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明細書 :ポンププローブ測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5610399号 (P5610399)
公開番号 特開2013-032993 (P2013-032993A)
登録日 平成26年9月12日(2014.9.12)
発行日 平成26年10月22日(2014.10.22)
公開日 平成25年2月14日(2013.2.14)
発明の名称または考案の名称 ポンププローブ測定装置
国際特許分類 G01N  21/55        (2014.01)
G01Q  60/18        (2010.01)
FI G01N 21/55
G01Q 60/18
請求項の数または発明の数 22
全頁数 18
出願番号 特願2011-169682 (P2011-169682)
出願日 平成23年8月2日(2011.8.2)
審査請求日 平成26年3月31日(2014.3.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】重川 秀実
【氏名】武内 修
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
【識別番号】100109807、【弁理士】、【氏名又は名称】篠田 哲也
審査官 【審査官】▲高▼場 正光
参考文献・文献 特開平06-307818(JP,A)
特開2008-139028(JP,A)
TERADA,Y.,“Real-space imaging of transient carrier dynamics by nanoscale pump-probe microscopy”,NATURE PHOTONICS,2010年12月 1日,VOL.4,pp.869-874,* Figure 1 *
調査した分野 G01N21/00-21/61
G01Q10/00-90/00
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ポンプ光となる第1の超短光パルス列と、該ポンプ光に対して第1の遅延時間を有していてプローブ光となる第2の超短光パルス列と、該ポンプ光に対して第2の遅延時間を有していて上記プローブ光となる第3の超短光パルス列と、を発生させる超短光パルスレーザー発生部と、
上記第2及び第3の超短光パルス列が入射され、上記第2の超短光パルス列と上記第3の超短光パルス列とを交互に遮断するように動作して上記第2の超短光パルス列と上記第3の超短光パルス列とを交互に出射する光シャッタ部と、
上記光シャッタ部を制御する光シャッタ制御部と、
上記ポンプ光及び上記プローブ光を試料に照射する照射光学系と、
上記試料からのプローブ信号を検出するセンサーと、
上記センサーに接続される位相敏感検出手段と、
を備え、
上記第1の超短光パルス列が上記照射光学系を介して上記ポンプ光として上記試料に照射され、
上記第2及び第3の超短光パルス列が上記光シャッタ部に入射され、上記光シャッタ制御部によって上記第2の超短光パルス列と上記第3の超短光パルス列とが上記プローブ光として上記試料に交互に照射されて、上記プローブ光の上記ポンプ光に対する遅延時間を周期的に変調し、
上記試料からのプローブ信号が、上記遅延時間の周期的変調に同期して上記位相敏感検出手段で検出される、ポンププローブ測定装置。
【請求項2】
前記超短光パルスレーザー発生部が、
一つの超短光パルスレーザー光源と、
この超短光パルスレーザー光源で発生する超短光パルスを3つに分割して前記ポンプ光となる第1の超短光パルス列及び前記プローブ光となる第2及び第3の超短光パルス列を形成する光学部材と、
前記第2の超短光パルス列を前記ポンプ光に対して第1の遅延時間だけ遅延させる第1の光学遅延部と、
前記第3の超短光パルス列を前記ポンプ光に対して第2の遅延時間だけ遅延させる第2の光学遅延部と、を備えている、請求項1に記載のポンププローブ測定装置。
【請求項3】
前記第1の光学遅延部又は前記第2の光学遅延部は可動ミラーを含む、請求項2に記載のポンププローブ測定装置。
【請求項4】
前記超短光パルスレーザー発生部が、
前記ポンプ光となる第1の超短光パルス列を発生させる第1の超短光パルスレーザー光源と、
前記プローブ光となる第2の超短光パルス列を発生させる第2の超短光パルスレーザー光源と、
前記プローブ光となる第3の超短光パルス列を発生させる第3の超短光パルスレーザー光源と、を備え、
前記第1~3の超短光パルスレーザー光源は、特定の遅延時間をもって同期発振する、請求項1に記載のポンププローブ測定装置。
【請求項5】
前記光シャッタ部が、第1の光シャッタと第2の光シャッタとを備え、
前記第2の超短光パルス列が、上記第1の光シャッタに入射され、
前記第3の超短光パルス列が、上記第2の光シャッタに入射される、請求項1に記載のポンププローブ測定装置。
【請求項6】
前記光シャッタ部は、音響光学変調器又は電気光学変調器を備える、請求項1に記載のポンププローブ測定装置。
【請求項7】
前記光シャッタ部は、電気光学素子と偏光回転素子とを備え、
前記第2の超短光パルス列は、上記偏光回転素子を介して上記電気光学素子に入射され、
前記第3の超短光パルス列は、直接、上記電気光学素子に入射される、請求項1に記載のポンププローブ測定装置。
【請求項8】
前記電気光学素子はポッケルスセルからなる、請求項7に記載のポンププローブ測定装置。
【請求項9】
前記偏光回転素子は1/2波長板である、請求項7に記載のポンププローブ測定装置。
【請求項10】
前記第2の超短光パルス列を前記ポンプ光に対して第1の遅延時間だけ遅延させる第1の光学遅延部と、前記第3の超短光パルス列を前記ポンプ光に対して第2の遅延時間だけ遅延させる第2の光学遅延部と、を備える、請求項1に記載のポンププローブ測定装置。
【請求項11】
前記第1の光学遅延部又は前記第2の光学遅延部は、可動ミラーを含む、請求項10に記載のポンププローブ測定装置。
【請求項12】
前記センサーがフォトダイオードで構成され、試料における前記プローブ光の反射光をフォトダイオードに入射し、反射光強度を前記プローブ信号として検出する、請求項1~11の何れかに記載のポンププローブ測定装置。
【請求項13】
前記センサーが走査プローブ顕微鏡で構成され、前記ポンプ光および前記プローブ光が照射された前記試料表面において、上記走査プローブ顕微鏡の探針により前記プローブ信号を検出する、請求項1~11の何れかに記載のポンププローブ測定装置。
【請求項14】
前記走査プローブ顕微鏡は、走査トンネル顕微鏡、走査原子間力顕微鏡及び走査近接場顕微鏡のいずれかである、請求項13に記載のポンププローブ測定装置。
【請求項15】
請求項1~14の何れかに記載のポンププローブ測定装置を構成要素の一つとして備える、測定装置。
【請求項16】
第1の超短光パルス列をポンプ光として試料に出射する一方、
上記ポンプ光に対して第1の遅延時間を有していてプローブ光となる第2の超短光パルス列と、上記ポンプ光に対して第2の遅延時間を有していて上記プローブ光となる第3の超短光パルス列とを、光シャッタ部に出射し、
上記光シャッタ部が上記第2の超短光パルス列と上記第3の超短光パルス列とを交互に遮断するよう動作することにより、上記第2の超短光パルス列と上記第3の超短光パルス列とを交互に出射して上記プローブ光として上記試料に交互に照射して、上記プローブ光の上記ポンプ光に対する遅延時間が周期的に変調され、
上記試料からのプローブ信号を、上記遅延時間の周期的変調に同期して位相敏感検出手段で検出する、ポンププローブ測定方法。
【請求項17】
前記第1の超短光パルス列と前記第2の超短光パルス列と前記第3の超短光パルス列とを、一つの超短光パルス列を3つに分割して発生させる、請求項16に記載のポンププローブ測定方法。
【請求項18】
前記第1の超短光パルス列を発生させる第1の超短光パルスレーザー光源と、前記第2の超短光パルス列を発生させる第2の超短光パルスレーザー光源と、前記第3の超短光パルス列を発生させる第3の超短光パルスレーザー光源と、を特定の遅延時間をもって同期発振させる、請求項16に記載のポンププローブ測定方法。
【請求項19】
前記プローブ光の前記ポンプ光に対する遅延時間を矩形波的に変化させる、請求項16~18の何れかに記載のポンププローブ測定方法。
【請求項20】
前記試料における前記プローブ光の反射光強度を、前記プローブ信号として検出する、請求項16~18の何れかに記載のポンププローブ測定方法。
【請求項21】
前記試料表面において、探針により前記プローブ信号を検出する、請求項16~18の何れかに記載のポンププローブ測定方法。
【請求項22】
前記探針により前記試料表面を走査して前記プローブ信号を検出する、請求項21に記載のポンププローブ測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンププローブ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ピコ秒(ps)からフェムト秒(fs)領域の超高速現象を測定するために、超短パルスレーザーを用いた計測が広く行われている。例えば、ポンププローブ反射率測定では、まず強い強度を持つポンプパルスを測定対象に照射することで、試料を瞬間的に励起する。そして、励起状態が緩和する最中に弱い強度のプローブパルスを照射して、その反射光強度が測定される。得られる反射光強度は、ちょうどプローブパルスが当たった瞬間の試料の反射率に比例する。ポンプパルスに対するプローブパルスの遅延時間を徐々に変化させながら反射光強度を測定することで、励起前後の試料の反射率変化をレーザーパルスの時間幅程度の時間分解能で観測することが可能になる。この時間分解能は、ps~fs程度である。
【0003】
多くの場合、このような超高速測定で得られる信号強度は非常に小さいので、信号雑音比を向上させるために変調測定が行われる。最も一般的な手法として、ポンプパルスの強度を変調し、この変調に対するプローブ信号の応答をロックインアンプにより検出する手法がある。その他にも、ポンプパルスの偏光や、遅延時間に変調を加える手法も知られている。
【0004】
特に近年、走査プローブ顕微鏡とパルスレーザーとを組み合わせた時間分解走査プローブ顕微鏡の実現には、遅延時間を矩形波的に変調する、遅延時間変調法が有効であることが示され、1psの時間分解能と1ナノメートル(nm)の空間分解能とを同時に実現する顕微鏡装置が構築された。
【0005】
レーザーパルスの遅延時間をfsからナノ秒(ns)の時間領域において精確に制御するには、光路長を変化させることが一般的である。
【0006】
図10は、従来型の遅延時間変調装置の構成を示す図である。
図10に示すように、従来型の遅延時間変調装置は、ミラー位置を機械的に振動させることで遅延時間に周期的な変調を加えている。光源からのレーザーパルスは、ハーフミラー1(HM1)でレトロリフレクター1(RR1)と、レトロリフレクター2(RR2)と、の2つの光路に分割される。分割時の光量は必ずしも1:1である必要は無く、用いるハーフミラーの特性により任意の比率を選ぶことができる。RR1とRR2は入射方向と正確に正反対の方向に光パルスを反射するデバイスであり、通常3枚のミラーを互いに直角になるように組み合わせたものが用いられる。RR1とRR2との反射光はハーフミラー2(HM2)において正確に同じ光軸上に重ね合わされる。
【0007】
RR1を通る光路長と、RR2を通る光路長とが異なれば、HM2で重ね合わされた光軸上には時間的にずれた位置に光パルスが生じることになる。パルス間の遅延時間は、RR1あるいはRR2の位置を機械的に変化させることで正確に制御可能であり、ピエゾ素子などを用いた場合、1フェムト秒以下の精度が達成可能である。このような装置を用いて遅延時間を周期的に変調するためには、例えばRR1の位置を周期的に変化させればよい。これまでこのようにミラー位置を周期的に変化させることで遅延時間変調を行う測定は数多く行われてきた。
【0008】
しかしながら、図10の装置では遅延時間の変調振幅と変調周波数に大きな制約が生じる。光路長と遅延時間とは光速を係数として比例関係にあるため、例えば遅延時間を100ps振幅で変調するためにはミラー位置を1.5cmの振幅で変動させなければならない。このような大振幅のミラー位置変調は、10Hz程度の非常に低い周波数でなければ達成することができず、それ以上の振幅、あるいは周波数では周囲の光学機器に悪影響を及ぼすほどの振動が生じたり、駆動機構自身の変形により正確な変調を行えないと言った問題を生じる。
【0009】
一方で、このような低い周波数の変調では、測定結果にレーザー光強度の揺らぎなどの影響が強く表れてしまうために、ミラー位置変調を用いた遅延時間変調法は、非常に小振幅(おおよそ100fs程度まで)でしか実用的ではなかった。
【0010】
近年、パルスレーザーの遅延時間変調と走査プローブ顕微鏡とを組み合わせた時間分解走査プローブ顕微鏡の開発に伴い、1パルス単位で光パルスの透過及び遮断を切り替えることのできる高速な光学シャッタ(パルスピッカーと呼ぶ。)を用いた遅延時間変調方式が提案され、その有用性が確認された(特許文献1参照)。
【0011】
図11は、従来のパルスピッカーを用いた遅延時間変調方式を説明するタイムチャートである。
レーザー発振器は10ns程度の時間間隔でレーザーパルスを発生し、このレーザーパルスがハーフミラーなどで2つの光路に分けられた後、2つのパルスピッカーへそれぞれ右方向から入射する。パルスピッカーは連続して入射するパルス列から、任意のタイミングで1パルスを選んで透過させることができる。
【0012】
したがって、図11に示すように、異なるタイミングでパルスを透過させることで、遅延時間を生成することができる。このようにパルスピッカーを用いて遅延時間を生成する場合、遅延時間の変調をきわめて高速に、また、大振幅で行うことができる。そもそも、この手法では遅延時間の変調幅の最小値はもとのパルス列のパルス間隔で決まっており、典型的には10ns程度である。これは光路長にすると3m程度に相当し、ミラー位置変調で実現可能な遅延時間変調振幅と比較すると3~4桁大きい。また、遅延時間は透過パルスごとに変更可能であり、必要であれば1MHz程度の高速変調が可能である。
【0013】
一方、図11のパルスピッカーを用いた遅延時間変調は、1ns以下の高速現象に適用する場合、あまり良い結果が得られない。これは、遅延時間の生成のためにパルスが間引かれるために試料の励起頻度、すなわち単位時間あたりの測定回数が大幅に減少してしまうためである。
【0014】
例えば、パルスピッカーとして水冷式のポッケルスセルを用いた場合、ポッケルスセルの発熱による制限から、出力される光パルスの繰り返し周波数を2MHz程度よりも大きくすることが難しい。通常、チタンサファイアレーザー発振器の繰り返し周波数が100MHz程度であることと比較すると、パルスピッカーを用いた場合、単位時間あたりの試料の励起回数は1/50になってしまい、検出される信号も1/50となる。
【先行技術文献】
【0015】

【特許文献1】特開2008-139029号公報
【0016】

【非特許文献1】Y. Terada, S. Yoshida, O. Takeuchia and H. Shigekawa,"Real space imaging of carrier dynamics by nanoscale pump-probe microscopy", Nature Photonics DOI:10.1038/NPHOTON.2010.235 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来のポンププローブ測定装置を高速現象に適用した場合には、高感度で測定できないという課題があった。
【0018】
本発明は上記課題に鑑み、1ns以下の高速現象を精度よく測定できる、ポンププローブ測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を解決するために、本発明のポンププローブ測定装置は、ポンプ光となる第1の超短光パルス列と、ポンプ光に対して第1の遅延時間を有していてプローブ光となる第2の超短光パルス列と、ポンプ光に対して第2の遅延時間を有していてプローブ光となる第3の超短光パルス列と、を発生させる超短光パルスレーザー発生部と、第2及び第3の超短光パルス列が入射される光シャッタ部と、光シャッタ部を制御する光シャッタ制御部と、ポンプ光及びプローブ光を試料に照射する照射光学系と、試料からのプローブ信号を検出するセンサーと、センサーに接続される位相敏感検出手段と、を含む検出部と、を備え、第2の超短光パルス列と第3の超短光パルス列とが、光シャッタ制御部によってポンプ光に対するプローブ光の遅延時間が周期的に変調されて交互にプローブ光として試料に照射され、プローブ信号を遅延時間の周期的変調に同期して位相敏感検出手段で検出することを特徴とする。
【0020】
上記構成において、超短光パルスレーザー発生部が、一つの超短光パルスレーザー光源と、この超短光パルスレーザー光源で発生する超短光パルスを3つに分割してポンプ光となる第1の超短光パルス列及びプローブ光となる第2及び第3の超短光パルス列とを形成する光学部材と、第2の超短光パルス列をポンプ光に対して第1の遅延時間だけ遅延させる第1の光学遅延部と、第3の超短光パルス列を前記ポンプ光に対して第2の遅延時間だけ遅延させる第2の光学遅延部と、を備えていてもよい。
超短光パルスレーザー発生部が、ポンプ光となる第1の超短光パルスレーザー光源と、プローブ光となる第2の超短光パルス列を発生させる第2の超短光パルスレーザー光源と、プローブ光となる第3の超短光パルス列を発生させる第3の超短光パルスレーザー光源と、を備えており、第1~3の超短光パルスレーザー光源は、特定の遅延時間をもって同期発振していてもよい。
光シャッタ部は、第1の光シャッタと第2の光シャッタとを備え、第2の超短光パルス列が、第1の光シャッタに入射され、第3の超短光パルス列が、第2の光シャッタに入射されてもよい。
光シャッタ部は、電気光学素子と偏光回転素子とから構成されるただ1つの光シャッタを備え、第2の超短光パルス列と、第3の超短光パルス列とが、光シャッタ部に入射されてもよい。
第2の超短光パルス列を前記ポンプ光に対して第1の遅延時間だけ遅延させる第1の光学遅延部と、第3の超短光パルス列をポンプ光に対して第2の遅延時間だけ遅延させる第2の光学遅延部と、をさらに備えていてもよい。
センサーがフォトダイオードで構成され、試料におけるプローブ光の反射光をフォトダイオードに入射し、反射強度を第1のプローブ信号として検出してもよい。
センサーが走査プローブ顕微鏡で構成され、ポンプ光及びプローブ光が照射された試料表面において、走査プローブ顕微鏡の探針により検出される第2のプローブ信号を検出してもよい。
【0021】
本発明の測定装置は、上記に記載の何れかのポンププローブ測定装置を構成要素の一つとして備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、パルスレーザーを用いたフェムト秒領域を含む時間分解測定において、照射光強度を変調したりパルスピッカーを用いてパルスを間引いたりすることなく、緩和時間の短い現象から長い現象までの広い測定範囲に亘って、微弱信号を高感度でかつ、高精度に安定して計測することができ、例えば1ns以下のpsオーダーの超高速物理現象を計測し解析するためのポンププローブ測定装置及びこの測定装置を利用した時間分解型の走査プローブ顕微鏡装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るポンププローブ測定装置の構成例を示す図である。
【図2】ポンプ光と、第1のプローブ光と、第2のプローブ光と、試料に照射されるポンプ光及び第1のプローブ光と、試料に照射されるポンプ光及び第2のプローブ光と、の関係を示すタイムチャートである。
【図3】遅延時間の時間変化を示すタイムチャートである。
【図4】検出部で測定される信号、つまりプローブ信号(P)を示すタイムチャートである。
【図5】プローブ信号(P)の遅延時間Tへの依存性を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るポンププローブ測定装置の構成例を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るポンププローブ測定装置の構成例を示す図である。
【図8】走査プローブ顕微鏡として走査トンネル顕微鏡を用いた検知部を示す模式図である。
【図9】ポンププローブ測定装置で測定した低温成長GaAsの反射光からのプローブ信号を示す図である。
【図10】従来型の遅延時間変調装置の構成を示す図である。
【図11】従来のパルスピッカーを説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るポンププローブ測定装置1の構成例を示す図である。
図1に示すように、ポンププローブ測定装置1は、ポンプ光3aとなる第1の超短光パルス列と第1のプローブ光3bとなる第2の超短光パルス列と第2のプローブ光3cとなる第3の超短光パルス列とを発生させる超短光パルスレーザー発生部2と、第2及び第3の超短光パルス列が入射される光シャッタ部6と、光シャッタ部6を制御する光シャッタ制御部10と、ポンプ光3a及びプローブ光3b,3cを試料に照射する照射光学系8を有し、試料7からのプローブ信号を検出するセンサー11とプローブ信号を検出する位相敏感検出手段12とからなる検出部20と、を備えている。

【0025】
超短光パルスレーザー発生部2は、ポンプ光3aとなる第1の超短光パルス列と、ポンプ光3aに対して第1の遅延時間を有していて第1のプローブ光3bとなる第2の超短光パルス列と、ポンプ光に対して第2の遅延時間を有していて第2のプローブ光3cとなる第3の超短光パルス列と、を発生させる。

【0026】
超短光パルスレーザー発生部2は、レーザー光源3と、分岐光学系4と、光学遅延部5と、を含んで構成されている。分岐光学系4は光学部材からなる。分岐光学系4は、レーザー光源3からのレーザー光をポンプ光3aと第1のプローブ光3bと第2のプローブ光3cとに分岐する

【0027】
レーザー光源3は、例えばフェムト秒パルスレーザー光源である。具体的には、例えば波長800nm,時間幅25fs程度のレーザーパルスを100MHz程度の繰り返し周波数で発生し、平均輝度1W程度のチタンサファイアレーザー発振器を使用することができる。

【0028】
分岐光学系4は、レーザー光源3からの光が入射する第1のハーフミラー4aと、このハーフミラー4aで反射された光の光路側に配設される第2のハーフミラー4bと、第2のハーフミラー4bを透過する光の光路側に配設される第1の鏡4cとから構成されている。

【0029】
第2のハーフミラー4bは、第1のハーフミラー4aの上方に配置されている。第1の鏡4cは、第2のハーフミラー4bの上方に配置されている。

【0030】
分岐光学系4では、レーザー光源3のレーザーパルスの出射光路中に配置された第1のハーフミラー4aによって、レーザー光源3からのレーザーパルスは透過光と反射光とに分岐される。
ここで、ハーフミラー4aによる透過光はポンプ光3aとして、また反射光は第1及び第2のプローブ光3b,3cとして利用される。

【0031】
第2のハーフミラー4bは、第1のハーフミラー4aによる反射光の光路中に配置され、この反射光を透過光と反射光とに分岐して、反射光を第2の超短光パルス列とし、透過光を第3の超短光パルス列とする。

【0032】
光学遅延部5は、第2のハーフミラー4bで反射された第2の超短光パルス列が入射される第1の光学遅延部5aと、第2のハーフミラー4bを透過し第1の鏡4cで反射される第3の超短光パルス列が入射される第2の光学遅延部5bと、から構成されている。第1及び第2の光学遅延部5a、5bは、公知の構成の可動ミラーによる光路長の調整を利用した光学系により構成することができる。例えば、可動ミラーは、入射光軸に対して45度の角度で斜めに配置された一対の反射ミラーから構成されており、入射光軸に沿って入射した光が一方の反射ミラーで入射光軸に対して垂直に反射されて他方の反射ミラーに入射し、他方の反射ミラーで入射方向に対して平行に反射されるようになっている。

【0033】
これにより、可動ミラーが光軸方向に移動調整されることにより、光路長の長短が調整されることになる。従って、第1の光学遅延部5aでは、可動ミラーの移動により、ポンプ光3aとなる第1の超短光パルス列に第1の遅延時間を有している第1のプローブ光3bを光シャッタ部6に出射する。ここで、可動ミラー光路長の可変範囲は、一般的には30cm程度であり、ポンプ光3aと第1のプローブ光3bとの間に、例えば0~1nsの遅延時間の設定範囲を与えることになる。

【0034】
同様に、第2の光学遅延部5bは、可動ミラーの移動により、第2のプローブ光3cのポンプ光3aに対する第2の遅延時間を適宜に設定することができる。

【0035】
以上説明したように、超短光パルスレーザー発生部2は、レーザー光源3からのレーザー光を、ポンプ光3aとなる第1の超短光パルス列と、ポンプ光3aに対して遅延時間Td1を有している第1のプローブ光3bとなる第2の超短光パルス列と、ポンプ光3aに対して遅延時間Td2を有している第2のプローブ光3cとなる第3の超短光パルス列を発生させる。

【0036】
光シャッタ部6は、第1のプローブ光3bとなる第2の超短光パルス列が入射される第1の光シャッタ6aと、第2のプローブ光3cとなる第3の超短光パルス列が入射される第2の光シャッタ6bとから構成されている。光シャッタ部6は、光シャッタ制御部10によって制御される。遅延時間変調は、光シャッタ6aと光シャッタ6bとを交互に開くことによって行われる。第1及び第2の光シャッタ6a,6bとしては、音響光学変調器(AOM)や電気光学変調器(EOM)を用いることができる。電気光学変調器として、ポッケルスセルを使用できる。第1及び第2の光シャッタ6a,6bとしてポッケルスセルを使用すれば、機械的振動などを伴うことなく1kHz以上の高速変調を実現できる。

【0037】
光シャッタ制御部10は、例えばファンクションジェネレータとインバータから構成される。ファンクションジェネレータは1kHzの矩形波信号を生成し、その出力が第1の光シャッタ6aに送られる。インバータはファンクションジェネレータの信号の符号を反転させ、その出力が第2の光シャッタ6bに送られる。この構成により、第1の光シャッタ6aと第2の光シャッタ6bとは、例えば1kHzの周波数に対応する周期で交互に開くことになる。

【0038】
検出部20は、照射光学系8と、試料7に照射されるプローブパルス光3b,3cの反射光等から得られるプローブ信号を測定するセンサー11と、プローブ信号の遅延時間依存性を検出する位相敏感検出手段12とから構成されている。
照射光学系8は、超短光パルスレーザー発生部2から発生されたポンプ光3aと、ポンプ光3aに対して第1の遅延時間を有している第1のプローブ光3bと、ポンプ光3aに対して第2の遅延時間を有している第2のプローブ光3cと、を試料7に照射する機能を有している。図1に示す照射光学系8は、第2の鏡8aと2枚のハーフミラー8b,8cとで構成されている。さらに、照射光学系8は、ポンプ光3aと第1のプローブ光3bと第2のプローブ光3cを、それぞれ試料7の表面に導く鏡や対物レンズを備えて構成されてもよい。これにより、ポンプ光3aと第1のプローブ光3bと第2のプローブ光3cとが試料7の表面に集光される。

【0039】
プローブ信号として反射光強度を測定する場合には、センサー11は例えば、Si製のフォトダイオードを用いて構成してもよい。フォトダイオードとしては、pinフォトダイオードを用いることができる。試料7で反射されたプローブ光をpinフォトダイオードに導き、得られる反射光強度をプローブ信号として測定することが可能となる。

【0040】
位相敏感検出手段12には2位相ロックインアンプを用いることができる。2位相ロックインアンプにプローブ信号を入力し、シャッタ制御部10における遅延時間の変調周波数で位相敏感検出を行うことで、センサー11により試料7から得られるプローブ信号の遅延時間依存性を測定することが可能となる。

【0041】
最初にレーザー光源3から試料7に照射されるポンプ光3aの光路について説明する。
レーザー光源3からの光は、第1のハーフミラー4aを透過し、第2の鏡8aで反射された後に第3のハーフミラー8bを透過し、この透過光が第4のハーフミラー8cで反射されて試料7に入射するポンプ光3aとなる。

【0042】
次に、レーザー光源3から試料7に照射される第1のプローブ光3bについて説明する。
レーザー光源3からの光の内、第1のハーフミラー4aで反射された光は、第2のハーフミラー4bで透過光と反射光に分割される。この反射光の光路上には、第1の光学遅延部5aと第1の光シャッタ6aと第3のハーフミラー8bとが配設されている。
これにより、レーザー光源3からの光の内、第1のハーフミラー4aで反射され、次に第2のハーフミラー4bで反射された光は、第1の光学遅延部5aと第1の光シャッタ6aを通過し、第3のハーフミラー8bで反射され、次に第4のハーフミラー8cで反射された後に第1のプローブ光3bとなり試料7に照射される。第1のプローブ光3bは、第1の光学遅延部5aによってTd1の遅延時間が生じ、ポンプ光3aが照射された後にTd1が経過した後に試料7に到達する。

【0043】
次にレーザー光源3から試料7に照射される第2のプローブ光3cについて説明する。
レーザー光源3からの光の内、第2のハーフミラー4bを透過した光は、第1の鏡4cで反射される。この反射光の光路上には、第2の光学遅延部5b、第2の光シャッタ6b及び第4のハーフミラー8cが配設されている。
これにより、レーザー光源3からの光の内、第1のハーフミラー4aで反射され次に第2のハーフミラー4bを透過した光は、第1の鏡4cで反射された後、第2の光学遅延部5bと第2の光シャッタ6bを通過し、第4のハーフミラー8cを透過した後に第2のプローブ光3cとなり試料7に照射される。第2のプローブ光3cは、第2の光学遅延部5bによってTd2の遅延時間が生じ、ポンプ光3aが照射された後にTd2が経過した後に試料7に到達する。

【0044】
図2は、ポンプ光3aと、第1のプローブ光3bと、第2のプローブ光3cと、試料7に照射されるポンプ光3a及び第1のプローブ光3bと、試料7に照射されるポンプ光3a及び第2のプローブ光3cとの関係を示すタイムチャートである。
図2の横軸は時間であり、縦軸は上から下の順に、ポンプ光3a、第1のプローブ光3b、第2のプローブ光3c、光シャッタ部6により第1のプローブ光3bだけを通したときの試料7上への入射光(遅延時間はTd1)、光シャッタ部6により第2のプローブ光3cだけを通したときの試料7上への入射光(遅延時間はTd2)である。
図2に示すように、光シャッタ部6により、第1のプローブ光3bと第2のプローブ光3cはどちらか一方だけが試料7に照射される。したがって、試料7への入射光は第1のプローブ光3bが入射する場合にはTd1の、第2のプローブ光3cが入射する場合にはTd2の遅延時間を持つパルス対から構成されることになる。

【0045】
図3は、遅延時間(T)の時間変化を示すタイムチャートである。
図3に示すように、光シャッタ部6を周期的に切り替えることにより、プローブ光の遅延時間はTd1とTd2との間で矩形波的に変調されることになる。

【0046】
図4は、センサー11で測定されるプローブ信号(P)の時間変化を示すタイムチャートである。
図4に示すように、遅延時間の周期的変調に伴ってセンサー11で測定されるプローブ信号はP(Td1)とP(Td2)との間を振動する矩形波的な信号となる。

【0047】
矩形波的に振動するプローブ信号が位相敏感検出手段12へ入力されることにより、位相敏感検出手段12から得られる測定値は、遅延時間Td1及びTd2に対応するプローブ信号P(Td1)及びP(Td2)の差P(Td1)-P(Td2)に比例する。
図5はプローブ信号(P)の遅延時間Tへの依存性を示す図である。
図5に示すように、一般にプローブ信号の遅延時間依存性P(T)は大きなTに対してPの平常値P(∞)に漸近することから、特に遅延時間Td2を大きく取った場合、測定値を近似的にP(Td1)-P(∞)と見なすことができる。このため、測定値はP(∞)を基準として計ったP(Td1)そのものに比例する。
これにより、本発明のポンププローブ測定装置1では、例えば1ns以下の、つまりpsオーダーの高速現象に対してプローブ信号の遅延時間依存性を精度よく測定できる。

【0048】
以下に、パルスの繰り返し周波数、パルスの繰り返し周期、2つの遅延時間、遅延時間の変調周波数の一例を示す。
パルスの繰り返し周波数:100MHz
パルスの繰り返し周期:10ns
2つの遅延時間:0~5ns
遅延時間の変調周波数(シャッタの開閉周波数):1kHz(周期は1ms)

【0049】
(第2の実施形態)
図6は本発明の第2の実施形態に係るポンププローブ測定装置30の構成例を示す図である。
図6に示すように、第2の実施形態に係るポンププローブ測定装置30は、図1に示す光シャッタ部6に代えて単一の光シャッタ部6Aを備えている点が、第1の実施形態に係るポンププローブ測定装置1と異なっている。光シャッタ部6Aは、光シャッタ6cとなる一つのポッケルスセルと、第5のハーフミラー6eと、偏光回転素子31と、第3の鏡6dとで構成されている。照射光学系8Aは、第2の鏡8aと、第3のハーフミラー8bとから構成されている。つまり、図1の照射光学系8に比較すると、ハーフミラーが1枚少ない構成である。光シャッタ制御部10は、光シャッタ6cとなるポッケルスセルを制御する信号として、例えば1kHzの矩形波を発生する回路を備えている。光シャッタ制御部10はパルス発生器やファンクションジェネレータを使用できる。以下、図6においては、光シャッタ6cをポッケルスセルとして説明する。

【0050】
最初に、レーザー光源3から試料7に照射されるポンプ光3aの光路について説明する。
レーザー光源3からの光は、第1のハーフミラー4aを透過し、第2の鏡8aで反射された後に、第3のハーフミラー8bで反射されて試料7に入射するポンプ光3aとなる。

【0051】
次に、レーザー光源3から試料7に照射される第1のプローブ光3bについて説明する。
レーザー光源3からの光の内、第1のハーフミラー4aで反射された光は、第2のハーフミラー4bで透過光と反射光に分割される。この反射光の光路上には、第1の光学遅延部5a及び偏光回転素子31と、第3の鏡6dと、が配設されている。偏光回転素子31としては、λ/2板を使用することができる。λ/2板31は、1/2波長板とも呼ばれる。

【0052】
これにより、レーザー光源3からの光の内、第1のハーフミラー4aで反射され次に第2のハーフミラー4bで反射された光は、第1の光学遅延部5aとλ/2板31を通過し、第3の鏡6dで反射され、次に第5のハーフミラー6eで反射された後に、ポッケルスセル6cを通過して第1のプローブ光3bとなり試料7に照射される。第1のプローブ光3bは、第1の光学遅延部5aによってTd1の遅延時間が生じる。このため、第1のプローブ光3bはポンプ光3aが試料7に照射された後、Td1が経過した後に試料7に到達する。

【0053】
次に、レーザー光源3から試料7に照射される第2のプローブ光3cについて説明する。
レーザー光源3からの光の内、第2のハーフミラー4bを透過した光は、第1の鏡4cで反射される。この反射光の光路上には、第2の光学遅延部5bと、第5のハーフミラー6eと、ポッケルスセル6cと、第3のハーフミラー8bと、が配設されている。
これにより、レーザー光源3からの光の内、第1のハーフミラー4aで反射され次に第2のハーフミラー4bを透過した光は、第1の鏡4cで反射され、第2の光学遅延部5b、第5のハーフミラー6e、ポッケルスセル6c及び第3のハーフミラー8bを透過した後に第2のプローブ光3cとなり試料7に照射される。第2のプローブ光3cは、第2の光学遅延部5bによってTd2の遅延時間が生じる。このため、第2のプローブ光3cは、ポンプ光3aが試料7に照射された後、Td2が経過した後に試料7に到達する。

【0054】
ポッケルスセル6cが、ある偏光方向の光を通過させない、つまり、ブロックする時、それと直交する偏光方向の光はほとんどロス無く素子を通過する。逆に、ある偏光方向の光をほとんど損失無く透過させるとき、それと直交する偏光方向の光はブロックされる。
したがって、λ/2板のような偏光回転素子31によって、第2のパルス列と第3のパルス列との偏光方向を直交させておくと、第2のパルス列に対してポッケルスセル6cを開けば、自動的に第3のパルス列に対してポッケルスセル6cを閉じたことになる。
逆に、第2のパルス列に対してポッケルスセル6cを閉じれば、自動的に第3のパルス列に対してポッケルスセル6cを開いたことになる。
これにより、図1に示したポンププローブ測定装置1では2つ必要だった光シャッタ6a,6bが、図6に示したポンププローブ測定装置30では光シャッタとなるポッケルスセル6cが1つしかないにもかかわらず、ポンププローブ測定装置1と同じ動作を行うことができる。

【0055】
ポンププローブ測定装置30によれば、ポンププローブ測定装置1の片方の光学遅延部5aの次にλ/2板31を挿入し、偏光を90度回転させておくことで、使用するポッケルスセル6cを1つに減らすことが可能となる。
さらに、ポンププローブ測定装置30によれば、ポンププローブ測定装置1で行われる2つの光シャッタ6a,6bを高い精度で時間的に同期させて動作させる技術的困難を取り除くことができる。

【0056】
(第3の実施形態)
図7は本発明の第3の実施形態に係るポンププローブ測定装置40の構成例を示す図である。
図7に示すように、第3の実施形態に係るポンププローブ測定装置40は、前述の超短光パルスレーザー発生部2に代えて超短光パルスレーザー発生部2Aを備えている点が、第1の実施形態に係るポンププローブ測定装置1と異なっている。超短光パルスレーザー発生部2Aは、ポンプ光3aを発生する第1のレーザー光源43aと、第1のプローブ光3bを発生する第2のレーザー光源43bと、第2のプローブ光3cを発生する第3のレーザー光源43cと、からなる3台のレーザー光源43で構成されている。

【0057】
最初に、第1のレーザー光源43aから試料7に照射されるポンプ光3aの光路について説明する。
第1のレーザー光源43aからの光は、鏡8aで反射された後に第3のハーフミラー8bを透過し、次に第4のハーフミラー8cで反射されて試料7に入射するポンプ光3aとなる。

【0058】
次に、第2のレーザー光源43bから試料7に照射される第1のプローブ光3bについて説明する。
第2のレーザー光源43bは、第1のレーザー光源43aと同期し、かつ、遅延時間Td1の後で発振するレーザー光源である。第2のレーザー光源43bから発生するパルス光は、第1の光シャッタ6aを通過した後、第3のハーフミラー8bで反射され、次に第4のハーフミラー8cで反射されて、第1のプローブ光3bとなり試料7に照射される。第1のプローブ光3bは、ポンプ光3aが照射された後にTd1が経過した後に試料7に到達する。

【0059】
次に、第3のレーザー光源43cから試料7に照射される第2のプローブ光3cについて説明する。
第3のレーザー光源43cは、第1のレーザー光源43aと同期し、かつ、遅延時間Td2の後で発振するレーザー光源である。第3のレーザー光源43cから発生するパルス光は、第2の光シャッタ6bを通過した後、第4のハーフミラー8cを透過して、第2のプローブ光3cとなり試料7に照射される。第2のプローブ光3cは、試料7にポンプ光3aが照射された後にTd2が経過した後に試料7に到達する。

【0060】
ポンププローブ測定装置40によれば、複数のレーザー光源43を同期発振させて用いるので、光学遅延部5が不要となる。

【0061】
本発明のポンププローブ測定装置1,30,40では、レーザー発振器からのパルスを間引くことなく、測定に用いることが可能となり、かつ大振幅かつ高周波数での遅延時間変調を実現できる。これにより、試料7への光キャリア励起とその緩和過程の測定を高感度で測定することができる。

【0062】
(第4の実施形態)
第1~第3の実施形態では、試料7からのプローブ信号を検出するセンサー11は、試料7からの反射光をフォトダイオードを用いて検出したが、試料7上に置いた走査プローブ顕微鏡装置をセンサーとして用いる別の実施形態について説明する。
第1~第3の実施形態で例示した反射光以外に検出部20で取得するプローブ信号としては、試料7に近接して配置されるセンサーとなる探針から得られるプローブ信号が挙げられる。このような探針による測定としては、走査トンネル顕微鏡、走査原子間力顕微鏡(AFM)や走査近接場顕微鏡(NSOM)等を用いることができる。本発明では、これらの顕微鏡を走査プローブ顕微鏡(SPM)と総称して呼ぶ。

【0063】
検出部20として、上記のような試料7に近接して配置されるセンサーを用いた場合には、ポンプ光3a及びプローブ光3b,3c等により励起される試料7から得られるプローブ信号を測定することが可能となる。走査プローブ顕微鏡の場合には、ポンプ光3aの平均的な励起光強度が上がることで信号雑音比(S/N比)も大幅に向上する。

【0064】
図8は、走査プローブ顕微鏡として走査トンネル顕微鏡を用いたセンサー11aを示す模式図である。
図8に示すようにセンサー11aは、試料7に近接して図示しない走査トンネル顕微鏡の探針15が配置されている。試料7と探針15との間には直流電源16から電圧が印加され、試料7と探針15との間に流れるトンネル電流を測定する電流計17が接続されている。走査トンネル顕微鏡の探針15としては金属の探針を使用できる。走査プローブ顕微鏡の場合には、測定対象に応じて探針15となるセンサーを用いる。

【0065】
試料7にポンプ光3aとプローブ光3b,3cからなるパルス対を照射して、遅延時間に対してプローブ信号、つまりトンネル電流がどのように依存するかを測定することで、第1~第3の実施形態における反射光測定と同様に、例えば1ns以下の高速現象に対してプローブ信号の遅延時間依存性を精度よく測定できる。試料7の表面で探針15を走査することで、試料7表面の2次元測定が可能となる。つまり、ポンプ光3aにより励起された試料7の表面が緩和していく際に試料7の表面の励起過程や緩和過程を、オングストロームからnm程度の高い空間分解能で観測することができるので、遅延時間変調型で、フェムト秒オーダーの時間分解を有する走査プローブ顕微鏡装置を実現できる。

【0066】
なお、本発明のポンププローブ測定装置1,30,40は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡などの測定装置に付加して各種の測定装置としても使用することができる。
以下に示す実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0067】
上記実施形態のうち、図6に示したポンププローブ測定装置30で測定した実施例を説明する。
図6におけるレーザー光源3として、コヒレント社のCHAMELEONを用いた。光シャッタ6cとして、CONOPTICS社製のポッケルスセル(350-80LA)を用いた。試料7に照射されたプローブ光の反射光を、pinフォトダイオードで受光し、このプローブ信号を遅延時間の周期的変調信号に同期して位相敏感検出手段12で検出した。位相敏感検出手段12としては、Stanford Research Systems社のロックインアンプ(SR830)を用いた。
ポンププローブ測定装置30を用いた光パルスの条件を以下に示す。
パルス幅:150fs
パルスの繰り返し周波数:90MHz
d2:250ps
遅延時間の変調周波数(シャッタの開閉周波数):1kHz
【実施例】
【0068】
次に、ポンププローブ測定装置30を用いた測定結果について説明する。
測定対象となる試料7としては、GaAs基板上に分子線エピタキシャル成長法(MBE)で、厚さが1μmのAlGaAs層と、AlGaAs層上に低温の250℃で厚さが1μmのGaAs層を成長させたエピウェハを作製した。250℃程度の成長温度では、GaAs層に高濃度の欠陥が導入されることが知られており、そのために光キャリア寿命が非常に短くなる。光キャリア寿命は、数ps程度である。
【実施例】
【0069】
図9は、ポンププローブ測定装置30で測定した低温成長GaAsの反射光からのプローブ信号を示す図である。図9の横軸は遅延時間Td1(ps)、縦軸は反射率の変調振幅ΔR=R(Td1)-R(∞)を反射率の絶対値Rで割った値である。
図9から明らかなように、ポンププローブ測定装置30を用い、振幅100ps、周波数1kHzの遅延時間変調を行い、低温成長したGaAs層の光キャリア励起と励起直後の緩和過程の測定がpsオーダーで行えることが分かった。
ポンププローブ測定装置30で測定した上記の測定結果を、パルスピッカーを使用して、パルスを間引いたポンププローブ測定装置(特許文献1参照)と比べると、平均的な励起光強度を20倍程度高めた上で、高精度な遅延時間測定を行うことができた。
【実施例】
【0070】
本発明は、上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、これまで幅広く使われてきた遅延時間変調法によるポンププローブ測定法の遅延時間変調方法を飛躍的に改善するものであり、今後、超高速現象の利用が重要になることを考えると、その適用範囲は非常に広い。本発明は、例えば半導体ナノデバイス内部におけるps領域のキャリア寿命や輸送現象の計測や、新規な機能デバイスの研究段階において多大な貢献が可能となる他、試作デバイスの評価など現場での活用を含め幅広く応用されることが期待される。
【符号の説明】
【0072】
1、30、40:ポンププローブ測定装置
2、2A:超短光パルスレーザー発生部
3:レーザー光源
3a:ポンプ光
3b:第1のプローブ光
3c:第2のプローブ光
4:分岐光学系
4a、4b:ハーフミラー
4c:鏡
5:光学遅延部
6、6A:光シャッタ
6a、6b、6c:ポッケルスセル
6d:鏡
6e:ハーフミラー
7:試料
8、8A:照射光学系
8a:鏡
8b、8c:ハーフミラー
10:光シャッタ制御部
11:センサー
12:位相敏感検出手段
15:探針
16:直流電源
17:電流計
20:検出部
31:偏光回転素子(λ/2板)
43:レーザー光源
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図10】
7
【図11】
8
【図8】
9
【図9】
10