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明細書 :ポリマー材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4853985号 (P4853985)
登録日 平成23年11月4日(2011.11.4)
発行日 平成24年1月11日(2012.1.11)
発明の名称または考案の名称 ポリマー材料の製造方法
国際特許分類 C08J   7/00        (2006.01)
C08J   3/12        (2006.01)
C08J   3/28        (2006.01)
FI C08J 7/00 302
C08J 3/12 Z
C08J 3/28
請求項の数または発明の数 12
全頁数 13
出願番号 特願2011-527680 (P2011-527680)
出願日 平成22年8月17日(2010.8.17)
国際出願番号 PCT/JP2010/063869
国際公開番号 WO2011/021625
国際公開日 平成23年2月24日(2011.2.24)
優先権出願番号 2009188892
優先日 平成21年8月18日(2009.8.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年8月8日(2011.8.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】藪 浩
【氏名】樋口 剛志
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】芦原 ゆりか
参考文献・文献 特開2002-294086(JP,A)
国際公開第2008/047514(WO,A1)
調査した分野 C08J 7/00-02,12-18
C08J 3/00-28
B29C 71/04
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の工程(1)から(3)を含む、ミクロ相分離構造が形成されたブロックコポリマー固体、あるいはミクロ相分離構造が形成されたブロックコポリマーを含有するアロイ、ブレンド又はコンポジット固体の製造方法。
(1)ブロックコポリマー固体、あるいはブロックコポリマーを含有するアロイ、ブレンド又はコンポジット固体を、各成分が溶解しない溶媒中に浸漬する工程;
(2)上記(1)で得た固体を耐圧容器に封入する工程;及び
(3)上記(2)の固体あるいは溶媒にマイクロ波を照射する工程:
【請求項2】
ブロックコポリマー固体、あるいはブロックコポリマーを含有するアロイ、ブレンド又はコンポジット固体の形状が、フィルム状、微粒子状、又はファイバー状である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記アロイが、2種以上のブロックコポリマーからなるアロイである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
上記アロイがブロックコポリマーとホモポリマーからなるアロイである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
上記ブレンドが、2種以上のブロックコポリマーからなるブレンドである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
上記ブレンドが、ブロックコポリマーとホモポリマーからなるブレンドである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
上記コンポジットが、ブロックコポリマーと無機物粒子からなるコンポジットである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
上記コンポジットが、ブロックコポリマーと有機物粒子からなるコンポジットである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
溶媒が、2種以上の溶媒の混合物である、請求項1から8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
溶媒として少なくとも水を使用する、請求項1から8の何れかに記載の方法。
【請求項11】
マイクロ波の波長が2~4GHzである、請求項1から10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
用いる無機物粒子のサイズが0.1nm以上100nm以下である請求項7に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロ相分離構造が形成されたブロックコポリマー固体、あるいはミクロ相分離構造が形成されたブロックコポリマーを含有するアロイ、ブレンド又はコンポジット固体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2種以上のポリマーセグメントからなるブロックコポリマーはセグメント間の親和性が低い場合、分子長(数nm~数百nm)程度のミクロ相分離構造を形成することが知られている。ミクロ相分離構造は一般に各セグメントの共重合比によって変化し、2つのポリマーセグメントからなるジブロックコポリマーでは、片方のセグメントの割合が増加するに従って、球状、筒状(シリンダー)、共連続(ジャイロイド)、層状(ラメラ)などの相分離構造を形成する。一方の割合が半分を超えると逆相の構造を形成する。
【0003】
このようなミクロ相分離構造はナノスケールの鋳型として、様々な応用が検討されている。例えばシリンダー構造を形成し、シリンダーの内部に磁気記録媒体を封入することで、ナノスケールでパターン化した磁気記録媒体が作製できる(特許文献1)。また、ナノワイヤーの鋳型(特許文献2)や、高効率の発光素子(特許文献3)、レーザ発振用のミラー(非特許文献3)など多様な産業分野に応用されている。
【0004】
これらの応用のためには、均一で安定な相分離構造の形成が重要である。通常ブロックコポリマーの固体は溶液キャスト法などで製造されるが、そのままでは明瞭な相分離構造が形成されない。これはポリマーの絡み合いが固体形成時に凍結されてしまうためである。そのため、様々な応用へ展開するためには、一度ガラス転移点(Tg)以上に加熱し、徐冷することにより、明瞭で均一な相分離構造を形成する手法がとられている(非特許文献1)。これは高分子鎖の運動性を上昇させ、ポリマー鎖間の相互作用をより大きくするためである。しかし、この手法では、ブロックコポリマー固体をTg以上に加熱したまま数日~数週間保持する必要があり、非常に生産性が低く、実用化の障壁となっていた。高分子鎖は一般に緩和時間が長く、構造の転移には長い時間がかかるためである。
【0005】
一方ラッセルらはブロックコポリマーの一方あるいは両方のセグメントに親和性を持つ溶媒蒸気にブロックコポリマー固体を暴露することで、均一性の高いフィルムが得られる事を報告している(非特許文献2)。しかしながら本手法でも数日程度の時間がかかる上、溶媒が浸透できる程度の薄いフィルムにしか適用できないという問題が有った。
【0006】
ブロックコポリマーを用いたアロイ・ブレンド・コンポジットについても同様の問題があった。アロイ・ブレンド・コンポジットとは、相溶性のポリマー同士を混合したもの、非相溶性のポリマー同士を混合したもの、少なくとも1種のポリマーと異種材料を組み合わせたものをそれぞれ指す(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】長瀧 義幸、西原 昭二、宮田 一司、河野 研二、「磁気記録媒体」、特許公開平5-298666
【特許文献2】トミーネン、マーク ティ、ラッセル、トーマス ピー、ウァザッヘ、アンドレイ、バル、ムスタファ、「ナノ製造」、特許公表2004-527905
【特許文献3】フォン・ホン・ハン、森 清隆、ジョージ・ジー・マリアラス、ユ・ジェ・フォー、「移動度を有するように設計されたエレクトロルミネセントデバイス」、特許公開2008-131029
【0008】

【非特許文献1】Sang-Min Park, Gordon S. W. Craig, Young-Hye La, and Paul F. Nealey, Macromolecules, 2008, 41, 9124-9129
【非特許文献2】Kevin A. Cavicchi, Keith J. Berthiaume, Thomas P. Russell, Polymer 46, 2005, 11635-11639
【非特許文献3】「ポリマーABCハンドブック」高分子学会高分子ABC研究会編、NTS出版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
相分離構造が形成されていないか、又は未発達な相分離構造を有するブロックコポリマー固体あるいはブロックコポリマーを含有するアロイ・ブレンド・コンポジットから、均一で明瞭な相分離構造を迅速に形成する方法が求められている。本発明は、生産性よくミクロ相分離構造を形成したブロックコポリマー固体を製造する方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ブロックコポリマー固体あるいはブロックコポリマーを含有するアロイ・ブレンド・コンポジット固体を、耐圧容器中でそれぞれが溶解しない溶媒中に浸漬し、これにマイクロ波を照射して加熱及び加圧を行うことにより、迅速に相分離構造が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明によれば、下記の工程(1)から(3)を含む、ミクロ相分離構造が形成されたブロックコポリマー固体、あるいはミクロ相分離構造が形成されたブロックコポリマーを含有するアロイ、ブレンド又はコンポジット固体の製造方法が提供される。
(1)ブロックコポリマー固体、あるいはブロックコポリマーを含有するアロイ、ブレンド又はコンポジット固体を、各成分が溶解しない溶媒中に浸漬する工程;
(2)上記(1)で得た固体を耐圧容器に封入する工程;及び
(3)上記(2)の固体あるいは溶媒にマイクロ波を照射する工程:
【0012】
好ましくは、ブロックコポリマー固体、あるいはブロックコポリマーを含有するアロイ、ブレンド又はコンポジット固体の形状が、フィルム状、微粒子状、又はファイバー状である。
好ましくは、上記アロイが、2種以上のブロックコポリマーからなるアロイである。
好ましくは、上記アロイがブロックコポリマーとホモポリマーからなるアロイである。
【0013】
好ましくは、上記ブレンドが、2種以上のブロックコポリマーからなるブレンドである。
好ましくは、上記ブレンドが、ブロックコポリマーとホモポリマーからなるブレンドである。
【0014】
好ましくは、上記コンポジットが、ブロックコポリマーと無機物粒子からなるコンポジットである。
好ましくは、上記コンポジットが、ブロックコポリマーと有機物粒子からなるコンポジットである。
【0015】
好ましくは、溶媒が、2種以上の溶媒の混合物である。
好ましくは、溶媒として少なくとも水を使用する。
好ましくは、マイクロ波の波長は2~4GHzである。
好ましくは、用いる無機物粒子のサイズは0.1nm以上100nm以下である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来の方法では数日から数週間必要とされていたブロックコポリマーの相分離形成に必要な時間を1時間以内に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、マイクロ波照射によりミクロ相分離構造が形成されたブロックコポリマー固体の製造例(本発明)についての結果を示す。
【図2】図2は、常温・常圧でのアニーリング処理により同心球構造が形成されたブロックコポリマー固体の製造例(参考例)についての結果を示す。
【図3】図3は、ブロック共重合体の共重合比が異なるブロック共重合体微粒子を用いてマイクロ波照射によりミクロ相分離構造が形成されたブロックコポリマー固体の製造例についての結果を示す。
【図4】図4は、無機ナノ粒子とのコンポジットを用いてマイクロ波照射により相分離構造が形成された結果を示す。
【図5】図5は、マイクロ波照射前後のフィルムの斜入射小角X線回折測定を行った結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明においては、ブロックコポリマーの固体を、ブロックコポリマーが溶解しない溶媒中に浸漬し、耐圧容器に封入した後、溶媒あるいはブロックコポリマーの特性吸収に合致したマイクロ波を照射することにより、効率よく加熱・および加圧を行うことで迅速にミクロ相分離構造が形成されたブロックコポリマー固体を得ることができる。また、ブロックコポリマー固体の代わりに、ブロックコポリマーを含有するアロイ、ブレンド又はコンポジット固体を用いてもよい。

【0019】
本発明で用いるブロックコポリマーの種類は特に限定されず、ミクロ相分離構造を形成できるものであれば、任意のブロックコポリマーを用いることができる。ブロックコポリマーとは、複数の単独ポリマー鎖を部分構成成分(ブロック)とするコポリマーをいう。ブロックコポリマーの代表例としては、直鎖型のポリマーで、繰り返し単位Aを有するAポリマー鎖と繰り返し単位Bを有するBポリマー鎖が末端で化学結合した-(A)m-(B)n-という構造を有するA-B型のジブロックコポリマーを挙げることができる。さらに、3種類以上のポリマー鎖が結合したブロックコポリマーでもよい。トリブロックコポリマーの場合、A-B-A型、B-A-B型、A-B-C型のいずれでもよい。

【0020】
本発明で用いるブロックコポリマーの具体例としては、スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンブロックコポリマー等の芳香族炭化水素-脂肪族炭化水素ブロックコポリマー、スチレン-アクリル酸ブロックコポリマー、スチレン-アクリル酸ナトリウムブロックコポリマー、スチレン-ポリエチレングリコールブロックコポリマー、フルオレン-メタクリル酸メチルブロックコポリマー等の芳香族炭化水素-脂肪族極性化合物ブロックコポリマー、スチレン-ビニルピリジン等の芳香族炭化水素-芳香族極性化合物ブロックコポリマー等が挙げられる。

【0021】
本発明では、ブロックコポリマー固体のみならず、ブロックコポリマーを含有するアロイ、ブレンド又はコンポジット固体を用いることもできる。アロイとは相溶性のポリマー同士を混合したものであり、2種以上のブロックコポリマーからなるアロイでもよいし、ブロックコポリマーとホモポリマーからなるアロイでもよい。ブレンドとは非相溶性のポリマー同士を混合したものであり、2種以上のブロックコポリマーからなるブレンドでもよいし、ブロックコポリマーとホモポリマーからなるブレンドでもよい。アロイ又はブレンドを用いる場合に使用するホモポリマーの種類は特に限定されず、任意のホモポリマーを使用することができ、ブロックコポリマーを構成するモノマーと同一のモノマーを用いたホモポリマーでもよいし、ブロックコポリマーを構成するモノマーとは異なるモノマーを用いたホモポリマーでもよい。

【0022】
また、コンポジットとは少なくとも1種のポリマーと異種材料を組み合わせたものであり、ブロックコポリマーと無機物粒子からなるコンポジットでもよいし、ブロックコポリマーと有機物粒子からなるコンポジットでもよい。無機物粒子としては、金、銀、白金、パラジウム、コバルトなどの金属粒子、酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛などの無機酸化物粒子、硫化カドミウム、カドミウムテルル、カドミウムセレンなどの化合物半導体粒子などを使用することができる。また、これらの無機物粒子は単体で使用しても良いし、表面を有機物で被覆しても良い。また、有機物粒子としては、重合ポリスチレン微粒子などの架橋性ポリマー微粒子、シアニン色素粒子などの有機色素粒子、カーボンブラックやフラーレン、カーボンナノチューブなどの炭素粒子などを使用することができる。好ましくは、用いる無機物粒子のサイズは0.1nm以上100nm以下である。

【0023】
ブロックコポリマー固体、あるいはブロックコポリマーを含有するアロイ、ブレンド又はコンポジット固体の形状は特に限定されないが、例えば、フィルム状、微粒子状、又はファイバー状とすることができる。ブロックコポリマー固体などをフィルム状、微粒子状、又はファイバー状の形態にする方法は特に限定されず、当業者に公知の方法により行うことができる。例えば、微粒子については、自己組織化析出法(SORP)法)(Hiroshi Yabu, Takeshi Higuchi, Masatsugu Shimomura, Advanced Materials, 2005, 2602-2605)などにより調製することができる。

【0024】
本発明では、ブロックコポリマー固体、あるいはブロックコポリマーを含有するアロイ、ブレンド又はコンポジット固体を、各成分が溶解しない溶媒中に浸漬する。溶媒の具体例としては、例えば、最も一般的な水のほかに、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ブチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシド等の高極性有機溶媒、酢酸等の酸などを挙げることができ、上記の中から固体の各成分が溶解しない溶媒を選択して用いることができる。溶媒は1種の溶媒でもよいし、2種以上の溶媒の混合物でもよい。溶媒としては、例えば、水を使用することが好ましい。

【0025】
本発明では、溶媒に浸漬した固体を耐圧容器に封入して、マイクロ波を照射する。本発明で使用する耐圧容器の種類は特に限定されず、溶媒に浸漬した固体を内部に設置でき、固体にマイクロ波を照射できるものであれば、任意の容器を使用することができる。例えば、テフロン製の耐圧容器などを用いることができる。

【0026】
マイクロ波とは、周波数300メガヘルツ~3テラヘルツの電波を意味し、一般的には波長100μm~1mの電波である。マイクロ波を物質に照射すると、マイクロ波と物質の相互作用によって物質の内部から熱を生じさせることができる。マイクロ波加熱では被加熱物自体が 発熱体となるので、内部も外部も一様に温度が上昇する。このようなマイクロ波加熱を利用した装置としては、電子レンジ(日本の電子レンジで使用されるマイクロ波の周波数は通常2,450MHzである)が汎用されている。本発明におけるマイクロ波の照射は、例えば、汎用の電子レンジを使用して行うこともできる。マイクロ波の照射時間は特に限定されず、所望のミクロ相分離構造を形成するのに十分な時間で行えばよい。マイクロ波の照射時間は、例えば30秒から30分、好ましくは30秒から10分、さらに好ましくは30秒から5分である。好ましくは、マイクロ波の波長は2~4GHzである。

【0027】
以下の実施例により本発明を更に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
ポリ(スチレン-ブロック-イソプレン)(以下PS-b-PI。分子量PS:17,800、PI:12,000、Polymer Source社製)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた。攪拌しながらTHF溶液に水をTHF:水=1:2になるまで加え、攪拌を止めた。恒温槽を10℃に設定し、恒温槽中でTHFを蒸発させ、PS-b-PI微粒子を得た(自己組織化析出法(SORP)法)(Hiroshi Yabu, Takeshi Higuchi, Masatsugu Shimomura, Advanced Materials, 2005, 2602-2605を参照)。PI部位を四酸化オスミウムにより染色し、固定化した後、走査型透過電子顕微鏡(STEM)により観察を行ったところ、明瞭な相分離構造は形成されていなかった(disorder相)(図1)。
【実施例】
【0029】
この溶液をテフロン性耐圧容器に封入し、700Wの電子レンジで2分間加熱を行った。その後、四酸化オスミウムにより染色を行い、STEMで観察を行ったところ、明瞭な同心球状構造が観察された(図1)。この結果から、マイクロ波による加熱が相分離構造を迅速に形成することを促す効果があることが実証された。
【実施例】
【0030】
(参考例1)
実施例1と同じPS-b-PIを用いて、常温・常圧下で加熱することにより、相分離構造が変化する様子を観察した。disorder相を有するPS-b-PIを実施例1と同様にSORP法を用いて作製し、溶液を10℃の恒温槽に入れた後、2~4週間かけて20℃、40℃と温度を上昇させたところ、次第に同心球構造に転移していく様子が観察された(図2)。この結果から、常温・常圧でのアニーリング処理では、同心球構造を得るまでに数週間必要であることが示唆された。
【実施例】
【0031】
(実施例2)共重合比
ポリイソプレンの割合が22%のスチレンーイソプレンのブロック共重合体(PS-b-PI-2、Mn: PS(40,800)-b-PI(10,400))から実施例1の方法と同様の手法で微粒子を作製した。具体的にはブロック共重合体のTHF溶液を調製し、この溶液2mLに1mLの水を加え、THFを蒸発させてPS-b-PI-2の微粒子水分散液を得た。
【実施例】
【0032】
0.2%四酸化オスミウム水溶液を分散液に加え、MilliQ水により洗浄、遠心分離により回収を繰り返し、微粒子を染色・洗浄した後、作製した微粒子の内部構造をTEMで観察したところ、明確な周期構造は観察されなかった(図3のA)。
PS-b-PI-2微粒子水分散液をテフロン製耐圧容器に入れ、2分間700Wのマイクロ波照射を行った後、室温まで冷却し、先に記載した手法と同様に微粒子を染色・洗浄し、TEM観察を行ったところ、内部に明確なシリンダー相が形成されていた(図3のB)。
以上の結果から、ブロック共重合体の共重合比が異なるブロック共重合体微粒子においても、マイクロ波照射により迅速に相分離構造が形成された。
【実施例】
【0033】
(実施例3)無機ナノ粒子とのコンポジット
チオール末端ポリスチレン(Mn=1,000)で保護された金ナノ粒子(Au(a)PS-SH)を文献に従い合成した。ポリスチレンとポリイソプレンのブロック共重合体(PS-b-PI-3、Mn:PS(16,100)-b-PI(11,200))とAu(a)PS-SHを重量比7:3で混合し、THFに溶解させた後、水を加え、THFを蒸発させてコンポジット微粒子を得た。
【実施例】
【0034】
実施例1,2に記載の手法により染色・洗浄を行った後、TEMで内部構造を観察したところ、明確な相分離構造は観察されなかった(図4のA)。
微粒子の分散液をテフロン製耐圧容器に入れ、170Wのマイクロ波を4分間照射した後、室温まで冷却し、染色・洗浄を行った後TEM観察を行ったところ、明確なタマネギ状の相分離構造が形成されていた(図4のB)。また、Au(a)PS-SHはポリスチレン相に特異的に導入されているのが観察された。
以上の結果から、無機ナノ粒子とのコンポジットについても、マイクロ波照射により迅速に相分離構造が形成された。
【実施例】
【0035】
(実施例4)フィルム
ポリスチレンとポリイソプレンのブロック共重合体(PS-b-PI-4、)のシクロヘキサン溶液をシリコン基板上にスピンキャストし、薄膜を得た。薄膜および水をテフロン製耐圧容器に入れ、700Wのマイクロ波を2分間照射した。
【実施例】
【0036】
マイクロ波照射前後のフィルムの斜入射小角X線回折測定を行った。マイクロ波照射前のフィルムでは基板に平行な層構造の存在を示唆するぼんやりとした回折が観察された(図5のA)。一方マイクロ波照射後のフィルムでは基板に垂直な成分と平行な成分の存在を示唆する明確な回折が観察された(図5のB)。
相分離構造の周期性は回折スポットの大きさに依存し、スポット幅が小さく、明確なほど周期性が高いことを示すことから、マイクロ波照射により相分離構造がより明確に形成されたことが示された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4