TOP > 国内特許検索 > カンチレバーアレイを有する共振センサ装置 > 明細書

明細書 :カンチレバーアレイを有する共振センサ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5462698号 (P5462698)
公開番号 特開2011-232194 (P2011-232194A)
登録日 平成26年1月24日(2014.1.24)
発行日 平成26年4月2日(2014.4.2)
公開日 平成23年11月17日(2011.11.17)
発明の名称または考案の名称 カンチレバーアレイを有する共振センサ装置
国際特許分類 G01N   5/02        (2006.01)
G01R  29/22        (2006.01)
FI G01N 5/02 A
G01R 29/22 A
請求項の数または発明の数 8
外国語出願 外国語出願
全頁数 12
出願番号 特願2010-103209 (P2010-103209)
出願日 平成22年4月28日(2010.4.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 IEEE COMCAS 2009 Conference Proceedings(2009年11月9日) 「Multi-Cantilever HEMT-based Resonant Sensor」
審査請求日 平成25年1月28日(2013.1.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506301140
【氏名又は名称】公立大学法人会津大学
発明者または考案者 【氏名】イリナ・キミロバ
【氏名】エレーナ・シェスタコバ
個別代理人の代理人 【識別番号】110000246、【氏名又は名称】特許業務法人OFH特許事務所
審査官 【審査官】東松 修太郎
参考文献・文献 特開平02-073162(JP,A)
特開2009-069006(JP,A)
特表2009-537337(JP,A)
特表2008-521015(JP,A)
特表2001-505305(JP,A)
特表2010-525317(JP,A)
調査した分野 G01N 5/02
G01R 29/22
特許請求の範囲 【請求項1】
共振カンチレバーデバイスを備える共振センサ装置であって、前記共振カンチレバーデバイスは、
2次元電子ガス(2DEG)層を形成するヘテロ接合、ソースおよびドレイン電極、および前記共振カンチレバーデバイスの上面において前記ソースおよびドレイン電極の間に形成された表面電極を備える基板と、
前記表面電極の上方に設けられ、前記基板に一端において取り付けられている共振カンチレバーのアレイと、を備え、
前記共振センサ装置は、
前記共振カンチレバーのアレイにRF信号を加えるためのRF信号源と、
前記ソースおよびドレインの間を流れる電流を検出するための検出器と、
を備える、共振センサ装置。
【請求項2】
前記共振カンチレバーのそれぞれは、前記RF信号源から加えられるRF信号によって駆動されて振動し、該RF信号がそれぞれの共振カンチレバーの共振周波数と一致するとき該共振カンチレバーがより大きな振幅で振動する、請求項1に記載の共振センサ装置。
【請求項3】
前記共振カンチレバーが感知対象の分子と相互作用して該共振カンチレバーの共振周波数をシフトさせる少なくとも一つの感性層で被覆されている、請求項2に記載の共振センサ装置。
【請求項4】
前記検出器は、前記RF信号の周波数が変化されるとき、前記ソース、ドレイン間の電流のピークを検出するよう構成されている、請求項3に記載の共振センサ装置。
【請求項5】
前記共振カンチレバーを前記RF信号で駆動するときの、該共振カンチレバーの振動の基準特性を記憶するメモリを備え、
前記検出器は、検出した電流のピークの特性を前記基準特性と比較して前記感性層と相互作用した物質を判定する、請求項4に記載の共振センサ装置。
【請求項6】
前記検出器は、前記周波数のシフトの大きさに基づいて前記物質の濃度を判定する、請求項5に記載の共振センサ装置。
【請求項7】
前記共振カンチレバーアレイが異なる長さで異なる共振周波数の少なくとも2つの共振カンチレバーを含む、請求項1から6のいずれかに記載の共振センサ装置。
【請求項8】
少なくとも一つの共振カンチレバーが流体を感知するための中空の溝を有する、請求項1または2に記載の共振センサ装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は対象物質を検出するための共振センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、半導体基板に形成されたソースおよびドレイン、およびカンチレバー・フローティングゲートを有する共振ゲート・トランジスタを記載している。カンチレバー・フローティングゲートはフローティングゲートと基板表面上の表面電極との間に可変周波数信号を加えて、ソート、ドレイン間のチャンネルに流れる電流を変調すると振動する。
【0003】
非特許文献2は、2次元電子ガス(2DEG)チャンネルのソース、ドレイン電流を制御するフローティングゲートとして作用する浮きカンチレバーを有するフローティングゲート高電子移動度トランジスタ(HEMT)を開示している。
【0004】
2DEGを感知システムに使用する考えは、多くの応用分野で実践されており、非特許文献3には2DEGを含む応力感知低温GaAs/AlGaAs FETが記載され、非特許文献4には、集積2DEGを有する微細加工されたカンチレバー磁力計が記載され、非特許文献5には、メカニカルな共振器を有するAlGaAs/GaAsヘテロ構造の2DEGが記載されている。2DEGは半導体ヘテロ接合、たとえば小さいバンドギャップの非ドープの真性GaAs層(i-GaAs層)と大きいバンドギャップのδドープのn型AlxGa1-xAs層(n-AlGaAs層)との接合で形成されることが知られており、i-GaAs層は、i-GaAs層に形成される2DEGチャンネルに電子を供給するソースとして作用する。
【0005】
特許文献1は、基板と、基板に形成されたソース、ドレインと、カーボン・ナノチューブとを備える共振トランジスタを開示しており、カーボン・ナノチューブは、トランジスタのチャンネル領域上に片持ち梁(カンチレバー)状に設けられている。基板上でカンチレバーのゲートの下に入力電極が設けられている。ナノチューブ・ゲートと入力電極との間に可変周波数信号を加えると、加えた信号の周波数でナノチューブ・ゲートが振動し、その結果、時間とともに変化する電界が生じ、FETの電流を変調し、入力電極とソース、ドレイン出力との間のインピーダンスが変化する。FETのソース、ドレイン電流の変化はナノチューブの共振周波数で最大となる。
【0006】
特許文献2は、様々の環境状態において目的物質の存在を正確に検出し測定する集積カンチレバー感知アレイを開示している。カンチレバー・センサシステムは、光学計測ヘッドを有するカンチレバーが発生する発振特性を測定する。このヘッドは、光源およびカンチレバーアレイのカンチレバーによって反射された入射光を検出するよう配置された検出器を備えている。
【0007】
計測ヘッドは、応力によって生じた曲がり、熱による曲がりによるカンチレバーの偏光を検出し測定することによってアレイのカンチレバーの動きを検出し測定し、またはAC(交流)集団(mass)の検出を使用して共振周波数のシフトを検出する。化学的感知の応用では、カンチレバーは感知対象のオブジェクトの分子を吸収し、曲がるなどの反応を示す感知層で被覆されている。ターゲットの分子がカンチレバーにくっつくと、カンチレバーの質量、応力、または温度が変化する。カンチレバーの動きを測定することによって、この変化を検出することができる。カンチレバー・センサの一つの動作モードは、交流(AC)集団の検出である。共振周波数のシフトを測定することによって、カンチレバーにくっついた材料の量を推測することができる。
【0008】
生物学および薬学におけるプロセスの総合的な理解のためには、分子、細胞および組織のレベルで複数のパラメータの変化をモニタする必要がある。従来のシステムにおける単一のバイオマーカーの検出では、限られた特殊性のため、十分に満足のいく情報は得られない。たとえば、癌の診断は、従来の単一のバイオマーカーのモニターから複数のマーカーの検出にシフトしてきている。理想的には一つのセンサ・プラットフォームを使用して複数のバイオマーカーを同時に検出する技術が非常に魅力的である。カンチレバーアレイに基づくバイオ感知技術は、高感度および選択性をもつ複数ターゲット検出の要請に応えることができる潜在性をもっている。
【0009】
非特許文献6は、共振カンチレバー・フローティングゲートHEMTの等価回路モデルを開示している。
【0010】
非特許文献7は、くぼみをもつカンチレバーを使用する、流体におけるバイオマーカー検出を記載している。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】米国特許番号 7,579,618 B2
【特許文献2】米国特許出願公開番号 2005/0121615 A1
【0012】

【非特許文献1】エイチ.シー.ナザンソン、IEEE トランザクション エレクトロン デバイセズ ED-14、117-133ページ、1967年
【非特許文献2】ダブリュ.エイチ.テー他、「微細加工のフローティングゲート高電子移動度トランジスタの4.2Kにおける特性」、ジャーナル オブ アプライド フィジックス Vol. 97、114-507ページ、2005年
【非特許文献3】アール.ジー.ベック他、「AsAs/GaAlAs マイクロ・エレクトロメカニカル システムにおける統合応力検出のための応力感知低温電界効果トランジスタ」、アプライド フィジックス レター vol. 68、3763-3765ページ、1996年
【非特許文献4】エム.ピー.シュワルツ他、「集積2次元電子システムを有するマイクロメカニカル・カンチレバー磁力計」、アプライド フィジックス レター Vol. 76、3564-3566ページ、2000年
【非特許文献5】ジェイ.カーシュバウム他、「ナノメカニクス応用のための増大サスペンド量子ドット回路」、アプライド フィジックス レター vol. 81、280-282ページ、2002年
【非特許文献6】アイ.キミロバ、「共振カンチレバー フローティングゲートHEMTの等価回路モデル」、マイクロおよびナノ エンジニアリングについての32回国際コンファレンス(MNE 2006)、スペイン、バルセロナ、2006年、811-812ページ
【非特許文献7】ティー.ピー.バーグ他、「流体中のバイオ分子、単細胞、単ナノ粒子の重さ軽量」、ネイチャー vol. 446、1066-1069ページ、2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この発明は、高感度、高い選択精度でオブジェクトを検出するための共振センサ装置を提供することを目的とする。また、この発明は、複数のオブジェクトを検出するため異なる長さのカンチレバーのアレイを有する共振センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題は、特許請求の範囲に記載される共振センサ装置によって解決される。典型的にはこの発明の共振センサ装置は、半導体基板、および2次元電子ガス層を提供する、その界面にヘテロ接合を有する活性層およびバリア層を備える。ソース、ドレイン電極が半導体基板に設けられている。ソース、ドレイン電極の間でセンサ装置の表面に表面電極が設けられている。この表面電極の上方でソース、ドレイン電極の間に一つまたは複数の共振カンチレバーアレイが設けられている。共振センサ装置は、さらに共振カンチレバーに可変周波数の入力信号を加えるための信号源を備えている。検出器がソース、ドレイン間の電流を検出する。
【0015】
この発明の一形態では、可変周波数信号がカンチレバーを駆動して振動させる。この振動は、加えた信号の周波数がカンチレバーの固有の基礎共振周波数またはその高調波に一致するときピークに達する。
【0016】
この発明のもう一つの形態では、共振カンチレバーには少なくとも一つの感応材料が被覆されており、感知対象のオブジェクト分子との間で相互作用を生じる。ターゲットとして選ばれたオブジェクト分子を吸収すると、カンチレバーの特性が変わり、特に質量が増すとカンチレバーの共振周波数が低くなる。
【0017】
この発明の一形態では、検出器は、入力信号の周波数を予め定めた範囲で変えるとき、ソース、ドレインの間の電流のピークを検出するよう構成されている。
【0018】
この発明の一実施形態では、共振センサ装置は、共振センサ装置の少なくとも一つのピーク電流の基準特性(周波数および波形)を格納するメモリを備えている。検出器は、検出された電流のピークをこのメモリに記憶された基準特性と比較し、オブジェクト分子の検出を判定する。検出器は、検出されたピークの周波数シフトの大きさに基づいて検出された分子の濃度を判定する。
【0019】
この実施形態では、アレイに含まれる同じカンチレバーの数が多いと検出電流の振幅が大きくなるので、検出された信号とバックグラウンドとの比率は大きくなる。
【0020】
この発明のもう一つの実施形態では、カンチレバーアレイは異なる長さの少なくとも二つのカンチレバーを含んでおり、異なる共振周波数で共振する。共振センサ装置のメモリは、少なくとも二つのピーク電流の基準特性(周波数および波形)を記憶している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】この発明の一実施例の共振センサ装置の斜視図。
【図1B】図1Aの装置のA-A’断面を示す図。
【図2A】異なる長さのカンチレバーを有する実施例の共振センサ装置の斜視図。
【図2B】中空の溝を有するカンチレバーを示す図。
【図3】この発明の共振センサ装置を用いた検出システムの実施例のブロック図。
【図4】異なる長さのカンチレバーを有する正規化されたソース、ドレイン電流の波形図。
【図5】異なるカンチレバーの二つのアレイを有するセンサ装置の正規化されたソース、ドレイン電流の波形図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明は、複数の共振カンチレバーがフローティングゲートの作用をするHEMT状の構造をもつ共振センサ装置を提供する。カンチレバーは、電気的に刺激されると振動しカンチレバーの下方の2DEG表面の電界を変え、その結果、2DEGの濃度が変わり、2DEGチャンネルの抵抗が変わる。

【0023】
カンチレバーに加えられる交流電圧の周波数がカンチレバーの機械的な共振周波数に一致するとき、ソース、ドレイン電流にピークが現れる。アレイのカンチレバーがすべて同じもので同じ共振周波数をもつならば、単一の機械的な共振周波数に対応する周波数で単一のピークが現れる。カンチレバーアレイが、2つ以上のグループのカンチレバーを含み、一つのカンチレバー・グループが他のカンチレバー・グループとは異なる機械的共振周波数をもつならば、加える交流電圧の周波数を予め決めた範囲で変えていくとき、異なるグループに対応する複数のピークがソース、ドレイン電流に現れる。

【0024】
図1Aは、この発明による共振カンチレバーデバイスの一実施例の斜視図である。典型的には、基板21は、半誘電性のGaAs層を含み、その上に非ドープの真性GaAs層24およびnドープのAlGaAs層25がエピタキシャル成長により重ねられている。AlGaAs層25とのヘテロ界面において真性GaAs層に2DEGが生成されることが知られている。AlGaAs層25は、GaAs層24に形成された2DEG層への電子の供給源として作用し、2DEG層と表面電極26との間のバリアとしても作用する。この明細書では、2DEG層を含むGaAs層24を全体的に活性層24と呼び、AlGaAs層25は、2DEGチャンネルを提供する限り他のヘテロ接合でもよいので、全体的にバリア層と呼ぶ。通常の電界効果トランジスタと同様にソース接点22およびドレイン接点23が設けられている。

【0025】
浮いた微細加工のカンチレバー27は、一端が基板に一体的に留められており、上述の非特許文献1および2に記載される構造と同様にソース、ドレイン電流を制御するフローティングゲートとして作用する。カンチレバーに加えられる電圧Vgによりカンチレバーの変位を生じ、カンチレバーと装置の上面との間のギャップおよび電界が変化し、カンチレバーの下の2DEGチャンネルに誘起される電子の濃度を変える。その結果、その結果、活性層24の抵抗が変化しソース、ドレイン電流が変化する。

【0026】
カンチレバーに加えられる電圧に可変周波数ωの交流成分が含まれるとき、カンチレバーは同じ周波数で振動する。可変周波数ωがn番目のカンチレバーの機械振動の共振周波数ωmnと一致すると、ソース、ドレイン電流にピークが現れる。各カンチレバーに加えられる電圧Vg(t)が直流成分V0および小さな交流成分δVを含むとき、電圧Vg(t)は次の式で表すことができる。
Vg(t) = V0 + δVexp(jωt)
( δV << V )

【0027】
n番目のカンチレバーの下のHEMTにおけるシート電子の密度は、非特許文献6に記載されるように次の形で表すことができる。
【数1】
JP0005462698B2_000002t.gif

【0028】
ここで、Σ0はVg=0における2DEGのシート電子密度であり、dgは広いバンドギャップのバリア層の厚みであり、danはカンチレバーとHEMT表面との間隔であり、εrは比誘電率、ξnはn番目のカンチレバーの変位である。浮いたカンチレバーを点質量モデルに置き換えれば、ξnは非特許文献6に記載される強制減衰同調発信器についての次の式を解くことにより求めることができる。
【数2】
JP0005462698B2_000003t.gif

【0029】
ここで、ω0nは、実行質量Mnでばね係数kcnのn番目の点質量のカンチレバーの機械振動の基本モードの共振周波数であり、γnは減衰係数、ξ0nは直流バイアスによるカンチレバーの変位、CanはCan = ε0WLn/danで表されるキャパシタンス、ε0は真空の誘電率、Wはカンチレバーの幅、Lnはn番目のカンチレバーの長さである。

【0030】
R2DEGで示される2DEGの抵抗およびIsdで示されるソース、ドレイン電流は、次の式で表される。
【数3】
JP0005462698B2_000004t.gif

【0031】
ソース、ドレイン電流の周波数依存成分δIωは次の式から求めることができる。
【数4】
JP0005462698B2_000005t.gif

【0032】
I0sdはソース、ドレイン電流で、R0はδV=0での2DEGチャンネルの抵抗、すなわち直流電圧がカンチレバーに加えられたときの2DEGチャンネルの抵抗である。n番目のカンチレバーの下の2DEGチャンネル抵抗の周波数依存成分δRωnは次の式で求めることができる。
【数5】
JP0005462698B2_000006t.gif

【0033】
ここで、eおよびμはそれぞれ電子電荷および移動度を示す。V’thおよびξ’0nはそれぞれ次の式で与えられる。
【数6】
JP0005462698B2_000007t.gif

【0034】
たとえば、共振センサ装置が長さL1のカンチレバーをN個、長さL2のカンチレバーをM個もっているとき、正規化した周波数依存ソースドレイン電流成分δIω/I 0sd は次の式で与えられる。
【数7】
JP0005462698B2_000008t.gif
ここで
【数8】
JP0005462698B2_000009t.gif

【0035】
再度図1を参照すると、カンチレバー27の上面は感応層28で被覆されている。カンチレバー27はドーピングされたポリシリコン、または金属導電層で被覆されたSiNまたはプラスチックのような導電性材料で作られているので、カンチレバーに電圧を加えることができる。導電性であるか、または導電性被覆によって導電性にすることができれば、特許文献2に記載されるような既知のカンチレバー材料を使用することもできる。

【0036】
感応層28は、カンチレバー27の上面に付着されている。感応層の厚みは数十ナノメートルの範囲である。感応層28は、感知対象のオブジェクト物質の分子を吸収、拘束またはなんらかの態様でこれと相互作用する材料で作られている。ターゲットの分子が感応層28に拘束されると、カンチレバー27の質量が変わり、その結果、機械的共振の周波数が変わる。

【0037】
図2Aを参照すると、一実施例では、共振カンチレバーデバイスは、長さL1のカンチレバー27-1を1個と長さL2のカンチレバー27-2を1個備えている。もう一つの実施例では、共振カンチレバーデバイスは、長さL1の同じカンチレバー27-1を4個含む第1のアレイと長さL2の同じカンチレバー27-2を3個含む第2のアレイを備えている。

【0038】
この発明の共振カンチレバーデバイスは複数のタイプのカンチレバーを含むことができる。図の例では、カンチレバー27-1は、長さL1が6.15ミクロンで機械的な共振周波数が7.0MHzであり、カンチレバー27-2は、長さL2が3.94ミクロンで機械的共振周波数が11.9MHzである。

【0039】
カンチレバー27-1は、第1のオブジェクト物質と相互作用するための感応層28-1を備えており、カンチレバー27-2は第2のオブジェクト物質を相互作用するための感応層28-2を備えている。共振カンチレバーデバイスは、さらに異なるタイプのカンチレバーを含むことができる。

【0040】
図2Bは、カンチレバーのもう一つの実施例を示す。この実施例では、非特許文献7で教示されている、流体感知のための中空の溝(トレンチ)すなわちマイクロチャンネルを感応層に代えて備えている。

【0041】
この発明の共振カンチレバーデバイスは、既知の技術または将来開発される技術を使用して制作することができる。活性層24は、典型的には2次元電子ガス(2DEG)である2次元のキャリアガスを有する層とすることができる。

【0042】
個々の微細加工制作されたカンチレバーは、駆動電圧を加えることによって機械的振動が励起される。カンチレバーの下面と鏡面電極の上面との間のギャップdaがカンチレバーの振動によって変化し、2次元キャリアガスの上面における電界の強度が変化する。その結果、2次元キャリアガスの濃度が変化する。カンチレバーの下の2次元キャリアガスの濃度は、その領域の電気抵抗を決める。抵抗が変化すると、ソースとドレインの間を流れる電流が変わり、この変化は既知の技術を用いて電流を測定することにより検出することができる。

【0043】
図3は、この発明の共振センサ装置の一実施例の機能ブロック図である。一実施例では、共振センサ装置は、共振カンチレバーデバイス11を備え、共振カンチレバーデバイス11は、オブジェクト物質を検出するため、オブジェクト物質を含んでいる環境に配置される。共振カンチレバーデバイス11は、可変周波数源13から加えられるRF信号によって活性化される。可変周波数源13は、既知の電圧制御可変周波数発信器で構成することができる。RF信号の周波数は、3MHzから15MHzの範囲で変えることができる。ソース・ドレイン電流検出器15が共振カンチレバーデバイス11のソース、ドレイン電流を測定する。RF信号の周波数がカンチレバーの機械的振動の共振周波数と一致するとき、ソース、ドレイン電流がこの共振周波数でピークを示す。ピーク検出器16がそのようなピークを検出する。

【0044】
ピーク検出器16は、サンプルアンドホールド(sample and hold)回路で構成することができ、アナログ・ディジタル変換器がソース、ドレイン電流のアナログ波形を一定間隔でサンプリングし、変化する周波数に関しソース、ドレイン電流のディジタル値(サンプル値)のシーケンスを生成する。ピーク検出器16は、サンプル値を保持し、変化する周波数に関し一定の間隔でソース、ドレイン電流のサンプル値を保持することによりソース、ドレイン電流のピークを検出し、最大値を検出することができる。

【0045】
異なるタイプのカンチレバーのそれぞれについて、予め共振周波数が測定され、共振周波数およびピークの大きさ(振幅)がメモリ18に記憶されている。物質検出ユニット19は、検出されたピークを予め求められた基準ピークと周波数および大きさについて比較することによって、目的物質の検出を判定する。物質検出ユニット19は、こうして検出された物質を示す出力を提供する。この出力は、検出された物質の濃度の表示を含むことができる。

【0046】
図4は、長さL1=6.15ミクロンの一つのカンチレバーおよび長さL2=3.94ミクロンの一つのカンチレバーを備える共振カンチレバーデバイス11から得られる波形を示す。この発明の共振センサ装置の一実施例について、RF周波数を7MHzから13MHzの範囲で変化させてソース、ドレイン電流を測定した。図4の波形は、共振カンチレバーデバイスの正規化したソース、ドレイン電流δIω / I0sdを表す。長い方のカンチレバーはその共振周波数においてピークAを示し、短い方のカンチレバーはその共振周波数においてピークBを示す。ピークAおよびBは、それぞれ長いカンチレバーおよび短いカンチレバーに固有である。ピークAおよびBの特性はメモリ18に基準データとして記憶されており、測定データとの比較に用いられる。この特性は、共振周波数および正規化したソース、ドレイン電流δIω / I0sd を含む。

【0047】
短いカンチレバーはオブジェクト物質と相互作用しターゲットの分子を拘束する感応材料で被覆されている。長いカンチレバーは、異なるオブジェクト物質と相互作用する他の感応材料で被覆されていてよい。共振カンチレバーデバイスがオブジェクト物質にさらされるとき、短いカンチレバーの感応材料がそのターゲット分子と相互作用して分子を吸収し拘束する。拘束されたターゲット分子の質量だけ短いカンチレバーの質量が増し、その結果、共振周波数が低くなる。短いカンチレバーの共振周波数はピークB’に対応する周波数として検出される。電流ピークBとB’との間の周波数シフトΔfを計測することができ、この周波数シフトの大きさに基づいてターゲット物質の濃度を求めることができる。こうして共振センサ装置は、共振周波数のシフトを検出し計測することにより、オブジェクト物質を探査する。

【0048】
図5は、共振センサ装置11のもう一つの実施例で、図2Aに示すように2つの異なるカンチレバーアレイを有するものでの正規化されたソース、ドレイン電流の波形を示す。第1のカンチレバーアレイは、長さ6.15ミクロンの複数のカンチレバー27-1を含み、第2のカンチレバーアレイは、長さ3.94ミクロンの複数のカンチレバー27-2を含んでいる。波形は、ピークAおよびBと同じ周波数において二つのピークASとBSを有する。ピークAおよびBは、図4に示したピークである。図5からわかるように、この実施例の共振カンチレバーデバイス11は、ただ一つのカンチレバーをもつデバイスよりも大きい出力信号を生成する。

【0049】
したがって、同じ長さの複数のカンチレバーを有する共振カンチレバーデバイスは、大きい信号対背景比を提供する。
【符号の説明】
【0050】
21 基板
24 2次元電子ガス
26 表面電極
27 カンチレバー
28 感応層
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図2A】
2
【図2B】
3
【図3】
4
【図4】
5
【図5】
6