷めることなくほぐしながら短時間で乾燥させている。
【0020】
本発明によれば、外環筒体の長さが複数の筒状体よりも短く、筒状体は外環筒体よりも外部に突出しているので、外環筒体から噴出される外部の空気と筒状体から噴出される温風の拡散が促進され、頭髪に当たる温風の温度は低下させることができるとともに高温度領域の割合も減少する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係わるマルチノズルを取り付けたヘアードライヤを示す斜視図である。
【図2】図1に示したヘアードライヤの側方から見た断面図である。
【図3】図1に示したヘアードライヤに取り付けられているマルチノズルの正面図、側方から見た断面図、および裏側から見た斜視図である。
【図4】図1に示したヘアードライヤを用いて頭髪を乾燥させた場合における温風の温度分布と速度分布を示す図である。
【図5】従来の単なる二重構造式のヘアードライヤにおける温風の温度分布と速度分布を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係わるマルチノズルが取り付けられたヘアードライヤを示す斜視図である。
【図7】図6に示したヘアードライヤに取り付けられているマルチノズルの筒状体側から見た正面図、側方から見た断面図、および裏側から見た斜視図である。
【図8】図6に示した実施形態のヘアードライヤを用いて頭髪を乾燥させた場合における温風の温度分布と速度分布を示す図である。
【図9】本発明の別の実施形態に係わるマルチノズルが取り付けられたヘアードライヤを示す斜視図である。
【図10】図9に示したヘアードライヤに取り付けられているマルチノズルの筒状体側から見た正面図、側方から見た断面図である。
【図11】図9に示したヘアードライヤに取り付けられているマルチノズルの筒状体側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態と称する)を説明する。

【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係わるマルチノズルが取り付けられたヘアードライヤを示す斜視図である。同図に示すヘアードライヤ1は、二重構造式ヘアードライヤ3の先端部である噴出開口部3a、すなわち温風が噴出される開口部である噴出開口部3aに本実施形態のマルチノズル5を取り付けたものである。

【0024】
二重構造式ヘアードライヤ3は、前記噴出開口部3aと反対側の後端部寄りの内部に空気吸引送風手段であるファン7が設けられている。そして、当該二重構造式ヘアードライヤ3の前記後端部は、外部からの空気を矢印101で示すように吸引する空気吸引開口部3bを構成している。

【0025】
また、二重構造式ヘアードライヤ3の内部であってファン7と噴出開口部3aとの間には、円筒形の温風通過筒状部11が設けられている。なお、二重構造式ヘアードライヤ3は、最外側が円筒形の筒状体で形成されているが、この最外側の円筒形の筒状体を外気通過筒状部13と称することにする。

【0026】
更に、前記温風通過筒状部11の内部には、ファン7から送られてくる外部からの空気を加熱して温風を発生するための加熱手段であるヒータ15が配設されている。また、前記噴出開口部3aと空気吸引開口部3bには、耐熱性のネット9が取り付けられ、ファン7やヒータ15の存在する内部に異物、ゴミ、指などが入らないようになっている。

【0027】
また、二重構造式ヘアードライヤ3の外気通過筒状部13の後端部寄りの下側には、下方に延出するようにハンドル部17が取り付けられている。このハンドル部17は、外気通過筒状部13に取り付けられた基端部を中心として外気通過筒状部13の長手方向に対して近接したり、離間するように回動可能に取り付けられている。

【0028】
本実施形態のマルチノズル5は、二重構造式ヘアードライヤ3の外気通過筒状部13の先端である噴出開口部3aに取り付けられる。このマルチノズル5は、その口径が前記外気通過筒状部13と同じ直径の短筒状の外環筒体21と、この外環筒体21の内側に配設される、複数(本実施形態では3本)の筒状体23a、23b、23cとからなる。なお、複数の筒状体23a、23b、23cを総称して記載する場合には、単に筒状体23と記載する。

【0029】
複数の筒状体23は、外環筒体21と同方向に延出している。さらに詳しくは、筒状体23の先端である自由端部24が、外環筒体21よりも長く、外環筒体21先端部よりも外方に突出している。また、複数の筒状体23は、それぞれが先端から後端まで内径が同一の筒状であり、それぞれの筒状体23a、23b、23cは、それぞれの中心軸が同一方向でかつ互いに平行となるように配設されている。

【0030】
また、それぞれの筒状体23a、23b、23cは、外環筒体21の中心に対して、すなわち噴出開口部3aの中心に対して環状に配設される。これらの構成により二重構造式ヘアードライヤ3の噴出開口部3aから噴き出される温風を複数(本実施形態では3つ)の噴出風として矢印102で示すように外部に噴出する。

【0031】
また、外環筒体21は、筒状体23a、23b、23cによる噴出し温度の低温化を促進するものであり、具体的には、70℃以上の高温度領域の割合は筒状体23のみによる噴出しに比べ、外環筒体21を加えた二重構造では、さららに10~12%の低温化を可能とする。

【0032】
図2は、図1に示したヘアードライヤ1の側方から見た断面を模式的に示す断面図である。また、図3(a)、(b)および(c)は、図1および図2に示したヘアードライヤ1に取り付けられているマルチノズル5の複数の筒状体23側から見た正面図、側方A-Aから見た断面図、および裏側から見た斜視図である。

【0033】
図2に示すように、マルチノズル5の外環筒体21は、二重構造式ヘアードライヤ3の外気通過筒状部13と同径であって、外気通過筒状部13から外環筒体21に切れ目なく連続的につながって連結されている。また、複数の筒状体23の前記自由端部24と反対側の基端部25は、二重構造式ヘアードライヤ3の前記噴出開口部3aまで延出せず、噴出開口部3aの少し手前で終端して、噴出開口部3aと筒状体23の基端部25との間に空間31が設けられている。

【0034】
なお、複数の筒状体23a、23b、23cの自由端部24および基端部25は、それぞれ各筒状体23a、23b、23c毎に存在し、それぞれに対して自由端部24a、24b、24cおよび基端部25a、25b、25cと記載され得るものであるが、ここでは簡単化のためa、b、cの添え字を省略して、自由端部24および基端部25のように総称して記載している。

【0035】
上述したように、各筒状体23の基端部25と噴出開口部3aとの間に空間31を設けて、噴出開口部3aの少し手前で終端している複数の筒状体23の基端部25の間には、図3(a)に複数の筒状体23を正面から見た状態を示すように、隙間33が存在する。このような隙間33が存在すると、噴出開口部3aからの温風がすべて複数の筒状体23内に入らず、隙間33から温風が漏出することになるので、このような温風の隙間33からの漏出を防止するとともに、噴出開口部3aからの温風を複数の筒状体23に均等かつ円滑に分配するように複数の筒状体23の基端部25の間の隙間33を隙間閉塞部27で図2および図3にも示すように閉塞している。

【0036】
更に、前記隙間閉塞部27は、その最外周縁部からの前記温風の漏出も防止すべく、図2および図3(b)から分かるように、隙間閉塞部27の最外周縁部が噴出開口部3aに向けて立ち上げるように延出して噴出開口部3aに至り、これにより当該最外周縁部と噴出開口部3aとの間を閉塞し、前記隙間閉塞部27とともに前記空間である風量調整部31を構成する周縁閉塞壁29が設けられている。

【0037】
すなわち、風量調整部31は、隙間閉塞部27と、周縁閉塞壁29と、噴出開口部3aとで囲まれた前記空間であって、この空間において二重構造式ヘアードライヤ3の温風通過筒状部11からの温風が貯蔵されるとともに緩衝され、これにより温風通過筒状部11からの温風を均一的に分散し、複数の筒状体23の各々に対して均等に配分しながら各筒状体23に送り出し、これにより温風を複数の筒状体23の自由端部24から複数の噴出風として外部に向けて、具体的には濡れた頭髪に向けて比較的低温で熱の集中もなく、拡散された状態で風量の多い噴出風を広範囲に噴出し、濡れた頭髪を傷めることなくほぐしながら短時間で乾燥させている。また、上述したように、複数の筒状体23を外環筒体21よりも突出させることにより、すなわち外環筒体21を筒状体23よりも短く形成することにより、外環筒体21から噴出される外部の空気と筒状体23から噴出される温風の拡散が促進され、頭髪に当たる温風の温度は低下させることができるとともに高温度領域の割合も減少する。なお、温風を噴出する筒状体23の長さを35mmとし、外部の空気を噴出する外環筒体21の長さを10mmとした場合に、最も低温化が可能であるが実験的に得られている。また、周縁閉塞壁29で囲む内側の面積をAとし、複数の筒状体23の開口部先端の各面積を加算した総面積をaとすると、両者の関係は、次式のようになっていることが好ましい。

【0038】
2/3×A=a
ただし、係数2/3は、2/5~4/5の範囲内にあればよく、2/5以上となると、前述した風量調整部31の効果、各筒状体23からの風量が均一となる効果が薄れ、4/5以下となると空気抵抗が増し、効率が低下することから好ましくない。

【0039】
以上のように構成されるマルチノズル5を二重構造式ヘアードライヤ3の噴出開口部3aに取り付けられたヘアードライヤ1を用いて濡れた頭髪を乾燥させるには、当該ヘアードライヤ1の先端であるマルチノズル5の複数の筒状体23の自由端部24を濡れた頭髪から例えば150mm乃至200mm離して図示しない電源スイッチをオンにすると、ヒータ15に電力が供給されて駆動され、ヒータ15から熱が発生するとともに、ファンも駆動されて回転し、ファン7は、空気吸引開口部3bから矢印101で示すように外部の空気を吸引し、この吸引した空気を図2で矢印103で示すように、温風通過筒状部11内に送り出すとともに、矢印104で示すように、温風通過筒状部11の外側の外気通過筒状部13内にも送り出す。

【0040】
ファン7で温風通過筒状部11内に送り出された外部の空気は、ヒータ15で暖められ、温風として矢印105で示すように温風通過筒状部11の噴出開口部3aからマルチノズル5の風量調整部31内に送り込まれる。この風量調整部31内に送り込まれた温風は、上述したように、風量調整部31において均一的に分散され、複数の筒状体23の各々に対して均等に配分されながら複数の筒状体23のそれぞれに送り出され、複数の筒状体23のそれぞれの自由端部24から複数の噴出風として濡れた頭髪に向けて噴き出されるとともに、また同時に、二重構造式ヘアードライヤ3の外気通過筒状部13内に送り込まれた外部の空気は、ヒータ15で暖められることなく、矢印106で示すように二重構造式ヘアードライヤ3の噴出開口部3aからマルチノズル5の外環筒体21と周縁閉塞壁29との間および外環筒体21と複数の筒状体23の外壁との間を通って、複数の筒状体23の自由端部24の周囲の外部に噴き出され、複数の筒状体23から複数の噴出風として噴き出される温風に巻き込まれるように混ぜられて低温化を図りながら、濡れた頭髪に向けて比較的低温の速い速度で熱の集中もなく、拡散された状態で風量の多い噴出風として広範囲に噴出し、濡れた頭髪を傷めることなく、ほぐしながら短時間で効率的に乾燥させることができる。

【0041】
図4は、上述した本実施形態のヘアードライヤ1を用いて頭髪を乾燥させた場合における温風の温度分布と速度分布を示す図である。以下、図4,5,8において、温度分布は大文字でAからDへ温度が低い領域を示し、速度分布は小文字でaからdへ風速が遅い領域を示す。すなわち領域Aがもっとも温度が高く、領域aがもっとも風速が早い領域であることを示すものである。

【0042】
なお、図5は、図4に示す本実施形態のヘアードライヤ1の温風の温度分布と速度分布との比較を示すために、従来の単純な二重構造式のヘアードライヤにおける、温風の温度分布と速度分布を示す図である。なお、図4および図5に示す温風の温度分布と速度分布は、頭髪の代わりに衝突板を設け、この衝突板における温風の温度分布と速度分布を示している。

【0043】
また、図4および図5では、ヘアードライヤ1からの温風の噴出口である3本の筒状体23の自由端部24と衝突板との間の距離LをL=100mm、L=150mmおよびL=200mmとした場合についての温風の温度分布と速度分布が示されている。

【0044】
図4から分かるように、本実施形態のヘアードライヤ1においては、距離L=100mm、L=150mmおよびL=200mmのいずれの場合も、衝突板の中心が最も高温になって、風速は遅くなるとともに、高温領域が狭くなり、適温領域が広がっている。また、各筒状体23からの噴出風が集まる衝突板の中心には、よどみ領域が形成される。このよどみ領域が形成されることにより、マルチノズル5の筒状体23から噴出される温風の噴出速度が減衰し、噴出風の乱れが筒状体23の直下で発生し、衝突板の中心の温度が高くなる。また、風速は従来よりは速いが、風速の遅い範囲が狭くなっている。

【0045】
更に、距離L=100mm、L=150mmおよびL=200mmのいずれの条件下でも、隣り合う2本の筒状体23の間の温度は、点線で楕円形に囲んで示すように、高くなり、風速は速くなっている。これは、図4において、楕円形の点線で囲んで示すように、噴出風同士が衝突し、各筒状体23の間の風速が速くなるためである。このように、各筒状体23間の風速が速くなることにより、温風の一部集中を分散させることが可能となっている。また、距離L=100mm、L=150mmおよびL=200mmのいずれの条件下でも、最も高温となる点の温度は、70゜C以下にならず、本実施形態のように複数の筒状体23を設けることにより、温度が低下するが、高温領域は80%と大きくなっている。なお、距離L=200mmの場合は、筒状体23の影響を受けにくくなっている。

【0046】
一方、図5に示すように、従来のヘアードライヤでは、距離L=100mm、L=150mmおよびL=200mmのいずれの場合も、衝突板の中心が最も高温になって風速は遅くなり、また距離L=100mおよびL=150mmの場合には、衝突板の中心温度の変化はほとんどないが、距離L=200mmでは、噴出された温風と外部の空気が拡散することにより、衝突板の中心温度は、距離L=100mm、L=150mmの場合に比較して、低くなっている。しかしながら、距離L=100mm、L=150mmおよびL=200mmのいずれの条件下においても、最も高温になる点の温度は、60゜C乃至70゜C以上となり、温度分布も均一にならない。また、70゜C以上の高温領域の割合も距離L=100mmでは約40%、L=150mmでは約80%、L=200mmでは約70%と高くなっている。また、筒状体23から衝突板までの距離を離すと、温度は低下する。

【0047】
図6は、本発明の他の実施形態に係わるマルチノズルが取り付けられたヘアードライヤを示す斜視図である。同図に示すヘアードライヤ100は、図1と同様に、二重構造式ヘアードライヤ3の先端の噴出開口部3aに本実施形態のマルチノズル50を取り付けたものであり、この二重構造式ヘアードライヤ3の構造は図1に示したものと同じである。

【0048】
また、この二重構造式ヘアードライヤ3の噴出開口部3aに取り付けられた本実施形態のマルチノズル50は、図1に示した実施形態のマルチノズル5が3本の筒状体23を備えていたのに対して、4本の筒状体23a、23b、23c、23dを備えるようにした点が異なるのみであって、その他の構成および作用は、図1に示した実施形態のものと同じであるので、同じ構成要素には同じ符号を付して、説明を省略する。

【0049】
図7(a)、(b)および(c)は、図6に示したヘアードライヤ100に取り付けられているマルチノズル50の複数の筒状体23a、23b、23c、23d側から見た正面図、側方から見た断面図、および裏側から見た斜視図である。この図においても、マルチノズル50は、4本の筒状体23a、23b、23c、23dを備えるようにした点が異なるのみであって、その他の構成および作用は、図3に示した実施形態のものと同じであるので、同じ構成要素には同じ符号を付して、説明を省略する。

【0050】
図8は、図6に示した実施形態のヘアードライヤ100を用いて頭髪を乾燥させた場合における温風の温度分布と速度分布を示す図である。なお、図8に示す温風の温度分布と速度分布も、図4と同様に、頭髪の代わりに衝突板を設け、この衝突板における温風の温度分布と速度分布を示している。また、図8でも、ヘアードライヤ100からの温風の噴出口である4本の筒状体23a、23b、23c、23dの自由端部24と衝突板との間の距離LをL=100mm、L=150mmおよびL=200mmとした場合についての温風の温度分布と速度分布が示されている。

【0051】
図8からも分かるように、4本の筒状体23を用いたマルチノズル50が取り付けられたヘアードライヤ100においても、筒状体23の本数に関係なく、距離L=100mm、L=150mmおよびL=200mmのいずれの場合も、衝突板の中心が最も高温になる。各筒状体23が集まる中心には、よどみ領域が形成され、このよどみ領域が形成されることで、噴出風の速度が減衰し、噴出風の乱れが筒状体23の直下で発生し、中心の温度が高くなっている。更に、いずれの場合でも、隣り合う2本の筒状体23の間の温度が高くなる。これは、図8において楕円形の点線で囲んで示すように、噴出風同士が衝突し、各筒状体23の間の風速が速くなるためである。このように、各筒状体23間の風速が速くなることにより、温風の一部集中を分散させることが可能となっている。また、いずれの条件下でも、最も高温となる点の温度は、70゜C以下にならず、本実施形態のように複数の筒状体23を設けることにより、温度が低下するが、高温領域は80%と大きくなっている。なお、距離L=200mmの場合は、筒状体23の影響を受けにくくなっている。

【0052】
本実施形態のように、マルチノズル50の筒状体23の数を4本とすることで、衝突板上の温度は、従来に比較して、約10゜Cの低温化が可能となり、70゜C以上の高温度領域の割合も減少している。

【0053】
図9は、本発明の別の実施形態に係わるマルチノズルが取り付けられたヘアードライヤを示す斜視図である。同図に示すヘアードライヤ200は、図1と同様に、二重構造式ヘアードライヤ3の先端の噴出開口部3aに本実施形態のマルチノズル500を取り付けたものであり、二重構造式ヘアードライヤ3の構造は図1に示したものと同じである。

【0054】
また、この二重構造式ヘアードライヤ3の噴出開口部3aに取り付けられた本実施形態のマルチノズル500は、図1に示した実施形態のマルチノズル5が3本の筒状体23を備えていたのに対して、5本の筒状体23a、23b、23c、23d、23eを備えるようにした点が異なるのみであって、その他の構成および作用は、図1に示した実施形態のものと同じであるので、同じ構成要素には同じ符号を付して、説明を省略する。

【0055】
図10(a)、(b)および(c)は、図9に示したヘアードライヤ200に取り付けられているマルチノズル500の複数の筒状体23a、23b、23c、23d、23e側から見た正面図、側方から見た断面図、および裏側から見た斜視図である。この図においても、マルチノズル500は、5本の筒状体23a、23b、23c、23d、23eを備えるようにした点が異なるのみであって、その他の構成および作用は、図3に示した実施形態のものと同じであるので、同じ構成要素には同じ符号を付して、説明を省略する。

【0056】
なお、図9および図10に示すヘアードライヤ200のマルチノズル500において、5本の筒状体23a、23b、23c、23d、23eは、環状に配設される。この複数の筒状体23の配列は、これに限定されるものでなく、例えば5本の筒状体23a、23b、23c、23d、23eは、図11に示すように、1本の筒状体23eを中心とした周囲を囲むように4本の筒状体23a、23b、23c、23dを環状に配列させてもよい。この場合、中心の筒状体23eの内径の太さを、他の筒状体23a、23b、23c、23dの内径の太さよりも若干、太くすることにより、頭髪に当たるときの風量、温度をより均一にすることが可能となりより好ましい結果が得られる。

【0057】
また、上述した複数の実施形態では、筒状体23の数は、3本、4本、5本の場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものでなく、2本または6本以上でもよいものである。この場合、筒状体23の配列を二重にして、例えば、外側に筒状体23を6本、内側に筒状体23を3本のようにしてもよい。

【0058】
更に、上述した複数の実施形態では、マルチノズル5、50、500は、ヘアードライヤとして二重構造式ヘアードライヤ3に取り付けられている場合について説明したが、これに限定されるものでなく、二重構造でないヘアードライヤにも適用し得るものである。

【0059】
以上、複数の実施形態を挙げて本発明を説明したが、各実施形態は例示であり、特許請求の範囲に記載される発明の範囲は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更できるものである。
【符号の説明】
【0060】
1 ヘアードライヤ
3 二重構造式ヘアードライヤ
3a 噴出開口部
3b 空気吸引開口部
5 マルチノズル
7 ファン
9 ネット
11 温風通過筒状部
13 外気通過筒状部
15 ヒータ
17 ハンドル部
21 外環筒体
23、23a、23b、23c、23d、23e 筒状体
24 自由端部
25 基端部
27 隙間閉塞部
29 周縁閉塞壁
31 風量調整部
33 隙間
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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