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明細書 :波長検波型光センサシステム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第5207421号 (P5207421)
登録日 平成25年3月1日(2013.3.1)
発行日 平成25年6月12日(2013.6.12)
発明の名称または考案の名称 波長検波型光センサシステム
国際特許分類 G01D   5/353       (2006.01)
G01B  11/16        (2006.01)
FI G01D 5/353 C
G01B 11/16 G
請求項の数または発明の数 5
全頁数 15
出願番号 特願2012-075859 (P2012-075859)
出願日 平成24年3月29日(2012.3.29)
審査請求日 平成24年12月11日(2012.12.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
発明者または考案者 【氏名】佐野 安一
【氏名】本藤 弘敏
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100100055、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 弘明
審査官 【審査官】眞岩 久恵
参考文献・文献 特開2011-149874(JP,A)
特表2008-534982(JP,A)
調査した分野 G01D 5/26-5/38
G01B 11/16
要約 【課題】センサとして小型化及び高い測定精度を同時に実現する。
【解決手段】本発明の波長検波型光センサシステムは、光源から出射される光が入射するファブリペロー光共振器FFPと、このファブリペロー光共振器が出力する前記線スペクトルを含む反射波長帯域を備えて出力光を出射する出力側帯域反射フィルタFBGとを有する複数の前記波長変化型光センサS1、S2と、第一の端子に入射した光を第二の端子から出射し、この第二の端子に入射した光を波長検波手段に接続された第三の端子から出射する光サーキュレータCIRと、光源から複数のファブリペロー光共振器を直列に接続するとともに末端が光サーキュレータの第一の端子に接続された第一の光路と、複数の出力側帯域反射フィルタを直列に接続するとともに末端が光サーキュレータの第二の端子に接続された第二の光路とを具備する。
【選択図】図9
特許請求の範囲 【請求項1】
光源と、この光源から出射される光が入射する光路に沿った被測定部毎に設置され相互に異なる波長検出帯域を備えた複数の波長変化型光センサと、これらの複数の波長変化型光センサから前記光路を介して出力される出力光を検出する波長検波手段とを備えた波長検波型光センサシステムであって、
前記光源から出射される光が入射し、前記光路上において一対の入射側帯域反射フィルタが対向配置されて前記一対の入射側帯域反射フィルタの反射波長帯域内に少なくとも1本の線スペクトルを含む透過スペクトルを出力するファブリペロー光共振器と、このファブリペロー光共振器が出力する前記透過スペクトル中の少なくとも1本の前記線スペクトルの波長領域を含む反射波長帯域を備えて前記出力光を出射する出力側帯域反射フィルタとを有する複数の前記波長変化型光センサと、
第一の端子に入射した光を第二の端子から出射し、この第二の端子に入射した光を前記波長検波手段に接続された第三の端子から出射する光サーキュレータと、
前記光源から前記複数の波長変化型光センサ毎に設けられた複数の前記ファブリペロー光共振器を直列に接続するとともに末端が前記光サーキュレータの前記第一の端子に接続された第一の光路と、
前記複数の波長変化型光センサ毎に設けられた複数の前記出力側帯域反射フィルタを直列に接続するとともに末端が前記光サーキュレータの前記第二の端子に接続された第二の光路と、
を具備することを特徴とする波長検波型光センサシステム。
【請求項2】
前記第一の光路は光ファイバからなる第一の光ファイバアームで構成され、前記一対の入射側帯域反射フィルタは前記第一の光ファイバアーム中に形成されたファイバブラッググレーティングであり、
前記第二の光路は光ファイバからなる第二の光ファイバアームで構成され、前記出射側帯域反射フィルタは前記第二の光ファイバアーム中に形成されたファイバブラッググレーティングである
ことを特徴とする請求項1に記載の波長検波型光センサシステム。
【請求項3】
前記ファブリペロー光共振器は、前記反射波長帯域内に単一の前記線スペクトルを生ずるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の波長検波型光センサシステム。
【請求項4】
前記波長変化型光センサ毎に、前記出射側帯域反射フィルタの反射波長帯域は、前記ファブリペロー光共振器の反射波長帯域内に限定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の波長検波型光センサシステム。
【請求項5】
前記波長変化型光センサ毎に、前記出射側帯域反射フィルタは、前記ファブリペロー光共振器より出力される前記線スペクトルの波長と一致した反射中心波長を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の波長検波型光センサシステム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバブラッググレーティングを用いた分布型光ファイバ計測システムを構成する場合に好適な波長検波型光センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
阪神淡路大震災、東日本大震災など我が国は地震大国であり、耐震構造の建築構造物が一般的である。一方建築構造物は時間と共に老朽化していき初期の耐震性が失われていく。高度成長時代は老朽化した建築構造物は取り壊し、新たに建築していくスクラップアンドビルドの考え方が主流であった。しかし地球環境保全の観点からこの方法は用いられなくなり、現在ではすでにあるものを維持保全しながら大切に使っていく方向に社会全体のトレンドが変化してきている。したがって維持保全は重要なアイテムになる。維持保全の方法として保守員が見回り、点検を行いこれを推進していく方法があるが、この方法は常時点検ができないという欠点がある。また人間は点検に際して種々の測量をするが、例えば天井裏、壁の中など本質的に測量しにくい場所もある。そのような場所が耐震構造上重要なチェック対象になる場合もある。これに対して光ファイバ網を建築工事の際同時に建築物に埋め込み測定しようとする技術が検討され一部実用化されている。対象はビルディングのような建築物だけではなく地震で大きな被害を受けた鉄橋、トンネル等もその対象となっている。一方、宇宙航空分野に目を転じても同様な検討が進められている。航空機、ロケットなどの機体に金属疲労が発生して致命的な事故に至らないか否かチェックはその代表的なものである。宇宙航分野の場合、「軽量」は重要なキーワードである。光ファイバはこのリクエストに対して現在最も優れた回答を与えるキーハードである。
【0003】
以上のような社会背景をもとに技術的な進歩が著しいのが光ファイバブラッググレーティング(以下、単に「FBG」と記す)を用いた分布計測システムである。日本女子大学100年記念館あるいは慶応大学の三田校舎のように実用化が始まっている。第一の従来技術を図1[特許文献1]に示す。図1はよく知られているFBGを用いた代表的な分布計測システムである。この方法は反射波長帯域がそれぞれ異なる複数のFBGを光ファイバで接続し分布計測を可能としたもので光源には広帯域光源が用いられる。光源から出射された光は光カプラを経てFBG列に入射され、FBGからの反射光は光分岐器経由波長検波装置に入力される。波長検波装置は各FBGの反射中心波長を計測する。FBGの反射中心波長はFBGの温度あるいは歪等の物理量にリンクしてシフトする。このためFBGの波長を計測すれば各FBGの温度あるいは歪などの物理量が波長検波装置につながるマイクロコンピュータで認識される仕組みである。
【0004】
次に第二の従来技術について述べる。図2はFBGを用いた測定精度を高めるためのキーハードである。これは光ファイバファブリペロー共振器(以下、単に「FFP」と記す)と呼ばれ、光ファイバ内に同じ特性のFBGを一定間隔離して2個描画し作成されるものである。図3はこのFFPの光の波長に対するスペクトルを示す。(A),(B)は2個のFBGの反射スペクトルであり、いずれも同一の反射スペクトルのものを使う。(C)はFFPの透過率を示す。スペクトルの中央に狭帯域の例えば10pm程度の帯域幅のスペクトルが発生させることができる[特許文献2]。図3の方法を少しアレンジして単一スペクトルだけを抽出する方法が知られている[非特許文献1]。これはFFPとFFPが発生する狭帯域のスペクトルをカバーする反射波長帯域をもつFBG3それに光サーキュレータCIRを組み合わせ図4に示すような光回路構成にするものである。図5はこの回路の光スペクトルを示す。(A)、(B)はFBG1、FBG2の反射スペクトル、(C)はFFPの透過スペクトル、この透過光は光サーキュレータCIRに入射後、FBG3で反射される。(D)はFBG3の反射スペクトルである。FBG3で反射された狭帯域光スペクトルは光サーキュレータCIRの出射ファイバに導かれここから(E)に示すような狭帯域単一線スペクトルが出射される。
【0005】
図6はFFPを用いて図4の回路を用いて図1の分布計測システムよりも測定精度を高めた分布計測システムである。単純にFBGを用いた図1に示すシステムの場合はFBGの帯域幅は150pm程度であるが、FFPを用いると上記のように10pm程度の帯域幅にできるので単純にFBGを用いた場合よりもその中心波長をより高い測定精度で求めることができる。その動作の概要は以下のようである[特許文献2]。図6において、センサS1はFBG1とFBG2からなるFFP1とFBG3から成る。このセンサは図7のようにセンサホルダSH内に収められ例えば接着剤などで固定される。これによりFFP1とFBG3は同一温度となり、また歪がSHに印加されれば同じ歪を受けることになる。センサS1は光サーキュレータCIRを介してFFP1とFBG3が接続される。広帯域光源からの光L1は光回路R1のようにFFP1を通過した出射光のうち狭帯域単一線スペクトルだけがFBG3で反射され光サーキュレータCIR及び波長多重用カプラWDMCを経て波長検波器に単一の線スペクトルとして入射する。この動作は図8に示すセンサ1の波長帯域で行われる。図8において(a)はFFP1とFFP2の透過スペクトルを重ね合わせて書いたものであり、(b)はFBG3とFBG6の反射スペクトルを重ね合わせて書いたものである。また(c)は波長検波装置への入射スペクトルである。センサごとの波長帯域はシステム設計時に割り与られる。この動作はセンサ2でもセンサ1と同様に行われ、センサ1の波長帯域とセンサ2の波長帯域は図8のように異なった帯域であり、センサ1とは独立に行われる。すなわち図6においてセンサS2は光サーキュレータCIRを介してFFP2とFBG6が接続される。広帯域光源からの光L2は光回路R2のようにFFP2を通過した出射光のうち狭帯域単一線スペクトルだけがFBG6で反射され光サーキュレータCIR及び波長多重用カプラWDMCを経て波長検波器に入射する。
【0006】
以上の分布計測システムにおいてセンサ1の温度が変化するとFBGの場合と同様に図8の破線のようにセンサ1の光スペクトルがΔλだけ変化する。図8において(a'),(b'),(c')のスペクトルはセンサ1に温度変化が印加された場合のスペクトルである。(a')はFFP1とFFP2の透過スペクトルを重ね合わせて書いたものであり、(b')はFBG3とFBG6の反射スペクトルを重ね合わせて書いたものである。また(c')は波長検波装置への入射スペクトルである。この時センサ2の波長帯域は前述のようにセンサ1とは異なるので波長スペクトルに変化は生じない。Δλは温度にリンクした量となるのでこれを実際のマイクロコンピュータで温度に変換しセンサ出力とする。この場合温度とΔλとの関係を予めデータとしてリードオンメモリーに記憶しておけば、Δλが入力されたとき温度を出力することができる。センサ2についてもセンサ1の場合とまったく同じようにして温度を出力することができる。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2000-283843号公報
【特許文献2】特開2011-149874号公報
【0008】

【非特許文献1】X. P. Cheng, C. H.Tse, P. Shum, R. F. Wu, M. Tang, W. C. Tan and J. Zhang, "All-Fiber Q-Switched Erbium-Doped Fiber Ring Laser Using Phase-Shifted Fiber Bragg Grating," J. Lightw. Technol., vol. 26, no.8, pp. 945-951 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図1の従来技術はセンサ構成がFBGだけでよいのでセンサのサイズを小さくできる利点があるが、一方でFBGの波長帯域幅が広いため測定する温度・歪等の物理量とリンクする反射中心波長を正確に求めることができずセンサとしての測定精度に課題があった。
【0010】
図7の従来技術はFFPによりセンサとしての波長帯域幅を狭くできるので物理量とリンクするFFPの中心波長を図1の方式よりも正確に求めることができセンサとしての測定精度は図1に比べ大きく改善される。しかしセンサを構成するためにはFFP、FBG、光サーキュレータCIRを小型化する必要がある。FFP、FBGは図7に示す様にセンサホルダSHを用いて小型化が可能であるが、光サーキュレータは寸法が大きい(AGILTRON社、15 Presidential Way, Woburn, MA 01801, Tel 781-935-1200, www.agiltron.com 3-Port Circulator, 長さ58mm, 直径5.5mm)。このため図1の方式に比べて、図7の方式はセンサとして測定精度の向上は図られたが小型化に課題がある。
【0011】
本発明が解決しようとする課題はセンサとして小型化及び高い測定精度を同時に実現した波長検波型センサシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第二の従来技術の図4ではFFPが1個、FBGが1個でありこれを光サーキュレータで接続し狭帯域単一スペクトルを得ている。複数のFFPを光ファイバで直列に接続し、複数のFBGを光ファイバで接続しこれを図4の1個のFFP及び1個のFBGに変えて光サーキュレータに接続する。各FFPの中央の狭帯域スペクトルと対応するFBGの反射中心波長は同一になるように設計する。またFFPと対応するFBGは組み合わせて1つのセンサホルダに組み込みセンサとする。これによりシステムで必要となる光サーキュレータは1個で済みセンサは小型化でき、かつFFPを使用することでセンサは狭帯域のスペクトルを示すので高い測定精度が得られる。
【0013】
具体的な構成としての本発明の波長検波型光センサシステムは、光源と、この光源から出射される光が入射する光路に沿った被測定部毎に設置され相互に異なる波長検出帯域を備えた複数の波長変化型光センサと、この複数の波長変化型光センサから前記光路を介して出力される出力光を検出する波長検波手段とを備えた波長検波型光センサシステムであって、前記光源から出射される光が入射し、前記光路上において一対の入射側帯域反射フィルタが対向配置されて前記一対の入射側帯域反射フィルタの反射波長帯域内に少なくとも1本の線スペクトルを含む透過スペクトルを出力するファブリペロー光共振器と、このファブリペロー光共振器が出力する前記透過スペクトル中の少なくとも1本の前記線スペクトルの波長領域を含む反射波長帯域を備えて前記出力光を出射する出力側帯域反射フィルタとを有する複数の前記波長変化型光センサと、第一の端子に入射した光を第二の端子から出射し、この第二の端子に入射した光を前記波長検波手段に接続された第三の端子から出射する光サーキュレータと、前記光源から前記複数の波長変化型光センサ毎に設けられた複数の前記ファブリペロー光共振器を直列に接続するとともに末端が前記光サーキュレータの前記第一の端子に接続された第一の光路と、前記複数の波長変化型光センサ毎に設けられた複数の前記出力側帯域反射フィルタを直列に接続するとともに末端が前記光サーキュレータの前記第二の端子に接続された第二の光路と、を具備することを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記第一の光路は光ファイバからなる第一の光ファイバアームで構成され、前記一対の入射側帯域反射フィルタは前記第一の光ファイバアーム中に形成されたファイバブラッググレーティングであり、前記第二の光路は光ファイバからなる第二の光ファイバアームで構成され、前記出射側帯域反射フィルタは前記第二の光ファイバアーム中に形成されたファイバブラッググレーティングであることが好ましい。
【0015】
本発明において、前記ファブリペロー光共振器は、前記反射波長帯域内に単一の前記線スペクトルを生ずるように構成されることが好ましい。このような構成は、例えば、ファブリペロー光共振器の反射波長帯域幅BWをフリースペクトルレンジFSRの2倍よりも狭くすることによって実現される。
【0016】
本発明において、前記波長変化型光センサ毎に、前記出射側帯域反射フィルタの反射波長帯域は、前記ファブリペロー光共振器の反射波長帯域内に限定されていることが好ましい。
【0017】
本発明において、前記波長変化型光センサ毎に、前記出射側帯域反射フィルタは、前記ファブリペロー光共振器より出力される前記線スペクトルの波長と一致した反射中心波長を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、小型化及び高い測定精度を同時に実現した波長検波型センサシステムを提供できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第一の従来技術による分布計測システムを示す概略構成図である。
【図2】FBGを用いたファブリペロー干渉計を示す概略構成図である。
【図3】FBGを用いたファブリペロー干渉計のスペクトルの説明図(A)~(C)である。
【図4】狭帯域通過特性を持つ従来の光フィルタを示す概略構成図である。
【図5】狭帯域通過特性を持つ従来の光フィルタの各点のスペクトルの説明図(A)~(E)である。
【図6】第二の従来技術による分布計測システムを示す概略構成図である。
【図7】狭帯域単一通過スペクトルをもつフィルタの構成を示す概略構成図である。
【図8】第二の従来技術による分布計測システムの各箇所のスペクトル、および、本発明による分布計測システムの各箇所のスペクトルの説明図(a)~(c)、(a′)~(c′)である。
【図9】本発明による分布計測システムを示す概略構成図である。
【図10】本発明の分布計測システムを用いた実施例のスペクトル計測図である。
【図11】実施例の光センサの被測定部の歪と検出波長との関係を線スペクトルが2本と場合と1本の場合についてそれぞれ示すグラフである。
【図12】実施例の異なる2つの光センサのうち一方の光センサにのみ歪を印加し続けた場合の両光センサの検出波長を示すグラフである。
【図13】実施例の波長検波装置の構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。以下に説明する本発明の波長検波型光センサシステムの実施形態は、複数のFBG(上記入射側帯域反射フィルタに相当する。)を2つペアにして光ファイバファブリペロー干渉計(上記ファブリペロー光共振器に相当する。)を構成し、これを光ファイバで直列に接続しこれを第一の光ファイバアーム(上記第一の光路に相当する。)とし、前記光ファイバファブリペロー干渉計と同数のFBG(上記出射側帯域反射フィルタに相当する。)を光ファイバで直列に接続しこれを第二の光ファイバアーム(上記第二の光路に相当する。)とし、第一の光ファイバアームの一端を光源に接続し、他端を光サーキュレータの第一の端子に接続し、第一の端子からの光のみを受光する第二の端子に第二の光ファイバアームを接続し、第二の端子からの光のみを受光する第三の端子から出射する光を波長検波器に接続し該波長検波器により得られた波長あるいは波長ドリフトをマイクロコンピュータなどの電子回路及びソフトウエアから当該複数のセンサの物理量を計測し出力することを特徴とする光ファイバ分布計測システムである。本実施形態の分布計測システムの計測対象は温度や歪である。

【0021】
この場合において、光ファイバファブリペロー干渉計の透過スペクトルは1本とし、この波長と同一の反射中心波長をもつFBGを物理的に該光ファイバファブリペロー干渉計と一体化しセンサとしている。以下、このような具体的な構成について詳細に説明する。

【0022】
FBGの反射率Rは、モード結合方程式を解くことにより以下の数1の式により表すことができる。ただし、FBGのグレーティング描画により発生する屈折率変調された実効屈折率の平均値がFBGの描画されていない箇所のコアの実効屈折率に等しいとすれば、以下の数2~数4の式が成り立つ。そして、FBGのピーク波長からみて初めて反射率がゼロになる長波長側の波長と短波長側の波長との差で示されるFBGの反射帯域幅BWを数5の式により求めることができる。なお、nはFBGの実効屈折率、ΔnはFBGの屈折率変調の振幅、ΛはFBGの格子ピッチ、λは波長、λはFBGの反射中心波長、LはFBGの物理的な長さである。

【0023】
【数1】
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【0024】
【数2】
JP0005207421B1_000003t.gif

【0025】
【数3】
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【0026】
【数4】
JP0005207421B1_000005t.gif

【0027】
【数5】
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【0028】
ここで、光ファイバファブリペロー干渉計において一対のFBGが同一特性で同一寸法であるとした場合、その透過率Tは上記数1に基づいて以下の数6により示される。ここで、Lは一対のFBGの間の格子が描画されていない部分の実際の長さであり、LはFBGの反射光の入射光に対する位相遅れにより生ずる実効長さであって、以下の数7から求められる。ここで、FBGの反射率Rの最大値Rmaxは数8から得られる。したがって、実効長Lは以下の数9により求められる。さらに、透過率Tの最大値を与える波長λはmを自然数として数10の式から得られる。この数10を用いると、フリースペクトルレンジFSRは以下の数11から求めることができる。

【0029】
【数6】
JP0005207421B1_000007t.gif

【0030】
【数7】
JP0005207421B1_000008t.gif

【0031】
【数8】
JP0005207421B1_000009t.gif

【0032】
【数9】
JP0005207421B1_000010t.gif

【0033】
【数10】
JP0005207421B1_000011t.gif

【0034】
【数11】
JP0005207421B1_000012t.gif

【0035】
ここで、上記数5の式で示される、数光ファイバファブリペロー干渉計のFBGの反射帯域幅BWと、上記数11の式で示されるフリースペクトルレンジFSRとの関係を2FSR>BWとすれば、上記反射帯域幅BW内において単一の線スペクトル(狭帯域透過スペクトル)のみが生ずる。ただし、本発明においては、単一の線スペクトルのみが現れるように構成する場合に限らず、2本以上の線スペクトルが生ずるようにしても計測は可能である。しかし、単一の線スペクトルのみが生ずるようにすると波長検波が容易になるとともに、各センサの波長検出帯域を狭く設定できるため、多数の被測定部に対応した多数の測定点を設けることができる。

【0036】
また、上記数4の式で示されるFBGの反射中心波長λを上記数10の式で示される上記線スペクトルのピーク波長λのいずれか一つに等しくなるように、すなわち、2nΛ=2n(L+2L)/mとなるように、L=mΛ—2Lが成立するように設計することが好ましい。このように設計すると、温度Tや歪εによって上記線スペクトルがシフトしても、当該線スペクトルの中心波長を検出することができる。これは、上記λ=2nΛとλ=2n(L+2L)/mとが等しくなるように設計されているため、いずれの温度Tの偏微分と歪εの偏微分の和もまた相互に等しくなるから、温度Tや歪εが変化しても上記反射中心波長λの変化量とピーク波長λの変化量もまた相互に等しくなるからである。すなわち、この場合には温度Tや歪εが変化しても常に上記反射中心波長がピーク波長に一致する。

【0037】
図4は狭帯域単一線スペクトルを出力する1個のセンサに対応する光回路を示す。本発明はn及びiを整数としてn個のFFPすなわちFFP~FFP~FFPを1本の光ファイバに直列に描画し、改めてこれを図4の1個のFFPに対応するものとみなす。光源には広帯域光源からの光をFFP列に入力する。同時にN個のFBGすなわちFBG~FBG~FBGを別の1本の光ファイバに直列に描画し、同様に改めてこれを図4の1個のFBGに対応するものとみなす。そのうえで両者を光サーキュレータで図4と同様にして回路接続する。

【0038】
n=2の場合のシステムを図9に示す。FFPの線スペクトルの波長とFBGの反射中心波長は第二の従来技術と同様に同一とする。FFPとFBGは組み合わされ図7に示す構成とし、1つのセンサSとする。FFPとFBGの両者にはセンサホルダSHにより同じ温度、あるいは歪が印加される。これにより光サーキュレータの出射ファイバからはセンサS~S~Sに対応するn個の線スペクトルが出射される。この分布計測システムの各点のスペクトルは第二の従来技術で説明した図8と同じになる。この場合サーキュレータCIRに入射してくる光のスペクトル、すなわちFFP1とFFP2を組み合わせた透過スペクトルは図9(a)になる。またFBG3,FBG6の反射スペクトルは図9(b)になる。またFFPの狭帯域線スペクトルの波長はFBGの反射中心波長と同一であるので光サーキュレータから出射してくる光が図9(c)で示される。この両者の波長を同一に設計する手法は上記各式により説明したとおりであり、特許文献1に示されている。また両波長が温度変化あるいは印加歪により変化する波長シフト量は同一であることも上記各式により説明したとおりであり、同文献に示されている。更にFFPから出射スペクトルを2本以上の整数ではなく1本の単一スペクトルにするための設計手法も上記各式により説明したとおりであり、同文献に示されている。

【0039】
なおセンサ1のSに歪あるいは温度変化が印加されるとこれらのスペクトルは第二の従来技術の場合と同様に(a),(b),(c)のスペクトルは(a'),(b'),(c')のようになる。よって波長シフトΔλを波長検波器経由でマイクロコンピュータに接続することによりセンサSからの信号を計測できる。同様にして複数のセンサS~S~Sからの信号を計測することができる。この方式ではセンサSのサイズはサーキュレータが不要のため小型化が可能である。またセンサ測定精度はFFPを用いているのでセンサの波長帯域幅は狭くでき高い精度を得ることができる。これにより従来技術の課題を解決できた。

【0040】
複数のセンサS~Sのそれぞれにおいては、FFPとFBGが相互に近接して配置されることが好ましい。すなわち、各センサ内においてFFPとFBGが計測量(温度や歪)について実質的に同じ環境となるように配置されることにより、FFPの特性とFBGの特性の計測量による波長シフトが実質的に同一になるため、透過スペクトル(狭帯域線スペクトル)を確実に検出することができる。また、一つのセンサにおいて所定の計測範囲を確保するために使用する波長検出帯域を狭くすることができるため、波長帯域の利用効率を向上させることができる。FFPとFBGの具体的な配置態様としては、FFPとFBGを隣接配置させたり、相互に固定したり、共通の筐体内やベース上に共に固定したりすることが考えられる。この場合に、温度計測の場合には熱伝導性の高い筐体やベースを用いることが望ましく、歪計測の場合には同様の歪を与えることができるようにFFPとFBGを共通の筐体やベースに密着させた状態に固定することが望ましい。

【0041】
本実施形態では、図8に示すように、FFPの反射波長帯域とFBGの反射波長帯域のうち少なくともいずれか一方が占有する波長検出帯域を含む波長範囲を各センサSの波長帯域として設定し、複数のセンサS~Sの波長帯域が相互に重ならないように構成することにより、異なる波長検出帯域を有する複数のセンサを有する構成が実現されている。このとき、図8(a)および(b)に示すように、各センサSにおいてFBG(出射側帯域反射フィルタ)の反射波長帯域がFFP(ファブリペロー光共振器)の反射波長帯域(一対の入射側帯域反射フィルタの反射波長帯域のうち少なくともいずれか一方が占有する領域)内に限定されることが好ましい。これにより、FFPの線スペクトルのみがFBGによって反射されるため、波長検波手段による線スペクトルの波長検出が容易になる。

【0042】
次に、本実施形態において本発明の波長検波手段に相当するものとして用いることのできる波長検波装置の動作をマイクロコンピュータと組み合わせて説明する。図13に示す様に波長検波装置はチューナブルフィルタと受光素子から構成される。このうちチューナブルフィルタの一例がMICRONOPTICS社のホームページhttp://www.micronoptics.com/tunable_filters.phpに記載されている。同社のFFP-TF(製品名若しくは製品番号)、あるいはFFP-TF2(製品名若しくは製品番号)、あるいはFFP-TF2 9000(製品名若しくは製品番号)がこれに相当する。FFP-TF2 9000の場合、1300nmから1600nmの波長帯域でフリースペクトルレンジは340nmであるのでこの区間で透過スペクトルはただの1つとなる。すなわち透過スペクトルは櫛形に何本もの透過スペクトルが存在するのではなく単一の透過スペクトルとなる。このスペクトルの半値全幅は50pmである。掃引速度は800Hzである。この波長帯域に1個あるいは複数のセンサの波長帯域をシステム設計時それぞれが重畳しない様に配置すれば各センサのピーク波長はこのチューナブルフィルタの透過スペクトルを掃引すれば判定できる。

【0043】
掃引は図13に示す圧電素子PZTの駆動電圧によって圧電素子PZTに変位が発生することを使用して行われる。この変位は、波長可変ファブリペロー干渉計(Variable wavelength FFP、以下、単に「VFFP」という。)の構成要素である、相互に対向する光ファイバ端面に例えば誘電体多層膜として形成された高反射ミラーMRの間で発生するようにチューナブルフィルタでは構成されている。この間隔が変化することによりVFFPの透過スペクトルが変化する。よってマイクロコンピュータから透過させたい波長に対応した電圧を駆動回路経由で圧電素子PZTに印加することにより当該波長がVFFPを通過し、他の波長域の光はVFFPを透過しないことになる。従ってそれぞれのセンサのピーク波長はVFFPに接続される受光素子の出力が最大になる波長として判定される。なお掃引するための回路も同社のコントローラFFP-C(製品名若しくは製品番号)として販売されている。なおマイクロコンピュータは各センサの物理量とそれに対応する波長を一覧表として例えばリードオンメモリーを用いて記憶しておくことにより、マイクロコンピュータが求めた各センサのピーク波長を使って各センサの物理量を測定値として出力する。

【0044】
次に、上記実施形態を用いた実験結果を示す。図10はn=2として測定したスペクトルであり図8の(c)あるいは(c')に相当する波形である。図11はn=1とした場合(図示では黒い丸)と、n=2として測定した場合(図示では灰色の正方形)の歪を横軸にとり縦軸を波長検波装置で計測された波長にとったグラフである。歪印加に対する波長の変化の割合は何れの場合も同じで、相互に対応する黒い丸と灰色の正方形の位置は全て重なっている。これにより測定精度はセンサの数nに無関係に同じであることが分かる。一方、図12も測定精度がnに影響されないことを示すデータである。この実験はn=2として一方のセンサには歪を印加せず(歪の変化なし)、他方のセンサには歪を印加していった場合の両者の波長変化をグラフにしたものである。これから歪を印加しない(歪の変化なし)センサの波長変化(Peak2)は他方のセンサの歪印加の影響(Peak1)を受けていないことが分かる。図11のグラフの傾斜(計測感度)は1.08pm/μstでFBG単体の場合とほぼ同じであった。またFBGのスペクトル幅は約150pm、FFPの狭帯域スペクトルの幅は約10pmであるのでFFPのほうがスペクトル幅の狭くなった分だけ、FBGと比べ高い計測精度になっている。以上のことから本発明は実験的に、小型かつ高い計測精度が得られたことが確認された。

【0045】
尚、本発明の波長検波型光センサシステムは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では光ファイバを用いた分布計測システムとして説明したが、本発明は光ファイバに限らず、何らかの光路を用いた構成であればよく、また、分布を計測するものに限らず、複数のセンサ部を有するものであれば如何なるセンサシステムであっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明を分布計測システムとして利用することで、建築構造物の保守メンテナンスを常時行うことができるので建築構造物の耐震性を向上できる。また宇宙航空産業におけるロケット、航空機などの金属疲労を予めチェックできるので大事故の発生を防止できる。
【符号の説明】
【0047】
FBG:光ファイバブラッググレーティング
FFP:光ファイバファブリペロー干渉計(ファブリペロー光共振器)
CIR:光サーキュレータ
S:センサ
R:光路
L:光
WDMC:波長多重用カプラ
SH:センサホルダ
VFFP:波長可変光ファイバファブリペロー干渉計
PZT:圧電素子
MR:ファイバミラー
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図13】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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