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明細書 :比内地鶏を識別するためのツールおよびその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4930735号 (P4930735)
公開番号 特開2010-246556 (P2010-246556A)
登録日 平成24年2月24日(2012.2.24)
発行日 平成24年5月16日(2012.5.16)
公開日 平成22年11月4日(2010.11.4)
発明の名称または考案の名称 比内地鶏を識別するためのツールおよびその利用
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/68 ZNAA
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 21
出願番号 特願2010-139587 (P2010-139587)
分割の表示 特願2006-304276 (P2006-304276)の分割、【原出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
出願日 平成22年6月18日(2010.6.18)
審査請求日 平成22年6月18日(2010.6.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
【識別番号】591108178
【氏名又は名称】秋田県
発明者または考案者 【氏名】高橋 秀彰
【氏名】力丸 宗弘
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】松原 寛子
参考文献・文献 農業生物資源研究所主要な研究成果,2006年 5月,Vol.2005,p.6-7
日本家禽学会誌大会号,2005年,Vol.42 秋季大会号,Page.I.10
調査した分野 C12Q 1/68
C12N 15/00
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
比内地鶏を検出するためのDNAマーカーであって、(A)または(B)のポリヌクレオチドを含む、長さが1000塩基以下のポリヌクレオチドであることを特徴とするDNAマーカー:
(A)配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;または、
(B)比内鶏のゲノムDNAから、第9のプライマーおよび第10のプライマーからなるプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドであって、第9のプライマーは、配列番号14に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第10のプライマーは、配列番号15に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
鶏のゲノムDNAを、第5のプライマーセットを用いて増幅する工程を包含し、
第5のプライマーセットは、第9のプライマーおよび第10のプライマーからなり、
第9のプライマーは、配列番号14に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第10のプライマーは、配列番号15に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであることを特徴とする比内地鶏の検出方法。
【請求項3】
鶏のゲノムDNAを、第2、第3および第4のプライマーセットからなる群より選ばれる少なくとも一つのプライマーセットを用いて増幅する工程をさらに包含し
2のプライマーセットは、第3のプライマーおよび第4のプライマーからなり、
第3のプライマーは、配列番号8に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
第4のプライマーは、配列番号9に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
第3のプライマーセットは、第5のプライマーおよび第6のプライマーからなり、
第5のプライマーは、配列番号10に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
第6のプライマーは、配列番号11に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
第4のプライマーセットは、第7のプライマーおよび第8のプライマーからなり、
第7のプライマーは、配列番号12に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
第8のプライマーは、配列番号13に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである
ことを特徴とする請求項2に記載の比内地鶏の検出方法。
【請求項4】
鶏のゲノムDNAを、第5のプライマーセットを用いて増幅する増幅工程、および該増幅工程によって得られたポリヌクレオチドと、配列番号5に示される塩基配列からなる参照用ポリヌクレオチドとを比較する比較工程を包含する比内地鶏の検出方法であって、
第5のプライマーセットは、第9のプライマーおよび第10のプライマーからなり、
第9のプライマーは、配列番号14に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
第10のプライマーは、配列番号15に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである
ことを特徴とする検出方法。
【請求項5】
上記比較工程は、上記増幅工程によって得られたポリヌクレオチドの中に、上記参照用ポリヌクレオチドと塩基数が等しいポリヌクレオチドが存在するか否かを判定するサブ工程を包含していることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第5のプライマーセットを備えており、
第5のプライマーセットは、第9のプライマーおよび第10のプライマーからなり、
第9のプライマーは、配列番号14に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
第10のプライマーは、配列番号15に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである
ことを特徴とする比内地鶏の検出キット。
【請求項7】
第2、第3および第4のプライマーセットからなる群より選ばれる少なくとも一つのプライマーセットをさらに備え、
第2のプライマーセットは、第3のプライマーおよび第4のプライマーからなり、
第3のプライマーは、配列番号8に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
第4のプライマーは、配列番号9に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
第3のプライマーセットは、第5のプライマーおよび第6のプライマーからなり、
第5のプライマーは、配列番号10に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
第6のプライマーは、配列番号11に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
第4のプライマーセットは、第7のプライマーおよび第8のプライマーからなり、
第7のプライマーは、配列番号12に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
第8のプライマーは、配列番号13に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、
ことを特徴とする請求項6に記載の比内地鶏の検出キット。
【請求項8】
第5のプライマーセット、および配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを備えていることを特徴とする比内地鶏の検出キットであって、
第5のプライマーセットは、第9のプライマーおよび第10のプライマーからなり、
第9のプライマーは、配列番号14に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
第10のプライマーは、配列番号15に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである
ことを特徴とする検出キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、比内地鶏と他の鶏とを識別するツールおよびその利用に関するものであり、特に、ゲノム配列内の特定領域を利用して比内地鶏を検出するためのツールおよびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
秋田県北東部比内地方の原産種である比内鶏は、もともと食用として珍重されていたが、個体数が減少したために、天然記念物として保護されるようになった。そこで、比内地鶏が、比内鶏に代わる流通可能な肉用鶏として、秋田県畜産試験場において作出された。
【0003】
比内地鶏は、比内鶏の雄とロードアイランドレッド種等の雌との一代交雑鶏である、秋田県の地域特産鶏(地鶏)である。安全面、品質面に優れた商品である地鶏肉の需要が近年高まっており、比内地鶏もまた関東圏を中心として供給量が増えてきている。
【0004】
比内地鶏の供給量が増加するにつれて、流通過程における比内鶏肉以外の鶏肉の混入が懸念されるようになった。しかし、外見で比内鶏肉を他の鶏肉と区別することは難しい。そのため、消費者のみならず、生産者からも科学的根拠に基づいた地鶏肉の識別手法の開発が求められている。「BT戦略大綱」においても、「食品に関する表示項目を科学的に検証するため、品種・産地判別技術を開発する」と謳われており、地鶏肉判別技術の開発は、積極的に取り組むべき重要課題といえる。
【0005】
さて、品種間の識別方法としてはDNAを用いる技術が知られており、以下のような品種に適用されている:黒毛和種(特許文献1);鹿児島黒豚(特許文献2、特許文献3);イチゴ(特許文献4、特許文献5);レタス(特許文献6);大麦または麦芽(特許文献7);イグサ(特許文献8、特許文献9、特許文献10);イネ(特許文献10);および名古屋コーチン(非特許文献1)。
【0006】
非特許文献1に記載の名古屋コーチンのDNA識別法では、名古屋コーチンにおいて遺伝的に固定されているマイクロサテライトマーカーを用いて、鶏が名古屋コーチンであるか否かを判断している。マイクロサテライトマーカーは、マイクロサテライトDNAマーカーとも呼ばれ、ゲノム中に散在する、単純な塩基配列の繰り返し領域のことである。この領域の長さは繰り返し数に依存して多様であることが知られている。なお、非特許文献1にて用いられているマイクロサテライトマーカーは、公知のマイクロサテライトマーカーから選定されたものである(非特許文献2参照)。
【0007】
近年、鶏ゲノムの解析により、多くのマイクロサテライトが同定されており、マイクロサテライト部位の両側に位置する特異的な塩基配列を含むマイクロサテライトマーカーが開発された。鶏のマイクロサテライトマーカーをPCR等の遺伝子増幅法で検出するための特異的な塩基配列が、プライマー配列として公開されている(非特許文献2および非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2002-209581号公報(平成14年7月30日公開)
【特許文献2】特開2000-350586号公報(平成12年12月19日公開)
【特許文献3】特開2004-154024号公報(平成16年6月3日公開)
【特許文献4】特開2005-102535号公報(平成17年4月21日公開)
【特許文献5】特開2005-278477号公報(平成17年10月13日公開)
【特許文献6】特開平7-23785号公報(平成7年1月27日公開)
【特許文献7】特開平8-89298号公報(平成8年4月9日公開)
【特許文献8】特開2005-168309号公報(平成17年6月30日公開)
【特許文献9】特開2003-245071号公報(平成15年9月2日公開)
【特許文献10】特開2005-168310号公報(平成17年6月30日公開)
【0009】

【非特許文献1】中村明弘、「名古屋コーチンのDNA識別法を開発」、鶏卵肉情報、2006年5月25日号、p16-19
【非特許文献2】Takahashi et al. ”A chicken linkage map based on microsatellite markers genotyped on a Japanese Large Game and White Leghorn cross” Animal Genetics 2005, vol.36, pp.463-467
【非特許文献3】Osman et al. ”Genetic variability and relationships of native Japanese chickens assessed by microsatellite DNA profiling: Focusing on the breeds established in Kochi Prefecture, Japan” Asian-australasian journal of animal sciences 2005, vol.18, no.6, pp.755-761
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した方法はすべて、純粋品種を識別する方法である。例えば、特許文献1に記載の方法は、黒毛和種(純粋品種)と、黒毛和種およびホルスタインの雑種とを識別する方法であり、非特許文献1に記載の方法は、名古屋コーチン(純粋品種)とその他の鶏とを識別する方法である。
【0011】
純粋品種であれば、遺伝的に固定しているマーカーを品種識別に利用することが可能である。しかし、比内地鶏は、前述したように一代交雑鶏であり、一代交雑鶏の場合、そもそも、該交雑鶏から次世代の交雑鶏が生み出されないので、遺伝的に固定しているマーカーというものが存在しない。よって、純粋品種を識別する方法を比内地鶏の識別にそのまま利用することはできない。
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比内地鶏を他の鶏と識別する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一代交雑鶏である比内地鶏では、該交雑鶏から次世代の交雑鶏が生み出されるわけではなく、遺伝的に固定しているマーカーというものは存在しない。また、片方の親の品種において遺伝的に固定されているマーカーが存在しても、もう一方の親の遺伝子を有しているので、子において検出されるマーカーは固定されない。
【0014】
本発明者らは、鋭意検討の結果、一代交雑鶏である比内地鶏の検出に用いることができるDNAマーカーを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明に係るプライマーセットは、比内地鶏を検出するためのDNAマーカーを増幅する、第9のプライマーおよび第10のプライマーからなる第5のプライマーセットであって、第9のプライマーは、配列番号14に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるか、または配列番号14の相補配列にハイブリダイズし得かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドであり、第10のプライマーは、配列番号15に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるか、または配列番号15の相補配列にハイブリダイズし得かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドであることを特徴としている。
【0016】
本発明に係るプライマーセットにおいて、第9のプライマーは、配列番号14に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよく、第10のプライマーは、配列番号15に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0017】
本発明に係るDNAマーカーは、比内地鶏を検出するためのDNAマーカーであって、(A)配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;または(B)鶏のゲノムDNAから、第5のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチド、を含む、長さが1000塩基以下のポリヌクレオチドであることを特徴としている。
【0018】
本発明に係る比内地鶏の検出方法は、第5のプライマーセットを用いて鶏のゲノムDNAを増幅する増幅工程を包含することを特徴としている。
【0019】
本発明に係る比内地鶏の検出方法はまた、上記増幅工程によって得られたポリヌクレオチドと、配列番号5に示される塩基配列からなる参照用ポリヌクレオチドとを比較する比較工程を包含することが好ましい。
【0020】
上記本発明に係る比内地鶏の検出方法において、上記比較工程は、上記増幅工程によって得られたポリヌクレオチドの中に、上記参照用ポリヌクレオチドと塩基数が等しいポリヌクレオチドが存在するか否かを判定するサブ工程を包含してもよい。
【0021】
本発明に係る比内地鶏の検出キットはまた、第5のプライマーセットを備えていることを特徴としている。
【0022】
本発明に係る比内地鶏の検出キットはまた、配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドをさらに備えていてもよい。
【0023】
本発明に係るプライマーセットはまた、比内地鶏を検出するためのDNAマーカーを増幅する、第1のプライマーおよび第2のプライマーからなる第1のプライマーセットであってもよく、第1のプライマーは、配列番号6に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるか、または配列番号6の相補配列にハイブリダイズし得かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドであり、第2のプライマーは、配列番号7に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるか、または配列番号7の相補配列にハイブリダイズし得かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドであることを特徴としている。
【0024】
本発明に係るプライマーセットにおいて、第1のプライマーは、配列番号6に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよく、第2のプライマーは、配列番号7に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0025】
本発明に係るDNAマーカーはまた、比内地鶏を検出するためのDNAマーカーであって、(A)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;または(B)鶏のゲノムDNAから、第1のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチド、を含む、長さが1000塩基以下のポリヌクレオチドであってもよい。
【0026】
本発明に係る比内地鶏の検出方法は、第1のプライマーセットを用いて鶏のゲノムDNAを増幅する増幅工程を包含する方法であってもよい。
【0027】
本発明に係る比内地鶏の検出方法は、上記増幅工程によって得られたポリヌクレオチドと、配列番号1に示される塩基配列からなる参照用ポリヌクレオチドとを比較する比較工程をさらに包含することが好ましい。
【0028】
本発明に係る比内地鶏の検出方法において、上記比較工程は、上記増幅工程によって得られたポリヌクレオチドの中に、上記参照用ポリヌクレオチドと塩基数が等しいポリヌクレオチドが存在するか否かを判定するサブ工程を包含してもよい。
【0029】
本発明に係る比内地鶏の検出キットはまた、第1のプライマーセットを備えているキットであってもよい。
【0030】
本発明に係る比内地鶏の検出キットは、配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドをさらに備えていてもよい。
【0031】
本発明に係るプライマーセットはまた、比内地鶏を検出するためのDNAマーカーを増幅する、第3のプライマーおよび第4のプライマーからなる第2のプライマーセットであってもよく、第3のプライマーは、配列番号8に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるか、または配列番号8の相補配列にハイブリダイズし得かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドであり、第4のプライマーは、配列番号9に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるか、または配列番号9の相補配列にハイブリダイズし得かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドであることを特徴としている。
【0032】
本発明に係るプライマーセットにおいて、第3のプライマーは、配列番号8に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよく、第4のプライマーは、配列番号9に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0033】
本発明に係るDNAマーカーはまた、比内地鶏を検出するためのDNAマーカーであって、(A)配列番号2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;または(B)鶏のゲノムDNAから、第2のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチド、を含む、長さが1000塩基以下のポリヌクレオチドであってもよい。
【0034】
本発明に係る比内地鶏の検出方法は、第2のプライマーセットを用いて鶏のゲノムDNAを増幅する増幅工程を包含する方法であってもよい。
【0035】
本発明に係る比内地鶏の検出方法はまた、上記増幅工程によって得られたポリヌクレオチドと、配列番号2に示される塩基配列からなる参照用ポリヌクレオチドとを比較する比較工程をさらに包含することが好ましい。
【0036】
本発明に係る比内地鶏の検出方法において、上記比較工程は、上記増幅工程によって得られたポリヌクレオチドの中に、上記参照用ポリヌクレオチドと塩基数が等しいポリヌクレオチドが存在するか否かを判定するサブ工程を包含してもよい。
【0037】
本発明に係る比内地鶏の検出キットはまた、第2のプライマーセットを備えているキットであってもよい。
【0038】
本発明に係る比内地鶏の検出キットはまた、配列番号2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドをさらに備えていてもよい。
【0039】
本発明に係るプライマーセットはまた、比内地鶏を検出するためのDNAマーカーを増幅する、第5のプライマーおよび第6のプライマーからなる第3のプライマーセットであってもよく、第5のプライマーは、配列番号10に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるか、または配列番号10の相補配列にハイブリダイズし得かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドであり、第6のプライマーは、配列番号11に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるか、または配列番号11の相補配列にハイブリダイズし得かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドであることを特徴としている。
【0040】
本発明に係るプライマーセットにおいて、第5のプライマーは、配列番号10に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよく、第6のプライマーは、配列番号11に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0041】
本発明に係るDNAマーカーはまた、比内地鶏を検出するためのDNAマーカーであって、(A)配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;または(B)鶏のゲノムDNAから、第3のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチド、を含む、長さが1000塩基以下のポリヌクレオチドであってもよい。
【0042】
本発明に係る比内地鶏の検出方法は、第3のプライマーセットを用いて鶏のゲノムDNAを増幅する増幅工程を包含する方法であってもよい。
【0043】
本発明に係る比内地鶏の検出方法はまた、上記増幅工程によって得られたポリヌクレオチドと、配列番号3に示される塩基配列からなる参照用ポリヌクレオチドとを比較する比較工程をさらに包含することが好ましい。
【0044】
上記本発明に係る比内地鶏の検出方法において、上記比較工程は、上記増幅工程によって得られたポリヌクレオチドの中に、上記参照用ポリヌクレオチドと塩基数が等しいポリヌクレオチドが存在するか否かを判定するサブ工程を包含してもよい。
【0045】
本発明に係る比内地鶏の検出キットはまた、第3のプライマーセットを備えているキットであってもよい。
【0046】
本発明に係る比内地鶏の検出キットはまた、配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドをさらに備えていてもよい。
【0047】
本発明に係るプライマーセットはまた、比内地鶏を検出するためのDNAマーカーを増幅する、第7のプライマーおよび第8のプライマーからなる第4のプライマーセットであってもよく、第7のプライマーは、配列番号12に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるか、または配列番号12の相補配列にハイブリダイズし得かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドであり、第8のプライマーは、配列番号13に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるか、または配列番号13の相補配列にハイブリダイズし得かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドであることを特徴としている。
【0048】
本発明に係るプライマーセットにおいて、第7のプライマーは、配列番号12に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよく、第8のプライマーは、配列番号13に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0049】
本発明に係るDNAマーカーはまた、比内地鶏を検出するためのDNAマーカーであって、(A)配列番号4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;または(B)鶏のゲノムDNAから、第4のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチド、を含む、長さが1000塩基以下のポリヌクレオチドであってもよい。
【0050】
本発明に係る比内地鶏の検出方法は、第4のプライマーセットを用いて鶏のゲノムDNAを増幅する増幅工程を包含する方法であってもよい。
【0051】
本発明に係る比内地鶏の検出方法はまた、上記増幅工程によって得られたポリヌクレオチドと、配列番号4に示される塩基配列からなる参照用ポリヌクレオチドとを比較する比較工程をさらに包含することが好ましい。
【0052】
上記本発明に係る比内地鶏の検出方法において、上記比較工程は、上記増幅工程によって得られたポリヌクレオチドの中に、上記参照用ポリヌクレオチドと塩基数が等しいポリヌクレオチドが存在するか否かを判定するサブ工程を包含してもよい。
【0053】
本発明に係る比内地鶏の検出キットはまた、第4のプライマーセットを備えているキットであってもよい。
【0054】
本発明に係る比内地鶏の検出キットはまた、配列番号4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドをさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0055】
本発明に係るDNAマーカーは、その長さが比内鶏において遺伝的に固定している。すなわち、本発明に係る比内地鶏の検出方法および検出キットは、検出対象となる鶏ではなく、その親となる鶏の品種において遺伝的に固定しているDNAマーカーを利用している。非特許文献1に記載の方法は、遺伝的に固定しているマーカーではないDNAマーカーが検出された場合に、検査した鶏が目的の鶏ではないと判定する方法である。一方、本発明に係る比内地鶏の検出方法および検出キットは、遺伝的に固定しているマーカーが全く検出されない場合に、検査した鶏が目的の鶏ではないと判定する方法である。なお、本発明に係るDNAマーカーは、本発明に係るプライマーキットを用いることにより取得し得る。
【0056】
また、本発明に係るDNAマーカーは、非特許文献1に記載の方法とは異なり、公知のマーカーではなく、新規に見出されたマーカーである。本発明に係るDNAマーカーは、Z染色体上に存在する領域を増幅することによって取得されるので、雌の鶏についての識別率を向上させることができる。
【0057】
このように、本発明を用いれば、比内地鶏を他の鶏とを識別することができる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
〔1:プライマーセット〕
一つの局面において、本発明はプライマーセットを提供する。本明細書中で使用される場合、用語「プライマーセット」は、増幅される塩基配列の5’末端とハイブリダイズするフォワードプライマーと、増幅されるその配列の3’末端の相補物とハイブリダイズするリバースプライマーとを含む一組のプライマーが意図される。用語「プライマー」は、ヌクレオシド三リン酸やDNAポリメラーゼ等(RNAポリメラーゼ、逆転写酵素であってもよい。)の存在下で、DNA合成の開始点として作用し得る一本鎖オリゴヌクレオチドが意図される。プライマーとして適切な長さは、典型的には、15~30ヌクレオチドであり得るが、使用される態様によって異なり得る。また、プライマーおよび鋳型が安定な複合体を形成するためには、典型的には低い温度が必要とされる。なお、当業者は、採用される態様に応じて適切な長さのプライマーを容易に設計し得る。

【0059】
本発明に係るプライマーセットを用いて鶏のゲノムDNAを増幅することにより、後述する本発明に係るDNAマーカーを取得することができる。得られるべきDNAマーカーは、比内鶏ではその長さが遺伝的に固定されており、他の鶏ではその長さは多様である。本発明によって提供される技術は、上記DNAマーカーが所望の長さを有しているか否かに基づくものであり、増幅された配列におけるミスマッチの有無は考慮される必要がない。

【0060】
鶏のゲノムDNAは、鶏の組織または血液から調製することができる。鶏の組織は、例えば、鶏肉、骨付きの手羽および各種の内臓等であり得るが、これらに限られず、ゲノムDNAを抽出可能な体組織であればよい。

【0061】
鶏の組織からゲノムDNAを調製する場合は、例えば、以下のような方法を用いることができる。まず、組織をハサミ等で細かく切断し、ポッターホモジナイザー等によりホモジナイズした後、遠心分離機を用いて核を沈殿させる。沈殿した核にSDSおよびプロテイナーゼKを加えた後インキュベートする。続いて、周知のフェノールクロロホルム抽出法を用いてゲノムDNAを抽出する。

【0062】
また、鶏の血液からゲノムDNAを調製する場合は、例えば、以下のような方法を用いることができる。まず血液に、生理的NaCl濃度(約0.9%)より、低張な赤血球溶解液(例えば、0.5%NaCl)を加えてインキュベートし、遠心分離した後に上清を取り除く。沈殿した核にSDSおよびプロテイナーゼKを加えインキュベートする。続いて、周知のフェノールクロロホルム抽出法を用いてゲノムDNAを抽出する。

【0063】
本発明に係るプライマーセットを用いて鶏のゲノムDNAを増幅することは、例えば、周知のPCR(Polymerase Chain Reaction)反応により行うことができるが、これに限られない。

【0064】
PCR反応は、市販のサーマルサイクラー(例えば、GeneAmp PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ)、あるいは、iCyclerサーマルサイクラー(バイオ・ラド))を用いて行うことができる。また、PCR用の試薬も市販されたものを用いることができる。上記サーマルサイクラーの操作は、添付された指示書に従えばよいが、例えば、DNAを変性させる温度として94℃、DNAをアニーリングさせる温度として50~60℃、DNAの伸展反応をさせる温度として68℃を用いることができる。

【0065】
本発明は、第1、第2、第3、第4および第5のプライマーセットを提供する。上述したように、本発明に係るプライマーセットは目的の領域を増幅し得るものであればよく、目的の領域中の配列を正確に増幅する必要がない。よって、本発明に係るプライマーセットに含まれるプライマーは、ハイブリダイズすべき塩基配列に対して完全に相補である必要はなく、目的の領域を増幅し得る限りミスマッチを含んでいてもよい。よって、上記プライマーは、Tm値が50℃以上であることが好ましく、55℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることがさらに好ましく、65℃以上であってもよい。

【0066】
第1のプライマーセットは、第1のプライマーおよび第2のプライマーからなる。一つの実施形態において、第1のプライマーは、配列番号6に示される塩基配列の相補配列にハイブリダイズし得、かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドであってもよく、第2のプライマーは、配列番号7に示される塩基配列の相補配列にハイブリダイズし得、かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドである。好ましくは、第1のプライマーは配列番号6に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第2のプライマーは配列番号7に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり得る。

【0067】
第1のプライマーおよび第2のプライマーを用いて、鶏のゲノムDNAを増幅することにより、〔2〕において後述する第1のDNAマーカーを取得することができる。

【0068】
第2のプライマーセットは、第3のプライマーおよび第4のプライマーからなる。一つの実施形態において、第3のプライマーは、配列番号8に示される塩基配列の相補配列にハイブリダイズし得、かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドであってもよく、第4のプライマーは、配列番号9に示される塩基配列の相補配列にハイブリダイズし得、かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドである。好ましくは、第3のプライマーは配列番号8に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第4のプライマーは配列番号9に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり得る。

【0069】
第3のプライマーおよび第4のプライマーを用いて、鶏のゲノムDNAを増幅することにより、〔2〕において後述する第2のDNAマーカーを取得することができる。

【0070】
第3のプライマーセットは、第5のプライマーおよび第6のプライマーからなる。一つの実施形態において、第5のプライマーは、配列番号10に示される塩基配列の相補配列にハイブリダイズし得、かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドであってもよく、第6のプライマーは、配列番号11に示される塩基配列の相補配列にハイブリダイズし得、かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドである。好ましくは、第5のプライマーは配列番号10に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第6のプライマーは配列番号11に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり得る。

【0071】
第5のプライマーおよび第6のプライマーを用いて、鶏のゲノムDNAを増幅することにより、〔2〕において後述する第3のDNAマーカーを取得することができる。

【0072】
第4のプライマーセットは、第7のプライマーおよび第8のプライマーからなる。一つの実施形態において、第7のプライマーは、配列番号12に示される塩基配列の相補配列にハイブリダイズし得、かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドであってもよく、第8のプライマーは、配列番号13に示される塩基配列の相補配列にハイブリダイズし得、かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドである。好ましくは、第7のプライマーは配列番号12に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第8のプライマーは配列番号13に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり得る。

【0073】
第7のプライマーおよび第8のプライマーを用いて、鶏のゲノムDNAを増幅することにより、〔2〕において後述する第4のDNAマーカーを取得することができる。

【0074】
第5のプライマーセットは、第9のプライマーおよび第10のプライマーからなる。一つの実施形態において、第9のプライマーは、配列番号14に示される塩基配列の相補配列にハイブリダイズし得、かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドであってもよく、第8のプライマーは、配列番号15に示される塩基配列の相補配列にハイブリダイズし得、かつTm値が50℃以上であるオリゴヌクレオチドである。好ましくは、第9のプライマーは配列番号14に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第10のプライマーは配列番号15に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである。

【0075】
第9のプライマーおよび第10のプライマーを用いて、鶏のゲノムDNAを増幅することにより、後述する第5のDNAマーカーを取得することができる。

【0076】
当業者は、本明細書中に示される塩基配列を参照すれば上記各オリゴヌクレオチドを容易に取得し得る。例えば、Applied Biosystems Incorporated(ABI,850 Lincoln Center Dr.,Foster City,CA 94404)392型シンセサイザーなどを用いれば、所定の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを合成することができる。

【0077】
また、上述したプライマーが、ハイブリダイズすべき塩基配列に対して完全に相補である必要がないという観点から、本発明に係るプライマーセットに含まれるプライマーは、目的の領域を増幅し得るプライマーであって、配列表に示された塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよいことを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。

【0078】
すなわち、第1のプライマーは、配列番号6に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよく、第2のプライマーは、配列番号7に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよく、第3のプライマーは、配列番号8に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよく、第4のプライマーは、配列番号9に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよく、第5のプライマーは、配列番号10に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよく、第6のプライマーは、配列番号11に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよく、第7のプライマーは、配列番号12に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよく、第8のプライマーは、配列番号13に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよく、第9のプライマーは、配列番号14に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよく、第10のプライマーは、配列番号15に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列の相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよい。

【0079】
本明細書中に記載の技術および周知慣用技術を用いれば、当業者は、示された塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列またはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドを、容易に作製することができる。また、当業者は、明細書中に記載の手法に従えば、作製したオリゴヌクレオチドが所望の性質を有しているか否かを容易に調べることができる。

【0080】
〔2:DNAマーカー〕
一つの局面において、本発明は比内地鶏を検出するためのDNAマーカーを提供する。

【0081】
本明細書において「比内地鶏の検出」とは、検査すべき鶏または鶏由来の物質が比内地鶏または比内地鶏由来の物質であるか否かを判定することが意図される。

【0082】
本発明に係るDNAマーカーは、比内鶏ではその長さが遺伝的に固定しているものであることを特徴とする。すなわち、鶏の本発明に係るDNAマーカーを取得することにより、検査した鶏が、比内鶏を先祖に持つ可能性があるか否かを判別することができる。

【0083】
本発明に係るDNAマーカーはまた、該DNAマーカーに対応する領域が、鶏のZ染色体上に存在することを特徴としている。なお、本明細書において「DNAマーカーに対応する領域」とは、ゲノムDNA上において、DNAマーカーの有する塩基配列と同じ塩基配列を有する領域が意図される。

【0084】
鶏のZ染色体は性染色体であり、雌は一つしか有していない。そのため、雌の鶏は本発明に係るDNAマーカーを一種類のみ有する。したがって、より効率的に比内地鶏の検出をすることができる。なお、Z染色体上のDNAマーカーを用いることは本発明者ら独自の観点に基づくものである。

【0085】
なお、以上に述べた比内地鶏の検出に関する事項は、後述する比内地鶏の検出方法の説明において詳細に記述する。

【0086】
本発明は、第1、第2、第3、第4および第5のDNAマーカーを提供する。

【0087】
第1のDNAマーカーは、鶏のゲノムDNAから、第1のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドを含む、長さが1000塩基以下のポリヌクレオチドである。好ましくは、鶏のゲノムDNAから、第1のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドである。より好ましくは、第1のDNAマーカーは、配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドであり、比内鶏のゲノムDNAから、第1のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドであり得る。

【0088】
後述する実施例に示すように、鶏のゲノムDNAから、第1のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドは、比内鶏においては、同じ長さを示し、他の鶏においては様々な長さを示す。したがって、上記ポリヌクレオチドを一部に含むポリヌクレオチドも、比内鶏においては、同じ長さを示し、他の鶏においては様々な長さを示す蓋然性が高い。このようなポリヌクレオチドであれば、本発明に係るDNAマーカーとして好適に用いることができる。上記ポリヌクレオチドは、例えば、鶏のゲノムDNAにおいて、第1のプライマーセットによって挟まれた領域の外側に位置する塩基配列またはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いることにより増幅することができる。本明細書の記載および鶏のゲノムシーケンス(http://www.ensembl.org/Gallus_gallus/およびhttp://genome.uese.edu/cgi-bin/hgGateway?org=Chicken&db=0&hgsid=30948908にて公開)を参照すれば上記プライマーを容易に設計することができることを、当業者は容易に理解する。ただし、上記DNAマーカーの長さが1000塩基を超えると、該DNAマーカーの長さを正確に測定することができない。そのため、第1のDNAマーカーの長さは、1000塩基以下であることが好ましい。

【0089】
第2のDNAマーカーは、鶏のゲノムDNAから、第2のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドを含む、長さが1000塩基以下のポリヌクレオチドである。好ましくは、鶏のゲノムDNAから、第2のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドである。より好ましくは、第2のDNAマーカーは、配列番号2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドであり、比内鶏のゲノムDNAから、第2のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドであり得る。

【0090】
第3のDNAマーカーは、鶏のゲノムDNAから、第3のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドを含む、長さが1000塩基以下のポリヌクレオチドである。好ましくは、鶏のゲノムDNAから、第3のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドである。より好ましくは、第3のDNAマーカーは、配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドであり、比内鶏のゲノムDNAから、第3のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドであり得る。

【0091】
第4のDNAマーカーは、鶏のゲノムDNAから、第4のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドを含む、長さが1000塩基以下のポリヌクレオチドである。好ましくは、鶏のゲノムDNAから、第4のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドである。より好ましくは、第4のDNAマーカーは、配列番号4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドであり、比内鶏のゲノムDNAから、第4のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドであり得る。

【0092】
第5のDNAマーカーは、鶏のゲノムDNAから、第5のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドを含む、長さが1000塩基以下のポリヌクレオチドである。好ましくは、鶏のゲノムDNAから、第5のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドである。より好ましくは、第5のDNAマーカーは、配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドであり、比内鶏のゲノムDNAから、第5のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドであり得る。

【0093】
〔3:検出方法〕
一つの局面において、本発明は、比内地鶏の検出方法を提供する。

【0094】
本発明に係る比内地鶏の検出方法は、鶏のゲノムDNAを、上述したプライマーセットを用いて増幅する工程を包含することを特徴としている。

【0095】
一つの実施形態において、本発明に係る比内地鶏の検出方法は、第1のプライマーセットを用いて鶏のゲノムDNAを増幅する増幅工程を包含する。上記増幅工程により、第1のDNAマーカーを取得することができる。そのため、本実施形態に係る検出方法は、比内地鶏の検出に好適に用いることができる。

【0096】
本実施形態に係る検出方法は、該増幅工程によって得られたポリヌクレオチドと、配列番号1に示される塩基配列からなる参照用ポリヌクレオチドとを比較する比較工程をさらに包含することが好ましい。上記参照用ポリヌクレオチドは、比内鶏のゲノムDNAから、第1のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドであり得る。なお、前述したように、比内鶏のゲノムDNAから、第1のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドは、遺伝的に固定されており、常に一定の長さを有している。なお、上記比較工程は、両ポリヌクレオチドの長さが一致するか否かを判定することが好ましいが、両ポリヌクレオチドの配列が一致するか否かを判定するものであってもよい。

【0097】
前述したように、比内地鶏は、比内鶏の雄とロードアイランドレッド種の鶏の雌との一代交雑鶏である。したがって、比内地鶏は、比内鶏のZ染色体を一本受け継いでいる。そのため、比内地鶏のゲノムDNAから第1のプライマーセットを用いて増幅されたポリヌクレオチドは、上記参照用ポリヌクレオチドを同じ長さのポリヌクレオチドを必ず含む。したがって、ゲノムDNAから第1のプライマーセットを用いて増幅されたポリヌクレオチドに、上記参照用ポリヌクレオチドを同じ長さのポリヌクレオチドを全く含まない鶏は、比内地鶏ではないと否定することができる。さらに、鶏が雌であれば、Z染色体は一本しか有していないため、比内鶏ではない鶏のゲノムDNAから第1のプライマーセットを用いて増幅されたポリヌクレオチドに、上記参照用ポリヌクレオチドを同じ長さのポリヌクレオチドが偶然含まれる確率は、Z染色体を2本有している雄の半分以下となる。

【0098】
なお、上記比較工程において、両ポリヌクレオチドを比較する場合、上記参照用ポリヌクレオチド自体が存在する必要はなく、必要なデータ、例えば、ポリヌクレオチドの長さや塩基配列などを利用し得る状態であればよい。

【0099】
他の実施形態において、本発明に係る比内地鶏の検出方法は、第2のプライマーセットを用いて鶏のゲノムDNAを増幅する増幅工程を包含する。上記増幅工程により、第2のDNAマーカーを取得することができる。そのため、本実施形態に係る検出方法は、比内地鶏の検出に好適に用いることができる。

【0100】
本実施形態に係る検出方法は、該増幅工程によって得られたポリヌクレオチドと、配列番号2に示される塩基配列からなる参照用ポリヌクレオチドとを比較する比較工程をさらに包含することが好ましい。上記参照用ポリヌクレオチドは、比内鶏のゲノムDNAから、第2のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドであり得る。なお、前述したように、比内鶏のゲノムDNAから、第2のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドは、遺伝的に固定されており、常に一定の長さを有している。なお、上記比較工程は、両ポリヌクレオチドの長さが一致するか否かを判定することが好ましいが、両ポリヌクレオチドの配列が一致するか否かを判定するものであってもよい。

【0101】
さらに他の実施形態において、本発明に係る比内地鶏の検出方法は、第3のプライマーセットを用いて鶏のゲノムDNAを増幅する増幅工程を包含する。上記増幅工程により、第3のDNAマーカーを取得することができる。そのため、本実施形態に係る検出方法は、比内地鶏の検出に好適に用いることができる。

【0102】
本実施形態に係る検出方法は、該増幅工程によって得られたポリヌクレオチドと、配列番号3に示される塩基配列からなる参照用ポリヌクレオチドとを比較する比較工程をさらに包含することが好ましい。上記参照用ポリヌクレオチドは、比内鶏のゲノムDNAから、第3のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドであり得る。なお、前述したように、比内鶏のゲノムDNAから、第3のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドは、遺伝的に固定されており、常に一定の長さを有している。なお、上記比較工程は、両ポリヌクレオチドの長さが一致するか否かを判定することが好ましいが、両ポリヌクレオチドの配列が一致するか否かを判定するものであってもよい。

【0103】
なおさらに他の実施形態において、本発明に係る比内地鶏の検出方法は、第4のプライマーセットを用いて鶏のゲノムDNAを増幅する増幅工程を包含する。上記増幅工程により、第4のDNAマーカーを取得することができる。そのため、本実施形態に係る検出方法は、比内地鶏の検出に好適に用いることができる。

【0104】
本実施形態に係る検出方法は、該増幅工程によって得られたポリヌクレオチドと、配列番号4に示される塩基配列からなる参照用ポリヌクレオチドとを比較する比較工程をさらに包含することが好ましい。上記参照用ポリヌクレオチドは、比内鶏のゲノムDNAから、第4のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドであり得る。なお、前述したように、比内鶏のゲノムDNAから、第4のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドは、遺伝的に固定されており、常に一定の長さを有している。なお、上記比較工程は、両ポリヌクレオチドの長さが一致するか否かを判定することが好ましいが、両ポリヌクレオチドの配列が一致するか否かを判定するものであってもよい。

【0105】
別の実施形態において、本発明に係る比内地鶏の検出方法は、第5のプライマーセットを用いて鶏のゲノムDNAを増幅する増幅工程を包含する。上記増幅工程により、第2のDNAマーカーを取得することができる。そのため、本実施形態に係る検出方法は、比内地鶏の検出に好適に用いることができる。

【0106】
本実施形態に係る検出方法は、該増幅工程によって得られたポリヌクレオチドと、配列番号5に示される塩基配列からなる参照用ポリヌクレオチドとを比較する比較工程をさらに包含することが好ましい。上記参照用ポリヌクレオチドは、比内鶏のゲノムDNAから、第5のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドであり得る。なお、前述したように、比内鶏のゲノムDNAから、第5のプライマーセットを用いて増幅されるポリヌクレオチドは、遺伝的に固定されており、常に一定の長さを有している。なお、上記比較工程は、両ポリヌクレオチドの長さが一致するか否かを判定することが好ましいが、両ポリヌクレオチドの配列が一致するか否かを判定するものであってもよい。

【0107】
本発明に係る検出方法を用いることにより、本発明に係るDNAマーカーを取得することができるので、検査対象の鶏が比内地鶏であるか否かを判別することができる。なお、本発明に係る検出方法において、用いられるべきプライマーセットは第1~第5のプライマーセットの少なくとも1つであればよく、2つ以上を組み合わせて用いることにより、比内地鶏であるか否かの判別についての信憑性をより向上させることができる。

【0108】
〔4:検出キット〕
一つの局面において、本発明は比内地鶏の検出キットを提供する。

【0109】
本明細書中において使用される場合、用語「キット」は、特定の材料を内包する容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュなど)を備えた包装が意図される。好ましくは該材料を使用するための指示書を備える。本明細書中においてキットの局面において使用される場合、「備えた(備えている)」は、キットを構成する個々の容器のいずれかの中に内包されている状態が意図される。また、本発明に係るキットは、複数の異なる組成物を1つに梱包した包装であり得、ここで、組成物の形態は上述したような形態であり得、溶液形態の場合は容器中に内包されていてもよい。本発明に係るキットは、物質Aおよび物質Bを同一の容器に混合して備えても別々の容器に備えてもよい。「指示書」は、紙またはその他の媒体に書かれていても印刷されていてもよく、あるいは磁気テープ、コンピューター読み取り可能ディスクまたはテープ、CD-ROMなどのような電子媒体に付されてもよい。本発明に係るキットはまた、希釈剤、溶媒、洗浄液またはその他の試薬を内包した容器を備え得る。さらに、本発明に係るキットは、PCR反応を実施するために必要な器具をあわせて備えてもよい。

【0110】
本発明に係る比内地鶏の検出キットは、上述したプライマーセットを備えていることを特徴としている。一つの実施形態において、本発明に係る比内地鶏の検出キットは、第1のプライマーセットを備えている。上記プライマーセットを用いることにより、第1のDNAマーカーを取得することができる。そのため、本実施形態に係るキットは、比内地鶏の検出に好適に用いることができる。本実施形態に係る検出キットは、配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドをさらに備えていていてもよい。これにより、取得した第1のDNAマーカーの長さと配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドの長さとを迅速に比較することができる。

【0111】
他の実施形態において、本発明に係る比内地鶏の検出キットは、第2のプライマーセットを備えている。上記プライマーセットを用いることにより、第2のDNAマーカーを取得することができる。そのため、本実施形態に係るキットは、比内地鶏の検出に好適に用いることができる。本実施形態に係る検出キットは、配列番号2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドをさらに備えていていてもよい。これにより、取得した第2のDNAマーカーの長さと配列番号2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドの長さとを迅速に比較することができる。

【0112】
さらに他の実施形態において、本発明に係る比内地鶏の検出キットは、第3のプライマーセットを備えている。上記プライマーセットを用いることにより、第3のDNAマーカーを取得することができる。そのため、本実施形態に係るキットは、比内地鶏の検出に好適に用いることができる。本実施形態に係る検出キットは、配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドをさらに備えていていてもよい。これにより、取得した第3のDNAマーカーの長さと配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドの長さとを迅速に比較することができる。

【0113】
なおさらに他の実施形態において、本発明に係る比内地鶏の検出キットは、第4のプライマーセットを備えている。上記プライマーセットを用いることにより、第4のDNAマーカーを取得することができる。そのため、本実施形態に係るキットは、比内地鶏の検出に好適に用いることができる。本実施形態に係る検出キットは、配列番号4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドをさらに備えていていてもよい。これにより、取得した第4のDNAマーカーの長さと配列番号4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドの長さとを迅速に比較することができる。

【0114】
別の実施形態において、本発明に係る比内地鶏の検出キットは、第5のプライマーセットを備えている。上記プライマーセットを用いることにより、第5のDNAマーカーを取得することができる。そのため、本実施形態に係るキットは、比内地鶏の検出に好適に用いることができる。本実施形態に係る検出キットは、配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドをさらに備えていていてもよい。これにより、取得した第5のDNAマーカーの長さと配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドの長さとを迅速に比較することができる。

【0115】
本発明に係る検出キットを用いることにより、本発明に係るDNAマーカーを取得することができるので、検査対象の鶏が比内地鶏であるか否かを判別することができる。なお、本発明に係る検出キットにおいて、用いられるべきプライマーセットは第1~第5のプライマーセットの少なくとも1つであればよく、2つ以上を組み合わせて用いることにより、比内地鶏であるか否かの判別についての信憑性をより向上させることができる。

【0116】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。

【0117】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0118】
〔実施例1:比内鶏のゲノムDNAの調製〕
秋田県農林水産技術センター畜産試験場にて飼育されていた比内鶏360羽からゲノムDNAを得た。
【実施例】
【0119】
具体的には、上記比内鶏の各個体から血液を採取し、フェノールクロロホルム抽出法を用いて該血液からゲノムDNAを抽出した。抽出したゲノムDNAの濃度を分光光度計(GeneQuant pro、アマシャムバイオサイエンス)を用いて測定し、最終的な濃度が10mg/μlになるようにゲノムDNA溶液を希釈した。
【実施例】
【0120】
〔実施例2:プライマーセットの選定〕
(A)および(B)の条件を満たすプライマーセットを公知のプライマーセット(非特許文献2参照)より選定した:
(A)Z染色体上に存在するマイクロサテライト領域を含む塩基配列からなるポリヌクレオチドを増幅するために用いることができる;および
(B)増幅された該ポリヌクレオチドの長さが、比内鶏において遺伝的に固定している。
【実施例】
【0121】
なお、マイクロサテライト領域とは、短い配列(2~5塩基)が多数繰り返されている領域である。また、プライマーセットとは、フォワードプライマーとリバースプライマーのセットを意味する。
【実施例】
【0122】
まず、(A)の条件を満たすプライマーセットを、非特許文献2を参照して設計した。
【実施例】
【0123】
次に、上記プライマーセットを用いて、実施例1で取得したゲノムDNAをPCR反応により増幅した。
【実施例】
【0124】
具体的には、まず、384ウェルプレート上に、上記ゲノムDNA溶液3.0μl、10×PCRバッファー0.6μl、2mM dNTPミックス0.6μl、25mM MgSO 0.288μl、200μM プライマー各0.0125μl、1U/μl KOD DNAポリメラーゼ(KOD-Plus、東洋紡)0.125μlおよび滅菌蒸留水 1.362μlからなるPCR反応液を調製した。なお、PCR反応により増幅した断片をキャピラリー電気泳動において検出できるように、フォワードプライマーは、3種類の色素(NED、6-FAMあるいはHEX(すべてアプライドバイオシステムズ))のいずれかで蛍光標識したものを用いた。
【実施例】
【0125】
上記PCR反応液に対し、サーマルサイクラー(GeneAmp PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ)、あるいは、iCyclerサーマルサイクラー(バイオ・ラド))を用いてPCR反応を実施した。
【実施例】
【0126】
PCR反応は、94℃にて75秒間の熱変性を行った後、熱変性(94℃、15秒間)、アニーリング(60℃、30秒)および伸長反応(68℃、60秒)を10サイクル行い、その後、熱変性(94℃、15秒間)、アニーリング(55℃、30秒)および伸長反応(68℃、60秒)を10サイクル行い、その後、熱変性(94℃、15秒間)、アニーリング(50℃、30秒)および伸長反応(68℃、60秒)を10サイクル行い、その後、68℃で9分間の伸長反応を行った。
【実施例】
【0127】
上記PCR反応の結果物を各2μl採取し、ホルムアミドにて400倍に希釈した。希釈した上記結果物2μlをサイズスタンダード(GeneScan 400HD ROX Size Standard、アプライドバイオシステムズ)を含むホルムアルデヒド13μlに更に希釈して、熱変性(94℃、2分)させた後、DNA自動分析装置(ABI PRISM 3100 Genetic Analyzer、アプライドバイオシステムズ)を用いてキャピラリー電気泳動を行った。
【実施例】
【0128】
キャピラリー電気泳動の結果をコンピューターソフトウェア(GeneMapper ver.2.0、アプライドバイオシステムズ)を用いて解析し、PCR反応により増幅された断片の長さを検出した。なお、検出したバンドのピークが一本ならホモ型、ピークが二本ならヘテロ型と判断した。すべての比内鶏において同じ長さの一本のバンドが検出されるプライマーセットを、比内地鶏の検出に用いることができるプライマーセットの候補とした。
【実施例】
【0129】
〔実施例3:他の鶏のゲノムDNAの増幅〕
実施例2において選択したプライマーセットを用いて、他の鶏のゲノムDNAを増幅し、増幅断片長を測定した。なお、上記他の鶏とは、比内鶏または比内地鶏でない鶏を意味し、本実施例においては、9つの純粋品種(大軍鶏、薩摩、名古屋、白色レグホン、ロードアイランドレッド、ニューハンプシャ、白色プリマスロック、横斑プリマスロックおよびレッドコーニッシュ)、市場にて購入した肉専用種および卵専用種の合計334羽を用いた。
【実施例】
【0130】
まず、実施例1と同様の方法を用いて、他の鶏のゲノムDNAを調製した。
【実施例】
【0131】
次に、実施例2において選定したプライマーセットを用いて、他の鶏のゲノムDNAを増幅した。ゲノムDNAを増幅する方法および増幅した断片の長さを測定する方法は、実施例2と同様の方法を用いた。
【実施例】
【0132】
そして、それぞれのプライマーセットについて、比内鶏のゲノムDNAから増幅した断片の長さと同長の断片が、他の鶏のゲノムDNAから増幅した断片の中に含まれる頻度を算定した。
【実施例】
【0133】
その結果、実施例2において選定したプライマーセットのうち、上記頻度が低く、実用的であると判断できたのは、配列番号14に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるプライマー(第9のプライマー)および配列番号15に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるプライマー(第10のプライマー)からなるプライマーセット(第5のプライマーセット、対応するマーカー名はABR0311)のみであった。
【実施例】
【0134】
〔実施例4:新規プライマーセットの選定〕
さらなるプライマーセットを取得するため、公開された鶏のゲノムシーケンス(http://www.ensembl.org/Gallus_gallus/およびhttp://genome.uese.edu/cgi-bin/hgGateway?org=Chicken&db=0&hgsid=30948908にて公開)から、Z染色体上のマイクロサテライト領域を推定し、該領域を含む塩基配列からなるポリヌクレオチドを増幅するために用いることができる新規プライマーセットを設計した。
【実施例】
【0135】
上記新規プライマーセットについて、該プライマーセットを用いて増幅した断片の長さが、比内鶏において遺伝的に固定しているものを選定した。選定の方法は、実施例2と同様の方法を用いた。
【実施例】
【0136】
さらに、選定したプライマーセットについて、比内鶏のゲノムDNAから増幅した断片の長さと同長の断片が、他の鶏のゲノムDNAから増幅した断片の中に含まれる頻度を算定した。上記頻度の算定の方法は、実施例3と同様の方法を用いた。
【実施例】
【0137】
その結果、新規プライマーセットのうち、上記頻度が低く、実用的であると判断できたプライマーセットとして、配列番号6に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるプライマー(第1のプライマー)および配列番号7に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるプライマー(第2のプライマー)からなるプライマーセット(第1のプライマーセット、対応するマーカー名はABRZ1003)、配列番号8に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるプライマー(第3のプライマー)および配列番号9に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるプライマー(第4のプライマー)からなるプライマーセット(第2のプライマーセット、対応するマーカー名はABRZ1012)、配列番号10に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるプライマー(第5のプライマー)および配列番号11に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるプライマー(第6のプライマー)からなるプライマーセット(第3のプライマーセット、対応するマーカー名はABR0241)および配列番号12に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるプライマー(第7のプライマー)および配列番号13に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるプライマー(第8のプライマー)からなるプライマーセット(第4のプライマーセット、対応するマーカー名はABRZ1008)が得られた。
【実施例】
【0138】
ABR0311を含む5つのマーカーについて、比内鶏において遺伝的に固定されているマーカーの他の鶏における出現頻度および想定される識別率を表1に示す。表1に示されるように、雌においては、三つのマーカー(ABRZ1003、ABRZ1012、ABR0241)、雄においては五つのマーカー(ABR0311、ABRZ1003、ABRZ1012、ABR0241およびABRZ1008)を用いれば、99%以上の否定確率を得ることができる。
【実施例】
【0139】
【表1】
JP0004930735B2_000002t.gif
【実施例】
【0140】
〔実施例5:比内地鶏の検出〕
実施例3および実施例4にて得られた五つのプライマーセットを用いて、実際にサンプルの鶏が比内地鶏であるか否かを識別した。サンプルとして、実施例3に記載の他の鶏334羽を用いた。したがって、すべてのサンプルに対して比内地鶏ではないと否定できれば成功となる。なお、原理的に比内地鶏は必ず比内地鶏であると判定される。
【実施例】
【0141】
まず、サンプルの鶏からゲノムDNAを調製した。ゲノムDNAを調製する方法は実施例1と同様の方法を用いた。
【実施例】
【0142】
次に、ゲノムDNAから第1のプライマーセットを用いてDNA断片を増幅し、該DNA断片の長さを測定した。DNA断片の増幅は、実施例2と同様の方法によりおこなった。そして、上記DNA断片に、比内鶏に対して第1のプライマーセットを用いて増幅される断片(配列番号1に示される塩基配列からなるポリペプチド)と同長のDNA断片が含まれていない場合、比内地鶏ではないと否定した。
【実施例】
【0143】
同様に、ゲノムDNAから第2のプライマーセットを用いてDNA断片を増幅し、該DNA断片の長さを測定した。そして、上記DNA断片に、比内鶏に対して第1のプライマーセットを用いて増幅される断片(配列番号2に示される塩基配列からなるポリペプチド)と同長のDNA断片が含まれていない場合、比内地鶏ではないと否定した。
【実施例】
【0144】
同様に、ゲノムDNAから第3のプライマーセットを用いてDNA断片を増幅し、該DNA断片の長さを測定した。そして、上記DNA断片に、比内鶏に対して第1のプライマーセットを用いて増幅される断片(配列番号3に示される塩基配列からなるポリペプチド)と同長のDNA断片が含まれていない場合、比内地鶏ではないと否定した。
【実施例】
【0145】
同様に、ゲノムDNAから第4のプライマーセットを用いてDNA断片を増幅し、該DNA断片の長さを測定した。そして、上記DNA断片に、比内鶏に対して第1のプライマーセットを用いて増幅される断片(配列番号4に示される塩基配列からなるポリペプチド)と同長のDNA断片が含まれていない場合、比内地鶏ではないと否定した。
【実施例】
【0146】
同様に、ゲノムDNAから第5のプライマーセットを用いてDNA断片を増幅し、該DNA断片の長さを測定した。そして、上記DNA断片に、比内鶏に対して第1のプライマーセットを用いて増幅される断片(配列番号5に示される塩基配列からなるポリペプチド)と同長のDNA断片が含まれていない場合、比内地鶏ではないと否定した。
【実施例】
【0147】
その結果、すべてのサンプルについて比内地鶏ではないと否定することができた。すなわち、100%の確率で比内地鶏と他の鶏を識別することができた。鶏の品種間の遺伝的距離は非常に近しいことが知られており(非特許文献1および非特許文献3参照)、さらに、交雑鶏であるにも拘らず、五つのマーカーのみで比内地鶏の検出を高精度で行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明を用いれば、比内地鶏を検出することができるため、比内地鶏として偽装表示された鶏肉の流通を監視することができる。これにより、安全面、品質面において信頼に足りる比内地鶏肉を消費者に供給することができる。また、本発明を用いれば偽装を簡単に見破ることができることを周知させることによって、比内地鶏の偽装表示を予防することができる。このように、本発明は食品関連分野に大いに寄与する。
【0149】
さらに、本発明に係るDNAマーカーの簡易検出キット等、簡易判定のための商品開発に寄与する。