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明細書 :鉗子制御装置、鉗子制御方法と鉗子部材及び挟持力可変鉗子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5388033号 (P5388033)
登録日 平成25年10月18日(2013.10.18)
発行日 平成26年1月15日(2014.1.15)
発明の名称または考案の名称 鉗子制御装置、鉗子制御方法と鉗子部材及び挟持力可変鉗子
国際特許分類 A61B  17/28        (2006.01)
FI A61B 17/28
請求項の数または発明の数 9
全頁数 23
出願番号 特願2009-119331 (P2009-119331)
出願日 平成21年5月15日(2009.5.15)
審査請求日 平成24年5月7日(2012.5.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】802000031
【氏名又は名称】公益財団法人北九州産業学術推進機構
【識別番号】506087705
【氏名又は名称】学校法人産業医科大学
発明者または考案者 【氏名】山本 郁夫
【氏名】稲川 直裕
【氏名】中村 友一
【氏名】木原 由光
【氏名】水井 雅彦
【氏名】山口 幸二
【氏名】柴尾 和徳
【氏名】永田 淳
個別代理人の代理人 【識別番号】100095603、【弁理士】、【氏名又は名称】榎本 一郎
特許請求の範囲 【請求項1】
時間的に変動する患者の血圧、脈拍、体温又は溶存酸素の変動データに基づいて、対象物として前記患者の臓器又は器官を挟持する鉗子部材の開閉を制御する鉗子制御装置であって、
前記変動データを取得する変動データ監視装置と、前記鉗子部材を開閉する開閉駆動機構と、前記変動データ監視装置で取得した前記変動データに基づいて前記開閉駆動機構で前記鉗子部材の開閉を制御するコンピュータ装置と、を有し、
前記コンピュータ装置の中央処理装置が、前記鉗子部材の標準開度を設定する標準開度設定手段と、前記鉗子部材の開度を調整するためのしきい値を設定するしきい値設定手段と、前記変動データ監視装置で取得した前記変動データを読込む変動データ読込み手段と、前記変動データの変動量を算出する変動量算出手段と、前記変動量が前記しきい値を超えたか否かを判定する変動量判定手段と、前記標準開度設定手段で前記鉗子部材の標準開度が設定された時や、前記変動量判定手段で前記変動量が前記しきい値を超えたと判定した時に、前記開閉駆動機構のモータを前記標準開度や前記変動量に基づいて正転又は逆転させるモータ制御手段と、前記モータの回転量を積算するモータ回転量積算手段と、を有することを特徴とする鉗子制御装置。
【請求項2】
前記中央処理装置が、前記コンピュータ装置の表示装置に、前記変動データの変化を表示させる変動データ表示手段と、前記モータの回転時のトルクを表示させるモータトルク表示手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載の鉗子制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鉗子制御装置における鉗子制御方法であって、
前記鉗子部材の標準開度を設定する標準開度設定ステップと、前記標準開度に基づいて前記鉗子部材の閉止指示を行って前記開閉駆動機構の前記モータを回転させる鉗子部材閉止指示ステップと、前記鉗子部材の開度を調整するためのしきい値を設定するしきい値設定ステップと、前記変動データ監視装置で取得した前記変動データを読込む変動データ読込みステップと、前記変動データの変動量を算出する変動量算出ステップと、前記変動量が前記しきい値を超えたか否かを判定する変動量判定ステップと、前記変動量判定ステップで前記変動量が前記しきい値を超えたと判定した時に、前記開閉駆動機構の前記モータを前記変動量に基づいて正転又は逆転させるモータ制御ステップと、前記モータの回転量を積算するモータ回転量積算ステップと、を有することを特徴とする鉗子制御方法。
【請求項4】
前記コンピュータ装置の前記表示装置に、前記変動データの変化を表示させる変動データ表示ステップと、前記モータの回転時のトルクを表示させるモータトルク表示ステップと、を有することを特徴とする請求項3に記載の鉗子制御方法。
【請求項5】
一対の挟持部が開閉自在に対向配置され、請求項1又は2に記載の鉗子制御装置で開閉制御される鉗子部材であって、
少なくとも一方の前記挟持部が、外側に凸に湾曲した外側部材と、前記外側部材の内周壁の長さより長く、前記外側部材の先端部から内周壁に沿って前記外側部材の後端部に至るまでの距離よりも短く形成された板状の内側部材と、を有し、前記内側部材の一端が前記外側部材の前記先端部で固定され他端が移動端として前記外側部材の前記後端部側へ渡設されたことを特徴とする鉗子部材。
【請求項6】
前記外側部材と前記内側部材の間に形成された隙間に前記外側部材よりも大きな曲率を有する一段及至複数段のアーチ型の弾性支持部材を有し、前記アーチ型の弾性支持部材は両端部のうち一端が前記外側部材に固定され、他端は前記内側部材の内面に摺動自在に当接されていることを特徴とする請求項5に記載の鉗子部材。
【請求項7】
前記外側部材と前記内側部材の間に形成された隙間に波形、円形、楕円形、多角形の内いずれか1の形状に形成された弾性支持部材が配設されていることを特徴とする請求項5に記載の鉗子部材。
【請求項8】
他方の挟持部が、平板状又は対向面が緩やかに外側に凸に湾曲して形成されていることを特徴とする請求項5及至7の内いずれか1項に記載の鉗子部材。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の鉗子制御装置と、前記鉗子制御装置で開閉制御される請求項5乃至8の内いずれか1項に記載の鉗子部材と、を有することを特徴とする挟持力可変鉗子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、手術時の患者の生体データ等の時間的に変動する変動データに応じて鉗子部材の挟持力を調整することが可能な鉗子制御装置と鉗子制御方法、対象物の形状や状態に応じて挟持部が変形可能な鉗子部材及び上記変動データに基づいて鉗子部材を開閉し、臓器等の対象物を最適な挟持力で確実に挟持できる挟持力可変鉗子に関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術で使用される一般的な鉗子は、柄部の一端に組織を挟持する為の挟持部を有し、且つ柄部の他端に指を挿入する為の把持部を備えた1対の鉗子部材が交差され交差部の連結軸により相互に開閉可能に連結され、把持部の開閉により挟持部が開閉される。
例えば、(特許文献1)には、狭い肛門管内部での痔核を的確に挟持し、手術時の出血を最小限に押さえ、結紮時の煩雑さを容易にする鉗子が開示されている。
また、(特許文献2)には、腹腔や胸腔における内視鏡下手術において受けるハサミ構造を有する手術器具類の決定的な制限を解消し、開腹・開胸における直視下手術操作と変わらない利便性・安全性を提供するとともに、患者および医療行政の負担の軽減という経済性をも提供する鉗子が開示されており、把持部の近傍に互いに係合する複数の突起部(ラチェット機構)を設け、挟持部の開閉角度(開度)を多段階に固定することも知られている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平9-294746号
【特許文献2】特開2004-209009号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術は以下のような課題を有していた。
(1)一般的な鉗子は、全体がステンレスやチタン等の高剛性の金属で製造されており、挟持部で腸や血管等の対象物を挟持する際に、挟持部は変形することなく、そのままの形状で対象物を押し潰すように掴むため、対象物が必要以上に圧迫され、患者に負担をかけるという課題を有していた。
(2)また、挟持部を柔軟に形成すると、対象物を必要以上に圧迫することはなくなるが、挟持力が低下し、対象物を確実に掴むことができず、挟持位置がずれたり、鉗子が脱落したりすることがあり、鉗子として十分な機能を発揮することができず、固定安定性、使用性に欠けるという課題を有していた。
(3)対象物の寸法や形状、用途等に応じて、挟持部を湾曲させたり、先端部の形状を変更したりすることもできるが、多種多様な鉗子を用意しなければならず、取扱いが煩雑になり、汎用性に欠けるという課題を有していた。
(4)(特許文献2)のようなラチェット機構を有する鉗子では、段階的に挟持部の開度を調整して保持することができるが、その突起部の間隔と数で、選択できる角度や刻み幅が固定されており、角度を微調整することができず、挟持力を自在に選択することは困難で、汎用性に欠けるという課題を有していた。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、手術時の患者の生体データ等の変動データに基づいて、臓器等の対象物を挟持する鉗子部材の開閉角度や間隔を自在に調整することができ、最適な挟持力で確実に対象物を挟持して、患者や医師の負担を大幅に軽減することができる固定安定性、省力性、汎用性に優れた鉗子制御装置と鉗子制御方法を提供することを目的とする。
また、挟持部が弾性変形することにより、簡便に挟持力を調整することができ、臓器等の対象物を最適な挟持力で確実に挟持して、患者や医師の負担を大幅に軽減することができる固定安定性、省力性、汎用性に優れた鉗子部材を提供することを目的とする。
さらに、挟持部が弾性変形可能な鉗子部材を用いて、時間的に変動する変動データに基づいて鉗子部材の開閉角度や間隔を変更するだけで、簡便に挟持力を調整することができ、臓器等の対象物を最適な挟持力で確実に挟持して、患者や医師の負担を大幅に軽減することができる固定安定性、省力性、汎用性に優れた挟持力可変鉗子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の鉗子制御装置と鉗子制御方法及び挟持力可変鉗子
は、以下の構成を有している。
請求項1に記載の鉗子制御装置は、時間的に変動する患者の血圧、脈拍、体温又は溶存酸素の変動データに基づいて、対象物として前記患者の臓器又は器官を挟持する鉗子部材の開閉を制御する鉗子制御装置であって、前記変動データを取得する変動データ監視装置と、前記鉗子部材を開閉する開閉駆動機構と、前記変動データ監視装置で取得した前記変動データに基づいて前記開閉駆動機構で前記鉗子部材の開閉を制御するコンピュータ装置と、を有し、前記コンピュータ装置の中央処理装置が、前記鉗子部材の標準開度を設定する標準開度設定手段と、前記鉗子部材の開度を調整するためのしきい値を設定するしきい値設定手段と、前記変動データ監視装置で取得した前記変動データを読込む変動データ読込み手段と、前記変動データの変動量を算出する変動量算出手段と、前記変動量が前記しきい値を超えたか否かを判定する変動量判定手段と、前記標準開度設定手段で前記鉗子部材の標準開度が設定された時や、前記変動量判定手段で前記変動量が前記しきい値を超えたと判定した時に、前記開閉駆動機構のモータを前記標準開度や前記変動量に基づいて正転又は逆転させるモータ制御手段と、前記モータの回転量を積算するモータ回転量積算手段と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)変動データを取得する変動データ監視装置と、鉗子部材を開閉する開閉駆動機構と、変動データ監視装置で取得した変動データに基づいて開閉駆動機構で鉗子部材の開閉を制御するコンピュータ装置と、を有するので、手術時に変動する患者の血圧,脈拍,体温,溶存酸素等の様々な変動データ(生体データ)を基に、鉗子部材の開閉角度や間隔(これらを併せて開度という)を最適に調整し、鉗子部材で挟持される臓器等の対象物への負荷を最低限に抑えて、患者の負担を大幅に軽減することができ、省力性、汎用性に優れる。
(2)コンピュータ装置の中央処理装置が、鉗子部材の標準開度を設定する標準開度設定手段を有するので、手術開始時に、十分な挟持力で臓器などの対象物を確実に挟持することができ、固定の確実性に優れる。
(3)鉗子部材の開度を調整するためのしきい値を設定するしきい値設定手段を有するので、患者の状態や手術の内容、挟持する対象物の違い等に応じて最適なしきい値を設定することができ、患者や医師の負担を大幅に軽減することができ、省力性、汎用性に優れる。
(4)変動データ監視装置で取得した変動データを読込む変動データ読込み手段と、変動データの変動量を算出する変動量算出手段を有するので、時間と共に変化する変動データを確実に取得して患者の状態を正確に把握することができ、鉗子制御の信頼性に優れる。
(5)変動データの変動量がしきい値を超えたか否かを判定する変動量判定手段と、変動量判定手段で変動量がしきい値を超えたと判定した時に、開閉駆動機構のモータを変動量に基づいて正転又は逆転させるモータ制御手段を有するので、変動データの変動量に基づいて、開閉駆動機構のモータの回転量を確実に制御し、鉗子部材の開度を常に最適に調整して、患者や医師の負担を大幅に軽減することができ、省力性、汎用性、使用性に優れる。
(6)モータの回転量を積算するモータ回転量積算手段を有するので、変動データの変動量に基づいて、モータの正転や逆転を繰り返し行っても、鉗子部材の開度をずれることなく確実に制御することができ、鉗子制御の確実性、信頼性に優れる。
【0007】
ここで、変動データ監視装置は、時間と共に変化する患者の血圧,脈拍,体温,溶存酸素等の様々な変動データを取得し、そのデータをコンピュータ装置に送信する。鉗子部材は、一対の挟持部が開閉自在に対向配置されていればよく、一対の挟持部が相対的に回動自在或いは間隔調整医自在に保持されたものが好適に用いられる。また、開閉駆動機構は、鉗子部材の構造に応じて挟持部の開閉角度や間隔(これらを併せて開度という)を変更できるものであればよい。例えば、正逆回転可能なステッピングモータに歯車やリンク機構などを組み合わせて一対の挟持部を相対的に回動させるようにしてもよいし、ラックとピニオン等を組み合わせてモータの回転運動を直線運動に変換して、一対の挟持部を相対的に移動させるようにしてもよい。
コンピュータ装置は、キーボードやマウス等の入力装置を備えており、使用者が必要なデータを入力したり、各部を制御するための指示を与えたりできる。
鉗子部材で挟持する臓器等の対象物の種類や挟持する位置、その時の患者の血圧,脈拍,体温,溶存酸素等に応じて、最適な挟持力(=鉗子部材の開度)は変化するので、予め、対象物の種類や手術内容、血圧,脈拍,体温,溶存酸素等のデータと、それらに対応した最適な挟持力(=鉗子部材の開度)との関係を求めておくことが好ましい。それらのデータに基づいて、標準開度(開度を制御する際の基準となる最初に対象物を挟持する時の開度)やしきい値(変動データがその基準値からどれだけ変動したら開度の調整を行うかを判断するための判定値)を入力装置から直接入力し、標準開度設定手段やしきい値設定手段から、モータ制御手段に必要なモータの回転量を指示することができる。また、血圧,脈拍,体温,溶存酸素等の変動データと最適な挟持力(=鉗子部材の開度)の関係をテーブル(データベース)としてコンピュータ装置のROMに記憶させておき、入力装置から入力される患者の年齢や予め測定された平常時の血圧,脈拍,体温,溶存酸素等の基礎データを基に、標準開度設定手段やしきい値設定手段がテーブルを参照して、標準開度やしきい値を設定し、モータ制御手段に必要なモータの回転量を指示するようにしてもよい。
【0008】
変動データ読込み手段は、変動データ監視装置から送られる変動データを読込み、コンピュータ装置のRAMに随時記憶する。変動量算出手段は、手術開始時の変動データと、随時送られてくる変動データから、その変動量を算出する。
モータの回転量と鉗子部材の挟持力(=開度)の関係は予め検定を行い、そのデータをテーブル(データベース)としてコンピュータ装置のROMに記憶させておく。モータ制御手段は、標準開度設定手段やしきい値設定手段からの指示に従って、鉗子部材で必要な挟持力(=開度)に対応したモータの回転量を選択又は算出し、必要なだけモータを正転又は逆転させる。モータ回転量積算手段は、モータ制御手段から指示されるモータの回転量を積算する。例えば、正転方向の回転量を加算し、逆転方向の回転量を減算する(或いはその逆でもよい)ことにより、基準位置からのモータの回転量を把握し、正確に鉗子部材の開度を制御できる。
尚、鉗子部材に歪みゲージ等の圧力センサを配設し、挟持部の圧力を監視することにより、対象物を確実に把持できているかどうかを簡便に確認することができ、医師の負担を軽減できる。また、圧力センサで検出した挟持力を基にモータの回転量を調整して、必要な把持力を発生させることもでき、過不足のない最適な把持力で確実に対象物を把持することができ、把持力調整の信頼性、確実性に優れる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鉗子制御装置であって、前記中央処理装置が、前記コンピュータ装置の表示装置に、前記変動データの変化を表示させる変動データ表示手段と、前記モータの回転時のトルクを表示させるモータトルク表示手段と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)中央処理装置が、コンピュータ装置の表示装置に、変動データの変化を表示させる変動データ表示手段と、モータの回転時のトルクを表示させるモータトルク表示手段を有するので、目視で簡便に変動データの変化やモータのトルクを確認することができ、患者の容体やモータの動作に異常が見られる場合には、直ちにモータを停止させたり、モータを逆回転させて鉗子部材を開放させたりすることができ、鉗子部材の開閉制御の安全性に優れる。
【0010】
ここで、変動データ表示手段やモータトルク表示手段は、各種の変動データやモータトルクをグラフで表示するものが、視認性に優れ、好適に用いられる。尚、変動データ表示手段やモータトルク表示手段は、予め設定したしきい値を超えた時に、点滅表示や警告音などによって異常が発生したことを報知するようにすることができる。使用者が異常を確認した上で停止指示を出して、モータの停止や逆転を行うようにしてもよいし、点滅表示や警告音などが所定時間継続した時に、強制的にモータの停止や逆転を指示する命令を出すようにしてもよい。
【0011】
請求項3に記載の鉗子制御方法は、請求項1又は2に記載の鉗子制御装置における鉗子制御方法であって、前記鉗子部材の標準開度を設定する標準開度設定ステップと、前記標準開度に基づいて前記鉗子部材の閉止指示を行って前記開閉駆動機構の前記モータを回転させる鉗子部材閉止指示ステップと、前記鉗子部材の開度を調整するためのしきい値を設定するしきい値設定ステップと、前記変動データ監視装置で取得した前記変動データを読込む変動データ読込みステップと、前記変動データの変動量を算出する変動量算出ステップと、前記変動量が前記しきい値を超えたか否かを判定する変動量判定ステップと、前記変動量判定ステップで前記変動量が前記しきい値を超えたと判定した時に、前記開閉駆動機構の前記モータを前記変動量に基づいて正転又は逆転させるモータ制御ステップと、前記モータの回転量を積算するモータ回転量積算ステップと、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)鉗子部材の標準開度を設定する標準開度設定ステップと、標準開度に基づいて鉗子部材の閉止指示を行って開閉駆動機構のモータを回転させる鉗子部材閉止指示ステップを有するので、手術開始時に、十分な挟持力で臓器などの対象物を確実に挟持することができ、固定の確実性に優れる。
(2)鉗子部材の開度を調整するためのしきい値を設定するしきい値設定ステップを有するので、患者の状態や手術の内容、挟持する対象物の違い等に応じて最適なしきい値を設定することができ、患者や医師の負担を大幅に軽減することができ、省力性、汎用性に優れる。
(3)変動データ監視装置で取得した変動データを読込む変動データ読込みステップと、変動データの変動量を算出する変動量算出ステップを有するので、時間と共に変化する変動データを確実に取得して患者の状態を正確に把握することができ、鉗子制御の信頼性に優れる。
(4)変動データの変動量がしきい値を超えたか否かを判定する変動量判定ステップと、変動量判定ステップで変動量がしきい値を超えたと判定した時に、開閉駆動機構のモータを変動量に基づいて正転又は逆転させるモータ制御ステップを有するので、変動データの変動量に基づいて、開閉駆動機構のモータの回転量を確実に制御し、鉗子部材の開度を常に最適に調整して、患者や医師の負担を大幅に軽減することができ、省力性、汎用性、使用性に優れる。
(5)モータの回転量を積算するモータ回転量積算ステップを有するので、変動データの変動量に基づいて、モータの正転や逆転を繰り返し行っても、鉗子部材の開閉角度をずれることなく確実に制御することができ、鉗子制御の確実性、信頼性に優れる。
【0012】
ここで、標準開度設定ステップやしきい値設定ステップでは、入力装置から直接入力される標準開度やしきい値を記憶し、それらの値に基づいて、モータ制御ステップで必要なモータの回転量を指示することができる。また、血圧,脈拍,体温,溶存酸素等の変動データと最適な挟持力(=鉗子部材の開度)の関係をテーブル(データベース)としてコンピュータ装置のROMに記憶させておき、入力装置から入力される患者の年齢や予め測定された平常時の血圧,脈拍,体温,溶存酸素等の基礎データを基に、標準開度設定ステップやしきい値設定ステップにおいて前述のテーブルを参照して、標準開度やしきい値を設定し、モータ制御ステップにおいて必要なモータの回転量を指示するようにしてもよい。
変動データ読込みステップは、変動データ監視装置から送られる変動データを読込み、コンピュータ装置のRAMに随時記憶する。変動量算出ステップは、手術開始時の変動データ(初期値)と、随時送られてくる変動データから、その変動量を算出する。
モータの回転量と鉗子部材の挟持力(=開度)の関係は予め検定を行い、そのデータをテーブル(データベース)としてコンピュータ装置のROMに記憶させておく。モータ制御ステップは、標準開度設定ステップやしきい値設定ステップからの指示に従って、鉗子部材で必要な挟持力(=開度)に対応したモータの回転量を選択又は算出し、必要なだけモータを正転又は逆転させる。モータ回転量積算ステップは、モータ制御ステップで指示されるモータの回転量(絶対値)を積算する。例えば、正転方向の回転量を加算し、逆転方向の回転量を減算する(或いはその逆でもよい)ことにより、モータが回転した絶対量を把握し、正確に鉗子部材の開度を制御できる。
【0013】
請求項4に記載の鉗子制御方法は、請求項3に記載の鉗子制御方法であって、前記コンピュータ装置の前記表示装置に、前記変動データの変化を表示させる変動データ表示ステップと、前記モータの回転時のトルクを表示させるモータトルク表示ステップと、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項3の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)コンピュータ装置の表示装置に、変動データの変化を表示させる変動データ表示ステップと、モータの回転時のトルクを表示させるモータトルク表示ステップを有するので、目視で簡便に変動データの変化やモータのトルクを確認することができ、患者の容体やモータの動作に異常が見られる場合には、直ちにモータを停止させたり、モータを逆回転させて鉗子部材を開放させたりすることができ、鉗子部材の開閉制御の安全性に優れる。
【0014】
ここで、変動データ表示ステップやモータトルク表示ステップでは、各種の変動データやモータトルクをグラフで表示するものが、視認性に優れ、好適に用いられる。尚、変動データ表示ステップやモータトルク表示ステップでは、予め設定したしきい値を超えた時に、点滅表示や警告音などによって異常が発生したことを報知するようにすることができる。使用者が異常を確認した上で停止指示を出して、モータの停止や逆転を行うようにしてもよいし、点滅表示や警告音などが所定時間継続した時に、強制的にモータの停止や逆転などを指示する命令を出すようにしてもよい。
【0015】
請求項5に記載の鉗子部材は、一対の挟持部が開閉自在に対向配置され、請求項1又は2に記載の鉗子制御装置で開閉制御される鉗子部材であって、少なくとも一方の前記挟持部が、外側に凸に湾曲した外側部材と、前記外側部材の内周壁の長さより長く、前記外側部材の先端部から内周壁に沿って前記外側部材の後端部に至るまでの距離よりも短く形成された板状の内側部材と、を有し、前記内側部材の一端が前記外側部材の前記先端部で固定され他端が移動端として前記外側部材の前記後端部側へ渡設された構成を有している。
この構成により、以下の作用を有する。
(1)一対の挟持部の少なくとも一方が、外側に凸に湾曲した外側部材と、一端が外側部材の先端部で固定され他端が移動端として外側部材の後端部側へ渡設された板状の内側部材を有するので、膵臓や腸等の臓器、血管等の器官或いは各種器具等の対象物を挟持部で挟持する際に、内側部材が対象物に当接すると、内側部材の移動端が先端(固定端)側に移動することにより、内側部材の中央部が対象物の形状(外形)に沿うように、外側部材側(外側)に弾性変形することができ、対象物を過度に圧迫することなく、確実に掴んだり牽引したりするために挟持することができ、医師の負担を軽減でき、使用性に優れる。
(2)内側部材の後端部が移動端であることにより、弾性曲げが可能で、腸等の対象物の形状や状態に追随して変形することができるので、対象物を柔軟に包み込むように挟持することができ、対象物への負荷を最低限に抑えて、患者の負担を大幅に軽減することができ、信頼性、使用性に優れる。
(3)内側部材が、外側部材の内周壁の長さより長く、外側部材の先端部から内周壁に沿って外側部材の後端部に至るまでの距離よりも短く形成されているので、内側部材が最大に変形しても、移動端が外側部材と内側部材の間に形成された隙間に入り込むことがなく、挟持部を開放して対象物を離した時に、移動端が確実かつ速やかに外側部材の後端部の位置まで戻って、対象物を挟持可能な状態に復帰することができ、動作の確実性、安定性に優れる。
(4)弾性曲げが可能で外側部材と先端で連結された内側部材は、挟持部が閉じた状態で先端同士が当接して針や糸等の小物も確実に挟持できるだけでなく、中央部では微妙な挟持圧で対象物を挟持することができ、汎用性に優れる。
(5)挟持部が板状の外側部材と内側部材からなる簡素な構成で、部品点数が少なく、量産性に優れると共に、細かな凹凸や隙間などがなく、容易に洗浄や消毒を行うことができ、メンテナンス性、清潔性に優れる。
【0016】
ここで、鉗子部材は、ステンレス、チタン又はチタン合金、ポリアミド等のエンジニアリング樹脂等で作製される。特にチタン又はチタン合金製の鉗子部材は耐蝕性に優れると共に、生体適合性に優れており、好適に用いられる。
挟持部の内側部材は断面が平板状、棒状、液板(波板)状に形成されたものや挟持面が凹凸状に形成されたもの等が用いられる。厚みとしては材質にもよるが0.05mm~1mmに形成されるのが好ましく、幅は2mm~10mmに形成されるのが好ましい。
外側部材の先端部と内側部材の一端部の固定には、スポット溶接や接着剤による接着、螺着、挿着、嵌着、かしめ等の手段を用いることができる。尚、内側部材の固定を着脱自在とした場合、内側部材が塑性変形した場合の取り換えや消毒作業の作業性を向上できる。
内側部材は、弾性変形可能な板バネ状に形成され、その長さは、外側部材の内周壁の長さよりも長く形成される。対象物を挟持した際に、内側部材の移動端が内周壁の円弧の内側に入り込んで引っ掛かりなどが発生することを防止するためである。
他方の挟持部の構造は、対象物の種類や形状、用途などに応じて適宜、選択することができるが、例えば、一方の挟持部と同様の外側部材と内側部材を有する構造でもよいし、単なる板状に形成してもよい。他方の挟持部を板状に形成する場合、一方の挟持部の内側部材よりも高剛性にすると、対象物を挟持する際に、他方の挟持部が外側に変形して逃げることがなく、対象物を確実に挟持することができる。
また、挟持部間の対向面は、挟持部横断面が、一対の噛合する凹凸状に形成してもよい。特に、挟持面が長手方向と平行な縦溝を有する場合は、縦滑りし易く、横滑りが起こり難いため臓器を挟持し易い。また、対象物の形状や硬さ等の性質に応じて、横溝や格子溝等を形成してもよいし、挟持面を湾曲させたり屈曲させたりして変形させてもよい。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の鉗子部材であって、前記外側部材と前記内側部材の間に形成された隙間に前記外側部材よりも大きな曲率を有する一段及至複数段のアーチ型の弾性支持部材を有し、前記アーチ型の弾性支持部材は両端部のうち一端が前記外側部材に固定され、他端は前記内側部材の内面に摺動自在に当接されている構成を有している。
この構成により、請求項5の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)外側部材と内側部材の間に形成された隙間に外側部材よりも大きな曲率を有する一段及至複数段のアーチ型の弾性支持部材が配設されているので、挟持部を開閉させて臓器等の対象物を挟持する際に、対象物に当接した内側部材が、外側部材との間で弾性支持部材を潰すように変形させながら、対象物の形状に沿うように弾性変形するため、対象物を必要以上に圧迫することなく、柔軟に包み込むように挟持することができ、対象物への負荷を最低限に抑えて、患者の負担を大幅に軽減することができ、信頼性に優れる。
(2)内側部材が対象物に当接して弾性変形する際に、弾性支持部材の圧縮によって生じる反力で内側部材を支持することができ、弾性支持部材の弾力により、適度な挟持力で対象物を確実に挟持することができ、患者や医師の負担を大幅に軽減することができ、省力性、汎用性、使用性に優れる。
(3)外側部材と内側部材の間に弾性支持部材が配設されているので、挟持部の開度に応じて無段階で挟持力を調整することができ、挟持力の過不足が発生することがなく、最適な挟持力で対象物を安全かつ確実に挟持することができ、固定の確実性、安定性、汎用性に優れる。
(4)アーチ型の弾性支持部材の弾性率や段数を変更することにより挟持圧力分布の調整を行うことが可能で、汎用性、設計自在性に優れる。
(5)アーチ型の弾性支持部材の両端部のうちいずれか一方は固定せず、内側部材の内面に沿って摺動自在な移動端とすることにより、弾性支持部材は外側部材に押圧力を伝えるが、モーメントは伝えないことになり、内側部材が対象物の形状や状態に応じた変形を行うことができ、形状自在性に優れる。
(6)アーチ型の弾性支持部材は板材を湾曲してなる簡素な構成であり、容易に製造可能で、組立作業性に優れる。
(7)弾性支持部材の他端が移動端なので、患者の血圧等の状況の変化に応じて、挟持部の開度を変化させることにより、迅速に微妙な挟持圧の調整を行うことができ、汎用性、動作の安定性、応答性に優れる。
【0018】
ここで、アーチ型の弾性支持部材の材質は、鉗子部と同様のステンレス、チタン又はチタン合金、ポリアミド等のエンジニアリング樹脂等が好適に用いられる。特にチタン又はチタン合金製の弾性支持部材は耐蝕性に優れており、好ましい。
アーチ型の弾性支持部材の厚みとしては材質にもよるが0.05mm~1mmに形成されるのが好ましい。幅は内側部材と同じか、やや小さく形成される。
アーチ型の弾性支持部材を外側部材よりも大きな曲率を有する円弧状に形成し、その一端を外側部材に固定し、移動端(他端)を内側部材の内面に当接させることにより、内側部材の変形に伴って移動端を内側部材の内面に沿って摺動させながら外側部材と内側部材との間で圧縮する(押し広げる)ように変形させることができる。
アーチ型の弾性支持部材の一端と外側部材との固定はスポット溶接や接着剤による接着、螺着、挿着、嵌着、かしめ等の手段を用いることができる。アーチ型の弾性支持部材は、外側部材の後端部側の一端を固定し、他端を移動端としてもよいし、先端部側の一端を固定し、他端を移動端としてもよい。尚、弾性支持部材の移動端と、近接する外側部材の先端部又は後端部との間には、移動端が十分に摺動可能な間隔が設けられる。複数段のアーチ型の弾性支持部材を有する際は、曲率の大きな弾性支持部材が内側部材側、曲率の小さな弾性支持部材が外側部材側に位置するように重ねて配置し、各々の移動端は均等な間隔に配置することが好ましい。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の鉗子部材であって、前記外側部材と前記内側部材の間に形成された隙間に波形、円形、楕円形、多角形の内いずれか1の形状に形成された弾性支持部材が配設されている構成を有している。
この構成により、請求項5及び請求項6の(2),(3)と同様の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)外側部材と内側部材の間に形成された隙間に波形、円形、楕円形、多角形の内いずれか1の形状に形成された弾性支持部材が配設されているので、挟持部を開閉させて臓器等の対象物を挟持する際に、対象物に当接した内側部材が、外側部材との間で弾性支持部材を潰すように変形させながら、対象物の形状に沿うように弾性変形するため、対象物を必要以上に圧迫することなく、柔軟に包み込むように挟持することができ、対象物への負荷を最低限に抑えて、患者の負担を大幅に軽減することができ、信頼性に優れる。
(2)波形、円形、楕円形、多角形に形成された弾性支持部材は、外側部材と内側部材との隙間に嵌着させて保持することができ、着脱が容易で、組立及び分解作業性に優れ、簡便に取り外して洗浄・消毒を行うことや交換を行うことが可能であり、衛生的で安全性、メンテナンス性に優れる。
(3)弾性支持部材の弾性率、数及び種類を変更することにより、容易に挟持圧力分布の調整を行うことが可能で、患者の血圧等の状況の変化に応じて、挟持部の開度を変化させることにより、迅速に微妙な挟持圧の調整を行うことができ、汎用性、動作の安定性、応答性に優れる。
(4)弾性支持部材は板材を波形、円形、楕円形、多角形等の簡単な形に加工した構成であり、容易に製造可能で、組立作業性に優れる。
(5)大きさや高さの異なる弾性支持部材に取り換えるだけで、対象物の形状や状況に即応でき、汎用性に優れる。例えば、円形の場合、大中小の3種類の直径を使い分けることにより達成できる。
【0020】
ここで、弾性支持部材は、内側部材の変形に伴って弾性変形するものであればよい。弾性支持部材を波形、円形、楕円形、多角形等に形成し、外側部材と内側部材との間に挟持することにより、内側部材の変形に伴って弾性支持部材が圧縮されるようにすることができる。この弾性支持部材と外側部材と内側部材の各当接面には、弾性支持部材が手術中に外れないように係止する凹凸部等を形成した係止手段や孔部と突部のような嵌合手段が各々に形成されるのが好ましい。また、弾性支持部材の変形を拘束しない範囲で、外側部材又は内側部材との接点を溶接、接着などの手段で固定してもよい。尚、弾性支持部材を波形に形成する場合には、正弦曲線状や余弦曲線状などの形状が好適に用いられる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項5及至7の内いずれか1項に記載の鉗子部材であって、他方の挟持部が、平板状又は対向面が緩やかに外側に凸に湾曲して形成されている構成を有している。
この構成により、請求項5及至7の内いずれか1項の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)対向する挟持部のいずれか一方を平板状に形成した場合、臓器と臓器の間にある狭い隙間に簡単に挿入することができ作業性に優れる。
(2)対向する挟持部のいずれか一方を緩やかに外側に凸に湾曲して形成した場合、挟持部の中間で径の太い対象物も挟持し易く、かつ挟持部の先端側から対象物が抜けるのを防ぐことができ、固定の確実性、安定性に優れる。
【0022】
請求項9に記載の挟持力可変鉗子は、請求項1又は2に記載の鉗子制御装置と、前記鉗子制御装置で開閉制御される請求項5乃至8の内いずれか1項に記載の鉗子部材と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下の作用を有する。
(1)鉗子制御装置で開閉制御される鉗子部材を有するので、鉗子制御装置により、時間的に変動する変動データを基に、鉗子部材の開度を最適に調整し、鉗子部材で挟持される臓器等の対象物への負荷を最低限に抑えて、患者の負担を大幅に軽減することができ、省力性、汎用性に優れる。
(2)鉗子部材の一対の挟持部の少なくとも一方が、外側に凸に湾曲した外側部材と、一端が外側部材の先端部で固定され他端が移動端として外側部材の後端部側へ渡設された板状の内側部材を有するので、膵臓や腸等の臓器、血管等の器官等の対象物を挟持部で挟持する際に、内側部材が対象物に当接すると、内側部材の移動端が先端(固定端)側に移動することにより、内側部材の中央部が対象物の形状(外形)に沿うように、外側部材側(外側)に弾性変形することができ、対象物を過度に圧迫することなく、確実に掴んだり牽引したりするために挟持することができ、医師の負担を軽減でき、使用性、手術の作業性に優れる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)変動データ監視装置で変動データを取得することにより、時間的に変動する変動データを基に、開閉駆動機構で鉗子部材の開度を最適に調整し、鉗子部材で挟持される臓器等の対象物への負荷を最低限に抑えて、患者の負担を大幅に軽減することができる省力性、汎用性に優れた鉗子制御装置を提供することができる。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)表示装置により、目視で簡便に変動データの変化やモータのトルクを確認することができ、患者の容体やモータの動作に異常が見られる場合には、直ちにモータを停止させたり、モータを逆回転させて鉗子部材を開放させたりすることができる鉗子部材の開閉制御の安全性に優れた鉗子制御装置を提供することができる。
【0025】
請求項3に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)変動データ監視装置で取得した変動データの時間変化に基づいて、変動データの変動量を算出することにより、患者の状態を正確に把握することができ、開閉駆動機構を制御して鉗子部材の開度を常に最適に調整して、患者や医師の負担を大幅に軽減することができる省力性、汎用性、使用性、鉗子制御の信頼性に優れた鉗子制御方法を提供することができる。
【0026】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)変動データやモータトルクを表示装置に表示することにより、それらの変化を目視で簡便に確認することができ、患者の容体やモータの動作に異常が見られる場合には、直ちにモータを停止させたり、モータを逆回転させて鉗子部材を開放させたりすることができる鉗子部材の開閉制御の安全性に優れた鉗子制御方法を提供することができる。
【0027】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)対となる挟持部は、先端で連結され外側に凸に湾曲して形成された外側部材及び弾性曲げが可能な内側部材と、外側部材の優弧内と内側部材との間に隙間を有し、対象物の形状や状態に従って内側部材を変形させながら挟持し、挟持部の先端から対象物が外れたり、抜けたり、滑ったりすることがなく手術作業性に優れ、外側部材と板状の内側部材からなる簡素な構造であるため製造が容易で、かつ容易に洗浄・消毒することができる衛生的で取扱い性に優れた鉗子部材を提供することができる。
【0028】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)挟持部は、隙間に配置された一段及至複数段のアーチ型の弾性支持部材を有し、臓器等の種類に応じて微妙な挟持圧力の調整が可能で、しかも対象物の種類や形状、状態に応じてアーチ型の弾性支持部材の弾性率や段数を選択することで、少ない数で多種多様な対象物に対応することができる汎用性、機能性に優れた鉗子部材を提供することができる。
【0029】
請求項7に記載の発明によれば、請求項5の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)波形、円形、楕円形、多角形の内いずれか1の形状に形成された弾性支持部材は、隙間に嵌合し固定するだけで、簡単に着脱でき、手術中でも挟持圧力の調整が可能で、取扱い性、作業性に優れた鉗子部材を提供することができる。
【0030】
請求項8に記載の発明によれば、請求項5の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)他方の挟持部が、平板状又は緩やかに外側に凸に湾曲して形成された板材であるため、臓器間の狭い隙間に挿入し易く、挟持の確実性、作業性に優れた鉗子部材を提供することができる。
(2)他方の挟持部を緩やかに湾曲させて形成した場合、挟持部の中間で対象物を挟持し易く、対象物からの抜け落ちを防止できる挟持の確実性、手術作業の作業性に優れた鉗子部材を提供することができる。
【0031】
請求項9に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)膵臓や腸等の臓器、血管等の器官等の対象物を鉗子部材で挟持する際に、時間的に変動する変動データを基に、鉗子制御装置で鉗子部材の開度を最適に調整することにより、対象物の形状や状態に従って内側部材を柔軟に変形させることができ、対象物を過度に圧迫することがなく、対象物への負荷を最低限に抑え確実に挟持することができ、患者や医師の負担を大幅に軽減することができる省力性、汎用性、手術の作業性に優れた挟持力可変鉗子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態1の鉗子制御装置を備えた挟持力可変鉗子の構成を示す装置ブロック図
【図2】実施の形態1の鉗子制御装置の中央処理装置の機能実現手段を示す機能ブロック図
【図3】実施の形態1の鉗子制御装置の中央処理装置の動作を示すフローチャート
【図4】実施の形態1の鉗子制御装置を備えた挟持力可変鉗子の鉗子部材の動作前の状態を示す要部模式側面図
【図5】実施の形態1の鉗子制御装置を備えた挟持力可変鉗子の鉗子部材の動作時の状態を示す要部模式側面図
【図6】第2挟持部の変形例を示す部分拡大平面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態1における鉗子制御装置、鉗子制御方法と鉗子部材及び挟持力可変鉗子について、以下図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1の鉗子制御装置を備えた挟持力可変鉗子の構成を示す装置ブロック図である。
図1中、1は実施の形態1の鉗子制御装置1Aを備えた挟持力可変鉗子、2は手術時に変動する患者の血圧,脈拍,体温,溶存酸素等の変動データを取得する鉗子制御装置1Aの変動データ監視装置、3は後述する鉗子部材15を開閉する鉗子制御装置1Aの開閉駆動機構、4は変動データ監視装置2で取得した変動データに基づいて開閉駆動機構3で鉗子部材15の開閉を制御する鉗子制御装置1Aのコンピュータ装置、5はコンピュータ装置4の中央処理装置、6は使用者が必要なデータを入力したり、各部を制御するための指示を与えたりするためのキーボードやマウス等の入力装置、7は各種データなどを画面に表示するモニタ等の表示装置、8は変動データ監視装置2から送られる変動データや入力装置6から入力されるデータ等を記憶するコンピュータ装置4のRAM、9はコンピュータ装置4の起動時に実行されるプログラム等が記憶されたROM、10はFDやMO等の記録媒体からデータを読み取るコンピュータ装置4の読み取り装置、15は一対の挟持部が開閉自在に対向配置され鉗子制御装置1Aで開閉制御される挟持力可変鉗子1の鉗子部材である。

【0034】
変動データ監視装置2は、時間と共に変化する患者の血圧,脈拍,体温,溶存酸素等の様々な変動データを取得し、そのデータをコンピュータ装置4に送信する。
鉗子部材15は、一対の挟持部が開閉自在に対向配置されていればよく、一対の挟持部が相対的に回動自在或いは摺動自在に保持されたものを用いることができる。開閉駆動機構3は、鉗子部材15の構造に応じて挟持部の開閉角度や間隔(これらを併せて開度という)を変更する。例えば、正逆回転可能なステッピングモータに歯車やリンク機構などを組み合わせて一対の挟持部を相対的に回動させるようにしてもよいし、ラックとピニオン等を組み合わせてモータの回転運動を直線運動に変換して、一対の挟持部を相対的に移動させるようにしてもよい。

【0035】
次に、中央処理装置5の機能実現手段について図面を用いて説明する。
図2は実施の形態1の鉗子制御装置の中央処理装置の機能実現手段を示す機能ブロック図である。
図2において、中央処理装置5の51は入力装置6や読み取り装置10から患者の年齢や予め測定された平常時の血圧,脈拍,体温,溶存酸素等の基礎データを読み込む基礎データ読込み手段、52は鉗子部材15の標準開度を設定する標準開度設定手段、53は鉗子部材15の開度を調整するためのしきい値を設定するしきい値設定手段、54は変動データ監視装置2で取得した変動データを読込む変動データ読込み手段、55は各種の変動データをグラフ等で表示装置7に表示させる変動データ表示手段、56は変動データ読込み手段54で読み込んだ変動データの変動量を算出する変動量算出手段、57は変動量算出手段で算出した変動量がしきい値設定手段53で設定したしきい値を超えたか否かを判定する変動量判定手段、58は標準開度設定手段52で鉗子部材15の標準開度が設定された時や変動量判定手段57で変動量がしきい値を超えたと判定した時に、開閉駆動機構3のモータを標準開度や変動量に基づいて正転又は逆転させるモータ制御手段、59はモータトルクをグラフ等で表示装置7に表示させるモータトルク表示手段、60はモータの回転量を積算するモータ回転量積算手段、61は使用者が異常を察知して停止指示を出した時やモータトルクの異常などを検知してモータの停止を指示する命令が出された時に停止指示が入力されたことを判定してモータ制御手段58にモータの停止や逆転を行わせる停止指示入力判定手段である。

【0036】
上記手段51~61により実現される機能につき、中央処理装置5の動作に基づいて説明する。
図3は、実施の形態1の鉗子制御装置の中央処理装置の動作を示すフローチャートである。
図3において、コンピュータ装置4を起動すると、中央処理装置5は、患者の年齢や予め測定された平常時の血圧,脈拍,体温,溶存酸素等の基礎データが入力されるのを待つ(S1:基礎データ読み込みステップ)。基礎データは、使用者がキーボード等の入力装置6から直接入力してもよいし、FDやMO等の記録媒体に予め記録されたものを読み取り装置10から読み込んでもよい。

【0037】
基礎データ読込み手段51で基礎データが入力されたことを確認した後、標準開度設定手段52で鉗子部材15の標準開度を設定する(S2:標準開度設定ステップ)。標準開度は、鉗子部材15の開度を制御する際の基準であり、対象物を挟持する時の最初の開度である。
尚、鉗子部材15で挟持する臓器等の対象物の種類や挟持する位置、その時の患者の血圧,脈拍,体温,溶存酸素等に応じて、最適な挟持力(=鉗子部材の開度)は変化するので、予め、対象物の種類や手術内容、血圧,脈拍,体温,溶存酸素等のデータと、それらに対応した最適な挟持力(=鉗子部材15の開度)との関係を求め、それらの関係をテーブル(データベース)としてコンピュータ装置4のROM9に記憶させておけば、入力された基礎データを基に、テーブルを参照して、標準開度を設定することができる。或いは、基礎データに基づいて、使用者が入力装置6から直接、標準開度の設定値を入力することもできる。
標準開度設定手段52は、設定した標準開度に基づいて鉗子部材15を閉止するようにモータ制御手段58に必要なモータの回転量を指示する(S3:鉗子部材閉止指ステップ)。
また、しきい値設定手段53は、鉗子部材15の開度を調整するためのしきい値を設定する(S4:しきい値設定ステップ)。しきい値は、変動データがその基準値(初期値)からどれだけ変動したら開度の調整を行うかを判断するための判定値である。
しきい値も上述の標準開度と同様に、予め記憶したテーブルを参照して、選択、設定することもできるし、患者の基礎データやそのときの変動データに基づいて、使用者が入力装置6から直接、入力することもできる。

【0038】
次に、変動データ読込み手段54は、変動データ監視装置2で取得した変動データの読み込みを開始する(S5:変動データ読込みステップ)。変動データ読込み手段は、変動データ監視装置2から送られる変動データを読込み、コンピュータ装置4のRAM8に随時記憶する。
このとき、変動データ表示手段55は、変動データ読込み手段54で読み込んだ変動データの変化をコンピュータ装置4の表示装置7に、グラフとして表示させる(S6:変動データ表示ステップ)。
また、変動量算出手段56は、変動データ読込み手段54で読み込んだ変動データの変動量を算出する(S7:変動量算出ステップ)。このとき、変動量算出手段56は、手術開始時の変動データと、随時送られてくる変動データから、その変動量を算出する。

【0039】
変動量判定手段57は、変動量算出手段56で算出した変動量が、しきい値を超えたか否かを判定する(S8:変動量判定ステップ)。変動量判定ステップにおいて、変動量がしきい値を超えていないと判定した時は変動データ読込みステップS5に戻って変動データの読み込みを続ける。そして、変動量がしきい値を超えたと判定した時は、モータ制御手段58に対し、変動量に基づいて開閉駆動機構3のモータを正転又は逆転させるように指示する(S9:モータ制御指示ステップ)。これにより、変動データに基づいて、常に最適な挟持力で臓器などの対象物を挟持することができる。
例えば、腸管手術では、患者の血圧が上昇すると、腸管内の圧力も上昇するので、挟持力を増加させるが、過度に圧迫すると腸管の組織が壊死するおそれがあるため、患者の血圧に応じた最適な挟持力で挟持することにより、患者へ負担をかけることなく、確実に腸管を挟持することができ、手術の作業性を向上できる。また、しきい値を小さく設定すれば、時間と共に変化する血圧に応じて秒単位で挟持力を調整することができる。
尚、鉗子部材15に歪みゲージ等の圧力センサを配設し、挟持部の圧力を監視することにより、対象物を確実に把持できているかどうかを簡便に確認することができ、医師の負担を軽減できる。また、圧力センサで検出した挟持力を基に開閉駆動機構3のモータの回転量を調整して、必要な把持力を発生させることもでき、過不足のない最適な把持力で確実に対象物を把持することができ、把持力調整の信頼性、確実性に優れる。

【0040】
モータトルク表示手段59は、モータの回転時のトルクの変化をコンピュータ装置4の表示装置7に、グラフとして表示させる(S10:モータトルク表示ステップ)。これにより、モータの動作に異常が見られる場合には、直ちにモータを停止させたり、モータを逆回転させて鉗子部材15を開放させたりすることができ、鉗子部材15の開閉制御の安全性に優れる。
また、モータ回転量積算手段60は、モータの回転量を積算する(S11:モータ回転量積算ステップ)。このとき、モータ回転量積算手段60は、モータ制御手段58から指示されるモータの回転量を積算する。例えば、正転方向の回転量を加算し、逆転方向の回転量を減算する(或いはその逆でもよい)ことにより、基準位置からのモータの回転量を把握し、正確に鉗子部材15の開度を制御できる。

【0041】
中央処理装置5は、停止指示入力判定手段61で停止指示が入力されたと判定するまで変動データの読み込みを続ける(S12:停止指示入力判定ステップ)。そして、停止指示入力判定手段61が、手術が完了して使用者が停止指示を出したと判定した時や使用者が異常を察知して停止指示を出したと判定した時、又はモータトルク若しくはモータ回転量の異常を検出して停止指示が出されたと判定した時には、モータ制御手段58からモータの停止や逆転を指示する命令を出し、鉗子部材15を開放して作業を終了する(S13:鉗子部材開放指示ステップ)。

【0042】
次に、実施の形態1の鉗子制御装置で開閉制御される鉗子部材の詳細について説明する。
図4は実施の形態1の鉗子制御装置を備えた挟持力可変鉗子の鉗子部材の動作前の状態を示す要部模式側面図であり、図5は実施の形態1の鉗子制御装置を備えた挟持力可変鉗子の鉗子部材の動作時の状態を示す要部模式側面図である。
図4及び図5中、3aは実施の形態1の鉗子制御装置1Aの開閉駆動機構3の基台、3a’は基台3aの一側部に立設された側板部、3bは基台3a上に配設された開閉駆動機構3のモータ、3cはモータ3bの回転軸、3eは回転軸3cと連結部材3dで連結されたボルト軸、3f,3gはボルト軸3eの両端部を回動自在に軸支する軸受部、3hはボルト軸3eに螺合され基台3aや側板部3a’にガイドされてボルト軸3eの正逆回転に従って前後動する摺動部、15は一対の挟持部16,17が開閉自在に対向配置されて構成された鉗子部材、16は基台3aから水平に延設された鉗子部材15の長尺板状の第1挟持部、16aは第1挟持部16の挟持面、16bは第1挟持部16の後端部で第2挟持部17の後端部を回動自在に軸支する回動中心軸、18はアーチ状に外側に凸に湾曲して形成された第2挟持部17の外側部材、18cは外側部材18の後端部18bから屈曲して延設された第2挟持部17のアーム部、19は先端19aが外側部材18の先端部18aで固定され後端19bが移動端として外側部材18の後端部18b側へ渡設され挟持面を形成する弾性曲げ可能な第2挟持部17の長尺板状の内側部材、20は外側部材17と内側部材19の間に形成された第2挟持部17の隙間、21,22は第2挟持部17の隙間20に先端21a,21bが内側部材19の隙間20内で移動端として摺動自在に内側部材19の内面に当接し、後端21b,22bが外側部材18の後端部18b側の内面に固定され、かつ外側部材18よりも大きな曲率で形成されたアーチ型の第1,第2弾性支持部材、25は両端の枢軸部25a,25bで第2挟持部17のアーム部18cの後端部及び開閉駆動機構3の摺動部3hに回動自在に連結されたリンク部である。また、図5中、30は小腸や大腸等の臓器等の対象物である。
尚、説明の都合上、基台3aの奥側の側板部3a’のみを図示したが、基台3aの手前側にも側板部を設けることが好ましい。

【0043】
第1,第2挟持部16,17は、ステンレス、チタン又はチタン合金で形成され、弾性支持部材21,22は厚さが0.5mmのステンレス鋼等の高合金鋼で形成されている。耐食性、耐熱性に優れ、衛生的で安全性、耐久性に優れるためである。
本実施の形態では、基台3aと第1挟持部16を一体に形成したが、これに限定されるものではなく、第1挟持部16を別部材で形成し、基台3aや側板部3a’に固定してもよい。尚、基台3aの底面と第1挟持部16の底面を面一とすることにより、基台3aの設置高さを基に簡便に第1挟持部16の高さ調整を行うことができ、高さ調整の作業性、取扱い性に優れる。開閉駆動機構3をXYZステージやθステージなどに固定することにより、開閉駆動機構3と共に鉗子部材15の位置や向きを自在に調整することができる。
第2挟持部17の外側部材18は、内側部材19と同様の板状に形成され、内側部材19と同一の幅で形成されている。外側部材18は外側へアーチ状に湾曲し、内側部材19は平面で、外側部材18と内側部材19との間には、先端部18aから円弧状の内周壁面中央にかけてその高さが大きくなり、後端部18b側にかけて再び小さくなる隙間20が形成されている。

【0044】
隙間20には、2段のアーチ型の弾性支持部材21,22が両端部のうち後端21b,22bが外側部材18の後端部18bに固定され、先端21a,21bは内側部材19の内側に接触した状態で配置されている。尚、アーチ型の弾性支持部材21,22は両端部のうち一端が外側部材18に固定され、他端が内側部材18の内面に摺動自在に当接していればよいので、先端21a,21bを外側部材18の先端部18aに固定し、後端21b,22bを移動端として内側部材19の内側に接触した状態で配置してもよい。
アーチ型の弾性支持部材21,22は厚みを薄くし、弾性変形内で屈曲できるようにしている。

【0045】
外側部材18の先端部18aと内側部材19の先端19aの固定は、材質に応じて、スポット溶接や接着剤による接着、螺着、挿着、嵌着、かしめ等の手段を用いる。尚、内側部材19の固定は着脱自在としてもよい。内側部材19が塑性変形した場合の取り換えや消毒作業の作業性を向上できるためである。
内側部材19の長さは、外側部材18の内周壁の長さよりも長く形成される。対象物を挟持した際に、内側部材19の移動端(後端19b)が外側部材18の内周壁の円弧の内側に入り込んで引っ掛かりなどが発生することを防止するためである。

【0046】
以上のように構成された鉗子部材15の動作について説明する。
図4の状態から開閉駆動機構3のモータ3bが駆動され、回転軸3cと共にボルト軸3eが正回転すると、摺動部3hは基台3a上を前方に移動する。これにより、図5に示すように、リンク部25が回動し、鉗子部材15の第2挟持部17が回動中心軸16bを支点として回動して鉗子部材15の開度が小さくなり、第1,第2挟持部16,17の間に対象物30を挟持することができる。
内側部材19はその中間部に対象物30を挟持すると、対象物30の外形に沿って隙間20内で外側に湾曲しながら挟んである程度まで変形し、対象物30に対して過度の圧迫を加えず、挟持したままの状態で対象物30の膨張や収縮に柔軟に対応できる。
前述したように、変動データの変動量に基づいて、モータ制御手段58で開閉駆動機構3のモータ3bを正逆回転させ、その回転量を制御することにより、鉗子部材15の開度を調整することができ、常に最適な挟持力で臓器などの対象物30を挟持することができる。

【0047】
尚、本実施の形態では、鉗子部材として、第1挟持部16と第2挟持部17が回動自在に保持されたものを用いたが、鉗子部材はこれに限定されるものではなく、一対の挟持部が開閉自在に対向配置されていればよい。例えば、一対の挟持部の一方若しくは両方が相対的に移動するようにその間隔が拡縮自在に保持されたものも用いることができる。その場合、開閉駆動機構は、ラックとピニオン等を組み合わせてモータの回転運動を直線運動に変換して、一対の挟持部を相対的に移動させるようにすればよい。

【0048】
次に、第2挟持部の変形例について説明する。
図6は第2挟持部の変形例を示す部分拡大平面図である。
図6における第2挟持部17aの変形例が実施の形態1と異なるのは、2段のアーチ型の弾性支持部材21,22の代わりに、内側部材19と同じ若しくは小さい幅の円形の弾性支持部材23を脱着自在に嵌合保止して配置した点である。
尚、弾性支持部材の形状はこれに限定されるものではなく、内側部材19の変形に伴って弾性変形できるものであればよく、楕円形や多角形等に形成してもよい。
本実施の形態では、第1挟持部16を長尺平板状に形成したが、緩やかに外側に凸に湾曲して形成した場合、挟持部の中間で径の太い対象物も挟持し易く、かつ挟持部の先端側から対象物が抜けるのを防ぐことができ、固定の確実性、安定性に優れる。また、第1挟持部16の代わりに、2つの第2挟持部17を対向配置してもよい。

【0049】
以上のように実施の形態1における鉗子制御装置によれば、以下の作用を有する。
(1)変動データを取得する変動データ監視装置と、鉗子部材を開閉する開閉駆動機構と、変動データ監視装置で取得した変動データに基づいて開閉駆動機構で鉗子部材の開閉を制御するコンピュータ装置と、を有するので、手術時に変動する患者の血圧,脈拍,体温,溶存酸素等の様々な変動データを基に、鉗子部材の開閉角度や間隔(これらを併せて開度という)を最適に調整し、鉗子部材で挟持される臓器等の対象物への負荷を最低限に抑えて、患者の負担を大幅に軽減することができ、省力性、汎用性に優れる。
(2)コンピュータ装置の中央処理装置が、鉗子部材の標準開度を設定する標準開度設定手段を有するので、手術開始時に、十分な挟持力で臓器などの対象物を確実に挟持することができ、固定の確実性に優れる。
(3)鉗子部材の開度を調整するためのしきい値を設定するしきい値設定手段を有するので、患者の状態や手術の内容、挟持する対象物の違い等に応じて最適なしきい値を設定することができ、患者や医師の負担を大幅に軽減することができ、省力性、汎用性に優れる。
(4)変動データ監視装置で取得した変動データを読込む変動データ読込み手段と、変動データの変動量を算出する変動量算出手段を有するので、時間と共に変化する変動データを確実に取得して患者の状態を正確に把握することができ、鉗子制御の信頼性に優れる。
(5)変動データの変動量がしきい値を超えたか否かを判定する変動量判定手段と、変動量判定手段で変動量がしきい値を超えたと判定した時に、開閉駆動機構のモータを変動量に基づいて正転又は逆転させるモータ制御手段を有するので、変動データの変動量に基づいて、開閉駆動機構のモータの回転量を確実に制御し、鉗子部材の開度を常に最適に調整して、患者や医師の負担を大幅に軽減することができ、省力性、汎用性、使用性に優れる。
(6)モータの回転量を積算するモータ回転量積算手段を有するので、変動データの変動量に基づいて、モータの正転や逆転を繰り返し行っても、鉗子部材の開度をずれることなく確実に制御することができ、鉗子制御の確実性、信頼性に優れる。
(7)中央処理装置が、コンピュータ装置の表示装置に、変動データの変化を表示させる変動データ表示手段と、モータの回転時のトルクを表示させるモータトルク表示手段を有するので、目視で簡便に変動データの変化やモータのトルクを確認することができ、患者の容体やモータの動作に異常が見られる場合には、直ちにモータを停止させたり、モータを逆回転させて鉗子部材を開放させたりすることができ、鉗子部材の開閉制御の安全性に優れる。

【0050】
以上のように実施の形態1における鉗子制御方法によれば、以下の作用を有する。
(1)鉗子部材の標準開度を設定する標準開度設定ステップと、標準開度に基づいて鉗子部材の閉止指示を行って開閉駆動機構のモータを回転させる鉗子部材閉止指示ステップを有するので、手術開始時に、十分な挟持力で臓器などの対象物を確実に挟持することができ、固定の確実性に優れる。
(2)鉗子部材の開度を調整するためのしきい値を設定するしきい値設定ステップを有するので、患者の状態や手術の内容、挟持する対象物の違い等に応じて最適なしきい値を設定することができ、患者や医師の負担を大幅に軽減することができ、省力性、汎用性に優れる。
(3)変動データ監視装置で取得した変動データを読込む変動データ読込みステップと、変動データの変動量を算出する変動量算出ステップを有するので、時間と共に変化する変動データを確実に取得して患者の状態を正確に把握することができ、鉗子制御の信頼性に優れる。
(4)変動データの変動量がしきい値を超えたか否かを判定する変動量判定ステップと、変動量判定ステップで変動量がしきい値を超えたと判定した時に、開閉駆動機構のモータを変動量に基づいて正転又は逆転させるモータ制御ステップを有するので、変動データの変動量に基づいて、開閉駆動機構のモータの回転量を確実に制御し、鉗子部材の開度を常に最適に調整して、患者や医師の負担を大幅に軽減することができ、省力性、汎用性、使用性に優れる。
(5)モータの回転量を積算するモータ回転量積算ステップを有するので、変動データの変動量に基づいて、モータの正転や逆転を繰り返し行っても、鉗子部材の開閉角度をずれることなく確実に制御することができ、鉗子制御の確実性、信頼性に優れる。
(6)コンピュータ装置の表示装置に、変動データの変化を表示させる変動データ表示ステップと、モータの回転時のトルクを表示させるモータトルク表示ステップを有するので、目視で簡便に変動データの変化やモータのトルクを確認することができ、患者の容体やモータの動作に異常が見られる場合には、直ちにモータを停止させたり、モータを逆回転させて鉗子部材を開放させたりすることができ、鉗子部材の開閉制御の安全性に優れる。

【0051】
以上のように実施の形態1における鉗子制御装置で用いられる鉗子部材によれば、以下の作用を有する。
(1)一対の挟持部の少なくとも一方が、外側に凸に湾曲した外側部材と、一端が外側部材の先端部で固定され他端が移動端として外側部材の後端部側へ渡設された板状の内側部材を有するので、膵臓や腸等の臓器、血管等の器官或いは各種器具等の対象物を挟持部で挟持する際に、内側部材が対象物に当接すると、内側部材の移動端が先端(固定端)側に移動することにより、内側部材の中央部が対象物の形状(外形)に沿うように、外側部材側(外側)に弾性変形することができ、対象物を過度に圧迫することなく、確実に掴んだり牽引したりするために挟持することができ、医師の負担を軽減でき、使用性に優れる。
(2)内側部材の後端部が移動端であることにより、弾性曲げが可能で、腸等の対象物の形状や状態に追随して変形することができるので、対象物を柔軟に包み込むように挟持することができ、対象物への負荷を最低限に抑えて、患者の負担を大幅に軽減することができ、信頼性、使用性に優れる。
(3)内側部材が、外側部材の内周壁の長さより長く、外側部材の先端部から内周壁に沿って外側部材の後端部に至るまでの距離よりも短く形成されているので、内側部材が最大に変形しても、移動端が外側部材と内側部材の間に形成された隙間に入り込むことがなく、挟持部を開放して対象物を離した時に、移動端が確実かつ速やかに外側部材の後端部の位置まで戻って、対象物を挟持可能な状態に復帰することができ、動作の確実性、安定性に優れる。
(4)弾性曲げが可能で外側部材と先端で連結された内側部材は、挟持部が閉じた状態で先端同士が当接して針や糸等の小物も確実に挟持できるだけでなく、中央部では微妙な挟持圧で対象物を挟持することができ、汎用性に優れる。
(5)挟持部が板状の外側部材と内側部材からなる簡素な構成で、部品点数が少なく、量産性に優れると共に、細かな凹凸や隙間などがなく、容易に洗浄や消毒を行うことができ、メンテナンス性、清潔性に優れる。
(6)外側部材と内側部材の間に形成された隙間に外側部材よりも大きな曲率を有する一段及至複数段のアーチ型の弾性支持部材が配設されているので、挟持部を開閉させて臓器等の対象物を挟持する際に、対象物に当接した内側部材が、外側部材との間で弾性支持部材を潰すように変形させながら、対象物の形状に沿うように弾性変形するため、対象物を必要以上に圧迫することなく、柔軟に包み込むように挟持することができ、対象物への負荷を最低限に抑えて、患者の負担を大幅に軽減することができ、信頼性に優れる。
(7)内側部材が対象物に当接して弾性変形する際に、弾性支持部材の圧縮によって生じる反力で内側部材を支持することができ、弾性支持部材の弾力により、適度な挟持力で対象物を確実に挟持することができ、患者や医師の負担を大幅に軽減することができ、省力性、汎用性、使用性に優れる。
(8)外側部材と内側部材の間に弾性支持部材が配設されているので、挟持部の開度に応じて無段階で挟持力を調整することができ、挟持力の過不足が発生することがなく、最適な挟持力で対象物を安全かつ確実に挟持することができ、固定の確実性、安定性、汎用性に優れる。
(9)アーチ型の弾性支持部材の弾性率や段数を変更することにより挟持圧力分布の調整を行うことが可能で、汎用性、設計自在性に優れる。
(10)アーチ型の弾性支持部材の両端部のうちいずれか一方は固定せず、内側部材の内面に沿って摺動自在な移動端とすることにより、弾性支持部材は外側部材に押圧力を伝えるが、モーメントは伝えないことになり、内側部材が対象物の形状や状態に応じた変形を行うことができ、形状自在性に優れる。
(11)アーチ型の弾性支持部材は板材を湾曲してなる簡素な構成であり、容易に製造可能で、組立作業性に優れる。
(12)弾性支持部材の他端が移動端なので、患者の血圧等の状況の変化に応じて、挟持部の開度を変化させることにより、迅速に微妙な挟持圧の調整を行うことができ、汎用性、動作の安定性、応答性に優れる。
(13)対向する挟持部のいずれか一方を平板状に形成した場合、臓器と臓器の間にある狭い隙間に簡単に挿入することができ作業性に優れる。

【0052】
以上のように実施の形態1における鉗子制御装置を備えた挟持力可変鉗子によれば、以下の作用を有する。
(1)鉗子制御装置で開閉制御される鉗子部材を有するので、鉗子制御装置により、手術時に変動する患者の血圧,脈拍,体温,溶存酸素等の様々な変動データを基に、鉗子部材の開度を最適に調整し、鉗子部材で挟持される臓器等の対象物への負荷を最低限に抑えて、患者の負担を大幅に軽減することができ、省力性、汎用性に優れる。
(2)鉗子部材の一対の挟持部の少なくとも一方が、外側に凸に湾曲した外側部材と、一端が外側部材の先端部で固定され他端が移動端として外側部材の後端部側へ渡設された板状の内側部材を有するので、膵臓や腸等の臓器、血管等の器官等の対象物を挟持部で挟持する際に、内側部材が対象物に当接すると、内側部材の移動端が先端(固定端)側に移動することにより、内側部材の中央部が対象物の形状(外形)に沿うように、外側部材側(外側)に弾性変形することができ、対象物を過度に圧迫することなく、確実に掴んだり牽引したりするために挟持することができ、医師の負担を軽減でき、使用性、手術の作業性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、手術中に患者から検出された生体データ等の変動データに基づいて、臓器等の対象物を挟持する鉗子部材の開閉角度や間隔を自在に調整することができ、最適な挟持力で確実に対象物を挟持して、患者や医師の負担を大幅に軽減することができる固定安定性、省力性、汎用性に優れた鉗子制御装置と鉗子制御方法の提供、挟持部が弾性変形することにより、簡便に挟持力を調整することができ、臓器等の対象物を最適な挟持力で確実に挟持して、患者や医師の負担を大幅に軽減することができる固定安定性、省力性、汎用性に優れた鉗子部材の提供及び挟持部が弾性変形可能な鉗子部材を用いて、時間的に変動する変動データに基づいて鉗子部材の開閉角度や間隔を変更するだけで、簡便に挟持力を調整することができ、臓器等の対象物を最適な挟持力で確実に挟持して、患者や医師の負担を大幅に軽減することができる固定安定性、省力性、汎用性に優れた挟持力可変鉗子の提供を行うことができ、外科手術において腸や血管等を過度に圧迫することがなく、臓器等の対象物の形状や状態に応じて挟持圧力を微妙に調整しながら、かつ対象物が外れたり、抜けたり、滑ったりすることを防止でき、手術作業性を大幅に向上させることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 挟持力可変鉗子
1A 鉗子制御装置
2 変動データ監視装置
3 開閉駆動機構
3a 基台
3a’ 側板部
3b モータ
3c 回転軸
3e ボルト軸
3f,3g 軸受部
3h 摺動部
4 コンピュータ装置
5 中央処理装置
6 入力装置
7 表示装置
8 RAM
9 ROM
10 読み取り装置
15 鉗子部材
16 第1挟持部
16a 挟持面
16b 回動中心軸
17,17a 第2挟持部
18 外側部材
18a 先端部
18b 後端部
18c アーム部
19 内側部材
19a,21a,21b 先端
19b,21b,22b 後端
20 隙間
21 第1弾性支持部材
22 第2弾性支持部材
23 弾性支持部材
25 リンク部
25a,25b 枢軸部
30 対象物
51 基礎データ読込み手段
52 標準開度設定手段
53 しきい値設定手段
54 変動データ読込み手段
55 変動データ表示手段
56 変動量算出手段
57 変動量判定手段
58 モータ制御手段
59 モータトルク表示手段
60 モータ回転量積算手段
61 停止指示入力判定手段
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5